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(1)

平成27年度

内外一体の経済成長戦略構築にかかる

国際経済調査事業

(アフリカ地域共同体経済連携等基礎調査)

最終報告書

2016 年 3 月

PwC あらた監査法人

(2)

2 目次 ① 本報告書の背景・目的及び調査の進め方 ... 6 1.1 背景 ... 6 1.2 目的 ... 9 1.3 対象とする地域共同体と調査方法 ... 9 (1) 対象とする地域共同体 ... 9 (2) 調査方法 ... 11 ② 調査結果 ... 12 2.1 地域共同体の現状把握 ... 12 (1) 東アフリカ共同体(EAC)の現状把握 ... 12 (2) 東・南アフリカ市場共同体(COMESA)の現状把握 ... 14 (3) 西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の現状把握 ... 16 (4) 南部アフリカ開発共同体(SADC)の現状把握 ... 18 2.2 地域共同体の統合進捗と影響力の評価 ... 20 2.3 アフリカ大陸全体の統合プロセスと地域共同体間の連携 ... 23 2.4 地域共同体の課題と施策 ... 25 (1) 課題分類 ... 25 (2) ①条約/議定書の国内法化・履行にかかる課題と施策例 ... 26 (3) ②非関税障壁と施策例 ... 27 (4) ③事務局の運営に関する課題と施策例 ... 29 (5) ④治安情勢 ... 31 (6) ⑤その他の課題と施策例 ... 32 2.5 各地域共同体における市場機会 ... 33 (1) 主要国における市場機会とリスク ... 33

(3)

3 (2) 地域共同体別市場機会 ... 39 2.6 優先市場への企業参入シナリオと課題 ... 43 (1) 東アフリカ地域への企業参入シナリオと課題 ... 43 (2) 南アフリカ地域への企業参入シナリオと課題 ... 44 (3) 西アフリカ地域への企業参入シナリオと課題 ... 44 2.7 他国の支援状況 ... 45 (1) 米国の支援状況 ... 45 (2) EU の支援状況 ... 50 (3) 中国の支援状況 ... 56 (4) 韓国の支援状況 ... 58 (5) その他 ... 60 2.8 アフリカへの輸入関税の比較 ... 62 2.9 日本のアフリカ経済政策への提言 ... 64 ③ Appendix ... 69 3.1 現地調査日程 ... 69 3.2 インタビュー先共同体 ... 70 3.3 共同体現状整理 ... 71 3.4 共同体連携整理 ... 77 3.5 加盟国概要整理 ... 78 3.6 市場概況データまとめ ... 81

(4)

4

略語表

ACP Africa, Caribbean, and Pacific アフリカ、カリブ海、太平洋

AEC Africa Economic Community アフリカ経済協力体

AfDB African Development Bank アフリカ開発銀行

AGOA African Growth Opportunity Act アフリカ成長機会法

AMISOM African Union Mission to Somalia アフリカ連合ソマリア・ミッション

AMU Arab Maghreb Union アラブ・マグレブ連合

AU Africa Union アフリカ連合

BPO Business Process Outsourcing ビジネスプロセスアウトソーシング

BRICs Brazil, Russia, India, and China ブラジル、ロシア、インド、中国

CEN-SAD Community of Sahel-Saharan States サヘル・サハラ諸国国家共同体

CEPGL Economic Community for the Great Lakes Countries

/Communauté Économique des Pays des Grand Lacs 大湖諸国経済共同体

CFT Common External Tariff 域外共通関税

CFTA Continental Free Trade Area 大陸自由貿易圏

CKD Complete Knock Down 完全ノックダウン生産

COMESA Common Market for Eastern and Southern Africa 東・南アフリカ市場共同体

COMPETE Competitiveness and Trade Expansion Program -

EAC East African Community 東アフリカ共同体

EAPP Eastern Africa Power Pool 東アフリカ電力プール

EBA Everything but Arms 武器以外の全品目

ECA Hub East and Central African Trade Hub -

ECCAS Economic Community of Central African States 中部アフリカ諸国経済共同体

ECOWAS Economic Community of West African States 西アフリカ諸国経済共同体

EDF European Development Fund 欧州開発基金

EP European Parliament 欧州議会

EPA Economic Partnership Agreement 経済連携協定

ESF ECOWAS Standby Force ECOWAS 待機軍

EU European Union 欧州連合

FOCAC Forum on China-Africa Cooperation 中国・アフリカ協力フォーラム

FPSO Floating Production, Storage and Offloading 浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備

FTA Free Trade Agreement 自由貿易協定

GDP Gross Domestic Product 国内総生産

GIZ German Agency for International Cooperation/ Deutsche

Gesellschaft für Internationale Zusammenarbeit ドイツ国際協力公社

IAFS India-Africa Forum Summit インド-アフリカフォーラム・サミット

iEPA Interim Economic Partnership Agreement 暫定経済連携協定

IFAD International Fund for Agricultural Development 国際農業開発基金

IFC International Finance Corporation 国際金融公社

IGAD Intergovernmental Authority on Development 政府間開発機構

(5)

5

JCET Joint Committee on Economy, Trade, Investment and

Technical Cooperation -

JICA Japan International Cooperation Agency 国際協力機構

KIAD Korea Initiative for African Development -

KOAFEC Korea-Africa Economic Cooperation Conference -

MFN Most Favoured Nation Treatment 最恵国待遇

MoU Memorandum of Understanding 了解覚書

NAFTA North American Free Trade Agreement 北米自由貿易協定

OAU Organisation of African Unity アフリカ統一機構

OSBP One Stop Border Post ワンストップボーダーポスト

PAP Pan-African Parliament パン・アフリカ議会

PTA

Bank Eastern & Southern African Trade & Development Bank 東部・南部アフリカ貿易開発銀行 RAIP Regional Agricultural Investment Programme -

REC Regional Economic Communities 地域共同体

RISDP Regional Indicative Strategic Development Plan 地域指標戦略開発計画

SACU Southern African Customs Union 南部アフリカ関税同盟

SADC Southern African Development Community 南部アフリカ開発共同体

SPS Sanitary and Phytosanitary 衛生植物検疫

TBT Technical Barrier to Trade 貿易の技術的障害

TDCA Trade Development and Cooperation Agreement 貿易開発協力協定

TFTA Tripartite Free Trade Area 3 機関自由貿易圏

TICAD Tokyo International Conference on African Development アフリカ開発会議

TIDCA Trade, Investment, and Development Cooperative

Agreement -

TIFA Trade and Investment Framework Agreement 貿易・投資枠組み協定

TMEA Trade Mark East Africa -

UEMOA Union Economique et Monétaire Ouest-Africaine 西アフリカ経済通貨同盟

UNCTAD United Nations Conference on Trade and Development 国際連合貿易開発会議

UNECA United Nations Economic Commission for Africa 国際連合アフリカ経済委員会

USAID United States Agency for International Development アメリカ合衆国国際開発庁

WB World Bank 世界銀行

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6

本報告書の背景・目的及び調査の進め方

1.1 背景

アフリカは高い経済成長を誇り、将来的な人口増加、所得増加、資源潜在性等、今後の日本企業の参入余地 が大きい市場である。下図に示すように、サブサハラ・アフリカにおける 1 人当たりの GDP 金額は、2000 年から 2012 年の 13 年間で、1,075 ドルから 2,869 ドルと約 3 倍に成長している。アフリカには、現在 500 社以上の 日本企業が進出し、事業展開しているが、従来の商社や資源関連企業に加え、製造業やサービス業等でも進出 が見られ始めており、今後、同地域の経済成長とともに、日本の事業拡大の可能性が高い地域である。一方で、 同地域は、治安、政治、規制面等、各国ごとに事業環境が異なり、また物理的距離等により市場調査も容易で はないことから、投資判断における十分な情報が把握できず、一定の市場潜在性が認識されながらも、投資決定 まで至らない場合も多いと推察される。 図表 1.1-1: サブサハラ・アフリカの 1 人当たり GDP の推移(USD)

出典:世界銀行 World Economic Indicators より PwC あらた監査法人作成

当該事業環境において、昨今アフリカでは、「地域連携」や「地域統合」といったキーワードの下、個別の国単位から 周辺国と連携した地域単位での取組 みが模索されつつあり、実際に東アフリ カ共同体(East African Community:EAC)、東・南アフリカ市場共同体(Common Market for Eastern and Southern Africa:COMESA)、西アフリカ諸国経済共同体(Economic Community of West African States: ECOWAS)、南部アフリカ開発共同体(Southern African Development Community:SADC)といっ た地域共同体では、関税同盟や通貨統合、規制統一等の取組みが行われ始めている。下図に示す通り、2001 年から 2011 年までの 10 年間で、アフリカ地域に存在する 13 の共同体内の取引金額は、約 4 倍程度増加し

3,500

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(米ドル)

1,075

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7 ている。また、日本企業側でも、国別の情報収集に加え、地域共同体の重要性や方策に関心を寄せる動きが出 始めており、今後の日本としては、アフリカ各国との二国間関係を意識しつつも、視点を広げた地域共同体との連 携や協力についても検討を進めることが重要となってきている。 図表 1.1-2:アフリカ 13 共同体取引額推移及び内訳(億 USD) 出典:UNCTAD 及び JICA、「アフリカ地域社会経済開発のためのアフリカ地域ビジネス 基礎情報収集・確認調査」

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今後の地域共同体との連携・協力の検討に当たり、現状では、実際の各共同体の施策、方針、活動の詳細等に ついては情報を十分把握できておらず、これまで本格的な調査も行われてきていない。ジェトロの調査によると、アフ リカ進出済み回答企業 239 社のうち、自由貿易協定(Free Trade Agreement:FTA)や関税同盟を「利 用していない・今後の利用も検討していない、わからない」と回答した企業は 65%以上にのぼる。このような状況を 踏まえ、来年の第 6 回アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development: TICAD)開催も見据えて、日本の対アフリカ経済政策の検討、企画立案と日本の現地事業活動の拡大や投資 促進につながるような、アフリカの各地域共同体に関する包括的な実態把握を行う必要がある。 図表 1.1-3:在アフリカ進出日系企業による FTA や関税同盟の活用状況(%) 出典:ジェトロ、「在アフリカ進出日系企業実態調査(2014 年度調査)」より PwC あらた監査法人作成 12.4 18.6 59.3 9 10.3 0 10 20 30 40 50 60 70 利用している 今後の利用を検討 している 利用していない 今後の利用も検討 していない 分からない

N=239

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1.2 目的

上述したように、アフリカは日本企業による事業拡大の可能性が高い地域であるにも関わらず、日本国内において、 アフリカの地域共同体との連携に必要な、各共同体の実態に係る情報は十分に把握されていない。このような問 題意識のもと、本調査の目標、目的、上位目的を以下のように設定した。 上位目標:日本の民間企業への情報提供を通じ、現地事業活動を拡大し、投資を促進する。 目的:2016 年の TICAD 開催を見据え、日本の対アフリカ経済政策を検討する。 目標①:各地域共同体の活動の実態や施策方針の実態を把握する。 目標②:各地域共同体の市場分析を行うことで、日本企業の参入潜在性の高い市場を特定し、今後の日本-地域共同体間の連携や協力方法を検討する。 図表 1.2-1:本調査の目標、目的、上位目的の整理 出典:PwC あらた監査法人作成

1.3 対象とする地域共同体と調査方法

(1) 対象とする地域共同体 本調査では、各地域共同体情報が集約しているアフリカ連合(African Union:AU)と、AU が承認している 8 つ の地域共同体のうち、東アフリカ共同体(EAC)、南部アフリカ開発共同体(SADC)、西アフリカ諸国経済共同体 (ECOWAS)、東・南アフリカ市場共同体(COMESA)、の 4 つの地域共同体を主な調査対象として選定した。選 定にあたっては、共同体の活動や統合の進捗状況、市場・経済活動の規模、経済をけん引する主要国の有無、 等の観点を考慮した。 上位目的 日本の民間企業への情報提供を通じ、現地事業活動を拡大し、投資を促進する。 目的 2016年のTICAD開催を見据え、日本の対アフリカ経済政策を検討する。 各地域共同体の活動の実態や施策方針の実態を把握する。 目標① 各地域共同体の市場分析を行うことで、日本企業の参入潜在性の高い市場を特定し、 今後の日本-地域共同体間の連携や協力方法を検討する。 目標②

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図表 1.3-1:本調査の対象とする地域共同体(Regional Economic Communities:REC)

出典:各共同体 HP をもとに PwC あらた監査法人作成 共同体名 本部 加盟国 主要国 概要 アフリカ連合(AU) アディスアベバ(エチオピア) 54か国 ケニア、ナイジェリア、南 ア等 1963年5月に設立された、前身のアフリカ統一機構(OAU)を再編し、政治的・経済的・ 社会的統合の実現、紛争の予防・解決、持続可能な経済・社会・文化開発に向けた取組 強化を目的として設立。経済に特化しているわけではないが、アフリカ全土をカバーする組織と して、他の経済共同体に関する情報が集約している。 AU が 認 め て い るRE C s 東アフリカ共同体 (EAC) アルーシャ(タンザニア) 5か国 ケニア ・EAC(東アフリカ共同体)は、1996年に本格的な活動を開始して以来、発展を遂げてき た。1997年には、ケニア、ウガンダ、タンザニア三か国のシリングを互換可能にしたり、地域統 合のための政策調整を行ったりするなど、積極的に活動を進めている。 ・域内貿易が他のREC より活発である ・EAC はアフリカ経済統合のロールモデルとなりつつある。 南部アフリカ開発共同 体(SADC) ハボロネ(ボツワナ) 15か国 南ア ・SADC は、域内の産業競争力や経済の多様化を強化し、域内貿易や投資の活性化及び 技術協力の推進を行っていくことにコミットしている。 ・民間主導の成長のポテンシャルが高い国が各REC の中では最も多く、魅力的な市場となっ ている。 西アフリカ諸国経済共 同体(ECOWAS) アブジャ(ナイジェリア) 15か国 ナイジェリア ・ECOWAS は、域内の統合だけでなく、EU とのEPA の早期締結に向けて各国の調整を 行っている。 ・2010年にアクラで、サブ・リージョナルレベルのECOWAS 貧困削減戦略文書が採択される など、地域統合の面でも近年、目覚ましい発展を遂げている。 東・南アフリカ市場共同 体(COMESA) ルサカ(ザンビア) 19か国 ケニア ・域内貿易に関しては、COMESA は進んでおり、COMESA 内の貿易は、2009 年に127 億ドルであった数値が、翌2010年には172億ドルと飛躍的に増大している。 ・また加工製品の市場として外国の投資家から注目を集めており、中国、インド、マレーシア、ト ルコ及びGCC 諸国からの直接投資が近年増加している。 サヘル・サハラ諸国国家 共同体 (CEN SAD) トリポリ(リビア) 28か国 エジプト、ケ ニア、ナイ ジェリア 域内の経済的統合を目指しているが、目立った進展がない。 中部アフリカ諸国経済 共同体(ECCAS) リーブルヴィル(ガボン) 10か国 なし 域内の紛争の予防・解決の組織として1999年より中央アフリカ平和安全保障委員会設置。 共同体内の国のうち旧フランス植民地であった6カ国は通貨共同体(CEMAC)を形成して いる。 アラブ・マグレブ連合 (AMU) ラバト(モロッコ) 5か国 アルジェリア、チュニジア 域内協力促進を目的としているが、モロッコ・アルジェリア間の問題(西サハラ問題や国境閉鎖)が障害となり、活動が停滞。 政府間開発機構 (IGAD) ジブチ(ジブチ) 7か国 ケニア 紛争が多い域内の平和と安全の確保、及び地域統合の実現を目標に掲げて活動。固有の関税同盟の創設や通貨同盟も目指しているが、主な活動分野は安全保障分野である。 調 査 対 象 ・共同体としての活動が 活発である。 ・経済をけん引する主要 国が存在する。 ・市場が大きく、投資活 動が活発である。 ・経済に特化しているわ けではないが、他の経済 共同体に関する情報が 集約している。 内の経済的統合を目指 しているが、目立った進 展がない。 主要国が不在 サブサハラアフリカではな い。また活動は停滞中。 経済に特化した共同体 ではない 調 査 対 象 外

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11 (2) 調査方法 本調査は、2015 年 12 月から 2016 年 3 月の 4 か月にわたって実施した。本調査は、A.地域共同体取組みの 現状把握と B.各地域共同体の市場分析 を行った上で、それぞれの結果を踏まえて日本企業の参入シナリオを検 討し、日本のアフリカ経済政策への提言を取りまとめるという流れで行う方針とした。 A.地域共同体取組みの現状把握 と B.各地域共同体の市場分析 のための情報収集は、それぞれ①文献及び インターネット等公開情報による机上調査、②PwC 各国法人へのヒアリング、③現地インタビュー(調査対象の地 域共同体の事務局本部がある、エチオピア、タンザニア、ザンビア、ボツワナ、ナイジェリアの 5 か国)により行った。 A.地域共同体取組みの現状把握 では、各共同体の概要・統合進捗・課題と施策、共同体間の連携状況、加 盟国の概要、各共同体に対する他国(米国、EU、中国、韓国)の支援内容、について情報を整理した。 B.各地域共同体の市場分析では、共同体毎に GDP の大きな国を特定し、北アフリカ諸国及びセキュリティ上懸 念の高い国を除いた、エチオピア、ケニア、タンザニア、南アフリカ共和国、アンゴラ、ナイジェリア、ガーナ、コートジボワ ールの計 8 か国を対象とした。各国政府の政策やマクロ経済情報等の整理を行い、国別に潜在性の高い産業を 抽出した上で、各共同体レベルでまとめた。

(12)

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② 調査結果

2.1 地域共同体の現状把握

(1) 東アフリカ共同体(EAC)の現状把握 (a) EAC の概要 EAC は 2001 年に設立された共同体で、タンザニアのアルーシャに本部を有している。加盟国数はケニア、タンザニ ア、ウガンダ、ブルンジ、ルワンダの 5 か国と、地域共同体の中で最も少ないため、統合が進みやすいと言われている。 加盟全 5 カ国が高い実質 GDP 成長率を保っている。ブルンジ以外は英語が使われているほか、共通してスワヒリ の文化が強いといえる。 図表 2.1-1: EAC の概要

出典:*1 World Bank World Development Indicators、*2 EAC HP、外務省 HP 図表 2.1-2: EAC 加盟国の概要

出典:*1 外務省 HP、 *2 World Bank World Development Indicators (2014) ■:EAC加盟国 統計データ(2014年) (※1) • 人口:1億5662万人 • GDP:1474.2億米ドル • GDP成長率(平均):12.03% • 一人当たりGDP(平均):941米ドル 基本情報 (※2) • 設立年:2001年 • 加盟国数:5カ国 • 本部:アルーシャ(タンザニア) • 設立経緯 : 1999年、ケニア・タンザニア・ウガンダが、政治、経済、 文化等での協力関係深化に向けてEAC設立条約を締結。2001 年の3か国首脳会議にてEACが正式に発足。2007年7月にブル ンジ、ルワンダが加盟。 • 設立目的:東アフリカ諸国の発展と相互利益に向けた、経済・社 会・政治等の分野における加盟国間の協力関係の構築・推進。 ケニア タンザニア ウガンダ ルワンダ ブルンジ 宗教(※1) キリスト教、 イスラム教、 伝統宗教 キリスト教(約 40%)、イスラム教 (約40%)、土着 宗教(約20%) キリスト教(約 60%)、伝統宗教 (約30%)、イスラ ム教(約10%) キリスト教(カトリック、 プロテスタント)、 イスラム教 キリスト教(カトリック、 プロテスタント) 言語 (※1) スワヒリ語、英語 スワヒリ語、英語 スワヒリ語、英語、ルガンダ語 キニアルワンダ語、英 語(共に公用語)、 フランス語 フランス語、キルンジ 語(共に公用語) 実質GDP成長率 (%)(※2) 5.3 7.0 4.5 7.0 4.7 一人当たりGDP (USD)(※2) 1,358.3 998.1 696.4 695.7 286.0 GDP (億USD) (※2) 609.4 491.8 263.1 78.9 30.9 人口(千人) (※2) 44,863.6 51,822.6 37,783.0 11,341.5 10,816.9 面積(千㎢) (※2) 569.1 885.8 200.5 24.7 25.7

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(b) EAC の統合進捗と影響度

EAC では、2010 年に関税同盟の移行期間が完了し、域外共通関税(Common External Tariff:CET) 及び域内共通の原産地規則の導入が実現している。同年には、Common Market Protocol が発効し、4 つの 地域共同体のうち、唯一共通市場が設立されており進捗が進んでいると言える。ただし、域外共通関税にはコモデ ティについて例外措置が認められたり、Sensitive List によって一部の産品への 25%関税が適用されたりするなど、 例外が多いことが指摘されている。共通市場に関する議定書の履行には、特にサービスと労働者の自由移動につ いて議論が停滞するなど課題があったが、再開が見込まれている。また、East African Passport は、現状では加 盟国国民の域内の移動のみに用いられているが、今後、域外への移動時の利用も可能とすべく、検討を進めてい る。次ステップの経済通貨同盟(通貨統合)の実現へ向けては、各国の中央銀行をとりまとめる委員会が設立さ れ、議論は行われているものの、具体的な施策の実施は限定的と言える。 図表 2.1-3: EAC の統合進捗と影響度 出典:*1 日本貿易振興機構、国際連合アフリカ経済委員会等 *2 PwC 現地オフィスヒアリング、現地インタビュー結果による ステータス 現状(ルールレベル)(※1) 現状(実施レベル)(※2) 設立済 2000年EAC設立条約が発効、ケニア、タンザニア、ウガンダの3か国による共同体が設立。 (ルワンダとブルンジは2007年参加。) 域内の関税撤廃は、2010年に完了。 移行済 ケニア、タンザニア、ウガンダの3か国について、2005年1月からEAC関税同盟発効。ルワン ダとブルンジは2009年7月から発効。 2010年に移行完了したものの、域外共通関 税は全ての輸入品には適用されておらず例外 が多いのが現状。 移行済 非関税障壁の撤廃、共通の貿易政策等の支 援を実施。同年にCommon Market Protocolを発効し、段階的な履行を予定。 2015年12月31日を目標としている。 2010年から開始している。労働者の短期滞 在とサービスの自由移動の議論が再開される 予定。East African Passportが導入されて いる。 準備中 2010年から交渉開始し、2013年には、10年後の2023年までに通貨統合に向け協力す るとの条項を含む議定書が署名された。 ロードマップ作成や委員会、Monetary Instituteが設立されたが、10年後までにすべ ての国の足並みが揃うことは考えにくい。 目標なし 具体的な目標設定は行われていない。 安全保障/対テロや早期警戒の分野での統 合が検討されている。他の経済統合と同時並 行で実施するか、通貨同盟設立後に進めるの かで、意見が分かれている。 自由貿易圏 1 関税同盟 2 共通市場 3 経済通貨 同盟 4 政治連邦 5

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(2) 東・南アフリカ市場共同体(COMESA)の現状把握

(a) COMESA の概要

COMESA は、ザンビアに本部を置き、ブルンジ、コモロ、コンゴ民主共和国、ジブチ、エジプト、エリトリア、エチオピア、 ケニア、リビア、マダガスカル、マラウィ、モーリシャス、ルワンダ、 セイシェル、スーダン、スワジランド、ウガンダ、ザンビア、 ジンバブエの 19 カ国が加盟している。PTA 銀行(東南アフリカ貿易開発銀行)や African Trade Insurance Agency(アフリカ貿易保険機関)などの機関を有していたり、Yellow Card Scheme という自動車の保険を独 自で提供していたりと、組織・仕組みづくりに定評がある。共同体加盟国の中で GDP 及び人口が多い 5 カ国の概 要を下図に整理している。

図表 2.1-4: COMESA の概要

出典:*1 World Bank World Development Indicators、*2 COMESA HP、外務省 HP 図表 2.1-5: COMESA の主要加盟国の概要

出典:*1 外務省 HP、*2 World Bank World Development Indicators (2014) ■:COMESA加盟国 統計データ(2014年)(※1) • 人口:4億9244万人 • GDP:6,665.6億米ドル • GDP成長率(平均):5.93% • 一人当たりGDP(平均):1,354米ドル 基本情報(※2) • 設立年:1994年 • 加盟国数:19カ国 • 本部:ルサカ(ザンビア) • 設立経緯:1981年の東南部アフリカ特恵貿易地域協定を発展 させたものとして、1994年に創設。 • 設立目的:域内での安定した経済・貿易圏の形成、市場・開発 の統合。 エジプト エチオピア ケニア スーダン コンゴ民主共和国 宗教(※2) イスラム教、キリスト教 (コプト教) キリスト教、イスラム教 他 伝統宗教、キリスト教、 イスラム教 イスラム教、キリスト教、 伝統宗教 キリスト教(85%)、 イスラム教(10%)、 その他伝統宗教 言語 (※2) アラビア語、英語 (都市部) アムハラ語、英語 スワヒリ語、英語 アラビア語(公用 語)、英語、その他 部族語多数 フランス語(公用 語)、キコンゴ語、チ ルバ語、リンガラ語、 スワヒリ語 実質GDP成長率 (%)(※3) 2.2 9.9 5.3 3.1 9.0 一人当たりGDP (USD)(※3) 3,198.7 565.2 1,358.3 1,875.9 440.2 GDP (億USD) (※3) 2,865.4 548.0 609.4 738.2 329.6 人口(千人) (※3) 89,579.7 96,958.7 44,863.6 39,350.3 74,877.0 面積(千㎢) (※3) 995.5 1,000.0 569.1 2,376.0 2,267.1

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15 (b) COMESA の統合進捗と影響度 エチオピアやコンゴ民主共和国など COMESA の加盟国でありながら、自由貿易圏/関税同盟には参加していない 国がいることで、必ずしも統一した条約等の履行に至っていないという課題は残るものの、域内貿易が増加している ことから自由貿易圏の設立では比較的進歩がみられる。関税同盟に関しては、文書の策定や委員会の設置など 技術的な側面は進捗がみられるが、域外共通関税の導入はばらつきがある。なお、人の自由移動に関しては、 Protocol on Gradual Relaxation and Eventual Elimination of Visas (VISA Protocol)と the Protocol on Free Movement of Persons, Services, Labour and the Right of Establishment and Residence (Free Movement Protocol)が採択されている。しかしながら、前者は加盟国の批准後も履行状 況が悪く、後者は批准国が十分でなく、発効に至っていない。まずは、共通市場の前ステップである関税同盟の履 行確保が期待される。

図表 2.1-6: COMESA の統合進捗と影響度

出典:*1 国際協力機構、COMESA、COMESA Business Council 等 *2 PwC 現地オフィスヒアリング、現地インタビュー結果による ステータス 現状(ルールレベル)(※1) 現状(実施レベル)(※2) 設立済 2000年10月31日に合意に達し、開始した。 開始済。域内貿易は増加している。(但し、エチオピアやコンゴ民等の不参加国あり。) 移行済 2009年に関税同盟への移行が宣言され、開始した。 文書の策定や委員会の設置など技術的な側面は進捗がみられるが、加盟国による域外共 通関税の導入はばらつきがある。 準備中 2025年までに、人・モノ・サービス・資本の移動の自由を完全に達成することを目指す。 人の自由移動からまずは議論が進められているが、Visa Protocolは遵守状況が悪く、 Free Movement Protocolは未発効。

準備中 2018年までに貨幣同盟への移行を目指す。 Monetary Instituteの設立や中央銀行の統合につき議論はされているものの進捗は遅い。 移行目標時期に現実味がない。 目標なし 具体的な目標設定は行われていない。 -自由貿易圏 1 関税同盟 2 共通市場 3 経済通貨 同盟 4 政治連邦 5

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16 (3) 西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の現状把握 (a) ECOWAS の概要 ECOWAS は、ナイジェリアに本部を置き、ベナン、ブルキナファソ、カーボヴェルデ、コートジボワール、ガンビア、ガーナ、 ギニア、ギニアビサウ、リベリア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、トーゴの 15 カ国が加盟してい る。域内加盟国の GDP 合計は 4 つの共同体の中で最も大きく、7202.8 億米ドルである。共同体加盟国の中で GDP 及び人口が多い 5 カ国の概要を下図に整理している。域内は英語圏、仏語圏、ポルトガル語圏に分かれて おり、それぞれの言語圏の結びつきが強いと言われている。 図表 2.1-7: ECOWAS の概要

出典:*1 World Bank World Development Indicators、*2 ECOWAS HP、外務省 HP 図表 2.1-8: ECOWAS の主要加盟国の概要

出典:*1 外務省 HP、*2 World Bank World Development Indicators (2014) ■:ECOWAS加盟国 統計データ(2014年) (※1) • 人口:3億3983万人 • GDP:7202.8億米ドル • GDP成長率(平均):12.39% • 一人当たりGDP(平均):2,120米ドル 基本情報(※2) • 設立年:1975年 • 加盟国数:15カ国 • 本部:アブジャ(ナイジェリア) • 設立経緯: 1963年に国連アフリカ経済委員会(ECA)後援 の「西アフリカ産業協力ラゴス会議」において、西アフリカ地域経済 協力のための常設機関設立に向けた暫定機関設立につき合意。 1968年には共同市場を目指した西アフリカ地域グループ結成。そ の後、西アフリカ諸国経済共同体設立協定に正式合意し、1975 年、西アフリカの域内経済統合を推進する準地域機関として設立。 • 設立目的:持続的経済開発のための基盤整備、地域内の関税 障壁の撤廃、域内・域外貿易の促進等。 ナイジェリア ガーナ コートジボワール ブルキナファソ セネガル 宗教(※1) イスラム教(北部中 心)、キリスト教(南部 中心)、伝統宗教 キリスト教(約 50%)、イスラム教 (約15%)、その他 伝統的宗教 イスラム教(約 30%)、キリスト教 (約10%)、伝統 宗教(約60%) 伝統的宗教 (57%)、イスラム 教(31%)、キリス ト教(12%) イスラム教(約 95%)、キリスト教 (約5%)、伝統的 宗教 言語 (※1) 英語(公用語)、 各民族語(ハウサ語、 ヨルバ語、イボ語等) 英語(公用語)、 各部族語 フランス語(公用語)、各部族語 フランス語(公用 語)、モシ語、ディウ ラ語、グルマンチェ語 フランス語(公用 語)、ウォロフ語等各 民族語 実質GDP成長率 (%)(※2) 6.3 4.2 9.0 4.0 3.9 一人当たりGDP (USD)(※2) 3,203.3 1,442.8 1,545.9 713.1 1,061.8 GDP (億USD) (※2) 5,685.1 386.5 342.5 125.4 155.8 人口(千人) (※2) 177,476.0 26,786.6 22,157.1 17,589.2 14,672.6 面積(千㎢) (※2) 910.8 227.5 318.0 273.6 192.5

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17 (b) ECOWAS の統合進捗と影響度 加盟国では、関税同盟移行までは、自由貿易を域内で推進するプログラムである、Trade Liberalisation Scheme (ETLS)を基盤として統合が進められてきた。マイルストーンであった関税同盟移行が 2015 年に達成さ れたことにより現在は、勢いが強まっている。移行後間がなく、まずは域外共通関税を段階的に導入している状況で ある。共通市場や経済通貨同盟には移行していないものの、次ステップへ向け、具体的な検討がなされている。例 えば、加盟国国民の域内他国でのビザなしでの入国を可能にする ECOWAS パスポートが既に導入されている。単 一通貨については、仏語圏で既に導入済み1であり、さらに域内全体に「ECO」という単一通貨を導入すべく、準備 を進めている。 図表 2.1-9: ECOWAS の統合進捗と影響度 出典:*1 外務省、国際協力機構、日本貿易振興機構、 *2 PwC 現地オフィスヒアリング、現地インタビュー結果による

1 仏語圏の西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)では CFA フラン(Franc des Colonies Françaises d'Afrique)が導入されている。 ステータス 現状(ルールレベル) 現状(実施レベル) 設立済 1979年から、FTAが推進され、1990年より関税撤廃のプロセスが開始した。 予定よりも遅延したが、FTAは設立され、域内関税の撤廃は進んでいる。 移行済 2015年1月から対外共通関税が導入され、関税同盟に移行した。 履行開始から時間がたっておらず、進捗は明らかでないが、加盟国の意欲は強い。 準備中 2014年までの設立を目指す計画であった。新たな目標年は未定。 ECOWASパスポートが導入済であるように人の自由移動は進展がみられる。 準備中 2020年までに全15加盟国においてECOを導入するという目標を設定している。 ECO導入の進捗は遅い。仏語圏の西アフリカ経済 通貨同盟(UEMOA)ではCFAフランが導入済。 議論は行われているが、ECOWAS全体での通貨 統合の2020年までの達成には課題が残る。 目標なし 具体的な目標設定はなし。 停戦監視グループ、紛争予防・管理・解決・平和維持・安全保障メカニズムの設置の計画あり。経 済統合と同時並行で準備が進んでいる。 自由貿易圏 1 関税同盟 2 共通市場 3 経済通貨 同盟 4 政治連邦 5

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18 (4) 南部アフリカ開発共同体(SADC)の現状把握 (a) SADC の概要 SADC は、ボツワナに本部を置き、南アフリカ、アンゴラ、ボツワナ、レソト、マラウィ、モーリシャス、モザンビーク、ナミビ ア、コンゴ民主共和国、セイシェル、スワジランド、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ、マダガスカル(資格停止中) の 15 カ国が加盟している。そのうち、南アフリカ、ボツワナ、レソト、ナミビア、スワジランドの 5 か国は南部アフリカ関税 同盟(Southern African Customs Union:SACU)にも加盟している。共同体加盟国の中で GDP 及び 人口が多い 5 カ国の概要を下図に整理している。南アフリカ共和国の GDP は地域全体の約半分であり、同国と その他の国では、経済構造が異なる。

図表 2.1-10: SADC の概要

出典:*1 World Bank World Development Indicators、*2 SADC HP、外務省 HP 図表 2.1-11: SADC の主要な加盟国の概要

出典:*1 外務省 HP、*2 World Bank World Development Indicators (2014) ■:SADC加盟国 統計データ(2014年)(※1) • 人口:3億1273万人 • GDP:6,840.8億米ドル • GDP成長率(平均):4.68% • 一人当たりGDP(平均):2,187米ドル 基本情報(※1) • 設立年:1992年 • 加盟国数:15カ国 • 本部:ハボロネ(ボツワナ) • 設立経緯: 1980年に、アパルトヘイト体制下の南アフリカ旧政 権の経済的支配からの脱却を目的とし、SADCの前身である南部 アフリカ開発調整会議(SADCC)が発足。アパルトヘイト撤廃後の 1992年に現名称に改称。 • 設立目的:域内の平和・安全保障、政治、開発と貧困削減分 野での協力を通じた地域経済統合。 南アフリカ共和国 タンザニア コンゴ民主共和国 アンゴラ モザンビーク 宗教(※1) キリスト教(約 80%)、ヒンズー教、 イスラム教 イスラム教(約 40%)、キリスト教 (約40%)、土着 宗教(約20%) キリスト教(85%)、 イスラム教(10%)、 その他伝統宗教 在来宗教(47%)、 カトリック(38%)、 プロテスタント (15%) キリスト教(41%)、 イスラム教(18%)、 原始宗教 言語 (※1) 英語、アフリカーンス 語、バンツー諸語 (ズールー語、ソト語 等)等計11の公用 語 スワヒリ語(国語)、 英語(公用語) フランス語(公用 語)、キコンゴ語、チ ルバ語、リンガラ語、 スワヒリ語 ポルトガル語(公用 語)、その他ウンブン ドゥ語等 ポルトガル語 実質GDP成長率 (%)(※2) 1.5 7.0 9.0 3.9 7.4 一人当たりGDP (USD)(※2) 6,477.9 998.1 440.2 5,423.6 602.1 GDP (億USD) (※2) 3,498.2 491.8 329.6 1,314.0 163.9 人口(千人) (※2) 54,002.0 51,822.6 74,877.0 24,227.5 27,216.3 面積(千㎢) (※2) 1,213.1 885.8 2,267.1 1,246.7 786.4

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19 (b) SADC の統合進捗と影響度 当初 2010 年に完了予定であった域内関税撤廃は、移行期間が過ぎた後も完了していない。域内に関税同盟 である SACU が存在していることもあり、SADC の枠組ではインフラ開発や普通選挙の普及等、政治・開発面での 成果の方が目立つといわれている。後続の統合ステップも進んでおらず、統合進捗は他の共同体と比較しても遅い 状況である。まずは、自由貿易圏の形成が達成されてから、次ステップ以降に進むという方針であるが、共通市場に 関連し、人の移動については、域内加盟国の国民は 90 日以内であればビザなしで移動できるという点で、進展が 見られる。 図表 2.1-12: SADC の統合進捗と影響度 出典:*1 在ボツワナ日本国大使館、国際協力機構等 *2 PwC 現地オフィスヒアリング、現地インタビュー結果による ステータス 現状(ルールレベル)(※1) 現状(実施レベル)(※2) 設立済 自由貿易圏が2008年に発足した。 Protocol on Tradeに基づき2008年に全体 の85%で関税撤廃が達成された。現在は、残 りの25%について2012年が目標とされていた が、現在も対応中である。 準備中 当初2010年の移行を目標としていた。 自由貿易圏の発足後、次ステップである関税同盟に進む予定である。 準備中 2015年までの設立を目標としていた。 特にサービスと人の自由移動で一部議論が進められている。具体的な共通市場設立に関し て進捗はない様子。 準備中 2018年の単一通貨導入を目標としている。 議論はあるが、実際には2018年の達成は難しいと思われる。中央銀行や為替、インフレなど、 基準の統一が必要。 目標なし 具体的な目標設定はなし。 安全保障、紛争解決で共通政策をつくる動きあり。待機軍を有する。 自由貿易圏 1 関税同盟 2 共通市場 3 経済通貨 同盟 4 政治連邦 5

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2.2 地域共同体の統合進捗と影響力の評価

「2.1 地域共同体の現状把握」では、各地域共同体の統合が、ルールレベル、実施レベルでどのような状況である か、実態を整理した。これを受け、各地域共同体を横並びで比較するための評価を行った。 地域共同体の統合進捗は、「ルール上、統合プロセスがどのステップまで進んでいるか」、共同体の影響力は、「決 定したルールがどの程度履行されているか」を判断基準として評価し、それを図表 2.2-1~2.2-4 のように図示した。 統合の進捗が進み、影響力も有している共同体は、次頁の図において色が塗られる面積が広くなる。 縦軸は、統合の進捗度を示している。地域共同体の統合プロセスは、①自由貿易圏、②関税同盟、③共通市場、 ④経済通貨同盟、⑤政治連邦の 5 つのステップに分類することができる。①自由貿易圏では、自由貿易協定の 締結によって、加盟国の関税や非関税障壁が撤廃される。②関税同盟では、加盟国が、域内のみならず非加盟 国に対して域外共通関税を導入して、共通の関税政策をとる。③共通市場では、人・モノ・サービス・資本の 4 つ の移動の自由が保障される。④経済通貨同盟では、単一通貨を導入するとともに、金融政策、財政政策を一体 化する。最後の⑤政治連邦では、経済のみならず政治政策が統合される。各共同体の統合の進捗状況は、上記 統合プロセスのうち、加盟国間の合意でどのステップまで設立/移行しているかで評価している。 横軸は、共同体の影響力を示している。共同体の影響力が高ければ、決定事項の履行が進みやすいと想定され るため、影響力の評価を「目標設定されているが設立/移行はまだ」「設立/移行済でありやや履行されている」「設 立/移行済であり十分履行されている」の 3 つに分類している。「目標設定されているが設立/移行はまだ」は、目標 年はおいているものの、加盟国間で具体的な議定書の締結に至っていないなど、設立/移行が未実施の段階を意 味する。「設立/移行済でありやや履行されている」は、議定書が発効しているなど、設立/移行済みではあるものの、 関税撤廃を段階的に実施している、予定年より遅延しているなど完全に履行がなされてない場合を指す。「設立/ 移行済であり十分履行されている」は、いくつかの課題は残るとしても、予定通りの履行が進んでいる場合を想定し ている。 EAC では、4 つの地域共同体のうち、唯一共通市場が設立されている。ただし、議定書の履行に向けては、例えば サービスと労働者の自由移動に関して、加盟国内で意見が分かれ、議論が難航するなど課題が残る。また、通貨 統合の実現へ向けては協議されているものの、実現に向けた具体的な施策の実施段階ではないといえる。 COMESA は、自由貿易圏に関しては課題が残るものの、FTA の実現により域内貿易が増加するなど比較的進歩 がみられる。今後の域外共通関税の導入完了が期待される。 ECOWAS は、大きなマイルストーンであった関税同盟への移行が 2015 年に実現されたことで、加盟国間で統合 に向けた士気が高まっている。関税同盟設立に時間がかかったことで、当初予定よりは遅れているものの、次ステップ へ向け、ECOWAS パスポートをはじめとして人の自由移動について統合が進むほか、単一通貨導入の具体的な 検討がなされている。 SADC は予定の移行期間が過ぎた後も、域内関税撤廃が完了していないことから、後続の統合ステップも進んで おらず、統合進捗は他の共同体と比較しても遅い状況である。

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これらの状況を比較すると、4 つの共同体の中では、EAC の進捗度及び影響力が最も高く、次に COMESA と ECOWAS が並び、最後に SADC の順と結論付けることができる。なお、COMESA と ECOWAS を比較すると、 準備段階ではあるものの人の自由移動と単一通貨導入で進歩が見られることから、ECOWAS 方がやや進んでい ると言える。 図表 2.2-1: EAC の統合進捗・影響力評価 出典:現地ヒアリング調査等をもとに PwC あらた監査法人作成 図表 2.2-2:COMESA の統合進捗・影響力評価 出典:現地ヒアリング調査等をもとに PwC あらた監査法人作成 目標設定されているが 設立/移行はまだ 設立/移行済であり やや履行されている 設立/移行済であり 十分履行されている - - 域内の関税撤廃は、2010年に 完了。 - 2010年に移行したものの、域外 共通関税は全ての輸入品には 適用されておらず例外が多いのが 現状。 - 議定書が発効し、2010年より 共通市場開始。East African Passportの導入等、人・サービ スの移動での進展がある。 2023年までの通貨統合に向け 協力するとの条項を含む議定書 が署名されたが、すべての国の履 行は困難。 具体的なルール設定自体がなさ れていない。安全保障/対テロ や早期警戒の分野での統合が 検討されている。 自由貿易圏 1 関税同盟 2 共通市場 3 経済通貨 同盟 4 政治連邦 5 目標設定されているが 設立/移行はまだ 設立/移行済でありやや履行されている 設立/移行済であり十分履行されている - - 2000年に合意、設立された。不 参加国がある等課題はのこるが、 域内貿易は増加している。 - 2009年に移行が宣言された。 加盟国による域外共通関税の 導入は国によって実施にばらつき がある。 2025年までに、人・モノ・サービ ス・資本の移動の自由を完全に 達成することを目指すが、実施に は至っていない。 2018年までの貨幣同盟移行を 目指した議論はあるものの、進 捗は遅い。 具体的な目標設定はなし。 自由貿易圏 1 関税同盟 2 共通市場 3 経済通貨 同盟 4 政治連邦 5

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22 図表 2.2-3:ECOWAS の統合進捗・影響力評価 出典:現地ヒアリング調査等をもとに PwC あらた監査法人作成 図表 2.2-4:SADC の統合進捗・影響力評価 出典:現地ヒアリング調査等をもとに PwC あらた監査法人作成 目標設定されているが 設立/移行はまだ 設立/移行済であり やや履行されている 設立/移行済であり 十分履行されている - - 1990年より関税撤廃のプロセス が開始した。遅延したが、履行は されている様子。 - 2015年1月から対外共通関税 が導入され、関税同盟に移行し たものの、日が浅く本格的な履 行はこれから。 2014年までの設立を目指す計 画であったが、現在も進行中。 ECOWASパスポートの導入等 人の自由移動を中心に進展あり。 西アフリカ経済通貨同盟では セーファーフランが導入済。ECO の導入には課題が残る。 具体的な目標設定はなし。 自由貿易圏 1 関税同盟 2 共通市場 3 経済通貨 同盟 4 政治連邦 5 目標設定されているが 設立/移行はまだ 設立/移行済でありやや履行されている 設立/移行済であり十分履行されている - 自由貿易圏が2008年に発足し た。85%について撤廃が終了し、 残りの25%について関税撤廃を 実施中。 当初2010年を目標としていたが、 未設立。FTAの達成後に次ス テップに進む予定。 域内の人の移動に関してはビザ 不要等の取り組みが実行されて いる。 2018年の単一通貨導入を目 標とする議論はある。 具体的な目標設定はなし。 自由貿易圏 1 関税同盟 2 共通市場 3 経済通貨 同盟 4 政治連邦 5

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23

2.3 アフリカ大陸全体の統合プロセスと地域共同体間の連携

1991 年に、アフリカ連合の前身であるアフリカ統一機構(

Organisation of African Unity :

OAU)の首

脳会議で採択されたアブジャ条約では、アフリカ諸国が 2028 年までにアフリカ大陸の統一通貨を導入し、アフリカ 経済共同体(African Economic Community:AEC)を創設することを謳っている。この条約では、まず小さ な単位での地域共同体を設立し、その後徐々にそれらを統合する形で AEC の創設を目指すアプローチが示されて いる。下図の通り、具体的な目標達成に向けたステップとして、6 つの段階が想定されている。Step1 では、当時存 在していた地域共同体の強化と地域共同体がない地域での地域共同体設立、Step2 では、地域共同体間の取 組みの調和を図りながら、各地域共同体内の関税障壁を段階的な撤廃に対する取組みが行われた。2016 年時 点では、Step3 の各共同体内での FTA 及び関税同盟を実現するための取組みを行っているところである。今後は、 STEP4 として、地域共同体間の関税システムや非関税障壁の調整と大陸関税同盟の設立が予定されている。そ の後、STEP5として、大陸共通市場の創立、STEP6 では、大陸間通貨/経済同盟及びパン・アフリカ議会の設 立に取り組む予定である。 図表 2.3-1: アブジャ条約におけるアフリカ大陸全体の統合プロセス

出典:アブジャ条約(Abuja Treaty Establishing the African Economic Community (AEC), 3 June 1991, Article 6)をもとに PwC あらた監査法人作成

このような状況の中、2012 年のアフリカ連合サミットにて、Step3 の終了年である 2017 年までに大陸自由貿易 圏 (Continental Free Trade Area: CFTA) を設立する構想が掲げられた。 CFTA 実現のための手段として、 「COMESA・EAC・SADC ブロック」「ECOWAS・ECCAS・AMU・CEN-SAD ブロック」の自由貿易圏形成が議論 されている。前者の 3 機関自由貿易圏(Tripartite Free Trade Area: TFTA)の取組みでは、より具体的な 議論が進められており、これを基礎として CFTA を作り上げることが想定されている。 大陸通貨/経済同盟及びパン・アフリカ議会の設立 Step6 2024-2028 (遅くとも2034) 既存の地域共同体の強化及び地域共同体のない地域での新規設立 Step1 1994-1999 地域共同体間の活動の調和及び域内の関税/非関税障壁の段階的撤廃 Step2 2000-2007 各地域共同体でのFTA及び関税同盟の設立 Step3 2008-2017 地域共同体間の関税システムや非関税障壁の調整及び大陸関税同盟の設立 Step4 2018-2019 大陸共通市場の設立 Step5 2020-2023

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COMESA・EAC・SADC ブロックでは、欧州連合(European Union:EU)や北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement:NAFTA)より大規模な、1 兆ドル以上かつ 6 億 2500 万人の GDP を包摂する枠組みを目指すため、2015 年 6 月に TFTA の合意が署名された。①自由貿易特区の設立,②運 輸交通及び貿易の促進、並びに③インフラ開発の 3 点が優先施策である。今後、26 か国からの批准を持って発 効する。 ECOWAS・ECCAS・AMU・CEN-SAD ブロックでは、2013 年 12 月に第一回会合が開催された。会合では、イ ンフラ、産業化、貿易自由化、自由移動、平和及び安全分野での統合が提案された。先行する TFTA を模して、 地域共同体間で自由貿易圏の交渉が開始される予定である。 図表 2.3-2: 地域共同体間の連携に向けた動き

出典:African Union “Modalities for the Creation of a Second Bloc of RECs – Concept Note” (2013)、EAC, SADC, COMESA "Communiqué Of The Third COMESA-EAC-SADC Tripartite Summit" (2015)ヒアリング調査等 をもとに PwC あらた監査法人作成 AMU CEN-SAD ECCAS ECOWAS SADC COMESA EAC ・2015年6月にTFTAの合 意が署名された。今後、26 か国からの批准を持って発 効する。 ・EUやNAFTAより大規模 な、1兆ドル以上かつ6億 2500万人のGDPを包摂す る枠組みを目指す。 ・①自由貿易特区の設立, ②運輸交通及び貿易の促 進,並びに③インフラ開発の 3 つのエリアを優先施策とす る。

・The Tripartite Task

Force(TTF)会合が年 に 2 回の割合で開催される。 COMESA・EAC・SADC ブロック(Tripartite) ECOWAS・ECCAS・ AMU・CEN-SAD ブロック ・先行するTFTAを模して、 地域共同体間で交渉が開 始される。 ・2013年12月に第一回会 合が開催された。 ・会合では、インフラ、産業 化、貿易自由化、自由移 動、平和及び安全分野で の統合が提案された。

2017年大陸自由貿易圏

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25

2.4 地域共同体の課題と施策

(1) 課題分類 インタビューを通じて、地域共同体が抱える様々な課題が明らかになった。地域共同体の域内統合を妨げるこれら の課題は大きく「①条約/議定書の国内法化・履行」「②非関税障壁」「③事務局の運営」「④治安情勢」「⑤そ の他」の5つに分類できる。 図表 2.4-1: 地域共同体の抱える課題 出典: PwC 現地オフィスヒアリング、現地インタビュー結果等をもとに PwC あらた監査法人作成 地域レベルの決定事項が加盟国によって履行されない。 検問・手続き等関税以外の様々な手段により自由な貿易が妨げ られている。 組織構造、財政、人的資源などに限界がある。 政情不安の残る国やイスラム過激派組織の活動がみられる。 ―

条約/議定書の

国内法化・履行

非関税障壁

事務局の運営

治安情勢

その他

① ② ③ ④ ⑤

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26 (2) ①条約/議定書の国内法化・履行にかかる課題と施策例 条約/議定書の国内法化・履行には、いずれの共同体にも共通して「域内格差」「例外品目の設定/自国産業の 保護」「主権/法的拘束力の欠如」「遵守状況の管理不足」の課題が存在している。 (a) 地域内格差: 加盟国の中でも、発展が進んでいる国や金銭的に余裕のある国は、条約/議定書の履行が進む傾向にある。域内 の格差は、足並みをそろえることが重要となる経済統合にとって大きな課題の1つである。例えば、ECOWASではナ イジェリア等といった大国が地域共同体の統一プロセスをリードしており、履行も進んでいるが、内陸国のブルキナファ ソ、マリ、ニジェールなど政情不安が相まって開発の遅れが見られる国では、履行も遅い。SADCにおいても、南アフリ カとその他の国で格差が見られる。 (b) 例外品目の設定/自国産業の保護 例外品目の設定に関して、例えばEACではStay Applicationと呼ばれる例外措置がある。各国の砂糖や米とい ったコモデティが国内で不足し、深刻な状況に陥った場合に、加盟国は域外共通関税の適用の一時的な免除を 申請することができる措置である。さらに、ECOWASでは、Import Prohibition List(輸入禁止品目リスト)が 設定されており、 ECOWASでの決定事項に関わらず、各国が輸入を禁止できる商品がある。このような例外品目 の設定があることで、地域レベルでの決定事項が加盟国によって必ずしも統一的に履行されていない状況がある。 (c) 主権/法的拘束力の欠如 また、地域共同体に参加していながら、その後の統合プロセスに消極的な国もある。例えば、エチオピアは、 COMESAの加盟国であるが、同共同体のFTAには参加していない。加盟国が条約/議定書に批准しない限りは、 法的拘束力が発生しないため、共同体は、加盟国に対して参加を促すことはできるが、強制することはできない。ま た、通常、批准には各国議会の承認を必要とするため、各国が国内法化に合意していたとしても国内の手続きに 時間を要する。 (d) 遵守状況の管理不足 さらに、各国の条約/議定書の遵守状況は、必ずしも共同体によって管理されておらず、報告/情報公開の制度が 不在であることも課題の1つである。 こうした状況に対して、各共同体は加盟の履行を管理し促進するための施策を実施している。EUの支援によって COMESAで展開されているRegional Integration Support Mechanismでは、加盟国自身が指標設定し、 同指標を達成した際にEUより資金提供がされるため、加盟国が履行する動機が形成される。EACやSADCでは、 各 国 の 履 行 状 況 を 明 ら か に す る た め に East African Common Market Scorecard 20142( EAC Common Market protocolの履行状況を管理することを目的として、683もの関連する国内法規を確認したも

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27 の)やSelf-Monitoring System(加盟国がSADC事務局に報告書を提出する仕組み)が導入されている。 但し、SADCでは各国による報告書の提出自体が遅延しているという新たな問題も発生している。 図表 2.4-2: 条約/議定書の国内法化・履行にかかる課題と施策例 出典: PwC 現地オフィスヒアリング、現地インタビュー結果等をもとに PwC あらた監査法人作成 (3) ②非関税障壁と施策例 地域共同体に共通してみられる非関税障壁には、「行政・書類手続」「加盟国や企業の認識の低さ」「検問の重 複」「基準の相違」「インフラ未整備」「問題の共有が困難」「汚職」があげられる。下記にあげる通り、一部の課題に ついては、具体的な施策が実施され、解決が図られている。 (a) 行政・書類手続き 通関時には、一般に食品衛生、出入国管理、関税など異なる担当省庁が関わり、複数の書類手続きが求められ る。こうした課題への取組例としては、国際協力機構(Japan International Cooperation Agency:JICA) も支援を提供しているワンストップボーダーポスト(One Stop Border Post:OSBP)があげられる。OSBPの導 入により、これまで国境を接する二つの国がそれぞれの国で個別に実施していた、出入国や税関の行政・書類手続 を一つの窓口で取りまとめて行うために、通関にかかる時間を短縮することができる。また、煩雑な手続きがすべての 通関に同様に適用され、効率性が落ちている事例(例えば、冷蔵品、常温、空の荷物を運ぶトラックが混在して 列に並んでいるときに、手続きの少なくて済むはずの空のトラックも長時間待たされるといった事例)もみられる。この ような課題に対しては、積み荷別に異なるレーンを作るなどの技術支援を米国が提供している。 域内格差 例外品目の設定/ 自国産業の保護 主権/ 法的拘束力の 欠如 遵守状況の 管理不足 全ての加盟国が統合プロセスに参加することが重 要であるが、発展している/金銭的余裕がある 国の間で履行が進むなど域内でばらつきが見えて いる。 自国の経済に重要な産品について、共通政策の 適用除外を認める措置が存在する。 加盟国によっては、主権をたてに地域的機関に 否定的な態度をとっている。共同体には強制力 がないため、地域レベルでの合意が各国で国内 法化するまで時間を要する。 統合の進捗状況を報告/公開する制度が確立 されていない。 SADC 自主的な履行を促進する 制度として、Self-Monitoring Systemを 導入している。同システム のもとでは、加盟国は、年 度末に議定書の履行状 況をSADCに対して報告 する。 ECOWAS 現状、関税同盟の設 立を機に統合が勢いづ く。過去には、統合に積 極的な国を集め、それら の国が他国に先行して 統合を進めることを許可 する「ファストトラックス キーム」を採用した。 COMESA Regional Integration Support Mechanism (加盟国が自ら合意して 指標を設定し、達成すれ ばEUから政府に資金提 供がされるという制度)が 導入されている。 EAC ・議定書履行促進のため 加盟国へのコンサルタント 派遣による技術的支援が 提供されている。 (Trademark East Africa: TMEAによる支援 ※1) ・遵守状況の公開のために、 Score Cardを作成してい る。(IFC、EU、TMEA等に よる支援※1) 課題 各共同体の施策例

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28 (b) 加盟国や企業の認識の低さ 様々なルールが決められていても、現場レベルでは、加盟国の政府職員や企業が共同体での取決めを理解してお らず、誤った運用が行われている場合がある。例えば、共同体で合意された関税率であり、その国も合意を批准し ているにも関わらず、政府職員の認識不足から正しい税率が適応されないという事例や、企業の担当者側も、低い 関税を適用できることを知らずに、原産地規則を取得しないまま通関を訪れるため、FTAの恩恵を受けることができ ない事例などがある。こうした課題に対して、SADCでは米国のプログラムであるSouthern Africa Trade Hubは、 貿易関連情報共有ポータルを地域レベル、各国レベルの両方で構築している。 (c) 検問の重複 現状では、トラックが陸上で商品を輸送する際、域内で何度もチェックを受けている。例えば、ECOWAS域内のガ ーナからトーゴを通過しナイジェリアまで商品を輸送するとする。その際、必ず一度トーゴのロメで積み荷を降ろし、ス キャンし、中身が確認される。次に、ナイジェリアへの入国時に、再び同じように積み荷がスキャンされる。このような手 続きは非常に時間と労働力を要し、結果として、商品の価格にコストが上乗せされる。この状況を緩和するため、 ECOWASでは、トラックの積み荷の情報ITシステムを導入し、各国への情報共有を可能とすることを計画している。 同システムでは、さらに積み荷の封(Sealing)に採番し、一度積み荷が明けられたら番号が無効になるという仕 組みを取り入れ、輸送中の不正な積載・荷卸しを防止する。これにより検問の回数が削減されて域内移動時間が 短縮されることを目指している。 (d) 問題の共有が困難 関税障壁(輸入を抑制し国内の産業を保護するために設定される高い関税によって生じる障害)と比較すると、 非関税障壁(関税以外の手段により自由な貿易を妨げる障害)は現場レベルでは経験・共有されたとしても、国 家間の議論の場では表面化しづらい。COMESA、EAC、SADCでは、現場レベルの人が、非関税障壁に直面した 際にモバイルを利用して報告できるシステムを導入している。報告された障壁は、共同体の委員会で議論され、対 策が検討されることになっている。

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29 図表 2.4-3: 非関税障壁と施策例 出典: PwC 現地オフィスヒアリング、現地インタビュー結果等をもとに PwC あらた監査法人作成 (4) ③事務局の運営に関する課題と施策例 地域共同体に共通してみられる事務局の課題には、「限定的な役割」「予算不足」「人材(人数不足・スキル不 足)」があげられる。 (a) 限定的な役割 「(2)①条約/議定書の国内法化・履行にかかる課題と施策例」でも記載した通り、加盟国が条約/議定書の国内 法化・履行に消極的であっても、事務局は加盟国の調整役に過ぎないため、各国へ履行を強制することはできない。 また、共同体の意思決定は加盟国にゆだねられている。例えば、EU-EAC間でのEPA交渉では、EU側は欧州委 員会(European Commissionの)代表が出席したが、EAC側は、事務局に代表を送る権限がないため、 EAC代表ではなく各加盟国代表が出席した。こうした事態を踏まえ、ECOWASは、2007年に事務局から委員会 (Commission)へと改編され、プログラムの実施を担えるようになった。 (b) 予算不足 共同体では、約50%~70%をドナー拠出金に頼っている3。また、加盟国の拠出金は支払がしばしば遅延し、事 務局/委員会の運営に必要な資金が不足するという事態が生じる。こうした課題に対して、ドナーは支援金額を増 3 現地インタビュー結果及び在ボツワナ日本国大使館「SADC 概要(2015 年 10 月改訂)」http://www.botswana.emb-japan.go.jp/files/000058280.pdf 通関時の煩雑な書類やクリア ランス発効の手続き、非効率 な審査、によるタイムロス →ワンストップボーダーポスト導 入【EAC、SADC】 越境時、国内移動時に関わ らず複数回検問に止められる ことによる、タイムロス →情報共有システムの導入 【COMESA、ECOWAS、 SADC】 道路・鉄道などの交通インフラ の未整備によるタイムロス・輸 送コスト増 通関手続きや道路封鎖・検 問における不当な手数料の要 求 共同体での取決めへの理解 不足による、政府職員及び企 業による誤った運用 →貿易関連情報共有のため のポータル構築【SADC】 車軸荷重量制限の相違 重量指標、ラベル表示・品質 要求基準測量規則の相違 問題の表面化/国家間での 共有のしにくさ →非関税障壁に遭遇した際 の報告システム構築 【COMESA、EAC、SADC】 ⑦汚職

①行政・書類手続

⑤インフラ未整備 ③検問の重複 ⑥問題の共有が困難 ④基準の相違

②加盟国や企業の認識の低さ

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加させるよりも、予算の管理能力の改善を図る技術的な支援の提供による解決に重きを置いている。例えば、 EACでは、Trade Mark East Africa (TMEA)から人が派遣され、予算管理・会計管理・リスクアセスメントにつ いて支援を提供している。さらに、多数のミーティング参加による移動コストを削減するため、ビデオ会議システムが導 入されている。 (c) 人材 人材に関する課題は、人数不足とスキル不足の2つに分けることができる。正規職員の人数が不足しており、契約 のコンサルタントに頼っている。例えば、COMESAの職員は252人であり、20,000人以上を雇用している欧州委 員会と比較すると、COMESAの方がより広域をカバーするにも関わらず、圧倒的に人員が足りていないことがわかる。 こうした事態に対応するため、各国ドナーが事務局にコンサルタントを派遣し、人員強化を図るなどの対策をとっては いるものの、こうしたコンサルタントの契約は短期間で、次々と新しい人に変わるため、事務局側はコントロールしづら く、業務内容をスムーズに引き継ぐことに困難が伴う。また、職員のスキル不足も大きな課題である。人材に関する 課題に対しては、事務局/委員会へのキャパシティビルディングをはじめ、ドナー機関から人材を派遣して、トレーニン グが実施されている。 図表 2.4-4: 事務局の運営に関する課題と施策例 出典: PwC 現地オフィスヒアリング、現地インタビュー結果等をもとに PwC あらた監査法人作成 限定的な役割 予算不足 事務局は調整役のため、加盟国に条約や 議定書の履行を強制することはできない。 ドナーの支援金に依存している。加盟国の 拠出金は支払がしばしば遅れる。 Secretariat からCommissionへ組織を変更し、プログラムの実施 を担えるようになった。【ECOWAS】 ・予算管理や会計管理、リスクアセスメントの支援が提供されている。 (TMEAによる支援)【EAC】 ・資金の使い方を見直し、事務局内で不必要なミーティングを削減す るために、ビデオ会議システムが導入されている。(TMEA、EU等によ る支援)【EAC】 正規職員の数は十分ではなく、コンサルタ ントに多く頼っている。しかし、コンサルタント は短期雇用のため、業務内容の引き継ぎ が困難。 事務局に対するキャパシティビルディング、ドナー機関からの人材の送り 込みが行われている。【COMESA、EAC、ECOWAS】 人数 不足 スキル 不足 スキルのある人材を採用するのは困難。 課題 施策例

図表 1.3-1:本調査の対象とする地域共同体(Regional Economic Communities:REC)
図表 2.1-2: EAC 加盟国の概要
図表 2.1-4: COMESA の概要
図表 2.1-6: COMESA の統合進捗と影響度
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参照

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