レ ー ザ ー 誘 起 ブ レ ー ク ダ ウ ン 分 光 法 を 利 用 し た 定 量 分 析 シ ス テ ム の 開 発

早 稲 田 大 学 審 査 学 位 論 文 （ 博 士 ）

レ ー ザ ー 誘 起 ブ レ ー ク ダ ウ ン 分 光 法 を 利 用 し た 定 量 分 析 シ ス テ ム の 開 発

池 沢 聡

早 稲 田 大 学 大 学 院 情 報 生 産 シ ス テ ム 研 究 科

2009 年 7 月

目 次

論 文 の 摘 要. . . 5

第 1 章 序 論 . . . 8 1 . 1 . は じ め に . . . 8 1 . 2 . L I B S の 歴 史 . . . 1 0 1 . 3 . 研 究 の 背 景 . . . 11 1 . 4 . 本 研 究 の 目 的 . . . 1 2 1 . 5 . 本 研 究 の 意 義 . . . 1 3 1 . 6 . L I B S の 測 定 原 理. . . 1 8 1 . 7 . 本 研 究 の 新 規 性 と 独 自 性 . . . 2 4 1 . 8 . 第 1 章 の 参 考 文 献. . . 2 6

第 ２ 章 水 溶 液 セ ル を 利 用 し た 実 験 . . . 3 0 2 . 1 . 緒 言 . . . 3 0 2 . 2 . 実 験 装 置 と 実 験 方 法. . . 3 0 2 . 3 . 結 果 と 考 察 . . . 3 3 2 . 4 . 結 言 . . . 3 5

第 ３ 章 微 小 液 滴 を 利 用 し た 実 験. . . 3 8 3 . 1 . 緒 言 . . . 3 8 3 . 2 . 微 小 液 滴 の 吐 出 原 理. . . 3 9 3 . 3 . 微 小 液 滴 の 観 察 . . . 4 5 3 . 3 . 1 . 微 小 液 滴 吐 出 機 構 . . . 4 6 3 . 3 . 2 . 液 滴 体 積 の 測 定 . . . 4 9 3 . 3 . 3 . 液 滴 と レ ー ザ ー の 命 中 位 置 の 検 討 . . . 5 0 3 . 3 . 4 . マ イ ク ロ シ ャ ッ タ ー 機 構. . . 6 2 3 . 4 . 微 小 液 滴 を 利 用 し た L I B S の 測 定 結 果 . . . 8 7 3 . 5 . 結 言 . . . 1 0 3 3 . 6 . 第 ３ 章 の 参 考 文 献. . . 1 0 4

第 ４ 章 デ ー タ 解 析 . . . 1 0 6 4 . 1 . 緒 言 . . . 1 0 6 4 . 2 . ノ イ ズ 除 去 法 . . . 1 0 7 4 . 3 . 校 正 曲 線 . . . 111 4 . 4 . 結 言 . . . 1 2 3 4 . 5 . 第 ４ 章 の 参 考 文 献. . . 1 2 4

第 ５ 章 L I B S に よ る 定 量 分 析 の 今 後 の 展 望 . . . 1 2 6 5 . 1 . 緒 言 . . . 1 2 6 5 . 2 . L I B S の 実 地 計 測. . . 1 2 7 5 . 3 . L I B S に よ る 定 量 計 測 の 高 感 度 化 . . . 1 3 1 5 . 4 . 結 言 . . . 1 3 4 5 . 5 . 第 ５ 章 の 参 考 文 献. . . 1 3 5

第 ６ 章 結 論 . . . 1 3 8 謝 辞 . . . 1 3 9 本 研 究 に 関 す る 論 文 と 研 究 業 績 . . . 1 4 1 付 録 . . . 1 4 4

論 文 の 摘 要

レ ー ザ ー 誘 起 ブ レ ー ク ダ ウ ン 分 光 分 析 ( L a s e r- i n d u c e d b r e a k d o w n

s p e c t r o s c o p y, L I B S )は 、 一 般 的 に は 、 定 性 分 析 シ ス テ ム と し て 利 用 さ れ

て い る 。 こ れ を 定 量 分 析 シ ス テ ム と し て 研 究 開 発 す る こ と が 、 本 研 究 の 目 的 で あ る 。 通 常 の L I B S シ ス テ ム で は 、 プ ラ ズ マ 化 （ ブ レ ー ク ダ ウ ン ） す る 試 料 の 体 積 が 一 定 で は な い が 、ブ レ ー ク ダ ウ ン す る 被 測 定 材 料 の 体 積 を 一 定 に す れ ば 、 定 量 分 析 が 可 能 と な る 。 ブ レ ー ク ダ ウ ン す る 被 測 定 物 質 の 体 積 を 一 定 に す る 方 法 は い ろ い ろ あ る が 、 一 例 と し て 、 水 溶 液 を 被 測 定 物 質 と す る 場 合 に は 、一 定 体 積 の 液 滴 全 量 を ブ レ ー ク ダ ウ ン す れ ば 、 定 量 分 析 が 可 能 で あ る 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 イ ン ク ジ ェ ッ ト 技 術 を 用 い た 、 同 一 体 積 の 液 滴 を 、 連 続 し て ブ レ ー ク ダ ウ ン す る シ ス テ ム を 考 案 し た 。 本 研 究 で 使 わ れ た イ ン ク ジ ェ ッ ト 装 置 の 液 滴 の 大 き さ は 、 直 径 3 4μm で あ る 。 こ れ は ブ レ ー ク ダ ウ ン に 使 用 す る レ ー ザ ー の ス ポ ッ ト 径

（5 3 . 2μｍ ） よ り も 小 さ い の で 、 液 滴 全 体 を ブ レ ー ク ダ ウ ン す る こ と が

で き る 。

L I B S で は 、 被 測 定 物 質 に レ ー ザ ー を 照 射 し て 、 ブ レ ー ク ダ ウ ン さ せ

て 、 そ の 冷 却 過 程 で 、 各 元 素 か ら の 原 子 線 を 分 光 分 析 す る 。 こ の 方 法 で 定 量 分 析 を す る た め に は 、 発 光 信 号 と 、 測 定 さ れ る 試 料 元 素 の 絶 対 量 と の 関 係 を 校 正 す る 必 要 が あ る 。 元 素 の 絶 対 量 は 、 水 溶 液 濃 度 と 液 滴 体 積 の 積 か ら 求 ま る 。 本 研 究 で は 、 定 量 分 析 に 必 要 な 校 正 デ ー タ を 得 る た め に 、 塩 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 を 被 測 定 物 質 と し た 。 塩 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 中 の ナ ト リ ウ ム 原 子 （ ま た は イ オ ン ） か ら 発 す る 蛍 光 の 、D 線 を 測 定 信 号 に 使 っ た 。ナ ト リ ウ ム D 線 を 測 定 信 号 と し た 理 由 は 、古 く か ら 様 々 な 分 野 で D 線 が 研 究 さ れ て お り 、文 献 等 か ら も 情 報 を 得 や す い た め で あ る 。

測 定 原 理 は 次 に 示 す 通 り で あ る 。本 研 究 に お け る L I B S シ ス テ ム で は 、

波 長 1 0 6 4 n m、 パ ル ス 幅 8 n s の Q ス イ ッ チ N d - YA G パ ル ス レ ー ザ ー を 使

用 し た 。 最 初 に レ ー ザ ー を レ ン ズ に よ り 集 光 す る 。 集 光 過 程 で 電 磁 波 の エ ネ ル ギ ー 密 度 が あ る 閾 値 以 上 に な る と 、電 子 が 急 速 に 原 子 か ら 剥 離 し て 熱 プ ラ ズ マ を 形 成 す る 。 レ ー ザ ー 誘 起 の 初 期 段 階 で は 、 衝 撃 波 圧 縮 に よ り プ ラ ズ マ 内 部 の 密 度 は 均 一 に な る 。プ ラ ズ マ は レ ー ザ ー の エ ネ ル ギ ー を 吸 収 し な が ら 温 度 上 昇 を 続 け 、レ ー ザ ー 周 波 数 の 交 番 電 磁 場 に 同 調

し て 振 動 す る 。 レ ー ザ ー パ ル ス が 途 切 れ る と 、 プ ラ ズ マ の 温 度 は ゆ っ く り と 低 下 す る 。 こ の と き 、 プ ラ ズ マ 発 光 は 温 度 低 下 に 伴 っ て 減 少 し て い く が 、 ナ ト リ ウ ム の 蛍 光 発 光 は そ の 後 し ば ら く の 間 続 く 。 こ の ナ ト リ ウ ム の 蛍 光 発 光 を 分 光 器 で 分 光 し た 後 、ス ト リ ー ク カ メ ラ で 観 測 す る こ と に よ り 測 定 信 号 が 得 ら れ る 。測 定 時 間 は 、原 子 特 有 の 発 光 寿 命 に 応 じ て 、 最 適 に 設 定 す る 必 要 が あ る 。

本 研 究 で は 、定 量 性 の 確 認 と S / N 比 の 向 上 を 目 指 す た め 、次 の 3 種 類 の 実 験 を 行 っ た 。( 1 )水 溶 液 セ ル を 使 用 し た 場 合 、( 2 )微 小 液 滴 を 使 用 し た 場 合 、( 3 )ア ル ゴ ン ガ ス 雰 囲 気 下 で 微 小 液 滴 を 使 用 し た 場 合 で あ る 。以 上 の 実 験 結 果 か ら 、 微 小 液 滴 を 利 用 す る こ と で L I B S に よ る 定 量 分 析 が 可 能 に な っ た こ と が 明 ら か に さ れ た 。新 規 開 発 さ れ た 本 シ ス テ ム を 使 用 し た こ と で S / N 比 が 向 上 し 、 今 後 の L I B S 分 析 技 術 に お い て 、 価 値 あ る 前 進 と な っ た こ と を 報 告 す る 。

図: 本 研 究 で 開 発 さ れ た L I B S 定 量 分 析 シ ス テ ム

第 一 章

序 論

第 1 章 序 論

1.1. は じ め に

元 素 に は 、 そ れ ぞ れ 特 有 の 光 を 発 す る と い う 性 質 が あ る こ と は 、 古 く か ら よ く 知 ら れ て い た 。原 子 に 関 す る 研 究 の 進 歩 に 従 い 、元 素 の 発 光 は 、 そ の 元 素 を 構 成 す る 原 子 や イ オ ン に 特 有 の 波 長 を 持 つ 光 の 集 合（ ス ペ ク ト ル ） で あ る と 理 解 さ れ て き た 。 こ の よ う に 元 素 の 成 分 分 析 に 、 測 定 対 象 か ら 発 光 す る ス ペ ク ト ル の 波 長 を 利 用 す る と い う の が 、分 光 分 析 の 基 本 的 な 考 え 方 で あ る 。

分 光 分 析 は 、 ニ ュ ー ト ン( I s a a c N e w t o n )が 1 6 6 6 年 の 太 陽 光 観 測 の 実 験 で 、 プ リ ズ ム を 使 っ て 、7 色 の 光 に 分 か れ る 現 象 を 発 見 し た こ と に 始 ま る 。 こ れ が 、 ス ペ ク ト ル と 命 名 さ れ た 。 そ の 後 、 太 陽 光 ス ペ ク ト ル 中 の 暗 線 が フ ラ ウ ン ホ ー フ ァ ー(J o s e p h v o n F r a u n h o f e r)に よ っ て 発 見 さ れ 、

1 8 1 7 年 、 暗 線 の う ち 特 に 明 確 だ っ た 1 3 本 （ フ ラ ウ ン ホ ー フ ァ ー 線 ） に

A - M の 記 号 が つ け ら れ た 。分 光 分 析 に よ る 最 初 の 原 子 観 測 で あ っ た 。キ

ル ヒ ホ ッ フ( G u s t a v R o b e r t K i r c h h o ff )は 、 太 陽 光 と プ リ ズ ム の 間 に ナ ト リ

ウ ム( N a )塩 を 置 き 、 ガ ス バ ー ナ ー に か ざ す 実 験 を 行 っ た 結 果 、 太 陽 光 ス

ペ ク ト ル の D 暗 線 が さ ら に 暗 く な る こ と を 発 見 し た 。 太 陽 光 を 遮 断 し 、 ガ ス バ ー ナ ー の 炎 に N a 塩 を 入 れ て 発 す る 光 を ス ペ ク ト ル 観 測 し た と き に 、太 陽 光 ス ペ ク ト ル の D 暗 線 と 同 じ 位 置 に 燈 黄 色 の 線 が 現 れ た 。こ れ に よ り 、D 線 は N a 原 子 に 起 因 す る と 結 論 づ け ら れ 、 原 子 ス ペ ク ト ル の 概 念 が 確 立 し た 。 こ の 現 象 に よ り 、N a が 光 の あ る 一 定 波 長 の み を 吸 収 す る 原 子 吸 光 と 、N a が 同 じ 波 長 の み を 発 す る 原 子 発 光 を 共 に 有 す る も の で あ る こ と が 示 さ れ た 。 さ ら に 、 フ ラ ウ ン ホ ー フ ァ ー 線 は 、 高 温 の 太 陽 中 心 部 で 発 光 さ れ た 白 色 光 が 、太 陽 周 辺 部 の ガ ス 蒸 気 層 中 の 冷 え た 原 子 に よ っ て 吸 収 さ れ る た め に 起 こ る 現 象 で あ る こ と も 、明 ら か に さ れ た 。

こ の よ う に 分 光 分 析 の 初 期 の 研 究 で は 、 太 陽 光 の ス ペ ク ト ル や 、 物 質 が 燃 え る 際 に 生 じ る 炎 色 反 応 に お け る ス ペ ク ト ル が 観 測 さ れ て い た 。太 陽 の 表 面 で は 、 高 温 の プ ラ ズ マ ガ ス が 作 用 し て 原 子 が イ オ ン 化 さ れ 、 あ

第 1 章 序 論

る い は 再 び イ オ ン が 中 性 原 子 に 戻 る が 、こ の 過 程 で 原 子 に よ る 吸 光 反 応 が 生 じ 、フ ラ ウ ン ホ ー フ ァ ー 線 と し て 太 陽 光 線 の ス ペ ク ト ル に は 暗 線 が 生 じ る 。

こ の よ う な 発 光 分 析 の 長 い 歴 史 に 、 吸 光 法 や 蛍 光 法 が 登 場 し た 後 に 、

L I B S を は じ め と し た 、 プ ラ ズ マ 発 光 分 析 法 が 登 場 し た 。 プ ラ ズ マ 光 を

分 光 器 に よ っ て 測 定 す る こ と で 、各 元 素 特 有 の 波 長 を 持 つ 光 が 特 定 さ れ 、 こ れ に よ り 測 定 材 料 の 組 成 を 知 る こ と が で き る よ う に な っ た 。

人 工 的 に 原 子 を 発 光 さ せ る た め に は 、原 子 を 励 起 状 態 に す る 必 要 が あ る 。プ ラ ズ マ の 発 生 法 と し て は 、こ れ ま で 様 々 な 方 法 が 考 え ら れ て き た 。 ア ー ク 放 電 を 用 い た 発 光 分 析 が 一 般 に 使 用 さ れ て き た が 、 今 日 で は 、 レ ー ザ ー を 利 用 し た 方 法( L a s e r- i n d u c e d B r e a k d o w n S p e c t r o s c o p y, L I B S )と 共 に 、 誘 導 結 合 プ ラ ズ マ 発 光 分 析 法( I n d u c t i v e l y C o u p l e d P l a s m a , I C P )や 、 マ イ ク ロ 波 発 光 分 析 法( M i c r o w a v e I n d u c e d P l a s m a , M I P )な ど も 、 分 光 分 析 に 活 用 さ れ て い る 。

L I B S で は 、 瞬 間 的 に エ ネ ル ギ ー 密 度 を 上 げ ら れ る パ ル ス レ ー ザ ー を

用 い て 、 成 分 分 析 を し た い 測 定 材 料 に 直 接 照 射 し 、 分 光 分 析 を す る こ と で 元 素 の 構 成 を 特 定 す る こ と が 可 能 で あ る 。L I B S は 、 消 費 電 力 が 少 な く 非 接 触 計 測 が で き 、測 定 対 象 と な る 試 料 の 前 処 理 が 不 要 で あ る こ と か ら 、 モ バ イ ラ ブ ル な 分 光 分 析 法 と し て 、 近 年 注 目 さ れ て い る 。N A S A に よ る 火 星 探 査 で は 、 少 な い 電 力 で 様 々 な 計 測 が 行 え る L I B S の 長 所 を 活 か し て 、 探 査 車 に L I B S シ ス テ ム を 搭 載 す る こ と が 決 定 し て い る[ 1 - 1 ]、

[ 1 - 2 ]。 こ の よ う な L I B S の 特 徴 か ら 、 様 々 な 分 野 で L I B S が 使 用 さ れ る

も の と 期 待 さ れ る 。

以 上 述 べ た よ う に 、 様 々 な 利 用 目 的 で L I B S が 使 用 さ れ る よ う に な っ て き た が 、 こ れ ら の 測 定 で は 、 主 に 定 性 分 析 を 目 的 と し て 使 用 さ れ て お り 、 定 量 分 析 の 報 告 例 は 極 め て 少 な い 。 こ れ は 、L I B S で は 測 定 対 象 を プ ラ ズ マ 化 し た 際 に プ ラ ズ マ 化 し た 試 料 の 体 積 が 定 ま ら な い か ら で あ る 。 従 っ て 、L I B S に よ り 、 試 料 を 直 接 、 定 量 分 析 で き る よ う に 、 技 術 開 発 し て い く こ と が 重 要 で あ る 。

本 論 文 で は 、 被 測 定 物 質 に 微 小 液 滴 を 利 用 し 、 測 定 対 象 の 体 積 を 一 定 と し た こ と に よ り 、L I B S に よ る 定 量 分 析 が 可 能 と な る こ と が 、 明 ら か に さ れ た 。

1.2. LIBS の 歴 史

L I B S の 誕 生 か ら 現 在 ま で 、 本 研 究 と 関 連 性 の あ る 項 目 を 中 心 に L I B S

の 発 展 を 歴 史 的 に た ど る こ と に す る 。

レ ー ザ ー を 利 用 し た 分 光 成 分 分 析 に 関 す る 報 告 は 、1 9 6 2 年 に F. B r e c h ら に よ っ て 、 最 初 の 文 献 報 告 が さ れ て い る[ 1 - 3 ]。

1 9 6 4 年 、レ ー ザ ー プ ラ ズ マ の 時 間 分 解 測 定 が 初 め て 実 施 さ れ た[ 1 - 4 ]。

1 9 8 0 年 ま で は 、レ ー ザ ー の 利 用 方 法 は 限 定 的 で あ っ た 。レ ー ザ ー を 対 象

物 質 の ア ブ レ ー シ ョ ン に 使 用 し 、ア ー ク 放 電 で 発 生 さ せ た プ ラ ズ マ へ 導 入 す る と い っ た も の で 、 測 定 は 従 来 の 手 法 を 利 用 し た も の で 、 レ ー ザ ー の 役 割 は 試 料 を プ ラ ズ マ 化 す る こ と で は な か っ た[ 1 - 5 ]。

1 9 8 3 年 に 色 素 レ ー ザ ー が 登 場 す る と 、レ ー ザ ー が 原 子 線 の 放 射 共 鳴 と

し て 使 用 さ れ る よ う に な る 。 こ の 現 象 を 利 用 し て 、 原 子 の 吸 光 分 析 あ る い は 、 誘 起 さ れ た 原 子 の 蛍 光 発 光 が 測 定 可 能 と な り 、 そ の 光 源 と し て レ ー ザ ー が 使 用 さ れ る よ う に な っ た 。レ ー ザ ー を 利 用 し た 吸 光 分 析 や 蛍 光 分 析 は 様 々 な 分 野 で 応 用 さ れ て き た が 、レ ー ザ ー は 単 色 光 源 で あ る か ら 、 測 定 対 象 の 原 子 ス ペ ク ト ル の 波 長 に 対 応 さ せ る 必 要 が あ っ た 。L I B S で は 、 熱 プ ラ ズ マ が 発 す る 放 射 光 を 測 定 す る た め 、 様 々 な 波 長 の 光 を 同 時 に 発 生 さ せ 、 一 度 に モ ニ タ リ ン グ す る こ と が で き る よ う に な っ た 。

1 9 8 4 年 に は 液 体 を 対 象 と し た L I B S 計 測 が 初 め て 報 告 さ れ る よ う に な

る[ 1 - 6 ]。 そ し て 、1 9 8 8 年 に な る と 微 小 液 滴 を 利 用 し た L I B S 計 測 に 関 す

研 究[ 1 - 7 ]が 初 め て 発 表 さ れ た 。た だ し 、こ の 時 点 で は 微 小 液 滴 は レ ー ザ

ー の ス ポ ッ ト サ イ ズ よ り も 数 倍 大 き く 、 大 き さ も 不 均 一 で あ っ た た め 、 定 量 的 な 分 析 に は 使 用 さ れ な か っ た 。

第 1 章 序 論

1.3. 研 究 の 背 景

以 上 述 べ た よ う な 歴 史 を た ど っ た L I B S で あ る が 、 現 在 で は 、 よ り 高 感 度 な 測 定 を す る た め の シ ス テ ム 開 発 や 、多 種 多 様 な 測 定 材 料 に 対 応 し

た 、L I B S シ ス テ ム の 研 究 開 発 が 進 め ら れ て い る 。 こ う し た L I B S シ ス テ

ム の 開 発 目 的 は 、物 質 の 組 成 を 明 ら か に す る こ と で あ り 、こ れ ま で L I B S は 主 に 、 定 性 分 析 を す る た め の シ ス テ ム と し て 開 発 さ れ 、 数 多 く の 研 究 報 告 が な さ れ て き た 。 し か し そ の 一 方 で 、 構 成 元 素 の 絶 対 量 を 、 直 接 求 め る こ と を 目 的 と し た 、 定 量 分 析 に 関 す る L I B S の 研 究 例 は 、 非 常 に 少 な い 。

現 行 の L I B S は 、 定 量 分 析 に は ほ と ん ど 使 用 さ れ な い が 、 そ の 主 な 理 由 は 、 次 の 二 つ の 側 面 が 考 え ら れ る 。 第 一 に は 、L I B S の 長 所 の み が 測 定 に 活 用 さ れ て い る 、 と い う 点 が 挙 げ ら れ る 。 こ れ は 定 性 分 析 に お い て は 、 前 処 理 が 不 要 で 、 迅 速 性 に 優 れ る 、 と い う L I B S の 特 徴 に 基 づ く 。 第 二 の 側 面 と し て は 、L I B S は 、 測 定 原 理 に 関 連 し て 、 定 量 分 析 が 難 し い 点 が 挙 が る 。 こ れ は 、 測 定 対 象 が レ ー ザ ー 誘 起 さ れ て も 、 一 部 分 し か プ ラ ズ マ 化 さ れ ず 、 定 量 分 析 に 必 要 な 、 プ ラ ズ マ 化 さ れ た 体 積 デ ー タ が 得 ら れ な い 、 と い う 理 由 に よ る 。

L I B S が 定 量 分 析 に 、 ほ と ん ど 使 用 さ れ な い こ と の 背 景 と し て 、 定 性

分 析 の デ ー タ が 優 先 さ れ る こ と を 述 べ た が 、 測 定 例 と し て 、 鉄 の 精 製 過 程 で 、添 加 物 の 投 入 を 決 定 す る 状 況 で の 活 用 例[ 1 - 8 ]を 述 べ て み た い 。鉄 の 精 製 過 程 で は 、 原 料 の 混 合 状 態 を 、 絶 え ず モ ニ タ リ ン グ し て 、 成 分 を 知 る 必 要 が あ る が 、I C P や M I P を 利 用 し た 、 従 来 の ラ ボ 分 析 で は 、 溶 融 し た 鉄 の 一 部 を 、 一 度 取 り 出 し 、 冷 却 後 に 分 析 室 で 測 定 し な け れ ば な ら な か っ た 。 こ れ に 対 し て L I B S で は 、 そ の 場 で 、 即 座 に 計 測 が で き る と い う 長 所 が あ る の で 、混 合 成 分 に 変 化 が 生 じ た 場 合 の 警 報 シ ス テ ム と し て 活 用 で き る 。 警 報 シ ス テ ム だ け の 用 途 な ら ば 、 定 性 的 な 測 定 法 で 間 に 合 う の で 、 原 子 力 発 電 所 に お け る ナ ト リ ウ ム 冷 却 水 漏 れ の 監 視 や 、 水 道 水 の 安 全 性 に 関 わ る 品 質 管 理 … 等 、 即 時 計 測 が 可 能 な 方 法 で L I B S 定 性 分 析 が 活 用 さ れ て き た 。

し か し な が ら 近 年 、 科 学 研 究 や 環 境 計 測 分 野 に お い て 、 黄 砂 な ど に 付 着 し て 運 ば れ る 重 金 属 の 輸 送 調 査 、 大 気 中 微 小 粒 子 状 物 質( P M 2 . 5 )の 動 態 解 明 、火 星 の 土 壌 調 査 に お け る 水 分 及 び ミ ネ ラ ル 分 含 有 量 の 調 査 … 等 、 定 量 分 析 も 含 め て 、即 座 に 計 測 で き る シ ス テ ム が 必 要 と さ れ る 場 面 が 増 え て き た 。 本 研 究 で は 、 こ の よ う な 昨 今 の 社 会 的 事 情 に 鑑 み 、 微 小 液 滴 を 利 用 し た L I B S に よ る 定 量 分 析 シ ス テ ム を 考 案 す る こ と に し た 。

1.4. 本 研 究 の 目 的

L I B S を 定 量 分 析 装 置 と し て 利 用 で き る 、 新 し い 分 析 シ ス テ ム を 開 発

す る こ と が 本 研 究 の 目 的 で あ る 。

L I B S は こ れ ま で 、 定 性 分 析 を す る た め に 研 究 開 発 さ れ て き た の で 、

定 量 分 析 を す る 際 に 、 従 来 の 測 定 手 法 を そ の ま ま 利 用 し た の で は 、 正 確 な 定 量 デ ー タ が 取 得 で き な い 。

定 量 分 析 を す る た め に は 、発 光 信 号 と 被 測 定 試 料 の 元 素 の 絶 対 数 量 と の 対 応 関 係 を 、 正 確 に 求 め る 必 要 が あ る 。 こ の 対 応 関 係 を 正 確 に 求 め る た め に 、 微 小 液 滴 吐 出 機 構 を L I B S シ ス テ ム に 使 用 で き る よ う に 改 良 し て 、 定 量 分 析 が 行 え る L I B S シ ス テ ム を 新 し く 開 発 し た 。

微 小 液 滴 を 用 い る 方 法 が 本 研 究 で 提 案 さ れ る 理 由 で あ る が 、微 小 液 滴 を 使 用 し な い 従 来 の L I B S 水 溶 液 計 測 で は 、 被 測 定 材 料 が プ ラ ズ マ 化 す る 際 に 、 プ ラ ズ マ 化 さ れ る 体 積 が 固 定 で き ず 、 元 素 の 絶 対 数 量 が 特 定 で き な い か ら で あ る 。

従 来 の L I B S 水 溶 液 計 測 法 を 例 に と り 、 こ の 比 較 か ら 、 本 研 究 に よ る 提 案 方 式 の 優 位 性 を 示 し 、 定 量 計 測 に は 、 微 小 液 滴 法 が 適 し て い る こ と を 以 下 に 説 明 す る 。

第 1 章 序 論

1.5. 本 研 究 の 意 義

- 微 小 液 滴 化 の 必 要 性 -

水 溶 液 を 使 用 し た L I B S 計 測 で は 、 濃 度 が 任 意 に 設 定 で き る た め 定 量 校 正 が し や す い 。 し か し 、 水 溶 液 に レ ー ザ ー が 撃 ち 込 ま れ た 際 に 、 衝 撃 波 に よ っ て 、 周 囲 に 液 滴 が 飛 散 し て し ま う た め 、 水 溶 液 試 料 に 水 流 を 与 え て 、 こ れ を 回 避 す る 工 夫 が 必 要 で あ る 。

水 溶 液 の L I B S 計 測 に は 、 そ れ ぞ れ の 用 途 に 適 し た 測 定 タ イ プ が 存 在 す る 。 研 究 事 例 を 以 下 に い く つ か 紹 介 す る 。

水 溶 液 を ビ ー カ ー 内 に 入 れ 、マ グ ネ テ ィ ッ ク ス タ ー ラ を 用 い て 水 溶 液 を 攪 拌 す る 方 法 が あ る(図 1 - 1)。 ビ ー カ ー 内 の 水 溶 液 は 、 絶 え ず 攪 拌 子 に よ っ て 攪 拌 さ れ る た め 、 可 溶 性 の 水 溶 液 の 他 、 粒 子 サ イ ズ を 人 為 的 に 設 定 し た 、 不 溶 性 の 懸 濁 液 な ど を 対 象 と す る こ と が で き る 。 通 常 の 液 体 中 で は 、 集 光 が 引 き 伸 ば さ れ て し ま う が 、 石 英 ビ ー カ ー を 集 光 レ ー ザ ー が 通 過 す る 場 合 、 プ ラ ズ マ 生 成 が 容 易 と な る た め 、 ビ ー カ ー 中 央 部 は 液 体 中 で あ っ て も 高 い 発 光 が 得 ら れ る 。回 転 の 速 度 に よ っ て は 渦 に よ る 溶 液 界 面 が 、 レ ー ザ ー の 焦 点 位 置 の 深 さ ま で 達 す る た め 、 界 面 発 光 を 作 り 出 す こ と も 可 能 で あ る 。

B e a k e r

E m u l s i f i e d

R o t a t o r

M a g n e t i c S t i r r e r

図 1 - 1 磁 気 回 転 子 を 利 用 し た L I B S 測 定 シ ス テ ム

L a s e r

D r a i n P u m p

N o z z l e Wa t e r j e t

図 1 - 2 .循 環 式 水 流 ジ ェ ッ ト 膜 を 利 用 し た L I B S 測 定 シ ス テ ム

こ の 形 式 を 利 用 す る 場 合 、水 溶 液 が 透 明 で な け れ ば 発 光 信 号 の 取 得 が 難 し く な る 。 ま た 、 界 面 発 光 を 得 よ う と し た 場 合 に 、 渦 流 表 面 に よ る 発 光 の 散 乱 の 影 響 を 考 慮 す る 必 要 が 出 て く る 。こ の た め ブ レ ー ク ダ ウ ン に 有 効 な 焦 点 領 域 を 算 出 し よ う と す れ ば 、 計 算 が 複 雑 に な る 。 こ の 測 定 形 式 は 、 粒 子 密 度 と 発 光 強 度 の 相 関 性 、 粒 子 サ イ ズ と 発 光 強 度 の 相 関 性 な ど を 究 明 す る 実 験 に 対 し て 、 効 果 的 な 方 法 で あ る 。

図 1 - 2 に 示 す 水 流 循 環 方 式 の L I B S 水 溶 液 計 測 は 、 原 子 力 発 電 プ ラ ン

ト な ど に 利 用 さ れ て い る 方 法 で あ る[ 1 - 9 ] - [ 1 - 1 4 ]。

こ れ に よ れ ば 、 ノ ズ ル か ら は 分 速 4 0 0 c m³ ほ ど の 水 流 が 水 膜 を 形 成 し な が ら 噴 射 さ れ て い る 。 こ の 水 流 に よ り 、 レ ー ザ ー が 水 膜 表 面 で プ ラ ズ マ 化 さ れ て も 、レ ン ズ へ 飛 散 す る こ と な く 水 受 け へ 水 圧 で 押 し 出 さ れ る 。

循 環 式 で あ る た め 、レ ー ザ ー 光 に よ る 水 溶 液 へ の 変 性 が 問 題 と な る が 、 初 期 検 出 を 目 的 と し た シ ス テ ム に お い て は 、合 理 的 な 設 計 で あ る と い え る 。 ま た 水 膜 は 面 積 の 広 い プ ラ ズ マ を 作 る こ と な ど か ら L I B S の 高 感 度 化 に 効 果 的 で あ る と さ れ て い る 。 さ ら に 、 高 感 度 化 を 果 た す た め に レ ー ザ ー 入 射 方 向 を 、そ れ ぞ れ 4 5 度 に 傾 斜 さ せ た 9 0 度 ダ ブ ル パ ル ス 型 の レ ー ザ ー を 利 用 す る こ と に よ り[ 1 - 1 5 ] - [ 1 - 1 8 ]、p p b レ ベ ル で の ナ ト リ ウ ム 冷 却 水 漏 れ の 検 出 が 行 え る と さ れ て い る 。

L a s e r

第 1 章 序 論

図 1 - 3 は 、 構 造 は 水 流 循 環 式 と ほ ぼ 同 じ で あ る が 、 ノ ズ ル を 水 膜 で は な く 、 霧 状 に 噴 霧 さ せ て L I B S 計 測 を 行 う 点 が 異 な る 。 霧 を 発 生 さ せ る ネ ブ ラ イ ザ ー は 、1 0 万 円 前 後 の 価 格 で あ り 、経 済 的 な 測 定 体 系 で あ る 。

し か し な が ら 、 霧 状 の 測 定 材 料 は 、 大 き さ が ば ら つ い て お り 、 霧 粒 径 は 、 霧 粒 径 2 0μm～3 0 0μm と 広 く 分 布 し て い る 。 こ の た め 測 定 材 料 の 体 積 を 一 定 に す る こ と が で き な い 。ま た 噴 霧 の 状 態 を 定 量 的 に 表 す 指 標 が 無 い 。 噴 霧 状 態 に 変 化 を 与 え る 場 合 に は 、 ネ ブ ラ イ ザ ー か ら 噴 射 さ れ る 液 体 の 流 量 を 用 い て 調 整 し 、濃 い 霧( 5 0 m L / m i n )、薄 い 霧( 3 m L / m i n )と い う 表 現 が せ い ぜ い で あ る[ 1 - 1 9 ]。 し た が っ て 、 客 観 的 な 定 量 デ ー タ を 必 要 と す る 定 量 計 測 が 難 し い 。

噴 霧 器 を 使 う メ リ ッ ト に は 、A r ガ ス な ど の キ ャ リ ア ガ ス を 併 せ て 噴 霧 で き る 点 が あ り 、 高 い 信 号 強 度 が 得 ら れ 、 測 定 感 度 を 向 上 さ せ る こ と も 可 能 で あ る 。

G a s M i s t

N e b u l i z e r

P u m p

図 1 - 3 .ネ ブ ラ イ ザ ー(噴 霧 装 置)を 利 用 し た L I B S 測 定 シ ス テ ム

L a s e r

下 記 に 示 す 表 は 、 測 定 水 溶 液 の 各 構 成 に 対 し て 、 ど の よ う な 短 所 と 長 所 が あ る の か を 、 ま と め た も の で あ る 。

各 測 定 で 、 安 定 し た デ ー タ を 取 得 す る た め に は 、 水 溶 液 が プ ラ ズ マ 化 の 衝 撃 に よ っ て 、 液 跳 ね を 起 こ し 、 レ ン ズ へ 付 着 す る こ と は 深 刻 な 問 題 で あ っ た 。

表 1 - 1 L I B S で 水 溶 液 計 測 す る 場 合 の 各 “ 水 溶 液 タ イ プ ” の 評 価

◎ 非 常 に 優 れ て い る

○ 問 題 が 無 い

△ 条 件 設 定 に よ り 改 善 が 可 能

× 問 題 回 避 が 難 し い

a . 溶 液 の 飛 散 ・ レ ン ズ へ の 付 着 問 題 の 回 避

ｂ. 液 量 の 低 下

c . 発 光 強 度

d . 発 光 位 置 安 定 性

e . レ ー ザ ー に よ る 実 験 系 へ の ダ メ ー ジ 回 避

f . 溶 液 の 透 明 度 の 許 容 性

g . 溶 液 の 粘 度 の 自 由 度

h . 溶 液 の 酸 性 度 の 許 容 性

i . 懸 濁 液 分 散 系 の 粒 径 の 自 由 度

j . 気 泡 発 生 の 回 避

k . 溶 液 の 光 学 的 ・ 熱 的 変 性 の 排 除

第 1 章 序 論

本 研 究 で は 、 水 溶 液 を 微 小 液 滴 化 す る こ と に よ り 、 測 定 に 使 用 さ れ る 試 料 の 全 容 量 が 、 孤 立 し た 状 態 で 空 間 中 に 吐 出 さ れ る た め 、 測 定 に 必 要 の な い 水 溶 液 が 、 衝 撃 波 で 飛 び 散 る 心 配 が な い 。 し た が っ て 、 微 小 液 滴 を 利 用 す る L I B S 計 測 は 、 水 溶 液 を 計 測 す る た め の 測 定 法 と し て 、 最 も 安 定 し た 実 験 方 法 の ひ と つ で あ る 。

ま た 、 近 年 、 技 術 革 新 が 進 み 、 レ ー ザ ー の ス ポ ッ ト サ イ ズ(約 5 0μm) よ り も 小 さ な 、 微 小 液 滴 を 生 成 す る こ と が で き る よ う に な り 、 本 研 究 で は 、 こ の よ う な 微 小 液 滴 を 利 用 す る こ と で 、L I B S に よ る 定 量 分 析 が で き る よ う に な る こ と を 立 証 し た 。

L I B S に よ る 定 量 分 析 で 、 微 小 液 滴 に 求 め ら れ る 用 件 は 、 次 の 通 り で

あ る 。 ま ず 、 試 料 が 液 体 の 状 態 で あ る か 、 水 （ ま た は 酸 な ど ） に 溶 け る こ と 、吐 出 に 必 要 な 適 度 の 粘 性( 0 . 4～2 0 m P a s )が あ る こ と 、液 滴 の 直 径 が ビ ー ム ス ポ ッ ト( 5 0μm )に 収 ま る サ イ ズ で あ る こ と が 求 め ら れ る 。ま た 、

L I B S で は デ ー タ 処 理 の た め に 、 試 料 材 料 が 1 0 0 個 ～1 0 0 0 個 程 度 必 要 と

な る た め 、 連 続 し て 微 小 液 滴 を 生 成 す る た め の シ ス テ ム が 必 要 で あ る 。 イ ン ク ジ ェ ッ ト 方 式 の プ リ ン タ な ど で 使 用 さ れ る 、イ ン ク ジ ェ ッ ト 技 術 を 用 い る こ と で 、L I B S の 定 量 計 測 に 必 要 な 微 小 液 滴 試 料 の 連 続 生 成 が 可 能 と な っ た 。

以 上 、 本 研 究 で 使 用 さ れ る 微 小 液 滴 は 、 全 体 積 が ブ レ ー ク ダ ウ ン す る 領 域 内 に 収 ま る の で 、 液 滴 に 存 在 す る 微 量 元 素 の 絶 対 量 に 対 し て 、 校 正 デ ー タ を 得 る こ と が 可 能 で あ る 。

こ れ に よ り 、 蛍 光 の 信 号 強 度 と 、 そ れ に 対 応 す る 元 素 の 絶 対 量 が 関 係 付 け ら れ る た め 、L I B S に よ る 定 量 分 析 が 可 能 な シ ス テ ム と し て 、 効 果 的 な 手 法 で あ る こ と が 説 明 さ れ る 。

1.6. LIBS の 測 定 原 理

L I B S に よ る 測 定 で は 、 レ ー ザ ー を 集 光 し て 測 定 材 料 に 照 射 し 、 そ の

際 に 、プ ラ ズ マ 化 し た 測 定 材 料 の 発 光 信 号 を 、分 光 器 で 波 長 成 分 を 調 べ 、 解 析 す る こ と に よ り 、 測 定 材 料 の 組 成 を 知 る 、 と い う 流 れ で デ ー タ を 得 る 。

こ こ で は L I B S の 測 定 原 理 と し て 、 レ ー ザ ー プ ラ ズ マ の 生 成 法 、 ブ レ ー ク ダ ウ ン 現 象 、 ス ペ ク ト ル 解 析 法 に つ い て 詳 し く 述 べ て み た い 。

[ 1 ] レ ー ザ ー プ ラ ズ マ の 生 成 法

本 実 験 で は 固 体 レ ー ザ ー の N d : YA G レ ー ザ ー を 用 い て 、こ れ を 外 部 か ら Q ス イ ッ チ ト リ ガ ー を か け る こ と に よ り 、8 n s の パ ル ス 幅 に 対 し て 発 振 出 力 が 圧 縮 さ れ る 。 こ の 方 法 に よ り 、 ピ ー ク パ ワ ー の 高 い パ ル ス 発 振 が 行 え る こ と が 、 本 使 用 レ ー ザ ー の 特 徴 で あ る 。

こ の レ ー ザ ー が 、 光 路 上 に 設 置 さ れ た 集 光 レ ン ズ を 介 し て 、 さ ら に 空 間 的 に 集 光 さ れ る 。 こ れ に よ り 、 単 位 面 積 あ た り を 通 過 す る 電 磁 波 の エ ネ ル ギ ー が 、 あ る 閾 値 以 上 に 達 す る と 、 そ の 領 域 に あ る 原 子 と 電 子 が 急 速 に 剥 離 し 、高 温 状 態 で プ ラ ズ マ 化 す る 。プ ラ ズ マ は 成 長 を 続 け な が ら 、 レ ー ザ ー が 通 過 す る 8 n s の 間 、 加 熱 さ れ 続 け 、 パ ル ス が 途 切 れ る と 、 物 質 の 温 度 は ゆ っ く り と 下 降 し な が ら も 、 一 定 の 温 度 を 保 つ[ 1 - 2 0 ]。

プ ラ ズ マ が 成 長 す る 過 程 で は 、 均 一 な 密 度 を 保 っ て 成 長 し て い き 、 体 積 が 膨 張 す る 。 こ れ に 伴 っ て 、 電 子 濃 度 は 急 激 に 上 昇 す る 。 プ ラ ズ マ は レ ー ザ ー の 周 波 数 と 共 鳴 し 、 こ の 周 波 数 に 達 す る 。 電 子 の 熱 制 動 放 射 に 伴 い 、プ ラ ズ マ の 温 度 と 密 度 は 、減 少 し て い く 。集 光 さ れ た レ ー ザ ー が 、 あ る 面 積 を 通 過 す る 際 に 、 十 分 な エ ネ ル ギ ー 密 度(1 0^{1 2} W / c m² 以 上)が あ る 場 合 に は 、 清 浄 気 体 に 対 し て も 、 こ の よ う な 過 程 で プ ラ ズ マ の 生 成 が 可 能 で あ る 。

第 1 章 序 論

レ ー ザ ー の 出 力 を 、 固 体 粒 子 に 対 し て 、 選 択 的 に ブ レ ー ク ダ ウ ン さ せ る よ う に 、 発 振 エ ネ ル ギ ー を 調 整 し た 場 合 に 、 ど の よ う な 現 象 が 現 れ る か を 考 察 し て い き た い 。固 体 粒 子 に レ ー ザ ー が 照 射 さ れ る 際 に 気 化 す る 過 程 及 び こ の と き に 生 じ る ブ レ ー ク ダ ウ ン 現 象 の 概 略 は 次 に 示 す 通 り で あ る 。

[ 2 ] ブ レ ー ク ダ ウ ン の 初 期 現 象

( 1 ) レ ー ザ ー 入 射 時 間 帯( t = 0～8 n s )

焦 点 位 置 で 1 0^{1 1}～1 0^{1 2} W / c m² の パ ワ ー 密 度 に 達 す る よ う に 調 整 さ れ た 集 光 ビ ー ム 光 が 微 粒 子 を 捉 え た と 仮 定 す る 。レ ー ザ ー の 照 射 に よ っ て 固 体 微 粒 子 の 表 面 か ら 固 体 が 気 化 し て い き 、 体 積 が 膨 張 す る 。

ミ ク ロ ン オ ー ダ ー の 波 長 を 持 つ ビ ー ム 光 で も 、光 子 の エ ネ ル ギ ー 流 量 の 密 度 が 高 い 場 合 、 波 長 よ り さ ら に 小 さ な ナ ノ メ ー ト ル 領 域 に 対 し て 、 非 線 形 光 学 過 程( m u l t i - p h o t o n p r o c e s s )に よ る 相 互 作 用 で 自 由 電 子 を 発 生 さ せ る こ と が で き る 。こ れ に よ っ て 気 体 状 態 に あ る 微 粒 子 は 直 ち に イ オ ン 化 さ れ る 。

イ オ ン 化 さ れ た 微 粒 子 気 体 は パ ル ス レ ー ザ ー の パ ル ス 持 続 時 間( 8 n s ) の 間 に 光 学 的 な エ ネ ル ギ ー を レ ー ザ ー か ら 吸 収 す る 。こ の エ ネ ル ギ ー 吸 収 に よ っ て 温 度 の 上 昇 が 開 始 さ れ る 。

光 子 エ ネ ル ギ ー の 吸 収 は 初 め の う ち 固 体 微 粒 子 に よ っ て 吸 収 さ れ る 。 光 プ ラ ズ マ 共 鳴 吸 収 は プ ラ ズ マ ガ ス の 温 度 が 十 分 に 上 昇 す る と 発 生 す る 。

( 2 )プ ラ ズ マ 発 光 時 間 帯( t = 1 0 0 n s～1 0μs )

パ ル ス の ブ レ ー ク オ フ 時 間 で あ る 8 n s を 過 ぎ る と 温 度 上 昇 は 停 止 し 、 そ の 後 ゆ っ く り と 温 度 が 下 降 し て い く 。プ ラ ズ マ ガ ス に よ る 放 射 光 の 極 大 期 は 、 こ の 後 に 迎 え る 。 あ る 温 度 条 件 に な る と 、 熱 運 動 す る 質 量 の 軽 い 自 由 電 子 が 、 質 量 の 重 い 電 離 原 子 か ら 、 電 磁 気 力 に よ り 制 動 さ れ て 、 ブ レ ム シ ュ ト ラ ン グ 光( B r e m s s t r a h l u n g r a d i a t i o n )が 放 射 さ れ る 。こ れ に よ っ て 発 光 量 が 最 大 値 に 達 す る 。

( 3 )蛍 光 発 光 時 間 帯( t = ～5 0μs )

原 子 は プ ラ ズ マ 状 態 か ら 温 度 が 低 下 し て い き 、さ ら に 励 起 状 態 か ら 基 底 状 態 に 電 子 が 遷 移 さ れ る と 蛍 光 を 発 生 さ せ る 。蛍 光 発 生 の 持 続 時 間 は 一 般 的 に 数 ナ ノ 秒 程 度 で あ る 。有 機 化 合 物 に お い て は 遷 移 過 程 の 違 い か ら 数 1 0 ナ ノ 秒 発 光 が 続 き 、 燐 光 と よ ば れ 区 別 さ れ る 。 量 子 ド ッ ト の よ う な 特 殊 な 結 晶 構 造 を 持 つ 人 工 的 な 物 質 に お い て は 蛍 光 時 間 が 1 0 ナ ノ 秒 を 超 え る も の も 存 在 す る 。

蛍 光 時 間 は 短 い が 、電 子 遷 移 が 観 測 さ れ る 外 的 温 度 環 境 を 保 持 す る 時 間 帯 は レ ー ザ ー の 入 射 か ら 5 0 マ イ ク ロ 秒 以 内 に お い て 励 起 緩 和 に 伴 い 蛍 光 発 光 が 観 測 さ れ て い る 。

レ ー ザ ー の エ ネ ル ギ ー を 、固 体 の ブ レ ー ク ダ ウ ン 閾 値 に 合 わ せ て 設 定 し た 場 合 、 微 粒 子 の サ イ ズ が 、 レ ー ザ ー に よ る 、 熱 的 な 伝 播 の 長 さ よ り 小 さ け れ ば 、 完 全 に プ ラ ズ マ 化 さ せ る こ と が で き る が 、 レ ー ザ ー の パ ル ス 時 間 が 短 す ぎ る と 、 前 述 し た よ う な 、 固 体 表 面 か ら の 蒸 発 が 、 微 粒 子 の 内 部 ま で 到 達 せ ず 、 微 粒 子 が 、 完 全 に プ ラ ズ マ 化 さ れ な い 。 こ の よ う な 理 由 で 、 パ ル ス 幅 を さ ら に 縮 め て 、 ピ ー ク 出 力 だ け を 向 上 さ せ て も 、 微 粒 子 の サ イ ズ を 考 慮 し な け れ ば 、 プ ラ ズ マ 生 成 に 必 要 な 、 最 適 な レ ー ザ ー 発 振 条 件 は 得 ら れ な い 。

[ 3 ] ス ペ ク ト ル 解 析 法

プ ラ ズ マ 化 し た 試 料 か ら 発 光 し た 光 は 、 最 初 に 分 光 器 へ 導 か れ る 。 分 光 器 の 構 成 は 、 次 の 通 り で あ る 。 観 測 光 を 通 過 さ せ る 入 射 ス リ ッ ト が 最 初 に あ り 、 入 射 側 に コ リ メ ー ト ミ ラ ー が 設 置 さ れ 、 入 射 光 を 平 行 反 射 す る 。 こ の 光 を 分 光 す る た め に 、 平 面 回 折 格 子 が こ の 役 目 を 果 た す 。 回 折 格 子 に よ っ て 波 長 分 解 さ れ た 光 は 、出 射 側 の コ リ メ ー ト ミ ラ ー に よ っ て 再 び 平 行 反 射 さ れ 、 出 射 側 の ス リ ッ ト か ら 、 測 定 し た い 波 長 域 の 光 が 出 射 さ れ る 。

回 折 格 子 に 出 入 射 さ れ る 光 は 凹 面 鏡 の 形 状 を 持 つ コ リ メ ー ト ミ ラ ー を 経 由 す る が 、1 枚 の ミ ラ ー を 半 分 ず つ 入 射 と 出 射 で 使 い 分 け る 方 式 は

第 1 章 序 論

「 エ バ ー ト 方 式 」 と 呼 ば れ 、1 枚 の ミ ラ ー の 同 じ 部 分 で 入 射 と 出 射 を 使 い 分 け る 方 式 は 「 リ ト ロ ー 方 式 」 と 呼 ば れ る 。 本 L I B S 測 定 シ ス テ ム で 使 用 さ れ た 分 光 器 は 「 ツ ェ ル ニ タ ー ナ 方 式 」 と 呼 ば れ る も の で 、 コ リ メ ー ト ミ ラ ー に 2 枚 の 独 立 し た 凹 面 鏡 を 用 い る 構 成 に な っ て い る(図 1 - 4 )。

本 L I B S 測 定 シ ス テ ム で は 、 出 射 側 ス リ ッ ト を 通 過 し た 光 は 、 ス ト リ

ー ク カ メ ラ に よ り 、 時 間 分 解 計 測 が 行 わ れ る 。

次 に ス ト リ ー ク カ メ ラ の 測 定 原 理 を 説 明 す る 。

ス リ ッ ト を 通 過 し た 光 は 、 最 初 に 光 電 面 に 到 達 す る 。 光 電 面 で は 光 電 効 果 に よ り 、 光 子 か ら 電 子 に 変 換 さ れ る 。 こ の と き 、 入 射 光 の 強 度 に 応 じ た 数 の 電 子 が 発 生 す る 。 加 速 電 場 に よ っ て 電 子 が 加 速 さ れ 、 途 中 で 掃 引 電 極 を 通 過 し 蛍 光 面 に 達 す る 。掃 引 電 極 で は 上 方 か ら 下 方 へ 電 子 が 振 ら れ る た め 、 蛍 光 面 上 で は 最 初 に 入 射 し た 信 号 が 上 方 に 位 置 し 、 順 に 下 方 へ と 信 号 が 配 列 さ れ る 。(図 1 - 5 )

図 1 - 4 ツ ェ ル ニ タ ー ナ 型 分 光 器 の 構 成 図 入 射 側 ス リ ッ ト

出 射 側 ス リ ッ ト 回 折 格 子

コ リ メ ー ト ミ ラ ー 入 射 光

電 子 は M C P に よ り 、 数 千 倍 ま で の 電 子 数 に 増 倍 さ れ て 、 蛍 光 面 に 衝 突 さ せ 、 再 び 光 の 信 号 に 変 換 さ れ る 。 掃 引 電 極 に よ り 電 子 は 上 か ら 下 へ 振 ら れ て い る の で 、蛍 光 面 で は 上 か ら 下 に 時 間 軸 が 設 定 さ れ る 。横 軸 は 、 分 光 器 で 分 光 さ れ た 位 置 関 係 に 対 応 す る の で 、 波 長 軸 と な る 。

図 1 - 5 ス ト リ ー ク カ メ ラ の 測 定 概 念 ス リ ッ ト

光 電 面

掃 引 電 極 蛍 光 面 M C P

(光 電 子 増 倍)

ス ト リ ー ク カ メ ラ へ の 入 射 光 第 1 章 序 論

次 に 、 ス ト リ ー ク カ メ ラ で 捉 え た 画 像 を 図 1 - 6 に 示 し 、 時 間 分 解 計 測 の 概 要 を 説 明 す る 。

L I B S シ ス テ ム に よ っ て 観 測 さ れ る プ ラ ズ マ 光 は 、 ガ ン マ 線 か ら 遠 赤 外

領 域 （ 以 遠 ） ま で 、 広 域 に 渡 り 連 続 ス ペ ク ト ル を 放 射 し て い る 。 こ の プ ラ ズ マ 光 に よ っ て 覆 い 隠 さ れ た 、 原 子 発 光 ス ペ ク ト ル を 捉 え る た め に 、 時 間 分 解 計 測 が 必 要 で あ る 。

時 間 分 解 計 測 で は 、 測 定 す る 時 間 領 域 を 決 定 す る こ と が 重 要 で あ る 。 こ の 観 測 時 間 を 、 以 降 の 記 述 で は 、 ゲ ー ト 設 定 時 間 と 呼 ぶ こ と に す る 。

ブ レ ー ク ダ ウ ン 現 象 で は 、レ ー ザ ー が 照 射 さ れ て か ら 、プ ラ ズ マ 光（ ブ レ ム シ ュ ト ラ ン グ 放 射 ） は 約 4μs の 間 発 光 し 、 蛍 光 は 約 3 0μs の 間 、 発 光 が 繰 り 返 さ れ る 。

こ の よ う に 、L I B S 測 定 シ ス テ ム で は 、 バ ッ ク グ ラ ウ ン ド と な る 、 プ ラ ズ マ 光 を 排 除 し 、 蛍 光 信 号 を 適 切 に 分 離 す る こ と で 、 測 定 デ ー タ が 得 ら れ る 。L I B S に よ る 定 量 分 析 で は 、 こ の 蛍 光 信 号 の 強 度 を 利 用 す る 。

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 Wavelength [nm]

Time[μs]

図 1 - 6 ナ ト リ ウ ム D 線 の ス ト リ ー ク カ メ ラ に よ る 撮 影 像

l o w ← i n t e n s i t y → h i g h

1.7. 本 研 究 の 新 規 性 と 独 自 性

本 研 究 で は 、新 規 シ ス テ ム の 開 発 に よ っ て 、L I B S に よ る 分 光 分 析 に 、 定 量 分 析 能 力 を 与 え た こ と が 、 研 究 の 最 大 の 特 徴 で あ る 。

既 存 の L I B S シ ス テ ム で は 通 常 、 被 測 定 物 質 の プ ラ ズ マ 化 さ れ る 部 分 の 形 状 が 複 雑 で 、 体 積 を 求 め る こ と が 困 難 で あ る た め に 、 定 量 分 析 が で き な い 。 水 溶 液 セ ル 等 を 利 用 し た 従 来 の 定 量 分 析 で も 、 水 溶 液 の 濃 度 は 正 確 に 調 整 で き て も 、プ ラ ズ マ 化 さ れ る 部 分 の 体 積 計 算 が 困 難 で あ っ た 。 こ れ に 対 し 、 本 研 究 で 提 案 し た 、 微 小 液 滴 を 利 用 し た L I B S シ ス テ ム で は 、 プ ラ ズ マ 化 さ れ る 試 料 を 水 溶 液 に 溶 か し 、 微 小 液 滴 化 に よ り 、 体 積 を 固 定 し 、 完 全 な プ ラ ズ マ 化 を 実 現 し た こ と で 、 定 量 分 析 が 可 能 に な っ た 。

こ の 新 し い L I B S シ ス テ ム を 開 発 す る に あ た り 、 次 に 掲 げ る サ ブ シ ス テ ム を 独 自 に 開 発 し た 。 す な わ ち 、( 1 )微 小 液 滴 観 測 用 の L E D ス ト ロ ボ 発 光 専 用 遅 延 回 路 、( 2 )微 小 液 滴 に レ ー ザ ー を 高 精 度 で 命 中 さ せ る た め の パ ル ス ジ ェ ネ レ ー タ 、( 3 )微 小 液 滴 吐 出 ノ ズ ル 保 護 用 ・ 小 型 シ ャ ッ タ ー 駆 動 シ ス テ ム 、( 4 )任 意 ガ ス を 微 小 液 滴 周 囲 に 滞 留 さ せ る た め の ガ ス フ ロ ー シ ス テ ム を 独 自 に 設 計 し 、 作 製 し た 。 こ れ ら の サ ブ シ ス テ ム を 新 し く 開 発 し た こ と で 、 微 小 液 滴 を 利 用 し た L I B S の 定 量 分 析 シ ス テ ム に 、 高 い 信 頼 性 と 安 定 性 を 与 え た 。

L I B S に よ る 定 量 分 析 法 に 関 連 し て 、 本 研 究 と は 異 な る ア プ ロ ー チ で

実 施 さ れ て い る 、 周 辺 研 究 と 比 較 し な が ら 、 本 研 究 の 位 置 づ け や 特 徴 に つ い て ま と め て み た い 。

定 量 分 析 を す る た め に は 、 集 光 照 射 さ れ る レ ー ザ ー の 、 ビ ー ム ス ポ ッ ト よ り も 小 さ い サ イ ズ に 、 測 定 試 料 を 成 型 加 工 す る 必 要 が あ る 。 こ の よ う な 着 想 に 基 づ い て 、レ ー ザ ー 核 融 合 の 研 究 で 利 用 さ れ て い る よ う な 被 測 定 材 料 を 使 用 す る こ と も 可 能 で あ る 。 こ れ は 、 レ ー ザ ー ス ポ ッ ト サ イ ズ よ り も 小 さ な ガ ラ ス 球(ガ ラ ス マ イ ク ロ バ ル ー ン[ 1 - 2 1 ] )や 、 ポ リ ス チ レ ン 製 の バ ル ー ン[ 1 - 2 2 ]に 測 定 試 料 を 閉 じ 込 め て 、 レ ー ザ ー を 照 射 す る と い う 方 法 で あ る 。

第 1 章 序 論

こ の よ う な 手 法 の 長 所 と し て は 、 レ ー ザ ー が 照 射 さ れ る ま で は 、 試 料 水 溶 液 が 蒸 発 し な い た め 、真 空 中 で の 測 定 が 可 能 で あ る 。こ れ に 対 し て 、 本 研 究 で は 、 被 測 定 物 質 の 試 料 が 、 微 小 液 滴 の 状 態 で あ る た め 、 真 空 へ の 吐 出 は 困 難 で あ る 。

L I B S で は 定 量 分 析 を 行 う 場 合 、1 0 0 個 ～1 0 0 0 個 の 測 定 材 料 が 必 要 に

な る 。 上 述 し た よ う な マ イ ク ロ バ ル ー ン 法 に 対 し 、 本 提 案 の 微 小 液 滴 吐 出 方 式 で は 、 一 度 に 多 量 の 液 滴 を 生 成 で き る た め 、L I B S の 定 量 分 析 に 対 し て 、 実 用 性 が 高 い 。

次 に 、 本 研 究 手 法 と 同 様 に 微 小 液 滴 を 利 用 し た L I B S の 研 究 事 例 を 示 す 。 微 小 液 滴 を L I B S に 利 用 し よ う と い う 発 想 そ の も の は 、1 9 8 8 年 の

H . A . A r c h o n t a k i ら に よ る 研 究[ 1 - 2 3 ]か ら 確 認 さ れ る 。 こ の 時 代 に は 、 ま

だ 微 小 液 滴 を 、 均 一 な 状 態 で 吐 出 す る こ と が で き な か っ た の で 、 液 滴 の サ イ ズ が 、 ビ ー ム ス ポ ッ ト よ り も 数 倍 大 き く 、 ば ら つ き も 大 き か っ た た め に 、 定 量 分 析 の 確 立 に は 至 ら な か っ た 。

微 小 液 滴 を 利 用 し た 最 近 の 研 究 事 例 と し て は 、2 0 0 5 年 の C . J a n z e n ら に よ る 研 究[ 1 - 2 4 ]が 挙 げ ら れ る 。 こ の 研 究 で は 、 液 滴 の サ イ ズ は ビ ー ム ス ポ ッ ト サ イ ズ よ り も 小 さ な も の が 使 用 さ れ て い る が 、レ ー ザ ー パ ル ス と は 無 関 係 に 、液 滴 を 連 続 吐 出 し て い る た め 、定 量 分 析 と は 区 別 さ れ る 。

こ れ ら の 研 究 に 対 し て 、 本 研 究 で 開 発 し た L I B S シ ス テ ム は 、 定 量 分 析 を 目 的 と し 、 微 小 液 滴 を 詳 細 に 観 察 し 、 そ の 挙 動 を 厳 密 に 解 析 す る こ と で 、レ ー ザ ー を 液 滴 に 1 対 1 で 命 中 さ せ る こ と が で き る 点 が 、他 に 研 究 事 例 が 無 く ユ ニ ー ク で あ る 。

本 研 究 グ ル ー プ で は 、1 9 9 0 年 代 初 頭 よ り L I B S の 測 定 機 能 の 拡 充 を 図 る た め に 、 定 量 分 析 を 含 め た 高 度 利 用 化 を 目 指 し て お り 、 本 研 究 グ ル ー プ の 若 松 宗 明 ら に よ る 、 微 粒 子 計 測 に お け る 定 量 的 評 価 法 と あ わ せ て 、 本 研 究 で 得 ら れ た 知 見 が 、 今 後 の L I B S 定 量 分 析 法 の 確 立 に 大 き く 貢 献 し て い く も の と 確 信 す る 。

1.8. 第 1 章 の 参 考 文 献

[ 1 - 1 ] H u b b l e , H . W. ; G h o s h , M . ; S h a r m a , S . K . ; H o r t o n , K . A . ; L u c e y, P. G. ; A n g e l , S . M . ; Wi e n s , R . C . ” A C o m b i n e d R e m o t e L I B S a n d R a m a n S p e c t r o s c o p i c S t u d y o f M i n e r a l s ” , 3 3 r d A n n u a l L u n a r a n d P l a n e t a r y S c i e n c e C o n f e r e n c e , M a r c h 11 - 1 5 , 2 0 0 2 , H o u s t o n , Te x a s , a b s t r a c t n o . 1 9 3 5

[ 1 - 2 ] C r e m e r s , D . A . ; S e v o s t i y a n o v a , E . V. ; G i b s o n , L . ; Wi e n s , R . C . ” L I B S A n a l y s i s o f G e o l o g i c a l S a m p l e s a t L o w P r e s s u r e s : A p p l i c a t i o n t o M a r s , t h e M o o n , a n d A s t e r o i d s ” , 3 5 t h L u n a r a n d P l a n e t a r y S c i e n c e C o n f e r e n c e , M a r c h 1 5 - 1 9 , 2 0 0 4 , L e a g u e C i t y, Te x a s , a b s t r a c t n o . 1 5 8 9 [ 1 - 3 ] F. B r e c h a n d L . C r o s s , “ O p t i c a l m i c r o e m i s s i o n s t i m u l a t e d b y a r u b y

M A S E R ” , A p p l i e d . S p e c t r o s c o p y. 1 6 , 5 9 ( 1 9 6 2 ) .

[ 1 - 4 ] E A r c h b o l d , D . W. H a r p e r a n d T. P. H u g h e s , “ Ti m e - r e s o l v e d s p e c t r o s c o p y o f l a s e r- g e n e r a t e d m i c r o p l a s m a s ” , B r i t i s h J o u r n a l o f A p p l i e d P h y s i c s, Vo l u m e 1 5 , N u m b e r 11 , 1 9 6 4

[ 1 - 5 ] M o e n k e , H . a n d M o e n k e , L . , L a s e r M i c r o - S p e c t r o c h e m i c a l A n a l y s i s ( H i l g e r, L o n d o n , 1 9 7 3 ) .

[ 1 - 6 ] D . A . C r e m e r s , L . J . R a d z i e m s k i , a n d T. R . L o r e e , “ S p e c t r o c h e m i c a l A n a l y s i s o f L i q u i d s U s i n g t h e L a s e r S p a r k ” , A p p l i e d S p e c t r o s c o p y, Vo l u m e 3 8 , 7 2 1 , ( 1 9 8 4 ) )

[ 1 - 7 ] H . A . A r c h o n t a k i a n d S . R . C r o u c h , " E v a l u a t i o n o f a n I s o l a t e d D r o p l e t S a m p l e I n t r o d u c t i o n S y s t e m f o r L a s e r- I n d u c e d B r e a k d o w n S p e c t r o s c o p y, " A p p l i e d . S p e c t r o s c o p y. Vo l u m e 4 2 , 7 4 1 - 7 4 6 ( 1 9 8 8 )

[ 1 - 8 ] L a s z l o P e t e r, Vo l k e r S t u r m , a n d R e i n h a r d N o l l “ L i q u i d s t e e l a n a l y s i s w i t h l a s e r- i n d u c e d b r e a k d o w n s p e c t r o m e t r y i n t h e v a c u u m u l t r a v i o l e t ” A p p l i e d O p t i c s / Vo l . 4 2 , N o . 3 0 , 6 1 9 9 - 6 2 0 4 , / 2 0 O c t o b e r 2 0 0 3

[ 1 - 9 ] A k i r a K u w a k o , Yu t a k a U c h i d a a n d K a t s u j i M a e d a , “ S u p e r s e n s i t i v e d e t e c t i o n o f s o d i u m i n w a t e r u s e o f d u a l - p u l s e l a s e r- i n d u c e d b r e a k d o w n s p e c t r o s c o p y ” , A p p l i e d O p t i c s / Vo l . 4 2 , N o . 3 0 / 2 0 O c t o b e r 2 0 0 3

[ 1 - 1 0 ] 竹 島 徳 幸 ， 桑 子 彰 ， 兼 本 茂 ， “発 電 プ ラ ン ト に お け る レ ー

第 1 章 序 論

ザ 応 用 計 測 技 術”， 東 芝 レ ビ ュ ーVo l . 5 5 N o . 1 0 ( 2 0 0 0 )

[ 1 - 11 ] 大 高 雅 彦 ， 永 井 桂 一 ， 荒 邦 章“レ ー ザ ー 誘 起 ブ レ ー ク ダ ウ ン プ ラ

ズ マ 発 光 の 雰 囲 気 ガ ス 密 度 影 響”， 日 本 原 子 力 学 会 2 0 0 5 年 春 の 年 会

[ 1 - 1 2 ] 永 井 桂 一 ， 大 高 雅 彦 ， 荒 邦 章“レ ー ザ ー 誘 起 ブ レ ー ク ダ ウ ン 分 光

法 に よ る ナ ト リ ウ ム 成 分 計 測 の 一 考 察”， 日 本 原 子 力 学 会 2 0 0 4 年 秋 の 年 会

[ 1 - 1 3 ] 大 高 雅 彦 ， 永 井 桂 一 ， 荒 邦 章“ナ ト リ ウ ム エ ア ロ ゾ ル の レ ー ザ ー

誘 起 ブ レ ー ク ダ ウ ン 発 光 特 性”， 日 本 原 子 力 学 会 2 0 0 4 年 春 の 年 会

[ 1 - 1 4 ] 永 井 桂 一 ， 大 高 雅 彦 ， 宮 越 博 幸 ， 林 田 均 ，“レ ー ザ ー 誘 起 ブ レ ー

ク ダ ウ ン 分 光 法 に よ る ナ ト リ ウ ム エ ア ロ ゾ ル の 検 出 特 性”，日 本 原 子 力 学 会 2 0 0 3 年 秋 の 年 会

[ 1 - 1 5 ] J o n S c a f f i d i , J a c k P e n d e r, Wi l l i a m P e a r m a n , S c o t t R . G o o d e , B i l l W.

C o l s t o n , J r. , J . C h a n c e C a r t e r, a n d S . M i c h a e l A n g e l “ D u a l - p u l s e l a s e r- i n d u c e d b r e a k d o w n s p e c t r o s c o p y w i t h c o m b i n a t i o n s o f f e m t o s e c o n d a n d n a n o s e c o n d l a s e r p u l s e ” , A p p l i e d O p t i c s / Vo l . 4 2 , N o . 3 0 , 6 0 9 9 - 6 1 0 6 , / 2 0 O c t o b e r 2 0 0 3

[ 1 - 1 6 ] A k s h a y a K u m a r, F a n g Y. Yu e h , a n d J a g d i s h P. S i n g h “ D o u b l e - p u l s e l a s e r- i n d u c e d b r e a k d o w n s p e c t r o s c o p y w i t h l i q u i d j e t s o f d i ff e r e n t t h i c k n e s s e s ” A p p l i e d O p t i c s / Vo l . 4 2 , N o . 3 0 , 6 0 4 7 - 6 0 5 1 , / 2 0 O c t o b e r 2 0 0 3

[ 1 - 1 7 ] Vi r e n d r a N . R a i , F a n g - Yu Yu e h , a n d J a g d i s h P. S i n g h “ S t u d y o f l a s e r- i n d u c e d b r e a k d o w n e m i s s i o n f r o m l i q u i d u n d e r d o u b l e - p u l s e e x c i t a t i o n ” A p p l i e d O p t i c s / Vo l . 4 2 , N o . 1 2 , 2 0 9 4 - 2 1 0 1 , / 2 0 A p r i l 2 0 0 3

[ 1 - 1 8 ] Wi l l i a m P e a r m a n , J o n S c a f f i d i , a n d S . M i c h a e l A n g e l “ D u a l - p u l s e l a s e r- i n d u c e d b r e a k d o w n s p e c t r o s c o p y i n b u l k a q u e o u s s o l u t i o n w i t h a n o r t h o g o n a l b e a m g e o m e t r y ” A p p l i e d O p t i c s / Vo l . 4 2 , N o . 3 0 , 6 0 8 5 - 6 0 9 3 , / 2 0 O c t o b e r 2 0 0 3

[ 1 - 1 9 ] A k s h a y a K u m a r, F a n g Y. Yu e h , Tr a c y M i l l e r, a n d J a g d i s h P. S i n g h ,

“ D e t e c t i o n o f t r a c e e l e m e n t s i n l i q u i d s b y l a s e r- i n d u c e d b r e a k d o w n s p e c t r o s c o p y w i t h M e i n h a r d n e b u l i z e r ” , A p p l i e d O p t i c s / Vo l . 4 2 , N o . 3 0 / 2 0 O c t o b e r 2 0 0 3

[ 1 - 2 0 ] A l e x a n d e r A n d r e e v a n d To s h i t s u g u U e d a , ” S i m u l a t i o n o f l a s e r p l a s m a e m i s s i o n c h a r a c t e r i s t i c s o f s m a l l s o l i d p a r t i c l e s i n d i f f e r e n t g a s a t m o s p h e r e s a t v a r i o u s p r e s s u r e s ” , Tr a n s . I E E o f J a p a n, Vo l . 1 2 1 - E , N o . 11 , N o v. , 2 0 0 1 .

[ 1 - 2 1 ] H i r o y u k i S h i r a g a “ H i g h - D e n s i t y I m p l o s i o n o f F u e l Ta rg e t f o r L a s e r F u s i o n ” , L a s e r R e v i e w p p . 3 0 6 - 3 1 2 , Vo l u m e . 3 2 , M a y, 2 0 0 4

[ 1 - 2 2 ] N o r i m a s a O z a k i , K a z u o Ta n a k a , K e i s u k e S h i g e m o r i , M a s a t a k a Yo s h i d a a n d K e n i c h i K o n d o , “ E x p e r i m e n t a l s t u d y o n e q u a t i o n o f s t a t e a n d i t s a p p l i c a t i o n s w i t h l a s e r- i n d u c e d s h o c k w a v e ” , J . P l a s m a F u s i o n R e s ., p p . 1 6 1 - 1 6 6 , Vo l u m e 8 1 , 2 0 0 5

[ 1 - 2 3 ] H . A . A r c h o n t a k i a n d S . R . C r o u c h , “ E v a l u a t i o n o f a n I s o l a t e d D r o p l e t S a m p l e I n t r o d u c t i o n S y s t e m f o r L a s e r- I n d u c e d B r e a k d o w n S p e c t r o s c o p y ” , A p p l i e d S p e c t r o s c o p y, Vo l . 4 2 , I s s u e 5 , p p . 7 4 1 - 7 4 6 , 1 9 8 8 .

[ 1 - 2 4 ] C h r i s t o p h J a n z e n , R ü d i g e r F l e i g e , R e i n h a r d N o l l , H e i n r i c h S c h w e n k e , Wi l h e l m L a h m a n n , J o a c h i m K n o t h , P e t e r B e a v e n , E c k a r J a n t z e n , A n d r e a s O e s t a n d P e t e r K o k e , “ A n a l y s i s o f s m a l l d r o p l e t s w i t h a n e w d e t e c t o r f o r l i q u i d c h r o m a t o g r a p h y b a s e d o n l a s e r- i n d u c e d b r e a k d o w n s p e c t r o s c o p y ” , S p e c t ro c h i m i c a A c t a P a r t B : A t o m i c S p e c t ro s c o p y, Vo l u m e 6 0 , I s s u e s 7 - 8 , 3 1 A u g u s t 2 0 0 5 , P a g e s 9 9 3 - 1 0 0 1

第 1 章 序 論

第 二 章

水 溶 液 セ ル を 利 用 し た 実 験

第 ２ 章 水 溶 液 セ ル を 利 用 し た 実 験

2.1. 緒 言

第 二 章 で は 、 本 研 究 で 提 案 す る 方 法 ：（ 水 溶 液 の 微 小 液 滴 化 ） が 、 従 来 手 法 ：（ 水 溶 液 セ ル を 使 用 す る L I B S 測 定 ） に 対 し て 、 ど の よ う な 利 点 が あ る の か を 明 確 に す る た め に 、 従 来 方 法 に よ る 実 験 結 果 か ら 、 具 体 的 な デ ー タ に 基 づ い て 、 従 来 法 の 問 題 点 を 明 ら か に す る 。

2.2. 実 験 装 置 と 実 験 方 法

水 溶 液 セ ル を 用 い た L I B S 計 測 シ ス テ ム 体 系 図 を 図 2 - 1 に 示 す 。

図2 - 1 . 水 溶 液 セ ル を 使 用 し たL I B Sシ ス テ ム

C o n d e n s e r l e n s

C o l l i m a t o r S p e c t r o g r a p h

N d : Ya g l a s e r

S t r e a k c a m e r a P C

P u l s e g e n e r a t o r O p t i c a l c e l l

第 2 章 水 溶 液 セ ル を 利 用 し た 実 験

( b ) 水 溶 液 界 面 に 焦 点 を 設 定 し た 場 合

図 2 - 1 に 示 さ れ る よ う に 、L I B S に よ る 水 溶 液 計 測 に お け る 従 来 法 の

一 例 と し て 、 光 学 セ ル （ 水 溶 液 セ ル ） を 利 用 し た 測 定 を 取 り 上 げ 、 ど の よ う な 問 題 が 生 じ る の か を 具 体 的 に 述 べ て い き た い 。

実 験 に 使 用 さ れ た 測 定 機 器 の 仕 様 は 次 の 通 り で あ る 。ブ レ ー ク ダ ウ ン 用 励 起 光 源 に は 市 販 の Q - s w i t c h e d パ ル ス N d : YA G レ ー ザ ー を 使 用 し た 。 出 力 波 長 は N d : YA G レ ー ザ ー の 基 本 波( 1 0 6 4 n m )を 用 い た 。 パ ル ス 幅 は

8 n s で 、 パ ル ス エ ネ ル ギ ー は 最 大 5 0 m J / p u l s e で あ る 。 発 振 周 波 数 は

1 , 2 , 5 , 1 0 , 2 0 H z の う ち 本 試 験 で は 2 H z を 選 択 し た 。光 路 上 に は 平 凸 型 の 直

径 2 5 m m、 焦 点 距 離 5 0 m m の レ ン ズ を 配 置 し た 。

次 に 観 測 の 流 れ を 説 明 す る 。試 料 水 溶 液 セ ル は 市 販 の 分 光 分 析 用 の 光 学 セ ル を 使 用 し た 。 塩 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 を こ の セ ル に 注 入 し 、 レ ー ザ ー を 真 上 か ら 照 射 で き る よ う に 光 学 系 を 配 し 、 水 溶 液 の 上 面 （ 界 面 ） ま た は 、 水 溶 液 内 部 を パ ル ス レ ー ザ ー の 焦 点 位 置 と し た 。 焦 点 位 置 付 近 の 塩 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 は 、 集 光 し た レ ー ザ ー が 照 射 さ れ る と 、 プ ラ ズ マ 化 さ れ る 。 こ の プ ラ ズ マ 化 で 生 じ た 発 光 信 号 が 、 コ リ メ ー ト レ ン ズ 系 を 介 し て 分 光 器 に 導 入 さ れ る 。分 光 器 で は ナ ト リ ウ ム D 線 を 分 光 し 、ス ト リ ー ク カ メ ラ に 導 き 、 時 間 分 解 測 定 を 行 っ た 。

図 2 - 2 は 、( a ) レ ー ザ ー 光 の 集 光 位 置 を 水 溶 液 の 内 部 に 設 定 し た 場 合

と 、( b )水 溶 液 の 界 面 に 設 定 し た 場 合 を そ れ ぞ れ 図 示 し た も の で あ る 。

図2 - 2 . レ ー ザ ー 焦 点 位 置 を( a )液 中 に 設 定 し た 場 合 と( b )界 面 に 設 定 し た 場 合

( a ) 水 溶 液 中 に 焦 点 を 設 定 し た 場 合

図 2 - 3 の 写 真 が 示 す よ う に 、水 溶 液 内 部 に 焦 点 位 置 を 設 定 し た 場 合( a ) 方 式 で は 、 プ ラ ズ マ は 上 下 に 細 長 く な り 、 発 光 信 号 が 弱 い 。 こ れ は 、 プ ラ ズ マ 化 す る 前 に 、集 光 光 路 上 に 空 気 と 液 体 の ２ つ の 媒 質 に よ る 屈 折 の 影 響 を 受 け る か ら で あ る 。

一 方 、 水 溶 液 界 面 に 焦 点 位 置 を 設 定 し た 場 合( b )方 式 に は 、( a )方 式 の 場 合 と 比 較 し て 強 い 発 光 信 号 が 得 ら れ 、水 溶 液 界 面 の 位 置 が 変 動 し な い 限 り 、 安 定 し た プ ラ ズ マ が 生 成 さ れ た 。

水 溶 液 が 不 透 明 な 場 合 に は 、( a )方 式 で は 測 定 が で き な い 。こ の よ う な 考 察 に よ り 、( b )方 式 を 本 実 験 で は 採 用 す る こ と に し た 。

図 2 - 3 . ( a )方 式:水 溶 液 内 部 に 焦 点 位 置 を 設 定 し た 場 合 と

( b )方 式:水 溶 液 界 面 に 焦 点 位 置 を 設 定 し た 場 合 の 発 光 信 号 の 比 較

第 2 章 水 溶 液 セ ル を 利 用 し た 実 験

2.3. 結 果 と 考 察

1.0mol_#1000_t45

-1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

587 587.5 588 588.5 589 589.5 590 590.5 591

波長[nm]

Intensity[arb.u.]

0.9_#1000_t45

-1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

587 587.5 588 588.5 589 589.5 590 590.5 591

波長[nm]

Intensity[arb.u.]

0.8_#1000_t45

-1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

587 587.5 588 588.5 589 589.5 590 590.5 591

波長[nm]

Intensity[arb.u.]

0.7_#1000_t45

-1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

587 587.5 588 588.5 589 589.5 590 590.5 591

Wavelength[nm]

Intensity[arb.u.]

0.6_#1000_t45

-1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

587 587.5 588 588.5 589 589.5 590 590.5 591

Wavelength[nm]

Intensity[arb.u.]

0.5_#1000_t45

-1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

587 587.5 588 588.5 589 589.5 590 590.5 591

Wavelength[nm]

Intensity[arb.u.]

0.4mol_#1000_t45

-1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

587 587.5 588 588.5 589 589.5 590 590.5 591

波長[nm]

Intensity[arb.u.]

0.3mol_#1000_t45

-1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

587 587.5 588 588.5 589 589.5 590 590.5 591

波長[nm]

Intensity[arb.u.]

0.1_#1000_t45

-1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

587 587.5 588 588.5 589 589.5 590 590.5 591

波長[nm]

Intensity[arb.u.]

0.2_#1000_t45

-1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

587 587.5 588 588.5 589 589.5 590 590.5 591

波長[nm]

Intensity[arb.u.]

0 . 1 m o l / L 0 . 2 m o l / L 0 . 3 m o l / L

0 . 4 m o l / L 0 . 5 m o l / L 0 . 6 m o l / L

0 . 7 m o l / L 0 . 8 m o l / L 0 . 9 m o l / L

1 . 0 m o l / L

図2 - 7食 塩 水 に お け る ナ ト リ ウ ムD線 の 信 号 強 度

（0 . 1 m o l / L～1 . 0 m o l / L、 レ ー ザ ー シ ョ ッ ト 回 数1 0 0 0回 ）