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地域共同体統合の進捗は進んではいるものの、未だ、外国企業に魅力ある「地域共同体市場」が存在するわけで はない。そこで、今回は、各地域共同体における主要国における優先市場を抽出(「2.5.(1)主要国における 市場機会とリスク」)したうえで、優先市場に進出し、域内に拡大するステップを検討(「2.6.優先市場への企業 参入シナリオと課題」)した。また、「地域共同体」としては、域内に開発計画を有している。こうした計画のうち、日 本企業の現地進出にとって参考となる情報を取りまとめた(「2.5. (2)地域共同体別市場機会」)。

(1) 主要国における市場機会とリスク 各地域共同体における市場機会を整理するに 当たり、まずは各共同体の中で GDP の大きな 国であるエチオピア、ケニア、タンザニア、南アフリ カ共和国、アンゴラ、ナイジェリア、ガーナ、コート ジボワールの計 8 か国(但し北アフリカ諸国及 びセキュリティ上懸念の高い国を除く)を対象 に、市場機会及びリスクの整理を行った。限られ た調査期間で多数の国にまたがる調査を効率 的に行うため、各国政府の産業開発プランや

IFC の各国の産業別成長予測等の情報、PwC 現地法人へのヒアリングから、各国の有望産業を抽出し、産業分 類を整理した。次に、それらの産業分類毎に、①市場規模(GDP 値)、②国内産業に占める規模(GDP 比)、

③政策、④市場成長性、⑤その他重要情報、の観点で情報を整理した。さらに、②~⑤の項目について、(a)生 産拠点としての魅力度、(b)販売先としての魅力度、について図表 2.2-2 に示す基準で評価を行い(②は(b)の み)、高い評点となった産業を市場機会が大きい産業として抽出した。最後に、現地インタビュー調査にて、これらの 情報を確認し、必要に応じて追加・修正を加えた。

エチオピア(COMESA6):アフリカ第 2 位の人口でマーケットボリュームが期待できる上、不正や賄賂が少な くビジネス環境として好ましい。農産品・食品加工、繊維・衣料、肥料等の分野に市場機会がある。

農産品・食品加工では、米国とのアフリカ成長機会法(The African Growth and Opportunity Act:

AGOA)や EU との EBA(Everything but Arms)イニシアチブによる輸出機会の拡大が見込まれる。また、

国内市場についても、全体の経済成長に下支えされた拡大が見込まれる。繊維・衣服でも、同様に経済成長によ る国内市場の拡大が見込まれる上に、Textile and Apparel Industry Implementation Strategies and Programs を通じた投資促進、人材育成政策により、産業拡大が後押しされることが期待される。肥料産業では、

2019-20 年度までに生産量を倍増させる計画(200 万 MT)があり、これに向けた政策として、Chemical Sector Expansion and Diversification Program を通じたクラスター設立が予定されている。

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括弧内は当該国が参加している地域共同体をさす。

図表 2.5-1: 評価基準

① 国内産業に占め る規模 (GDP 比)

5%以上:1 5%未満:0

② 政策 明確なインセンティブがある場合:2 それ以外のメリットがある場合:1

③ 成長性 ポジティブな記載:1

IFC 予測値が 7%以上の場合:1 記載なし、変化なし:0

④ その他 プラス要因:1 有用情報なし:0 出典:PwC あらた監査法人作成

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その他の有望産業として、皮革・皮革製品、金属・金属製品、石油・ガス、包装、バイオテクノロジー(遺伝子組換 作物生産)、電子機器、日用品(人口増加に伴う需要拡大)が挙げられる。

一方、COMESA FTA に不参加など経済が開放的でない点、労働者のスキル不足、停電と高い輸送コスト、外貨 不足等がリスクとして考えられる。

ケニア(COMESA、EAC):隣国と比較し市場が開放的で経済統合にも積極的である。建設・住宅・建設材、

農産品・食品加工、繊維・衣服、BPO(Business Process Outsourcing)等の分野に市場機会があ る。

建設・住宅・建設材の分野では、経済成長と住宅不足(需供ギャップ約 20 万戸)により大きな国内市場機会 がある。建設業は過去 10 年で年平均 10%の成長を示している。また、現状輸入でまかなっている 4.85US ドル の加工鋼鉄材に関して、政府調達による国産材への切り替えが計画されており、鉄鋼材の国内加工拠点の拡大 が予想される。農産品・食品加工では、既存の大きな国内市場が魅力であるのに加え、政府による域内ハブとして のインフラ整備計画があることから、今後のさらなる発展に期待ができる。繊維・衣服では、同産業が盛んなバングラ デシュに比べ、生産拠点としてのコストメリット(約 9%程度)があるため、現状では米国への輸入機会があるが、

更に、家計支出増加による国内市場の拡大も期待できる。BPO に関しては、現状英国と比較し 70%、南アフリカ 共和国と比較し 50%程度のコストメリットがある。

同国におけるリスクとして、政府汚職と政治混乱による治安悪化に注意が必要である。

タンザニア(EAC、SADC):政治的に安定しており、広大な土地と港を保有している。繊維・衣料、農産品・

食品加工、肥料等の分野で市場機会がある。

繊維・衣料分野に関しては、アフリカ最大規模のコットン生産国かつ世界 4 位のオーガニックコットン生産国であり、

国内消費市場も大きい。コーディネーションセンター、投資情報センターの開設や、繊維業に特化した SEZ の建設 が予定されており、外国投資促進に積極的である。農産品・食品加工に関しては、具体的なインセンティブとして、

現地産食用油の付加価値税の撤廃が予定されている。また、カシューナッツ事業家組合の設立による国外向けブ ランディング強化を政策として進めていたり、乳牛品種改良による乳製品生産性向上の支援計画があったりする。

肥料分野については、東アフリカで唯一の天然ガス埋蔵国であり、肥料生産のポテンシャルが高い。政策として、

Mtwara SEZ や Tanga SEZ における肥料・化学産業集積計画がある。また、農民向けの肥料使用の啓蒙によ る国内の肥料消費拡大も期待できる。

その他の有望産業として、自動車(定期車検制度の導入予定)、深海天然ガス、金融サービス、が挙げられる。

一方、同国におけるリスクとして、各種ビジネス許認可取得のハードルが高く、労働者の英語普及率が低いことに留 意が必要である。

南アフリカ(SADC):高い産業水準を誇り、アフリカの拠点として認知されている。繊維・衣料、農産品・食品 加工、金属・金属製品、自動車、等の分野で市場機会がある。

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繊維・衣料の分野では、Preferential Public Procurement Framework Act により、2012 年より政府調 達を 100%国内産へ切り替えたり、Clothing and Textile Competitiveness Programme によりクラスター 強化政策を推進したりしており、国内市場の拡大が期待される。また、国外向けの靴製品やワニ皮の輸出が急激 に伸びている。農産品・食品加工では、2015 年よりガソリンに国産のバイオエタノールを 2%混入することが義務化 され、原材料となるソルガム・大豆の生産加工市場が拡大すると想定される。また、花卉や水産品のアジア・アフリカ 向け輸出、菓子やワインなど高付加価値商品の BRICs・中東向け輸出が拡大している。金属・金属製品では、

政府調達の 75%を国産に切り替える計画や、Gold Loan Scheme と呼ばれるジュエリー製造業者支援の仕組 み等、国内製造業に対するインセンティブが存在する。他方、輸入品との競合や輸出に際しての障壁が課題として 残る。自動車産業に対しては、国内製造拠点拡大に対する政府による強い支援が存在する。例えばメルセデスベ ンツの新規組立工場に政府から 16 億南アフリカランドの投資が行れた。こうした政策の効果もあり、輸出車両数は 2010 年から 2015 年の間で約 20%増加した。

その他の有望産業として、化粧品(製造・輸出の急増)、再生可能エネルギー(国内の大幅な電力不足による 新たなエネルギー源の検討)が挙げられる。

一方、同国におけるリスクとして、ストライキ、政治混乱・社会不安等の治安リスク、電力不足、人件費の高騰、に 留意が必要である。

アンゴラ(SADC):紛争から徐々に復興を遂げつつあるアフリカ第 2 位の産油国である。農産品・食品加工、

鉱物、繊維等の分野に市場機会がある。

農産品・食品加工に関しては、現状食糧の純輸入国であるが、International Fund for Agricultural Development (IFAD)や G8 各国から関連投資が増加している。内戦によって衰退していた水産加工業は、近 年回復が著しく、沿岸地域で年率 96%、内地で年率 65%の伸びを示している。また、同国は豊かな鉱物資源を 有し、特に金、重晶石、鉄、銅、コバルト、大理石等が豊富に埋蔵されているとみられているが、現状ほとんど採掘 が進んでいない。こうした資源の利用を政府は推進しており、例えば Catoca 高山の第二フェーズの採掘への同国 政府及びロシアの銀行による大規模投資の計画等が存在する。繊維分野では、国際協力銀行(Japan Bank for International Cooperation:JBIC)と同国政府によるによる当該産業業者向けの信用協定(いずれも 180 億円超)が 2 件締結される等、日本との関連性も深い。

その他の有望産業として、肥料・化学薬品・医薬品、建設・住宅・建材、木材・家具・紙製品、卸・小売り等が挙 げられる。

一方、同国のリスクとしては、政府による外国投資コントロールが強い点、紛争後の治安リスク、物価の高騰、等に 留意が必要である。

ナイジェリア(ECOWAS):アフリカ 1 位の GDP と人口を誇る巨大市場であり、建設・住宅・建設材、農産 品・食品加工、石油・ガスの分野に市場機会がある。

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