医 共 様 式 1
学 位 請 求 論 文 の 内 容 の 要 旨
論 文 提 出 者 氏 名 循 環 病 態 科 学 領 域 心 臓 血 管 外 科 学 教 育 研 究 分 野
氏 名
後 藤 武
( 論 文 題 目 )
Hydrodynamic evaluation of a new dispersive aortic cannula (Stealthflow)
(
新 し い 分 散 型 大 動 脈 カ ニ ュ ー レ ( ス テ ル ス フ ロ ー ) の 流 動 特 性 解 析
)
( 内 容 の 要 旨 )
【 背 景 】
心 臓 外 科 手 術 を 行 う 際 ,通 常 右 房 に 脱 血 管 を 挿 入 し ,人 工 心 肺 へ 血 液 を 導 き ,
上 行 大 動 脈 へ 送 血 し 体 外 循 環 を 施 行 す る . し か し 送 血 管 か ら 全 身 へ 送 ら れ る 噴 流 は
非 常 に 高 速 な た め , 血 管 内 粥 腫 の 剥 離 に よ る 脳 梗 塞 の 危 険 性 が 伴 う .【 目 的 】本 研 究
で は 大 動 脈 内 の 流 れ を 可 視 化 し , 分 散 型 大 動 脈 カ ニ ュ ー レ の 先 端 形 状 の 違 い に よ る
流 動 特 性 を 把 握 す る 目 的 で , 近 年 発 売 さ れ た ス テ ル ス フ ロ ー と こ れ ま で 国 内 外 で 使
用 さ れ て き た ソ フ ト フ ロ ー の 2 種 類 の カ ニ ュ ー レ の 解 析 を 行 っ た .【 方 法 】流 動 特 性
解 析 に は 粒 子 画 像 流 速 測 定 法 (
Particle Image Velocimetry
) を 用 い た . 大 動 脈 モ デ ル
は 健 康 な 成 人 の
CT
か ら 上 行 大 動 脈 ,腕 頭 動 脈 ,総 頚 動 脈 ,左 鎖 骨 下 動 脈 ,下 行 大 動
脈 を ガ ラ ス 管 で 作 成 し た .モ デ ル の 再 構 築 に は ,
3
次 元 モ デ ル 作 成・編 集 ソ フ ト ウ ェ
ア
(Mimics, MATERIALISE)
を 用 い た .実 験 は ダ ブ ル パ ル ス
YAG
レ ー ザ ー
(Solo II-15,
New Wave Research, Inc.)
か ら レ ー ザ ー を 照 射 し , 大 動 脈 モ デ ル 内 の 流 体 に
75-150 μm
の 粒 子
(MCI GEL HP20P, Mitsubishi Chemical Co.)
を 混 入 し , そ の 挙 動 を ク ロ ス コ リ レ
ー シ ョ ン カ メ ラ
(MEGAPLUS model ES1.0, REDLAKE MASD, Inc.)
で 撮 影 し た .シ ン ク
ロ ナ イ ザ
(Laser Pulse, TSI, Inc.)
を 用 い て カ メ ラ と レ ー ザ ー の 同 期 を 行 っ た . 流 速 分
布 , 流 線 , 速 度 ベ ク ト ル の 算 出 に は
PIV
ソ フ ト シ ス テ ム (
Koncerto
,
SEIKA Co.
) を
使 用 し た . 【 結 果 】ス テ ル ス フ ロ ー で は 噴 流 は 小 湾 側 を か す め ,徐 々 に 流 速 を 落 と し ,
左 鎖 骨 下 動 脈 方 向 に 向 か い , そ の 噴 流 が 作 っ た と 思 わ れ る 渦 が 上 行 大 動 脈 と 遠 位 弓
部 大 動 脈 に 認 め た . 長 軸 像 に お い て 最 大 流 速
0.68m/
秒 , 大 湾 側 で
-0.21m/s
の 逆 流 を
認 め た . 短 軸 像 で は 回 旋 流 を 認 め た . ソ フ ト フ ロ ー で は 噴 流 の 一 つ が 上 行 大 動 脈 後
壁 に 向 か い ,上 行 大 動 脈 大 湾 側 に 大 き な 逆 流 す る 渦 を 認 め た .長 軸 像 で は
0.6m/
秒 以
下 の 多 方 面 へ 噴 流 す る 流 れ を 認 め ,大 湾 側 で は
-0.27m/s
の 逆 流 を 認 め た .短 軸 像 で は
複 雑 な 渦 を 認 め た .【 考 察 】大 動 脈 内 に 発 生 す る 渦 の 順 方 向 流 れ と ,逆 方 向 流 れ を 定
量 的 に 評 価 す る た め に 末 梢 方 向 へ 流 れ る 向 き を 正 , 中 枢 方 向 へ 逆 流 す る 向 き を 負 と
す る ヒ ス ト グ ラ ム を 作 成 し た . ス テ ル ス フ ロ ー で は 上 行 大 動 脈 小 湾 側 か ら 腕 頭 動 脈
付 近 で 正 方 向 の 早 い 流 速 を 認 め る も の の , 上 行 大 動 脈 大 湾 側 で は 比 較 的 緩 や か な 負
方 向 の 逆 流 を 認 め た . ソ フ ト フ ロ ー に お い て は 腕 頭 動 脈 と 上 行 大 動 脈 小 湾 側 で は ス
テ ル ス フ ロ ー と 比 較 し て 正 方 向 の 流 速 は 遅 い 結 果 と な っ た が , 大 湾 側 で は カ ニ ュ ー
レ の 噴 流 に 起 因 す る 負 方 向 の 逆 流 を 多 く 認 め た . 脳 塞 栓 を 発 症 す る 原 因 と し て 脳 血
管 分 岐 部 の 血 流 速 度 が 重 要 で あ る .通 常 脳 血 管 分 岐 部 の 血 流 速 度 は
0.1 m/s
程 度 で あ
り , 本 研 究 結 果 で も , 同 程 度 か ら そ れ よ り 遅 い 流 速 で あ り , 脳 血 管 か ら の 逆 流 も 認
め な か っ た .【 結 語 】ス テ ル ス フ ロ ー は 大 動 脈 弓 と 脳 血 管 分 岐 部 で ソ フ ト フ ロ ー と 比
較 し て 静 か で 緩 や か な 流 れ で あ っ た . し か し 両 カ ニ ュ ー レ に お い て , 大 動 脈 小 湾 側
に 厚 い ア テ ロ ー ム 性 の 粥 腫 や 可 動 性 血 栓 を 認 め る 症 例 で は 注 意 が 必 要 と な る .