手話を第一言語とする聴覚障害幼児のナラティヴの発達
98
0
0
全文
(2) 目次. 第1章問題の所在と目的.、...............、....二..............................................................、1. 第1節 問題の所在.....................................................................1. 1.聴覚障害児教育における課題 2.聴覚障害児教育における手話 3.一次的ごとば・二次的ごとば 4、ナラティヴとは 第2節 研究の目的...............................................1..............、........7. 第2章 研究の方法............................................................8 第1節 対象児.............................................................................8. 第2節 調査方法...、..、.、....................、............................................8. 1.調査期間 2.手続き. 3.分析方法 第3章 結果.....................................................................11. 第1節 事例1 A児(3歳).................、...................................11. 1.ナラティヴの種類 2.物語の展開構造 3、母親の発話機能 第2節 事例2 B児(4歳)......................................................20. 1.ナラティヴの種類 2.物語の展開構造 3.母親の発話機能 第3節 事例3 C児(5歳)......................................................31. 1.ナラティヴの種類 2.物語の展開構造 3.母親の発話機能 第4章 総合考察..............................................................39 第1節 先行研究との関わり.......................、................................39. 1.ナラティヴィの発達. 2.心の理論 第2節 母親の働きかけについて..........................、...、.、.................41.
(3) 第3節 家庭における手話環境の保障.... 第4節 課題..... 巻末資料 引用・文献 謝辞. ・ ・ ■ … ‘ . ・ ‘ ‘ ‘ ・ ● ● ・ ・ ・ ・ … ● ● ‘ ● ‘ ・ ● ‘ ● ● ● ● ●. 42. 44.
(4) 第1章 問題の所在と目的 第1節 問題の所在 1.聴覚障害児教育における課題 経済協力開発機構学習到達度調査(PISA:Programm・for Internationaユ. Student Assessment)における読解力低下等を受け、言語力の育成が注目 されている。文部科学省の設置した言語力育成協力者会議では、言語力を 「知識と経験、論理的思考、感性・情緒等を基盤として、自らの考えを深 め、他者とコミュニケーションを行うために言語を運用するのに必要な能 力」と定義し、「事実を正確に理解し、的確に分かりやすく伝える技能を 伸ばす」「対話を通して自己表現や他者理解を促進する」といった事柄を 取り組むべき課題として取り上げている(文部科学省,2007)。古くから 聴覚障害児教育においてもコミュニケーションの力の育成が大きな柱と されてきた。しかし、聴覚障害児に関しては、聴覚経路からの言語入力が 充分保障さ・れないため、音声言語の自然な習得が阻害され、“正しい”言. 語使用の判断に必要な情報や学習が不足することにより、音韻構造を基に する文字や語彙の体系学習の獲得の困難さ、コミュニケーションの中から 生まれる慣用表現にはアクセスしにくく、それゆえに“慣用的な正しさ” を判断しにくいとされる(小田,2006)。. また、こうした障害の特性ゆえに、リテラシー(読み書き能力)の獲得 においても困難さを抱えている。習得している言葉の内容については、語 彙の量や質、語と語相互の関連性の理解や文脈把握力、文章の意味の正確 な把握、助詞の適切な使い方をはじめとする文法知識等における習得の遅 れと偏りがあると言われている。抽象的な事柄や日常あまり接しない言葉 は獲得されにくく、動詞や形容詞についても基本的なレベルでは健常児と ほぼ等しいが、複雑な感情の表現や文脈に応じた動詞の適切な使い分けは 難しい(中野・根本,2008)とされる。聴覚障害児の文理解能力に関して は、小学校3年生レベルで停滞する傾向が見られ、文理解の方略に関して は、文法的な知識の不足から、自分の経験や単語の意味を手掛かりに文を 理解する傾向がある(我妻,2000)と指摘されている。 聴覚障害児のリテラシー獲得の問題を考える時、「9歳の壁」という言葉 がよく使われる。小学校低学年では何とか学習についていけるも、抽象的 なこと事柄の学習が中心になってくると小学校高学年以降で、学力や言語 的な発達に遅れが見られる現象である。これは学力に関した問題だけにと どまらず、人格面や社会面においても影響が大きく、転換期としても重要 1.
(5) であると考えられている(脇田,2009)。. この壁をどう乗り越えていくのか、より豊かなコミュニケーションカを どう培っていくのか、現在の聴覚障害児教育における課題点であると考え られる。. 2.聴覚障害児教育における手話 現在、発達早期から手話を導入する聾学校幼稚部が全国の聾学校幼稚部 の約半数を占めるほどに増加しており(我妻,2004)、学齢期以前の聴覚 障害児が手話に触れる機会が広がっている。手話が教育現場に広く広がっ た背景として、2003(平成15)年5月に全国の聾児とその親107人が日本 弁護士連合会に対して、「耳が聞こえない子どもには日本手話で授業をし てほしい。わかる言葉で教えてほしい」という趣旨の人権救済申し立てを 行ったことが挙げられる。子どもがろうであることをそのまま認め、早期 から聾者が使っている手話、すなわち日本手話で聴覚に頼らずに教育を行 っていくことを求めるものであり、今までの口話教育に対して手話での教 育の重要性が叫ばれるようになった。こうした流れを受けて、2005(平成 17)年2月に「手話教育の充実を求める意見書」がまとめられ、国は手話 が言語であることを認め、聴覚障害者が自ら選択する言語を用いて表現す る権利を保障すること、教育委員会は手話による教育が可能となるように 環境を整備すること、聾学校では幼稚部・小学部から手話を積極的に活用 することなどを提言している(中野・根本,2008)。. 2008(平成20)年4月には、教育活動の中心に日本手話を位置づけ、手 話と日本語の習得、ろう文化と聴文化の体得を目指したバイリンガル・バ イカルチュラル教育を行う明晴学園が開校した。. 明晴学園が取り入れたバイリンガル・バイカルチュラル・アプローチと は「二言語二文化教育」と同義であり、北欧やアメリカにおいて実施され ている教育方法である(中野・根本,2008)。具体的には、聴覚障害児の 母語としての手話と聾者の文化や歴史を肯定的に捉えるとともに、その国 の音声言語は第二言語として習得を図るという考え方である。聴覚障害児 教育においては、これまで口話、指文字、キュートスピーチなど様々なコ ミュニケーション媒体を用いての教育が行われ、日本語習得を第一目標に 掲げ取り組んできた。手話に関しては、コミュニケ]ション媒体として補 助的に使われる程度で、手話を用いることで日本語習得に悪い影響がある のではないかと疑問を訴える教育関係者もいた。 しかし、近年「二言語二文化教育」の考え方に基づき、手話を聴覚障害.
(6) 児の第一言語として捉えることは今までの口話中心・音声言語中心で行わ れてきた聴覚障害児教育の歴史においても大きな変化であると言える。手 話を中心言語とした教育が広がりをみせる中で、聴覚障害児教育の課題と なる言語能力・リテラシーをどのように獲得させるのか、さまざまな取り 組みが教育現場で行われている。. 3.一次的ごとば・二次的ごとば 聴覚障害児教育において広く手話が使われることで、教師や友人とのコ ミュニケーションが音声言語に比べてスムーズに行うこ.とができ、豊かな. コミュニケーションが期待される。言語発達において、コミュニケーショ ンの深化が重要となるが、リテラシ](読み書き能力)への移行を考える 時、段階的なことばの発達があることが指摘されている。 岡本(1985)は、就学期までの子どもの言書吾発達において質的に異なる. 2つの段階で言語能力の獲得が行われていると述べている。一つ目の段階 は、「一次的ごとは」と言われ、幼稚園期に入るまでの時期で使われる言 語能力である。親のような親しい人との対面式対話の中で「今、ここ」の 話題について、ことばやそれ以外のその場にある情報を用いて会話する力 である。二つ目の段階を「二次的ごとば」とし、幼稚園期に入ってから獲 得され始める言語能力であり、自分の経験を共有していない他者に対して 「今、ここ」以外の話題について、自分で話す内容を一方的かつ論理的に 編集し、言葉のみで説明・報告する力であるとされる。加えて、話し言葉 から書き言葉への移行について、話し言葉から書き言葉に単純に移行する のではなく、「一次的語しごとば」から「二次的語しごとば」の段階を踏 むことにより「書きことば」へと移行していくと述べている(図1)。これ は音声言語同様に限らず、手話においてもそうした発達過程があるとされ る(鳥越,2001:図2)。. 児童期の子どもは、一次的ごとばによる他児や教師との対話を通して生 活的言者概念の理解を深めていきながら、二次的ごとばではそれを支えとし てより高度な言語活動へ発展させていく。こうした連関性を「ことばの重 層性」と呼ぶ(岡本,1985)。この一次的ごとばから二次的ごとばへの質 的変化について、近年、聴児が産出するナラティヴ(narratiVe)の発達 が注目されている(藤崎,1982.2002;内田,1999)。. 4.ナラティヴとは ナラティヴとは,ストーリー(StOry)と同義に扱われることも多く, 語りや物語とも訳される。具体的には自己の経験や空想の物語などにっい.
(7) て語る行為,および,そこで語られたものをさす(仲野・長崎,2009)。ナ. ラティヴを特定の言語形式、あるいは言語能力の一側面ととらえる立場も ある。荻野(2001)は、ナラティヴを「少なくとも1つの時間的結合を含 む連続した節」と定義し、やまだ(2000)はナラティヴは互換的に用いら れることが多いと断ったうえで、物語を「2つ以上の出来事を結び付けて、 筋立てる行為」と定義している。. 例えば、ある子どもが「A君が僕の玩具をとった」と「僕がA君を叩い た」という2つの出来事を伝えようとした場合、「A君が僕の玩具をとっ たから、僕がA君を叩いた」と伝えることにより、「僕がA君を叩いた」 という社会的に認められるものではない行為に対しても、ある程度の正当 性が付与され、新たな意味が生成される。しかし、2つの出来事の位置を 変え、「僕がA君を叩いた。それで、A君が僕の玩具をとった」では出来 事の意味を伝えることは出来ないばかりか、誤った解釈を与えかねない。 上記の例からも分かるように、出来事を伝える行為はナラティヴ的枠組 みにおいて特定の方法で結びつけられることではじめて意味が生み出さ れる。出来事の意味はその出来事自身において判断されるのではなく、ナ ラティヴの中での位置づけによって決定される(仲野・長崎,2009)。ナ ラティヴを産出するためには,出来事の因果関係や時間的関係,物語とし ての文法の発達が必要となる(荻野,2002)。. また,「語る」ことは「話す」ことと「書く」ことの間に位置付けられ,. 第3のコミュニケーション行為であると言われている(荻野,2002)。r話 す」ことが,特定の他者に目の前で起きていることを文脈依存的に伝達す ることだとするならば,「語る」ことは,脱文脈化され,目の前のことに 限定されない点で,「書く」ことに近い行為ともいえる。話しことばから. 書きことぱへの橋渡しとして語ること(ナラティヴ)の発達は大変重要で あると考えられる。. 4.
(8) 書き言葉 //. 話しごとば. 次 的. 語 と. は. 話しごとば 一次的ごとば (幼児) (小学生) 図1 一次的ごとばと二次的ごとばの連関性 (岡本,1985). 5.
(9) 書 き と. は 次 的 ご と. 話. ば. し ご と. ば. 話 次 的. ご. ご. と. と. ば. し. ば. 手話. 目本書吾. 図2 手話と日本語の二言語習得理論モデル (鳥越,1999).
(10) 第2節 研究の目的。 石田・森(1985)によれば、作文においては、「∼と思った」と書き手 自身が感じたことの表現が8∼9歳時に出現する。これは、5∼6歳時に発 達する内書や内的言語化が基盤となっていると述べている。先に述べたナ ラティヴにおいても、産出される内容の違いは内書の深化によっても異な ることが考えられる。. 将来的なリテラシ』(読み書き)・言語能力の獲得が実は就学期以前に 基盤が作られていることは興味深い。この時期に、豊かなコミュニケーシ ョンを育むことが重要である。. 健常児の音声言語におけるナラティヴの研究は様々に行われている(内 田,1989.1990西川,1995野本・長崎,2007など)。また、障害児における ナラティヴの発達も検討されている(荻野,2002 仲野・長崎,2009)。それ. によると、学習障害児においてはナラティヴの産出そのものにおいて困難 さが認められ、高機能自閉症児においては空想の物語よりも自己の経験を 語ることに困難さがあるなど障害の特性がナラティヴの発達を制約して いることが分かっている。難聴児の音声によるナラティヴの発達では同学. 年の聴児群と比べて出来事群を時間的空問的に関連づけさせることが少 なく、関連が不明であることや無関連の場合が多い傾向が示されている (長崎・鈴木・長崎,2000)。では、聴覚障害児でも両親がろう者で手話 を第一言語として習得するろう児の場合は、どのようなナラティヴが産出 されるのだろうか。過去の出来事いう、まさに「いま・ここ」にない“不 在のもの”を指示し、他者と共有するためには、表象手段としての言語は 不可欠である。その点において、聴覚障害児は一定の制約を抱えていると 予想されるが、natiVeSignerは比較的そうした制約を受けていないことも 先行研究より示唆されている(木下,2006)。. そこで本研究では、手話を第一言語とする聴覚障害幼児を対象として、 ナラティヴの発達がどのような発達プロセスを描くのか、また周囲の大人 がどのような働きかけを行い、ナラティヴの発達を促しているのかにっい て検討することを目的とする。.
(11) 第2章 研究の方法 第1節 対象児 健常児において,ナラティヴの内容が就学期以前の幼児期において不完 全なエピソードから完全なエピソードヘと大きな変化がみられることに 注目し,本研究においても対象児の年齢範囲とした。対象児は、両親が聴 覚障害を有している家庭(デフファミリー)であり、手話を第一言語とす る。年齢は、3∼5歳までの計3名である(Tab1e1)。 Tab1e1 対象児のプロフィール 名前. 年齢. 裸耳聴力 左耳. 右耳. 聴力機器の. 家族構成. 装用. 有/無. A B. A:3歳2ヵ月 B:4歳3ヵ月. 90dB 65dB. 90dB 65dB. 無. 有/デジタ. ル補聴器. C. C:5歳0ヵ月. 100dB. 100dB. 無. 父・母 父・母・祖父・祖母・ 妹(聴). 父・母・弟. ※聴者のみ(聴)と表し,明記のない場合は聴覚障害を持つとする。. 第2節 調査方法 1.調査期間 調査期間は、2011年4月∼2011年9月までの計6回である。 2.手続き 概ね月1回程度、対象児宅へ家庭訪問し母親とのやり取りをビデオ撮影 しナラティヴを収集した。ナラティヴの内容として,対象児が日ごろから 読んでいる絵本を用いた絵本場面,学校での出来事など過去経験の報告場 面,文字を消した“0xford Reading Tree’’による作話場面を設定し,そ. こで産出されるナラティヴの分析を行った。Oxford Reading Treeとは,. イギリスの約80%以上の小学校で採用されている国語の教科書。また, 幼児向けの英語教材としても用いられている。8∼12頁の短いお話しの 中に起承転結が分かりやすく盛り込まれている。今回は対象児の年齢を考 え,Stage1+(4∼5歳児向けのレベル)を選択した。また上記以外に, 対象児の好む話題,話しやすい話題に関しても自由に話してもらい、ナラ ティヴを収集した。.
(12) 3.分析方法 身ぶり、手話・指文字、音声記録をビデオ記録から書き起こした。先行 研究における分類カテゴリーを参考として、産出されたナラティヴを元に カテゴリーを新たに追加、削除し独自の分類カテゴリー表を作成した。 対象児については、「ナラティヴの種類」、「物語の展開構造」の各カテ. ゴリーに分類し、母親についてはr発話機能」のカテゴリー分類を行い、 分析した。各分析カテゴリーに関しては、以下の通りである。 (1)ナラティヴの種類 ナラティヴ種類(タイプ)として、特定の過去経験(パーソナル・ナラ ティヴ)と空想の物語(フィクショナル・ストーリー)があるとされてい る(仲野・長崎,2009)。. 本研究においては、母子相互交渉において発話された全ナラティヴを分 析対象としたため、上記の種類以外のナラティヴも含まれる。以下に、産 出されたナラティヴを元に分類したナラティヴの種類を示す。 Tab1e2.ナラティヴの種類. ナラティヴの種類. 内容. 過去経験. 過去に経験した内容に関するナラティヴ. テーマ話題 仮定場面. ある特定のテーマに関するナラティヴ 「もし∼」などから始まる、実際とは異なる. 絵本場面. 燉eに関するナラティヴ 絵本を通して産出されたナラティヴ 字のない絵本を通して産出されたナラティヴ. 作話場面. (2)物語の展開構造 物語構造に関する知識には、物語スキーマと物語文法がある。物語スキ ーマーはRume1hart(1975)によって提唱されたもので、物語は「開始部 一展開部一終結部」という大まかな一般構造を持つとする。これに対して、 物語文法はThomdyke(1977)が物語構造の持つ規貝■」性を記述するルール 体系として、「設定」「事件」「目標」「試行」「解決」などに細かく分類し. ている。先行研究においても、上記の物語スキーマ、物語文法を元に物語 の展開構造が設定されており、本研究においても参考にし、産出されたナ ラティヴに合わせて項目を追加、削除した。.
(13) Tab1e3.物語の展開構造 カテゴリー. 定義. 設定. 登場人物・時・場所等の紹介、話の起点となる話題. 説明. 事物の説明. 事物に関する説明. 人物の説明. 人物に関する説明. 心的反応. 登場人物の心的状態を表す. 結末. 話の結果・結末. (3)母親の発話機能 木下(2006)の分析方法を参考とし、産出されたナラティヴを元にカテ ゴリーを新たに追加、肖1」除し独自の分類カテゴリー表を作成した。. Tab1e5.母親の発話機能 カテゴリー. 定義. 引用. 相手の発話を引用して述べる. 付加. 不十分な内容、新情報などを加える. 精緻化. 情報を統合し、再提示する. 情報要求 (質問). What. すでに話題になっていることについて、より詳しい説. Who Why. 明を求める。. Where Which. How Yes−no. 応答. 相手の質問や発言への応答. 否定. 相手の質問や発言の否定. 10.
(14) 第3章 結果 第1節 事例1 A児(3歳) 1.ナラティヴの種類 産出されたナラティヴの種類は以下のようになった(Tab1e5.)。. 産出されたナラティヴは計10話であり、ナラティヴの種類は過去経験が3 話、絵本場面が6話、テーマ話題が1話であった。過去経験においては① 地震の話以外は、学校ノートと呼ばれる学校での出来事を担任教師が保護 者向けに書いた絵日記の連絡帳を通してナラティヴが産出された。また、 絵本場面においては、母親がよく読み聞かせを行っている絵本が用いられ て、ナラティヴが産出された。テーマ話題(⑨タバコの話)に関しては、 A児がお菓子をタバコのように吸いながら遊んでいた時に産出されたナラ ティヴである。. Tab1e5.A児のナラティヴの種類 産出されたナラティヴ ナラティヴの種類 ①地震の話. 過去経験. ②学校ノートを見ながらpart1. 過去経験. ③学校ノートを見ながらpart2 ④乗り物の話. 過去経験. ⑤絵本「だるまさん」. 絵本場面. ⑥絵本「おにぎり」. 絵本場面. ⑦絵本「ジャックと豆の木」. 絵本場面. ⑧絵本「そらのたび」. 絵本場面. ⑨タバコの話 ⑩絵本「みにくいあひるの子」. テ』マ話題. 絵本場面. 絵本場面. 11.
(15) 2.物語の展開構造 産出されたナラティヴを物語の展開構造により分類した(Tab1e6.)。. A児の物語の展開構造において見られた項目は、設定場面1話、説明(事 物)8話、説明(人物は)5話、心的反応7話、結果0話であった。. Tab1e6.A児の物語の展開構造 産出されたナラティヴ ①地震の話. 物語の展開構造 *説明(事物)一心的反応 *心的反応一*説明(事物). ②学校ノートを見ながらpart1 ③学校ノートを見ながらpart2 ④乗り物の話. 説明(事物). ⑤絵本「だるまさんがころんだ」. *説明(人物)一*説明(事物). ⑥絵本「おにぎり」. *説明(事物)一心的反応. ⑦絵本「ジャックと豆の木」. 設定一*説明(人物)(事物)一心的反応. ⑧絵本「そらのたび」. 説明(事物)一説明(人物). ⑨タバコの話 ⑩絵本「みにくいあひるの子」. 心的反応. *説明(事物)(人物)一心的反応. 説明(事物)一説明(人物)一心的反応. *は話の流れの中で、何度か繰り返された場合を示す。. A児のナラティヴの特徴を物語の展開構造それぞれにおいてどのよう な発話が見られたのかについて、以下に抜粋し分析した。 設定場面に関しては、⑦絵本「ジャックと豆の木」のみに見られた。 o、絵本ブジヤツクとを豆の木ノ. 162 A:木が伸びて、(お話)始めるよ∼。女の子とお父さんが痛く て寝る。(周りから見られて)恥ずかしい. ⑦だけに設定場面が見られた理由として、このお話を始める前に、「今 日は一人で読んでみて」と母親が働きかけたため、設定を含んだ語りが行 われたのではないかと考えられる。この絵本は何度も母親により読み聞か せが行われており、内容は対象児がよく理解しているものであった。また、 母親が絵本を読み始める際にタイトルを表現してから読み聞かせを行っ. ており、A死もその様子をまねて話を始めようとしたのではないかと考え られる。. 説明(人物)に関しては、母親の表現を見ながらそれをマネながら語り. 12.
(16) が展開される様子が見られた。母親の表現をまねることで一緒に登場人物 の様子を確認していた。 θ、絵本ブた“るまさんノ. 130母:ゆらゆら揺れて、頭下げて、ゆらゆら 131A:ゆらゆら揺れて、頭下げて、ゆらゆら また、母親の表現をまねするだけではなく、自分が行った行動や自分で 考えたオリジナルの登場人物の行動を入れての語りも見られた。②に関し ては、母親の発話をまねて発話されていたが、「ケーキを食べたよ」と自 分自身の行動を補足して述べている。. θ学校ノー戸を児ながらρ〃C2. 56母:誕生日会もしたね。お祝いの為に、電気を消して、ケーキの ろうそくを吹き消して、おめでとうってお祝いしたね。 57A:ケーキにろうそくの火をつけて、吹き消してケーキ食べたよ。 ⑦に関しては、自分一人で登場人物の様子を説明していた。この発話が 行われたときにA児が見ていた絵本の絵は、豆の木を主人公がのぼり、幹 にっかまりながら町を眺めている場面であったが、A児が自分で考え絵に はない内容が発話されていた。手話表現では、ロールシフトと呼ばれる登 場人物そのものを演じるという特徴がある(長南,2000)。A児において も、最後の「172 A:僕の家があった」と発話する場面では、幹に登るよ うな様子が見られ、遠くを見つめて家を発見する様子が表現されていた。 人物の説明を行う際には、主人公になりきつて表現されることがあり、3 歳児においてもロールシフトが見られることが分かった。 0絵本ブジャックと豆の木ノ 171母:(芽が伸びていく様子). 172A:(母親の表現をまねて:芽が伸びていく様子) (遠くを見つめて)僕の家があった。. 13.
(17) 説明(事物)に関しては、母親の表現を引用する様子がよく見られた(以 下波線部分)。. ⑦、絵本ブジヤツクと豆の木ノ. 167母:豆 168A:(母親の表現をまねる)豆。芽を出して伸びていくような表現。 (豆 を)前に投げる。. 169母:投げた。(豆は)誰投げたの? お母さんが投げた。豆を投げて・… (驚いた表情) 170A:(幹が伸びていく様子) 171母:(芽が伸びていく様子) 172A:(母親の表現をまねて:芽が伸びていく様子). また、A児が分からない表現があると母親の方を見て絵本を指さしなが ら母親に表現を求める場面が見られた。まだ語彙獲得が十分ではないため に母親の表現をまねることで語彙獲得が行われていたのではないかと考 えられる。. θ学校ノー戸を児ながらρ〃C2 79A:(指さし:プリント) 80母:防災訓練したね。消防車が来たね。. 81A:雨 82母=消防車から放水して、家事を火で消したね。見た? 83A:(指さし:プリント). 84母:玉入れしたね 85A:(指さし:プリント) また、rこれとこれは同じ」、rこれとこれは違う」など、色や形が共通 するもの、相違するものを母親に伝える場面が見られた。 ⑯絵本「みにくいあひるの子」. 189A:これとこれが違う 190母:違うよね。これはアヒル. 14.
(18) 心的反応に関しては、親からの働きかけにより応答として答える場面が 見られた。①では、父親が何度かr怖かったよね?」とA児に確認してい たが、A児は壁を指さすなどその質問に対しては答えようとしていなかっ た。しかし、再度父親が働きかけることにより、「うん」と応答している。 ○地窟の話 8 父:揺れた時怖かったよね? 9 A:(指さし:壁). 10父:怖かった? 11A:(ヒビのできた所をさす) 12父:家が揺れたあと、怖かったよね。 13A:(壁指さし) 14父:怖かったよね。. 15A:うん また、自発的な心的反応が見られた場面もあった。⑨では、A児はお菓 子をタバコのようにして吸いながら遊んでいる場面で、母親がその行動に 対して働きかけを行っている場面である。A児の行動から「肺の病気にな ってしまうよ。そうなりたい?」と働きかけ、A児の意見を引き出そうと している。A児は「うん」と答えるものの母親から「なんで?」と説明を 求められると答えられず、「(やっぱり)いや」と自分の心的反応を述べて いる。母親は、r病気になって死んでしまう」の発話場面において、ロー ルシフトにより本当に死んだふりをして表現していた。A児にとっても単 に「死ぬ」という単語表現だけではなく、ロールシフトにより表現される ことでその状況をより理解しやすく、r(やっぱり)いや」と自発的な発話 が引き出せたのではないかと思われる。. θタバコの話 184母:ううん。肺の病気になって死んでしまうよ。そうなりたい?. 病気 になって死にたい?. 185A:うん 186母:なんで? 187A:(やっぱり)いや 188母:いやよね。たばこは吸っちゃだめだよ。. 15.
(19) また、絵本場面においても登場人物の心的反応を発話する場面も見られ た。前後の流れとしては話が通じないものの、主人公がいじめに負けず頑 張っていく様子を(主人公は)「あとは泣かない。」と発話していた。. 自分以外の登場人物に対しても心的反応が見られた。 ⑳。絵本 ブみ/こぐいあひるのう乙ノ. 192母:いじめ 193A:(母親の表現をマネする)いじめがあって、お母さんと戦 ってお母さんが死んだ. 194母:死んだ?ほお∼. 195A=あと泣かない A児(3歳)の構造の特徴をまとめると、設定場面があまり見られず対 象児が興味を持った話題に関して前後の流れに関係なく話が始まってい た。絵本場面など、母親の読み聞かせがよく行われた内容の場合は、母親 のマネをして設定部分を語ることが可能であることが分かった。また、説 明(事物)に関して説明を行う際は母親の発話をマネすることで語りを進 める、また母親からの働きかけや表現方法が分からない単語に関しては指 さしを多用することで語りを行っていた。母親の表現をまねることで語彙 獲得が行われていたのではないかと思われる。. 指さしの多用が見られた理由として、学校ノートや絵本を見ながら語り が行われていたため、眼前にあるものを指させば意味を伝えることが容易 であったためではないかと考えられる。また、「これとこれは同じ」「これ とこれは違う」などの発話が見られ、物の色や形によってカテゴリー分け を行っている様子も見られた。説明(人物)に関しては、登場人物そのも のを演じるロールシフトが見られた。母親のマネを行うだけではなく、自 分なりに登場人物の行動を考え語りに組み入れていた。. 心的反応に関しては、親からの働きかけに答える様子も見られたが、大 半は自発的に表現されることが多く、絵本場面では登場入物の心的反応を 語るなど、自分以外の第三者の気持ちを考えることができ始めていた。物 語に合わない内容である場合もあったため、前後の流れから推測するより もその時に対象児が感じた感情を述べることもあった。 話の流れに関しては、対象児が興味を持った話題に関して語られる内容 が主であり、首尾一貫した語りを行うにはまだ物語構造が獲得されていな いと感じられた。 16.
(20) 3.母親の発話機能 母親の発話機能に関して分類した結果以下のようになった(Tab1e7.)。. A児の母親の発話機能のとして、引用はA児に自発的な発話が行われて場 面において発話されることがあった。A児の自発発話をそのままフィード バックすることでrこういう意味がな?」の確認や、A児の発話を共有す ることで会話を一方的な教示だけではなく、双方向的なやりとりに近いも のとなっていた。. ④’葉ク物の話. 91A:これはショベル。 92父:本当だね。それはどこにある?. 93A:ここ 94母:ここ 95父:そこだね。 付加は、物語の展開構造において設定から結果までの全ての項目におい て見られた。③では、A児がノートを指さしすることにより母親がそれに こたえてノ]トの内容を表現していた。常に母親が先に情報の付加を行い、. A児に学習のノートの意味を提示していた。単に学習ノートを見せ、言葉 のみを説明するのではなく、具体的に母親がその時の様子を表現すること でA児に分かりやすいように情報の付加が行われていた。. ③学校ノートを見ながらpart2 A:(指さし:ノート). 51母::トム&シェリ]見たの。. 52A:(指さし:ノート) 53母:運動会の練習終わったね。 54A:(指さし:ノート) 55母:行進とかかけっこしたね。. A児の母親の発話機能における情報要求では、What Yes−no質問が多く 見られた。Yes−no質問が見られた場面として、A児の心的反応を引き出す 意味で、父親がA児が感じているであろう心的反応を提示し、そうである かどうかを対象児に尋ねる場面で見られた。. 17.
(21) ①’地震の語. 10父:怖かった? 11A:(ヒビのできた所をさす) 12父=家が揺れたあと、怖かったよね。 13A:(壁指さし) 14父:怖かったよね。. 15A:うん また、母親が情報を付加し、「OOだよね?」とA児に確認する意味で 質問されることがあった。. 23母:(歯科検診で)歯をピンク色にして、歯磨きしたよね? (指さし A)今日歯磨きしたよね?. What質問では、絵本場面や学校ノートを母親が指さしによりrこれは 何?」と質問する場面が見られた。母親はその内容を知っている上で質問. しており、A児がそのものを知っているのかを確認する意味で質問が行わ れていた。. 精激化が行われた場面として、A児が発話した内容に対してその意味を 受けて、だからこういうことになったんだねと情報を統合し、提示が行わ れていた。. ○地震の話. 17A:違う。体が揺れて・・… ※体を揺らすような動き 地震で揺れて家が傾いて、壁にひびが入ったよ。. 18父:地震で壁にヒビが入ったよね。地震で揺れて壁にヒビが 入って大変だったよね。. 18.
(22) Tab1e7.A児母親の発話機能. 発話内容のカテゴリー・. 引用. 付加. what who. Gピソード名 ①地震の話. ○. O. ②学校ノートを見ながら. ○. ○. 応答. 情報要求. 精織化. why. where which how. 否定. Yes−no. O O. ○. 垂≠窒狽P. ③学校ノート見ながらpart2 畠. ④乗り物の話. O. ⑤絵本「だるまさん」 ⑥絵本「おにぎり」. O. ○. ○. O O O. ○ ○. ○. O O. ○. ○. ○. ○ ○. ○ ○. ○. ○ ○. O. ⑨タバコの話 ⑩絵本「みにくいあひるの子」. ○ ○. ⑦絵本「ジャックと豆の木」 ⑧絵本「そらのたび」. O. ○. ○. O. ○. O.
(23) 第2節 事例2 B児(4歳) 1.ナラティヴの種類 産出されたナラティヴの種類は以下のようになった(Tab1e8.)。. 産出されたナラティヴは計9話であり、ナラティヴの種類は過去経験が1 話、絵本場面が1話、テーマ話題が2話、仮定の語5話であった。B児は 発話児において、ビデオ撮影されていることが気になっている様子で、な かなか自発的な発話が見られなかった。そのため、母親が積極的に働きか けを行うことでナラティヴが産出されていた。母親はB児が好む話題を元 に働きかけを行ったため、rもし∼だったら」と語りかけることでB児が 興味を示し、ナラティヴ産出ができていたため、仮定の話が多かったと考 えられる。. Tab1e8.B児のナラティヴの種類 ナラティヴの種類. 産出されたナラティヴ ①前に飛行機に乗った時の話. 過去経験. ②飛行機と新幹線どっちがすき?. 仮定の話. ③こんな車、こんな家に住みたいなあ. 仮定の話. ④地図を見ながら. 仮定の話. ⑤お母さんが金髪だったら ⑥青虫の話. 仮定の話. ⑦七夕の話. テーマ話題. ⑧絵本「スノーマン」. 絵本場面. ⑨入れ歯の話. 仮定の語. テーマ話題. 20.
(24) 2.物語の展開構造 産出されたナラティヴを物語の展開構造により分類した(Tab1e.9)。. B児の物語の展開構造において見られた項目は、設定場面1話、説明(事 物)8話、説明(人物は)5話、心的反応7話、結果0話であった。 Tab1e9.B児の物語の展開構造 産出されたナラティヴ ①飛行機に乗ったときの話. 物語の展開構造 設定一*説明(事物)一心的反応. ②飛行機と新幹線どっちがす. *説明(事物)一説明(人物)一*心的反. ォ? ③こんな車、こんな家に住み. 説明(事物)*一説明(人物)一*心的反. スいなあ ④地図を見ながら. *説明(事物)一*心的反応. ⑤お母さんが金髪だったら. 説明(事物)一*心的反応一説明(人物). ⑥青虫の話. 説明(事物). ⑦七夕の話. *説明(人物)一説明(事物)一心的反応. ⑧絵本「スノーマン」. 説明(人物)一*説明(事物)一心的反応. ⑨入れ歯の話. *説明(事物)一*心的反応. *は話の流れの中で、何度か繰り返された場合を示す。. B児のナラティヴの特徴を物語の展開構造それぞれにおいてどのような 発話が見られたのかについて、以下に抜粋し分析した。 設定場面に関しては、①にのみ見られた。 (Z)砺に飛行機7こ乗…つたとまの話. 1B:O○へ行った時、飛行機が横揺れして危なかったよね。(怖か った). 2母:飛行機が離陸したけど、着陸の時に横揺れして、ちょっとび っくりしたよね。. 設定があまり見られなかった理由として、B児はビデオ撮影されながら 語りを行うことに対してあまり気持ちが乗らず、母親が積極的に働きかけ て話が展開していることが多かったため設定場面が少なかったと考えら れる。その為、母親の働きかけが行われてからB児の語りが始まることが 多かった。. 21.
(25) 説明(事物)に関しては、母親からの質問に応答する形で語られる場面 と自発的に語る場面が見られた。母親の質問に対する応答として語られた 場面では、母親は具体的な発話をB児から引き出すために、選択肢を提示 して質問することが多かった。 θこ!レな革、 こ/レな家/こ住みたいなあ. 25母:車とバイクどっちに乗りたい?. 26B:車 27母:車が良いのね。車だったら、大きい車?小さい車?車の形は いろいろあるよ。小さいかわいい車とか 28B:大きい(車がいい) B児は母親の働きかけに対して単語1語で答える様子がよく見られ、そ の応答に対して母親が再度質問を投げかけるなどして、B児が言いたい内 容をより明確により具体的にしようとしていた。. また①では、「飛行機が逆さまになった」とB児が母親に話しかけ、母 親が「逆さまはなかった」と答えている場面があり、B児が自発的にその 場面を思い出しながら話しかけていた。母親から「なかった」と否定され たことで、母親の表現をマネ「着陸の時横揺れあった」と修正を行ってお り、母子相互交渉において話が深まっている様子が見られた。また、母親 の働きかけとしてB児は単に飛行機が横揺れしたことを話しかけていたが、 母親は「着陸の時に横揺れして」とその場面を詳しく示しB児に働きかけ ていた。. ①飛行機に乗つたときの話=. 2母 飛行機が離陸したけど、着陸の時に横揺れして、ちょっとびっくり したよね。. 3B 飛行機が逆さまになった。 4母 逆さまはなかった。飛行機が飛んでる途中もよこゆれあったよね 雲の中の風が強かったから飛行機が飛んでてよこゆれあったよね. 5B うん 6母 怖いと思った?怖くなかった?どっち?. 7B 飛行機の着陸の時横揺れあった. 説明(人物)では、母親の働きかけがあって応答として言吾るのではなく、. 自発的な発話が見られた。B児が自発的に述べた内容を母親が引用して再 22.
(26) 度表現することで、B児が意図した内容を正確につかもうとする様子も見 られた。また、下記の発話から今現在の自分だけでなく未来の自分を語る ことが出来るようになっていることが分かり、現在・未来を含めた時間的 な概念を獲得していることが分かる。. θ飛行機と薪牽廠どっちが好き9. 16B:僕が大きくなったら700(系)乗れると思う。14歳になっ たら700(系)に乗れると思う. 17母:(Bが)大きくなったら、自分で(新幹線に)乗れると思う よ. また、自分のことだけではなく絵本や話の登場人物を表す為に、ロール シフトが見られた。登場人物の様子をより具体的に表現することができて いた。母親はその発話を受けて、B児の発話を繰り返し表現していた。 ○古タの話. 165母: 食べる草をあげていなかったよね。草が食べられなかった から、牛はお腹がへるよね。あと、機織りを織り姫はやっ てなかったよね。神様はそれで怒ったね. 167B:. うん. 168母: 神様はなんて怒ったの?. 169B: 仕事やってない 170母: 仕事をやってなかったから怒ったのね? 171 B: 織り姫と彦星はすいませんっていった 172母: すいませんって言ったね. θお母さんが金菱だ’ったら. 119B:. 足に. 120母: それはマニキュア。黄色いマニキュアできれいにするの?. 121B:. (すまして歩く様子). 122母: (すまして歩く様子)がいい?. 123B:うん. 23.
(27) 心的反応に関しては、母親の働きかけに応答として発話されることが多 かった。r怖いと思った?」との働きかけに、B児はrうん」と答えるな ど、母親がその時の心的反応に関して先に提示、確認する形でB児の心的 反応を引き出していた。. ①飛行機に乗つたときの話 飛行機が逆さまになった 4母: 逆さまはなかった。飛行機が飛んでる途中もよこゆれあった よね。雲の中の風が強かったから飛行機が飛んでてよこゆれ あったよね. 3B:. 5B:. うん. 6母: 怖いと思った?怖くなかった?どっち? 7B: 飛行機の着陸の時横揺れあった 8母: 怖いと思った? 9B: 怖かった。飛行機の横揺れがあった また、選択肢を提示することでその中から対象児が意図するものを選ば せる様子も見られた。. 以下の発話では、「遠いところへ行きたい」と言ったB児に対して何が見 たいのかを母親が質問している場面である。母親は選択肢を提示すること でB児の発話を引き出そうとしている。B児の発話「遠いところを見に行 きたい」だけでは、意味の曖昧さが残っていたが、母親が選択肢を提示し. て答えさせたことで、より具体的にB児が見たい物を引き出すことが出来 ている。. θ飛行機と薪弾嫉どっちがナき9. 18B: 遠いところを見に行きたい 19母: 何が見たい?海とか、きれいなお城とか、何が見たい? 20B: バイクが見たい. 24.
(28) θお母さんが金髪だったら. 119B:. 足に. 120母: それはマニキュア。黄色いマニキュアできれいにするの?. 121B:. (すまして歩く様子). 122母= (すまして歩く様子)がいい?. 123B:うん 0古タの話 165母: 食べる草をあげていなかったよね。草が食べられなかった から、牛はお腹がへるよね。あと、機織りを織り姫はやっ てなかったよね。神様はそれで怒ったね. 167B:. うん. 168母: 神様はなんて怒ったの?. 169B= 仕事やってない 170母: 仕事をやってなかったから怒ったのね? 171 B: 織り姫と彦星はすいませんっていった 172母: すいませんって言ったね 結末に関しては、対象児の集中が切れる、他の物に興味がうつってしま うなどして、話の結末まで話して終わる場面は見られなかった。. または母親が最後に今まで話した内容をまとめてB児に伝えるなどして 話が終わっていた。 (Z)一所に飛行機季に一乗った時の一審. 7B:飛行機の着陸の時横揺れあった 8母:怖いと思った? 9B:怖かった。飛行機の横揺れがあった。 10母:そうそう、あったよね。ママも少しびっくりした。飛行機が着陸す るとき、ちょっとびっくりしたけど、あとは無事だったよね。. 25.
(29) B児(4歳)の物語構造の特徴をまとめると、設定場面は過去経験の話 においてみられ、「O○へ行ったとき、飛行機が横揺れして危なかづたよ ね」と時・様子・自分の心的反応を加えて母親への働きかけが行われてい た。他の場面では、ビデオ撮影されることが気に掛かり自発的な設定場面 は見られなかったが、過去経験の設定場面が話された様子を見ると、自発 的な設定場面の語りが可能となっていることが分かる。. 説明に関しては、母親からの選択肢を提示され選ぶ形で語りが行われて いる場面もあったが、自発的にそのものの様子を語る場面も見られ前後の 流れを受けて自発白勺に語ることも可能となっていた。また、人物に関する 説明を行う際には事物の説明に比べて自発的な発話が増えていた。人物を 説明する際には、3歳児と同様に口]ルシフトが見られ、登場人物の心的 反応や行動が表情や動きにより表現されていた。また、仮定の話を通して 自分の将来に関する語りが見られる、今・未来を含めた時問的な概念を獲 得していることが分かった。 心的反応に関しては、母親が代弁するまたは質問に対する応答として発 話される様子が見られた。自発的な心的発話は見られなかったものの、登 場人物がなぜその感情を抱いたかなどの説明を行うことが出来ており、心 的反応についても理解していることが分かった。 結末に関しては、対象児の興味集中が切れてしまい結末を見通した語り を行うことはまだ難しいように感じられた。. 26.
(30) 3.母親の発話機能 母親の発話機能に関して分類した結果以下のようになった(Tab1e10、)。. 発話機能の項目が最も含まれており、B児の母親の発話特徴を示している ⑤の話の分析結果を以下に示す。. ⑤’お母さんが金髪だったら:日本語 86母: (髪の毛発見)Bの?. 87B:. うん. 88母: 長さは、長い?短い?. 89B:. 長い. 90母: 長いよね。それはママの抜けた毛。髪が抜けていくと、最後、禿 になる. 91B:. うん. 92母: どうする?. 93B:. ため. 94母: ママ、禿でもいい?. 95B:. (首を振る). 96母: 心配?. 97B:. 心配. 98母: 困る?. 99B:. うん. 100母 かつらって知っている?かつらをかぶればいい?. 101B うん. 102母 かつらでも短い、長いとかいろいろある. 103B うん. 104母 私は、どっちがいい?かつらはなにがいい?. 105B 黄色. 106母 黄色がいい?黄色でも長さが、短い、中くらい、長いとかあるけ ど、何がいい?. 107B 長いのがいい 108母 黄色くて長いのがいい?黄色くて長い髪でろう学校に行ったら、 みんなにびっくりされると思う。それでいい? 109B うん 11O母 アメリカみたいな金髪がいい? 111 B うん 27.
(31) 112母:へえ∼。ママは黒色がいいなあ. 113B:いや 114母:いや?金髪でロングがいいの 115B:やっぱり黄色の靴をはいて歩いてほしい. 116母:何. 117B:黄色 118母:待って2つの…. 119B:足に 120母:それはマニキュア。黄色マニキュアできれいにするの 121B:(すまして歩く様子) 122母:(すまして歩く様子)がいい?. 123B:うん 124母:靴はどんな高さの靴が良い?. 125B:高い靴が良い 126母:パンプスでマニキュアを付けて金髪のママがいい?私は今のまま がいレ、けどなあ。. 127B:首振る 128母:はずかしいなあ。私で歩いてたら周りから見られるし、恥ずかし いなあ。. B児の母親の発話機能の特徴として、情報要求の際にWhich・Yes−no 質問が見られることが多かった。設定場面は母親から始まっており、B児 にYes−no質問をすることで発話されていた。また、その事物に対して「88 長さは長い?短い?」とB児の目の前にあるものに対して質問がされ、B 児の発話を促している。次の母親の発話では「90髪が抜けていくと最後、 禿になる」今までは目の前にあるものを前提に話が進められていたが、こ の発話以降「もしも∼だったら」といった内容である仮定の話となってい く。「92どうする?」と選択肢を提示することなくB児の自由な発話が求 められた。その後、「96心配?」とB児の心的反応を引き出すための質問 が行われる。母親が心的反応を提示することでB児の心的反応を引き出そ うとしている。後半部分では、自発的に髪の色は黄色がいいと答えたB児 に対して「106 黄色がいい?黄色でも長さが、短い、中くらい、長いと かあるけど何がいい?」と選択肢を提示して質問が行われ、より具体的な 内容を引き出そうとしている。B児が応答として答える場合は1語である 28.
(32) 場合が多いため、母親は何度か質問を行いより具体的な内容へと導いてい ることが分かる。結論部分においては、他者から見られて恥ずかしいとい った母親の心的反応を含めて語られていた。B児の自発的な発話が見られ なかったため、母親が身近なものをテ]マとして話題をひろげ、話を展開 していた。事物の説明や心的反応などは母親による質問で展開しており、 B児の発話ができる内容に合わせて母親が働きかけていることが分かっ た。. 29.
(33) Tab1e10.B児母親の発話機能. 発話内容のカテゴリー. 引用. 付加. what Who. Gピソード名 ①前に飛行機に乗った時の話. why. where which how. O. ○. ②飛行機と新幹線どっちがす. ○. ォ? ③こんな車、こんな家に住みた. ○. ○. 応答. 情報要求. 精織化. O. ○. ○. ○. ○. ○. 否定. Yes−no. ○. ○. ○. 「なあ. 9. ④地図を見ながら. ⑤お母さんが金髪だったら. ○. ○. ○. O. ○. ○. ○. ⑦七タの話. ○. ○ ○. ○. O. ⑨入れ歯の話. ○. ○. ○. ○. ○. ⑥青虫の話. ⑧絵本「スノーマン」. ○. ○. ○. ○. O ○. ○. ○ ○. ○ ○. ○ ○. O.
(34) 第3節 事例3 C児(5歳) 1.ナラティヴの種類 産出されたナラティヴの種類は以下のようになった(Tab1e1O.)。. 産出されたナラティヴは計4話であり、ナラティヴの種類は過去経験が3 話、作話場面が1話、テーマ話題が1話であった。C児においては、撮影 開始時が遅かったため、A・B児に比べて少ないナラティヴ数となった。 Tab1e11.C児のナラティヴの種類 産出されたナラティヴ ナラティヴの種類 ①けんかの話. 過去経験. ②作話. 作話場面. ③七夕の話. テーマ話題. ③熊の話. 過去経験. ④地震の話. 過去経験. 2.C児の物語の展開構造 産出されたナラティヴを物語の展開構造により分類した(Tab1e.11)。. C児の物語の展開構造において見られた項目は、設定場面4話、説明(事 物)5話、説明(人物)5話、心的反応5話、結果3話であった。 Tab1e12,C児の物語の展開構造. 産出されたナラティヴ ①けんかの話. 物語の展開構造 設定一*説明(人物)一*心的反応一結末. ②作話. 設定一説明(事物)一説明(人物)一心的反 梭鼬許. ③七夕の話. 設定一*説明(人物)一説明(事物)一心的. ス応一結末 ④熊の話. *説明(事物)一心的反応一説明(人物). ⑤地震の話. *説明(人物)一心的反応一*説明(人物) *は話の流れの中で、何度か繰り返された場合を示す。. C児のナラティヴの特徴を物語の展開構造それぞれにおいてどのような 発話が見られたのかについて、以下に抜粋し分析した。 設定場面に関しては、発話開始時にこれから話す内容のテーマとなる一 言を必ず入れて発話されていた。C児は母親だけでなく、ビデオ撮影して 31.
(35) いた私に対しても話しかけるように発話を行っていた。そのため、母親が 知っている内容でも私は全く知らない内容である場合があったため、発話 開始時に設定を入れて語りが展開されていたのではないかと思われる。相 手がどれだけ知っていて知らないのかを考え、話を構成することが可能で あるため、母親に学校での出来事を報告する際など、母親に対して初めて 語る内容の場合は発話開始時に設定を入れて話を始めていた。 αプんかの話. 1C:(友人)Aと(友人)Bがけんかした 2母:なんで? θ古タの話. 19 C:7月7日に着物を着て(学校で)遊んだ、なんで遊んだかと いうと、7月7日は七夕で、織り姫と彦星が会えるからそ れと同じように着物を着て刺した。. 説明(事物)に関しては、以下の発話に見られるように相手に機織りを 伝えるために、鶴の恩返しにも機織りが出ていたことを引用して伝えよう としていることが分かる。相手に分かりやすいように伝える工夫が見られ る。. θ古タの話. 22母:行使ってやるのは分かるよ。七夕で2人が会うのはなぜ? 23C:意味は分からない。先生が言ってたけど、忘れた。織り姫は、 機織り、鶴の恩返しみたいな。. また、2つの物を比較してどちらが強いのかを母親に聴いている場面が あった。C児は、今回の東北の震災を受けて地震に興味を持っていた。ま た、広島に行った経験があり原爆に対しての興味も持っていた。以下の発 話は原爆と地震の威力に関しての質問であり、被害を受けるという点でど ちらの影響が強いかといった、見た目に似ている・違うというカテゴリー 分けではなく、被害の影響と言ったより抽象的なものの比較に対して興味 をもっていた。. 32.
(36) θ地震の話=. 61C:うん。オーバー?地震と空爆はどっちが強い? 62母:地震と空爆? 63C:どっちが強い? 説明(人物)に関しては、①においてけんかした時の様子が語られてい る。C児はけんかになるまでの経緯を話しつつ、友人Aの身長が低いため けんかをしても負けることが分かっていた為、自分が友人Aを助けるため にけんかに加わったと説明している。出来事が起こる背景的要因に加えて、. 相手がなぜその行動に出るのか、また自分がその行動に出るのかの理由を 組み込みながら言吾りが行われていた。. ○げんかの話. 3C: Bが書いた字がきれいに見えなくて、Aが代わりに書いてあ げたらBが怒ってけんかになった 4母: けんかになったの? 5C: (Aが)怒ってたから助けようと思った 6母: 助ける?. 7C: Aは身長が低いから、助けて2対1でけんかした また、以下の発話では作話場面において見られた説明(人物)である。 絵に登場していた2人の登場人物の会話を手話文法であるロールシフトを 用いることで、表現していた。 0作話 “0x危∫ゴ月θ∂〃刀8〃θθ”. ※大きな足跡を子どもたちが発見して、恐竜や怪獣の足跡ではないかと話 し合っていたが、お父さんが大きな足跡を付けて歩いていたという話。. 18C:(3ぺ一ジ目) 首が長い動物が走った足跡じゃないかなあ?へえ∼本当? 心的反応に関しては、友人が怒ったという友人の心的反応を表現するだ けではなく、なぜその感情になったのかの理由も加えて語りが行われてい た。. ○げんかの話. 3C:Bが書いた字がきれいに見えなくて、Aが代わりに書いてあ げたらBが怒ってけんかになった 33.
(37) また、③では具体的な場面を提示して、織姫と彦星は2人が神様から呼 び集められて会えるときはうれしいと心的反応が生まれる場面も含めた 語りが行われていた。. θ古タの話. 24母:彦星の仕事は何? 25C:食べる草あげる。織り姫と会えない。会いたいから(神様が 2人を呼び)会えるときは、うれしい 結末に関しては、母親が最後どうなったのかを質問し、応答する形で発 話される場合もあったが、自発的に語られることもあり結末をまでを意識 して語りを展開することが可能であることが分かる。 ○げんかの話=. 10一母:解決方法は何?. 11C:相談して決めた。仲直りしよって決めた 12母:誰が終わり、終わりって言ったの?. 13C:(友人)C 14母:Cが? 15C:すぐにご飯食べた 作話場面における結末には、最後どのような状況になったのかというこ とと、それに対して登場人物がどのように感じたかといった心的反応を含 めて語られている。結末の語り方を含めて、首尾一貫した語りが獲得され ていた。 θ炉房=“0x允r♂刀θ∂♂加8作θθ”. ※大きな足跡を子どもたちが発見して、恐竜や怪獣の足跡ではないかと話 し合っていたが、お父さんが大きな足跡を付けて歩いていたという話。. 18C:(4ぺ」ジ目) 男の子がお母さんに誰だと思うと聞くと、お母さんは大き な足跡の男じゃないかなあといった。そうかなあ∼(主人 公のっぶやき). (5ぺ一ジ目) お父さんだと思う。(絵を見て)なあ∼んだ C児の物語構造の特徴をまとめると、設定場面から結末までの首尾一貫 34.
(38) した発話が可能となっていた。話の最初には設定を自発的に語られ、事 物・人物の説明においては他の話の例を持ってくるなど相手に話が伝わり やすいようにする工夫が見られた。母親からの働きかけはあまり見られず、 C児が自分なりに物語を構成し語られていた。たまたま、テーマ話題にお いて4歳児と同じテーマの話が話されていたが、ロールシフトを用いて3 人の登場人物の様子やそれぞれの心的反応、また結末までを入れた語りを 行っていた。. 心的反応に関しては自分を含めて、他者や絵本の登場人物など自分以外 の第三者の感情を推測して語ることが可能であり、なぜその感情を抱いた のかなどそれに至る経緯も含めて語ることが可能であった。 結末においては、登場人物の心的反応を加えるなどして自発的に語りが 行われていた。. 3.母親の発話機能 母親の発話機能に関して分類した結果以下のようになった(Tab1e13.)。. ○けんかの語. 1C: AとBとのけんか 2母: なんで喧嘩したの? 3C: Bが書いた字がきれいに見えなくて、Aが代わりに書いてあげたら Bが怒って喧嘩になった 4母: なぜ(Cも加わって)けんかになったの? 5C: (Aが)怒ってたから助けようと思った 6母: 助ける?. 7C: Aは身長が低いから、助けて2対1でけんかした 8母: けんかの時間は長かったの? 9C: (友人)Cが終わり終わりって言ったけど、見えなくてそのまま喧. 10母. 嘩が続いた 解決方法は何?. 11C. 相談して決めた。仲直りしよって決めた. 12母. 誰が終わり、終わりって言ったの?. 13C. (友人)C. 14母. Cが? すぐにご飯が食べたいって お互いに分かったいって話し合って仲直りしたんだね。ごめんっ. 15C. 16母. ていったの? 35.
(39) 17C:A(マジックで腕に書かれる)はトイレ行ってせっけん ずつで腕を洗ってた。. C児が設定部分である「1AとBとのけんか」と述べると母親はC児の 発話に対して、「2なんで喧嘩したの?」とその出来事が行った原因につ いて尋ねている。C児は母親からの働きかけを受けて、出来事が起こった 原因を述べるが、再度「4なぜ(Cも加わって)けんかになったの?」と 尋ねており、以前に断片的に聞いていた話であったため、再度確認を行っ ている。それに応答したC児の発話を繰り返し引用することで、より詳し い状況の説明を求め、C児の発話を促している。また「8けんかの時間は 長かったの?」と時間的な概念を質問しており、C児が時間的概念を獲得 していることが分かる。話の後半において、話の結末である解決方法を引 出し、C死との会話が終わっていた。 ①の話が学校で起こった内容であり、C児は知っているが母親は知らな い内容である。C児はその時の様子を語るが、母親がWh質問を投げかけ ることで、出来事が起こった経緯やC児がその行動をとった理由、結末に どうなったかといった内容をC児から引き出していた。母親の働きかけは 他の対象児に比べて少なく、より詳しい説明を求める為の質問が多く見ら れた。また、他の対象児に多く見られた情報の付加は見られず、C児が中 心となって発話が行われていることが分かった。 C児の母親が情報の付加を行う場面として、以下の話の中で見られた。 ④熊の語. 36C:熊は、山の中で餌を集めるから疲れると思う 37母:大丈夫だよ. 38C:疲れると思う 39母:山の中で暮らしていて、熊のおうちが山の中にあるのが普通だか ら疲れないよ。大丈夫だよ 40C:(熊が歩く様子)なんで? 41母:なんで?!山の中が家だから熊は自分の家で疲れないよ。Cは家 にいたら疲れる?. 情報付加を行う場面として、C児の発話が母親の考えと異なる場合にC 児の発話に対して母親の発話を伝える様子が見られ、またC児がrなんで?」 と母親に働きかけを行っている場合に見られた。他の対象児に比べて情報 36.
(40) 付加が行われることは少なく、C児が母親に働きかけた時に付加が行われ ていることから、C児の発話を中心とした語りが行われており、母親の働 きかけの仕方が変化していることが分かる。. 37.
(41) Tab1e13.C児母親の発話機能. 発話内容のカテゴリー. 引用. 付加. what who. Gピソード名 ①けんかの話. ○. 応答. 情報要求. 精激化. ○. ○. why. where which how. .否定. Yes−no. ○. ○. ②作話“OxfordReadingTree” ③七夕の話. 0. ④熊の話. ○. ⑤地震の話. ○. O. ○. O. ○. ○. ○. 竃. ○. ○.
(42) 第4章 総合考察 本研究では、手話を第一言語とする聴覚障害幼児を対象として、ナラテ ィヴの発達がどのような発達プロセスを描くのか、また周囲の大人がどの ような働きかけを行い、ナラティヴの発達を促しているのかについて検討 することを目的としていた。. 第1節 先行研究との関わり 1. ナラティヴの発達 長崎・鈴木・長崎(2000)は、健聴児年中児∼小学4年生までの59名と 難聴児小学1年∼4年生までの4名を対象とし自己経験についての報告の 構成と内容の分析から、物語の発達に関する特徴を検討している。 その結果、・健聴児では、構成面では年中児から年長児にかけてエピソー. ド数と出来事数が共に増加するが、学齢児ではエピソードを限定し、より 多くの出来事によってテーマをより詳細に語ろうとする傾向が見られた。 また、エピソード間の空間的・時系列的な結合が増加し、内容面では年長 児で他者への言及が増加するとともに、学齢児では心的状態への言及が増. 加した。一方難聴児では、他者や心的状態への言及の出現とエピソード 間・出来事間の時系列化にやや遅れが見られ、聴覚障害児が物語において 自己及び他者の心的状態への言及に問題を持つ可能性を示唆している。 本研究において見られた結果として、A児(3歳)、B児(4歳)は母親 からの働きかけにより心的反応が見られるものの、ロールシフトを用いる ことにより登場人物の心的反応を表情や動きによって表現する様子が見 られた。また、C児(5歳)においては語りの中に自己及び他者の心的反 応に関して発話することができ、またなぜそのような感情を抱いたかにつ いての説明を加えて発話することも可能であった。 木下(2006)は手話の特徴として、手話=手のサインという誤解がある が、表情や視線、感情はもちろん、発話の主客を示すなど重要な殺害1」を担. っていることを指摘しており、「感情」など音声言語だけでは指示しにく. い内容についても手話は極めて有効に機能していると述べている。本研究 における対象児においても心的反応を発話する際に手話が有効に機能し たのではないかと考えられる。. 2.心の理論 難聴児が、他者や心的状態への言及の出現とエピソード間・出来事間の 時系列化にやや遅れが見られる要因として、「心の理論」の獲得困難さが 指摘されている(長崎・鈴木・長崎,2000)。 39.
関連したドキュメント
また自分で育てようとした母親達にとっても、女性が働く職場が限られていた当時の
親子で美容院にい くことが念願の夢 だった母。スタッフ とのふれあいや、心 遣いが嬉しくて、涙 が溢れて止まらな
遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば
単に,南北を指す磁石くらいはあったのではないかと思
自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から
にちなんでいる。夢の中で考えたことが続いていて、眠気がいつまでも続く。早朝に出かけ
下山にはいり、ABさんの名案でロープでつ ながれた子供たちには笑ってしまいました。つ
のニーズを伝え、そんなにたぶんこうしてほしいねんみたいな話しを具体的にしてるわけではない し、まぁそのあとは