判例評釈
・
はじめに
外国為替証拠金取引(FX ForeigneXchange)とは、顧客が相手方(外国為替証拠金取引取扱
業者)に対し、一定の証拠金を預け、インターバンク・レートを指標にして、証拠金の何倍もの金額の外国為替取引
をし、為替差益と金利差益の取得を目的とするものである。外国為替証拠金取引は、平成一〇年四月、外国為替およ
び外国貿易法が改正され、外国為替取引を行うことが一般的にも可能となったことに起因して金融派生商品の一つと
して登場した。FX(外国為替証拠金取引)では、レバレッジ(てこの原理)を利用することにより、証拠金以上の
外貨を取引することができる。レバレッジの倍率を高くするほど為替相場の変動によるリスクは高まる 1。
FXは極めて投機的な金融商品であり、その射幸性の高さから公序良俗に反するとまで言い切った裁判例も存在す
るほどである 2。レバレッジの効果は利益に対しても、損失に対しても、平等に作用することになる。したがって、こ
の取引は、ハイリスク・ハイリターンを十分に理解した投資家にとってのみ適した金融商品であるといえる。
しかし、このハイリスクな要素を持った取引を知識経験の未熟な者に対して、誤認の生じるような説明をしたり、
あるいは十分な説明をなさず商品への理解を与えないままに取引を行ったりする業者が後を絶たないことも事実であ
マルチ型ファンド取引における代理店の責任
松 本 博
マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本)
る。 二〇一〇年八月一日より最大レバレッジ五〇倍の規制が行われ、二〇一一年八月一日より、最大レバレッジ二五倍
の規制が金融庁より導入されたことで、従来よりも射幸性が減じられはしたものの、それでもFXに関するトラブル
は絶えることがない。
本稿では、東京高裁平成二六年七月一一日判決(判時二二四〇号六二頁、先物取引裁判例集七一号三二六頁 https:
//hanrei.d1-law.com/dh_h/hanrei_detail?1&hriid=28230207&noPopFlg=0&SEARCH_RESULT_POP=search_
list)の検討を行う 3。
本件では、FX取引に関する出資を行い自動売買システムで運用することにより月三%ないし五%もの運用益を得
るという経済的合理性のない危険を伴う取引に関し、自らも騙されて、そうした取引を行いながら、その下位代理店
となって第三者に出資を勧誘した者が果たすべき注意義務の程度が争点となった。
東京高裁は、経済的合理性に反し、本来であれば疑念を抱くべきであるような取引スキームにつき、自己責任の下
で自ら危険な出資をすることにとどまらず、積極的に当該スキームにおける下位代理店となり、他の者に対して勧
誘、取引の媒介等を行う者には、あらかじめ、取引の安全性や資金保全の確実性に関する必要な調査・確認をすべき
信義則上の注意義務があることを認め、それにもかかわらず当該義務を果たさずに他者に勧誘・媒介等の行為を行っ
た場合には、そこに過失が認められるとの判断を下している(確定)。
判例評釈
[事実概要]
A社は、コンピュータネットワークシステムの企画・設計・開発および販売保守等を目的とする株式会社であり、
平成二〇年四月頃、五〇〇万円を支払って、清算会社B社の下位代理店となっていた。本件における代理店契約の内
容は、D社(香港法人)が運用主体である外国為替証拠金取引(FX取引)自動売買システム(以下、「本件システム」
という)の新規利用者の紹介等の業務に関する業務委託契約であった。A社は、本件システムの解説書を作成し、こ
れを顧客への送付することや、出資のための口座開設の代行等を行っていた。
Y 1は、平成二〇年冬頃、A社の取り扱う本件システムを知って、A社に対して一五万円を支払うことで、同システ
ムを利用したFX取引を始めた。更に、A社に総括代理店契約金二七万円を支払って本件システムの新規利用者の紹
介等の業務に関する業務委託契約を締結し、Aの下位代理店となった。その後、平成二一年九月五日に改めて総括代
理店契約金五四万円を支払って、Aの下位代理店となる契約を継続した。Y 1は、自らのホームページ上で本件システ
ムを新規顧客に紹介するほか、情報商材である「デイトレ勝率実績一〇〇%FX低リスク資産運用プログラム」と
題する冊子(以下、「デイトレ勝率プログラム」という)を作成した。同冊子は、Y 1の妻であるY 2がその販売を行っ
た。そして、その冊子の中で、投資プロ集団であるBファンドが本件システムを用いたFX取引を行っており、勝率
一〇〇%を誇るプロが代行していること(月に三.五~四%複利で増え続けていること)、資金は世界有数の先物ブ
ローカーであるC社で分別管理をしているので安心であること、などを説明していた。なお、A社は、業務の対価と
して、Y一が集めたデポジット総額の一.五%をY 1に支払う旨の約束となっており、これに基づいてY 1は、A社から
一七〇万円程度のフィー(手数料収入)を得ていた。
マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本) 平成二〇年から二二年にかけて、XはYからのホームページ等を通じた勧誘により、本件システムを活用したFX 11
取引を行うこととしまた、X 2・X 3・X 4(以下、「Xら」という)はY 1の妻であるY 2からのデイトレ勝率プログラムの 販売等を通じた勧誘により、同様にFX取引を行うこととし、それぞれD社に資金提供を行った(X 1が二五〇万円余 り、X 2が二五〇万円余り、X 3が六〇〇万円余り、X 4が五〇〇万円余り)。当該取引においては、顧客はインターネッ
トの画面を通じて、その運用実績を閲覧することが可能であり、同画面から出金を申し込めば配当金を予め顧客が登
録した銀行口座に送金することになっていたが、平成二二年七月頃、ユーザー管理画面から出金要請を行っても出金
ができない状況となった。
実際には、そもそもD社は、X 1、X 2らが提供した資金をFX取引に運用しておらず、C社による管理なども行われ
ていなかった。
こうしたことから、Xらは、A社および同社の関係者等に加えて、A社の下位代理店であるY 1、Y 2に対する損害賠
償訴訟を提起することとなった。
原審
(東京地判平二五
・二
・二二先物取引裁判例集七一号二七四頁
https://hanrei.d1-law.com/dh_h/hanrei_、 detail?2&hriid=28230205&noPopFlg=1)は、Y 1については過失があるとして、A社との共同不法行為責任を認め(た だし、三割の過失相殺を認める)、一部請求認容をした一方、Y 2については、勧誘行為は認められるものの過失は認 められず、不法行為は成立しないとして、請求を棄却した。そこでX 1、X 2らが、請求棄却部分を不服として控訴し、
Y 1も請求認容部分を不服として控訴した。
ただし、A社および同社の関係者等に対する部分は、別途、控訴がなされず確定したり、控訴後に取下げがなされ
たりした結果、控訴審での判決対象は、Y 1およびY 2に対する請求に限定された。
判例評釈
[判 旨]
Y 1の責任につき、「Y 1は、信義則上、勧誘の相手方から求められたときに提供できるだけの本件FX取引の安全性
や資金保全の確実性に関する裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を入手しておくべきであり、これを入手すること
ができないのであればA社の下位代理店となって第三者に対して本件FX取引に関する出資を行うよう勧誘すること
をしないように踏みとどまるべきであったというべきである。しかるに、Y 1は、本件FX取引に関する出資契約締結
に向けて媒介行為を行うに先立ち、あらかじめ本件FX取引の安全性や資金保全の確実性に関する裏付けとなる合理
的な根拠を示す資料を収集するために、D社の財務状況、取引の実態等について公的な資料を収集したり、信頼でき
る専門家の意見を徴したりせず、監督官庁や国民生活センター等に本件FX取引に関する出資の危険性について照会
したりすることもなく、本件FX取引の安全性や資金保全の確実性に関する裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を
収集しないまま、本件FX取引に関する出資契約締結に向けて媒介行為を行ったのであるから、上記のとおり本件F
X取引の安全性や資金保全の確実性に関する必要な調査確認をすべき信義則上の注意義務を果たさなかったというべ
きであって、Y 1は上記注意義務を果たさなかった過失があり、不法行為による損害賠償責任を免れないというべきで
ある。」
Y 2の責任につき、「Y 2は、単に商品の梱包、発送等の事実行為を行ったというにとどまらず、自らの名において、
情報商材を扱うホームページにデイトレ勝率プログラムを掲載して販売しており、このような積極的な行為を自ら行
う以上、……デイトレ勝率プログラムを販売する相手方から求められたときに提供できるだけの本件FX取引の安全
性や資金保全の確実性に関する裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を入手するようにY 1に求めるべきであり、これ
マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本)
を入手することができないのであれば、自らの名において、情報商材を扱うホームページにデイトレ勝率プログラム
を掲載して販売することをしないように踏みとどまるべきであったというべきである。しかるに、Y 2は、Y 1に上記の
ような本件FX取引の安全性や資金保全の確実性に関する裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を入手するように求
めることをしないまま、自らの名において、情報商材を扱うホームページにデイトレ勝率プログラムを掲載して販売
し、もって、第三者に対して本件FX取引に関する出資を行うよう勧誘したものといわざるを得ない。」
として、Y 1、Y 2のそれぞれについての不法行為責任を認めた。
[先例・学説]
本事案は
121関連ファンド事件として社会問題となった国際的な詐欺事件から派生したものである。本件では、D社
が、重層的な代理店を用いた組織的勧誘によって、FX取引の運用資金名目で資金を集めたものの、実際には、資金
を適正に運用せずに代理店へのコミッションフィーなどに充てられていた。
報道によると、外国為替証拠金取引(FX)で運用し、月利三%以上の配当が得られるなどとして出資金を集めた
中国・香港の国際投資事業会社が、運用資金をグループ企業の事業に流用していたことが二六日、関係者への取材で
分かった。グループ傘下の代理店が日本国内で組織的に出資者を勧誘し、被害額は二〇〇億円になるとみられる。現
在は元金の返還にも応じていない状況が続いており、国際的な大型詐欺事件に発展する可能性が出てきた。
出資者から被害相談を受けた東京弁護士会所属の弁護士は被害対策弁護団を結成。一部の出資者は投資会社やグ
ループ企業、代理店への損害賠償請求の準備を進めており、詐欺罪や横領罪などでの刑事告訴も検討している。
判例評釈 問題の投資会社は、香港に法人登記がある「
121インターナショナル・インベストメント・リミテッド」。関係者に
よると、同社は自社で開発したFX自動売買ソフトを利用した資金運用により、複利が元本に毎日加算され、月利
三%以上の配当が恒常的に得られるなどと説明し、日本国内にある複数の代理店を通じて多額の資金を集めたとされ
る。(二〇一〇.一〇.二七産経新聞)
記事でも触れられている通り、被害総額が二〇〇億円超の大規模な詐欺事件であり、本事件以外にも多くの訴訟が
提起されている(「
121http://www.121fund-higaibengodan.com/関連ファンド被害対策弁護団」のHP()参照)。 4
こうした状況の下で、東京高裁においては、組織の末端に位置付けられる下位代理店であるY 1およびその妻Y 2の責 任が問われることとなった。そして本判決では、Y 1およびY 2に対し、「FX取引の安全性や出資する資金保全の確実
性に関する裏付けとなる合理的な根拠を調査する注意義務」、つまり、「信義則上の調査確認義務」があると認定した
うえで、それを果たさずに出資の勧誘や媒介をしたY 1・Y 2の不法行為責任を認定している。
・適合性原則と説明義務
不当な取引に対する被害者救済としては、最近では、適合性原則を適用した救済が目を引く 5。適合性原則について
は、専門業者がそれぞれの投資家の属性(知識・経験・財産等)に適合した形で勧誘・販売を行わなければならない
とされる広義の適合性原則が唱えられる一方で、狭義の適合性原則では、勧誘・販売する商品そのものに基づいて、
投資家の経験・能力・資力等に応じて、どれほど説明を尽くしたとしても特定の商品についてはその勧誘・販売を
行ってならないものとされている 6。また、当該取引の特徴やリスクを十分に理解したうえで、その取引に適合する顧
客が存在しないようなタイプの商品については販売するべきではないという、販売の絶対的な禁止とも解される厳格
マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本)
な適合性原則の考え方も存している 7。こうした考え方に照らせば、本事件において、Xらの出資金が正当な運用がな
された場合でも、厳格な適合性原則の適用については争いの余地がある。
FX取引に関しての責任が問題となった事例のうち、適合性原則にかかわるものとして、札幌地判平一五・五・一
六金判一一七四号三三頁(肯定)、大阪地判平一六・四・一五判時一八八七号七九頁(肯定)、札幌地判平一六・九・
二二金判一二〇三号三一頁
(肯定)
、東京地判平一七
・二・
一八判時一九二三号六〇頁
(否定)
、東京地判平
二〇・一〇・一六消費者法ニュース七八号一九九頁(肯定)、名古屋地判平二一・四・二四判時二〇六三号六六頁(肯
定)、東京地判平二四・一・二七判タ一三九五号二一二頁(肯定)などが挙げられる。
例えば、上記札幌地判平一五・五・九は、外国為替証拠金取引を行うことを内容とする金融派生商品の販売取引で
ある本件取引は、当該商品がきわめてハイリスク・ハイリターンの商品であるうえ、取引内容自体の理解も容易では
なく、このような特性を有する商品を一般消費者に提供するオーストラリア法人およびその代理人であるYにおい
て、証券取引、商品取引において求められている注意義務と同様の義務が社会的に相当な方法で勧誘をすべき注意義
務として課せられていると解すべきであるとし、X 1がかつてYの札幌支店に勤務していたことを考えても、Yの担当
者に説明義務に違反する不法行為があったと認められるとして、Xらの請求を認容した。本件は、外国為替証拠金取
引を内容とする金融派生商品の販売取引であるが、世間的には、本件取引それ自体が詐欺的な取引として、いわゆる
悪質商法といった捉え方もされている事案である。本判決は、その詐欺性のいかんに立ち入ることなく、説明義務違
反といった点で、販売担当者の顧客に対する不法行為を認め、販売会社の使用者責任を認めている。
また、東京地判平二〇・一〇・一六は、情報商材頒布業者に対し、「外国為替証拠金取引に関する誤った理解をし
判例評釈
ている者が申込をしている可能性があることを認識していたはずであり、そうでなかったとしても少なくとも認識す
べきであり、それを前提により慎重な説明や適合性審査をすべきであるのに、…不適切な口座開設までの手順指導を
容認し、さしたる適合性審査をするでもなく、本件取引を開始させたのであり、この一連の顧客獲得行為自体が違法
である」ことを根拠とし、損害賠償責任を認めている。
大阪地判平一六・四・一五は、本件取引に適合性原則違反、説明義務違反、断定的判断の提供、両建等の違法性が
あるとのXの主張については、①外国為替証拠金取引についても、業者は、まず顧客を勧誘する際に取引の性格に照
らし、それについての知識、情報、判断力、理解能力及び取引を実行するための資力があるかどうかの調査を行い、
顧客の年齢、職業、収入、資産、経歴、学歴、外国為替証拠金取引及びその他の投機的取引経験の有無等からして不
適合と認められる場合には顧客を勧誘してはならず、Xが中国国籍をもつ留学生であり、留学先の大学での収入はな
いことなどの事実を総合すると、Xは外国為替証拠金取引の適合性を欠く、②Yには顧客が取引を開始する際にその
危険性についての正当な認識を形成するに足りる説明を行う義務があり、本件取引は、ハイリスク・ハイリターンの
取引であり、説明義務を尽くしたといえるかどうかは顧客の理解能力や属性等に鑑み判断されるべきであると判示し
たうえで、Y従業員の行為は顧客の利益を無視した違法があったとして、YはXが被った損害につきY従業員の使用
者としての責任を負うとしたが、Xが投機的取引である本件取引に強い関心を有していたこと、投機的取引に対する
積極性が認められること、Xは本件取引と同時期に数百万円程度の累積投資や投資信託等の取引を行っており本件取
引もXのかかる投資の一環であったこと、Xは本件取引の仕組み及び危険性については説明を受け、ある程度は理解
していたことなどの事情に照らすと、損害額のうち八割を過失相殺するのが相当であるとした。
マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本) 金融商品取引における内容は、キャッシュフローの移転とリスク負担の変更といった些か抽象的なものであるた
め、一般投資家がその内容を理解し、円滑に取引が行われるためには、業者側からの適切な情報提供が不可欠であ
る。取引に際しては、一般投資家は当然業者に比べて情報が劣ることから、業者から提供される情報を信頼し、これ
に強く依存せざるをえないことになる。
このため、金融商品の販売に際しては、業者側に顧客に対して一定の重要な情報を提供する信義則上の義務がある
と考えられ、金融商品の販売・勧誘に関する判例等においても、業者が適切な説明を行わないことによって、顧客が
損失を被った場合には、信義則(民法一条二項)に基づき、業者から顧客への「説明義務」があるとした上で、この
義務が果たされない場合に、不法行為責任(民法七〇九条)による損害賠償責任を認めるという判断が下されること
になる。
説明義務については、顧客にとって不利益な事実を説明しないまま契約を締結してしまうことに対する事業者の説
明義務違反という捉え方で、従来からも指摘されてきた 8。
例えば、金融先物取引において業者の説明義務違反を問うものもあり(前掲札横地判平一五・五・九など)、さら
に、金融先物取引に比べても長い歴史を有する商品先物取引については、以前から多くの裁判例が存在している。昭
和五〇年以前は、強行法規違反(例えば、受託場所の制限違反、登録外務員以外の者による勧誘、書面交付義務違反、
委託証拠金徴収義務違反、不当勧誘、一任売買、無断売買など)や公序良俗違反を根拠として、委託契約の効力を争
うものが多かったが、昭和五〇年以後は、契約の有効性を争うことなく、勧誘・取引の一連の流れの中で問題となる
点を取り上げたうえで、不法行為に基づく損害賠償を請求するのが一般的となっている 9。
このような流れは、不法行為構成を採用することで、過失相殺によって結果的に妥当な解決を図ることが可能とな
判例評釈
り、原告にとってもオールオアナッシングの解決ではない現実的な救済が行われること、契約当事者である業者だけ
でなく、役員や勧誘にあたった従業員の責任も追及できること、弁護士費用や慰謝料についても一定の範囲で賠償の
範囲に含まれる可能性があるからとの指摘がなされている
。 10
[検討]
本判決の立場は是認できるものである。以下、検討を進める。
・代理店の捉え方
代理商とは、商業使用人ではなく(雇用関係がない)、一定の商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の
代理または媒介をなす者をいう(商二七条、会一六条)。そして、代理商は、本人の代理人として相手方と取引を行
う締約代理商と、本人と相手方との間で取引(契約)が成立するよう各種の仲介・斡旋・勧誘等の事務を行う媒介代
理商に分類される。
「代理商」は法律用語として確立しているのに対して、「代理店」はより慣用的に使われており、その実態は、本
来的に法が定める代理商であったり、取次商であったり、メーカーや卸売業者から商品を仕入れて販売するだけの単
なる販売業者の場合もある。
代理商は独立の商人であるという点で商業使用人と異なるが、実際にはある商人の補助者が代理商であるか商業使
用人であるか、大企業と小規模代理商との関係では、必ずしも明確でない場合も多い。
マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本) 「代理店」という名称が付されていることによって当然に代理商になるわけではなく、代理商かそうでないかにつ
いてはその実態を捉えたうえで判断する必要がある。
その判断にあたっては、
①
報酬の性質 通常、代理商は代理商契約に基づき一定の手数料が発生するのに対し、商業使用人の場合は雇用契
約に基づき一定額の給与を貰うことになる)、判例によると、代理店という名称が付されているだけでは商法にい
う代理商ということはできず、実際に媒介行為があったか否か、それがあったとしたら手数料を請求できるかが重
要であるとされる(大判昭和五・三・一二新聞四五五六号七頁)。
②
営業所の所有(必ずしも所有とは限らず、賃貸等の場合も含む)形態 代理商であれば自己の営業所を有し、商
業使用人は営業主の営業所において活動する。
③
営業費用の負担 代理商は自ら営業費用を負担するが、商業使用人が営業費用を負担することはない。
等が基準となるが、その他、複数の商人の補助を行っているか(商業使用人であれば唯一人の商人の補助を行うこと
になる)、独立の商号や商業帳簿を有するか、といった基準から総合的に判断されることになる。
この点については、詳細につき不明な点はあるものの、Y 1が本件FX取引に関する出資契約締結に向けて媒介行為
を行っていたこと、A社からコミッションフィーという形で手数料を受領していたことが認定されていることから
も、代理商にあたるものという判断が下されよう(Y 1が公務員であることが副業禁止規定に抵触する問題はあったと
しても)。
本事案では、D社を頂点として蜘蛛の巣を巡らすような多層構造の代理店関係が存在し、マルチ商法と類似した
判例評釈
構造となっている。金融商品取引業の登録を行っていない上位代理店が、金融商品取引業の登録を得ていない下位
代理店を使い、マルチ同様の上位、下位の代理店を用いた金融商品取引の組織的勧誘を行ったという事案であり、
したがって構造的に、一方的に利益を強調し、金融商品取引を勧誘するにあたっての必要な取引の仕組みやリスクに
ついての説明を欠く態様での勧誘がなされたものといえる。こうした構造を前提にすると、Y 1にしても商人たるべき 知識・経験・能力はほぼ皆無であったものと思われる。だからこそ、Y 1自身さしたる注意を払うこともなく、自らも D社に出資をしたことが窺える。Y 1は、第一審の段階から当初はA社の言葉を信用して自ら取引を行っており、その
後、A社から業務委託を受けて取引を紹介していた時も、自らの取引実績から、これが正当な取引であると信じてい
たものであると主張しているが、この主張自体Y 1が上位代理店の言葉を妄信したことの証であり、代理店本来の尽く
すべき注意を尽くしていないことを露呈しているものである。
確かに、Y 1自身、下位代理店としての地位を有する一方で、自らもD社に出資したことでは、被害者としての立場
も有しているといえる面も存している。
しかしそれは、本件構造の上位者であるD社およびBファンド・A社との関係における被害者としての立ち位置で
あり、自らの勧誘で被害を受けることになった下位のX 1
、X
2らに対しては、Yら(Y 1およびそれを補佐したY 2
)は
、 ( 直
接的な加害意図はなかったとしても)加害者的な立場であることには相違ない。この点、ネズミ講・マルチ商法の問
題につき、「実際、この商法全体が違法であり、その違法性から不法行為の成立が基礎づけられるのであるとすれば、
下位の会員であっても、他人をこの違法な取引の中に引き込む行為は不法行為と性質づけられるはずである。なお、
その際に、不法行為法上の判断としては、それによって得た利益が自己の支出額を上回ることは要件ではないと考え
られる。したがって、システム運営者や上位の者との関係では『被害者』でありつつ、下位の者との関係では『加害
マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本)
者』と性格づけられるという状況が考えられることとなる」との指摘があるが、この考え方は本件Y 1の立場にも当て
はまるものである
。 11
・過失相殺について
本判決は、Xらに対し、結果的にY 1との関係で三割、Y 2との関係で五割の過失相殺を認めた。先物取引被害と過失
相殺に関する論稿は、複数存在するが
、現実に目を向けてみると、商品先物取引訴訟において全体の八割以上の事例 12
で損害賠償請求が認容されており、過失相殺率は、損害賠償額の三~六割程度が多いとされている
。前述の大阪地判 13
平一六・四・一五は、Xには投機的取引に対する積極性が認められるなどとして八割もの過失相殺を認めている点が
特徴的である。Xが投機的取引に強い関心を有し、かつ積極性が認められること、Xは本件取引の他にも同時期に数
百万円程度の累積投資や投資信託等の取引を行っていたこと、Xは本件取引の仕組み及び危険性については説明を受
け、ある程度は理解していたことなどの事情に照らすと、損害額のうち八割を過失相殺するのが相当であるとされて
いる。 過失相殺については、一定の制限を課すべきであるとの見解も存している
。その中で、裁判例の分析を踏まえて、 14
過失相殺を排除する類型として、①「被害者の過失の存在は認定しつつ、それは被告の加害行為の態様の重大性と比
較するならば、過失相殺の対象とならない」類型、②「被害者の過失とされる誤解が被告の詐欺(故意行為)による
という」類型、③「過失相殺を認めると利得の保有を許すことになってしまう」類型などが挙げられている
。 15
このような見解からすると、本事件のような場合、本件構造の上位者であるD社およびBファンド・A社の行為は
上記②に該当し、彼らとの関係では過失相殺が否定される可能性は十分にあるだろう。実際に、本件C関連ファンド
判例評釈 ( 121関連ファンド)に関する別事件を扱った東京高判平二四・一二・二〇先物取引裁判例集六七号二一一頁は、「被控
訴人らの損害賠償責任が肯定される根拠等と、控訴人の関与の内容程度等を総合的に比軟衡量すると、控訴人の投資
判断に過失があったとして損害を減額するのは、当事者間の損害の公平な分担に適うものとはいえず、…控訴人の損
害額の算定に当たって過失相殺をすることは相当ではない」との判断も下されている。
これに対して代理店としての知識・経験・能力に欠けると共に、本件構造の上位者と異なり加害行為への故意性は
窺えず、被害者としての側面も持つYらとの過失相殺の問題はどのように考えるべきであろうか。
Y 1およびY 2は、D社側の組織に属しているには違いないものの、組織の末端に位置する下位代理店である(一審の 認定事実によると、Y 1の下には、下位代理店はなく、Y 1は最末端の代理店であったようである)。Yらが代理店とし
て商品の勧誘、契約締結の媒介をある程度積極的に行っていたことは事実として認定されているが、一方で、口座開
設代行等は行っていない。情報へのアクセスが容易なポジションにある者に対して情報収集・提供義務を課すという
考え方に立てば、XらとYらの情報へのアクセス可能性に、それほど大差が見受けられないことからすると、Y 1およ びY 2に注意義務を課すことは現実には過酷な要求であるようにも思われる。けれどもYらは本来十分な調査・確認を
行って本件システム自体の問題点を明らかにし、結果として、こうしたシステムへの勧誘・媒介をすべきではなかっ
たのにもかかわらず、これを行って被害を生んだわけである。
判決を見ると、本件における注意義務違反の具体的内容としては、「D社の財務状況、取引の実態等について公的
な資料を収集したり、信頼できる専門家の意見を徴したり」することや、「監督官庁や国民生活センター等に本件F
X取引に関する出資の危険性について照会したりする」こととされている。しかし、こうした調査が実際になされて
いたとしても、その調査が形骸化されたものに過ぎないのであれば、Y 1およびY 2に注意義務違反が認められる可能性
マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本)
も考えられる。単に調査がなされるのみならず、その調査に基づいた適正な分析が行われたのであれば、当然に、Y
らは勧誘・媒介行為をやめるとともに、自身の取引をもやめていたのではないかいうことに裁判所の思慮が働いてい
るものと思われる。つまり、客観的に見れば誰でも確実に利益を上げられるといった子供騙しの不合理な商品やこれ
を扱う悪質な業者につき、何ら疑うこともなく安易に下位代理店となって、他人を勧誘すること自体が社会的妥当性
を欠く行為であって、免責される性質のものではないとの判断が下された事例といえる。
もちろん、本判決は、結果として加害者側に加担すれば、直ちに責任に直結することを是認しているわけではな
い。本件は、Yらとしては、十分な調査・確認を怠ったせいで安易に下位代理店となったことで、加害者側へ積極的
な加入があったと判断されたために、責任が認められた事例である。その実態は素人そのものの知識・経験に過ぎな
いものであったとしても、代理店の立場であったY 1およびその補助者であってY 1と一体的であったY 2としては厳格な
責任が問われてもやむを得ないものといえる。したがって、本件が、単に一個人に過ぎないYが気軽に知人等に購入
を勧めたものであったとすれば、軽率の誹りを受け、倫理的な非難を受けることはあったとしても、直ちに法的な責
任が問われるようなものではない。
本件裁判所の判断は、調査・確認を行うことなく安易に下位代理店となって被害を拡散させることに加担したY 1
と、そのY 1の行為をサポートとしたY 2であったからこそ責任が肯定されたものである。
以上のことからすると、本判決がY 1およびY 2の過失を認めたことは是認できる判断である。
本件の場合、被害者は、悪質な行為によって非難されるべき本件取引の中心であるD社に対して、法的責任を追及
することが筋である。とはいえ、加害組織が外国法人でその実体が曖昧なものであることから現実には責任追及、被
害救済はまずもって困難である。そうであるとすれば、どのような形で被害者を救済するべきであるのか。実際に責
判例評釈
任追及が可能な者を相手に訴訟を提起することが、被害者救済の視点からは、合理的な結果に至るものといえる。被
害者としての側面も持つ下位代理店の責任を厳格に認めることは、下位代理店を被告とするか、あるいは中位・上位
代理店を被告とするかという原告の訴訟方針次第で、下位代理店が賠償責任を問われるか否かという大きな差異が生
じることにはなる
。しかし、下位代理店が、敗訴し賠償することになっても、今度は被害者としての立場から、中位・ 16
上位代理店に対して責任追及する可能性が残されていることからすれば、一応の公平性も保たれているといえる
。 17
最後になるが、本判決が過失相殺を認めた点は、肯定できる。
Xらは、自らの出資した金銭がFX取引の資金として運用に充てられるものと誤信して入金している。この出資金
が実際に運用された結果として損失を被ったのであれば、投資判断の適否を考慮する必要はあるだろう。しかし、極
めて悪質な国際的な詐欺であって運用の実態も全くないような本件では、そもそも被害者であるXらに過失相殺は馴
染まないという判断も可能であろう
。あるいは、本件システムが経済的に不合理なものであり、本来であれば当然に 18
疑念を抱くべきレベルの内容のものであれば、Y 1およびY 2に「過失相殺を許さない程度までに重大な過失」があった
との判断が下されることも考えられる。
ところが、こうした要素が考えられるにもかかわらず、本判決は過失相殺を認めた。それにはXら自身に厳然と過
失が認められること(被害者としての立場からすると、前述のYらと同様のレベルで明らかに経済的合理性を欠く本
件システムを漫然と信用し安易に高額の出資を行っていた)に加えて、Y 1が加害組織に加担する形ではあるものの、
組織の最末端に位置する下位代理店であって詐欺の意思が明確な上位者Dとのアクセス可能性も低く、Y 2について は、Y 1の幇助者にすぎないことにある。結局のところ、Yらには過失は存するものの、過失相殺を否定するほどには、
マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本)
悪質さを備えているものではないという判断が下されたものであろう。
先にも述べたようにFX取引は極めて射幸性が高いとの評価が下されたことのある金融取引である。現在レバレッ
ジが引き下げられてはいるものの、FX取引のトラブルは一時社会問題にもなって広くメディアに取り上げられたこ
とからも一般的な能力を有する社会人であれば、十二分に注意を払うべき要注意の金融取引であることは周知のはず
である。それにもかかわらず、本件システムの謳い文句に惹かれ安易に取引を行って泣くことになったXらYらに
とっては妥当な裁判所の判断が下った事案として本判決は評価できるものである。
注1
ただし、証拠金と同額の外貨を取引する(レバレッジ一倍)場合には、外貨預金に近い形で比較的低リスクの取引も可能である。
2
「本件の外国為替証拠金取引は、為替取引の裏付けがない差金決済取引であり、インターバンクレートを参考にすると言うも
のの、その基準自体明確ではなく、被告会社が一方的に定め、かつ、予測することのできない為替レートの変動によって、証拠
金の約一〇倍という高額の損益が生じるという著しく射倖性が高い取引である。…被告らは、外国為替証拠金取引が一般人の行
う利殖行為として、経済的意義を有する経済的取引として捉えられるものであると主張するが…本件取引が経済的合理性を有す
る取引であったことを認めるに足りる証拠はない。
そうすると、本件取引は、顧客である原告と被告会社間の賭博性を有する取引であるといわざるを得ず、公序良俗に違反する
取引であるということができる。」(仙台地判平成一九・九・五判例タ一二七三号二四〇頁、先物取引裁判例集四九号三三八頁)
3
なお、本件評釈として、遠藤研一郎「マルチ型ファンド取引の下位代理店となって出資を勧誘した者と信義則上の注意義務」
私法判例リマークス五二(二〇一六
< 上
> )三八頁 4
121
関連ファンドとは、121
INT(香港に法人登記がある「121
インターナショナル・インベストメント・リミテッド」)のほか「
121
」の名称を冠した関連会社(121
FX、121
証券、121
BANK)のことである。しかし、「121
」関連会社においては関係及びその役割等、不明な点が多い。
121
証券の公式サイトでは、一切関知していないと告知しているが、121
関連ファンドの最高責任者と称判例評釈
する林云氏は、二〇〇八年七月一四日までは
121
証券の代表取締役、その後二〇一〇年六月二四日までは取締役を務めていたようである。また、
121
FX株式会社および121
BANK株式会社は、特定の顧客の取引において預り金(証拠金)の振り込み先として指定されていたり、
121
証券株式会社はその従業員あるいは従業員と称する者が直接本件取引を特定の顧客に勧誘していたりしたようである。一方、
121
INTは、東京や上海、シンガポールに支店があり、法人登記のある香港の本社では営業の実績がなかったとみられている。
121
INTは、日本の投資家の資産を香港のFXで運用していながら香港金融局(SFC)の登録もなく、銀行登録もない、FX会社の免許もない。東京支店、香港本社の住所はいずれも貸事務所との報道もあった。話術による甘い話だけで、ここまで被
害が発生したことになる。本社の香港では営業活動がなかったとのことで、日本人をターゲットとした詐欺といえよう。
本件のFXの自動売買システムを使った運用で月三%の利回りという商品設計は以下の通りである。(参考:被害者対策弁護団)
・購入したポジションのオーバーナイトはしない
・投入する比率を投資総額の二〇%に自動設定
・通貨のポートフォリオ、ロスカットはディーラーの主観に頼らずシステムが決定
・日々のドローダウンは一%以内
・月のドローダウンが運用金額の二〇%(状況により前後する)でシステム停止
・各微調整はシステム管理者が行いこまめに設定する
・資金管理は世界最大のマンフィナンシャルが行う
なお、
121
ファンドに関する一連の裁判例としては、以下のものがある。・東京地判所平成二五年一一月一三日先物取引裁判例集七〇巻一四三頁、東京高判平成二六年七月一〇日 先物取引裁判例集
七一巻二六四頁
121
関連ファンド商法(FX自動売買ソフト商法)において資金の受け入れ先となっていた業者が、自社は収納代行業者として、クレジットカード発行事務の委託を受けてこれに伴う受送金を行っていたに過ぎないと主張したのに対して、本判決は、関連証
拠を精査し、
121
商法の資金収集の一端を担っていたと認定して業者及び役員らの損害賠償責任を認めた。マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本)
また、本判決は、
121
商法の「ナンバー2」を特定して責任を認めているが、証拠を多角的かつ詳細に検討して事実認定をしており、極めて説得的である。
控訴審判決も、新たに事実を付加して、一審の判断をより説得的に敷衍して控訴を棄却した。
・東京高判平成二六年九月一七日、東京地判平成二五年一一月二八日判決 消費者法ニュース一〇一号三一九頁
121
関連ファンド商法(FX自動売買ソフト商法)において資金の受け入れ先となっていた収納代行業者について、上記一事件と原告を異にする事件で、原判決は収納代行業者及びその役員らに対する請求を棄却したが、本件控訴審判決ではこれを取り消
し、「収納代行業者の代表取締役であるKは、…違法な詐欺商法である
121
商法に利用されることを認識し、又は少なくとも容易にこのことを認識することができたにもかかわらず、本件送金口座を顧客からの送金先とし、本件送金口座に送金された金員を指
定された
121
FX名義又は121
BANK名義の預金口座に送金していた者と認めるのが相当である」として、収納代行業者及びその役員らに対する第一審原告の請求を全て認容した。
原判決においては、
121
商法の「ナンバー2」を特定して責任を認めていたが、「121
商法の運営や拡大に関する意思決定に対して首謀者と同様あるいはそれに次ぐ影響力を有していたと推認することができることは、原判決が詳細に説示するとおりであっ
て、原判決の(ナンバー2)…の
121
商法の運営等に対する影響力の認定について、何ら不合理な点はない。」として、その判断を本件控訴審判決も維持している。
・東京地判平成二五年一月二一日 先物取引裁判例集六七巻二一八頁
121
関連ファンド商法の中でも多数の被害者を出した「代理店」らについての判決である。「被告らは、林と共同して、林が顧客からソフト購入代金及びFX取引のための投資資金を詐取する手段として作り上げた架空のシステムである本件ソフトの販売を
したものと認めることができる。
被告らは、結果的に、本件ソフトを購入した顧客からソフト購入代金及びFX取引のための投資資金を詐取するという林の詐
欺行為に加担していた。そして、被告らが本件ソフトを販売し、又は販売に関与して利益を得るにあたり、本件ソフトの運用結
果として本来あるべき取引履歴(利益を挙げる前提となる本件ソフトを利用したFX取引の具体的取引状況を示すもの)を確認
判例評釈
するなど必要な注意をすれば、林の説明した本件ソフトの運用状況が架空のものであることを知ることができた。それにもかか
わらず、その注意を怠って顧客への本件ソフトの販売に関与したものであって、顧客が本件ソフトを購入して林から金銭を詐取
されたことについて、被告らにおいても、林との共同不法行為としての過失があったと認めるのが相当である」などとして、裁
判所は被告らの責任を認めた。
5
金融商品に関しては、金融商品取引法四〇条、金融商品の販売等に関する法律八条など。比較法的な見地からの分析として、
角田美穂子『適合性原則と私法理論の交錯』《商事法務、二〇一四年〉、現代消費者法二八号特集「適合性原則と消費者法」
6
三井秀範=池田唯一監修『一問一答 金融商品取引法〔改訂版〕』《商事法務、二〇〇八年》三〇九頁
7
協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則(日本証券業協会)第三条三項および、同協会が二〇一一年二月一日に発表した
同条項に関する「考え方」参照
8
中田裕康=山本和彦=塩谷國昭編『説明義務・情報提供義務をめぐる判例と理論』(臨時増刊判タ一一七八号)参照
9
河内隆史「商品先物取引の判例の概観」商品取引所法研究会(関東部会)編『商品取引判例体系』《商事法務研究会、平成
五年》三頁、清水俊彦『投資勧誘と不法行為』《判例タイムズ社、一九九九年》一頁。なお、近時の判例としては、最判平二一・
七・一六民集六三巻六号一二八〇頁がある。
10
松岡久和「商品先物取引と不法行為責任」ジュリ一一五四号一〇頁11
窪田充見「マルチ商法における違法性の分析―取引関係における不法行為法上の保護」ジュリ一一五四号三〇頁、三七頁。また、松本恒雄「紹介型マルチ商法の違法性について」中川淳先生還暦記念『民事責任の現代的課題』《世界思想社、一九八九年》
二六六頁
12
内橋一郎=大槻仲=加藤進一郎=土居由佳=平田元秀『先物取引被害と過失相殺』《民事法研究会、二〇〇六年》、今川高文『投資取引訴訟の理論と実務〔第二版〕』〈中央経済社、二〇一四年〉三六七頁
13
宮下修一『消費者保護と私法理論』〈信出社、二〇〇六年〉二七六頁14
窪田充見『過失相殺の法理』〈有斐閣、一九九四年〉、平野裕之「商品先物取引における被害者救済の視点と民法理論」先物取引被害研究二七号四頁、河内隆史「先物取引に関する判例」判タ七〇一号六八頁、尾崎安央「裁判例からみた商品先物取引委託
者の適格性」判タ七七四号五〇頁など
マルチ型ファンド取引における代理店の責任(松本)