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感情科学の展開

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Academic year: 2021

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感情科学の展開

著者 雨宮 俊彦

雑誌名 関西大学社会学部紀要

巻 37

号 2

ページ 69‑70

発行年 2006‑03‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/12314

(2)

感情科学の展開

「感情科学の展開」は、

2 0 0 5

年社会学部紀要第

3 6

巻第

2

号における「感情科学に向けて」

に引き続く、感情科学に関する 2回目の特集である。

前回の特集は五つの論文からなっていた。まず「感情科学の展望」(雨宮)で、感情科 学の概観がなされた。「再生された自伝的記憶の内容に抑うつ気分が与える影響」(関ロ・

竹中)と「抑うつ気分が顔の表情認知に及ぽす影響」では、抑うつ気分と記憶、表情認知 の関連の実験的検証結果が報告された。「非臨床群における強迫観念と不合理な信念」(関 ロ・吉津)では、強迫観念の高さと不合理な信念という認知的要因の間の関連が質間紙調 査によって検証された。「献身とテロリズムの感情論理」(木村・渡邊)では、三者関係の 感情論理に基づきオウム真理教事件の分析がなされている。

今回の特集には、以下の四つの論文が掲載されている。

「怒りとその表出に関わる心理学的研究の概観」(高木修• 阿部晋吾)

「自伝的記憶と情動:情動的自伝的記憶の神経学的基盤」(関口理久子)

「非臨床群における抑うつ気分傾向が表情判断および表情に反応した認知処理過程に及 ぼす影響」(関口理久子・吉津潤• 雨宮俊彦)

「日本語オノマトペの基本感情次元と日本語音感素の基本レベルについて」(雨宮俊彦・

水谷聡秀)

「怒りとその表出に関わる心理学的研究の概観」では、怒りという社会的に重要で、そ の表出をどうすべきか扱いに難しいところのある感情の表出を例に、進化、生理、動因—

行動、認知、社会構成の側面から従来の研究を概観し、今後の研究方向の提案を行っている。

「自伝的記憶と情動:情動的自伝的記憶の神経学的基盤」では、実験心理学と神経科学の 融合領域の問題として、主に情動的自伝記憶に関連する神経部位について、

fMRI

などの 神経画像法を用いた研究を中心に、最新の膨大な文献を概観し、検討を行っている。「非 臨床群における抑うつ気分傾向が表情判断および表情に反応した認知処理過程に及ぽす影 響」では、抑うつ気分が、認知や自己・社会過程にあたえる影響について、表情判断課題 に加え、過去の記憶の再生、自己感情判断、メタ感情、感情の行動準備、メタ認知に関す る質問も含めて、仮説を実験的に検証し、総合的に評価を行っている。「日本語オノマト ペの基本感情次元と日本語音感素の基本レベルについて」は、出来事によって生起する感 情ではなく、より単純な単語の音韻のもつ感情価を対象にした研究である。日本語オノマ トペの基本的な感情的次元が

SD

法調査データの

MDS

により求められ、日本語の拍の当該 次元における感情価の調査が行われ、その分析が行われている。

‑69‑

(3)

感情は、脳、身体、認知、意識、社会関係など、多くの要因の関係した多面的な現象であり、

対人関係や自己過程、記憶、対象認知、言語、視聴覚刺激処理など多くの心理過程に関 与し一定の色合いやバイアスを与えている。感情の次元説の提唱者で知られる

R u s s e l l

こうした多面的で複雑な研究対象としての感情を巨象に璧え、感情の研究者達は、この巨 象のいろんな部分を探索しているのだと評している。

( R u s s e l l ( 2 0 0 3 )

は、この巨象を解 剖するための要となるのが、快不快と活動性の状態の基礎的な過程としての

CoreA f f e c t  

であり、これを基盤に典型的な感情エピソードや視聴覚剌激への感情価の付与など、様々 な感情現象が生ずると主張している。)

当初予定していたいくつかの論文は、諸般の事情により当号には掲載できなかったが、

ここに掲載した感情研究の現場からの報告が、前回の特集とあわせて、複雑で多面的な感 情現象の解明にむけて、なんらかの参考となれば幸いである。(雨宮俊彦)

R u s s e l l , J   , R .  2 0 0 3 .  C o r e  A f f e c t  and t h e  P s y c h o l o g i c a l  C o n s t r u c t i o n  o f  E m o t i o n ,  P s y c h o l o g i c a l   R e v i e w ,  1 1 0 ,  1 4 5 ‑ 1 7 2 .  

‑70‑

参照

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