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十二指腸腫瘍の診断と治療 第56巻11号3763頁

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(1)

総 説

十二指腸腫瘍の診断と治療

遠藤 昌樹

1) , 2)

 松本 主之

1)

 菅井   有

3)

1) 岩手医科大学医学部 内科学講座消化器内科消化管分野, 2) 開運橋消化器内科クリニック, 3) 岩手医科大学医学部 病理診断学講座

要  旨

十二指腸腺腫や早期癌の発見は増加しているが,疾患の頻度の低さもあり鑑別診断については曖昧な点

が多い.生検による腺腫,早期癌の診断も容易ではなく,内視鏡診断・病理学的診断ともに他の消化管

に比し課題が多いのが現状である.内視鏡治療に関しても適応の問題,手技の困難性,偶発症が高率で

ある点などが問題である.さらに,鑑別診断を考える上では非腫瘍性隆起性病変の特徴を知ることも重

要である.異所性胃粘膜とブルンネル腺過形成の頻度が高いが,拡大所見を含めた詳細な観察で鑑別が

可能である.また腸型の腺腫・粘膜内癌では絨毛の白色化が特徴であり,重要な所見である.白色化と

粘液形質の関連など臨床病理学的な検証が今後の課題といえる.

Key words 十二指腸腺腫/十二指腸癌/EMR/ESD/拡大内視鏡/異所性胃粘膜/ブルンネル腺

過形成/粘液形質

Ⅰ 緒  言

 十二指腸は小腸の一部に区分され,粘膜は絨毛

と陰窩からなる.一方,Brunner 腺と呼ばれる粘

液腺が十二指腸に特徴的であり,内視鏡診断や治

療を行う上でも重要となる.パンエンドスコピー

の普及により十二指腸の腺腫や早期癌の発見頻度

は増加しているとはいえ,疾患の頻度の低さもあ

り未だ鑑別診断については不明の点が多い.さら

に,生検による腺腫,早期癌の診断も容易ではな

1)

,内視鏡診断・病理学的診断ともに他の消化

管に比し課題が多い.

 十二指腸病変の内視鏡治療に関しては一定の適

応基準はなく,偶発症の報告も多い.原因として

深部十二指腸における内視鏡操作の不安定性や解

剖学的な壁の薄さ,胆汁・膵液の影響などがあり

容易には解決困難である.本稿では十二指腸腫瘍

の鑑 別

2) ∼ 4)

と内視鏡治療の現状について解説する.

Ⅱ 十二指腸の解剖と特徴

 十二指腸の大部分は脊柱の右側に位置する.ほ

ぼ第一腰椎の高さより存在する全長 25∼30cm の

短い消化管であり,球部・下行部・水平部・上行

部 の 4 区 域に分かれ る

5)

.組織学的には小腸の一

部であり,絨毛(villi)と固有腺である Lieberkühn

腺が存在する.さらに,十二指腸に特異的な粘液

腺である Brunner 腺が存在する.Brunner 腺は,

粘膜深層から粘膜下層に認める幽門腺類似の粘液

腺であり,通常球部に発達し,肛門側に向かうに

伴い減少する.特に十二指腸主乳頭より肛門側で

顕著に減少する.また胃や大腸に比し粘膜固有層

内のリンパ管,血管が豊富である点も特徴であ

る.他にリンパ球,形質細胞などの炎症細胞浸潤

も目立ち,リンパ濾胞は表層に接し,小隆起を呈

する事があ る

6)

Gastroenterol Endosc 2014;56:3763-74. Masaki ENDO

Diagnosis and Treatment of Duodenal Tumors. 別刷請求先:〒 020 - 0022 岩手県盛岡市大通 3 丁目 9 - 3       開運橋消化器内科クリニック

(2)

Ⅲ 腫瘍性病変と鑑別診断

1 .腺腫,粘膜内癌

臨床病理学的特徴

 乳頭部を除く十二指腸上皮性腫瘍の剖検例での

発見頻度 は 1 % 以 下

7) ∼ 9)

であり,癌に限れば全消

化管癌の 0.3%程度とされ る

10)

.近年の内視鏡ス

クリーニング時の報告では発見率は内視鏡施行例

の 0.03%前後とされてい る

11) , 12)

.男性に多く,部

位別では球部または下行部に多いとする報告が多

13) , 14)

 色調として病変の白色化が極めて高率であり,

田中 ら

15)

はこの白色化を腺腫・早期癌に特徴的な

所見として報告している.さらに,白色化は吸収

上皮細胞内の脂肪粒の存在によるものであり,腫

瘍化によるカイロミクロンの過剰な合成・分泌が

要因であろうと推察している.さらに,稲土 ら

11)

リンパ流の停滞も白色化に関与している可能性を

述べている.脂肪粒は Sudan 染色,Oil - red 染色,

adipophilin 染 色

16)

で確認可能であり,腫瘍化した

上皮では高率に陽性となるが,非腫瘍部では陰性

である.Yoshimura ら

17)

は十二指腸腫瘍における

上皮の白色化を milk - white mucosa と呼称し,更

にその分布と異型度の関係についても言及してい

る.すなわち,白色化を entire - type と辺縁白色

にとどまる marginal type に分類し,marginal

type では病理学的に高度異型腺腫と粘膜内癌が

有意に多かったと述べている.

 十二指腸腺腫は組織学的に腸型腺腫,胃型腺腫,

Brunner 腺腫に大別され,腸型が圧倒的に多い.

一方,異型度の判定法として十二指腸独自の一定

の基準はない.組織型としては,他の消化管より

も tubulovillous adenoma の頻度が高い.癌の組織

発生ルートとしては de novo 発生,十二指腸腺腫

の癌化,Brunner 腺の癌化,異所性胃粘膜の癌化,

迷入膵の癌化などが考えられている.

 田邉 ら

18)

は十二指腸腺腫の粘液形質を部位別に

検討している.その結果,球部・下行部では胃型

が優位であり,水平部・上行部では腸型が多かっ

たとしている.さらに,田邉らは胃型形質を呈す

る十二指腸腺腫の既報告例の大部分が近位十二指

腸に発生していることを指摘し,近位十二指腸の

d e f Figure 1

a:球部前壁の Ⅱa 型胃型腺腫.milk - white mucosa が明瞭.NBI 拡大観察にて reticular / sulciolar pattern を呈する. b:CD10 は陰性であった.

c:MUC5AC 陰性であった. d:腫瘍部の MUC 6 陽性であった.

e:腫瘍の白色部に一致して adipophilin 染色陽性であった. f :腫瘍の白色部に一致して villin 染色陽性であった.

(3)

腺腫の発生母地が異所性胃粘膜や胃上皮化生など

胃粘膜であろうと推測してい る

19) , 20)

.筆者らは

十二指腸腺腫・早期癌 33 例の粘液形質を MUC2,

MUC5AC,MUC6,CD10 を用いて免疫組織学的

に検討したところ,胃 型 7 例 ,腸型 24 例(小腸型

23 例,大腸 型 1 例 ),混合 型 2 例 に分類された.

部位別の検討では,球部の 85.8%が胃型,下行部

の 85.7%が腸型,水平脚では全例が腸型の形質を

呈していた.また,粘液形質と白色化との関係を

検討したところ,非白色 化 4 例 はすべて胃型形質

であった.ただし,胃型症例 の 3 例 にも白色部を

認めた( Figure 1 ).この結果は,白色化は腸型

に特異的とする稲土 ら

11)

の報告とは若干異なって

いた.今後,抗 villin 抗体などの免疫染色により

検討を続ける予定である.

内視鏡所見

 十二指腸腺腫の肉眼型を大腸癌取り扱い規約に

準じて分類した報告によれば,山中 ら

7)

は腺腫 11

例全例が隆起性であり,そのう ち 8 例 が Ⅰs ない

し Ⅱa の広基性隆起型であったとしている.同様

に,川元 ら

13)

も 80%が Ⅰs または Ⅱa であったと述

べている.一方,稲土 ら

11)

は 15 例 中 6 例 に Ⅱc ま

たは Ⅱa + Ⅱc が認められ,従来の報告に比し陥凹

型および平坦型の頻度が高いことを報告してい

る.また,藤澤 ら

21)

が早期癌の文献報告例 246 例

a b c d Figure 2 a:convoluted pattern. b:leaf pattern.

c:reticular / sulciolar pattern. d:colon like pattern.

(4)

を検討したところ,93%が隆起型であり,陥凹型

は 7 % に過ぎなかったとしている.これに対し,

久居 ら

22)

は陥凹型の報告が増加傾向にあることを

指摘してい る

23) ∼ 25)

.現状では高度異型腺腫と粘

膜内癌との鑑別は病理学的にも困難な例も多く,

形態や色調などの内視鏡所見の特徴に関しても両

者を同じカテゴリーとして検討すべきであろう.

 拡大内視鏡に関する報告は極めて少な い

26) , 27)

十二指腸における拡大内視鏡像を理解する上で

は,絨毛の形態についての整理が重要と思われ

る.絨毛外形は指状,葉状,尾根状,旋回状 の 4

型 が混在して見られ る

28)

.これらの絨毛は隣接し

ているため,基部から先端部まで観察することは

不可能である.従って,大腸のような腺開口部に

よる診断とは異なり,絨毛そのものの外形観察に

よる診断が要求される.

 Yoshimura ら

17)

は腫瘍の表面構造を

homoge-neous と obscure に分け,前者は十二指腸上皮性

腫瘍全例で観察されたのに対し,後者は高度異型

腺腫・粘膜内癌で認められ,その陽性率は陥凹型

病変で有意に高かったとしている.筆者 ら

29)

は十

二指腸上皮性腫瘍の拡大内視鏡所見を convoluted

pattern,leaf pattern,reticular / sulciolar pattern,

colon like pattern に分類している( Figure 2 ).

腫瘍化した絨毛に癒合・分岐が認められる

convo-luted pattern,ひとつひとつの絨毛が独立した leaf

pattern,丈の低い腺管が密に存在する reticular /

sulciolar pattern が重要である.一方,表面型病

変では大腸に近い pit の観察が可能な例もあり

(colon like pattern),従来の大腸拡大内視鏡診断

a b

c

Figure 3

a:下行部の Ⅱa 型腺腫.

b:NBI 観察にて微細血管像は全く観察されない.

c: クリスタルバイオレット染色にて colon like Ⅲ - L pattern を認 める.

(5)

学が応用可能と思われる.

 拡大診断では血管観察も重要である.絨毛内部

にはループ状の毛細血管が観察され,組織学的に

は 1 つ の絨毛に小動脈が 1 ∼ 2 本流入し,絨毛上

端から毛細血管網を広げる.Yoshimura ら

17)

は微

小血管構築像を network pattern と intra villous

stricture(IVS)pattern に分類し,network pattern

は高度異型腺腫・粘膜内癌,特に陥凹型に高率で

あることを報告している.colon like pattern 以外

の表面微細構造で異型度や深達度を診断するのは

困難であるが,微小血管構築像は質的診断に寄与

すると考えられる.しかしながら,前述のごとく

十二指腸では白色化が極めて高率に認められるた

め,血管の観察が困難な場合があることも念頭に

置く必要がある( Figure 3 ).

内視鏡治療

 十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療の報告は,

1970 年代から散見され る

30) ∼ 32)

が多数例の報告は

ない.また,適応に関する明確な基準もないが,

リンパ節転移のない粘膜内病変に対して内視鏡治

療が施行されてい る

33) ∼ 36)

.腺腫に関しては,生検

による良悪性の鑑別が困難であることから,切除

対象を粘膜内癌に限定されてはいない.経過観察

ないし内視鏡的治療の選択においては,長期予後

も重要である.この点から,Okada ら

37)

は高度異

型腺腫,および 20mm 以上の腺腫は癌化の可能性

が高く治療対象にするべきと述べている.他の消

化管では,基本的に転移のリスクを考慮すること

で内視鏡治療の適応が明確になるのに対し,十二

指腸病変は症例の集積が少なく転移のリスクが明

確でないこと,手技が困難であり偶発症が高率で

あることなどの問題点がある.

 手技が困難となる理由として,下行部以深では

内視鏡操作自体が不安定となること,球部にはブ

ルンネル腺が存在するため局注による粘膜挙上が

不十分であること,先行する生検による線維化を

きたしやすいこと,腸壁が極めて薄いこと,漿膜

を欠くことなどが挙げられる.これらのうち,回

避可能なものは生検による線維化のみである.従

著者 症例数 腫瘍径 方法 穿孔 出血 Oka ら38) 13 例 15 病変 3-30mm EMR 0 % 6.7%(後出血) Hirasawa ら39) 13 例 14 病変 5-14mm EMR 0 % 0 % Apel ら40) 18 例 20 病変 8-50mm EMR+ APC 0 % 7.1%(術中) Lepilliez ら41) 36 例 37 病変 4-50mm EMR+ APC 2.3% 11.6%(後出血) Alexander ら42) 21 例 15-60mm EMR 0 % 4.3%(後出血) Honda ら46) 14 例 15 病変 4-39mm ESD/ EMR ESD: 9 EMR: 6 ESD:22.2% ESD:22.2%(後出血) EMR:16.7%(後出血) Sohn ら43) 24 例 10mm 以下( 8 例) 10-20mm(13 例) 他記載なし EMR 0 % 29.2%(術中) 竹内ら47) 20 例 4-26mm ESD 15%(術中) 5 %(遅発) 0 % Maruoka ら44) 23 例 26 病変 3-22mm EMR/ ESD ESD: 1 EMR:25 0 % 34.1%(術中) 11.5%(後出血) Matsumoto ら48) 7 例 6-60mm ESD 14.3%(術中) 14.3%(術中) 14.3%(後出血) Inoue ら49) 63 例 67 病変 3-35mm EMR/ ESD ESD:12 EMR:55 3.2%(術中) 6.3%(遅発) 8.0%(後出血) 小野ら50) 421 例 記載なし EMR/ ESD ESD:167 EMR:254 ESD:19%(術中) 6 %(遅発) EMR:2.8%(術中)1.2%(遅発) ESD:5.5%(後出血) EMR:8.4%(後出血) Endo ら29) 16 例 2-30mm EMR/ ESD ESD: 5 EMR:11 6.2%(術中) 0 %(遅発) 0 %(術中) 0 %(後出血) Table 1  十二指腸腺腫,早期癌に対する内視鏡治療偶発症の頻度.

(6)

って,白色化や拡大所見に基づく診断法の確立に

より不要な生検を避けることが肝要と思われる.

 実際の手技として EMR による術中,術後の

孔の報告は決して高率ではな い

38) ∼ 45)

.一方 ESD

施行例の 孔率は 14.3∼22.2 %

46) ∼ 50)

と極めて高い

( Table 1 ).この事実から,藤 城

51)

は現時点で下

行脚以深での ESD を推奨する安全性は担保され

ていないことを明言している.しかしながら 孔

については術中 孔と術後の遅発 孔を別個に考

える必要がある.術中 孔の多くは内視鏡の不安

定性,線維化の存在に起因し,特に線維化のない

例では 孔率を改善できる可能性がある.これに

対し,遅発 孔に対する対策は確立されていない.

しかし,術中の過度の止血通電,筋層損傷が遅発

孔の主たる原因であり,術中操作が最も重要で

あろう.加えて,膵液,胆汁の暴露も遅発 孔の

危険因子と考えられる.対策として蛋白酵素阻害

剤や酢酸オクトレオチドの投与,endoscopic

naso-biliary drainage(ENBD),endoscopic

nasopancre-atic drainage(ENPD)が有効との報告があ る

47)

切除後潰瘍の防御側として金属クリップを用いた

粘膜縫 合

52)

も有用であるが Inoue ら

49)

はクリップ

による完全縫 合 2 例 で遅発 孔を認め,クリップ

の逸脱が原因であると考察している.更に確実な粘

膜縫合術として over the scope clip(OTSC;Ovesco

Endoscopy, Tübingen, Germany )

53)

が有用との報

告もあ る

54)

( Figure 4 ).他にも,ポリグリコー

ル酸を材料とした吸収性縫合補強材(Neo - veil,

Gunze Co., Kyoto, Japan)を潰瘍底に貼付しフィ

ブリン糊(Beriplast P combi - set, CSL Behring

Pharma, Tokyo, Japan)で固定する方法も報告さ

れてい る

55)

.しかしながらいずれも症例報告に過

ぎず,今後多数例での検証が必要である.

 外科内視鏡合同手術の報告も散見す る

56) ∼ 58)

本法は局在が半周以下の高度異型腺腫,および粘

膜内癌が対象となる.部位の制限や腫瘍の腹腔内

a d b e c f Figure 4 a:下行部の Ⅱa 型腺腫. b:EMR を施行し一括切除した. c:OTSC system を装着し,フード内に切除後潰瘍の断端を吸引する. d:OTSC をリリースし,切除後潰瘍を縫縮した. e:切除潰瘍の外側から内視鏡的全層縫合術を施行した. f :EMR より 約 2 カ 月後の内視鏡像.

(7)

露出,撒布の可能性など解決すべき問題はあるが,

低侵襲かつ内視鏡単独に比し安全な治療が期待さ

れる.

2 .カルチノイド

 カルチノイドは内分泌腫瘍に含まれ,発育が緩

徐で予後良好な腫瘍の意味に由来する.全カルチ

ノイドのうち 約 7 割 が消化管に発生し,十二指腸

は胃・直腸に次ぐ好発部位であ る

59)

.なかでも球

部と下行部 で 9 割 を占める.2010 年に改訂された

WHO 分 類

60)

では神経内分泌への分化を示すすべ

ての腫瘍を neuroendocrine tumor(NET)と総称

し,核分裂像と Ki - 67 index による増殖能に基づ

いて G1,G2,neuroendocrine carcinoma(NEC)

に分類されている.カルチノイドのほとんどは

G1 に相当する.粘膜深層から発生する腫瘍であ

るため,内視鏡的には粘膜下腫瘍の形態を呈し,

立ち上がりはなだらかでやや黄色調の色調を呈す

る.治療法に関しては一定の見解が得られていな

いが,基本的には外科治療が第一選択である.

10mm 未満かつ深達度が粘膜下層に留まる例では

内視鏡治療も可能である が

61)

,深部断端陽性また

は,判定不能となることが多く, 孔のリスクも

高い.従って,内視鏡治療の適応は慎重に決定す

べきである.

3 .悪性リンパ腫

 消化管悪性リンパ腫のうち十二指腸に好発し鑑

別が重要なものは濾胞性リンパ腫である.消化管

原発悪性リンパ腫の中で濾胞性リンパ腫の占める

割合は 1 ∼ 3 % と

62) , 63)

比較的まれとされてきた.

しかしながら,近年スクリーニングの上部消化管

内視鏡検査にて下行部に白色顆粒状病変として発

見される例が多くなっている.内視鏡所見はこの

白色顆粒が特徴的であり,鑑別は比較的容易と思

われるが,生検を行いヘマトキシリン・エオジン

染色に各種免疫染色を加味することで確定診断に

至る.治療は臨床病期や組織 grade により決定す

る.進行例ではリツキシマブを併用した R - CHOP

療法が行われる.一方,臨床病期Ⅰの症例に対し

ては,慎重に経過観察する watchful waiting とリ

ツキシマブで積極的に治療する考え方があり,一

定のコンセンサスは得られていない.

4 .粘膜下腫瘍

 十二指腸粘膜下腫瘍として,良性疾患では脂肪

腫,リンパ管腫,異所性膵,gangliocytic

paragan-glioma などが,悪性では GIST,平滑筋肉腫など

が発生する.

 脂肪腫は消化管良性腫瘍 の 4 % を占めるとさ

64)

,臓器別では大腸が最も多く,十二指腸は 約

4 % 程度でまれである.下行部に発生することが

多い.内視鏡所見は無茎から有茎性の粘膜下腫瘍

でやや黄色調を呈する.基本的に経過観察となる

が出血や腹痛を生じる場合には治療対象とな る

65)

十二指腸リンパ管腫は消化管の非上皮性腫瘍の

0.9∼2.9%と言わ れ

66)

まれである.形態は半球状,

囊腫状,有茎性など様々で,黄白∼白色調を呈す

る.発生部位は下行部が多い.gangliocytic

para-ganglioma は傍乳頭部に好発する良性腫瘍で,

腫瘍性病変 上皮性腫瘍 腺癌 腺腫 カルチノイド Brunner 腺腫 非上皮性腫瘍 GIST 悪性リンパ腫 脂肪腫 血管腫 平滑筋腫/筋肉腫 神経 腫 Ganglyocytic paraganglioma その他 転移性腫瘍 非腫瘍性病変 腫瘍様病変 異所性胃粘膜 Brunner 腺過形成 異所性膵 アミロイドーシス リンパ管拡張症 リンパ濾胞過形成 若年性ポリープ PJ type polyp 炎症性ポリープ 炎症性類線維性ポリープ 過形成ポリープ 黄色腫 感染症 糞線虫症,ランブル鞭毛虫など Table 2  十二指腸における腫瘍,腫瘍様病変(文献 70 から引用).

(8)

Kepes ら

67)

が提唱した名称である.表面は結節状

あるいは,顆粒状を呈する.有茎性の例も多く,

内視鏡治療例の報告が散見され る

68)

 GIST は間葉系腫瘍 の 8 割 を占めるとされ,発

生部位は胃が 60∼70%,小腸が 20∼30% , 十二指

腸 は 5 % とまれである.GIST の治療方針として

は核分裂像と腫瘍径を組み合わせたリスク分 類

69)

示されている.

5 .腫瘍様病変

 十二指腸腫瘍の内視鏡診断には非腫瘍性隆起性

病変を熟知することが重要であ る

70)

( Table 2 ).

非腫瘍性病変の頻度は下行部では腫瘍性病変と同

程度であるが,球部では非腫瘍性病変が多い.味

岡 ら

71)

の集計では,球部の腫瘍状病変のうち異所

性胃粘膜が 52.8%,ブルンネル腺過形成が 22.2%

と極めて高率であり,同様に原岡 ら

72)

は十二指腸

全体でも異所性胃粘膜が最も多いとしている.

1 )異所性胃粘膜

 Lessells ら

73)

は異所性胃粘膜を,①胃表層上皮

のみの化生によるもの,②幽門腺に壁細胞やまれ

に主細胞を混じ迷入より化生と考えるもの,③胃

底腺を伴う真の迷入によるものに分類し,③が狭

義の異所性胃粘膜としている.一方,中井 ら

74)

内視鏡所見から①半球状の小隆起が散在するもの

(球状隆起散在型),②平盤状隆起が集蔟したもの

(集蔟隆起型),③隆起の表面にびらんを伴うもの

(びらん隆起型),④微細顆粒が散在するもの(顆

粒隆起型) の 4 型 に分類し,集蔟隆起型は狭義の

異所性胃粘膜,びらん隆起型と顆粒隆起型は胃化

生に合致し,球状隆起散在型ではいずれの組織型

a b c Figure 5 a:球部前壁に集蔟隆起型の異所性胃粘膜を認める. b:NBI 拡大観察にて胃小溝模様が明瞭に観察される. c:胃腺過上皮様構造と胃底腺が認められる(HE 染色 × 20 ).

(9)

も存在したとしている.異所性胃粘膜を拡大観察

すると,絨毛構造に乏しく胃腺窩上皮に酷似した

ドーナツ模様や胃小溝模様が観察され,診断に極

めて有用である( Figure 5 ).

2 )ブルンネル腺過形成

 ブルンネル腺腫と診断されていた病変の多くは,

組織学的にブルンネル腺過形成である.過形成は

正常なブルンネル腺と比較しても異型のない腺組

織の増殖性病変であり,平滑筋隔壁により分葉構

造を呈するブルンネル腺の結節性増生から形成さ

れている.これに対し,味岡 ら

71)

が提唱した真の

ブルンネル腺腫とは,正常のブルンネル腺とは明

らかに異なる組織異型を示し,組織像と細胞内粘

液の特性からブルンネル腺由来と想定される腫瘍

性病変である.しかしながら両疾患の鑑別は現在

も容易ではない.一方,ブルンネル腺由来の腫瘍

における良悪性の鑑別には,免疫組織学的な検索

が有用である.Fujimaki ら

75)

はブルンネル腺腫の

異型腺管における p53 蛋白の過剰発現を確認し,

悪性変化の危険性を報告している.ブルンネル腺

過形成は,内視鏡的には球部に好発する無茎ない

し有茎性の粘膜下腫瘍様の形態をとることが多

く,約 10%に腺開口部を認める.通常は経過観察

を行うが,出血例に対する内視鏡治療の報告もあ

76)

( Figure 6 ).

3 )粘液分泌性ポリープ

 田中 ら

77)

が独立した疾患概念として報告した病

変である.特徴として,直 径 1 c m 以下の半球状

隆起を呈する,頂部に開口部を持ち透明で粘調度

の高い粘液を分泌する,開口部の内腔には大小不

同の絨毛状突起を認める,表面は小腸上皮に覆わ

れているが内腔に胃上皮を有している,ポリープ

内腔へブルンネル腺が開口している.などがあげ

られる.開口部の大きさおよび,胃上皮の分布に

より内視鏡所見はⅠからⅣ型に分類される.悪性

化の報告はなく治療の必要はない.

a d b e c f Figure 6 a:case 1 .球部から下行部前壁に半球状の柔らかい隆起を認める. b:NBI 拡大観察でやや不 いな絨毛構造と粘液の開口部を認める. c:異型のないブルンネル腺の増生を認める(HE 染色 × 20 ). d:case 2 .下行部に有茎性の粘膜下腫瘍様隆起を認める.頂部は対側の壁に接触するため絨毛が剝奪している. e:粘膜下腫瘍様隆起であるが茎が明らかであるため内視鏡的切除を施行した. f : 正常なブルンネル腺と比較し異型度に差のない腺組織の増殖性病変とされ,平滑筋隔壁により分葉構造を呈するブルンネル腺の結 節性増生から形成されブルンネル腺過形成と診断した(HE 染色 × 20 ).

(10)

は陥凹を呈することが多い.超音波内視鏡による

診断が有用であり,第 3 層∼ 4 層に主座を置く境

界不明瞭で内部不均一な低エコー腫瘤として描出

される.通常,無症状であり経過観察されるが,

まれに出血や膵炎を合併することがある.

5 )Peutz - Jeghers 型ポリープ

 Peutz - Jeghers 症候群に認められるポリープと

同様の粘膜筋板増生と上皮過形成を特徴とする孤

在性隆起であり,過誤腫の一種である.約半数が

下行部に発生し,有茎性または亜有茎性の形態を

呈する.色調は白色,褪色,発赤調と様々である.

表面構造も脳回状(convoluted pattern)または葉

状(leaf pattern)を呈し,腺腫との鑑別は困難な

例も多い.確定診断目的で内視鏡切除を行う場合

もあ る

78)

Ⅳ まとめ

 十二指腸腫瘍の診断と治療について主に腺腫・

粘膜内癌と内視鏡治療について解説した.上皮性

腫瘍における内視鏡診断,病理学的診断について

はいずれも明確な基準がないのが現状であり,症

例の蓄積が必要と思われる.さらに,内視鏡治療

に関しては,その是非に始まり適応や偶発症対策

などの検証が望まれる.

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DIAGNOSIS AND TREATMENT OF DUODENAL TUMORS

Masaki ENDO

1) , 2)

, Takayuki MATSUMOTO

1)

AND

Tamotsu SUGAI

3)

1) 2) 3)

  There has been increased detection of duodenal adenoma and early cancer. However, there

are many equivocal aspects of their differential diagnosis in part due to their low frequencies. In

addition, adenoma and early cancer are not easy to diagnose by biopsy, and endoscopic or

patho-logical diagnosis is more challenging for lesions in the duodenum than in other parts of the

diges-tive tract. There are also problems related to the indications for endoscopic therapy, technical

difficulties, and high rates of complications. It is also important to understand non-neoplastic

ele-vated lesions in differential diagnosis. Although Brunner s gland hyperplasia and ectopic gastric

mucosa occur at high frequencies, differentiation is possible based on detailed observations,

includ-ing findinclud-ings under magnification. In addition, whitened villi are a characteristic of intestinal-type

adenoma and intramucosal carcinoma and are an important finding. Further clinicopathological

examination is necessary regarding the relationship between whitening and the mucin phenotype.

参照

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Standard domino tableaux have already been considered by many authors [33], [6], [34], [8], [1], but, to the best of our knowledge, the expression of the