氏 名 すうぇいん あんそにー
Swain Anthony
学 位 の 種 類
博士(医学)
報 告 番 号
甲第
1705号
学位授与の日付
平成
30年
3月
15日
学位授与の要件
学位規則第
4条第
1項該当(課程博士)
学 位 論 文 題 目
DBA Lectin Binds to Highly Proliferative Mouse Erythroleukemia Cells
(DBA レクチンは増殖期マウス赤芽球性白血病細胞に結合する)
論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授
白澤 専二
(副 査) 福岡大学 教授
田村 和夫
福岡大学 教授
松永 彰
福岡大学 講師
小柳 緑
内 容 の 要 旨
【目的】
白血球系細胞の分化過程において、造血幹細胞はリンパ球系、骨髄球系の造血前駆細胞 を経て、その後成熟細胞へと分化・成熟する。染色体異常や転写因子の異常は、未熟な 造血細胞の過形成もしくは異形成を引き起こし、幹細胞非依存性の急性白血病である急 性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、幹細胞依存性の慢性白血病である、
慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)などの疾病を誘導する。白血病細胞 は正常細胞と比べて増殖能力が高い細胞であり、増殖能力の程度によって、病態の進 行、予後予測、治療薬耐性に影響を及ぼす。
近年の主流な細胞増殖の解析法として、Ki-67 および carboxyfluorescein succinimidyl
ester (CFSE)がある。Ki-67 は G0 期以外の細胞に発現し発現量と腫瘍の悪性度には正の
相関が認められ、FACS、ICC、ICH、Immunoblotting 等、様々な使用法がある。CFSE は蛍
光色素として細胞質の中に長時間とどまり、長期的な動的挙動をトレースできる試薬と
して一般的に用いられている。しかし、以上のような解析に関しては、抗 Ki-67 抗体で
染色する為の細胞固定が原因で細胞の生存率が低下することや、CFSE は毒性を持つこと
等の問題がある。このような問題に対処するため、我々はその他の方法の探索を試み
た。レクチンは糖鎖を特異的に認識して結合するタンパク質の総称であり、様々な細胞
の表面に発現し、植物から動物まで幅広く存在するタンパク質である。レクチンはその
種類により特定の炭水化物に結合する事から、細胞表面の表現型に基づいた細胞分画に
用いられてきた。例えば、植物由来のレクチンは血液型の判定に使われる。そこで、
我々はレクチンの種類によっては、細胞増殖能の違いを毒性を抑えつつ検出できるので はないかと仮定した。本研究では、植物由来の種々のビオチン結合レクチンを利用し、
毒性が少なく、増殖能の検出が可能な分画法を検討した。
【方法】
実験にはマウス Friend 白血病細胞株 F5-5.F1 を使用した。Canavalia ensiformis (ConA)、
dolichos biflorus (DBA)、 erythrina cristagalli (ECA)、 lens culinaris (LCA)、
phaseolus vulgaris (PHA-E4)、arachis hypogaea (PNA)、 ulex europaeus (UEA) 、 triticum vulgaris (WGA)の計8種の植物由来レクチンをビオチン標識して細胞に添加後、
FACS (fluorescence-activated cell sorting)によりその結合を解析・分画した。また、
分画化した細胞を採取し、メイグリュンワルドギムザ染色による形態観察、細胞増殖関連 遺伝子である myelocytomatosis oncogene ( Myc )、 cyclin D1 ( Ccnd1 )、 cyclinD2 ( Ccnd2 ) のリアルタイム PCR による発現解析、及び Ki-67・MTS 法による増殖活性の解析を行った。
【結果】
8種類のレクチンのうち、DBA、LCA もしくは PHA-E4 について、F5-5.F1 細胞を利用した FACS 解析において、結合の強い(
High), 中間(
Int)および、結合しない(
Neg)細胞のように、
異なるパターンを示した。また分画した細胞をメイグリュンワルドギムザ染色後に観察し たところ、細胞周期特異的な形態に違いが見られた。特に、DBA
Highの分画において、DBA
Intと DBA
Negの分画と比べて Myc 、 Ccnd1 、 Ccnd2 の遺伝子発現が高かったが、その他の LCA と PHA-E4 の分画では、増殖関連遺伝子の発現に差は見られなかった。また、DBA 結合パ ターンと Ki-67 染色および MTS アッセイの結果が相関しており、DBA の結合が高い細胞は、
増殖活性が高い結果となった。
【結論】
DBA による F5-5.F1 細胞の標識は、フローサイトメトリー法を用いた増殖期細胞集団の分 画に有効であった。また、本法を用いる事で、細胞を生きたまま分画できる事から、将 来的な白血球細胞における増殖マーカーの理解と増殖に関する分子生物学的研究への貢 献が期待される。
審査の結果の要旨