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博 士 ( 水 産 学 ) 杉 村 逸 郎

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 水 産 学 ) 杉 村 逸 郎

    

学 位 論 文 題 名

ア ワ ビ 消 化 管 か ら 分 離 さ れ た

Vibrio halioticoli

    

ア ル ギ ン 酸 分 解 酵 素 遺 伝 子 に 関 す る 研 究

    

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  

海 洋 環 境 に 生 息 す る 細 菌 か ら 軟 体 動 物 に 至 る 広 い 範 囲 の 生物 に よ り 、 アル ギン 酸 分解 酵素 が 産生 され る こと が認 め られてい る。これら の 生 物 に よ り 産 生 さ れ る酵 素 は、 アル ギ ン酸 を構 成 する

2

種 の ホモ ポ リ マー領域に対する 分解特異性によって

poly Mlyase

および

poly Glyase

に 大 別さ れて い るが 、褐 藻 類に 嗜好 性 を示 すエ ゾ アワピの 消化管内か ら は 、 特 に 、

polyG

ブ口 ッ クに 分解 特 異性 の強 い アル ギン 酸 分解 性細 菌 が 優占 して い るこ とが 見 いだ され て いる 。本 菌 は、非運 動性の通性 嫌気性菌(non―motile fermentative rods: NMF)で、

polyGlyase

以外にも 基 質 特異 性の 異 なる 数種 類 の酵 素を 産 生し てい る ため、摂 餌した褐藻 類 中 のア ルギ ン 酸の 分解 に 大き く貢 献 して いる と 考えられ ている。本 菌 の アル ギン 酸 分解 機構 を 解明 する こ とが 、本 菌 の生態解 析の鍵であ る と 考え るが 、 本菌 によ り 産生 され る 酵素 を精 製 すること は非常に困 難であることが知られている。

  

近年 、 アル ギン 酸 分解 酵素 は 、遺 伝子 レ ベル での 解析が進み 、現在 ま で に14種の アル ギ ン酸 分解 酵 素遺 伝子 の 塩基 配列 が決定され 、アル ギ ン 酸分 解酵 素 の種 々の 機 能領 域を 解 析す るた め のデータ が蓄積され 始 め て い る 。 従 っ て 、 本 酵 素 の 解 析 に も 、 遺 伝 子 レ ベ ル か ら のア ブ 口 ー チが 可能 と なっ てい る と考 える 。 そこ で本 研 究では、 工ゾアワビ 消 化 管 由 来 ア ル ギ ン 酸 分解 性 細菌 の主 体 をな して い るNMFの 分類 学 的 位 置 を明 らか に するとともに 、その代表株であ るIAM  14596T株のアル

(2)

ギン酸分解酵素遺伝子のク口ーニングを行い、アルギン酸分解酵素の 機能領域の解析を分子レベルで行うことを目的とした。また、得られ た遺伝子を、本菌の生態解析のための分子マーカーとして利用するこ とを試みた。

  

第一章 では、

NMF

の分 類学的 位置を 検討し た。一 般性状 の比較、

DNA

DNA

相同性 の測定 および

16S rRNA

遺伝子の塩基配列よる系統解 析を行った結果、

NMF

は、既知の

Vibrio

属の中に同種と認められるも の はなく 、

Vi

ろ ′め属 の新種であることが明らかとなり、

Vi

ろ′め んロlioticoliと命名した。

  

第二章では、同種の標準株であるレんロlioticoli IAM 14596T株のア ルギン酸分解酵素遺伝子のク口ーニングおよびその解析を行った。そ の 結果、

5

株のア ルギン 酸分解能陽性組換え体が得られ、その中の

4

株 で、そ れぞれ 異なる 遺伝子断片が挿入されていることが明らかと なった。各ク口ーンに挿入されている酵素遺伝子の塩基配列を決定し た と こ ろ 、

618bp

の オ ー プ ンリ ー デ ィン グフレ ーム

(ORF)

から なる

polyMlyase

をコードするalyレ´M1遺伝子 、1,056bpのORFからなるpoly

G lyase

をコードするロルVG1遺伝子、

993bp

ORF

からなるpolyGlyase をコードするaly VG2遺伝子および

705bp

ORF

からなるpolyGlyaseを コードするロly VG3遺伝子が見いだされた。各遺伝子とも、その上流 域および下流域にプ口モーター、夕ーミネーター、リボゾームバイン ディングサイトと考えられる配列が認められ、レんロ

lioticoli IAM 14596T

株 由来の ブロモ ーターによって発現していることが示唆され た 。また 、各遺 伝子産 物

(AlyVMl

,AlyVG1,

AlyVG2

および

AlyVG3)

の う ち、

AlyVG1

AlyVG2

および

AlyVG3

にはシグナルペブチドが存在す ると推定され、菌体外に分泌される可能性の高い酵素であると推定さ れた。

  

次に、

AlyVMl

AlyVGl

AlyVG2

および

AlyVG3

のアミノ酸配列と現 在までに報告されているアルギン酸分解酵素のアミノ酸配列を比較し

(3)

たとこ ろ、AlyVGlは同じ

polyGlyase

である

AlyA

と相同性および類似 性が高 く、相同性が

46.3

%、類似性に至っては

93.8

%であった。ま た、AlyVG1およびAlyVG2については、

Klebsiella pneumoniae

のAIyA,

Photob

ロcterzum sp.のAlxM,Coッ凡ピろロcterzum sp.のAlyPGおよび

Pseudoalteromonas elyakovii

のAlyPEECとの間でC末端側に9アミノ酸 残基 か ら な る高 い 相 同性を 示す領 域が認め られた 。この 領域は 、 様々な 菌種の遺伝子に見いだされ、しかも、基質特異性と関係がな いこと から、アルギン酸の分解において基質特異性とは関係なく機 能的、 構造的に重要な役割を担っているものと考えられる。なお、

AlyVM1

AlyVG1

AyVG2

AlyVG3

間 に、相 同性の高い領域を見いだ すことはできなかった。

  

さらに、レんロlioticoli IAM 14596T株の菌体内粗酵素液、菌体外粗 酵素液および各アルギン酸分解能陽性ク口ーン体の菌体内抽出液を 調製し 、native‑PAGE、

SDS‑PAGE

、等電点電気泳動

(IEF)

および活性 染色 を 行 っ た結 果 、

AlyVG2

および

AlyVG3

は 、各種 電気泳 動処理 を 施した後もアルギン酸分解酵素活性を保持していた。そこでnative‑

PAGE

、SDS―PAGEおよびIEFで分離し、レんロlioticoli JAM 14596T株の 菌体 内 お よ び菌 体 外 粗酵素 液に含 まれる酵 素との 比較を 試みた 。

AlyVG2

およびAlyVG3は、レ

haliotic

〇liIAM 14596T株の菌体外粗酵素 液に検 出された酵素のーっに、基質特異性および分子量が類似して いた。 両遺伝子産物にはシグナルペプチドの存在が示唆されたこと から、 この酵素をコードする遺伝子である可能性が考えられた。し かし、

AlyVG2

および

Aly¥7G3

はIEFによる分離が難しく、〆の比較は できなかった。

  

第三章では、ロルVG2遺伝子を、レんロ

lioticoli

特異検出のための分 子マー カーとして利用することを試みた。特異検出法には、非培養 細胞を シングルセルレベルで検出するためのprokaryotic in sitぬ

PCR(PI‑PCR)

法を用いた。本菌と性状の類似するレ

pelagius

を対照と

  

して

PI

PCR

を試み 、two stage PI‑PCR法を行うことにより、レ

(4)

ん ロ

lioticoli

細 胞 の 特 異 検 出 が 可 能 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。

  

以 上 、 本 研 究 で は 、

Vibrio

属 の 新 種 で ある こと を 明ら かに し たレ

haliotico

ぬから 、

4

種の異 なるアルギン酸分解酵素遺伝子をク□ーニン グ する こ とが でき た 。ま た、 こ れら の遺伝子が本菌の 生態解析のため の分子マーカーとなりうる可能性を示した。

  

今後は 、得られた

4

種のアルギン酸分解酵素遺伝子とレんロlioticoli

I

W14596

 ̄ 株 の産 生す る アル ギン 酸 分解 酵素 群 との 対応 を 解明 し、

本 菌 株 に お け る こ れ ら の 酵 素 の 役 割 を 明ら か にす る必 要 があ る。 ま た 、心

yVG1

,魁

yVG2

,甜

yA

, 魁xM,魁yPGおよび甜yPEECのア ルギン酸 分 解 酵 素遺 伝 子に 存在 し たC末端 側 の相 同性 の 高い 領域 の 機能 を解 明 するとともに、4種の遺伝子のレんロfめfを〇ぬ染色体上での位置関係と遺 伝 子 発 現 制 御 の 仕 組 み を 検 討 し な け れ ば な ら な い と 考 え る 。

(5)

学位論文審査の要旨 主査    教授    絵面良男 副査    教授    吉水    守 副査    助教授   田島研一

学 位 論 文 題 名

アワビ消化管から分離されたVibrio halioticoli の アルギン酸分解酵素遺伝子に関する研究

  海藻 摂餌性海洋動物であり、褐藻類を好むェゾアワビは固有の消化管内細菌相を有し、

アル ギン酸分解性で非運動性通性嫌気性細菌が優先することが知られている。本菌は、多 種類 のアルギン酸分解酵素を産生することから、エゾアワビが摂餌した海藻成分の分解に 大き く貢献している可能性が指摘されている。この関係は、ルーヌン微生物やシ口アリ消 化管 内微生物の共生関係と類似していることから、海洋生物と消化管内微生物間での栄養 共生 の例として注目されている。本論文では、本菌がェゾアワビ消化管内でアルギン酸分 解酵 素を産 生するヌ カニズ ムを解明 するため 、本菌 からアルギン酸分解酵素遺伝子をク ロー ン化し、得られた遺伝子の特性を明らかにしたものである。特に評価される点は以下 の通りである。

  1.エゾ アワビ消 化管に 優先するアルギン酸分解性の非運動性通性嫌気性細菌の同定を     行い、本菌が Vibr io属の新種であることを明らかにし、Vibrio halioticoliと命名した。

  2.レhalioticoli IAM 14596T株からアルギン酸分解酵素遺伝子のク口ーン化を試み、4     の アルギン 酸分解能 陽性ク 口ーン体 を得た 。各ク口 ーン体に挿入されている遺伝子     断 片の制限 酵素地図 および 各ク口ー ン体が 発現する 酵素の性質を比較した結果、ク     口 ーン化し た遺伝子 がそれ ぞれ異な ること を示した 。また、各遺伝子の塩基配列を     決 定 し、 ロ ヶVM1遺 伝 子が618bpの オー プ ン リー ディン グフレー ム(ORF)からなる     polyMlyaseをコードすること、およびロヶVG1遺伝子、aly V(、′2遺伝子およびロヶVG3     遺 伝 子が そ れ ぞ れ、1056bp993bp、 およ び705bpORFから なるpolyGlyase     コードすることを明らかにし、レhalioticoliが少なくとも4種のアルギン酸分解酵素     遺 伝 子を 有 す る こと を示した 。なお 、AlyVGlAlyVG2お よびAlyVG3に はシグナ ル

‑ 1089 ‑

(6)

  ペブ チドが存 在すると 推定さ れ、菌体 外に分泌される可能性の高い酵素であると推   定された。

34種 の 酵 素AlyVMlAlyVG1AlyVG2お よ びAlyVG3の ア ミノ 酸 一 次構 造 を 既 報     のア ルギン酸 酵素の ものと比 較し、AlyVG1Klebsiella pneumoniaeAlyAと高     い 相 同 性 (46.3% ) を 示 す こ と 、AlyVG1お よ びAlyVG2AlyAAlxM     (PhotobctピrIum sp.) 、AlyPG(Corynebロcterium sp.)、 およびAlyPEEC     (Pseudolteromonasピlyakovii)にも見いだされているC末端側の相同な9アミノ酸     残 基 か ら な る 領域 を 持 つこ と を 示し た 。 し かし 、AlyVM1AlyVGlAyVG2     AlyVG3間に、相同性の高い領域は認められなかった。

4. ク口ー ン化した 各遺伝子が、レhalioticoli IAM 14596T株の産生する酵素のいずれ     と 対応 す る の かを 検 討 する た め に、native‑PAGEおよびSDS‑PAGEと活性 染色を     組 み合 わ せ 、 電気 泳 動 的性 質 の 比較 を 行 った 結 果 、AlyVG2お よびAlyVG3がレ   halioticoli IAM 14596T株 の菌体 外粗酵素 液に検出された酵素のーつに基質特異性     およ び分子量 が類似 している ことを示 した。両遺伝子産物にはシグナルベプチド     の存 在が予測 された ことから 、この酵 素をコードする遺伝子である可能性を示し     た 。な お 、AlyVG2お よ びAlyVG3IEFによ る分離が 難しく、plの比較 はできな     かった。

5. 工ゾア ワビ消化 管内で のレhalioticoliの挙動および餌料分解に果たす役割を解明     するために、ロヶ VG2遺伝子を分子マーカーとして本菌の非培養細胞をシングルセ     ルレベルで検出できるprokaryotic in situ PCR法を検討した。その結果、two stage     PI‑PCR法に よルレhalioticoli細胞が本菌に性状の類似するレpelagius細胞から区     別で きること を示し 、本法が 本菌によ る本遺伝子の発現解析に利用できる可能性     を示唆した。

  以上 の結果は 、エゾア ワビ消 化管に新 規のアルギン酸分解性細菌が存在し、これら が多種 のアル ギン酸分 解酵素 を産生し 、エゾ アワピの餌料分解に貢献していることを 分子レ ベルで 示したも のであ る。また 、工ゾ アワビ消化管内での本菌の生態を調べる た めにPI‑PCR手法が 応用でき ること も示唆し た。こ れらの成 果は、海 産食藻 性動物 の消化 管内細 菌の役割 を解明 する基礎 的知見 として、水産学に貢献するところ大であ り、審 査員一 同は本論 文が博 士(水産 学)の 学位論文として充分な内容を有するもの と判定した。

1090 ‑

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