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論文内容の要旨 赤血球はガス運搬に特化した細胞であり

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Academic year: 2021

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氏 名 ( 本 籍 ) 後藤 樹史(新潟県)

専攻分野の名称 博士(理学)

学 位 記 番 号 理博甲 第 5 学位授与の日付 令和2324

学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 研 究 科 ・ 専 攻 理工学研究科 総合理工学専攻

学 位 論 文 題 目

(英文)

ヒト赤芽球終末分化での脱核の制御機構に関する研究

(Studies on Regulation of Enucleation in Terminal Differentiation of Human Erythroblasts)

論 文 審 査 委 員

(主査)教授 涌井 秀樹

(副査)教授 尾髙 雅文

(副査)教授 疋田 正喜

(副査)教授 髙橋 直人

論文内容の要旨

赤血球はガス運搬に特化した細胞であり, ヒト成人では低酸素下骨髄内で1日に約2000 億個が産生されている.赤血球造血の終末分化の過程で, 赤芽球は核を放出(脱核)して 成熟赤血球となる.赤芽球は脱核の前段階で増殖を停止し,核濃縮と細胞極性化の後に,

アクトミオシンによる収縮環形成と収縮により核を放出する. 近年,赤芽球の終末分化の 各段階に関与する分子が徐々に明らかになってきているが,赤芽球の脱核を総括的に制御 する情報伝達系分子や, 低酸素下でのエネルギー代謝の詳細は不明である.これらの課題 を解明することで, 人工赤血球製剤などの安定的供給に繋がることが期待されている.

本論文では, ヒトCD34陽性細胞(造血幹細胞)の培養系を用い,後期赤芽球系前駆細胞

(CFU-E)から赤芽球の終末分化の過程を観察しながら,脱核を誘導する情報伝達系分子 群とエネルギー代謝の特徴について検討し,赤芽球脱核の総括的な制御機構の解明を目的 とした. 本論文は, 以下の4章で構成されている.

第1章では, ヒト赤血球造血の特徴について, 他の生物種と比較しながら概説し, 本研究 の目的を述べている.

第2章では, ヒト赤血球終末分化での情報伝達系に関するこれまでの知見をまとめ, Rho

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(2)

ファミリー低分子量G蛋白質Cdc42の総括的な役割を想定した. 次に, 実験方法を述べ, られた結果を提示している.(1)Cdc42は, mRNAと蛋白質のレベルで持続的に発現してい

た.(2)Cdc42の活性阻害剤であるCASINは,CFU-Eの細胞増殖と赤芽球の脱核を有意に抑

制した.(3)CASINは,赤芽球の細胞極性化を有意に抑制した.(4)CASINは,赤芽球脱 核時のアクチン線維形成を抑制し,収縮環形成を阻害した.(5)CASINを投与すると,赤 芽球内のダイニンは核に接した一点に局在し,ダイニンとγ-チューブリンは共局在してい た.以上の結果から,ヒト赤芽球では脱核の情報伝達制御機構が存在し,Cdc42がダイニ ンを介した細胞極性化とアクチン線維の収縮環形成を制御することで行われると考えら れた.

3章では, ヒト赤芽球が脱核する低酸素環境下で想定されるエネルギー代謝, 低酸素応 答の機序について概説し, エネルギー産生は嫌気的解糖によるとの仮説を立てた. 次に, 験方法を述べ, 得られた結果を提示している. (1)5%酸素濃度下の方が21%酸素濃度下に 比して, 赤芽球の脱核率は有意に高かった.(2)5%酸素濃度下では,グルコース輸送体と乳 酸輸送体の発現が増加した.(3)5%酸素濃度下で,グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵 素を阻害すると,細胞内ATP量が減少し,CFU-Eの細胞増殖及び赤芽球の脱核を抑制した.

(4)赤芽球の乳酸脱水素酵素を阻害すると,細胞内ATP量が減少し,CFU-Eの細胞増殖及 び赤芽球の脱核を抑制した.(5)赤芽球のピルビン酸脱水素酵素(PDH)は,CFU-Eから脱 核まで持続的にリン酸化されていた.また, PDHリン酸化酵素(PDK)アイソザイムの中 で,PDK4 は脱核まで持続的に高発現していた.(6)5%酸素濃度下での赤芽球のHIF-1α 発現は,21%酸素濃度下に比べて高かった.以上の結果から,ヒト赤芽球では,PDK4によ PDHがリン酸化されることで,ミトコンドリアでの酸化的リン酸化経路が抑制され,嫌 気的解糖で産生したATPを脱核に利用していると考えられた.

第4章では, 得られた結果をまとめ, 人工赤血球の作製や赤血球輸血製剤の供給効率化に 向けた課題と, 脱核の生物学的意義について考察を加えている.

論文審査結果の要旨

本論文では以上のように, ヒト赤芽球終末分化での脱核の制御機構に関する多くの生物 学的な新知見を得ている. 献血に頼らない赤血球製剤の安定的供給に向けた基礎的な研究 としても評価でき, 博士(理学)の学位論文として十分価値があるものと認められる.

[主論文公開誌]

ATP produced by anaerobic glycolysis is essential for enucleation of human erythroblasts.

Experimental Hematology 72: 14-26, 2019

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参照

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