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感情刺激が前後の記憶に及ぼす影響 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)感情刺激が前後の記憶に及ぼす影響 キーワード:感情,前後の記憶,順向健忘,逆向健忘,レストルフ現象 行動システム専攻 野畑 友恵 はじめに 感情と記憶の関係は,これまで多くの研究が行われて きたが,主として,感情を喚起した出来事自体の記憶に 焦点が当てられていた。 では, 感情が喚起されたことで, その前後の出来事にはどのような影響があるのだろうか。 感情が前後の記憶にどのような影響を与えるのかに. 方法 被験者 大学生および大学院生 46 名(男性 24 名,女 性 22 名) 刺激材料. 素材集および著作権フリーのインターネ. ット画像から選択された 100 枚の写真刺激を用いた。 感情評定および刺激特性評定. 感情評定は,. ついては,不快感情の研究において,感情喚起後の記憶. Self-Assessment Manikin(Bradley,& Lang,1994;. を抑制するという順向健忘の報告 (ex.Bornstein,Liebel,. SAM)を用いた。これは,被験者に快‐不快の度合いと,. & Scarberry,1998)や,感情喚起前の記憶を抑制する. その覚醒度を評定させる尺度であり,それぞれの評定ご. という逆向健忘の報告(ex.Loftus,& Burns,1982). とに 5 段階で評価するものである。. があり,感情が前後の記憶を阻害するということが指摘. 感情評定以外に,刺激の持つ特性について,SD 法を 用いて 5 件法で評定させた。1 つ目は,写真が単純でわ. されている。 一方,快感情においては,研究は盛んに行われてはい. かりやすいものかそれとも複雑でわかりにくいものかに. ない。また,快感情を喚起する刺激として,ヌード写真. ついて, 「単純な‐複雑な」 の中で評定させた。 2つ目は,. を用いて検討されるが(Christianson,1986),これが. 写真がどの程度日常的かどうかについて,「非日常的‐. 快感情として捉えることが適切なのか,日常感じる快感. 日常的」の中から評定させた。3 つ目は,写真に対する. 情とは異なるのではないか,という疑問がある。. 興味について, 「興味がない‐興味がある」 の中から評定. 本研究では,別々に研究されてきた快感情,不快感情 をレストルフ現象(von Restorff phenomenon)のパラ. させた。4つ目は,写真を見てどの程度驚いたのかにつ いて, 「驚いた‐驚かない」の中から評定させた。. ダイムに組み込み,それぞれの感情が前後の記憶に及ぼ. 手続き 実験は,数十人の集団,もしくは,個人で行. す影響について検討する。レストルフ現象とは,等質的. われた。被験者は,評定の冊子が配布され,評定の仕方. な項目の中に異質な項目が存在すると,その異質な項目. について説明を受けた。刺激の提示時間は2秒であり,. の記憶成績が高まるという現象(Wallace,1965;レビ. それに引き続いて 15 秒が評定時間として与えられた。. ュー)である。刺激を系列的に提示すると,一般的に U. これを 100 枚の写真すべてに行った。写真刺激は,集団. 字型の系列位置曲線が描かれるが,レストルフ現象の場. で行った場合は,パソコンからスクリーンに映し出し,. 合, 異質な項目で記憶成績が高まり W 字型になることが. 個人で行った場合は,パソコンの画面に提示された。. 報告されている。. 結果. 先行研究では, レストルフ現象のパラダイムを用いて,. 各評定項目の平均値を求めた。実験手続きの失敗によ. 前後の記憶に対する影響について検討しているものがあ. り,被験者がうまく評定できなかった数枚の写真刺激を. る。しかし,これらの研究では,他の項目との異質性の. 除いた。そして,その中から,最も快であると評定され. 大きさに焦点が当てられており,異質な項目を用いてど. た7枚の写真刺激,最も不快であると評定された7枚の. んな感情が喚起されたのか,その感情がどのように影響. 写真刺激,評定値が真ん中の3付近で,最も中性的であ. しているのかについて検討されているわけではない。. ると考えられる刺激7枚を,本実験で使用する写真刺激. そこで,本研究では,レストルフ現象のパラダイムを. として選択した。 実験1. 用いて,感情が前後の記憶に及ぼす影響について検討し. 目的 感情刺激が,前後の記憶に及ぼす影響を検討する。. た。 予備実験 目的 快,不快感情を喚起する刺激を選択する。. また,喚起する感情によってその影響が異なるのかにつ いて検討する。.

(2) p<.001]が得られた。また,一要因の分散分析では,. 方法 被験者 大学生女子 65 名が参加した。. 感情刺激前半と後半の両方で主効果が得られた[F. 刺激材料 感情を喚起する刺激として,写真スライド. (64,3)=3.59,p<.05] , [F(64,3)=3.65,p<.05] 。. を使用した。これは,予備実験によって選択され,快感. 下位検定の結果を表1,2に示す。. 情スライド 5 枚,不快感情スライド5枚,中性スライド. これらの結果から,不快条件は,感情刺激提示後,広. 5枚が用いられた。そのほかの刺激は,カタカナ2文字. い範囲にわたって順向健忘を示し,また,感情刺激提示. の無意味つづりであり,有意味度が 30 から 89 のものか. 直前の狭い範囲の記憶を低下させる逆向健忘が見られた。. ら選択された。提示される刺激は,1リスト 15 項目か. また,快条件と中性では,感情刺激直後の狭い範囲の記. らなり,感情刺激は 8 番目に挿入された。感情刺激を用. 憶を低下させる順向健忘が見られた。. いない統制群は,すべて無意味つづりで構成された。. 実験2. 手続き 実験は集団で行われた。被験者は,これから. 目的 刺激の提示時間の変化が,前後の記憶に及ぼす影. 提示されるカタカナ2文字の無意味つづり,または,写. 響にどのような違いをもたらすのかについて検討する。. 真を覚えるように教示し,刺激提示後に思い出したもの. 方法. から回答用紙に記述するように求めた。写真について記. 被験者 大学生女子 58 名が参加した。. 述するときは,何が写っていたのかを簡単に記述するよ. 刺激材料 感情を喚起する刺激として,写真スライド. うに教示した。刺激は,パソコンからスクリーンに投影. を使用した。これは,予備実験によって選択され,快感. され,それぞれ2秒間提示された。再生時間は2分間だ. 情スライド7枚,不快感情スライド7枚,中性スライド. った。. 7枚が用いられた。そのほかの刺激は,カタカナ2文字. 被験者に提示される刺激は,5 つのブロックから構成. の無意味つづりであり,有意味度が 30 から 99 のものか. されていた。1 つのブロックは,快感情刺激が 8 番目に. ら選択された。提示される刺激は,1リスト 15 項目か. 挿入される快条件,不快刺激が 8 番目に挿入される不快. らなり,感情刺激は 8 番目に挿入された。感情刺激を用. 条件,中性刺激が 8 番目に挿入される中性条件,そして. いない統制群は,すべて無意味つづりで構成された。 手続き 実験 1 とほぼ同様である。 実験 1 との違いは,. 統制条件の 4 つの条件が 1 つずつ含まれる 4 試行で,各 条件は各ブロックでランダムに提示された。ブロック間. 刺激の提示時間が4秒であり,試行数を増やし,7ブロ. は,2分間の休憩を挟んだ。. ック行った。また,再生時間は 1 分 30 秒であった。. 結果と考察. 結果と考察. 各感情条件5試行のうち,正しく再生できた再生率を. 各感情条件7試行のうち,正しく再生できた再生率を. 分析した。分析は,感情(快,不快,中性,統制)と系. 分析した。分析は,感情(快,不快,中性,統制)と系. 列位置の二要因の分散分析と,感情刺激前 7 項目と感情. 列位置の二要因の分散分析と,感情刺激前 7 項目と感情. 刺激後 7 項目の2つに分け,それぞれについて,感情条. 刺激後 7 項目の2つに分け,それぞれについて,感情条. 件において一要因の分散分析を行った。その結果,二要. 件において一要因の分散分析を行った。その結果,二要. 因の分散分析では,感情の主効果[F(64,3)=32.05,. 因の分散分析では,感情の主効果, [F(57,3)=15.97,. p<.001] ,系列位置の主効果[F(64,14)=198.55,p. p<.001] ,系列位置の主効果[F(57,14)=171.00,p. <.001] ,感情と系列位置の交互作用[F(64,42)=29.00,. <.001] ,感情と系列位置の交互作用[F(57,42)=28.08,. 表1 各実験における分析(多重比較)の結果 系列位置. 提示時間 ( 8番目). 1番目. 2番目. 3番目. 4番目. 5番目. 6番目. 7番目. 2秒. ―. 快,統<不,中. 快,中<不. 快<中. 統<快,不,中. 不<快,統. 不<快,中. 実験2. 4秒. ―. 快<不,中,統. ―. 快<中. 快,不<中. 不<中,統. 快,不,統<中. 実験3. 4秒( 1秒). ―. ―. 快<不快. ―. ―. ―. ―. 実験3. 4秒( 6秒). ―. ―. ―. ―. ―. ―. ―. 実験1. 系列位置 8番目. 9番目. 10番目. 11番目. 12番目. 13番目. 14番目. 15番目. 統<快,不,中. 快,,不,中<統. 快,不<中. ―. 中,統<不. 不<快,中. ―. 不<快,中,統. 統<快,不,中. 快,不<中,統. 不<快. ―. 不,中<快. 中<快,統. 快,不<統; 快<中. 不<中. 統<快,不,中. ―. ―. ―. ―. ―. ―. ―. 統<快,不,中. 不<中. ―. ―. ―. ―. ―. 快,不<中.

(3) 表2 前・後半 7 項目の分析結果 提示時間 ( 8番目). 前半7項目. 後半7項目. 実験1. 2秒. 快<中性. 不快<中性,統制. 実験2. 4秒. 快<不快,統制<中性. 不快<快,統制. 実験3 4秒( 1秒). 快<統制※. ―. 実験3 4秒( 6秒). ―. ―. 因の分散分析を行った。その結果,1 秒条件の二要因の 分散分析では,感情の主効果[F(15,3)=3.01,p<.05] , 系列位置の主効果[F(15,14)=39.10,p<.001],感 情と系列位置の交互作用[F(15,42)=7.81,p<.001] が得られた。また,一要因の分散分析では,感情刺激前 半は主効果の有意傾向が得られ[F(15,3)=6.17,p. p<.001]が得られた。また,一要因の分散分析では,. <.10],後半は主効果が得られなかった[F(16,3)=. 感情刺激前半後半の両方で主効果が得られ[F(57,3). 0.26,p>.10] 。. =16.11,p<.001],[F(57,3)=6.17,p<.001]。下 位結果を表1,2に示す。. 6 秒条件の二要因の分散分析では,感情の主効果[F (16,3)=42.59,p<.05] ,系列位置の主効果[F(16,14). これらの結果から,不快条件は,実験 1 と同様,感情. =39.10,p<.001],感情と系列位置の交互作用[F. 刺激提示後, 広い範囲にわたって順向健忘を示し, また,. (16,42)=5.23,p<.001]が得られた。また,一要因. 感情刺激提示直前の狭い範囲の記憶を低下させる逆向健. の分散分析では,感情刺激前半も後半も主効果は得られ. 忘が見られた。また,快条件では感情刺激直後の狭い範. なかった[F(16,3)=0.26,p>.10;F(16,3)=1.90,. 囲の記憶を低下させる順向健忘が見られ,感情刺激前の. p>.10] 。下位検定の結果を,表1,2に示す。. 広い範囲に逆向健忘が見られた。 そして, 中性条件では, 健忘は示されなかった。. これらの結果から,どの条件においても順向健忘,逆 向健忘が見られなかった。 ただし, 実験3の統制条件は,. 実験3. 8番目の刺激の提示時間がほかの項目と異なっており,. 目的 感情刺激の提示時間の違いが,前後の記憶に及ぼ. それにより,異質性が生じてしまっていることが考えら. す影響について検討する。また,喚起する感情によって. れる。よって,実験3の統制条件は,異質性が前後の記. その影響が異なるのかについて検討する。. 憶に影響を及ぼしてしまっていることが考えられ,統制. 方法. 条件として扱っていいのかという問題がある。. 被験者 大学生および大学院生 33 名であった。. 追加分析. 刺激材料 感情を喚起する刺激として,写真スライド. 実験3における統制条件の問題を検討するために,実. を使用した。これは,予備実験によって選択され,快感. 験 3 の各条件について,すべての刺激の提示時間が4秒. 情スライド5枚,不快感情スライド5枚,中性スライド. 条件であった実験2の統制条件と比較を行った。. 5枚が用いられた。そのほかの刺激は,カタカナ2文字. 分析は,実験3の統制条件を除く感情ごとに行われ,. の無意味つづりであり,有意味度が 30 から 99 のものか. 実験条件(1 秒,6 秒,実験 2 統制)×系列位置の二要. ら選択された。提示される刺激は,1リスト 15 項目か. 因で分析を行った。快条件では,系列位置の主効果[F. らなり,感情刺激は8番目に挿入された。感情刺激を用. (14,1232)=62.60,p<.001] ,交互作用[F(28,1232). いない統制条件は,すべて無意味つづりで構成された。. =11.47,p<.001]が有意であり,実験条件の主効果は. 手続き 実験は個人で行われた。刺激は,パソコンの. 得られなかった[F(2,1232)=1.43,p>.10]。不快. 画面に提示された。 手続きは, 実験1とほぼ同様である。. 条件では,系列位置の主効果[F(14,1232)=65.70,. 実験 1 との違いは,刺激の提示時間である。8番目の刺. ,交互作用[F(28,1232)=11.95,p<.001] p<.001]. 激は,1秒または6秒間提示され,そのほかは4秒間提. が有意であり,実験条件の主効果は得られなかった[F. 示された。被験者は,1 秒条件と6秒条件のいずれかに. (2,1232)=0.12,p>.10] 。中性条件では,系列位置. ランダムに割り振られた。 また, 再生時間は 1 分であり,. の主効果[F(14,1232)=65.23,p<.001] ,交互作用. ブロック間の休憩は 1 分であった。試行は,1ブロック. [F(28,1232)=9.37,p<.001]が有意であり,実験. 4試行,5ブロック行った。. 条件の主効果は得られなかった[F(2,1232)=1.18,. 結果と考察. p>.10] 。下位検定の結果は表3に示す。. 1秒条件と6秒条件は,個々に分析し,各感情条件7. これらの分析から,1 秒条件では,不快条件と快条件. 試行のうち,正しく再生できた再生率を分析した。分析. において,刺激提示直後である系列位置が9番目の刺激. は,感情(快,不快,中性,統制)と系列位置の二要因. の記憶成績が低下し,順向健忘が示された。一方,6秒. の分散分析と,感情刺激前 7 項目と感情刺激後 7 項目の. 条件では,不快条件において,系列位置が9番目の刺激. 2つに分け,それぞれについて,感情条件において一要. の記憶成績が低下し,順向健忘が示された。.

(4) 表3 実験2の統制条件と実験3との分析結果 系列位置 8. 9. 11. 快条件. 統制<1秒,6秒. 1秒<統制. 統制<6秒. 不快条件. 統制<1秒,6秒. 1秒,6秒<統制. ―. 中性条件. 統制<1秒,6秒. ―. ―. 系列位置1∼7,10,12∼15番目には有意差なし. 総合考察. 果を生じることは確認されたが,生じる感情によって生 起の有無が異なり,また,同じ感情であっても,安定し て健忘が生じるとは限らなかった。これは,感情刺激の 提示時間が関わっているのではないかと考えられる。 感情刺激の提示時間によって,感情から受ける影響の 大きさが異なり,また,感情によってその影響を最大に. 本研究では,感情を喚起する刺激が,その前後の記憶. 受ける時間が異なるのではないだろうか。本研究で用い. にどのような影響を及ぼすのかという問題について検討. られた,特に感情を喚起しない中性の刺激は,他の項目. した。また,刺激全体の提示時間,感情刺激のみの提示. と異なっているという異質性の影響をみていたと考えら. 時間を変化させることで,前後の記憶がどのように影響. れる。この条件では,すべての条件で順向健忘も逆向健. を受けるのかについて検討した。. 忘みられなかった。異質性は,提示時間が長くなればな. 順向健忘と逆向健忘の生起メカニズム. るほど異質さは減っていく。そのため,提示時間が長く. 順向健忘と逆向健忘の生起メカニズムについて検討す. なるほど,効果は小さくなると考えられる。また,繰り. る。考えられるものとして,注意の働きがある。空間的. 返し試行が行われることでも,慣れが生じると考えられ. な注意の働きとして,不快感情は,不快刺激に注意が向. る。したがって,先にあげた,刺激のひきつけ効果は弱. くため,不快刺激の周辺にある刺激に対しては注意が向. く,後続の刺激の処理は妨害されないと考えられる。. かず,符号化が阻害され,記憶成績が悪くなると考えら. 本研究において快条件は,1秒条件と4秒条件で順向. れている(Christianson,& Loftus,1987;1991) 。そ. 健忘がみられたが,6秒条件では消失した。快感情は,. こで,空間的な注意集中効果を,時間的には次のような. 提示時間が長くなるにしたがって, しだいに感情がわき,. 解釈を試みる。系列的に刺激が提示される場合,感情刺. それに伴って前後の刺激に影響を及ぼし始めるが,長く. 激に注意が集中して他の刺激に注意が払われないとうよ. なりすぎると,異質刺激と同様慣れが生じ,その影響は. りも,感情刺激に向けられた注意が,次に提示される刺. 弱まることが考えられる。したがって,先にあげた,刺. 激に対して向けるのが遅れる,感情刺激からの注意の開. 激のひきつけ効果は提示時間が長くなるにしたがって弱. 放が遅れるのではないだろうか。つまり,感情刺激にひ. くなり,提示時間が短い場合には健忘が生じるが,提示. きつけられた注意から解放されるのが遅れるため,後続. 時間が長くなると, 健忘が消失すると考えられる。 また,. の刺激は処理を開始するのが遅れ,処理時間が少なくな. 快感情では,提示時間が4秒条件で,快刺激前刺激全体. る。これは,感情刺激が提示された後の刺激は,その影. の記憶成績が悪かった。このときが快感情の影響を強く. 響を強く受けやすいと考えられ,順向健忘をよく説明す. 受ける提示時間なのかもしれない。. る。一方,感情刺激が提示される前の刺激は,感情刺激. 本研究において不快条件は,1秒条件,2秒条件,6. によって処理を開始するのが遅れるというような影響は. 秒条件のすべてにおいて,順向健忘が示された。不快感. 受けないため,健忘の効果は小さいと考えられる。しか. 情は,提示時間が長くなっても,逆に,見れば見るほど. し,刺激を符号化する処理は,刺激が提示されている間. 不快感情が強くなり,その影響を強く受けることが考え. だけではなく,刺激提示後も続いていることから,それ. られる。よって,先に挙げた刺激のひきつけ効果からの. らの妨害がどの程度受けるのかによって,逆向健忘の生. 開放は,提示時間が長くなっても速まることはなく,後. 起は左右され,結果が安定しないと考えられる。. 続の刺激処理の開始が遅れ,順向健忘が生じると考えら. しかし,生起の有無が異なる順向健忘と逆向健忘を同. れる。また,不快感情は,提示時間が4秒条件において,. じメカニズムで説明をしようとすると,難しい点が生じ. 感情刺激の後続刺激全体の記憶成績を低下させ,また,. る。Detterman(1975)は,順向健忘や逆向健忘では,. 直前2項目の記憶を低下させる逆向健忘も見られること. 生起の有無に関わる要因が異なることから,順向健忘と. から,その影響の大きさが示されていると考えられる。. 逆向健忘は違うメカニズムで生じると指摘している。そ. 今後,このようなメカニズムについて,妥当性を検証. して,一連の研究から,逆向健忘は検索の失敗によって 生じ,順向健忘は符号化の失敗によると報告している。 今後,これについて検討が必要である。 感情と健忘効果 本研究では,感情刺激を用いることによって,健忘効. することが必要である。 主要引用文献 Christianson,S-Å.& Loftus,E.F. 1987 Memory for traumatic events .. Psychology,1,225-239.. Applied Cognitive.

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