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博 士 ( 工 学 ) 鈴 木 貴 仁

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 鈴 木 貴 仁

学 位 論 文 題 名

北 海 道 に お け る 住 宅 組 合 の 展 開 に 関 す る研 究 学 位 論 文 内 容 の 要旨

  近代日本の郊外住宅地開発の研究は,近年,盛んに行われ,全国の研究事例を纏めた「近代日本 の郊 外住宅地j(鹿島出版会/2000年)では,「組合による開発」として,「住宅組合法」に基づ き設立された住宅組合による住宅地開発を紹介している.しかし,これまで,住宅組合の事業事例 に関 する研究 蓄積は ,僅か であり ,その 実態は ,ほと んど把 握されていないのが現状である.

  日本 におけ る「住 宅組合法 」は, 持家を 所望す る一定 資格者による互助的組織(住宅組合)

への 低利資金 融通を 基本に ,知識 層や中 産階級 以下の 俸給生 活者への住宅供給・持家促進を意 図し た法律( 大正10年施行,昭和46年廃止)で,「我が国でおこなわれた最初の持家主義政策」

(西 山夘三) である .その 源流は ,英国 の協同 組合に あると 言われ,住宅金融公庫との共通点 や関 係項目も 多い. また, システ ムとし ては, コーポ ラティ ブ・ハウジングの先行例として位 缶づ けられる など, 近年, 住宅組 合は再 び注目 を受け ている .一方,これまで「住宅組合法」

は, 量的尺度 から「住宅供給対策としては,あまりみるべき効果をあげなかった」(西山夘三)

とさ れるなど ,住宅 供給制 度の失 策とみ なされ ること が多か った.しかし,これは,住宅組合 に関 する史料 が少なく,質的側面からの評価が行われていなかったためでもある.近年になり,

住宅 組合に関 する質 的評価 が一部 で試み られる ように なって きたが, 戦前期 だけで 全国3千を 超え た組合設 立数に対し,研究蓄積は充分とは言えな。ゝ.特に,事業概要から「住宅組合法に 基づ き設立し た住宅 組合に よって 建設さ れた住 宅」( 以下, 組合住宅)の特徴,生活文化まで 精査 し,かつ ,それ らの蓄 積によ って, 一つの 地方を 対象と した包括的な評価を行った研究は いま だ存在し ていな い.全 国展開 した住 宅組合 の全容 を把握 する上で,地方都市の住宅組合に 関する研究蓄積は不可欠である.

  本論は,「住宅組合法」に基づき設立した北海道の住宅組合について,設立経緯や事業概要,事業 対象市町村における組合住宅の分布,配置,特徴,およびそこで展開された生活文化を詳らかにし,

r{t宅組 合法」 と北海 道の住 宅組合が 果たし た成果 につい て明ら かにす ること を目的 とする.

  北 海 道 の 住宅 組 合につ いては ,北海 道立文 書館に 「住宅 組合台 帳j『住 宅組合員 名簿J『 住 宅組 合原簿Jの三簿書 をはじ め,住 宅組合 関連史 料が大 量に所 蔵され ている. これら 簿書は,

欠損 する年代 がある ものの ,「住 宅組合 法」施 行初年 度から の組合関連情報を詳述した,全国 的 に み て も 貴 重 な 資 料 で あ り , 本 論 は , こ れ ら を 基 礎 史 料 と し て い る .   本論 は,序 章以下 ,全7章 で構成し ている.序章では,研究の目的と意義,用語の定義,論文 構成 ,既往研 究など を論じ たほか ,西洋 近代お よび近 代日本 の住宅問題や住宅地開発などを概 説した.

  第1章 では, 「住宅 組合法 」の成立 経緯か ら全国 におけ る住宅 組合の 展開, 廃案ま での流れ を概 観し,住 宅組合 で必要 となる 手続き や組合 住宅の 建設条 件など,住宅組合に関する基本的 事項を詳述した.

  第2章 では, 北海道 の住宅 組合の展 開に関 して, 大きく 戦前・ 戦後に 分け, 設立状 況や組合 組織 ,低利資 金融資 経緯な どの概 要と特 徴につ いて論 及した .「住宅組合法」は,既往研究同

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様,供 給策と しては 不十分 であった と言わ ざるを 得ない が,当 初意図した中産階級層への持家 供給策 として は,一 定の役 割を果た してい たこと を示し た.ま た,「住宅組合法」は,施行当 初から 復興策 として 機能し ており, 本来の 目的と は異な るが, 社会状況に柔軟に対応していた ことを 明らか にした .なお ,第2章 では,「 住宅組 合台帳 』所収 の申請 用図面 を通じ ,組合住 宅の一般的特徴や住宅思想の反映などについても考察している.

  第3〜6章 では, 戦前期 の住宅 組合の 事業事 例を取 り上げ ,その特徴について考察している.

主な考 察項目 は,住 宅組合 の設立状 況や背 景,建 設位置 (組合 住宅と市街地または交通機関と の関係 ,組合 住宅の 同一所 在地への 建設) ,住宅 配置( 敷地形 状との関係,職種あるいは組合 毎によ る棲分 け,敷 地の共 有),住 宅の特 徴(構 造,規 模,間 取り,住まい方),生活文化と した.対象市町村は,本論の狙いに基づき, 函館市・札幌市・小樽市という地方中核都市から,

室 蘭 市 ・ 帯 広 市 ・ 釧 路 市 ・ 留 萌 市 と い っ た 中 小 市 町 村 ま で 広 く 扱 っ て い る .   第3章で は,函 館市の 住宅組 合を対 象に, 住宅組 合が路面 電車沿 線にお ける郊 外住宅 地開発 に寄与 したこ とを明 らかに した.特 に,住 宅組合 の持家 方式は ,それまでの借家方式の開発の 後を担い,郊外住宅地におけるイメージ形成の一翼を担っていた.

  第4章 で は , 昭和6年 以降の 札幌市 の住宅 組合と ,土地 会社およ び路面 電車と の関連 を指摘 した. 路面電 車利用 を目論 んでいた 土地会 社の宅 地分譲 事業に よって,組合住宅は,小規模な がら組 合住宅 による住宅地を複数形成し,札幌市における郊外住宅地開発の一翼を担っていた.

  第5章では,室蘭住宅組合の実質的な主導者である組合員・岡本幹輔が,組合結成や用地取得に おいて,果たした役割を指摘した.また,当組合が形成した「小橋内文化住宅」(1万坪弱の土地に,

35戸の住 宅と2ケ 所の遊 園地, クラプ ハウスを併設)を,住宅組合の建設条件に関する自由度の 高 さ が 生 ん だ 好 例 と し , 当 地 区 に 高 級 住 宅地 と い う イメ ー ジ を もた ら し た と評 価 し た .   第6章では,散在居住が推奨されていた組合住宅において,組合員同士がまとまって居住し(以 下,近 隣居住 ),小規模住宅地を形成する事例を中心に論を構成した.この条件は,第3〜5章ま での事例にも当てはまるが,本章の特徴は,上記の章と違い,建設位置に関わる特徴的な理由や明 確な意 図など の背景が確認されない点にある.こうした事例は,特定の機関や企業に影響されな い新規 の住宅 地開発 が多く ,住宅組 合によ る住宅 地開発 の一般 的傾向が捉えやすいと考えられ る.事例としては,札幌市(昭和4年以前),小樽市,帯広市,釧路市,留萌市を取り上げた.こ こでは,組合住宅による小規模住宅地が,主に,組合と職場・職種の関係で構成されたこと,共同 生活に伴った,敷地や意識の共有化と住宅の均質化が図られていたこと,などを指摘した.また,

組合住 宅は, 新聞に取り上げられるなど,世間の耳目を集めることが多く,少なからず周囲に影 響を与 える存 在であ った. さらに, 当初か らの結 束や植 栽など が,今日まで残されていること も少なくなく,これらは,住宅組合の成果として評価できる.

  第7章で は,総 合考察 として ,統計 値から ではう かがい知 ること のでき ない「 住宅組 合法」

と住宅 組合の 質的側 面の評 価を行っ た.住 宅組合 は,「 住宅組 合法」に基づいた公益主義的な 住宅供 給組織 であり ながら も,借入 資金の 償還に 関係し た時以 外,組合員がまとまる必要はほ とんど なく, 本質的 に,非 常に緩や かな繋 がりを 持った 組織で あった.組合住宅は,建設に関 する条 件や制 約が少 なく, 中産階級 の俸給 生活者 を中心 とした 組合員(=居住者)が自ら開発 主体と なり, 小規模 な住宅 地開発を 行うこ ともで きた. これは ,自己資金だけでは実現は難し く,緩 やかに 組合と して繋 がること で,「 住宅組 合法」 下にお いて資金借入が認められ,組合 員が集 まって 住宅地 を開発 すること を可能 とした .その 意味に おいて,「住宅組合法」は,居 住者の 住まい 方の可 能性を 広げたも のとし て,住 宅史や 今日の 住宅政策の視点から,高く評価 することができる.

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    角    幸 博 副 査    教授    野口孝 博 副 査    教授    越澤    明 副査   助教授   小澤丈夫

学 位 論 文 題 名

北海道における住宅組合の展開に関する研究

  近代日本の郊外住宅地開 発の研究は,近年盛んに行わ れてきているが,住宅組合の個別事例に 関する研究蓄積は僅かであり,その実態は,ほとんど把握されていない.日本における「住宅組合 法」は,持家を所望する一 定資格者による互助的組織( 住宅組合)への低利資金融通を基本に,

知識 層や 中産 階級 以下の俸給生 活者への住宅供給・持家促進 を意図した法律(大正10年 施行,

昭和46年廃止)であるが, これまで住宅供給制度の失策 とみなされることが多かった.しかし.

これ は, 住宅 組合 に関する史料 が少なく,質的側面からの評 価が行われていなかったた めで.

戦 前 期 だ け で 全 国3千 を 超 え る 組 合 の 研 究 蓄 積 も 充 分 と は い え な い 結 果 で あ る .   本論は,全国展開した住 宅組合の全容を把握する上で ,地方都市の住宅組合に関する研究蓄積 は不可欠であるとの視点から,北海道の住宅組合について,設立経緯や事業概要,事業対象市町村 における組合住宅の分布,配置,特徴,およびそこで展開された生活文化を詳らかにし,牲宅組合 法 」 と 北 海 道 の 住 宅 組 合 が果 たし た 成果 につ いて 解明 す るこ とを 目的 と した もの であ る.

  北 海道 立文 書館 には『住宅組 合台帳』『住宅組合員名簿』 『住宅組合原簿』の三簿書 をはじ め, 住宅 組合 関連 史料が大量に 所蔵されているが,これら簿 書類は,全国的にみても貴 重な資 料 で あ り , , こ れ ら の 基 礎 史 料 を 十 分 に 活 用 し て い る 点 で も 本 研 究 は 貴 重 で あ る .   論文構成は,序章以下7章 で,序章は,研究の目的, 意義,研究方法,用語の定義 ,既往研究 など のほ か, 西洋 近 代お よび 近代 日 本の 住宅問題や住宅地 開発などを概説し,第1章で 「住宅 組合 法」 の成 立経 緯から住宅組 合の全国展開,廃案までの概 観,住宅組合の手続きや組 合住宅 の建 設条 件な ど, 住 宅組 合に 関す る 基本 的事項を詳述する .第2章では,北海道の住宅 組合の 展開に関して,設立状況や 組合組織,低利資金融資経緯 ,特徴について論述し,「住宅組合法」

が, 当初 意図 した 中産階級層へ の持家供給策として一定の役 割を果たしたこと,また本 来の目 的と は異 なる が, 施行当初から 復興策として機能していたこ とを明らかにした.さらに 『住宅 組合 台帳 』所 収の 申請用図面を 精査し,組合住宅の一般的特 徴や住宅思想の反映につい ても考 察している.

  第3〜6章で は, 戦前期の住宅 組合の事業事例を,地方中核 都市(函館市・札幌市・小 樽市)

から ,中 小市 町村 (室蘭市・帯 広市・釧路市・留萌市)まで 対象として,住宅組合の設 立状況 や背 景, 建設 位置 (組合住宅と 市街地または交通機関との関 係,組合住宅の同一所在地 への建 設) ,住 宅配 置( 敷地形状との 関係,職種あるいは組合毎に よる棲分け,敷地の共有) ,住宅 の特 徴( 構造 ,規 模 ,間 取り ,住 ま い方 ), 生活 文化 の 展開 など の項目毎に考察して いる.

  第3章 では ,函 館市 の住 宅 組合 を対 象に ,住宅組合が路面 電車沿線における郊外住宅 地開発

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に 寄与 し たこ と, 住宅組 合の持家方式は,それまでの 借家方式の開発にかわって ,郊外住宅地 のイメ ージ形成の一翼を担ったこ とを明らかにした.

  第4章で は, 昭 和6年 以降 の 札幌 市の 住宅 組 合と ,土 地会 社お よ び路面電車と の関連を指摘 し ,組 合 住宅 が, 路面電 車利用を視野に入れた土地会 社宅地分譲事業によって, 小規模な住宅 地 を 複 数 形 成 し , 札 幌 市 の 郊 外 住 宅 地 開 発 の 一 翼 を 担 っ た 点 を 明 ら か に し た .   第5章は,室蘭住宅組合を例とし て,実質的主導者である組 合員・岡本幹輔の組合結成や 用地 取得に おいて果たした役割を指摘 し,同組合が形成した「小橋内文化住宅」(1万坪弱の土地に,

35戸の 住宅と2カ所の遊園地,クラ プハウスを併設)を,住宅 組合の建設条件に関する自由 度が 生 んだ 好 例と し, 当地区 に高級住宅地というイメージ をもたらした事例として評 価している,

  第6章では,散在居住が推奨され た組合住宅において,組合 員同士がまとまって居住する 形態 を近隣 居住と定義づけ,小規模住 宅地の形成事例として,札幌 市(昭和4年以前),小樽市 ,帯 広市, 釧路市,留萌市を取り上げている.ここでは,組合住宅による小規模住宅地が,主に組合と 職場・ 職種の関係で構成されたこ と,共同生活に伴った,敷地 や意識の共有化と住宅の均質化が 図 られ て いた こと などを 指摘し,組合住宅が新聞に取 り上げられるなど,少なか らず周囲に影 響 を与 え る存 在で あった こと,当初からの結束や植栽 などの居住ルールが今日ま で残されてい る場合 もあり,住宅組合の成果と して評価できる点を指摘して いる,

  第7章の 総合 考 察で は, 統計 値か ら うか がえない「 住宅組合法」と住宅組合の 質的側面の評 価を行 っている.

  以上 から,住宅組合は,「住宅 組合法」に基づいた公益主義 的住宅供給組織でありながらも.

借 入資 金 の償 還に 関係す る以外は,組合員がまとまる 必要はほとんどなく,非常 に緩やかな繋 が りを 持 った 組織 であっ たこと,組合住宅は,建設に 関する条件や制約が少なく ,中産階級の 俸 給生 活 者を 中心 とした 組合員(:居住者)が自ら開 発主体となり,小規模な住 宅地開発を行 う こと も でき ,特 に近隣 居住では,敷地や意識の共有 化と住宅の均質化や当初の 居住ルールな ど が現 代 まで 継承 される など,「住宅組合法」が,居 住者の住まい方の可能性を 広げたものと し て, 住 宅史 や今 日の 住宅 政 策の 視点 から , 高く 評価 する こと が できる点を明 らかにした.

  これ を 要す るに ,著者 は,これまで研究蓄積の少な い住宅組合に関して,全国 的にも貴重な 北 海道 所 在の 住宅 組合関 連資料を丹念に読み込み,北 海道の住宅組合の個別事例 ごとに,資料 の 収集 , 現地 遺構 調査, 旧居住者からのオーラルヒス トリーの集積などの実証的 検討をへて,

住 宅組 合 の質 的評 価を明 らかにするなど,近代住宅史 研究に新知見を得たもので あり,建築史 学,建 築都市学に貢献するところ 大なるものがある.

  よっ て ,著 者は ,北 海道 大 学博 士( 工学 ) の学 位を 授与 され る 資格があるも のと認める.

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