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は じ め に 戦 略 的 鉱 物 資 源 確 保 事 業 は 高 い 鉱 物 資 源 ポテンシャルが 指 摘 されているにもかかわらず 鉱 業 制 度 の 安 定 性 環 境 問 題 先 住 民 地 域 住 民 問 題 等 の 政 治 的 社 会 的 リスクが 顕 在 化 しているため 現 状 で

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モンゴルの鉱業投資環境調査

2014 年

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は じ め に

戦略的鉱物資源確保事業は、高い鉱物資源ポテンシャルが指摘されているにもかかわらず、鉱業制度

の安定性、環境問題、先住民・地域住民問題等の政治的社会的リスクが顕在化しているため、現状では

探鉱開発投資が停滞している国/地域において、その投資阻害要因を特定し、実際に投資を行う際の留

意点等を調査し、とりまとめを行う事業である。

モンゴルは、アジア北東部に位置し、ロシアと中国の間に挟まれた位置にあり、広大な国土(日本の 4

倍)を持つ国である。1989年に65年間続いたソ連の衛星国から脱却し、民主化、市場経済化を進め、現

在に至っている。体制移行国として既に約20年が経過している。経済は、鉱物資源の輸出を中心に順調

に拡大してきている。輸出の中心は銅、石炭、鉄鉱石等の鉱物資源である。特に鉱物資源の輸出は、輸

出金額の80%近くを占め、同国の主要産業となっている。一方、羊、牛、馬、ラクダなどがおよそ6,300

万頭存在する同国の伝統的産業は家畜関連産業であり、羊毛、カシミア等の繊維製品、皮革、食肉、酪

農製品等で比較的優位にある。

2009年10月6日にモンゴル政府とカナダのIvanhoe MinesおよびRio Tintoとの間でOyu Tolgoi 銅・金

鉱山の投資契約が締結されたことにより、モンゴルの鉱山開発が大きく前進した他、世界規模のTavan

Tolgoi炭田開発、原料炭価格の急騰、中国の鉱物資源需要の上昇などにより、世界中から注目され外国

投資が大幅に上昇し、2011年に経済成長率は17%に至った。しかし、2012年の総選挙以降、外国投資に

厳しい政策を行い投資環境が悪化しさらにモンゴル政府からの投資協定改定の要求により、最大プロジ

ェクトであるOyu Tolgoi 銅・金鉱山のフェーズ2が中止された。モンゴルの国内状況の悪化と共に、最

大の貿易パートナーである中国の経済成長停滞により経済成長、外国投資が大幅に減少している。

外国投資の重要性を理解したモンゴル政府は、2013年10月から投資法を改定し、投資環境を改善する

政策を積極的に取っている。2015年5月にOyu Tolgoi 銅・金鉱山プロジェクトの投資家と合意できた結

果、Oyu Tolgoi 社が2016年から40億US$の融資を受ける契約を国際金融機関らと締結できたことで、外

国投資家の信用は高まった。

モンゴルと日本の間では、2013年の安倍総理モンゴル訪問の際に締結された、両国関係発展の基礎と

なるIrch・イニシアティブ、2015年に締結された経済連携協定(EPA)などにより、今後は鉱物資源分野、

インフラ分野を中心に日本・モンゴルの実質的な貿易・投資関係が活発化することが期待されている。

本報告は、北京事務所がモンゴルのBlue Ridge 社の協力を得て実施した。Blue Ridge 社は日本企業

向けのコンサルタントを行なう鉱業・投資専門のコンサルタント会社である。本報告書が、モンゴルで

探鉱開発に携わる関係各位の参考になれば幸甚である。

平成28年3月

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

調査部 金属資源調査課

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1.モンゴル概要

①正式名称:モンゴル国(英語表記:Mongolia) ②政治体制:共和制 ③首都:ウランバートル(Ulaanbaatar) ④面積:156万4,116km2(日本の約4.2倍) ⑤人口:2,995,949人(NationalStatisticsOffice:モン ゴル国家統計局、以下NSO、2014年3月) ⑥民族:モンゴル民族(全体の95%)及びカザフ族等 (5%) ⑦言語:モンゴル語、ソ連時代の影響を受けてロシア 語を話せる国民も多く、また若年層は英語をはじめ 日本語やドイツ語、韓国語、中国語、フランス語等 を学んでいる。 ⑧宗教:チベット仏教等、1921年の革命後は衰退し ていたが、1990年の民主化以降再び広まる。1992 年の新憲法では信教の自由を保障。 ⑨平均寿命:男性65歳、女性72歳(NSO、2010) 1-1.地理 モンゴルは、ロシアと中国の間に挟まれた内陸国 で、全面積は1,564,116km2と日本の約4.2倍である。 中国とは西部、東部、南部で4,673kmの国境で接し、 ロシアとは北部で3,485kmの国境で接している。国土 の65%はステップとよばれる草原、南部の1/3はゴビ 砂漠、森林と山岳地帯は12%で主に北部に位置して いる。 1-2.気候 モンゴルは、中欧・米国北部諸州と同じ緯度(北緯 42°から52°)に位置し、海洋から離れた内陸国で、 気候変動が大きく、降雨量は少ない。ウランバートル の降雨量は年平均220mmと、短い夏に集中し、冬は 一般的に乾燥しており非常に寒い。年間の晴天日は約 250日で、夏には40℃近くになる日もある一方、真冬 は零下40℃を下回ることもある。夏は約1か月と短 く、1年のうち約半分は氷点下の日となり、ウラン バートルでも8月末に雪が降ることがある。日中と夜 間及び冬季と夏季の気温差が激しい。気候と地理的環 境のため、穀物農業には制約があり、牧畜業に適して いる。遊牧による牧畜(主として羊、山羊、馬、牛、 ヤク、ラクダ)が、モンゴル経済の主産業になってい る。 1-3.言語 モンゴル語。表記はキリル文字。社会主義時代は ロシアの影響が大きく、義務教育の一環としてロシア 語教育が行われていた。民主化以降は、英語及び日本 語等、諸外国語教育も盛んになってきている。 1-4.歴史 近代モンゴルの歴史は、チンギスハーンがモンゴ ル民族を統一し、アジア・中東・欧州への一連の軍事 侵攻を開始した1206年に始まる。チンギスハーンの 息子と子孫たちは、13世紀に歴史上最大の帝国を築 き上げ、領土は現在の北部ベトナムから中東、ロシア 及び東欧まで広がった。しかし14世紀の半ば内部闘 争により帝国が崩壊し、17世紀に中国の満州清王朝 がモンゴル全土を支配した。 1911年の辛亥革命により、北部モンゴルの皇太子 はUrgaの生仏と言われたJavzadamba Khutukhtと共 にモンゴル自治国を宣言、1921年7月に独立国家とし て独立を宣言、1924年に生仏が死ぬまで王国として 存続した。 1924年、ソ連支援の下、社会主義に基づく中央計 画経済・政治システムによるモンゴル人民共和国が形 成された。ソ連の支援は65年間続いたが、1989年に なってソ連軍の撤収及びソ連のグラスノチが起こり、 ウランバートルで民主化運動が始まった。多くの東欧 諸国と同様に、共産政権の崩壊が起こり、民主的政治 制度が採択された。 1989年末に複数政党制の採用、自由選挙実施等、 民主化が急速に進展した。1992年1月に新憲法が採択 され、同年6月に新憲法に基づく初の総選挙が、1993 年6月に国民の直接投票による大統領選挙が実施され た。また、1996年6月の総選挙では民主連合が過半数 を占め、エンフサイハン民主連合議長が首相に選出さ れ、大規模な行政機関統廃合、公共料金大幅引上げ、 国有企業の民営化、自由貿易政策の徹底等の諸改革を 実施した。1997年5月の大統領選挙で人民革命党のバ ガバンディ党首が選出された。1998年1月の法改正及 び関連決議により、エンフサイハン政権は4月総辞職 に追い込まれ、与党最大会派の民族民主党エルベグド ルジ党首が新首相に選出された。 2000年7月の第3回総選挙では、人民革命党が76議 席中72議席を獲得し、圧倒的勝利で再び政権につき、 エンフバヤル党首が首相に就任。2001年には同党推

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薦のバガバンディ大統領も再選され、民主化及び市場 経済推進、国内東西横断道路建設計画、海外からの投 資拡大による経済活性化政策を展開した。しかし与党 人民革命党圧倒的多数で可決された土地私有化法が 2003年5月から施行され、国を大きく揺るがすことと なった。民主化以降、人民革命党及び民主党の2大政 党により比較的安定的に民主政治が継続している。 1-5.文化 音楽、衣装をはじめ、興味を引くものが多い。 ・馬頭琴 馬頭琴は『草原のチェロ』といわれる。さおの先の 弦巻きの上端には、その名の由来である馬の頭の木彫 りがあり、モンゴル人にとって「命」とも言える馬の 姿が刻まれ「モンゴル人の魂」を象徴している。小学 校の教科書にも載っているモンゴル民話「スーホの白 い馬」が馬頭琴の始まりを伝えており、羊飼いの少年 が愛した白い馬が、「ずっとあなたの傍にいられるよ うに、私の骨や皮、毛を使って楽器を作ってくださ い」と言い残して死んでいったのが馬頭琴の始まりと いう伝説である。 ・オルティンドー 『長い歌』の意味を持つ、モンゴル民謡の代表的な 歌唱法である。オルティンドーは、豊かな声量で音を 自由に長く伸ばして歌うのが特徴、喉を巧みに操り何 とおりものビブラートを使い分ける。 ・ボギノドー(ボグンドー) 『短い歌』の意味。この民謡の特徴は、リズムが規 則正しくはっきりとしていること。歌詞は風刺や皮肉 を利かせた内容のものが多く、速いテンポで歌われ る。 ・ホーミー(喉歌、ホーメイ) 声帯を振動させながら気管や口腔で倍音を共鳴さ せ、同時に二つの音声(ときには三つの音声)を発す る技巧です。西モンゴルのアルタイ地方で発生した唱 法と言われている。 1-6.人口 人口2,995,949人(2014年3月)、世界で最も人口密 度の小さい国の一つである。 首都ウランバートルの人口は130万人。人口の6割 は都市や定住地に住み、4割は主に牧畜を営んで生活 している。 図1.主要都市の人口(2014年3月)

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2.政治制度

2-1.政治制度の概要 1992年1月に新憲法が制定され、2月12日に施行、 民主共和国として確立し、統一国家として『アイマ グ』と呼ばれる行政区画を有する統一国家になった。 政治制度は、統治機構として立法府、執行部、法制 部、元首としての大統領から成っている。 1)立法部

立法部は、“The State Great Hural”(国家大会議) である。76議席からなる一院制である。国民は投票 権を有し、4年毎に選挙が実施され、被選挙権は25歳 以上の国民に与えられている。議会は、法律制定、内 外政策決定、大統領及び議会選挙日を設定、大統領の 承認、罷免権、首相の任命、変更、罷免権を有する。 更に議会には、国際協定批准・拒絶を行う権限があ る。また石油、ガス、ウランを含む戦略鉱物について の権限も有している。法律は公布されねばならず、公 布後10日を経て効力を持つ。 2)大統領 議会を代表する複数の政党が大統領候補を指名し、 国民選挙により選ばれる。 任期は4年で、一度だけ再選が許される。候補者 は、選挙前5年間以上モンゴルに居住する45歳以上の 国民でなければならない。大統領は元首として、大統 領・首相・国会議長からなる国家安全委員会の長とな る。 大統領は、議会の決定に対する拒否権を持つが、 議会の2/3の再議決で覆される。大統領は、大統領令 を発布でき、首相の署名で効力が発生する。大統領は 主要政党と協議して、首相候補を指名する。議会は 2/3の多数で、憲法違反、或いは宣誓を破り権利濫用 を行った場合、大統領を罷免できる。 3)政府 国家の最高行政部であり、法律執行に関し議会へ の責任を有し、長は首相(任期4年)である。また経 済的、社会的、文化的発展を方向付けする責任があ る。2014年5月では、民主党Ch.Saikhanbileg氏と人 民党、ShudragaYos連合との連立政権になっている。 次の議会選挙は、2016年。 4)司法部 憲法は法廷にのみ、司法機能を与えている。最高 法廷としての最高裁判所と、多くの控訴裁判所、地方 裁判所がある。最高裁は刑事事件、民事事件を裁く権 限、控訴プロセスを経た下級裁の決定を審査するなど の多くの権限があるほか、憲法裁判所及び検事総長に より移管された人権問題も審査する。憲法を除く法律 の公式解釈を提供する。 憲法は、最高裁判所の監督に属さない刑事、民事、 行政法廷のような特別法廷の設置を認めている。裁判 所の長官は、司法の独立を確保するため、判事を独占 的に選定できる権限を持っている。 2-2.行政組織 大統領を国家元首とする共和制であり、大統領は4 年ごとに直接選挙で選ばれる。任期は4年で、1回の み再選可能である。議会は国家大会議(The State Great Hural)と呼ばれる一院制で、76名の議員で構 成される。 2014年5月時点は、民主党のエルベグドルジ大統 領、民主党、人民革命党・国民民主党のShudraga Yos連合の連立内閣の下、民主党のCh.Saikhanblige 首相の体制になっている。 表1.行政組織及び大臣 首相

Prime Minister サイハンビレグSaikhanbileg.S 民主党 第1副首相

Deputy Prime Minister フレルスフKhurelsukh.N 民主党 内閣官房長官

Cabinet secretariat of government of Mongolia バヤルツォクトBayartsogt.S 民主党

モンゴル国家担当大臣 エンフサイハン

Enkhsaikhan.M 人民革命党・国民民主党の Shudraga Yos 連合 環境・グリーン開発省

Ministry of Environment and Green Development オユンホロルOyunkhorol.D 人民党 外務省

Mininstry of foreign affairs プレブスレンPurevsuren.L 民主党 財務省

Ministry of Finance エルデネバトErdenebat.J 人民党 法務省

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2-3.司法 司法制度は、最高法廷としての最高裁判所と多く の控訴裁判所、地方裁判所がある。最高裁判所は刑事 事件、民事、法律紛争を裁く権限、控訴プロセスを経 た下級裁の決定を審査するなどの多くの権限がある。 産業省

Ministry of Industry エルデネバトErdenebat.D 民主党 国防省

Ministry of Defense ツォルモンTsolmon.D 人民革命党・国民民主党の Shudraga Yos 連合 建設・都市計画省

Minstry of Constuction and Urban Development ツォクトバートルTsogtbaatar.D 人民党 教育・科学省

Ministr of Education and Science ガントゥムルGantumur.L 民主党 道路・運輸省

Mininstry of Road and Transportation トゥムルフーTumurkhuu.N 人民党 鉱業省

Ministry of Mining ジグジドJigjid.R 民主党 労働省

Mininstry of Labour チンゾリグChinzorig.S 人民党 人口開発・社会保障省

Ministry of Population Development and Social Welfare エルデネErdene.S 民主党 食料・農牧業省

Ministry of Food and Agriculture ブルマーBurmaa.R 民主党 エネルギー省

Ministry of Energy ゾリグトZorigt.D 民主党 Ministry of Healt and Sport

保健・スポーツ省 シーレグダムブShiilegdamba.G 人民革命党・国民民主党の Shudraga Yos 連合

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2-4.地方行政 行政単位は、21県(アイマグ)及び1首都圏(ウラ ンバートル)である。県は、333郡(ソム)、さらに郡 は1,570バグに分けられる。首都ウランバートルの場 合、9地区(ドゥーレグ)、ホローに分けられる。 2-5.外交 外交政策は、非同盟中立で、現実的かつ平和主義 外交を展開している。大国のロシア及び中国に挟まれ ており、国家安全上の配慮からどちらか一方に偏ら ず、バランスを維持することを最優先にしている。

次に第3隣国政策(The Third Neighbor Policy)と 呼ばれる日本、米国、韓国、ドイツ等との関係の強化 があり、これは地政学上のバランス維持の配慮に基づ いている。また、非同盟諸国会議への加盟、ASEAN 地域フォーラム(ASEANRegionalForum、ARF)へ の参加、中東湾岸諸国との関係の重視等、安全保障の 見地からも多面的・多角的な外交を展開している。 2016年にアジア欧州会合(ASEAM Asia Europe Meeting)の首脳会談がウランバートル市で実施され る。 2-5-1.日本との関係 1)モンゴル・日本の交流 • 1972年-外交関係 • 1996年-総合的パートナーシップ関係 • 2010年-戦略的パートナーシップ関係 2)協力事業の書面 • 1974年-文化交流取極 • 1977年-経済協力協定 • 1990年-貿易協定 • 1991年-青年海外協力隊派遣取極 • 1993年-航空協定 • 2001年-投資保護協定 • 2003年-技術協力協定 • 2013年-戦略的パートナーシップ関係の中期行動計 画 • 2015年-経済連携協定(EPA・Economic Partnership Agreement) 1990-2014年までに日本の投資総額は206百万$(全 直 接 投 資 の1.46%)で あ り、49.5% は 貿 易・ 食 料、 13.5%は軽工業、9.5%は銀行・金融、5.9%は観光、 5.8%は建築業だった。 (百万$) 図3.日本の直接投資額の推移(年別) 出典:モンゴル投資庁データにより Blue Ridge 社作成 図4.日本の投資企業数(百万$/ 年別) 出典:モンゴル投資庁データにより Blue Ridge 社作成

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日本の投資企業数は550社であり、外国投資企業の 位置づけで第4位に位置する。 モンゴルは日本から主に一般機械、電気機器、車 両、輸送用機器などを輸入している。日本への輸出商 品はカシミア、カシミア製品、羊毛靴下、革製品、干 し肉、ペットフード、鉱物サンプル、土壌及び植物の サンプル、岩塩、蜂蜜など。だが、輸出額は圧倒的に 小さい。例えば2014年の日本貿易額におけるモンゴ ルからの輸出は6.6%にすぎない。 1990年にモンゴルが民主化・市場経済への移行を 始めてから現在に至るまで、日本はモンゴルの最大援 助国1であり、二国間関係は幅広い分野で着実に発展 している。1997年から「総合的パートナーシップ」関 係の下で、両国関係が発展してきた結果、「戦略的 パートナーシップ」の構築を目標にした両国の首脳レ ベルの会談が多数実施されてきた。 2013年3月に安倍首相がモンゴルを訪問した際、日 本とモンゴルとが共有する3つの精神「自由と民主の 精神」「平和の精神」「助け合いの精神」に言及し、こ れが両国関係の発展の基礎にある旨を述べ、Irch・イ ニシアティブを提案した。同イニシアティブは「投資 ビジネス環境の整備」「人材育成」「基盤整備・開発」 を基礎にし、両国の官民関係を様々なセクターで開発 図5.日本の投資企業数(百万$/ 年別) 出典:モンゴル統計庁データより Blue Ridge 社作成 図6.対日本輸入額、全輸入額に占める日本の割合(百万 US$、%) 出典:モンゴル統計庁データより Blue Ridge 社作成 1 2009年から2013年までに円借款として890.94億円、無償資金協力として1055.08億円、技術協力として441.3億円 をモンゴルへ寄与した。  ソース:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000142135.pdf

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するイニシアティブになった。 2015年の段階でIrch・イニシアティブに指定され たJBIC・ ク レ ジット ラ イ ン 設 定、 経 済 連 携 協 定 (EPA・EconomicPartnershipAgreement)の締結な ども実施済。2015年5月に日本を公式訪問したTs. Elbegdorj大統領が、Tavan Tolgoi炭田から東へ行く 1,300kmの鉄道プロジェクトに協力する案を日本政府 へ提案した結果、モンゴル外務省とJBICとの間に融 資協力におけるMOUが締結される。両国間の経済交 流、投資は政治的な交流より出遅れている。 両国間の鉱業協力関係としては、2009年7月、バヤ ル首相が日本国を公式訪日し、麻生首相と首脳会談を 行い、会談終了後、両首脳の立ち会いのもと、「ダル ハン市給水施設改善計画」(無償資金協力)の交換公文 及び両国関係当局間の「原子力エネルギー及びウラン 資源に関する協力覚書」への署名が行われた。 モンゴル鉱物資源エネルギー省D.Zorigt大臣が、 2010年7月29日から8月3日までの日程で日本国を公 式訪問した際、2010年7月30日に東京にてモンゴル鉱 物資源・エネルギー省と日本の石油天然ガス・金属鉱 物資源機構(JOGMEC)との間で、協力関係の強化を 図るMOUに署名した。MOUの内容は、日本がレア アースをはじめ、モンゴル鉱物資源のポテンシャル調 査を行うことで、現在調査が開始されており、モンゴ ル側をMRAMが代表し活動している。 両国の政治的関係以外にも、日本の民間企業がモ ンゴル鉱物資源分野へ進出し始めている。事例として 三菱商事㈱のウランプロジェクト「フランスのAreva 社と共同のDulaan uulプロジェクト」が挙げられる。 また㈱東芝は、2010年11月にモンゴルのコンサル ティング企業であるMNFCC社と、モンゴルの鉱物 資源開発に向けた協力を検討することで合意し、 MOUを交わした。対象となる鉱物資源はウラン、レ アアース、レアメタルなどである。㈱東芝はMNFCC 社とのMOUのほか、モンゴル国原子力庁との協力関 係におけるMOUを締結している。 2014年12月に三菱マテリアル㈱がモンゴルのOyu Tolgoid銅鉱山から5,000tの銅精鉱をロシア経由で輸 入した。 2-5-2.日本・モンゴル経済連携協定における投資、 鉱業に関する概要 1)交渉の経緯 • 2009年7月バヤル首相(当時)が麻生首相(当時) に経済連携協定の締結を要望 • 2010年6月~2011年3月官民共同研究 • 2012年3月野田首相(当時)とバトボルド首相(当 時)の首脳会談で交渉開始を決定 • 2012年6月~2014年7月7回の交渉会合 • 2014年7月エルベグドルジ大統領の訪日時に大筋合 意 • 2015年2月サイハンビレグ首相の訪日時に署名 2)日本・モンゴル経済連携協定の意義 • 貿易の拡大やエネルギー・鉱物資源分野等におけ る投資環境の改善を通じて、モンゴルとの「戦略的 パートナーシップ」を一層強化 • モンゴルからのエネルギー・鉱物資源の安定供給 に寄与(石炭、蛍石、レアメタルを輸入。モンゴル は金、銅等も産出) • 民主化・市場経済化し、今後も中長期的な高成長 が見込まれるモンゴルの経済成長を、日本の経済成 長に取り込む • 物品貿易、サービス、投資、電子商取引、競争、 知的財産等のルールを盛り込んだ包括的な協定。モ ンゴルにとって初の経済連携協定 3)日本・モンゴル経済連携協定に含まれる主な分野 ①物品一般ルール・原産地規則 関税の撤廃又は削減、内国民待遇の供与等の義務 の ほ か、 二 国 間 セーフ ガード 措 置 を 規 定。 エ ネ ル ギー・鉱物資源を含む両国の関心品目について、輸出 入規制措置を導入する場合の情報提供を規定。特恵関 税の対象となる原産品の認定基準・手続等を規定。 ②税関手続及び貿易円滑化 物品の貿易を円滑化するため、税関手続の透明性 の確保、物品の速やかな通関のための措置、事前教 示、両国の税関当局の協力及び情報の交換等を規定。 ③衛生植物検疫措置 衛生植物検疫措置(SPS措置)の国際基準への調和 に関する協力、平等性の認定について規定。小委員会 を設置。 ④強制規格、任意規格及び適合性評価手続 貿易の促進を目的として、国際規格の利用、強制 規格の策定、適合性評価手続の結果の受入れ等につい て規定。小委員会を設置。 ⑤サービスの貿易 両国間のサービスの貿易を促進するため、市場ア クセス、内国民待遇、最恵国待遇、透明性等の規律に ついて規定。GATSの下での約束を超える自由化を約 束。 ⑥自然人の移動 短期商用訪問者、企業内転勤者、投資家等及びそ れらの配偶者・子女等の入国及び一時的な滞在を保 障。入国・一時滞在に関する手続の透明性の確保につ いても規定。

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⑦電子商取引 電子商取引の促進のため、電子的送信に対する関 税の不賦課、デジタル・プロダクトの無差別待遇、消 費者保護等を規定。自国でのビジネスの条件として自 国内へのコンピュータ―施設の設置等を求めることの 禁止を規定。 ⑧投資 既存の日本・モンゴル投資協定を上回る内容。投 資許可段階の内国民待遇・最恵国待遇の付与、技術ラ イセンス契約に対する政府の介入の禁止(ロイヤル ティ規制の禁止)、エネルギー・鉱物資源を含むあら ゆる分野における公正均衡待遇及び投資家・政府間の 契約遵守の義務付け、投資家と国家間の紛争解決 (ISD条項)等を規定。 ⑨競争 反競争的行為を規制するため、双方の当局が自国 の法令に従って適切と認める措置をとる旨規定。ま た、当局間の具体的な協力手続等について規定。 ⑩知的財産 透明性の確保及び手続簡素化の観点から、出願に 関連する情報の公開等について規定。 知的財産の保護及び知的財産権の行使強化のため、 周知商標の保護、非開示情報の保護、商標権・著作権 侵害物品の輸入に関する税関当局の職権による取締り 権限の付与等を規定。 ⑪ビジネス環境の整備 両国政府・民間の専門家の参加を得て、事業活動 を遂行する両国企業のためのビジネス環境の整備・向 上を検討する小委員会を設置。相手国の企業からの苦 情及び照会の受領等を任務とする連絡事務所の設置を 規定。 ⑫協力 農林水産(フード・バリューチェーン等)、中小企 業、観光、情報通信技術、環境等の分野において協力 を促進する旨規定。 モンゴル経済連携協定における投資に関する主要な条 • 双方はエネルギー・鉱物資源を含むあらゆる分野 における公正均衡条件を投資家へ付与する。 • 一方は相手側の投資家の投資を、下記を除く条件 で収用・国有化しない ➢ 公的目的で ➢ 公正均衡条件で ➢ 適切かつの賠償金を早期に支払った場合 • 賠償金は収用・国有化された投資の市場価値と均 衡である。収用・国有化の発表により変化した価値 は反映されない。賠償金は遅滞されない。遅滞され た場合に商業的な金利を投資家に自由利用可能な通 貨で支払う。 • 双方の投資家の送金(対外、対内)を自由に遅滞す ることなく実施できる環境を整備する。送金には下 記の項が含まれるが、下記のみに制限されない。 ➢ 初期投資及び投資拡大化 ➢ 投資から利益、利子、キャピタルゲイン、配 当、ロイヤルティ、手数料及びその他の収入 ➢ 契約とおりに支払われた料金、特に投資と関連 する貸付料金 ➢ 投資を全体的または部分的に売却した収入、融 資からの収入 ➢ 投資家は送金を当日の為替レートで自由に利用 できる通貨で遅滞なく実施できる。双方は上記 を保証する • 双方は下記の場合、自国の法律に従い平等・無差 別条件で送金を制限できる ➢ 破産、支払不能または貸し手の権利保護 ➢ 株式発行、売却、取引 ➢ 刑事または刑事犯罪 ➢ 判決または判決の遵守を確保 • 双方の投資家との間の投資紛争解決 ➢ 「紛争投資家2」と「紛争当事者3」の間の投資 紛争を、当事者は、可能な限り協議により円満 解決する ➢ 「紛争当事者」が「紛争投資家」に対して協議 を書面により要請してから120日以内に解決で きなかった場合、「紛争投資家」は下記の国際 仲裁裁判所へ告訴できる。 ✓ 「ICSID条約4」に伴い設立された仲裁裁判 所 ✓ 国際連合国際商取引法委員会の仲裁規則に 基づいて設立された仲裁裁判所 ✓ 投資分祖当事者達が合意できた場合、他の 仲裁規則とおりにある仲裁裁判所    仲裁裁判所の裁定は最終的なものであり、紛争 当事者は拘束するもの。仲裁裁判所による裁定 の実施を「ICSID条約」と「ニューヨーク条約」 を含む関連国際法に伴う。 2 「紛争投資家」は投資紛争の当事者である投資家を意味する 3 「紛争当事者」は、紛争投資家と論争する当事者を意味する 4 「ICSID条約」は、ワシントンにて1965年3月18日に採択された、国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決 に関する条約。

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2-5-3.モンゴル・ロシア最近の政治、経済関係及び その他 モンゴル・ロシア交流 • 1921年-外交関係 • 1996年-親密な隣国間の伝統的パートナーシップ • 2010年-戦略的パートナーシップ関係 協力事業の書面 • 1991年-貿易・経済協定 • 1992年-料金協定 • 2009年-戦略的パートナーシップ関係の共同表明 1990-2013年の間のロシア投資総額は約300百万US $であり、45.3%は輸送、36.3%は地質調査、探鉱及 び採掘、8.6%は貿易、食品業だった。 図7.ロシアの直接投資額の推移(百万 US $/ 年別) 出典:モンゴル投資庁データにより Blue Ridge 社作成 図8.モンゴル・ロシア貿易額(百万 US $) 出典:モンゴル投資庁データにより Blue Ridge 社作成

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2014年にロシアへ61.6百万US$の製品を輸出し、 60.7%を蛍石、白りゅう石、霞石(かすみいし、ネ フェリン)、18%を燃料性製品、6.8%を馬肉が占め た。2014年にロシアから16.1億US$の製品を輸入し、 64.7%は燃料だった。 2011年5月から6月にかけてエルベグドルジ大統領 がロシアを公式訪問、メデベージェフ大統領、プーチ ン首相などと会談を行い、鉱物資源開発などの経済案 件などについて協議を行い、共同声明を発表した他、 4通の協力文書に署名が行われた。2012年12月、アル タンホヤグ首相は、上海協力機構首脳会合の後、メデ ベージェフ大統領と会談した。アルタンホヤグ首相は 隣国と構築している協力関係をあらゆる分野に渡って 進展させることが、モンゴル外交政策の最優先課題で あることに言及し、アルタンホヤグ内閣として、ロシ アとの関係を充填期に発展させ、直面するいくつかの 課題を早期に解決することを希望していると述べた。 メデベージェフ大統領はこれに対し、両国の協力 において重要な役割を果たしているエルデネト鉱山、 モンロスツベトメト・コンビナート、ウランバートル 鉄道などの合弁企業の利益向上や投資拡大などの問題 に言及し、その解決のためにロシアは協力する用意が あると述べた。 エルベグドルジ大統領は2014年5月21日に上海で開 催されたアジア相互協力信頼醸成会議(CICA)首脳 会合に出席するため訪問した際、プーチン大統領と会 談した。双方は鉄道によるトランジット輸送、ノモン ハン事件75周年記念行事などについて意見交換し、 モンゴル側は、鉄道によるトランジット輸送の問題に 関する中露モンゴル3カ国間協議をウランバートルで 開催したいと表明した。同年5月、アルタンホヤグ首 相は、ロシアのサンクトペテルブルクで開催されたペ テルブルク国際経済フォーラム(ロシア版ダボス会 議)に出席し、5月23日にプーチン大統領と会談し た。会談では、鉄道、二国間の合弁会社の問題につい て協議した。 2014年9月3日にロシア・プーチン大統領がモンゴ ルを公式訪問した。同訪問はノモンハン事件勝利75 周年に合わせたもの。訪問中に両国政府及び関係機関 の間で「両国国民が互いにビザなしで入国する条件に 関する政府間協定」をはじめ、15通の協力文書に署名 が行われた。ロシア・プーチン大統領のモンゴル訪問 中、両政府は「ウランバートル鉄道社の改革、開発に おける戦略的パートナーシップ関係に関する協定」を 締結した。同協定にて現在の鉄道のほか2本目の鉄道 開発及び車両電動化、さらに輸送量を100百万t/年に することに合意。 • 2011年に合意した「港への鉄道によるトランジット 輸送協定ドラフト」を、今後早期締結することで合 意。 • ロシア・プーチン大統領は、ロシアは北朝鮮の Rajin港を利用することにおいて北朝鮮と交渉して きたが、ロシア側も北朝鮮と交渉を行い、Rajin港 と繋がる50kmの鉄道を開発し、同港を利用するこ とに合意できた。よって、モンゴル側がRajin海港 を利用したければ共同開発しようと提案した。ロシ アとモンゴルは今回の訪問において、Rajin港の開 発プロジェクトに、投資家として共に参加すること に合意。 表2.モンゴルで事業を行っているロシアの大手企業リスト 社名 Rostec Corporation 事業方針 ロシアの700数社が傘下にある • 車両、飛行機、エンジンの製造 • メタル生産、建築、医療機器、武器製造 • 電子、通信など モンゴルと締結した交渉、協力事業 • Erdenet 銅鉱山に基づいて銅冶金プラントを開発する • Erdenet 銅鉱山の49%を所有 • Mongolrostsvetmet 社の49%を所有 社名 Rosneft 事業方針 ロシアの最大石油企業でありカザフスタン、中国、ベトナム、モンゴル、ドイ ツ、ブラジルなどの国々で事業を行っている • 石油及び天然ガスの探鉱、採掘、倉庫、輸送、販売 • 天然ガスの加工、化学プラント開発、化学製品の加工、輸送、販売など コメント モンゴル100箇所でガソリンスタンドを開発し小売を行なう希望を発言してき たがモンゴル政府はいつも拒否している。 社名 ロシア鉄道公社 事業方針 ロシアの全鉄道の99%を所有する政府鉄道公社 モンゴルと締結した交渉、協力事業 ウランバートル鉄道公社(モンゴル横断鉄道)の50%を所有 コメント モンゴルでの鉄道開発を広がる立場である。N. アルタンホヤガ首相に対して同 社の V.Yakunin 会長が2013年4月に「モンゴルの鉄道開発に参加させることを 要請した書簡」をも送付。

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2-5-4.モンゴル・中国最近の政治、経済関係 モンゴル・中国交流 • 1949年-外交関係樹立 • 1996年-親密な隣国間の伝統的パートナーシップ • 2011年-戦略的パートナーシップ関係 • 2014年-総合的パートナーシップ関係 協力事業の書面 • 1991年-投資協定 • 1991年-二重課税防止条約 • 1992年-経済技術協力協定 • 2009年-貿易経済協力事業のための中期行動計画 1990-2013年の間の中国投資総額は約3,700百万US $であり、68.1%は地質、探鉱及び採掘、21%は貿 易、食品業、2.1%は建築業だった。 2014年に50.7億US$の製品を輸出し(87.8%、モ ンゴルにとって第1位の輸出相手)、50.5%を銅鉱石、 銅 精 鉱、16.7% を 瀝 青 炭、12.5% を 原 油 が 占 め た。 2014年に中国から17.2億US$の製品を輸入し(33.7% モンゴルにとって第1位の輸入相手)5.6%が電力、 5.2%がセメントだった。モンゴルの輸出入、投資を はじめモンゴル経済は中国に過度に依存している。 図9.中国の直接投資額の推移(百万 US $/年別) 出典:モンゴル投資庁データにより Blue Ridge 社作成 図10.モンゴル・中国貿易額(百万 US $/ 年別) 出典:モンゴル投資庁データにより Blue Ridge 社作成

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2012年12月に上海協力機構首脳会合に参加したア ルタンホヤグ首相は、温家宝首相と会談した。アルタ ンホヤグ首相は、モンゴル政府が対外政策の継続性を 保持し、対中国関係を最優先していることを表明し、 通商・インフラ開発・鉱物資源開発・エネルギー・農 牧業といった分野における大規模案件の実施を通じ、 両国の実質的な協力を集中的に進めていきたいとの考 えを伝えた。 2013年12月、中国呉邦国・全人代常務委員長がモ ンゴルを訪問し、大統領、首相などと会談し、資源開 発及びモンゴルのインフラ整備などでの今後の協力に ついて意見交換を行った。 2013年4月、エンフボルド国会議長がボアオ・アジ ア・フォーラム出席のため中国海省を訪れ、習近平国 家主席と会談を行った。エンフボルド国会議長は、モ ンゴルと中国の戦略的パートナーシップを実質的な内 容で強化していくとの意欲を示し、両国のハイレベル 相互訪問や会談を頻繁に行うこと、経済の主要な分野 での協力拡大、モンゴル、中国、ロシアの3か国によ るプロジェクトの実施を提案した。習近平国家主席 は、モンゴルとの戦略関係の強化や実質的な協力関係 のレベルを引き上げるために協力することを表明し た。 2013年5月、楊潔チ国務委員がモンゴルを訪問し、 エルベグドルジ大統領、アルタンホヤグ首相、テルビ シダグワ副首相と会談を行った。 2013年10月、アルタンホヤグ首相が中国を訪問。 同年9月の訪日に続き、首相として2度目の訪問。習 近平国家主席と会談を行った他、李克強国務委総理な どとの会談では「戦略パートナーシップ関係のための 中長期行動計画」をはじめ、経済、民間航空、学術、 防災、金融、鉄道、エネルギーなどの分野で10件の MOUに署名した。 2014年1月、ボルド外務大臣は中国を訪問し、王毅 外交部長との会談、楊潔チ国務委員などと会談、李源 潮国家副主席への表敬などを行った。ボルド大臣は、 王毅外交部長との会談で両国の政治、経済、文化、教 育、人的交流など様々な分野での協力関係拡大につい て意見交換を行い、モンゴル・中国外交関係樹立65 周年、友好・協力条約締結20周年という記念の年に 当たる2014年をモンゴル・中国友好交流年として祝 うため、両大臣は友好交流年記念事業計画に署名を 行った。 2014年5月、エルベグドルジ大統領は上海で開催さ れたアジア相互協力信頼醸成会議(CICA)首脳会合 に出席するため訪問し、習近平国家主席と会談。両国 外交関係樹立65周年、インフラ部門における協力、 石炭開発プロジェクト、トランジット輸送、エネル ギー分野における協力などに関して協議した。 2014年8月21~22日、習近平国家主席がモンゴル 表3.モンゴルで事業を行っている中国の大手企業リスト 社名 Shenhua Group 事業方針 石炭生産・販売、エネルギー、石炭液化、化学、鉄道、海港 モンゴルと締結した交渉、協力事業 • Tavan Tolgoi 炭鉱開発

• Tavan Tolgoi 炭鉱→ Gashuun Sukhait 国境検問所間の鉄道開発 モンゴル側の関心 • Tavan Tolgoi 炭鉱開発

• Tavan Tolgoi 炭鉱→ Gashuun Sukhait 国境検問所間の鉄道開発 社名 The China National Nuclear Corporation/CNNC/

事業方針 科学調査、電子力発電所の設計・開発、電子燃料の再生産、電子セクターの輸

出入など

モンゴル側の関心 • ウラン鉱床の一部で共同開発を行う

• 医学目的で電子を利用する • 医療器械を輸入する

社名 China National Petroleum Corporation/CNPC/

事業方針 石油、天然ガスの探鉱、生産、加工、販売、輸送パイプライン及び化学プラン トの開発、掘削機械、輸送パイプ、エネルギー機械の製造、不動産マネジメン ト、金融・保健サービス、非在来型資源、再生可能エネルギーなど モンゴルと締結した交渉、協力事業 • 2005年から東部モンゴル Dornod 県の Tamsag 油田で探鉱、開発事業を行い、 2.8百万 t の油田を採掘。現在までに23.4億 US $を投資 • モンゴル側と長期燃料提供契約を締結した。 • モンゴル産の原油を中国で加工し、燃料をモンゴルへ輸出している。2011年 ~2014年に190千 t の燃料をモンゴルへ輸出

社名 China Petochemical Corporation/Sinopec Group/

事業方針 • 産業への投資、投資マネージメント、石油及び天然ガスの探鉱、採掘、倉庫、 輸送、マーケティング • 石炭採掘、輸送、石油加工、販売 • 天然ガスの加工、化学プラント開発、化学製品の加工、輸送、販売 • 石油探鉱事業の設計、コンサルティング、製油所の設計、開発、整備など モンゴル側と締結した契約、交渉 • 石炭液化プロジェクトの協力事業における MOU が締結された

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を公式訪問し、エルベグドルジ大統領と会談を行っ た。同会談にてエルベグドルジ大統領は以下の提案を した。 1.モンゴルの農畜産物を免税・量的制限無しで輸出 する。 2.石炭ガス化プロジェクトに協力する。 3.中国~モンゴル~ヨーロッパ間の鉄道輸送を拡大 化し、2020年までに1億t/年にする。 4.ロシア~モンゴル~中国間の鉄道の輸送能力を引 き上げる。 5.モンゴルのAPEC入会を支援する。 習近平国家主席は同提案を審議すると述べ、APEC への入会を全面的に支援すると表明し、2014年9月に 中国で開催されるAPEC審議会に参加するようエル ベクドルジ大統領を招待した。また、習近平国家主席 はモンゴルは農畜産物において大きな潜在性を持って いるので、牛肉、羊肉を加工し付加価値を高めて、中 国市場へ輸出できると表明した。双方は石炭業で協力 するモンゴルで火力発電所を開発し、エネルギーを中 国へ輸出する方針で協力することに前向きであると述 べた。習近平国家主席はロシア、モンゴル、中国経由 の鉄道トランジット輸送に関する交渉を行うことは可 能と表明した。習近平国家主席の訪問の際に、下記の 書面に署名が行われた。 1.モンゴル・中国間の総合的パートナーシップ関係 を開発する共同表明 2.モンゴル・中国間に1949年から2012年に締結され た両政府の契約 3.モンゴル外務省・中国外務省間の協力事業に関す る契約 4.犯罪者受け渡し契約 5.モンゴルが中国を経由して海に出る際の往復のト ランジット輸送に関する両政府間の契約 6.鉄道トランジット輸送協力を開発する両政府間の 基本契約書 7.鉄道協力事業の開発に関する両政府間のMOU 8.モンゴル・中国の国境鉄道条約の改革に関するモ ンゴル道路運輸省と中国鉄道庁間のMOU 9.モンゴル鉱業省・中国開発革新委員会間の石炭加 工促進化への協力事業に関するMOU 10.鉱物資源、エネルギー、インフラへの協力を管轄 するモンゴル・中国委員会設立に関するモンゴル 経済開発省・中国開発革新委員会間のMOU 11.モンゴル・中国間の貿易、経済交流開発に関する 中期行動計画 12.経済・技術協力に関する両政府間の条約 13.中国の協力にてウランバートルに設立される、障 害がある子どもの支援センター啓発プロジェクト 開始に関して交わす両政府間の書簡 14.モンゴル・中国間の自由貿易域開発に関するモン ゴル経済開発省・中国貿易省間のMOU 15.“電子健康プロジェクト”への特別なクレジット ラインに関するモンゴル経済開発省・中国輸出輸 入銀行間の条約 16.“新世紀の教育プロジェクト”への特別なクレ ジットラインに関するモンゴル経済開発省・中国 輸出輸入銀行間の条約 17.“大型トラクター購入プロジェクト”への特別な クレジットラインに関するモンゴル経済開発省・ 中国輸出輸入銀行間の条約 18.モンゴル・中国国境マネージメント協力委員会設 立に関するモンゴル国境検問所委員会・中国税関 庁間の条約 19.モンゴル文化、スポーツ、観光省・中国文化省間 の文化交流に関する議定書 20.銀行システム管理に関するモンゴル中銀・中国銀 行管理委員会間のMOU 21.石油セクター協力に関するモンゴル石油庁・中国 石油国民企業間のMOU 22.ウランバートル市スフバートル区第7ホローで TOSK(国有住宅企業)により開発される住宅プ ロジェクトへのローンに関するTOSK・中国輸出 輸入銀行間のローン条約 23.162百万US$の借入に関するモンゴル開銀・中 国開銀間の条約 24.ガシューン・ソハイト→ガンツ・モド間の鉄道開 発 を 担 当 す るGashuun Sukhait有 限 会 社・ ShenhuaGroup及び中国開銀間の基本条約。総合 研究所開発に関するモンゴル教育科学省・中国科 学技術省間のMOU 25.総合研究所開発に関するモンゴル教育科学省・中 国科学技術省間のMOU 26.学術交流に関するモンゴル教育科学省・中国科学 技術省間のMOU 2-5-5.モンゴル・ロシア・中国首脳会合 1)モンゴル・ロシア・中国の第1回首脳会合 2014年9月12~14日にかけて実施された、上海協 力機構の第15回首脳会談にてモンゴル・エレベグド ルジ大統領の提案により、モンゴル・ロシア・中国の 第1回首脳会合がタジキスタン共和国のドゥシャンベ 市で実施された。 エレベグドルジ大統領は、下記を3カ国の首脳会合 の精神と強調。 ① 長距離の国境で隣接する3カ国にとって協議・解 決すべき問題はインフラ、トランジット輸送であ る ② モンゴルは国境を接しているロシア、中国の領土 を通って港に至ることができる。 ③ モンゴルは地理的にロシアにとってヨーロッパか ら中国へ、中国にとってアジアからヨーロッパへ トランジットする国である

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エレベグドルジ大統領は上記の3精神を踏まえ、2 カ国の首脳へ下記を提案した。 ① 3か国の首脳会合をウランバートル市で3年ごと に実施する ② 同会合は公開で3か国の協力事業の総合的なコン セプトに合っている ③ 同会合で3か国の関心を示した問題、特に3か国 トランジット輸送、インフラ及び地域性の問題を 会談し解決する ロシア・プーチン大統領は、ロシア・モンゴル・ 中国は隣接国であるため、インフラ、エネルギー、鉱 業の協力事業を開発する可能性があることに言及し た。3か国首脳会合をどのような形で行うかを考えな ければならないが、特に上海協力機構の首脳会合で首 脳3名は会談できる。次回の3か国首脳会合をウファ 市で行う。またプーチン大統領は、ロシア、中国領域 にあるウランバートル鉄道(モンゴル横断鉄道)の続 きを基礎にした上で、新しい鉄道を開発することを考 えていると述べた。また、中国側のシルクロード構 想、モンゴル側のタリーン・ザム構想をロシアのプロ ジェクトと結びつけて考えられる。中国側、モンゴル 側が関心を示せば、送電線網をモンゴル経由で開発す ることが計画できる。 中国習近平国家主席は、3か国首脳会合でお互いに 関心がある協力事業に関して意見交換を行うことが重 要だと述べ3か国首脳会合を定例化するモンゴル側の 提案に賛同した。また、首脳会合を3か国で順番に実 施する、または上海協力機構の首脳会合と同時に行う ことも可能。鉄道、送電線網、経済通路、火力発電所 などの面でモンゴル、ロシアと協力できると述べた。 2)モンゴル・ロシア・中国の第2回首脳会合 ロシアのウファ市で実施されている上海協力機構 の第15回首脳会談中、2015年7月10日にモンゴル・ ロシア・中国の第2回首脳会談が実施された。同会合 にて下記4通の書面に調印した。 • モンゴル・ロシア・中国の中期協力事業計画 • モンゴル・ロシア・中国の経済通路開発のプログ ラム作成に関するMOU • モンゴル・ロシア・中国の貿易開発に関するMOU • モンゴル・ロシア・中国国境検問所開発に関する MOU モンゴル側の要請により「モンゴル・ロシア・中国 の中期協力事業計画」に貿易、経済協力事業が重視さ れた他、ウランバートル鉄道(横断鉄道)のトラン ジット輸送拡大化、3か国出資による鉄道輸送・ロジ ステックの合弁企業設立の可能性を調査することが指 定された。 3か国は中国側のシルクロード構想、ロシア側の ユーロアジア通路構想、モンゴル側のタリーン・ザム 構想を結び、モンゴル・ロシア・中国の経済通路を開 発することに合意。 2-6.最近の政治動向 2012年第6回総選挙で民主党が勝利したが、単独で 政府を成立できない状況に直面したため、人民革命 党・国民民主党のShudraga Yos連合と協力し連立政 府を成立し、N.Altankhuyaga代表が首相になった。 しかし、2014年12月にN.Altankhuyaga首相が解任さ れたため、Ch.Saikhanbileg氏(N.Altankhuyaga政権 の官房大臣)が首相になり人民党、人民革命党・国民 民主党のShudraga Yos連合との連合政権を設立し た。現在、76議席中46議席を人民革命党、35議席を 民主党、26議席を人民党、人民革命党・国民民主党 のShudraga Yos連合の10議席、国民勇気党が2議席、 単独候補者が3議席を占める。2013年の大統領選挙で は、民主党Ts.エルベグドルジが再当選した。

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3.経済の情勢

3-1.経済構造 2014年GDPは120.1億US$、 一 人 あ た りGDPは 4,320US$である。GDP構成(2014年)は、鉱業部門 17.08%、 農 牧 畜 産 林 業13.5%、 卸 小 売 等 流 通 関 連 11.0%、運輸・通信・倉庫6.6%、製造業で8.2%。建 設・不動産で4.9%である。 GDPの53%は輸出で占められており、輸出の約 80%が鉱物資源であるから、鉱業は外貨獲得の面で 最重要産業である。2014年の主要な輸出品目割合は 銅精鉱が44.5%、石炭が14.7%、原油が10.9%、鉄鉱 石が7.7%、金が7.0%、亜鉛鉱石と亜鉛精鉱が1.9%で あった。鉱物資源の輸出先は経済発展の著しい中国で ある。伝統的輸出産品では、カシミアを主とする繊 維・繊維製品が輸出の約9%を占める。雇用吸収の面 では、酪農、カシミア等の伝統的産業が重要である。 遊牧の伝統から山羊、羊、牛、馬等の家畜が6,400万 頭を飼育しており、家畜関連産業も比較的優位にあ る。 3-2.経済危機、経済成長と経済成長低下、外国投資 の減少 鉱物資源価格の高騰で、2008年までの3年間のGDP は平均9.2%成長し、順調に成長してきた。この結果 一 人 あ た りGDP(名 目)も2006年 の1,236US$か ら 2008年には1,818US$と47%上昇していたが、2008年 10月の世界金融危機により、世界経済の急激な縮小 から資源価格が暴落し、輸出収入が激減したが、輸入 削減が遅れたため外貨危機に陥り、MNT価値が急落 した。 政府は金融引き締めの強化、2009年4月にIMFから 240.9百万US$のStand By Credit(2010年10月1日ま で)を借り入れ、主要援助国及び世界銀行(WB)ア ジア開発銀行の間、モンゴルはIMF管理下でマクロ 経済の調整を行い、経済は安定する傾向になった。 ADB等からの緊急支援等で経済調整を行い、危機 を回避した。IMFの借り入れにより1年半、2009年第 4四半期からの回復輸出は中国の強力な成長の恩恵を 受け、中国向け銅、石炭輸出量の増加、価格高騰によ り、回復してきた。 中国向け銅及び石炭輸出の増加、価格高騰と共に 2009年10月には数年間の交渉を要したOyu Tolgoi 銅・金鉱床開発にかかる投資協定(モンゴル政府 -Ivanhoe、Rio Tinto)締結、中国の原料炭需要の増加 などにより、外国直接投資の大量流入、拡張的なマク ロ経済政策などから急速成長し、2011-2013年にか けて3年連続の2桁成長(2011年に17.5%増)を果た し、世界有数の高成長国となった。 図11.外国直接投資額 出典:モンゴル投資庁のデータより Blue Ridge 社が作成 図12.アジア諸国の経済成長比(%) 出典:モンゴル国家統計局データより Blue Ridge 社作成

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外国直接投資が最高額に至った2011年に流入した 49億US$の86.7%の40億USドルが、鉱業へ融資さ れた。外国投資の61%以上が香港、中国の証券取引 所、銀行、金融機関の経由だった(主な部分は原料炭 プロジェクト5)。しかし、2012年以降の資源価格の 低迷、不透明な投資環境、新規探鉱ライセンスの発行 停止、最大プロジェクトであるOu Tolgoiプロジェク トの新規投資停止(坑内掘鉱山へ融資停止)による外 国直接投資の激減に加えて、金融緩和政策や財政赤 字、貿易赤字の拡大などの副作用から国際収支が悪化 し、外国準備高が減少したことを受けてマクロ経済が 全般的に悪化した。 図13.外資準備額の減少(2011年から2014年) 出典:モンゴル中央銀行データより Blue Ridge 社作成 図14.モンゴル TG に対する US $為替レート(2011年から2014年) 出典:モンゴル中央銀行データより Blue Ridge 社作成 5 モンゴル中央銀行の「対外セクターレポート-2011」

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3-3.マクロ経済の中期展望 2014年、モンゴルのマクロ経済は外国投資の減少、 主な輸出品である鉱物資源の市場価格低下、最大の貿 易及び投資相手の中国の経済成長が低迷状態となった 中、2012年 に 国 際 市 場 で 発 行 さ れ た15億US$ の Chingis国債及びサムライ債の返済(2017年に500百万 US$を返済するべく)などの対外債務、財政赤字の 増加により、モンゴルの信用格付けは低下して再び経 済危機に直面する可能性も高まっている。 モンゴルの外貨準備高は2013年以降、激減した。 2014年10月末時点の外貨準備の水準は、輸入金額の3か 月前後の水準と、外貨準備の枯渇が警戒される水準の直 前である。前回のIMF支援では、輸入金額の2カ月分を 切ったラインで支援要請がされたので、現在の水準に当 てはめると9.15億$前後(2013年11月~2014年10月の月 ごとの輸入平均金額の2か月分)にあてはまる。 拡張的なマクロ経済政策や為替レートの下落によ る輸入材価格の上昇を受けて、インフレも加速してい る。2014年11月時点のインフレ率は11.5%と、2013 年10月以降14か月連続で年率10%を超えており、自 国通貨であるトゥグルグも海外との物価格差を反映し て下落が続いている。 後任のサイハンビレグ首相はそのような問題を解決 すべく、野党人民党を含めた大連立政権構想を掲げ、 結果的に大連立政権の樹立に成功した。経済成長を確 保・支援するため、「経済低迷を乗り越える対策」を 発表し、積極的に外国投資を誘い、大規模なOyu Tolgoi,Tavan Tolgoiなどのプロジェクトを実施しよう としている。また、公的債務の管理システムを改善す る目的で、2015年2月に「債務マネージメント法6」を 制定し、債務最高限をGDPの40%でに制限した。 世銀レポートによると鉱業以外のセクターは2016 年に少し上昇する傾向であるが、鉱業セクターの減少 により経済成長は0.8%になる見込み。2018年から Oyu Tolgoiプロジェクトが品位が高い鉱石を採掘す る他、国際市場も回復する見通し。 Oyu Tolgoiプロジェクトの鉱石品位が減少すると 共に、経済市場状況により影響鉱業生産が減少する傾 向。Oyu Tolgoiプ ロ ジェク ト の フェーズ2に よ り、 2016年下半期に商品・サービス提供業が改善する見 通し。大量の鉱物資源が存在するため、長期的にモン ゴル経済成長予測は高い。 し か し、 短 期 的 に 大 き な 困 難 に 直 面 し て い る。 2015~2017年、経常収支の増加、高額の対外債務を 返済するため国際資金調達の需要は大きくなる見込 み。しかし、それを避ける可能性は低い。 政府は政策的な調整を維持しようとして、2016年 の総選挙が近くなるほど実現できなくなるリスクが高 まる傾向。 表4.外貨建債券の償還スケジュール 発行体 発行日 償還日 残高(百万) 通貨 US$換算残高(百万) クーポン (百万 USD)年利払 貿易開銀 12.09.20 15.09.20 300 USD 300 8,500 25.5 貿易開銀 10.11.16 15.11.17 25 USD 25 12,500 3.1 貿易開銀 14.01.21 17.01.21 700 人民元 115 10,000 11.5 蒙開銀 14.01.21 17.03.21 580 USD 580 5,750 33.4 MMC- 社 12.03.29 17.03.29 600 USD 600 8,875 53.3 政府 12.12.05 18.01.05 500 USD 500 4,125 20.3 政府 12.12.05 22.12.05 1,000 USD 1,000 5,125 51.3 蒙開銀 13.12.25 23.12.25 30,000 日本円 261 1,520 4.0 合計 3,381 202.5 出典:モンゴル経済の現状と課題(IMMA) 表5.モンゴルの長期発行体信用格付 格付会社 格付 備考 S & P B+ 2014.04.29に BB から格下げ実通しは安定定期 Moody's B2 2014.07.17に B1から格下 Fitch B+ 見通しはネガティブ 出典:Thomson Reuters 6 財政安定法の改正(2015年1月20日)-財政安定法の6.1.4に盛り込まれた“国家債務は、GDPの40%を超えない” という条項に従い、2015年に58.3%、2016年に55%、2017年に50%、2018年から40%を超えない。

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3-4.貿易 モンゴルの貿易総取引額は小さく、2014年の総取 引は110億US$(輸出は58億US$、輸入は52億US $、収支は5.3億US$:2014年に貿易収支が2006年 以降始めて黒字)だった。 過 去10年(2004-2013年)に 輸 出 依 存 度 の 平 均 は 45%前後だったが、2014年に49.3%の水準に至った。 輸出額に占める鉱物資源の割合(表6)は非常に大き く、2013年に88%、2014年には83%になった。 10億US$

貿易総取引

輸出

輸入

収支

図15.モンゴルの貿易取引 出典:モンゴル統計庁データにより Blue Ridge 社作成 表6.2014年の主な輸出入品グループ別 商品グループ 輸出(%) 輸入(%) 鉱物資源 83.0 28.0 機械、機器、電気機器、レコーダー、テレビ&スペアパーツ 1.0 18.8 自動車、航空機及びスペアパーツ 0.6 11.8 織物及び織物商品 5.9 1.3 皮、なめし皮、革製品 0.6 0.1 宝石、貴金属、ジュエリー 7.0 0.1 ベースメタル、メタル製品 0.8 10.3 その他 1.1 29.6 出典:モンゴル統計庁データより Blue Ridge 社作成 表7.主な輸出製品額 - 種類別 2012年 2013年 2014年 輸出額 -2014年(百万 US $) 輸出額に占める割合(2014年) 石炭 20,915.5 18,373.1 19,499.1 849.0 14.7 銅精鉱 574.3 649.8 1,324.4 2,573.6 44.5 鉄鉱石 6,4153 6,724.9 6,324.4 446.3 7.7 原油(千 bbl) 3,568 5,243.8 6,885.1 634.6 10.9 亜鉛鉱石・精鉱 140.9 130.9 113.1 113.1 1.9 金(t) 2.8 7.6 10.0 405.2 7.0 出典:モンゴル統計庁データより Blue Ridge 社作成

(21)

3-5.外国投資 2005~2014年末までの間に、99か国9,450の外国投 資企業が登記され、直接投資金額は160億US$で、 そのうち76.8%は2011~2013年に投資されている。

機械設備・電気製品

鉱業製品

食品

自動車・航空機

その他

図16.主な輸入製品の割合 - 種類別(%) 出典:モンゴル統計庁データより Blue Ridge 社作成

その他

韓国

カナダ

シンガポール

ルクセンブルク

イギリス

中国

ポーランド

図18.外国直接投資額 - 国別(1990年〜2014年) 出典:モンゴル投資庁データより Blue Ridge 社作成

中国

イギリス

ロシア

イタリア

その他

中国

ロシア

日本

韓国

アメリカ

ドイツ

その他

図17.2014年の輸出相手国、輸入相手国の割合(%) 出典:モンゴル統計庁データより Blue Ridge 社作成

(22)

外国投資の減少に、2012年4月に制定された“戦略 的なセクター(鉱業、銀行、金融、メディア、情報通 信)における外国投資法”7による外資規制の強化、 Oyu Tolgoiプロジェクトにおける課税、権益、投資 額の上昇などに関するモンゴル政府とRioTintoとの 対立による坑内掘鉱山への投資停止(2013年8月)、 TavanTolgoi炭田国際入札の不透明な状況、資源ナ ショナリズム的な対応を強く表明する政治家及び社会 の行動、石炭価額の急騰により、2013年、2014年に 渡って外国直接投資は連続に減少し、2014年に580 百万US$(前年比45.9%減、最高準となる2011年と 比較し88.3%減)になった。 図19.外国直接投資額 - セクター別(1990年〜2014年) 出典:モンゴル投資庁データより Blue Ridge 社作成 図20.外国直接投資額(2005年 -2014年) 出典:モンゴル投資庁データより Blue Ridge 社作成

7 中国のChalco(中国アルミニウム)がSouth Gobi Resources社(南部モンゴルでOvoot原料炭鉱山及び原料炭鉱

区を持つ企業でIvanhoeMines社の子会社)の株式を買収することが発表された。2012年6月に国会総選挙があっ ため、経済政策というより選挙ピーアールの目的で、モンゴル国会が資源輸出国である中国からの影響を避ける という理念で同買収に停止をかけ、2012 年5 月に戦略セクター(鉱業、銀行、金融、メディア・情報通信など) への過半出資に対して事前に政府の了承を取り付けるように義務付けた外国投資管理法を制定。同法では  • 外国の国営企業がモンゴルで事業を行う、投資する  • 鉱業、銀行、金融、メディア・情報通信などのセクターに外国投資家が投資する  • 鉱業、銀行、金融、メディア・情報通信などのセクターで事業する企業の1/3を買収する場合、モンゴル政 府から許可を得なければならない、投資額は10百万US$以上の場合、モンゴル国会から許可を得なければ ならないと定められた。  同法律は中国の国営企業に対する買収防止策として制定されたが、海外企業の間にモンゴルの外資受け入れ政策 の不透明感が広がり、投資待機に影響した。

(23)

外国投資の急騰、経済成長のダウン、財政赤字を 受けてモンゴルが政策のやり直しを行い、資源ナショ ナリズム的な“戦略的なセクターにおける外国投資 法”の代わりに2013年10月に外投資を奨励する“投資 法”を制定し、投資家にとって有利な投資法を制定。 また、2015年5月にRio Tintoとの交渉を進め、投 資問題をクリアし2015年5月に“坑内掘鉱山への融資 計画”に調印したため、2016年から坑内掘鉱山へ投資 を 再 開 す る こ と に 両 方 が 合 意 済、2014年12月 に Tavan Tolgoi炭田の国際入札の再開、新規探鉱権の 再発行などの外国投資を奨励する、ビジネスしやすい 環境を整備する政策を積極的に行ってきた。 鉱物資源価額の低下、中国経済低迷などにより、 短期的に外国直接投資が減少する傾向であるが、2016 年からOyuTolgoiプロジェクトのフェーズ-2(68億 US$)、TavanTolgoiプロジェクトの国際入札・開発 により外国直接投資が回復する可能性はある。ただ し、大型鉱山プロジェクト、鉱業のみへの外国投資に より経済成長を遂げられたとしても、停滞すればマク ロ経済全体が困難に直面するリスクを避ける対策が必 要だとして、モンゴル政府は鉱業の依存度を下げるた め、鉱業以外の産業を支援する、外国投資を奨励する 対策の重要性を強調した政策を行ってきている。

(24)

4.投資法(外国投資法の代わりに投資法が

制定された)

2013年10月3日にモンゴル国会が“投資法”を制定 した。同日から“外国投資法”、外国投資の停滞及び減 少の要因の一つということで評判が悪かった“戦略的 なセクター(鉱業、銀行、金融、メディア、情報通信) における外国投資法”、外国投資法が無効となった。 中 国 のChalco(中 国 ア ル ミ ニ ウ ム)と カ ナ ダ の SouthGobiResources社との株式売買にストップをか け、2012年6月の国会総合選挙のピーアール目的で、 2012年4月に制定された“戦略的なセクターにおける 外国投資法”が外国投資の減少、外国投資の停滞に 係ったと共に最大プロジェクトとなるOyu Tolgoiプ ロジェクトへの投資も停止したため、モンゴル国会が 褪せて投資家を優遇する“投資法”を制定した。た だ、外国企業ではなく外国国営企業に対する許可制度 を“投資法”にも残されている。外国投資、外国投資 家の権益、義務、保護に関して“外国投資法”の条項 は“投資法”でも維持している。同法では大規模投資 プロジェクト、最新技術・ノウハウを普及させる事業 への投資、輸出事業への投資が税金固定、安定確保契 約などにて政府から奨励されるが、小規模の外国投資 は投資額最低限(外国投資家は最低10万US$を投資 しなけらばならない法人株主になれない)にて限られ た条件をも維持している。 表面上は投資環境の改善がみられるが、2年前後で 流動する投資環境は投資家達の信用を得られていない 状況が継続している。且つ、鉱物資源輸出の拡大、価 額高騰がみられない限り、 短期的に高額の外国投資が流入する可能性は高く ない。投資家にとって魅力的と評価される“投資法” の概要は下記のとおり。 4-1.基本理念 投資法の基本理念は外国投資家、国内投資家を“投 資家”と傘下で平等にみなし、保護しながら、外国国 営企業の投資を管理することである。また、モンゴル の権益に似合うセクターを支援する対策とも言える。 同法は税金固定及びその他の手法をとおして投資家の 権益、興味、投資を保護する。投資額、投資地域及び 業界により、①法人所得税、②関税、③付加価値税、 ④鉱物資源ロイヤルティ、の4種税金が定期的に固定さ れるよう整備されたことは、投資保護の面でプラスに なった。同法の実行と共に外国投資法が無効になった。 4-2.定義 投資法で投資、投資家、外国投資家、外国国営企業 という定義が取り上げられる。同定義は下記のとおり。 • 投資は、モンゴル領土で利益目的で設立された法 人の資本金として投資し、決算書に掲載された無形 資産及び有形資産を言う • 投資家は、モンゴル領土で投資するモンゴル及び 外国の投資家を言う • 外国投資家は、モンゴル領土で投資を行う外国人、 外国に永住するモンゴル国民を言う • 国内投資家は、モンゴル領土で投資を行うモンゴ ルで登録された企業またはモンゴル国籍者を言う • 安定化証明書は、同法で指定された条件をみたし た企業に対して「法人所得税、関税、付加価値税、 鉱物資源ロイヤルティ」を定期的に固定させること を証明する公式書面を言う • 外国国営企業は、権益の50%及び50%以上を外国 政府が直接または間接に持っている企業を言う 4-3.投資形態 投資家はモンゴル領土で下記の投資を行える。 1.投資家は単独または他者と協力した事業体の設立 2.投資家は株式、債券、その他のボンドの回収によ るもの 3.企業体の合弁化、統一によるもの 4.コンセッション、生産分与契約を取得する、マー ケティング及びマネージメントの契約を締結する ことによるもの 5.ファイナンシャル・リーシング及びフランチャイ ズを通して投資を行うもの 6.法律で禁止されていないその他の形態 4-4.法的保障 投資法第2章第6条により外国投資に関して次の保 障を与えている。 1.投資家は税金支援、税金以外の支援を享受できる 2.政府は同法で指定された条件を満たした企業体に 対して「法人所得税、関税、付加価値税、鉱物資 源ロイヤルティ」の固定を保障する 3.投資は、不法に接収されない 4.投資は、公的目的によってのみ、且つ無差別、完 全補償、適切な法手続きによってのみ接収される 5.モンゴルが加盟する国際条約に規定されていなけ れば、上記4.に指定されたとおり接収された資産 の補償金額は接収時或いは接収広告時の接収資産 の価格により支払われる 6.投資家の知的財産を法律に従って保護すること 7.投資家はモンゴル領土における納税義務を果たし た場合、配当金、収入など8を外国へ送金する権利 を有するものとする 8 -利息及び配当金からの収入、ロイヤルティ、サービス料金、ローンの完本、事業体倒産後の収入、法律上に得た その他の得た、所有している各資産

参照

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