薬 剤 の 消 化 管 吸 収 辻 彰*
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(2) ロマ イ シ ンが ほ とん ど観 測 され なか った とい う(2). 腸 溶 剤 皮 の溶 解 性 が エ リス ロマ イ シ ンの 吸収 率 の み な らず,吸 収 の速 さに も著 しい 影 響 を 及 ぼ した 結 果 と考 え られ る. 以上 例示 した よ うに,製 剤 中 に 含 まれ る薬 物 の 吸収 され る程 度 が,服 用 の仕 方 に よ っ て異 な った り,メ ー カ ーの 製 剤 技 術 の 相違 に よっ て異 な る こ とが あ る.そ の 程 度 を 表 わす 指 標 と し て,bio‑ availabilityな る用 語 が 用 い られ る.こ れ は 薬 物 の総 吸収 量(extent 速 度(rate. of bioavailability)と 吸 収 の. of bioavailability)に. で,生 物 学 的 利 用 性(率)と. 図2. 関 係 し た もの. エ リス ロ マ イ シ ンス テ ア レー ト(500mg)を 16人 の被 験 者 に 空 腹 時(●)お よび 食 事 直 後 (○)投 与 後 の 平 均(土 標 準 偏 差)血 漿 中 濃 度(3). 訳 され て い る.. Bioavailabilityが 問 題 とされ,世 界 的 に 話 題 と. 種 類,胃. 内容 量,温 度,浸 透 圧,粘 度,姿 勢,病. な った 事 件 が い くつ か あ る.オ ース トラ リアの あ. 気,薬 物 な どの影 響 を 受 け る.普 通 食 の場 合 は 食. る メ ー カ ーが 市 販 して いた 抗 てん か ん 薬 フ ェ ニ ト. 後10分. イ ン カ プセ ル 中 の添 加 剤 で あ った 硫 酸 カル シ ウ ム. 間 で十 二 指 腸 へ の移 行 が 完 了 す る とい う.. を 乳 糖 に 変 更 して発 売 した と ころ,フ. ごろか ら胃 内容 の移 送 が 始 ま り,3〜6時. ェ ニ トイ ン. 胃 内容 物 の存 在 は 胃 内容 排 出 速 度 を 低 下 させ,. の 吸 収 量 が 増 大 し,51名 の フ ェ ニ トイ ン中 毒患 者. 般 に小 腸 部 位 にお け る薬 物 の 吸収 を遅 らせ る.. が 発 生 した.症 状 は 用 量 を 半 減 す る こ とに よ り緩. そ れ ばか りで は な く,薬 物 の 中 に は,胃 内 の酸 性. 解 した.こ の 事 例 か ら,製 剤 中 の 添 加 物 は 化学 的. や 胃 内酵 素 の作 用 に よ って 分 解 が 起 こ り,血 中. に不 活 性 で あ って も,生 物 学 的 に は 決 して不 活 性. 濃 度 が 著 し く低 下 して しま うもの もあ る.た. な もの で は な い こ とが 理解 され よ う.治 療 域 の狭. ば,エ リス ロマ イ シ ンス テ ア レー ト錠 は,図2に. い 薬 物 で あ れ ば あ るほ ど,医 師 が1つ の銘 柄 か ら. す よ うに0〜8時 (AUC0→8)で. な態 度 が要 求 され る.. 食 後 投 与 よ りも約4倍. は 消 化 管 中 最 も拡 張 した 部 分 で,そ の 容積 は成 人. 胃内 に平 均40mlの. どで あ る.早 朝 の空 腹 時 に は, 胃液 が 存 在 して い る.そ. 液 性 は きわ め て 酸 性 で,pHは1〜2.5と. も大 き くな る こ とが 明 らか ロ ッ プ剤 は高 い浸 透 圧. を も っ てい るた め に,胃 内 容排 出時 間 を遅 らせ, 経 口投 与 され た 薬 物 は 最 初 に 胃に滞 溜 す る.胃. で は1.2〜1.4lほ. 比 較 す る と,空 腹 時 投 与 の ほ うが 朝. に され てい る(3).ま た,シ 胃内 容 排 出 時 間 の 影 響. 示. 間 の血 漿 中 濃 度‑時 間 曲線 下 面 積. 他 の銘 柄 へ の 同 種 薬 剤 の変 更 を 行 な う際 に は慎 重. 2.. とえ. 溶 液 剤 に 比 べ て 著 し く吸収 が遅 れ る とい う. 方,胃 内 容 排 出 速 度 の低 下 は薬 物 の小 腸 か ら の吸 収 を 増大 させ る こ と もあ る.リ ボ フ ラ ビ ンは. の. 食 後 に 投 与 した ほ うが 良好 な 吸収 率 を与 え る.こ. いわ れ. れ は,小 腸 に お い て,リ ボ フ ラ ビンがMichaelis‑. て い る.後 に述 べ る よ うな絨 毛 が な い た め に,小. Menten速. 腸 に比 べ て表 面 積 は 小 さい.し たが っ て,速 効 性. て 吸収 され る た め に,そ の吸 吸 に有 利 に働 く,と. を必 要 とす る薬 物 や 胃粘膜 に直 接 作用 す る 目的 で. 解 釈 され て い る.. 投 与 され る薬 物 以 外 で は,主 た る 吸収 部 位 であ る. 度 式(後 述)に 従 う膜 透 過 機 構 に よ っ. Wellingは. 吸収 動 態 に及 ぼ す 食 事 の 影 響 に つ い. 小 腸 に送 り込 まれ る まで の時 間が,薬 物 吸収 速 度. て,表1に. を支 配 す る こ とに な る.. 収 が遅 延 す る,3). 胃 の 内 容 は 胃 と十 二 指腸 の 内圧 の差 に よ って 移 送 され る.物 質 が 胃内 に溜 ま る時 間 を 胃 内容 排 出 時 間(gastric 718. empting. time)と. 呼 ぶ が,食 餌 の. る,の4つ. 示 す よ うに,1). 吸 収 が 低 下 す る,2) 吸. 影 響 が な い,4). 吸収が増大す. の グル ー プに分 類 した(4).これ らの 薬 剤. は上 記 の 吸収 特 性 を 考 慮 して,食 前(食 事30分 1時 間前),食. 後(食 事30分. 後),食. 間(食 事. 化 学 と 生 物.
(3) 表1. 2〜3時 間 後)な 3.. 薬 剤 の 吸 収 に 及 ぼ す 食事 の影 響(4). どの 投 与時 間 が指 定 され て い る.. レベ ル で 見 る と,消. 絨 毛 表 面 近 傍 に あ る,攪. 小 腸 の構 造 吸 収 面 積. (unstirred. 胃か ら移 行 して きた薬 物 は,十 二 指 腸 に 流 れ 込 み,小 腸 の分 節 運 動 と蠕 動 運 動 に よ っ て毎 分1〜 2cmの. 速度 で空 腸 か ら 回腸 へ ど6〜7mの. 道程. を5時 間 以上 か け て移 動 す る. 小 腸 の粘 膜 には,長. さ1mmほ. ど の絨 毛(villi). と呼 ばれ る無 数 の 小 突 起 が 密 生 して ビロー ドの よ うな外 見 を 呈 し て い る.そ μmほ. の表 面 に は さ らに1. どの微 絨 毛(microvilli)が. 化 管 液 に 溶 解 し た あ と,1). あ る.こ. れら. water. 拌 され て い な い 水 の層. layer,後. 細 胞 の 微 絨 毛 膜 の 透 過,3) 4). 述)の. 通 過,2). 上皮. 上 皮 細 胞 内 の 移 動,. 上 皮 細 胞 の 底 部 ま た は 側 部 の 膜 の 透 過,が. り,次. い で5). 基 底 膜(basement. membrane). を 透 過 し て,6). 付 近 に あ る毛 細 血 管 内(門. に 流 れ 込 み,肝. 臓 に 運 ば れ る こ とに な る.. 脈 血). 上 皮 細 胞 を 介 し て の薬 物 輸 送 に つ い て は い ろ い ろ な 分 類 の 方 法 が あ る が,こ 質 な 次 の2つ. こで は 速 度 論 的 に 異. の 透 過 機 構 に 分 類 し て 説 明 し よ う.. す べ ての 表 面 積 を 合 わ せ る と,小 腸 が単 な る 円筒 と仮 定 した 場 合 に 比 べ て600倍. に も な り,テ ニ ス. コー トに 匹 敵 す る とい お れ て い る.こ の よ うに , 小 腸 粘 膜 は 吸 収 効率 を あ げ る た め に,特 殊 な形 態 学 的 分 化 を 遂 げ,吸 収 面 積 を著 し く増 大 させ た の で あ る.絨 毛 は特 に空 腸 上 部 で よ く 発 達 して お り,回 腸 に 向 か うに従 っ て絨 毛 の高 さ もそ の 数 も 減 少す る傾 向 が あ る.小 腸 上 部1/4の 腸 表 面 積 の50%を. 部分 で,小. 占め る とい わ れ る が,薬 物 の. 吸収 の ほ とん どが 小 腸 上 部 で 行 なわ れ て い るゆ え ん で も あ る. 4.. 小 腸 膜 か らの 薬 物吸 収 機 構. 図3に 示 す よ うに,薬 物 の消 化 管 壁 透 過 を 細 胞. Vol.20, No.11. あ. 図3. 小腸上 皮細胞の構造 と薬物輪送経路(矢 印). 719.
(4) 1). 単 純 拡 散 に よ る 透 過(simple. diffusion. transport). は 脂 溶 性 の 非 電 解 質 ま た は 弱 酸,弱 が 細 胞 膜 の 脂 質 層 に 溶 解 し て,受. これ は,高 濃 度 の 消 化 管腔 側 か ら低 濃 度 の血 管 側 へ,濃 度 勾 配 に 従 っ て受 動 拡 散 に よ っ て透 過 す. 塩基性の薬物 動 拡 散 に よ って. 輸 送 さ れ る 経 路 で あ る. 消 化 管上 皮 細胞 は薬 物 の非 イ オ ン型 分 子 種 の み. る機 構 で あ る.こ の場 合,物 質 の透 過 速 度 はFick. を 選 択 的 に 透 過 さ せ,吸. の拡 散 速 度 式 に 従 うの で,単 位 時 間 当 りの透 過 薬. び 有 機 弱 電 解 質 の 脂 溶 性 の み な ら ず,解. 物 量(A)は,. 大 き さが 吸収 に重 要 な因 子 と な って い る こ とを 最 初 に 実 証 し た の はTravell. (1) で 表 わ さ れ る.こ. こ で,Pは. 膜 表 面 積,Clお. よ びCsは. 薬 物 濃 度 で あ る.薬 ば れ,体. constant),. 管 腔 内 薬 物 濃 度Clの. こ で,吸. 般には. 収 速 度dA/dtは. pore. 細 胞 膜 の 細 孔(pore)を も の で あ る.水. (分 子 量342)は ン ノ ー ス,リ 量90〜180)で. れ は,. 通 して薬 物 が 輸 送 され る. 溶 性 が 高 く,電. を 示 す 化 合 物 の う ち,小 子 量5,000)は. route):こ. 気的に中性の性質. 腸 細 孔 か ら イ ヌ リ ン(分. 内 を アル カ リ. 性 に し て 同 様 に 投 与 した と こ ろ,猫. はたちまちに. 死 ん で し ま っ た.彼. ク トー ス. わ ず か に 吸 収 さ れ,低. 分子のマ. リ セ ル ア ル デ ヒ ド(分 子. は分 子 サ イ ズ の小 さい もの ほ ど よ. く吸 収 され る.細 孔 の半 径 につ い て は4Aか 9Aの. 大 き さ が 報 告 さ れ て い る.ヒ. 18lも. の 水 が 吸 収 さ れ る が,腸. ら. トで は1日. 管 内 の水 は この ル. トに よ っ て 輸 送 さ れ る と い う. こ の 輸 送 経 路 で は,拡 (osmosis)に. 総 合 的 に 判 断 し て,ア. の 他 の 実験 事 実 か ら. ル カ ロ イ ドの 吸 収 速 度 は 非. ル ー プ が,薬. を 中 心 と した グ. 物 の 解 離 定 数(pKa)と. 消化 管 液 の. の 関係 に よっ て変 化 す る 見 か け の脂 溶 性 が. 吸 収 速 度 を 支 配 す る と い うpH‑分 partition. hypothesis)を. 吸 収 とpH‑分. 配 仮 説(pH‑. う ち た て た(5).薬. 物 の. 配 仮 説 との 関 係 の 詳 細 に つ い て は. c). 細 胞 側 路(paracellular. route):こ. れ は,. 小 腸 細 胞 膜 に 隣 接 し て い る 接 着 部 位(tight tion)を. junc‑. 通 る 輸 送 で あ る.一. 般 に上 皮 細胞 ど うし. は 柵 状 に 配 列 し て い る が,こ. の 間 に は 物質 が通 れ. る ほ ど の 空 隙 が あ る.こ. れ を 通 して の薬 物 吸収 が. あ る か ど うか は,ま だ よ くわ か っ て い な い.ま. た,. 前 に 述 べ た 細 孔 を 通 した 経 路 と 区 別 す る こ と は 難 し い.. 散 に よ る 他 に,浸. よ る 透 過 が あ る.膜. 女 は,そ. 後 述 す る.. ま っ た く吸 収 さ れ ず,ラ. ボ ー ス,グ. いに毒. こ ろ が,胃. pHと 細 孔 路(aqueous. あ ろ う.. し て 大 量 の ス ト リ キ ニ ー ネ を 与 え た が,つ. そ の 後,HogbenやSchankerら. の経 路 に 分 類 され. る. a). (1940年)で. イ オ ン型 分 子 の 濃 度 に 依 存 し て い る,と 結 論 した.. 一 次 函 数 と な る.. ら に 次 の3つ. よ. 離定数の. 門部 を結 紮 した 猫 の 胃内 を 酸 性 に. 性 は 現 わ れ な か っ た.と. 物 は 門脈 血 の流 れ に 乗 って 運. 見 な せ る.そ. こ の 透 過 は,さ. Sは. 管 腔 内 お よび 血 管 の. 内 に 分 布 し希 釈 さ れ る の で,一. Cl≫Csと. Travellは,幽. 単 位 面 積 当 りの 見 か. け の 膜 透 過 定 数(permeability. 収 部 位 に お け るpHお. 透. を 境 に して 高 濃. 度 分 子 が 細 胞 内 に 存 在 す る と,浸. 透 圧 に よ り細 孔. を 通 し て の 水 の 吸 引 が 起 こ る.こ. の と き,薬. 物は. 2). 担 体 介 在 に よ る 透 過(carrier. mediated. transport) これ は,細. 胞 膜 の 細 孔 も 透 過 で き ず,脂. 質路 に. 流 れ に 伴 っ て 細 孔 内 を 移 行 す る.こ. れを溶媒に よ. よ る 吸 収 速 度 の 遅 い 親 水 性 薬 物 に 見 られ る 輸 送 機. る 吸 引(solvent. 物 の 吸 収 と水. 構 で あ る.こ. drag)と. い う.薬. の 移 動 と の 間 に 高 い 相 関 性 が 見 ら れ る こ と か ら, こ のsolvent. dragの. 大 き さが 薬 物 の 吸 収 に か な. の よ うな 薬 物 は,担. 体(carrier)と. 結 合 し て 小 腸 粘 膜 を 通 過 し て い く と 考 え られ る. Na+,. Ca2+,ア. ミ ノ 酸,グ. ル コ ース な どの 生 体. り の 役 割 を 演 じ て い る と考 え る 研 究 者 も 少 な くな. 必 須 物 質 は 生 体 エ ネ ル ギ ー を 消 費 し,担. い.. て 濃 度 勾 配 に 逆 ら っ て 吸 収 さ れ る.こ b). 720. 脂 質 路(lipid. membrane. route):こ. れ. 送 を 能 動 輸 送(active. transport)と. 体 を介 し. の よ うな輸. 呼 ぶ.こ. れ に. 化 学 と生 物.
(5) 対 し て,チ. ア ミ ン,リ. ボ フ ラ ビ ン,胆. 汁 酸,4級. ア ンモ ニ ウム化 合 物 な ど の一 部 の 薬 物 は濃 度 勾配 に 逆 ら わ な い が,や. は り担 体 を 介 し て 吸 収 さ れ る.. これ らの機 構 に従 っ て吸 収 され る薬 物 の透 過 速 度 は,次. に 示 すMichaelis‑Menten速. 度式. (2) で 与 え られ る.こ. こで,Vmaxは. 最 大 速 度,Km. は ミカエ リス 定 数 で あ る.そ の他 の記 号 は 前 述 し た.消 化 管 内 の薬 物 濃 度 が 低 い と きは,dA/dt= (Vmax/Km)Clと. な り,見 か け 上 は 単 純 拡 散 に よ. る透 過 の一 次 速 度 式 と同 じに な る.し か し,薬 物 濃 度 が 高 くな る と,吸 収 速 度 は濃 度 に比 例 せ ず, やが て飽 和 とな り最 大 速 度Vmaxを. 与 え る.. このル ー トで 吸 収 され る こ とが知 られ て い る薬 物 例 は 少 な いが,筆. 者 らは 最 近 一 部 の β‑ラ クタ. ム抗 生物 質 の 吸収 が,こ. のキ ネテ ィ ックス に従 う 図4. こ とを 見 い だ して い る の で後 述 す る.. ラ ッ ト胃(A)お. よび 小 腸(B)か. 吸 収 と薬 物pKa値. 5.. ●:酸 性薬物,○:塩. pH‑分 配 仮 説 に 従 う薬 物吸 収. 弱 酸 性 薬 物 また は 弱塩 基 性 薬 物 が 完 全 に 溶 液 状. らの薬物. との 関 係(5) 基性薬 物. ん ど吸収 され てい な い が,pKa. 2以 上 の 薬 物 で は. 態 で消 化 管 部 位 に 存在 す る とき,薬 物 は 非 イ オ ン. 90%以. 型 分 子 と イ オ ン型 分 子 の混 合物 とに な っ てい る.. 30〜60%と. 前 述 した よ うに,イ オ ン型 分 子 の上 皮 細 胞 透 過 性. 値 が近 接 して い る に もか か わ らず 化 合 物 間 に 見 ら. は 小 さ く,主 と して脂 溶 性 の 高 い非 イ オ ン型 分 子. れ る吸収 率 の バ ラツ キは 非 イ オ ン型 分 子 の 脂 溶 性. のみ が 膜 脂 質 層 を 通 して 拡 散す る.こ の とき,薬. パ ラ メー タKの 相 違 に起 因 す る と考 え られ る.. 物 の吸 収 速 度 は(3)式. ン型 分 子 の 全 薬 物 濃 度Clに 性 薬 物 で は,fu=1/(10pH‑pKa+1)で. 基 性 薬 物 で は,fu=1/(10pKa‑pH+1)で る.(1)式. と(3)式. 非 イオ. 対 す る 割 合 で,弱. 胃 内 のpHを1に. に示 したpH‑分. 配 仮 説 で よ く説 明 で. き る. Schankerら(5)は. さ ら に,ラ. ッ ト小 腸 還 流 液. (pH. 7.0)か らの薬 物 の吸 収 率 を 測 定 した.図4‑. あ り,弱 塩. Bを. 見 れ ば,胃. 与 え られ. を 比 較 す る と,P=DKfu/L. と同 様 に,酸 性 薬 物 で はpKaが. 大 きい もの ほ ど吸収 が よ く,塩 基 性 薬 物 で は逆 の 傾 向が あ る こ とが わか る. しか し,小 腸 に お け る薬 物 吸 収 は 胃 に おけ る ほ. 性 ・塩 基 性 薬 物 のpKaと 保 っ た ラ ッ ト胃 吸 収 率 と の 関 係. を 求 め,図4‑Aに. 示 す 結 果 を 得 た.酸. 注 目す る と,pKa値. が1よ. Vol.20, No.11. 係 は(3)式. 酸. で あ る こ とが わ か る. Schankerら(5)は,酸. が 小 さい ほ ど. 値 の 低 下 に つれ て大 き くな っ てい る.こ れ ら の関. 膜 の 厚 さ,. Dは 膜 内 に お け る 拡 散 係 数 で あ る.fuは. お,pKa. 非 イオ ン型 の比 率 が 多 くな る の で,吸 収 率 もpKa. 非 イ オ ン型 分 子 の膜 中薬 物 の消 化 管. 液 中 薬 物 に 対 す る 真 の 分 配 係 数,Lは. 高 率 に 吸 収 され て い る.な. 方,塩 基 性 薬 物 で は,pKa値. で 与 え られ る.. (3) こ こ で,Kは. 上 が 非 イオ ン型 と して存 在 して い るた め,. 性薬物 に. り小 さ い 薬 物 で は ほ と. ど華 麗 にはpH‑分. 配 仮説 に 従 って い な い よ うで. あ る.小 腸 で 速 く吸収 され る酸 性 薬 物 の最 低pKa は3で あ り,塩 基 性 薬 物 で は最 高8で あ る こ とが 知 られ て い る.も. し,小 腸 内pHを6.6と. する 721.
(6) と,非 イ オ ン型 分 子 の イ オ ン型 分 子 に対 す る比 率 は,酸 性 薬 物 で は1:4,000で で は1:25と. 6.. あ り,塩 基 性 薬 物. な る.こ の両 者 の ア ンバ ラ ンス は 薬. pH‑分 配 仮 説 に 従 わ な い 薬 物 吸 収. ペ ニ シ リンや セ フ ァ ロス ポ リン(表2)の. 物 の吸 収 が 受 動 拡 散 に従 う と す れ ば 説 明 で きな. ボ ン酸 のpKaは2〜3で. い.そ. 条 件 下 で は ほ とん ど イオ ン型 で存 在 す る.そ れ に. こで,Hogbenら. は も っ とpHが そ れ をvirtual. は,小 腸 上 皮 細 胞 表面 で. 低 い 状 態 を 保 っ て い る と 考 え, pHと. そ うす る と,pKa. 呼 び,pH. 5.3と 仮 定 した.. 2.8の 酸 性 薬 物 とpKa. 7.8の. あ るの で,小. カル. 腸 のpH. もか か わ らず,投 与 後 ほ ぼ 完 全 に小 腸 か ら 吸収 さ れ る もの が あ るの で,こ. れ ら β‑ラ ク タ ム 抗 生 物. 質 は 特 殊 な 輸 送 機 構 に よ って 吸収 され て い る と考. 塩 基 性 薬 物 の 非 イオ ン型 対 イオ ン型 濃 度比 は いず. え られ て きた.筆 者 らは1975年. れ も1:300と. ム抗 生 物 質 の 吸 収 機 構 解 明 の た め の研 究 を行 な っ. な り,実 験 事 実 がpH‑分. 配仮説. で 説 明 づ け られ る. そ の 後,virtual. 以 来,β‑ラ クタ. て きた が,α 位 に ア ミノ基 を有 す る化 合 物 群 と, pHの. み で は 説 明 しえ な い 薬. 物 吸収 が い くつ か 見 い だ され た が,そ れ に対 して,. そ れ を 有 しな い 系 の 吸収 機 構 が ま った く異 な っ て い る こ とを 見 い だ した.. イ オ ン型 分 子 種 の透 過 や,小 腸 粘 膜 構 成 成 分 と の 相互 作 用 に よっ て 説 明す る試 みが な され て い る. 方,以 上 の 説 に対 して,筆 者 らの実 験 成 果 で例 示 す る よ うに,unstirred. water. layer内. の拡 散. 1). Unstirred. water. layer効. 果(6). α位 に ア ミノ基 を 有 しない β‑ラ ク タ ム抗 生 物 質 の 消 化 管 吸収 は,薬 物 透 過 経 路 を 模 式 化 した 図. が 薬 物 吸収 に お け る重 要 な支 配 因子 とな る こ とが. 5の 拡 散 モ デ ル に よっ て説 明 で き る.こ の モデ ル. 指 摘 され,pH‑分. で は,消 化 管 液 中 の 薬 物(総 濃 度Cl)が. 配 仮 説 か ら はず れ た い くつ か の. 薬 物 吸 収 が こ の 因子 の寄 与 に よ っ て説 明 され た. しか し,今 日で は,pH‑分. 配 仮 説 に従 わ ない 薬. に 存 在 す る 表面 積Saqで μmの. 厚 さLaq(通. 膜近傍 常0.1〜1. 厚 さが あ る)の 攪 拌 され て い な い 水 の 層. 物 の吸 収 機 構 に 関 して は どれ と い っ た 定 説 が な. (unstirred water. い.し た が っ て,研 究 者 は 各 人 各 様 の考 え 方 を 持. 面 に ま で 拡 散 して(水 層 に おけ る拡 散 係 数 をDaq. って い る.小 腸 に お け る薬 物 吸 収 に つ い て今 後 一. とす る)き た薬 物 の うち非 イ オ ン型 分 子 の み が 膜. 層 検 討 され る こ とが 望 まれ る.. 内 に溶 け込 ん で,厚 さLの 膜 中 を 拡 散(拡 散 係 数. 表2. 722. layer)か. ら,表 面 積Sの. 膜表. ペニ シ リン,セ フ ァ ロス ポ リ ンお よび その 誘 導 体. 化 学 と 生 物.
(7) 図5 D)し. 薬物の消化管吸収の拡散 モデル. て毛 細 血 管 内に 入 り込 み,体 循 環 系 に運 ば. れ る と考 え る. この と き,薬 物 の 吸 収 速 度 は次 式 で 与 え ら れ 図6. る.. ラ ッ ト胃 お よ び 小 腸 還 流 液 か ら の プ ロ ピ シ リ ン の 吸 収 ク リ ア ラ ン ス とpHと. (4). そ の 後10分. こ こ で,Paq=Daq/αLaq,. P=DKfu/Lで. あ る.. た だ し,α=S/Saq. (4)式 red. り,Pは る.薬. layerを. pH‑分. 拡 散 す る薬 物 の 透 過 係 数 で あ. 膜脂質層を拡散 す る 薬物透過係数で あ 物 吸 収 に お い て,膜. はPaq≫Pで. 透 過 が律 速 とな る場 合. あ る の で,(4)式. 式 と 同 じ と な り,pH‑分. は 近 似 的 に(3). 配 仮 説 に 従 う.逆. 透 過 が き わ め て 速 い た め にunstirred 内 拡 散 が 律 速 と な る(Paq≪P)場 dA/dt=DaqSaq/Laqと. water. layer. 合 は,(4)式. な る の で,も. は. はや 薬 物 の吸. のPaq項. の寄 与 の 場 合 に 応 じて. pH‑分. 配 仮 説 に 従 わ な くな っ て し ま う.小. は,真. の 膜 表 面 積Sは. 面 積Saqよ. 腸 で. 消 化 管 を 円 筒 と見 な した表. りは る か に 大 き い(α. 前 述 し た.そ. こ で,(4)式. ≒600)こ. とを. が 成 立 す る とす れ ば,. 胃 に 比 べ て α の 大 き い 小 腸 で は,fuま 比 較 的 大 き な 薬 物 の 吸 収 はpH‑分. た はKの. 配 仮説 に 従 わ. な い こ とに な ろ う. 図6は,経. け の 吸 収 ク リ ア ラ ン スClapp(た す る と,(4)式. Vol.20, No.11. 見 す る と,. 配 仮 説 に 従 っ て い る よ うに み え る が,(3). 式 を 用 い て 実 測 値 に 最 も よ く適 合 す る プ ロ ピ シ リ ン のpKaを 4.61が. 算 出 す る と,胃. 得 ら れ る.し. で は3.49,小. か し,プ. ロ ピ シ リン の 真 の. あ る の で,実. 測Clapp‑pH曲 よ び1.9単. け 右 に ズ レて い る こ と に な り,pH‑分 っ て い な い こ とが わ か る.小 し てunstirred くす る と,予 pH‑分. water. 腸では. 線は 位だ. 配仮説に従. 腸の還流速度を遅 く. layerの. 厚 さLaqを. 測 され る よ うにClappが. 大 き. 減 少 し,. 配 仮 説 か ら の ズ レが さ ら に 大 き くな る(図. 6参 照).こ. の よ うな ズ レは,ペ. ニ シ リ ン類 の 水. 層 か ら オ ク タ ノ ール 層 へ の 単 純 拡 散 速 度 定 数 の pHと. の 関 係 に お い て も 観 測 さ れ た.. 以 上 の 結 果 か ら,筆. 者 ら は β‑ラ ク タ ム 抗 生 物. 質 の 消 化 管 吸 収 速 度 のpH‑分. 配仮説 か らの 著 し. い ズ レは,多. くの 場 合 に 信 じ られ て い る よ う な. virtual. 存 在,イ. pHの. オ ン型 分 子 種 の 透 過,膜. 構 成 成 分 と の 相 互 作 用 に 基 づ く も の で は な く,. 口 用 ペ ニ シ リ ン剤 の1つ. であるプ ロ. ピ シ リ ン の ラ ッ ト胃 お よ び 小 腸 還 流 液 か ら の 見 か. ClappClと. 還 流 液 のpHと. 胃 お よ び 小 腸 で そ れ ぞ れ0.7お. ち ら の 透 過 係 数 も 同 じ よ うな 大 き さ. の 場 合 に は,そ. 間 の停 止 の 繰 り返 し実 験).. あ る こ とが わ か る)と. pKaは2.76で. に,膜. 収 速 度 は そ の 脂 溶 性 の 大 き さ と無 関 係 と な る.し た が っ て,ど. +1/P)で. 腸(還 流 速 度10 で2.5分 間,. の 関 係 を プ ロ ッ ト し た も の で あ る.一. か ら 理 解 さ れ る よ うに,Paqはunstir‑. water. の 関 係(6). ●:胃(還 流 速 度,10ml/分),○:小 ml/分),△:小 腸(還 流 速 度10ml/分. だ し,dA/dt=. か らClapp=S/(1/Paq. (4)式. に お け るunstirred. water. layer透. 過に起. 因 す る と 結 論 した. 低 脂 溶 性 の抗 生 物 質 で は膜 脂 質 層透 過 が 律速 と な る の で,低. 脂溶性の顕著なセ フ ァ ロ ス ポ リ ン. 723.
(8) 誘 導 体 が 一 般 に経 口投 与後 吸収 され 難 い理 由は こ. らは や は りラ ッ ト消化 管 を用 いin. こに あ る.プ. ロ ピ シ リンや ジ ク ロキサ シ リンの よ. を 行 な っ た とこ ろ,上 記 の ア ミノペ ニ シ リンお よ. うに脂 溶 性 が 著 し く大 き い抗 生 物 質 では,膜 脂 質. び ア ミノ セ フ ァ ロス ポ リン抗 生 物 質 は 小腸 上 部 よ. 層 透 過 速 度 は増 大 す る が,脂 unstirred water. 溶性の増大に伴い. layer内 拡 散 が 律 速 と な って く. situ吸 収 実 験. り吸収 され,そ れ らの 吸 収 速度 は見 か け上(2) 式 のMichaelis‑Menten速. 度 式 に従 う こ とを見 い. だ した.こ れ ら の抗 生 物 質 は担 体 を介 して小 腸 か. る. 薬 物 の 吸収 に お い て,pH‑分 をunstirred. 配 仮 説 か らの ズ レ. water layer効 果 で 説 明す る こ とに. ら 吸収 され る とい え よ う.ラ ッ ト反 転 腸 管 を用 い たin. vitro実 験 で は,シ. ク ラ シ リン,セ. フ ァレ. 批 判 的 な 立 場 を とる研 究 者 もい る(7).し か し,. キ シ ン,セ フ ラ ジ ンの膜 透 過 に一 部 能 動 輸 送 の存. β‑ラ クタ ム抗 生 物 質 に 関 す る 限 り,現 時点 で は. 在 が 示 唆 され て い る.. 上 記 に 述 べ た 拡 散 理 論 を ひ るが え す ほ どの 矛盾 事. ど の よ うな 種 類 の担 体 が 関 与 して い るか につ い ては 現 在 な お 不 明 で あ るが,今 後 の研 究 に よ っ て. 実 は 見 つ か って い ない.. 解 明 され るで あ ろ うし,筆 者 らもそ の努 力 を続 け 2). ア ミ ノ‑β‑ラク タ ム抗 生 物質 の 消 化 管 吸 収. てい る.. 機 構(6) 7.. 6位 側鎖 に 強 力 な 電 子 吸 引 性 の 基 を 導 入 す れ ば,胃 酸 に 対 して 不 安 定 な ペ ニ シ リンの β‑ラ ク. 新 しい 経 口投 与 剤 形. 薬 物 治 療 に よ る効果 は,一 部 前 述 した よ うに,. タ ムは 安 定 化 され る と い う 化 学反 応 論 的 予 測 か. 多 くの要 因,た. ら,1961年. とえ ば投 与量 とそ の投 与 間 隔,剤. に開 発 され た の が ア ン ピ シ リンで あ. 形,食 事,生 理 的 要 因,年 齢,性 別,疾 病 な ど に. る.事 実,予 測 は 見 当 に 的 中 し,ア ン ピ シ リンは. よ って 影 響 され る.こ れ らの要 因 に よ る変 動 を 最. 前述 の プ ロ ピ シ リンや ジ ク ロキ サ シ リン よ りも著. 小 に す る努力 が 必要 で あ る こ とは言 を 待 た な い.. しい 耐酸 性 で あ った.そ れ ば か りで な く,グ ラム. 経 口投 与 に よ る薬 物 治療 に お い て支 障 と な る問. 陽性 菌 は も と よ りグ ラ ム陰 性菌 に も優 れ た抗 菌 力. 題 点 は,(1). 正 し く処 方 され た 薬 を 患 者 が 正 し. を発 揮 す る とい う画 期 的 な半 合成 ペ ニ シ リン製 剤. く服 用 しな い こ と,(2). で あ っ た の で,脚 光 を あ び た.こ の抗 生 物 質 は,. 因 に よ り薬 物 に対 す る効 果 が 変 動 す る こ と,(3). 上 に 列 挙 し た 多 くの要. ア ミノ酸 の よ うに 両 性 イオ ン型 の構 造 で あ るた め. 胃腸 障 害 な どの 副 作用,で. に,水 溶 液 中 で は い か な るpH条. 決 は,製 剤 工 夫 に よ って24時. 件 に あ っ て も完. あ る.こ れ ら の問 題 解 間 毎 に1回 以 上 の. 全 に イオ ン化 して お り,し か も きわ め て脂 溶 性 が. 投 与 を 要 せ ず,副 作用 や患 者 間 の変 動 が 少 な く,. 低 い.そ れ に もか か わ らず,幸 運 な こ とに経 口投. よ り良 い 治 療 効果 を 与 え る製 剤 を開 発 す る こ と に. 与 後 に 良好 に 吸 収 され る性 質 を 持 つ も の で あ っ. あ ろ う.. た.そ の 後 に 開 発 され た α位 に ア ミノ基 を有 す る 半 合成 ペ ニ シ リン誘 導 体(た. とえ ば アモ キ シ シ リ. ドラ ッグデ リバ リー シス テ ム(Drug System)は,こ. Delivery. の よ うな 目的 を 指 向 した 治 療 シ. ン,シ ク ラ シ リン)や 半 合成 セ フ ァ ロス ポ リン誘. ス テ ム と し て 近 年 急 速 な進 歩 を 遂 げ た.こ. 導 体(た. は も う少 し 拡 大 した意 味 を持 た せ て,薬 物 の 放. とえ ば セ フ ァ レキ シ ン,セ フ ラ ジ ン,セ. こで. フ ァ ドロキ シル,セ フ ロキ サ ジ ン,セ フ ァ ク ロル). 出速 度,放 出 部 位 を コ ン トロール す る た め に 工. も ア ン ピ シ リン と同 様 の 物 理 化学 的 性 質 を有 して. 夫 され た シス テ ム化 製 剤(systematized. お り,消 化 管 か ら吸 収 され る.な か に は非 常 に速. form)に. dosage. つ い て紹 介 す る.. く,か つ 完 全 に 吸 収 され る ものす らあ る.上 記 の (4)式 か らは これ らの 低脂 溶性 抗 生 物 質 群 の吸 収. 1). は説 明 で きな い.何 か そ の 他 の特 殊 な膜 輸 送 機 構. セ フ ァ レキ シ ンは体 内か ら の消 失 速 度 が 速 い た. に よ って 吸 収 され て い るに違 い な い と考 え,筆 者 724. 徐放 性 製 剤. め に,通 常6時 間 毎 の投 与 が 必 要 と され て い る. 化 学 と 生 物.
(9) 図7. セ フ ァ レキ シ ン500mgを 含む腸溶性顆粒製 剤(○)お よび250mgを 含 む通 常の カプ セ ル 図8. 剤(●)を8人 の 被験 者 に投 与 後 の 平 均(± 標 準偏 差)血 清 中 濃 度(8). を 製 剤 係 数dosage. 患 者 に と っ て6時 間 毎 の服 用 はか な り煩 雑 で あ る. こ の 値 が1に. の で,実 際 に は1日3回. ア ミ ドを250mg,. の 分服 と して い る.自 覚. 浸 透 ポ ンプ form. index. (DI)と. 近 い こ と が 望 ま しい.ア 1日2回. 投 与 で10日. 呼 ぶ.. セ タ ゾ ール 間の連続. 症 状 が 改 善 消 失 して くる と,服 用 が不 規 則 に な る. 投 与 し た 場 合 に お い て,通. 常 の 製 剤 で はDI値. こ とが 多 い.不 規 則 な 服 用 は有 効 性 を低 下 させ,. 5.1で. 透 ポ ン プ剤 形 で は 平 均. 場 合 に よ っ ては 再 発 を 誘起 させ る ばか りで な く,. DI=1.5で. 耐 性 菌 の 出現 の 原 因 に もな りか ね ない.そ. 頻 度 も1/2に. 1日 に1回,せ. め て12時. こで,. 間毎 の服 用 が 可 能 な 持. 続 性 製 剤 の開 発 が 望 まれ て い た. す で に述 べ た よ うに,セ. 速 効 性 顆粒 と し,残. プセ ル. り70%をpH. が 開 発 され た(8).こ の カ プセ ル剤 では,図7に. 見. 間毎 に1回 投 与 で 目的 と した. 有 効 濃 度 の 持 続 化 が達 成 され てい る.. 2). 減 少 した と い う.こ. 10〜20μg/mlと. の シス テ ムは 薬. 比 較 的 狭 い 薬 物 で あ り,血. 漿濃. 度 半 減 期 は わ ず か 数 時 間 と い う投 与 設 計 の 難 し で あ る.発. 作 を 予 防 す る に は,1日. 数 回 の 投 与 が 必 要 と な る.こ. れ は 患 者 に と って は. か な り苦 痛 な こ と で あ る.テ. オ フ ィ リ ン250mg. を 含 む 浸 透 ポ ン プ 製 剤 で は,20mg/hrの 放 出 さ れ る(図9‑B)の. 浸 透 ポ ンプ の原 理 を用 い た経 口剤. 浸 透 ポ ン プ(図8)は,浸. 乱 な どの 副 作 用 発 生. 物 治 療 上 優 れ て い る こ と が わ か る.. い 薬 物 の1つ. 6の 腸 溶 性 顆 粒 とす る混 合 顆 粒 を含 む 徐 放 性 製 剤. られ る よ うに12時. あ り,ね む け,錯. が. 喘 息 治療 薬 テ オ フ ィ リ ン は 治療 血 漿 濃 度 域 が. フ ァ レキ シ ンが 小 腸 上. 部 か ら特 異 的 に 吸収 され る こ とを鑑 み,カ 中 の30%は. あ っ た の に 対 し,浸. で,2個. 速度 で. ず つ12時. に1回. の 投 与 で 治 療 濃 度 が 保 た れ,そ. 1.1で. あ る と い う(10).. 間毎. のDI値. は. 透 圧 差 に よ って,小. 孔 か ら薬 剤 を ゼ ロ次 放 出 させ る こ とを 意 図 した新 しい 剤形 で あ る.浸 透 ポ ンプか らの 薬 物放 出速 度 は 浸透 圧 の み に依 存 す るた め に,ポ 溶 液 の 攪 拌 の有 無 や 溶 液 のpHの. ン プの外 側 の. 変 化 に依 存 しな. い.し た が っ て,こ れ を 経 口投 与 剤形 と して利 用 す る とす れ ば,消 化 管 の 運 動 性 の 個 人差,消 化 管 内 のpH変. 動 に よ って も薬 物 放 出速 度 に差 が 生 じ. に くい な ど の利 点 が 期 待 で き る. 利 尿 剤 ア セ タ ゾ ール ア ミ ドの浸 透 ポ ンプ製 剤 か らの溶 出 は,経 口投 与 後1時 間か ら7時 間 にわ た っ て15±3mg/hrの. 速 度 で,約70%の. ゾー ル ア ミ ドを 放 出 した(9)(図9‑A).製. アセタ 剤を多. 数 回投 与 した 場 合 の 最 高血 中濃 度 と最 低 濃 度 の 比 Vol.20, No.11. 図9. ア セ タ ゾ ー ル ア ミ ド125mg ィ リ ン250mg. (B)(10)を. (A)(9),テ. オフ. 含 む 浸 透 ポ ン プか ら. の 放 出挙 動. 725.
(10) (1977). 2). 以上,薬. 剤 の 消 化 管 吸収 に 及 ぼす 種 々の要 因 に. つ い て 剤形,吸 収 機 構 な どの 面 か ら解 説 して み た. 薬 物 の 固有 の薬 効 が 秀 れ た も の で あれ ば あ るほ ど. 3). 渡 辺. 康,佐. 藤 倫 男,本. 牡 丹 義 弘:薬. 誌,. J. Rutland,. N. Berend. Pharmacol.,. 8,. 4). P.G.. 5). 山 本 隆 一,山. 97,. 343. Welling:. 6). が何 らか の欠 点 を有 す るが 故 に秀 れ た 面 が 活 か さ れ な い場 合 に は,こ れ らを改 良 して立 派 な薬 物 ・ 製 剤 に仕 立 て て世 に送 り出す ため に,多. くの 分 野. 7). A.. Tsuji , ed.. ties. Press,. J.G.. 8). の研 究 者 ・技 術 者 の協 力 を得 て,今 後 も地 道 な 研 9). G.E.. Marlin:. Intn., 辺. 1,. 14. 淳:. Yamana:. 井 美 澄,. Br.. J. Clin.. (1980).. 薬 物 の 生 体 内 移 行. in. Beta‑Lactam. S. Mitsuhashi,. Tokyo, & 23. 1981,. ,. A.J.. Japan. Antibio‑. Scientific. Socie‑. p. 235.. Sedman:. J.. Pharmacok.. Bio‑. (1973).. 前 川 秀 幸,高. 岸. 伊 藤 昌 男,北. 村 和 緒,藤. 631. 究 を積 み 重 ね る こ とが 必 要 で あ る.. T. by. 1,. 田 良 蔵,三. 江 堂,1969,第3章.. Wagner. pharm.,. &. Pharm.. &. tics. 清,米 (1977).. (1979).. 田 秀 雄,渡. 中 垣 正 幸(編),南. そ の 特性 が十 分 に 発 揮 され る よ うに,ま た そ れ ら. 橋 791. 靖,岩. 本 健 三,土 本 春 海:. 居 義 男,小 Jpn.. 泉 敏 弘,. J. Antibiot.,. 30,. F.. Sci., 66,. 1388. (1977). Theeuwes. &. W.. Bayne:. J.. Pharm.. (1977). 10) 文 1). 726. 献 P.G.. Welling:. S.K. Drug. J.. Pharmacok.. Biopharm.,. 5,. 291. mic. Chandrasekaran, Design Press,. F.. Theeuwes. ,. Vol.8,. ed.. New. York,. 1979,. by. &. E.J. Chap.. S.I. Yum:. Ariens,. Acade‑. 3.. 化 学 と 生 物. in.
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