平成14年度
厚生労働科学研究「病院等における薬剤師業務の質の向上に関する研究」
(主任研究者:全田浩日本病院薬剤師会会長)
分担研究「保険薬局における調剤事故防止対策に関する研究」
報告書
平成15年3月
分担研究者
井上章治 日本薬剤師会常務理事
平成14年度
厚生労働科学研究「病院等における薬剤師業務の質の向上に関する研究」
(主任研究者:全田浩日本病院薬剤師会会長)
分担研究「保険薬局における調剤事故防止対策に関する研究」
報告書の概要
(2頁) 1.我が国の保険薬局における調剤事故の現状をまとめたこと。 「 」 ○ 日本薬剤師会は平成13年4月に 薬局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル を ま と め る と とも に 、 全 国 の 薬 局 に お いて 調 剤 事 故 が 発生 し た場 合 の 報 告 制 度 を開 始 し た 。 本 研 究 では 、 平 成 6 年 度 以 降 の 事故 件 数 等 の 推 移を ま とめ る と と も に 、 同報 告 制度等により把握した平成13∼14年度の全事故事例を取りまとめた (47頁)。 (4頁) 2.調剤事故の原因薬剤の分析を行ったこと。 ○ 日本薬剤師会が平成10年1月から平成15年3月の間に把握した「薬局・薬剤師 に よ る 調 剤 事 故 事 例 」 に つ い て 、 そ の 原 因 と な っ た 薬 剤を ① 名 称 ( 商 品 名 、 ② 薬 効) 分類、③剤形の別に集計・分析した (5頁)。 、 「 」 ○ さらに 日本薬剤師会が平成13年度1年間実施した インシデント事例報告制度 の集計結果から、薬剤師が間違えやすい薬剤の分析も行った。 (8頁) 3.調剤事故の原因分析と対応策検討のための手法を新たに確立したこと。 ○ 保険薬局における調剤事故事例の原因を多角的に分析し、対応策を検討するための 手法として 「PHARM−2E」分析法を新たに確立した (11頁、91頁)、 フ ァ ー マ 。 ○ さ ら に 「 P HA R M− 2 E」 分 析 法の 説 明書 を 作成し 、全 国 の薬 剤 師に 広く 活用、 を提案した。 (21頁) 4.薬局における安全対策の全体像をまとめたこと。 ○ 本 研 究 で 新 た に 開 発 した 「 P H A R M − 2 E 」分 析 法を 用 い て 、過 去 に実 際 に発 生 し た 重 大 な 調 剤事 故 事 例 を 分 析 し 、 そ の結 果 か ら 、 一 連の 調 剤業 務 の 中 で 事 故 の発 生 要因が多数存在する業務段階等を特定した (123∼124頁)。 ○ さ ら に 、 調 剤業 務 の 各 段 階 に お け る 安全 対 策 上 の 留 意点 や 、全 薬 局 に 共 通 し て必 要 と考えられる具体策等を調剤の流れに沿ってまとめ、薬局における安全対策の全体像 を示した。 (36頁) 5.調剤事故防止(安全管理)における管理者の役割をまとめたこと。 ○ 薬 事 法 に よ り 、 薬 局 にお け る 人 、 物 、 施 設 等 の管 理 を義 務 付 け られ て いる 管 理者 に 対し、安全管理者としての役割を担うことを提言し、調剤事故防止の上で果たすべき 役割や、取り組むべき内容等をまとめた。 以 上目
次
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 本分担研究の目的(内容) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第1章.保険薬局における調剤事故の現状と防止対策の取組み ・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (1)保険薬局における調剤事故の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (2)調剤事故防止に対する日本薬剤師会の取組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 第2章.調剤事故の原因薬剤等の分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 (1)調剤事故の原因薬剤の分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 (2)インシデント事例に見る間違いやすい薬剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 第3章.調剤ミス・調剤事故事例の分析手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 (1)調剤ミス・調剤事故事例の分析法の必要性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 (2)調剤ミス・調剤事故事例の分析手法の検討経過 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 (3 『PHARM-2E分析』は事故防止に繋がるか) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 (4)事例分析方法としての『PHARM-2E分析法』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 (5 『PHARM-2E分析法』のイメージ図) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 (6 『PHARM-2E分析法』を用いた実際の調剤事故事例の分析) ・・・・・・・ 18 第4章.薬局における安全対策の全体像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 (1)総論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 (2)各論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 (3)薬局における安全対策の全体像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 第5章.薬局の安全対策と管理者の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 (1)基本的考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 (2)安全対策のための人的要件の管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 (3)業務手順等の統一化の推進と継続的な改善 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 (4)医薬品に係る安全管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 (5)薬局における作業環境整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 (6)その他薬局における安全確保のための取り組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 参考文献・資料など ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 参 考 1-1.日本薬剤師会に報告された調剤事故等報告事例(平成13∼14年度) ・・・・ 47 1-2.新聞(一般紙)に報道された医薬品に関する医療事故事例 −薬局・薬剤師関連以外−(平成13∼14年度) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 2. 他業界の著名な分析モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 3-1 『PHARM-4E分析法』記入用紙. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 3-2 『PHARM-4E分析法』を用いた14事故事例分析結果. ・・・・・・・・・・・・ 77 4-1 『PHARM-2E分析法』記入用紙. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 4-2 『PHARM-2E分析法』を用いた14事故事例分析結果. ・・・・・・・・・・・・ 93 5-1.一般的な調剤業務の流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107 5-2.14事故事例分析結果を「調剤の流れ」に当てはめたもの ・・・・・・・・・・・・ 109 5-3.14事故事例分析結果から得た発生要因分布 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123 5-4.14事故事例分析結果から得た発生要因分布(集計結果) ・・・・・・・・・・・・ 124 「保険薬局における調剤事故防止対策に関する研究」検討会 名簿 ・・・・・・・・・・・・ 125はじめに 近年、医薬分業が急速に進展し、直近の数値(平成14年12月)によると、処方せん受取 率は全国平均で51.1%にまで達している。 薬物療法の安全性を高める医薬分業において、患者に健康被害を及ぼす調剤事故はあっ てはならないことであるが、医薬分業の進展に伴い、保険薬局における調剤事故も増加の 傾向にある。 加えて、調剤事故については、昨今の国民の医療に対する関心の高まりとも相俟って、 一般紙等でもしばしば報じられるようになり、国民からは薬局・薬剤師の調剤業務そのも のに対して厳しい視線が向けられるようになっている。調剤事故は患者の健康被害はもと より、薬剤師職能の根幹に係わる重要な問題である。 このような認識の基、平成14年度の本分担研究においては、保険薬局における調剤事故 防止を目的に、①調剤事故における原因分析手法の確立、②実際の事故事例の分析結果を 踏まえた事故防止対策の提案、③調剤事故防止(安全管理)における管理薬剤師の役割等 を ま と め る こ と と し た 。 併 せ て 、調 剤 事 故 の 原 因 薬 剤の 分 析 も 行 う な ど 、 幅 広 い 視 点 か らの調剤事故防止に関する対策の検討を行うこととした。 本分担研究報告書が、保険薬局における調剤事故防止対策の更なる充実の一助となれば 幸いである。 本分担研究の目的(内容) ○ 薬 局 に お け る 調 剤 事 故 の 発 生 を 防 止 す る 上 で は 、 過 去 に 発 生 し た 調 剤 事 故 事 例 情 報 等 を適切に活用し、再発防止策の立案・策定等に役立てることが求められる。 ○ そのような観点から、本分担研究では、以下の項目について研究を行う。 ①我が国における「保険薬局における調剤事故の現状」を把握する。 ② 日 本 薬 剤 師 会 に お い て 、 全 国 の 薬 局 ・ 薬 剤 師 よ り 収 集 し た 調 剤 事 故 事 例 及 び イ ン ( ) 、 、 シ デント事例 ヒヤリ・ハット事例 を分析し 調剤事故の原因となった薬剤や を把握する。 薬 剤師が間違いやすい薬剤(複数規格、名称類似、外観類似など) ③調剤事故防止のためには、上記①②のような全国的な傾向の把握とともに、個々の 薬 局 に お い て 、 実 際 に 起 き た 調 剤 事 故 事 例及 び イ ン シ デ ン ト 事 例 か ら 、そ の 原 因 等 を分析し、対策を講じることで重要である。しかしながら、現在、調剤事故の原 因 等を分析する手法は確立されていない。このため、調剤事故事例やインシデント 事 例の原因等を分析する手法を新たに開発し、薬局での活用を提案する。 ④新たに開発した「調剤事故事例の分析手法」を用いて、過去に発生した重大な調剤 事故事例を分析し、そこから、多くの薬局に共通して活用できる「調剤事故防止の 具体策」を調剤の流れに沿ってまとめ、薬局・薬剤師に広く公表する。 管 理 者 が 、 調 剤 事 故 防 止 ( 安 全 管 理 ) の 上 で 果 た す べ き 役 ⑤ 併 せ て 、 薬 局 に お け る 割 等を提言する。 ○ こ れ ら 研 究 結 果 を 広 く 薬 局 に 示 す こ と に よ り 、 保 険 薬 局 に お け る 調 剤 事 故 防 止 対 策 の 一層の強化・充実を図る。
第1章.保険薬局における調剤事故の現状と防止対策の取組み
(1)保険薬局における調剤事故の現状 我が国の保険薬局における調剤事故件数を正確に把握することは不可能であるが、参考 となる数値として、日本薬剤師会(以下、日薬)が把握した調剤事故件数がある。 日本薬剤師会では、従来より「薬剤師賠償責任保険制度」を設けている。表1は、同制 度において日薬に報告された調剤事故件数等の年次推移であるが、医薬分業の進展や保険 薬局数の増加等に伴い、調剤事故件数も増加していることが見受けられる。 また、日薬では、会員薬局で調剤事故が発生した場合に、各都道府県薬剤師会を通じて 報告を受ける制度を平成13年4月より設けている。同制度により、日薬に報告された調剤 事故は、平成13年度が45件、平成14年度が47件である。 平 成 13∼ 14年 度 の 調 剤 事 故の 内 容 は資 料1 − 1の と お りで あ り 、 平 成14年 度 には 、 薬 局 での事故としては初めて患者が死亡する事故も発生している。なお、薬局・薬剤師に関連 する事故以外で、医薬品に関する医療事故が新聞(一般紙)に報じられたものをまとめ、 に示す。 資料1−2 表1 薬賠責制度における調剤事故件数等の推移 年 度 事故件数 薬賠責 [参考] ※ 1 ※ 2 ※ 3 (支払件数) 加入者数 保険薬局数 1994年度(平成6年度) 11件 26,576 34,480軒 1995年度(平成7年度) 9件 29,189 35,622軒 1996年度(平成8年度) 16件 33,518 36,849軒 1997年度(平成9年度) 22件 34,024 38,737軒 1998年度(平成10年度) 14件 38,686 40,843軒 1999年度(平成11年度) 26件 36,741 42,261軒 2000年度(平成12年度) 26件 41,137 43,912軒 2001年度(平成13年度) 26件 47,535 45,489軒 2002年度(平成14年度) 未確定 47,468 46,963軒 ※1.処方せん調剤によるものに限定 ※2.毎年翌年1月末現在。平成13年度からは薬局契約と薬剤師契約の計 ※3.毎年10月現在 (2)調剤事故防止に対する日本薬剤師会の取組み 薬局・薬剤師による調剤事故の増加に鑑み、日薬では12年度以降、調剤事故防止対策に 積極的に取り組んでおり、具体的には以下のような施策を行っている。 ①「会員薬局における調剤過誤防止に向けた緊急対策」の作成・公表 平 成 12年 12月 「 会員薬 局にお ける調 剤過誤 防止に 向けた 緊急対 策」を 作成し 、日薬 雑、 誌を通じて会員に周知徹底。 ②「薬局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル」を作成・公表 平成13年4月、平成10年に作成した「調剤事故防止マニュアル」を全面的に見直し、「薬 局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル」を作成。日薬雑誌平成13年4月号の付録と して全会員に配付するとともに、日薬ホームページにも全文を掲載。③調剤事故・インシデント事例報告制度の実施 全国の会員薬局より、調剤事故事例及びインシデント事例(ヒヤリ・ハット事例)の報 告を受け付ける制度を平成13年4月1日より実施。インシデント事例については、平成13 年 度 1 年間 受 け 付 け、 4,041事 例の 報 告 を 受 け付 け る 。同事 例の集 計・分 析結果 につい て は、日薬雑誌や日薬ホームページを通じて会員へ周知。 ④「調剤事故を防ぐための4つのポイント」の策定・公表 平 成13年11月 「調 剤事故 を防 ぐため の4つ のポイ ント」 を策定 。平成 13年 11月17日に、 開催した「調剤事故防止等対策会議」において公表するとともに、日薬雑誌や日薬ホーム ページを通じて会員へ周知。 ⑤処方せんに関する疑義照会の徹底 平 成 14年 4 月 2日 「ア レ ビ ア チン細 粒2g /日」 が処方 された 院外処 方せん を受け 付、 けた薬局が疑義照会を行わないまま調剤し、これを服用した患者が死亡するという調剤事 故が発生。日薬ではこの事態を重く受け止め、平成14年4月16日、疑義照会の徹底を訴え る緊急ファクシミリを会員に送信。 ⑥日薬雑誌への「メディカル・エラーの防止を目指して」シリーズの掲載 日薬雑誌平成13年5月号から10月号にかけて、連載論文「メディカル・エラーの防止を 目指して (全12論文)を掲載。」 ⑦調剤事故に関する注意喚起等 平成13年4月以降、調剤事故発生の情報が日薬に報告される都度、日薬ニュースや日薬 雑誌を通じて会員に緊急連絡を実施。調剤事故が発生した場合には、事故の原因や全容が 分からなくても会員にできるだけ早くその情報を伝え、同様の事故を発生させないことを 目的とする措置。一例では、平成14年4∼5月、同一保険薬局で、処方せんに記載された 薬剤の一部(抗けいれん薬)を調剤し忘れるという調剤事故が5件立て続けに発生。この 調剤事故が「医師の処方通りの調剤が行われていなかったこと」に起因し、国民・患者を はじめ、他の医療関係者からの信頼を大きく揺るがすことになったこと等に鑑み、日薬雑 誌平成14年7月号巻頭に「薬剤師としての自覚を!」と題する会長名のコメントを綴り込 み、会員に「薬剤師としての社会に対する責務」を改めて認識するよう要請。 ⑧調剤事故防止全国担当者会議の開催 平成13年11月17日及び平成14年7月28日、各都道府県薬剤師会の担当者を集めた「調剤 事故防止全国担当者会議」を開催。同会議では、各県薬に調剤事故防止委員会の設置と担 当者の決定を要請するとともに、本会が行ったインシデント事例の集計・分析結果等を基 に、特に取り扱いに注意すべき薬剤名や具体的な防止策を示し、注意喚起を行う。同会議 の模様は日薬雑誌で紹介したほか、日薬ホームページを通じて動画配信を行い、広く会員 へ周知。さらに、同会議を受け、同様の研修会を原則全支部で開催するよう各県薬に対し 要請。全国の薬剤師会で行われた研修会は計705回、参加した薬剤師数は45,351名。 ⑨「調剤事故発生時の対応マニュアル」の検討 平 成 14年 度 「 調 剤 事故 発 生 時 の対応 マニュ アル」 を検討 。同マ ニュア ルは、 ①薬局 ・、 薬剤師用と②都道府県薬剤師会・支部薬剤師会用の2部構成となっており、薬局・薬剤師 用では患者との話し合い上の留意事項等を、薬剤師会用では事故発生薬局への支援策等を 説明。同マニュアルについては、医薬分業担当者会議(平成15年3月15日)において各県 薬担当者に(案)を配付。平成15年5月頃に「薬剤師が知っておきたい医療安全に関する 法律の基礎知識 (仮称)とともに完成・公表される予定。」
第2章.調剤事故の原因薬剤等の分析
(1)調剤事故の原因薬剤の分析 本分担研究では、日薬が平成10年1月∼平成15年3月の間に把握した「薬局・薬剤師に 」 、 、 ( )、 、 よる調剤事故事例 について その原因となった薬剤を ①名称 商品名 ②薬効分類 ③剤形の別に集計した (。 表2) それによると、患者に健康被害を与えた薬剤は抗てんかん剤や気管支拡張剤、糖尿病用 、 。 薬などが多く 商品名でも薬効分類別でもある程度特定されていることが明らかになった さらに、剤形別では、約半数が「散剤」に集中していることがわかった。散剤の調剤に関 し て は 「 薬 局・ 薬 剤 師 のた め の 調 剤事 故 防 止 マニュ アル」 でも同 様の指 摘が行 われて お、 り、特に注意が必要である。 (2)インシデント事例に見る間違いやすい薬剤 日薬では、全国の薬局・薬剤師よりインシデント事例を収集する取り組みを、平成13年 。 、 、 度の1年間実施した 同報告制度では 調剤ミスの内容を15に分類して報告を受けたが そ の 集 計 結 果 か ら は 、 調 剤 ミ ス の 内 容 で は 「 同 じ 医 薬 品 の 規 格 間 違 い」、「 錠 剤 等 の 計 数 間違い」、「他薬の調剤」が多いことが明らかになっている (。 表3) 表3 調剤ミスの内容 「同じ医薬品の規格の間違い」や「他薬の調剤」において、調剤ミスが多数報告された 薬剤としては、表4、表5のものが挙げられる。各薬局においても、頻繁に取り間違いが 発生する薬剤については、調剤棚の配置を工夫したり、調剤棚に「他規格あり」の注意書 きを貼るなど、特別な防止策を講じることが望まれる。 142 28 43 49 65 69 132 150 161 210 219 306 753 850 8670
200
400
600
800
1000
E15:その他(無回答含む) E14:服薬指導の間 E12:交付相手の間 E5:禁忌・相互作用の見落とし E8:他薬・異物等の混入 E11:薬袋の入間れ E10:交付漏れ E7:一包化の間違い E6:処方せんの記載ミスに気付かず調剤 E9:調剤漏れ E2:散剤・液剤の秤量・計量の間違い E13:薬情・薬袋の記載ミス E4:他薬を調剤 E1:錠剤・カプセル剤の計数の間違い E3:同じ医薬品の規格の間違い n=4,044表2:調剤事故の原因となった薬剤(平成10年1月∼平成15年3月) (1)薬剤名(商品名)別 薬剤名(商品名) 計 % アレビアチン 26 12.9% テグレトール 16 7.9% テオドール 11 5.4% ジゴシン 5 2.5% セレネース 5 2.5% フェノバルビタール 5 2.5% グリミクロン 4 2.0% デパス 4 2.0% ワーファリン 4 2.0% エクセグラン 3 1.5% オイグルコン 3 1.5% フェノバール 3 1.5% ペリアクチン 3 1.5% 92 その他 110 54.5% 202 計 202 100.0% (2)薬効分類別 薬効分類 計 % 抗てんかん剤 55 27.2% 気管支拡張剤 16 7.9% 糖尿病用剤 15 7.4% 精神神経用剤 13 6.4% 解熱鎮痛消炎剤 10 5.0% 強心剤 10 5.0% 催眠鎮静剤、抗不安剤 9 4.5% 漢方製剤 5 2.5% 血圧降下剤 5 2.5% 血管拡張剤 5 2.5% 143 その他 59 29.2% 202 202 100.0% (3)剤形別 剤形 計 % 散・末・細粒・顆粒・DS 97 48.0% 錠・カプセル 80 39.6% 注射 5 2.5% 外用剤(注射以外) 4 2.0% シロップ・液 3 1.5% 不明 13 6.4% 計 202 100.0% 注)1. 2. 3. 4. 日薬・薬賠責保険制度(処方せん調剤に関わるもの)及び日薬・調剤事故報告制度の報告事例において事故原因となった薬 剤をまとめたもの。 薬剤名別・薬効分類別はそれぞれ上位10位まで %はのべ薬剤数(202件)に占める割合 薬剤名(商品名)別では、表中の薬剤の他、ジゴキシン(2)、ダオニール(2)、テオロング(2)、ヒダントール(2)、ジキタリス製剤(1)、 フェニトインN(1)等も報告されている。また、インスリン製剤については合計で4件報告されている。 12.9% 7.9% 54.5% 5.4% 2.5% 2.5% 2.0% 2.0% 2.0% 1.5% 1.5% 1.5% 1.5% 2.5% アレビアチン テグレトール テオドール ジゴシン セレネース フェノバルビタール グリミクロン デパス ワーファリン エクセグラン オイグルコン フェノバール ペリアクチン その他 (1)薬剤名(商品名)別 (2)薬効分類別 27.2% 7.9% 7.4% 6.4% 5.0% 5.0% 4.5% 2.5% 2.5% 2.5% 29.2% 抗てんかん剤 気管支拡張剤 糖尿病用剤 精神神経用剤 解熱鎮痛消炎剤 強心剤 催眠鎮静剤、抗不安剤 漢方製剤 血圧降下剤 血管拡張剤 その他 n=202 n=202 (3)剤形別 48.0% 39.6% 2.5% 2.0% 1.5% 6.4% 散・末・細粒・顆粒・DS 錠・カプセル 注射 外用剤(注射以外) シロップ・液 不明 n=202
表4.規格の間違いやすい薬剤 アクディームシロップ 0.5% 1.0% ハルナールカプセル 0.1mg 0.2mg アシノンカプセル 75 150 プレドニゾロン 1mg 5mg アスベリン 散(10%) ドライシロップ(2%) ブロプレス 4mg 8mg アダラート 同L 同CR フロモックス 75mg 100mg アダラートL 10mg 20mg ベイスン 0.2mg 0.3mg アダラートCR 20mg 40mg ペルサンチン 25mg 100mg アドナ 10mg 30mg ペルジピンLA 20mg 40mg アマリール 1mg 3mg ポララミン 錠(2mg) 復効錠(6mg) アムロジン 2.5mg 5mg ポンタールカプセル 125mg 250mg アモキサン 10mg 25mg マーズレンS 0.5g包 0.67g包 1.0g包 アモバン 7.5mg 10mg ムコダイン 250mg 500mg アルファロール 0.25 gµ 0.5 gµ 1 gµ メイラックス 1mg 2mg アレジオン 10mg 20mg メチコバール 250 gµ 500 gµ アローゼン 1包0.5g 1包1.0g メバロチン 5mg 10mg インヒベース 0.5mg 1mg メリスロン 6mg 12mg オイグルコン 1.25mg 2.5mg ユーエフティE顆粒 0.5g包 0.75g包 1.0g包 オメプラゾン 10mg 20mg ラシックス 20mg 40mg ガスター 10mg 20mg ラニラピッド 0.05mg 0.1mg ガスターD錠 10mg 20mg リスモダン 50mg 100mg R錠(150mg) カバサール 0.25mg 1.0mg リピトール 5mg 10mg カルスロット 5mg 10mg 20mg リマチル 50mg 100mg カルデナリン 1mg 2mg ルボックス 25mg 50mg クラリス 50mg小児用 200mg レニベース 2.5mg 5mg ケルロング 5mg 10mg ロカルトロールカプセル 0.25 gµ 0.5 gµ コニール 2mg 4mg ローコールカプセル 10mg 20mg 30mg 酸化マグネシウム 0.67g包 1g包 ワンアルファ 0.25 gµ 0.5 gµ 1 gµ ザンタック 75mg 150mg セパゾン 1mg 2mg 【外用薬 】 セルシン 2mg 5mg カタリン 点眼液 K点眼液 ダオニール 1.25mg 2.5mg フルタイドロタディスク 100mg 200mg タケプロンカプセル 15mg 30mg フルメトロン点眼液 0.02% 0.1% ダーゼン 5mg 10mg ホクナリンテープ 0.5mg 1mg 2mg タナトリル 2.5mg 5mg ボルタレンサポ 12.5mg 25mg 50mg ディオバン 40mg 80mg リンデロン 液(0.1%) 眼・耳科用A液 点眼液(0.01%) テオドール 50mg 100mg 200mg ノボレット R 30R テグレトール 100mg 200mg ペンフィル R 10R 30R 40R テノーミン 25mg 50mg ペンフィル R 150単位 300単位 デパケン錠 100mg 200mg (30R,40R,50Rも同様) デパケン 錠 R錠 デパス 0.5mg 1.0mg 【剤形の間違い】 トリプタノール 10mg 25mg サジテン 点眼液 点鼻薬 ニトロール 錠(5mg) Rカプセル(20mg) セルベックス カプセル 細粒 ニバジール 2mg 4mg ゾビラックス 眼軟膏 軟膏 ニューロタン 25mg 50mg タリビッド 耳科用液 点眼液 ノルバスク 2.5mg 5mg トランサミン 錠(250mg) カプセル(250mg) バイロテンシン 5mg 10mg ボルタレン 錠 坐薬 ハルシオン 0.125mg 0.25mg リンデロンVG 軟膏 クリーム 注)表4「規格の間違いやすい薬剤」は、日薬インシデント事例報告制度(平成13年度)で報告された4,044例のうち、5例以上 報告のあったもの。
表5.他薬と間違いやすい薬剤 【名称の類似】 アイトロール アロシトール アーチスト アマリール アテレック(5mg) アレロック(5mg) アロテック アーテン アキネトン アルマール アマリール アテレック アルタット オメプラゾン(10mg,20mg) オメプラール(10mg,20mg) ガスモチン ガスコン ガナトン カモストン カリクレイン カルデナリン カルナクリン クラリス(50mg) クラリシッド(50mg) ザンタック ザイロリック ジキトキシン ジゴキシン ジゴシン 芍薬甘草湯 当帰芍薬散 セクトラール セレクトール セロクラール セフゾンカプセル セフスパンカプセル セレキノン セレスタミン セロクエル セロクラール ソレトン ソファリン ソレントミン チウラジール チラーヂンS テオドール テオロング テオドール テグレトール トフラニール トリプタロール トレドミン レンドルミン ノイロビタン ノイロトロピン ノルバスク ノルバデックス バイアスピリン(100mg) バファリン81mg錠 バファリン330mg錠 ビタノイリン ビタメジン ファロム フェルム フルカム プレドニン錠(5mg) プレドニゾロン(5mg) ムコダイン ムコスタ ムコソルバン (散剤にも同一事例 類似事例あり)、 ユベラ ユベラニコチネート ユベラNソフトカプセル リピト-ル リポバス リピト-ル リボトリール ローコール ロコルナール ロカルトロール 【規格等まで含めた名称の類似】 アナフラニール(25mg) トフラニール(25mg) エストラダームTTS ニトロダームTTS コニール4mg ニバジール4mg セロケン(20mg) セロクラール(20mg) テオドール(200mg) テオロング(200mg) テオドール(100mg,200mg) テグレトール(100mg,200mg) トフラニール(10mg) トリプタノール(10mg) 【薬効が類似・関連または同一】 アムロジン(2.5mg,5mg) ノルバスク(2.5mg,5mg) アルファロール(0.25 g)µ ロカルトロール (0.25 g)µ エバステル(10mg) ジルテック(10mg) オイグルコン(1.25mg,2.5mg) ダオニール(1.25mg,2.5mg) グリミクロン(40mg) チウラジール チラーヂン チラーヂンS デプロメール(25mg) ルボックス(25mg) デプロメール(25mg) トレドミン(25mg) ニューロタン(25mg,50mg) ノルバスク(2.5mg,5mg) ノルバスク(2.5mg,5mg) レニベース(2.5mg,5mg) ボルタレン ロキソニン メバロチン リパンチル(100mg,150mg) リピトール リポバス ロキソニン ロルカム 【外観の類似 】 カロナール ザイロリック 【剤形が同じことなどによる外用薬の取り間違い】 アイドロイチン点眼液 アゾテシン点眼液 アルビナ坐剤 アルピニー坐剤 アンヒバ坐剤 アルビナ坐剤 エストラダームTTS ニトロダームTTS MS温シップ MS冷シップ カタリン点眼液 タチオン点眼液 カタリンK点眼液 カリーユニ点眼液 クラビット点眼液 タリビッド点眼液 フルオメソロン(0.05%,0.1%)点眼液 フルオロメトロン(0.1%)点眼液 フルメトロン(0.02%,0.1%)点眼液 ボルタレンゲル モビラートゲル 【散剤・顆粒剤の取り間違い】(薬効の類似や保管場所の隣接が原因) アスベリン散 アストミン散 アスベリン散 メプチン顆粒 酸化マグネシウム 他薬 ムコサールDS ムコソルバンDS ムコダイン細粒 注)表5「他薬と間違いやすい薬剤」は日薬インシデント事例報告制度(平成13年度)で報告された 4,044例のうち、3例以上報告のあったもの。
第3章.調剤ミス・調剤事故事例の分析手法
調剤ミス・調剤事故事例の分析法の必要性 (1) 調剤事故を防止するには、実際に発生した調剤ミスや調剤事故の内容を分析し、その対 策を検討、実施していくことが重要である。 薬局における調剤ミス・調剤事故の分析方法は、大きく分けて、①定量的分析と②個別 事例分析の2つが考えられる。 定量的分析とは、どのような調剤ミスが多いのか、何時頃に、経験年数何年位の薬剤師 が調剤ミスを起こしやすいのか、どのような薬剤について実際に調剤事故が起きているの かといった情報を、定点的に収集し、分析する方法である。 前述のとおり、日薬では平成13年度の1年間、全国の薬局・薬剤師よりインシデントを 収集したが、その集計・分析結果からは調剤ミスの様々な傾向が明らかになっている。ま た、これまで日薬に報告された調剤事故事例からは、調剤事故を起こしやすい医薬品の品 目名や薬効別分類がある程度特定されている。各薬局においては、こうした情報を参考に 対応策を講じることが望まれる。 一方、個別事例の分析とは、実際に起きた調剤事故について、その事故の背景や要因を 分析し、対策を講じることである。定量的分析では、そこから導かれる対応策は一般論的 、 、 にならざるを得ないが 個別事例の分析は事故を起こした薬局の業務改善に直結するため 当該薬局にとっては極めて有効な手段となる。 個 別 の 医 療 事 故 事 例 を 分 析 す る 手 法 と し て は 、 他 業 界 で 使 わ れ て い る SHEL モ デ ル や (資料2参照) 4M-4E 方式等が一般的に用いられている。 本分担研究においても、これらの分析手法を用いて実際に薬局で発生した数例の調剤事 故事例の原因分析を行ってみたが、薬局という特殊な環境下の調剤事故に対しては、これ らの分析手法は直接には当てはまらないものと考えられた。すなわち、薬局における調剤 事故事例の原因等を分析する手法を、新たに開発する必要性が生じたのである。 調剤ミス・調剤事故事例の分析手法の検討経過 (2) 事 故 分 析 手 法 の ひ と つ に 、 ア メ リ カ の 国 家 航 空 宇 宙 局 で 実 際 に 分 析 に 用 い ら れ て い る 方 式 が あ る 。 4 と は 、 ( 人 、 ( 物 、 機 械 、 ( 環 境 、4M-4E M MAN ) MACHINE ) MEDIA )
( ) 、 。 、 MANAGEMENT 管理 を意味し 事故の要因をこの4つに分類する手法である しかし 薬剤師の調剤業務を考えると、この4 M はそぐわない点があり、さらに最も重要と考え 「 」 「 」 、 。 られる 疑義照会 や 服薬指導 などの 医療機関や患者との連携に関する分類がない そ こ で 、 本 分 担 研 究 に お い て は 、 事 故 要 因 の 分 類 に RELATION( 連 携 ) を 追 加 し 、 の頭文字( ・ ・ ・ ・ )をとって、要因を以下の5つの分類に分けて分析 PHARMACIST P H A R M する手法を試みた。4M-4E 方式を薬局・薬剤師用に改変した『PHARM-4E 分析法』とは、 具体的には、調剤事故の要因を、 ① PRACTICE(調剤) ② HUMAN(人) ③ APPLIANCE(機器・物・表示) ④ RELATION(連携) ⑤ MANAGEMENT(組織・管理) に分けて分析し、それぞれの対応策を
① EDUCATION(教育・訓練) ② ENGINEERING(技術・工学) ③ ENFORCEMENT(強化・徹底) ④ EXAMPLE(模範・事例) の別に示すものである。 PHARM-4E 今 般の分 担研究 では、 これ までに 日薬に報告のあった14例の事故事例を『 、 分析法』に則り、試みとして分析を行った 『。 PHARM-4E 分析法』記入用紙は資料3−1 分 析 結 果 は資 料 3 − 2の と お り で あ る 。 し か し 、 実 際 に 『PHARM-4E 分 析 』 を 行 っ て み る と、一般の保険薬局で用いるには、やや繁雑な感が拭えなかった。 そ こ で、 本 分 担 研究 に お い ては 『、 PHARM-4E 分析 法 』を 、より 一般の 薬剤師 が使い や すいように改善し 『、 PHARM-2E分析法』とした。 『PHARM-2E分析法』は 『、 PHARM-4E分析法』の対応策欄を、 ① ENFORCEMENT(教育・訓練、強化・徹底)と ② ENGINEERING(技術・具体例) に簡略化するなど、①一般の薬剤師がより分かりやすく、簡単に記入できる、②客観的 に調剤ミス・調剤事故の要因が分析できる、③様々な角度から対応策が考案できるように 形式を変更したものである。 、 、『 』 、 また 今回 PHARM-4E分析法 を用いて実際の事故事例の要因解析していくうちに 実際にミスの起きた業務段階だけでなく、業務全体の流れの中で何ヶ所かミスを回避でき る機会があったことが分かってきた。そこで、分担研究者の澤田康文九州大学大学院薬学 部 教 授 より 「ま ず 要 因 解析 を 行 う 前に 、 業 務 段階の どこが 問題で あった か、ど こでミ ス、 が回避できたかを、業務の流れを見ながらチェックしてみたらどうか」との貴重なご提案 、『 』 ( ) 、「 」 をいただき PHARM-2E分析法 記入用紙 資料4−1 では 問題となった業務段階 の欄を設け、これをチェックすることで、事故の要因を多角的に漏れなく分析するが可能 となったのである。 医療事故、調剤事故の分析手法は開発段階であり、今回の『PHARM-2E 分析法』も最も 理想的な分析手法とは言えないが、薬局が実際に起こした調剤ミスや調剤事故を分析し、 その対策を検討、実施するには、現時点では十分有効な手法であると思われる。 』は事故防止に繋がるか (3 『) PHARM-2E分析 ここで、なぜ『PHARM-2E分析法』が事故防止に繋がるのかを考えてみたい。 ヒューマンエラーのために事故が起きるからといって、ヒューマンエラーが起きな い よ う な 対 策 だ け を 考 え る の は 間 違 っ て い る 。 要 は 事 故 を 防 止 し た い の だ か ら 、 例 え ば エ ラ ー が 起 き て も 事 故 に な ら な い 対 策 を 講 じ て お け ば 、 極 端 な 話 、 い く ら エ ラ ーが 起きてもかまわない。 「 失 敗 の メ カ ニ ズ ム ・・・忘 れ 物 か ら 巨 大 事 故 ま で ( 芳 賀 繁 著 ) か ら の 引 用 で 上 記 は 、 」 あ る 。 調 剤 事 故 は 、 薬 剤 師 ( 人 間 ) の ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー に よ る 事 故 で あ る が 、 そ の 事 故 を 掘 り 下 げ て 分 析 し て い く と 、 最 終 的 に 事 故 の 引 き 金 と な っ た の は 個 人 の エ ラ ー で あ っ
ても、その背景には様々な要因が複雑に絡み合い、事故に繋がっている場合が多い。 ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー 事 故 の 対 策 は 、 次 の 3 つ の レ ベ ル の そ れ ぞ れ で 行 わ れ る べ き だ と 言 われている(下図参照 。) レベル1:エラーの発生の確率を下げること。 レベル2:エラーが事故につながることを防ぐこと。 レベル3:事故の被害を最小限に食い止めること。 上 図 に 示 す と お り 、 ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 発 生 を 防 止 す る た め に は 、 第 一 に 、 ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 発 生 に 寄 与 す る 様 々 な 要 因 を 取 り 除 か な け れ ば な ら な い 。 そ の た め 、 本 分 担 研究ではまず、調剤において考えられる要因を分析してみた。 、 ( ) 、 、 ・状況要因としては 調剤 PRACTICE における業務環境の改善 手順や薬学的管理等 さらに機器(APPLIANCE)や医薬品の特性、表示や記載などの要因が考えられる。 、 ( 、 。 ・個人要因として 人 HUMAN)の肉体的・精神的要因や 知識・経験不足などがある ・ストレス要因としては、人間関係や連携(RELATION)不足、業務負荷を改善する勤務 ( ) 。 体制や人員配置などの組織としての管理 MANAGEMENT 体制などの要因が考えられる
こ れ ら の レ ベ ル 1 の 対 策 と し て は 、 各 種 の 要 因 を 回 避 す る た め の 教 育 や 訓 練 の 強 化 (ENFORCEMENT)が挙げられる。 レ ベ ル 2 の 対 策 で は 、 技 術 工 学 (ENGINEERING) を 駆 使 し た ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー を 回 避 す る た め の バ ッ ク ア ッ プ シ ス テ ム の 導 入 や 、 表 示 の 工 夫 、 手 順 の マ ニ ュ ア ル 化 等 に よ る 具体例を考える。 レ ベ ル 3 の 対 策 と し て は 、 イ ン シ デ ン ト 事 例 の 収 集 に よ り 、 そ の 都 度 、 要 因 分 析 か ら 対 策 を 講 じ 、 実 践 す る こ と が 重 大 事 故 の 回 避 に 繋 が る と 考 え る 。 イ ン シ デ ン ト の 収 集 に 当 た っ て は 、 人 事 考 課 に は 使 用 し な い こ と を 前 提 に 、 個 人 の 責 任 追 及 で は な く 、 あ く ま で も 今 後 の 教 訓 と し て 、 原 因 追 及 と 要 因 分 析 の た め の デ ー タ と す る こ と を 管 理 者 は よ く 理 解 し 、 積 極 的 な イ ン シ デ ン ト 報 告 を 働 き か け る こ と が 重 要 で あ る 。 さ ら に 、 万 が 一 事 故 が 起 き て し ま っ た 場 合 に 備 え て 、 患 者 の 救 命 の た め に 、 重 点 薬 剤 の 中 毒 症 状 や 解 毒 処 置方法、拮抗剤等について情報提供できる体制作りも必要である。 ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー と 事 故 の 関 係 を 強 調 す る あ ま り 、 事 故 の 要 因 を 個 人 の 問 題 に 矮 小 化 し て し ま っ て は 、 本 当 に 効 果 的 な 安 全 対 策 に は な ら な い 。 人 間 の 注 意 の メ カ ニ ズ ム や エ P PRACTICE H ラー行動の原因をよく理解した上で、さらなる事故を回避するために、 ( )、 (HUMAN)、 (A APPLIANCE)、 (R RELATION)、 (M MANAGEMENT)の5つの視点から、 要 因 の 分 析 を 行 い 、 今 後 の 対 応 策 と し て 教 育 や 訓 練 の 強 化 (ENFORCEMENT) や 、 コ ン ピ ュ ー タ ー な ど の 技 術 工 学 (ENGINEERING) 的 な バ ッ ク ア ッ プ シ ス テ ム や 表 示 の 工 夫 、 手順の見直しやマニュアル化を図るという組織的な取り組みが重要である。 法』 (4)事例分析方法としての『PHARM-2E分析 前 述 のと お り 『、 PHARM-2E 分 析 法 』は 、 各 薬 局に お いて 、調剤 事故・ 調剤過 誤に止 ま らず、インシデント事例を経験した際等に、その原因等を分析し、自らの薬局の業務改善 に繋げるためのものである。 事 例 の 分 析 を 薬 局 の 経 営 者 、 管 理 者 も 交 え て 、 そ れ ぞ れ の 立 場 で 率 直 に 意 見 を 出 し 合 い 、 対 応 策 を 考 え 、 実 行 に 移 し て い く と い う 積 み 重 ね が 、 必 ず 事 故 発 生 の 芽 を 摘 む こ と になろう。 『PHARM-2E 分析法』は完全な手法とは言えないが、この手法を用いて発生した調剤事 故等を多角的に分析することにより、有効な再発防止策を落ち度なく講じることは、十分 に可能である。薬剤師のための事例分析のツールとして、是非この『PHARM-2E 分析法』 を活用していただきたい。 資料4−1 ) 以下に 『、 PHARM-2E分析法』の使い方を説明する (記入用紙は。 に示す。 PHARM-2E 」を行うに当たって(取扱い説明書) 「 解析法 PHARM-2Eの記入手順 (1 「事例概要」欄への記入について) 実 際 に 薬 局 で 調 剤 過 誤 や 調 剤 事 故 等 を 起 こ し た 場 合 に 、 発 生 し た 事 故 等 の 内 容 、 患 者 の健康被害の状況、患者との話し合いの経過などの概要を簡潔に記入する。 (2 「事故レベル」欄への記入について) 患者の健康被害を把握するため、以下のレベル分けに則り、該当する数字に○を付ける。
事故レベル 0:事前回避 ・事前回避:患者に薬剤を交付せず(インシデント事例) 1:過誤発生 ・過誤発生:患者に誤った薬剤を交付したが、患者は服用せず 2:事故発生(健康被害なし∼外来通院) ・患者は薬剤を服用したが、特に健康被害なし(経過観察) または、軽度の健康被害あり。外来通院による観察、検査、治療が必要 3:事故発生(入院) ・患者は薬剤を服用し、健康被害あり。入院治療が必要 4:事故発生(後遺症あり) ・患者は薬剤を服用し、健康被害あり。後遺症あり 5:事故発生(死亡) ・患者は薬剤を服用し、死亡 (3 「要因となった業務段階」欄への記入について) 事故の背景や原因を分析するに先立ち、要因となった業務段階の(実際に起こした調剤 ミスが発生した業務)□を■に塗りつぶす (又は、□内を「レ」点でチェックする)。 □ 1.処方せん受付(本人の確認など) 2.処方鑑査 □ 2-1.処方内容の確認 □ 2-2. 薬歴簿・お薬手帳の確認 □ 3. 疑義照会 4. 薬剤の調製 □ 4-1. 錠剤・カプセル剤 □ 4-2. 散薬・顆粒剤 □ 4-3. 内服液剤 □ 4-4. 注射剤(インスリンなど) □ 4-5. 外用剤 □ 4-6.その他(薬剤の補充・充填、予製) □ 5.薬袋・ラベルなどの作成 □ 6.最終鑑査 □ 6-1. 処方鑑査の再検討 □ 6-2. 調剤薬鑑査 □ 6-3.薬袋ラベルなどの再確認 □ 7.薬剤の交付(本人の確認) □ 8.服薬指導 □ 8-1.薬効説明 □ 8-2.用法説明 □ 8-3.副作用説明 □ 8-4.薬剤情報提供文書の提供 □ 8-5.お薬手帳への記載 □ 9.その他(受発注など) (4 「具体的要因」欄への記入について) 要因の分析 「事実」欄に記載された各事柄の「原因」、「要因」、「背景」を、①PRACTICE(調剤)、
HUMAN APPLIANCE RELATION MANAGEMENT
② (人)、③ (機器・物・表示)、④ (連携)、⑤
(組織・管理)に分けて分析し、具体的要因(P・H・A・R・M)欄に記入する。
注)具体的要因のP・H・A・R・Mの各欄に①②③・・・の通し番号を付記すると、対応 策を検討しやすい。
1.PRACTICE(調剤) 調剤業務上で推測される調剤事故の具体的要因を、この欄に記入する。 この分析法でいう「調剤業務」には、狭義の「調剤 (薬剤の調整行為)に止まらず、」 「処方せん受付」から「調剤薬鑑査」(薬剤交付の直前)までの各段階を含むものとする。 ま た 、 調 剤 行 為 に 伴 う 「 薬 学 的 な 管 理 」 も 含 む も の と す る 。 例 と し て は 、 次 の 各 事 項 が挙げられる。 1)調剤手順 調 剤 の 手 順 は 、 ⅰ )処 方 鑑 査 、 ⅱ )薬 剤 の 調 整 、 ⅲ )調 剤 薬 鑑 査 、 ⅳ )薬 剤 の 交 付 の 、 。 流れで行われるが これらの間のどの段階においても疑義照会の実施が考えられる この「調剤手順」の項には 「処方鑑査」から「調剤薬鑑査」までの各段階で、確、 認 す べ き 事 項 の 確 認 作 業 を 怠 っ た 、 あ る い は 行 う べ き 「 薬 学 的 管 理 」 を 行 わ な か っ た等の原因を記入する。 なお、疑義照会については、RELATION(連携)の項目で分析することとする。 「薬局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル」p18のフローチャート参照 ⅰ)処方鑑査(処方せん記載内容の確認及び処方の適正化のための点検) 「薬局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル」p19∼20参照 ①処方薬の特定:商標+剤型+規格単位(含量) ②分量、用法・用量 ③入力ミス(オーダリング処方の場合) ④禁忌がないか ⑤併用薬と相互作用がないか ⑥使用上の注意がないか ⑦配合変化がないか ⅱ)薬剤の調整 「薬局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル」p28∼38参照 ①計数調剤における数量等の確認 ②計量調剤における重量等の確認(予製を含む) ③日数、分包数などの確認 APPLIANCE 注)1.薬剤の名称・外観の類似、複数規格等に起因するものは、 (機器・物・表示)の項目で分析する。 2.薬剤の検品・充填に関するものも、APPLIANCE(機器・物・表示)の 項目で分析する。 3.コンピューター、秤量機器、分包機等の「機械・機器」に関する事項 についてもAPPLIANCE(機器・物・表示)の項目で分析する。 4.薬剤情報提供文書、お薬手帳、薬袋等の記載、その他ラベル表示等に ついてもAPPLIANCE(機器・物・表示)の項目で分析する。 ⅲ)調剤薬鑑査 「薬局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル」p29∼42参照 2)調剤環境 ⅰ)処方せんの集中 ⅱ)繁雑な調剤 薬剤師の焦り、ストレスの背景となるような「調剤環境」に関する事項について は、このⅰ)ⅱ)の欄に記入する。
注)患者本人が処方せんを持参しなかった、薬剤交付時に代理者が来局したなど 患者 情報が 少ない 状況( 環境) につい ては、RELATION(連 携)の 項目で 分 析する。 3)薬学的管理 ⅰ)薬歴の管理、確認(前回処方内容、前回指導内容) ⅱ)相互作用・重複の確認 ⅲ)副作用歴の確認 ⅳ)薬剤アレルギー歴の確認 ⅴ)禁忌薬剤の確認 注)疑義照会については、RELATION(連携)の項目で分析する。 2.HUMAN(人) ここでいう「HUMAN」(人)とは、実際に調剤業務に当たる薬剤師のことである。 (人 )の欄に は、ヒューマンエラーの原因(肉体的・精神的能力の低下等)や HUMAN 薬剤師の能力(知識・経験)不足などの事項を記入する。 例としては、次の各事項が挙げられる。 1)身体的・肉体的状況 薬剤師の体調不良(睡眠不足や疲労など)が原因の場合、この欄に記入する。 注 ) 過 度 の 疲 労 の 原 因 と し て 、 業 務 量 に 見 合 っ た 薬 剤 師 の 人 数 が 確 保 さ れ て い な い こ と が 指 摘 さ れ た り 、 時 間 当 た り の 作 業 量 過 多 が 日 常 的 に 見 ら れ る よ う な 場合には、MANAGEMENT(組織・管理)の項目で分析する。 2)心理的・精神的状況 焦 り や ス ト レ ス と い っ た 薬 剤 師 の 心 理 的 ・ 精 神 的 状 況 が 原 因 で 調 剤 事 故 が 発 生 し た場合、薬剤師の注意不足が原因の場合には、この欄に記入する。 3)能力(知識不足・経験不足) 薬 学 的 知 識 ( 薬 理 作 用 、 常 用 量 、 相 互 作 用 、 禁 忌 、 使 用 上 の 注 意 、 剤 形 、 規 格 ) や 法 律 ( 薬 事 法 、 薬 剤 師 法 、 健 康 保 険 法 、 薬 担 規 則 等 ) の 理 解 不 足 が 原 因 の 場 合 、 また、薬剤師の経験不足が原因の場合は、この欄に記入する。 4)怠慢・違反 業 務 マ ニ ュ ア ル の 未 遵 守 、 患 者 へ の 迅 速 な 対 応 の 欠 如 等 が 原 因 の 場 合 は 、 こ の 欄 に記入する。 3.APPLIANCE(機器・物・表示) ( 機 器 ・ 物 ・ 表 示 ) の 欄 に は 、 ① 医 薬 品 に 関 す る 事 項 、 ② 機 械 ・ 機 器 に 関 APPLIANCE す る 事 項 、 ③ 薬 剤 情 報 提 供 文 書 ・ お 薬 手 帳 等 へ の 表 示 ・ 記 載 に 関 す る 事 項 を 記 入 す る 。 例として、次の各事項が挙げられる。 1)医薬品 ⅰ)薬剤特性 ・重大な健康被害を発生させる可能性の高い医薬品の取扱いなど ⅱ)薬剤類似・複数規格 ・名称・外観の類似、複数規格など ⅲ)薬剤配置・検品・充填 ・薬剤配置(毒劇薬、向精神薬)など ・検品・充填など
2)機械・機器 ⅰ)コンピューター ⅱ)調剤機器・秤量機器 ・ 調 剤 機 器 、 秤 量 機 器 、 散 剤 分 包 機 、 錠 剤 自 動 分 包 機 、 散 薬 鑑 査 シ ス テ ム 、 薬 袋印刷機など 3)記載・表示 ⅰ)薬剤情報提供文書の記載 ⅱ)お薬手帳の記載 ⅲ)薬袋の作成・記載 ⅳ)シロップ瓶のラベル、分包した薬剤への印字など 「薬局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル」 p28∼38参照 4.RELATION(連携) ( ) 、 。 RELATION 連携 の欄には 薬剤交付時など患者と接する際に関する事項を記入する 具体的には、患者への情報提供、服薬指導、患者確認の不足等が挙げられる。 ま た 、 医 師 ・ 医 療 機 関 と の 連 携 、 薬 剤 師 間 の 業 務 引 継 ぎ 、 メ ー カ ー ・ 卸 へ の 発 注 な ど の様々な「連携」に起因する事項についても、この欄に記入する。 例として、次の各事項が挙げられる。 1)薬剤師⇔患者(薬剤交付時など) ⅰ)患者情報の把握 ⅱ)患者への情報提供、服薬指導 ⅲ)患者確認 「薬局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル」 p42参照 2)薬剤師⇔医療機関 ⅰ)疑義照会 ⅱ)施設との連携など 3)薬剤師⇔薬剤師 ⅰ)業務の引継ぎ(申し送り)など 4)薬剤師⇔メーカー、卸 ⅰ)発注業務 ⅱ)情報伝達など 5.MANAGEMENT(組織・管理) 、 ( ) 事故発生の背景に組織的な問題等が存在する場合 このMANAGEMENT 組織・管理 の欄に記述する。 例として、次の各事項が挙げられる。 1)組織・規定 ⅰ)薬剤師の勤務体制、業務配分、人員配置 ・業務量に見合った薬剤師の確保など ⅱ)各種業務マニュアルの作成、運用 ・管理規定、運行計画 など 2)教育・研修 ⅰ)教育・研修の機会の確保 ⅱ)患者の安全性確保について ・正確性優先、過誤発生時の対応など
3)管理薬剤師の役割 ⅰ)業務管理 ⅱ)開設者への意見具申 ・開設者に対する業務改善のために必要な要求 4)開設者の役割 ⅰ)各種法令等の遵守 (薬局業務の適正な運営) ⅱ)管理薬剤師の意見の尊重 ⅲ)従業員の健康管理など (5)「対応策」欄への記入について 以 上 、 P ( 調 剤 、 H ( 人 、 A ( 機 器 ・ 物 ・ 表 示 、 R ( 連 携 、 M ( 組 織 ・ 管 理 ) 別) ) ) ) に分析した調剤事故の原因を踏まえ、それぞれの対応策を、 ①ENFORCEMENT(教育・訓練、強化・徹底)と、 ②ENGINEERING (技術・具体例) の別に記入する。 注)具体的要因の各欄に付した①②③・・・の通し番号に対応する「対応策」を検討し、 相応する①②③・・・の通し番号を記入すると、検討しやすい。 1.ENFORCEMENT(教育・訓練、強化・徹底) 1)教育・訓練 当該薬局の薬剤師に対して、教育・訓練すべき内容やポイントを記入する。 「教育・訓練」の例 ・調剤ミスやヒヤリハット事例を収集し、定期的に研修会を開催する。 ・業務終了後、重要な(問題となった)処方例を取り上げ、薬局内で検討会を開 催する。 、 、 。 ・過去に受け付けた処方せんを用い 研修用の模擬処方せん作成し 研修を行う ・社内ロールプレイを実施する。 ・薬局内で患者応対のシミュレーション訓練を行う。 ・薬局内で定期的なミーティングを実施する。 ・調剤事故を起こした本人だけでなく、他の薬剤師が同じ間違いをしないよう、 報告書の提出を義務付け、内容は報告会で活用する。 ・薬局内に対するテストを行い、研修会の成果を常時担保する。 ・ 開設 者 や 管 理者 が ) 各 薬剤 師 の レ ベルを 抜き打 ち的に チェッ クし、 その結 果( に応じた再教育を行う。 ・重点薬剤(健康被害の危険性が高い薬剤、複数の剤型や規格が存在する薬剤) の薬剤特性に関する教育の充実 ・処方内容と患者病態を関連付けながら調剤する訓練 2)強化・徹底 当該薬局の業務やシステムの中で、強化・徹底すべき内容やポイントを記入する。 「強化・徹底」の例 ・疑義照会の徹底 ・服薬指導時の処方変更内容等の確認の徹底 ・仕事量に見合った薬剤師の勤務体制確保
・経験の少ない薬剤師へのバックアップ体制 ・健康被害に結びつく危険度の高い重点薬剤の管理の徹底 ・鑑査においては必ず薬歴を参照にするよう徹底する。 、 。 ・調剤メモと調剤薬と一緒に鑑査に回すなど 鑑査マニュアルの遂行を徹底する ・調剤は必ず処方せんの原本に基づいて行い、レセプトコンピュータの入力情報 や前回薬歴による調剤は行わないことを徹底する。 2.ENGINEERING (技術・具体例) の中で、具体的に目に見える形での改善策 ENFORCEMENT(教育・訓練、強化・徹底) の模範や事例を提示する。 「技術・具体例」の例 ・重点薬剤(特に散薬)の用法・用法・体重換算リストの作成 ・過量の処方量に対する警告アラームシステムの導入 ・散薬鑑査システムの導入 ・重点薬剤の配置における危険回避扉の導入 ・マニュアルの整備(業務ごとに具体的なマニュアルの作成)など ・複数規格の存在する薬剤では、薬品棚に「複数規格あり」の張り紙をつける。 ・複数規格の存在する薬剤では、あえて二つ並べ配置し、使用頻度の少ない薬剤 の存在を忘れないようにする。 ・一包化、粉砕の場合は、空のPTP包装またはヒートシールを鑑査者に渡し、 粉砕した錠数と分包数を確認する。 ・分包紙を透明なものに替える(鑑査時、患者説明時に確認しやすいため 。) ・重点薬剤の装置瓶に薬品名のスタンプを付け、秤量時押印する。 ・重点薬剤(特に散剤)に関しては、薬剤名と用法・用量等をリストアップして おく (常用量表の作成)。 ・インシデント事例を収集・分析し、全従業員に迅速に伝達する仕組みを薬局に 導入する。 ・薬剤の発注を電話からファクシミリまたはオンライン等に変更する。 ・ 店 舗 間 の薬 剤 の 譲 渡に 関 す る マ ニュ アル を作成 する ( 薬事法 に基づ いた帳 票。 や帳簿を作成し、各店舗の管理薬剤師が確認・管理する )。 ・ 薬 剤 の 充填 時 は 複 数の 薬 剤 師 が 確認 しな がら、 1品 ずつ行 う (可能 であれ ば。 散薬鑑査システムを活用する )。 ・ 兄 弟 の 患者 の 場 合 、薬 袋 に 色 を 付け (色 のシー ルで もよい 、 処方せ ん受付 時) 点で薬袋に色を付けてから調剤する。毎回同じ色を付けて渡せるよう、薬歴に 記入する。またはシロップ瓶に名前・年齢などを処方せん受付時点でマジック 等で直接記入し、間違いを防止する。 ・薬剤情報提供文書を写真付きのものにする。 、 。 ・一人での調剤時に疑義を感じた場合に 速やかに相談ができる体制を整備する ・新人研修の進捗度評価を行い、その結果に対応した業務負荷となるように業務 配分を行う。
』のイメージ図 (5 『) PHARM-2E
『PHARM-2E分析法』のイメージ図は以下の点から考案した。
( ) 、 ( ) 、 ( )、
PRACTICE 調剤 は MANAGEMENT 組織・管理 の土台のもとに HUMAN 人 ( 機 器 ・ 物 ・ 表 示 、 ( 連 携 ) が う ま く 機 能 す る こ と で 成 り 立 つ 。 APPLIANCE ) RELATION [解説] ・ P ( 調 剤 ) は 、 H ( 人 、 A ( 機 器 ・ 物 ・ 表 示 、 R ( 連 携 ) が う ま く 機 能 す る こ と で) ) 、 、 ( ) 、 成り立ち どれかひとつでも欠ければ P 調剤 をイメージした乳鉢はたちまち傾き 薬はこぼれ落ち調剤は失敗する。 ・ さ ら に 、 H ( 人 、 A ( 機 器 ・ 物 ・ 表 示 、 R ( 連 携 ) は し っ か り 手 を 取 り 合 い 、 相 互) ) に密接な関係がある。 ・また、H(人 、A(機器・物・表示 、R(連携)がうまく機能するためには、M(組) ) 織 ・ 管理 ) の 土 台が し っ か りし て い る こ とが 必要 であり 、土 台が傾 けば、 H(人 、 A) ( 機 器・ 物 ・ 表 示 、 R( 連 携 ) はう ま く 手 をつな ぐこと ができ ず、つ いには 乳鉢を 支) えらることができなくなりP(調剤)は失敗する。M(組織・管理)の土台は、P(調 剤)の基盤であり、もっとも重要である。 法』を用いた実際の調剤事故事例の分析 (6 『) PHARM-2E分析 、 、 本分担研究では 平成13∼14年度に日薬に報告のあった14件の調剤事故事例について 『PHARM-2E 分 析 法 』 を 用 い て 実 際 に 分 析 を 行 っ て み た 。 分 析 結 果 は資 料 4 − 2の と お り である。 さ ら に 本 章 で は 、 1 4 事 例 の 個 別 分 析 結 果 を P ( 調 剤 ・ H ( 人 ・ A ( 物 ・ 機 器 ・ 表) ) 示 ・ R ( 連 携 ・ M ( 組 織 ・ 管 理 ) の 5 つ の 視 点 ご と に 、 い く つ の 要 因 が 分 析 さ れ 対 応) ) 策が立案されたかの集計を試みた。 [要因分析集計] に示すように、ある視点に偏ることなく要因が分析されていることが分かる。 次頁 個別分析開始時に要因となった業務段階をチェックすることにより、1ヶ所のミスであ
PRACTICE
MANAGEMENT
「PHARM-2E分析法」のイメージ図 APPLIANCE HUMAN RELATIONPRACTICE
MANAGEMENT
「PHARM-2E分析法」のイメージ図 APPLIANCE HUMAN RELATIONっても回避できたであろう業務段階が複数ある場合が多く、そしてその業務段階ごとに、 P・H・A・R・Mの5つの視点から要因を導き出すことで、より多角的な視点から要因 解析を可能とした。 [対応策集計] 1)強化・教育の対応策集計 ○ レベル 1 の 対応策 (エラ ーの発 生の確 率を下 げる )であ る ENFORCEMENT(強化 ・ 教育)においては、P(調剤)自体よりヒューマンエラーを防ぐための身体的・肉体的 状況、心理的・精神的状況や焦りを生じるような調剤環境を改善する対策、知識や経験 不足を補う教育体制などのH(人)の対策が最も多く挙げられていることが分かる。 ( ) 。 ○ R 連携 の強化がレベル1の対応策の2番目に多く立案されている点が注目される 医療機関への疑義照会の徹底強化、また患者への服薬指導の強化がいかに事故回避につ ながるかが示されたと言えよう。 ○ M(組織・管理)についても多くの対応策が立案され、いかに組織的な対応が事故防 止に重要か、管理薬剤師の姿勢が問われることが分かる。 ○ 全体 的 に 見 て、 H ( 人 )と R (連 携 、M (組織 ・管理 )に多 くの対 応策が 立案さ れ) た。 2)技術・具体例の対応策集計 ○ レベル2の対応策(エラーが事故につながることを防ぐ)として、レベル1の対応策 としてはあまり立案されていなかったA(機器・物・表示)がレベル2として補充され た。コンピューターシステムを駆使した、ヒューマンエラーを防止するバックアップシ ステムが今後益々開発され、事故防止に重要な役割を示すことが推測される。また、注 意を促す表示や配置の工夫など、ヒューマンエラーを防ぐためにさらに人間の知恵を絞 ることも重要である。コンピューターが無くてもちょっとした工夫で事故を防止できる 案が多く立案されていることも興味深い。 3)全対応策集計 ○ レベル1の対応策とレベル2の対応策を集計すると、5つの視点から多くの対応策が 立案されていることが分かる。要因がP(調剤)上のミスであっても、対応策はむしろ H (人 、 A(機 器・物 ・表示 、R( 連携 、 M(組 織・管理)の視点から、考えられ) ) ) ることが多くあることが示された。 [まとめ] ○ 14事例の PHARM-2E 分析により、要因は 96 に分析され、レベル1の対応策E(強 化・教育)は 79、レベル2の対応策E(技術・具体例)は 58、対応策の総計は 137 挙 げられた。わずか14事例に対して、137の対応策が考えられたことになる。 ○ 『PHARM-2E 分析法』を用いることにより、各事例において、すべての業務段階から 漏れることなく事故の要因を分析し、その要因から様々な対応策を導き出すことができ た。 こ の結 果 か ら 見て も 『、 PHARM-2E 分 析 法 』 は、 調 剤ミ スの要 因を色 々な角 度から 分 析する上で有効な手法であるばかりでなく、多角的に対応策を考案する上でも有効な方 法であると思われる。 ○ ただ、この手法の分析には多少の時間を要し、インシデント報告すべての分析にこの 手法を利用することは現実的ではないと思われる。管理薬剤師がインシデントの中でも 特に重大なミスに繋がる可能性のある事例については、是非積極的に活用していただけ ればと考える。 ○ また、今後『PHARM-2E 分析法』のシステムを利用した記載の省力化について、さら に開発の余地があるものと考えられた。