博 士 ( 工 学 ) 菊 地 慶 仁
学 位 論 文 題 名
設 計 生 産 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン モ デル の 記 述 表 現 及 び 応 用 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容の 要旨
近年,設計及び生産における様々な活動の効率化を目的として,CAD/CAMシステムの導入及 び各種自動生産設備の開発が行われている.これらCAD/CAMステムの発達に伴い,設計生産の 活動は図面や伝票などの印刷物を交換する形態からデジタル化されたデータを交換する形態に変 化しつっある,また従来集中していた設計生産の拠点が海外の各地に分散され,コンピュータと ネ ッ ト ワ ー ク の 支 援 の 基 で 設 計 生 産 を 行 う , な ど の 環 境 変 化 が 起 こ っ て い る . しかし設計生産活動の計画,調整及び確認を行う管理業務は,依然として規則文書や伝達書類 に従い管理担当者の手作業によって行われている.このような状況下では,1)従来方式での管理 業務は地理的に分散されて行われる設計生産活動では困難になる,2)印刷物としてしか明文化さ れていない管理業務の規則と設計生産活動の成果であるデジタル化されたデ一夕との不整合のた めに,活動全体の効率を上げることができない,3)PL法対策などのための,製品を保証するため の情報として,製品の開発過程や製造過程に関する記録を計算機可読な形で保存することができ ない,4)類似した設計生産活動で過去の事例の記録を自動的に検索することが困難,などの問題 が生じる.
これらの問題を解決するためには,管理担当者の指定した計画に従って各種の活動が実行され る計算機支援システムが必須となる.そのためには設計生産の活動単位に発生する要求及び提案,
データの参照及び変更,作業手順に関する規則,を表現する活動モデルの構築が必要になる.さ らにこのモデルをコンピュータで利用可能にするため形式仕様記述言語で表現すること,それら を計算機システムに実装すること,が必要となる.しかし設計活動から生産活動までの広い範囲 の活動表現を行うための,言語やモデルに関する研究は現状ではあまり報告されていない.
そこで本論文では,設計生産中に実行される各種の活動及び活動に関与する対象を統一的に表 現できる設計生産コミュニケーションモデルと,その記述方法,並びにモデルの計算機システム ヘの実装方法を提案し,上記問題の解決を図ることを目的とする.
本論文は7章より構成されており,その概要を以下に示す.
第1章「緒論」では,上述された本研究の背景,目的ならびに特徴について述べている.
第2章「問題点の分析」では,設計生産活動のモデル化に関連した従来の研究を詳細に分析し,
それらの問題点を指摘すると共に,提案する設計生産コミュニケーションモデルに必要となる条 件を明らかにしている.すなわち,1)設計生産活動においてデータの発信者と受信者となってい る人間,アプリケーションソフトウエア,製造設備などの情報と,それらの間で伝達される製品
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データ や設備 制御デ ータな どに関 する情 報の両者を,統一的に表現可能であること,2)設計生産 におけ る並行 した複 数の活 動や, 活動間 の時間的優先関係などを厳密に表現可能であること,3) 活動に 関する モデル を計算機可読な形式で暖味さなく表現しモデルのモジュール化を行うために,
形式仕 様記述 言語に よるモ デル表 現がな されていること,4)単純な活動モデルを組み合わせるこ とによ り,複 雑な設 計生産 の活動 を表現 可能な構造にするモデルであること,5)モデルを運用管 理する ための 計算機 応用シ ステム の具体 的実装手 法が示 されて いること,が必要条件であること を示し ,本論 文では ,これ らを満 たす設 計生産コ ミュニ ケーシ ョンモデルの提案を行うことが必 要になることを述べている.
第3章 「設計生 産活動 の表現 に関す る基本 モデル 」では ,設計 から生産 に至る 範囲で の活動,
活動に 関与す る作業 者や設備機器などの各種の対象,及び活動中に起こる出来事などを表現する,
設計生 産コミ ュニケ ーションモデルの基本モデルを提案している.すなわちこの基本モデルでは・
1)設計 生産の 活動に 関与す る作業 者など の対象を,それらが受け付けることができる入カの仕様 として 定義し 表現す る,2)1)で提案した対象間での特定の活動に関する情報を交換させる概念的 な媒体 を「プ 口セス 」とし て統一 的に表 現し,並 行した 活動も 活動毎のプロセスが存在すること で表現 する,3)活動 に関す る記録 は,活 動中にプ口セスを経由して行われた通信の記録によって 表現す る.こ の基本 モデル は,プ ロセス 代数の概 念を取 り入れ て,並行活動の厳密な定義,及び 言語仕様を規定するための数学的明晰性を確立している.
第4章 「 設 計 生産 プ ロセ ス記述 言語」 では, 第3章で 提案した 基本モ デルの 構造に 基づぃ て設 計生産活動を表現するための形式仕様記述言語(EPDL: Engineering Process Description Language) を提案している.この言語は,1)設計生産活動における入出力対象の定義,2)対象間の情報の入出 カを媒介するプロセスの定義,3)入出カされる情報の定義,を目的として設計されている.特に,
この言 語では 設計生 産の活 動を表 すプロ セスを情 報の到 着を表 すイベント,及びその際に入カさ れ る べ き 情 報 , と の 組 み 合 わ せ に よ っ て 直 接 的 に 表 現 で き る 点 に 特 徴 を も つ , 第5章 「 設 計 生産 活 動 統 合モ デ ル の 構築 」 で は ,提 案 し た 基本 モ デ ル と形 式 仕 様 記述 言 語 EPDLに 基づ ぃ て , 基本 的な 活動モ デルを 組み合 わせる 基本構造 を提案 する. さらに 基本構 造に 基づぃ た設計 グルー プ活動モデルと生産活動モデルが構築できることを確認している.設計グルー プ活動モデルは,1)設計者のグループを表現するためのの組織構造モデル,2)スケジュールなどの 活動に 関する 制限を 蓄積す るデー タベー ス,3)スケジュールに従って起動される設計活動プロセ ス,の3者から なる. 設計グ ループ 活動モ デルで は,1) その活動 において起こりうるデータの参 照及び 変更な どの出 来事を プロセ スヘの 情報入カイベントとして陽に定義できる,2)活動のため に参照 または 変更で きるデ ータの 範囲が 変化する 状況な どの, 活動における制約をプロセスの状 態遷移 によっ て表現 できる ,3)個 々の活 動に相当するプロセスを複数並行に起動して情報の入出 カを行 うこと で,1人 の設計 作業者 が同時 に複数 の設計活 動に従 事して いる状 況を表 現でき る,
4)階層 的な組 織構造 を表現 するた めの入 出力対象モデルを用いることで,活動の進展に従って設 計作業 グルー プの人 的構成 が動的 に変化 する仮想 的な作 業グル ープ構造を任意に作り出すことが できる ,など の特徴 的な機 能を実 現でき ることを 示して いる. またさらに,生産活動モデルにお いても同様の特徴的機能が実現可能となることを明らかにしている・
第6章 「応用シ ステム 」では ,設計 生産コ ミュニ ケーシ ョンモ デルにつ いて, 形式記 述表現さ
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れ た活動モデルを取り扱う基 本構造と,並列に実行される プロセスの管理機能の実装について述 べ ている.すなわち提案した プロセス管理機能に画面表示 部などを付加したシミュレータシステ ム をオブジェクト指向言語のSmalltalk/Vを用いて開発し,予め定められたスケジュールに従って,
プ ロ セ ス の 生 成 , 消 滅 , プ ロ セ ス 間 の 通 信 の 管 理 と 記 録 が 行 え る こ と を 確 認 し て い る . 第 7章 「 結 論 」 で は , 本 論 文 で 得 ら れ た 結 論 を 要 約 し て 述 べ て い る .
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学 位 論 文 審査 の要 旨 主 査
副 査 副 査 副 査 副 査
教授 教授 教授 教授 助教授
岸浪 五十嵐 島 嘉数 金井
学 位 論 文 題 名
建 史 悟 公 脩 侑 昇 理
設 計 生 産 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン モ デ ル の 記 述 表 現 及 び 応 用 に 関 す る 研 究
近年,設計及び生産における様々な活動の効率化を目的として,CAD/CAMシステムの導入 及び各種自動生産設備の開発が行われている.これらCAD/CAMステムの発達に伴い,設計生 産の活動は図面や伝票などの印刷物ではなくデジタル化されたデータを交換する形態に変化し つつある,また従来集中していた設計生産の拠点が海外の各地に分散され,コンピュータとネ ッ ト ワ ー ク の 支 援 の 基 で 設 計 生 産 を 行 う , な ど の 環 境 変 化 が 起 こ っ て い る . しかし設計生産活動の計画,調整及び確認を行う管理業務は,依然として規則文書や伝達書 類に従い管理担当者の手作業によって行われている.このような状況下では,1)従来方式での 管理業務は地理的に分散されて行われる設計生産活動では困難になる,2)印刷物としてしか明 文化されていない管理業務の規則と設計生産活動の成果であるデジタル化されたデータとの不 整合のために,活動全体の効率を上げることができない,3)PL法対策などのための,製品を保 証するための情報として,製品の開発過程や製造過程に関する記録を計算機可読な形で保存す ることができない,4)類似した設計生産活動で過去の事例の記録を自動的に検索することが困 難.などの問題が生じる.
これらの問題の解決には,設計生産の活動毎に発生する要求及び提案,データの参照及び変 更,作業手順に関する規則,などを管理する計算機支援システムが必須となる.しかし,設計 活動から生産活動までの広い範囲の活動表現と計算機システムによる応用とを目的と.した研究 は,現状ではあまり報告されていない.
そのために本論文では,上記問題の解決を目的として,情報交換の現象に着目した設計生産 の各種活動プロセスのモデル化による取り組みを新たに提案する,より具体的には,設計生産 中に実行される各種の活動及び活動に関与する対象を統一的に表現するための基本的な設計生 産コミュニケーションモデル,表現された活動モデルを計算機システムで利用可能にするため の形式仕様記述言語,並びにモデルの計算機システムへの実装方法,などの技術的な構成によ る問題解決を提案し,その実現可能性を示す.
本論文は7章より構成されており,その概要を以下に示す.
第1章「緒論」では,上述された本研究の背景,目的ならびに特徴について述べている.
第2章「問題点の分析」では,設計生産活動のモデル化に関連した従来の研究を詳細に分析 し,それらの問題点を指摘すると共に,提案する設計生産コミュニケーションモデルに必要と なる条件を明らかにしている.すなわち,1)設計生産活動においてデータの発信者と受信者と
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なっ てい る人 間, ア プリケーションソフトウエ ア,製造設備などの情報と ,それらの間で伝達 され る製 品デ ータ や 設備制御データなどに関す る情報の両者を,統一的に 表現可能であること
,2)設計生産における並行 した複数の活動や,活動間 の時間的優先関係などを厳密 に表現可能 であること,3)活動に関す るモデルを計算機可読な形 式で曖味さなく表現しモデル のモジュー ル化を行うために,形式仕 様記述言語によるモデル表現 がなされていること,4)単 純な活動モ デル を組 み合 わせ る ことにより,複雑な設計生 産の活動を表現可能な構造 にするモデルである こと,5)モデルを運用管理 するための計算機応用シス テムの具体的実装手法が示さ れているこ と, が必 要条 件で あ ることを示し,本論文では ,これらを満たす設計生産 コミュニケーション モデルの提案を行うことが 必要になることを述べている .
第3章 「設 計生 産活 動の 表 現に 関す る基 本モ デル」では,設計から生産 に至る範囲での活動
,活 動に 関与 する 作 業者や設備機器などの各種 の対象,及び活動中に起こ る出来事などを表現 する,設計生産コミュニケ ーションモデルの基本モデル を.提案している.すなわちこの基本モ デルでは,1)設計生産の活 動に関与する作業者などの 対象を,それらが受け付ける ことができ る入カの仕様として定義し 表現する,2)1)で提案した 対象間での特定の活動に関する情報を交 換さ せる 概念 的な 媒 体を「プロセス」として統 一的に表現し,並行した活 動も活動毎のプ口セ スが存在することで表現す る,3)活動に関する記録は ,活動中にプ口セスを経由し て行われた 通信 の記 録に よっ て 表現する.この基本モデル は,プロセス代数の概念を 取り入れて,並行活 動 の 厳 密 な 定 義 , 及 び 言 語 仕 様 を 規 定 す る た め の 数 学 的 明 晰 性 を 確 立 し て い る . 第4章 「設 計生 産プ 口セ ス 記述 言語 」で は, 第3章で 提 案し た基 本モデ ルの構造に基づぃて 設計 生産 活動 を表 現 するための形式仕様記述言 語(EPDL: Engineering Process Description
Language)を提案している. この言語は,1)設計生産活動における入出力対象の定義,2)対象間
の情報の入出カを媒介する プロセスの定義,3)入出カ される情報の定義,を目的と して設計さ れて いる .特 に, こ の言語では設計生産の活動 を表すプロセスを情報の到 着を表すイベント,
及び その 際に 入カ さ れる情報,との組み合わせ によって直接的に表現でき る点に特徴をもつ,
第5章 「設 計生 産 活動 統合 モデ ルの 構 築」 では ,提 案 した 基本 モデ ルと 形 式仕 様記 述言 語 EPDLに基 づぃ て, 基 本的 な活 動モ デ ルを 組み 合わ せる 基 本構 造を 提案す る.さらに基本構造 に基 づぃ た設 計グ ル ープ活動モデルと生産活動 モデルが構築できることを 確認している.設計 グループ活動モデルは,1) 設計者のグループを表現す るためのの組織構造モデル,2)スケジュ ールなどの活動に関する制 限を蓄積するデータベース,3)スケジュールに従って起 動される設 計活 動プ ロセ ス, の3者からなる.設計グルー プ活動モデルでは,1)その 活動において起こり うる デー タの 参照 及 び変更などの出来事をプロ セスヘの情報入カイベント として陽に定義でき る,2)活動のために参照ま たは変更できるデータの範 囲が変化する状況などの,活 動における 制約をプロセスの状態遷移 によって表現できる,3)個 々の活動に相当するプロセス を複数並行 に起 動し て情 報の 入 出カ を行 うこ と で,1人の 設計作業者が同時に複数の 設計活動に従事して いる状況を表現できる,4) 階層的な組織構造を表現す るための入出力対象モデルを 用いること で, 活動 の進 展に 従 って設計作業グループの人 的構成が動的に変化する仮 想的な作業グループ 構造 を任 意に 作り 出 すことができる,などの特 徴的な機能を実現できるこ とを示している,ま たさ らに ,生 産活 動 モデルにおいても同様の特 徴的機能が実現可能となる ことを明らかにして しゝる.
第6章「応用システム」 では,形式記述表現された 活動モデルを取り扱い並列に 実行される プロ セス を管 理す る 機能の実装について述べて いる.すなわち提案したプ ロセス管理機能に画 面表示部などを付加したシ ミュレータシステムをオブジ ェクト指向言語のSmalltalk/Vを用いて 開発 し, 予め 定め ら れたスケジュールに従って ,プロセスの生成,消滅, プ口セス間の通信の 管理と記録が行えることを 確認している.
第 7章 「 結 論 」 で は , 本 論 文 で 得 ら れ た 結 論 を 要 約 し て 述 べ て い る ,
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