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京都 女子大 学の情 報環境
と全 学共通情 報教 育 に関
す る一考察
宮
下
健
輔*
水
野
義
之*
20世 紀 末 に始 ま っ た 社 会 の情 報 化 が 進 展 し 続 け て い る 。 そ の よ うな 社 会 の 中 で 、 大 学 で は情 報 リテ ラ シ ー 教 育 に 代 表 され る 全 学 共 通 の 情 報 教 育 の 内容 や 方 法 を変 化 させ 続 け る 必 要 が あ っ た 。 また 、 情 報 教 育 の 基 盤 と な る 大 学 の 情 報 環 境 も、 コ ン ピ ュ ー タや ネ ッ トワ ー ク等 に 関 す る要 素 技 術 の 進 化 に対 応 しつ つ 安 定 稼 働 す る こ と を要 求 され 続 け て きた 。 京 都 女 子 大 学 で は2000年 に 全 学 共 通 情 報 教 育 を 開 始 して 以 来 、 カ リ キ ュ ラ ム 変 更 を4年 お き に 実 施 し、 全 学 情 報 環 境 の 大 規 模 な 更 新 を2度 行 っ て い る 。 そ の 後2010年 に は 一 部 の コ ン ピ ュ ー タ教 室 で 設 備 更 新 を 実 施 し、2011年 度 か ら全 学 共 通 情 報 教 育 カ リキ ュ ラ ム を一 部 変 更 した 。 本 稿 で は 、 こ の11年 間 の 情 報 教 育 と 情 報 環 境 の 変 遷 を年 代 順 に振 り返 る こ とで そ の 問題 点 と成 果 を考 察 す る。 ま た これ らの 考 察 を 基 礎 に、 今 後 の 方 向 性 につ い て も展 望 し た い 。 キ ー ワー ド:情 報 教 育 、 教 育 カ リキ ュ ラ ム、 情 報 シ ス テ ム * 京都 女子 大学 現 代 社 会学 部 現代 社会 学科 1 は じめ に 情 報 通 信 技 術 の 活 用 に よ る社 会 経 済 構 造 の 急 激 か つ 大 幅 な変 革 は20世 紀 末 か ら始 ま っ た とい う こ とが で きる 。 こ の 変 革 の 象 徴 と して 、 例 え ば1989年 のWWW提 案 、1990年 の 米 国 で の イ ン ター ネ ッ ト商 用 化(日 本 で の 商 用 化 は1993年)、1995年 に 迎 え た と さ れ る 「イ ンター ネ ッ ト元 年 」、そ して2000年 のG8サ ミ ッ ト(ITサ ミ ッ ト と呼 ば れ た 九 州 沖 縄 サ ミ ッ ト)を 挙 げ る こ とが で き る だ ろ う。 日本 で は こ の よ う な社 会 的 動 向 に対 応 す る た め 、2000 年12月 に 高 度 情 報 通 信 ネ ッ トワー ク社 会 形 成 基 本 法(IT基 本 法)が 制 定 さ れ 、2001年 か ら施 行 され た(高 度 情 報 通 信 ネ ッ トワ ー ク社 会 形 成 基 本 法,2001)。 大 学 にお け る 全 学 共 通 教 育 と して の情 報 リ テ ラ シー 教 育 は そ れ 以 前 よ り実 施 され て い た 。 しか し20世 紀 末 に 起 こ っ た こ の よ うな 社 会 変 化 へ の 対 応 を 契 機 と して 、 情 報 教 育 の 態 様 を 常 に社 会 に対 応 して 変 化 させ る 要 求 は ます ま す 多 様 化 か つ 複 雑 化 しつ つ 今 日に 至 っ て い る と見 倣 す こ とが で きる。 これ は大 学 の 社 会 的 使 命 が 、 高校 の 卒 業 生 を受 け入 れ て 教 育 し、 最 終 的 に は 適 切 か つ 有 為 の 人材 と して 社 会 へ 供 給 す る こ とだ か らで あ る。 2000年 代 に お け る大 学 で の全 学 共 通 情 報 教 育 を考 え る に は 、 高 校 で の 普 通 教 科 「情 報 」 の 実 施(2003年 開 始)を 予 測 しつ つ 、 社 会 の 情 報 化 を 進 展 させ る こ とが で きる 人 材 を育 成 す る こ とを 念 頭 に置 く必 要 が あ っ た 。 ま た こ の 意 味 で の 「情 報 教 育 」 の 必 要性 が 全 学 問 分 野 に わ た っ て 起 こ りつ つ あ っ た とい う認 識 も 重 要 で あ る 。 この こ と は、 お お よそ2000年 以 前 に は 「情 報 処 理 教 育 」 と 呼 ば れ る こ とが 多 か つ た もの が こ の 時 期 を契 機 に 「情 報 教 育 」 と呼 ば れ る よ うに な り、また 「教 育 の情 報 化 」 とい う言 葉 も並 行 して 語 られ る よ う に な っ た こ とに も伺 う こ とが で きる 。 こ の よ う な意 味 で 全 分 野 ・全 教 育 活 動 に わ た る 「情 報 教 育 」 を 実 施 す る に は 、 そ の 基 盤 と し て 情 報 環 境(全 学 規 模 の 学 内LANと サ ーバ シス テ ム 、 情 報 利 用 環 境 と して の 教 育 用 端 末)が 必 要 で あ る 。 京 都 女 子 大 学 は 文 系 ・社 会 系 と応 用 科 学(生 活 科 学 ・家 政 学 等)の 教 育 を 中核 とす る 中 規 模 私 立 女 子 大 学 の1つ で あ る。 この こ と を念 頭 に お け ば 、 そ の 情 報 教 育 に お け る 端 末 用 のOSと し て は WindowsやMac OSを 採 用 す る の が 一 般 的 で あ ろ う。 こ れ らは サ ー バ や ネ ッ トワ ー ク を 構 成 す る個 々 の 要 素 技 術 同様 、20世 紀 末 か ら 劇 的 な進 化 を 遂 げ て い る。 す な わ ち、 全 学 の 情 報 環 境 は様 々 な ク ラ イ ア ン トや 各 種 サ ー バ 、 進 化 を続 け る ネ ッ トワー ク に つ い て 、 そ れ ぞ れ の 急 速 な 変 化 に対 応 しつ つ 、 そ の基 盤 上 で 実 施 さ れ る情 報 教 育 の た め に 安 定 稼 働 を実 現 す る必 要 が あ る。 そ の 最 適 解 を見 出 す の は容 易 で は な い 。 京 都 女 子 大 学 で は2000年 に 全 学 共 通 情 報 教 育 が 開 始 さ れ 、 そ れ に伴 い 学 内LANが 全 学 規 模 に 拡 大 しサ ー バ シ ス テ ム が 整 備 さ れ た (宮下,2000;水 野 ・宮 下,2004)。 そ れ か ら 2011年 ま で に 全 学 共 通 情 報 教 育 の カ リキ ュ ラ ム 改 革 は2度 実 施 され 、 情 報 環 境 の 大 規 模 な 設 備 更 新 も2度 実 施 され た 。 本 論 文 で は 、 こ れ ら の経 験 を元 に この10年 余 の 情 報 教 育 とそ れ を支 え て き た基 盤 と して の 情 報 環 境 の 変 遷 を 年 代 順 に 振 り返 る こ とで 、 そ の 問題 点 と成 果 を考 察 す る 。 2 前 期(20世 紀 末 ∼2004年 頃) 前 述 の よ う な社 会 状 況 変 化 へ の 対 応 の 噛 矢
京都 女子 大学 の情 報環 境 と全学 共通 情報 教育 に 関す る一 考察 61 と して 、 例 え ば1992年 に は 慶 応 義 塾 大 学 の大 岩 や大 阪 大 学 の都 倉 ら(情 報 処 理 学 会)に よ り 「大 学 等 に お け る 情 報 処 理 教 育 の た め の 調 査 研 究 報 告 書 」(大 学 等 に お け る情 報 処 理 教 育 検 討 委 員 会,1992)の よ う な報 告 が 行 わ れ て い る 。 ま た 、 大 阪 大 学 で は1994年 に400台 のNeXTコ ン ピ ュー タをLANで 接 続 し初 年 度 学 生 の 情 報 活 用 基 礎 教 育 を 開 始 して い る。 1995年 に は初 等 中等 教 育 で も文 部 省 ・通 産 省 共 同 プ ロ ジ ェ ク ト(100校 プ ロ ジ ェ ク ト)に お い て コ ン ピ ュ ー タ と ネ ッ トワ ー ク の 活 用 が 試 行 され た。 並 行 して1996年 の 中央 教 育 審 議 会 答 申(中 央 教 育 審 議 会,1996)で は 「情 報 社 会 に対 応 した 初 等 中 等 教 育 」 の 必 要性 が 指 摘 され 、1998年 教 育 課 程 審 議 会 答 申 で 普 通 教 科 「情 報 」 新 設 が 決 定 、1999年 に は 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 の 公 布 に 至 つ て い る。 この 段 階 で 、2003年 度 高 校 入 学 を経 て2006 年 度 の 大 学 新 入 生 か ら高 校 普 通 教 科 「情 報 」 を 必 修 とす る 学 生 を 大 学 で 受 け 入 れ る こ とが 決 定 して い た 。 例 え ば1998年 に情 報 処 理 学 会 は 高 校 教 科 「情 報 」 の 試 作 教 科 書(情 報 処 理 学 会 初 等 中 等 情 報 教 育 委 員 会 ワ ー キ ン グ ・グ ル ー プ,1998)を 出 して お り、 こ れ もそ の 準 備 の 一 環 と見 倣 す こ とが で き る。 2.1 京 都 女 子 大 学 で の 対 応 社 会 の情 報 化 に よ る情 報 教 育 の 変 化 が 求 め ら れ る 中 、 京 都 女 子 大 学 で はWindowsと Microsoft Officei'の 普 及 に あ わせ て1997年 よ り選 択 科 目 と して情 報 処 理 教 育 が 既 に始 ま つ て い た。2000年4月 の 段 階 で は こ れ を も とに した情 報 リ テ ラ シ ー教 育 を 全 学 で統 一 して 必 修 化 した 。 こ れ は 同年 の 現 代 社 会 学 部 新 設 を き っ か け に、 高 校 普 通 教 科 「情 報 」 の 学 習 指 導 要 領 を踏 ま え て 大 学 レベ ル の 情 報 教 育 内 容 を再 定 義 す る こ と を企 図 して お り、 全 学 共 通 の 情 報 教 育 と して1年 次 必 修2科 目、2年 次 選 択6科 目の 全8科 目体 制 で 開 始 した 。 同 時 に、 こ れ を支 え る 全 学 的 な情 報 環 境 の 大 規 模 整 備 を 、 同 大 学 と して 初 め て 行 っ た 。 そ れ 以 前 の 情 報 環 境 と して は 、 数 台 の サ ー バ と3つ の コ ン ピ ュ ー タ教 室 が あ り、 サ ー バ は 図 書 館 の 事 務 組 織 が 、 コ ン ピ ュ ー タ教 室 は 学 部 事 務 課 の 事 務 組 織 の 一 部 が そ れ ぞ れ 運 用 して い た 。 ま た 、 情 報 教 育 科 目 は各 学 科 で独 自 に展 開 して お り、 全 学 の 情 報 教 育 と情 報 環 境 を担 当 す る事 務 部 署 や 教 員 は 存 在 し な か っ た 。 しか し社 会 の 情 報 化 や ハ ー ドウ ェ ア ・ソ フ トウ ェ アの 進 歩 を情 報 教 育 や 情 報 環 境 整 備 に的 確 に 反 映 す る た め に は教 員 の 存 在 が 不 可 欠 で あ り、 現 代 社 会 学 部 の 新 設 に伴 い 新 規 採 用 さ れ た2名 の 教 員(著 者)が こ れ に携 わ る こ と とな っ た。 全 学 の 情 報 教 育 お よ び 情 報 環 境 の 整 備 を 行 う に あ た り、 こ れ を3つ の 側 面 か ら支 援 す る 組 織 を創 設 した 。 ま た これ ら を牽 引 す る 主 体 と して 委 員 会 体 制 を整 備 した 。 第1に 、 事 務 支 援 組 織 の 新 設 で あ る 。 上 述 の よ う に 図 書 館 や 教 務 部 の 一 部 で 行 わ れ て い た 全 学 の 情 報 環 境 の 運 用 を管 轄 す る事 務 部 署 を新 設 し、 これ を 「情 報 シ ス テ ム セ ン タ ー 」 と した 。 情 報 シ ス テ ム セ ン ター は総 務 部 の 下 部 組 織 と して 設 置 され 、 課 長1名 と係 長1名 、 課 員1名 お よ
びパ ー トタ イマ ー 数 名 で2000年4月 に発 足 し た 。 第2に 技 術 支 援 組 織 を構 成 した 。 こ れ は情 報 環境 を構 築 段 階 か ら安 定 的 運 用 段 階 へ 移 行 しつ つ 、 試 行 錯 誤 し なが ら順 次 増 強 す る結 果 とな っ た。2000年 度 は教 員1名 が シ ス テ ム 納 入 業 者 と と もに技 術 支 援 を 行 って い た(宮 下, 2000)。 しか し こ れ は教 員 の 負 担 が 大 きか っ た た め 、 次 年 度 か ら は上 記 の 情 報 シ ス テ ム セ ン ター に委 託 業 者 のSE(2名)を 常 駐 させ 、 そ の 後 、 情 報 環 境 の 大 規 模 化 に合 わせ て そ の 人 数 を増 や して きた 。 第3は 教 育 支 援 組 織 の創 設 で あ る。 大 規 模 な 大 学 の 多 くで は授 業 支援 を行 うた め に 大 学 院 生 をTAと して 雇 う が 、 本 学 で は 大 学 院 生 が 少 数 の た め 全 学 の情 報 教 育 を賄 うに は 不 足 す る。 そ こで 大 学 院 生 と学 部 生 を含 め た 上 級 生 が 下 級 生 の 教 育 支 援 を行 う体 制 を整 備 し、 これ を 「SS(ス チ ュ ー デ ン トス タ ッ フ)制 」 と名 付 け た。 また 、 情 報 シス テ ム セ ン ター の 管 轄 下 に 「コ ン ピ ュ ー タ相 談 室 」 とい う部屋 を用 意 し、 上 記SSや 相 談 員(非 常 勤 職 員) が 常 駐 して情 報 教 育 や 情 報 環 境 に 関す る 学 生 か らの 質 問 や相 談 を受 け付 け る体 制 を整 え た 。 最 後 に以 下 の 委 員 会 組 織 を発 足 させ た 。 こ れ は 、 まず 暫 定 的 な準 備 委 員 会 等 を組 織 して 上 述 の よ うな情 報 教 育 お よび 晴報 環 境 の 整 備 を推 進 す る に あ た り最 小 限 か つ 必 要 な分 野 を 網 羅 した構 成 を検 討 した 結 果 で あ る。 情報政策委 員会:大 学 、高校か ら幼稚 園 まで を含 む京都女子学 園 と しての情 報環境 に 関 わ る意 思 決 定 を行 う た め の 委 員 会 で あ る 。 大 学 の 学 長 、 各 学 部 長 、 各 学 校 の 校 長 や 部 長 級 事 務 職 員 等 で 構 成 さ れ 、 下 記 の情 報 シ ス テ ム 運 営 委 員 会 委 員 長 も委 員 で あ る。 情 報 シ ス テ ム 運 営 委 員 会:大 学 の 委 員 会 で あ り、 全 学 の 情 報 環 境 全 般 に つ い て 意 思 決 定 を行 う。 全 学 情 報 環 境 の 更 新 や コ ン ピ ュ ー タ教 室 の 設 備 変 更 等 は こ こ に 諮 られ る 。 情 報 環 境 の 管 理 責 任 者(教 員)が 委 員 長 と な り、 実 作 業 を担 当 す る 教 員(運 用 責 任 者)や 学 長 指 名 に よ る 教 員(各 学 部 か ら1名 ず つ)お よび 課 長 ・部 長 級 事 務 職 員 等 で構 成 さ れ る。 また 、 下 記 の 情 報 教 育 委 員 会 か ら数 名 の 委 員 が 参 加 す る こ とで 、 情 報 教 育 と 情 報 環 境 との 連 携 を深 め られ る よ う に し て い る 。 教 員 と 事 務 員 と の 割 合 は 半 々で あ る。 さ ら に、 日々 の 承 認 事 項 (ア カ ウ ン ト登 録 、機 器 接 続 等)や ハ ー ドウ ェ ア ・ソ フ トウ ェ ア の急 速 な進 展 等 に速 や か に対 応 で き る よ う、 委 員 の う ち情 報 環 境 を所 掌 す る管 理 職 や 情 報 通 信 技 術 に 明 る い 教 員 等 に よ る小 委 員 会 を設 け て い る 。 情 報 教 育 委 員 会:大 学 の 委 員 会 で 、 全 学 共 通 の 情 報 教 育 につ い て 意 思 決 定 を行 う。 上 述 の 管 理 責 任 者 、 運 用 責 任 者 、 各 学 科 か ら1名 ず つ 選 出 され た教 員 お よび 教 務 課 長 、 情 報 シ ス テ ム セ ン ター 課 長 等 で 構 成 され る。 この 委 員 会 は 委 員 の 大 部 分 が 教 員 で あ る 。
京都 女子 大学 の情 報環 境 と全学 共通 情報 教育 に 関す る一 考察 63 この 委 員 会 構 成 は2000年 度 に発 足 し、 現 状 (2011年)に 至 る も何 ら変 更 す る 必 要 が な い こ とは 幸 い で あ る 。 こ れ らの 委 員 会 は す べ て 情 報 シス テ ム セ ン ター が 所 掌 す る 。 しか し上 述 の通 り情 報 シ ス テ ム セ ン ター は総 務 部 の下 部 組 織 で あ り、 教 務 を扱 う こ とは事 務 分 掌 上 の 無 理 が 生 じる。 そ こ で教 務 に 関 す る情 報 教 育 委 員 会 に お い て は 、 全 学 の 教 育 組 織 と教 育 方 法 を検 討 す る教 務 委 員 会 の 委 員 長(教 務 部 長)が 清 報 教 育 委 員 会 委 員 長 を兼 ね る こ と と して い る 。 この 中 で 、 情 報 教 育 委 員 会 で は常 時 、 情 報 教 育 の 内容 と方 法 を見 直 しつ つ 、 改 善 を重 ね て き た 。 また 情 報 シ ス テ ム 運 営 委 員 会 で は 、 この 情 報 教 育 委 員 会 で 決 定 され た情 報 教 育 を 実 現 す る た め に最 適 な情 報 環 境 を 常 に検 討 ・ 構 想 しつ つ 、 前 述 し た よ う な劇 的 な 社 会 変 化 に も対 応 し よ う と し て きた 。 2.2 全 学 共 通 情 報 教 育 の 内 容 と方 法 大 学 に お け る全 学 情 報 教 育 に は 、 初 年 次 の 基 礎 的 な 情 報 リテ ラ シ ー 教 育 に加 え て各 学 科 で の専 門 教 育 で 必 要 とな る知 識 と ス キ ル を提 供 す る 必 要 が あ る と考 え 、 こ れ を情 報 教 育 委 員 会 で 基 本 方 針 と して 決 定 した 。 こ れ を 受 け 、 京 都 女 子 大 学 で は全 学 共 通 の情 報 教 育 を 大 き く分 け て2種 類 用 意 して い る 。 まず1回 生 は 前 期 と後 期 に そ れ ぞ れ 「情 報 リテ ラ シ ー基 礎 」 お よび 「情 報 リ テ ラ シー 応 用 」 を学 ぶ 。 これ らの 科 目 で は 、 情 報 リテ ラ シー を通 年 必 修 科 目 と して 実 施 す る こ とで 深 く身 に付 け る こ と を 目的 と して い る。 受 講 者 数 は 全 学 で 毎 年 約1700名 で あ る。 この 科 目で は 高校 との 連 続 性 を持 つ 内 容 か ら始 ま り、2 回生 以 降 で 情 報 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン科 目 を受 講 す る た め の 知 識 と ス キ ル を 身 に 付 け る 。 具 体 的 に は 、 コ ン ピ ュ ー タ の操 作 法 、 メ ー ル の 読 み 書 き 、WWWを 利 用 した情 報 収 集 、 MS Word、 MS Excel等 のOfficeス イ ー トの 利 用 法 を 中 心 と した 内 容 と な っ て い る 。 2回 生 以 上 は 「情 報 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン科 目」(選 択 科 目)を 学 ぶ こ と が で き る 。 情 報 コ ミュ ニ ケー シ ョ ン科 目 は情 報 リテ ラ シー 基 礎 お よび 同 応 用 で 身 に 付 け た ス キ ル を深 化 さ せ る こ と を 目的 と して お り、 こ れ ら も全 学 共 通 の 内 容 と方 法 で 運 営 して い る。 情 報 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン科 目 は複 数 の テ ー マ(情 報 科 学 、 MS Word、 MS Excel、 コ ン ピ ュ ー タ グ ラ フ ィ ッ ク ス等 、2000年 に は 合 計6科 目)に 分 か れ て お り、 そ れ ぞ れ が 選 択 科 目 と な っ て い る 。 全 学 共 通 情 報 教 育 の 内 容 に つ い て 、 後 述 す る 変 更 も含 め 表1に ま と め る。2000年 度 に始 まる カ リキ ュ ラ ム で は 表1の1行 目 に 示 した よ う な内 容 を用 意 した 。
表1 情報 教 育 内容の 変遷 年度 情報教育 の課題 2000 一 情 報 リテ ラ シ ー 教 育 の 全 2003 学 必 修 化 2004- HTML学 習 の 位 置 付 け 変 2007 更,図 書 館 教 育 と連 携. 発 表 の必 要 性 の増 大 2008- e-1earning,ア カ デ ミ ッ 2010 ク ス キ ル 教 育 の 導 入 2011一 資 格 に よ る 学 習 目標 の 明 確 化 1回 生前期 コ ン ピ ュ ー タ 操 作 入 門, メ ー ル,Web, Word, Exce1 Windows操 作 入 門,メ ー ル,Web, Word, Excel, 図 書 館 利 用 法 上 記 を 教 え る授 業 回 数 を 減 ら しe-learningで 個 別 対 応,コ ン ピ ュ ー タ と イ ン タ ー ネ ッ トの 原 理 ・仕 組 み の学 習 を追 加 WordとExcelの 代 わ り にOpenOffice.org WriterとCalcを 追 加, P検4級 が 目 安 1回 生後期 WordとExcelの 連 携, 画 像 処 理,HTML入 門 WordとExcelの 連 携, Power Point 内 容 は 同様,教 育 方 法 と し てPBL(プ ロ ジ ェ ク ト 型 の 課 題 研 究)を 導 入 内容 ・方法 は同様,学 部 学科 ご とに必修/選 択 を 選ぶ 2回 生 以降 情 報 科 学,情 報 社 会, Word, Excel, Access, コ ン ピ ュ ー タ グ ラ フ ィ ッ ク ス(CG), HTML 情 報 科 学,情 報 社 会, Word, Excel, Access, CG, Webデ ザ イ ン, Webプ ロ グ ラ ミ ン グ プ ロ グ ラ ミ ン グ,セ キ ュ リ テ ィ,情 報 倫 理,統 計 数 学,Word, Excel, Access, CG(Webを 廃 止 し座 学 を 追 加) ITパ ス ポ ー ト試 験 お よ び P検3級 ∼ 準2級,デ ー タ ベ ー ス 系 の 資 格 等 を 目 指 す,Webと デ ー タベ ー ス と の 連 携 実 習 を追 加 2.3 情 報 環 境 2000年 以 前 の 学 内LANは 図 書 館 を 中 心 に 一 部 の 校 舎 の 一 部 の フ ロ ア だ け を 接 続 し て お り、 学 内LANを 利 用 で き る 教 員 は 限 ら れ て い た 。 ま た3ヶ 所 の コ ン ピ ュ ー タ 教 室 が 一 部 の 学 科 で の 情 報 教 育 に 利 用 さ れ て い た 。 2000年 度 に 運 用 開 始 し た 全 学 情 報 シ ス テ ム
(KWIINS:Kyoto Women's university Integrated Information Network System)の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る(宮 下 ・水 野,2002)。 本 学 は 半 径300mほ ど の 敷 地 を 持 ち 、 大 き く 分 け て3つ の キ ャ ンパ ス に 全 部 で 約15棟 の 校 舎 が あ る 。KWIINSで は こ れ ら す べ て の キ ャ ン パ ス の す べ て の 校 舎 を ネ ッ トワ ー ク 接 続 し 、 各 校 舎 内 に もLANを 敷 設 し て 、 す べ て の 研 究 室 と 一 部 の 教 室 を ネ ッ トワ ー ク 接 続 し た 。 さ ら に 、 ネ ッ トワ ー ク を 敷 設 し た 教 室 の 一 部 に は 情 報 コ ン セ ン トを 設 置 し た 。 学 外 と はSINETを 介 し て 接 続 し て い た 。 また 、 ダ イ ヤ ル ア ップ 回 線 を ア ナ ロ グ23回 線 敷 設 して 、 ユ ー ザ(学 生 お よ び 教 職 員)に 電 話 番 号 を 公 開 し た。 こ れ はWebメ ー ル シ ス テ ム や 学 内 用Webサ イ ト(授 業 に 関 連 す る 情 報 が 記 載 さ れ る)等 の 学 内 サ ー ビ ス を 学 外 (自 宅 等)か ら利 用 で き る よ う に す る た め の もの で あ る。 ク ラ イ ア ン トはWindows NT端 末 約400台 (既 存 コ ン ピ ュ ー タ教 室(3室)と 新 築 校 舎 の コ ン ピ ュ ー タ教 室(5室))を 設 置 し た 。 こ れ らは も ち ろ ん 第 一 義 的 に は2000年 度 か ら 開始 され た 全 学 共 通 情 報 教 育 を実 現 す る た め の もの で あ り、 す べ て の 教 室 で 同 一 環 境 で 授 業 が 実 施 で き る よ う にす る た め で あ る。 さ ら に学 生 が 体 験 で き るOSの 種 類 を増 や す 目的 でiMacを60台(1教 室)用 意 した 。 こ の 教 室 は情 報 リ テ ラ シー 教 育 で 利 用 さ れ る だ け で な く、 専 門 教 育 と して の 情 報 教 育 に お い て も CADや 動 画 編 集 な どに 利 用 され た 。
京都 女子 大学 の情 報環 境 と全学 共通 情報 教 育 に関す る一 考察 65 KWIINS構 築 当 初 は ユ ー ザ が 利 用 す る 教 室 や サ ー ビ ス ご と に ア カ ウ ン トを使 い分 け る 必 要 が あ っ た 。 これ は そ れ ぞ れ のWindows 教 室 が 納 入 年 度 の 違 い に よ り異 な るWindows NTド メ イ ンに属 して い た り、 Mac教 室 やWeb メ ー ル サ ー ビ ス等 で 利 用 して い る認 証 シス テ ム と そ れ らの ドメ イ ン とが 統 合 で き て い な か っ た り した こ と に よ る 。 こ の こ と はユ ー ザ (特 に 学 生)を 無 用 に混 乱 させ 、 ひ い て は情 報 教 育 に 悪 影 響 を及 ぼ して い た の で 、 数 年 を か け て 認 証 シ ス テ ム を 改 良 して 連 携 させ パ ス ワ ー ドを統 一 した 。 学 生1人 あ た りの ホ ー ム デ ィ レ ク トリ容 量 の 上 限 は 当 初20MB、2002年 度 か ら50MBと した。 これ は 当 時 の 情 報 リ テ ラ シー 教 育 で 作 成 さ れ る フ ァイ ル を保 存 して お くの に 充 分 な 量 を確 保 して い た 。 途 中 で 容 量 を増 加 して い る の は 、 情 報 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン科 目(選 択 科 目)で マ ル チ メ デ ィア 作 品 等 大 きな サ イ ズ の フ ァ イ ル を保 存 す る場 合 に20MBの 制 限 は 小 さす ぎた か ら で あ る。50MBと い う値 は 、 フ ァ イ ルサ ー バ に用 意 され て い た デ ィス ク容 量 とユ ー ザ 数 を勘 案 して 決 定 し た。 3 中 期(2004年 ∼2008年 頃) この 時 期 に お け る 社 会 の 大 き な 変 化 は 、 前 述 の よ うに 、 高 校 で 「情 報 」 を履 修 した 学 生 が2006年 度 か ら大 学 に入 学 す る こ とで あ っ た 。 3.1 情 報 教 育 内 容 の 変 更 2000年 に 本 学 で 全 学 共 通 情 報 教 育 を始 め て か ら、 前 述 の 情 報 教 育 委 員 会 に お い て 毎 年 力 リキ ュ ラ ム の 微 調 整 を行 い つ つ 、2004年 に最 初 の 大 きな カ リ キ ュ ラ ム 改 革 を 実 施 した(表 1の2行 目)。 こ れ は 社 会 の 変 化 と そ れ に伴 う新 入 生 の ニ ー ズ を 予 測 し て 科 目 内 容 を 検 討 ・整 理 し、 必 修 ・選 択 の 別 や 開 講 時 期 の 変 更 等 も視 野 に 入 れ な が ら カ リ キ ュ ラ ム 全 体 を 構 成 して い る 。 大 きな 変 更 点 と して 以 下 の2 点 が 挙 げ られ る。 まずHTMLを 学 ぶ 科 目 を 大 幅 に 組 み 換 え た 。HTMLに つ い て 原 理 や タ グ の 解 説 な ど を 行 っ て い た 内 容 をWebデ ザ イ ン とWeb プ ロ グ ラ ミ ン グ に分 割 した の で あ る。 これ は 、 社 会 に お け る コ ン ピュ ー タ と ネ ッ トワー ク環 境 の 大衆 化 に伴 いCMS(Contents Management System)やblog等 が 普 及 し、 言 語 と して の HTMLを 理 解 す る こ との 必 要 性 が 滅 少 しつ つ あ っ た こ と に配 慮 した こ と に よ る。 次 に 、 図 書 館 利 用 法 お よ びPowerPointを 活 用 した発 表(プ レゼ ンテ ー シ ョ ン)の ス キ ル を身 に付 け る こ と を、1回 生 で の学 習 内 容 に 追 加 した 。 前 者 は 古 くか らア カ デ ミ ック ス キ ル と して 重 要 視 され な が ら本 学 で は こ れ ま で 特 定 の科 目 に組 み 込 まれ る こ と の なか っ た もの で あ る。 ま た 後 者 は 社 会 の 情 報 化 に伴 い 重 要 さ を増 して きた ア カデ ミ ッ ク ス キ ル の ひ とつ と して 追 加 した もの で あ る。 2003年 度 に は 講 習 会 や ア ンケ ー トに よ っ て 受 講 生 を振 り分 け 、 習 熟 度 別 に ク ラ ス を 編 成 す る こ と を試 み た 。 これ は 自己 申 告 に よ る ア ンケ ー ト2)を利 用 し、 情 報 リ テ ラ シー の 知 識 とス キ ル を調 査 して ク ラ ス 分 け を 行 っ た 。 ま た 、 ス キ ル不 足 を補 う た め の 入 門 講 習 会 を 自
主 参 加 方 式 で 開講 した 。 こ れ ら は2003年 か ら 実 施 した が 、 入 門 講 習 会 が 必 要 な ほ どス キ ル 不 足 で あ る学 生 が 滅 少 した こ とや 、 必 修 科 目 で あ る こ と に伴 う教 務 上 の 時 間 調 整 困 難(コ ン ピ ュー タ教 室 の 数 や1教 室 あ た りの座 席 数 に よ る制 限)等 の 限 界 もあ り、 制 限付 きの ク ラ ス 分 け に よ る 教 育 効 果 は小 さ い と評 価 す る 教 員 が 多 か っ た こ とか ら2005年 を最 後 に そ の 後 は 行 っ て い な い 。 3.2 第2期 情 報 シ ス テ ム 2004年 当 時 の 第1期 情 報 シス テ ム に お け る 問 題 点 の う ち 、 全 学 共 通 情 報 教 育 と関 連 の 深 い もの は以 下 の 通 りで あ る 。 ●サ ー バ リ ソー ス(特 に メモ リや デ ィス ク 容 量)が 不 足 して い た 。 社 会 の情 報 化 が 進 展 す る に つ れ メ モ リや デ ィ ス ク 資 源 等 の 大 容 量 化 やCPUの 高 速 化 等 が 進 み 、 構 築 か ら数 年 を経 た サ ー バ と端 末 で の リ ソー ス不 足 の 度 合 い が 顕 著 に な っ て い た 。 ●ダ イ ヤ ル ア ップ 回 線 の 利 用 者 数 が年 々 減 少 して い た 。 これ は 、 ネ ッ トワ ー ク環 境 の 大 衆 化 に よ っ てADSL回 線 等 を 利 用 した イ ン ター ネ ッ トへ の 常 時 接 続 形 態 が 普 及 し、 ダ イ ヤ ル ア ップ に よ る接 続 が廃 れ て い っ た こ と に よ る 。 しか し当時 は 学 内 の リソ ー ス に学 外 か らア ク セ スす る に は ダ イ ヤ ル ア ップ 回線 以 外 に手 段 が な く、 学 外 か らメ ー ル 確 認 や レポ ー ト提 出等 を 行 う こ とは 困 難 で あ つ た 。 これ らの 問 題 を 克 服 す る と と もに サ ー バ や ネ ッ トワー クの 運 用 管 理 作 業 を効 率 よ くす る こ とを 目指 し、2006年 度 に サ ー バ 群 を更 新 し た(宮 下 ・水 野,2005)。 コ ン ピ ュ ー タ教 室 の 端 末OSは 、 全 学 共 通 情 報 教 育 お よ び専 門 教 育 と して の 情 報 教 育 の 両 方 の 実 施 に 支 障 の な い よ う 、 従 来 の Windows NTか らWindows XPへ 変 更 した 。 Windows NTで も教 育 上 の 大 き な 問 題 は 生 じて い なか つ た が 、 メー カ に よ るOSサ ポ ー ト終 了 が 迫 っ て い る と い う背 景 と、 大 多 数 の 学 生 が 自宅 で 使 っ て い る で あ ろ うOSと 同 様 の もの を大 学 に 用 意 す る こ とで 利 便 性 を 高 め る とい う 目的 で 変 更 した もの で あ る 。 ま た 、 Macに つ い て もハ ー ドウ ェ ア を 更 新(iMac DVか らPowerMac G 5へ)す る と と も に 、 OSをMacOS 9か らMac OS X 10.4(Tiger) へ 更 新 して 当時 の 一 般 的 な 環 境 を構 築 した 。 こ の 更 新 計 画 の 途 中か ら全 学 共 通 情 報 教 育 はWindows上 で の み 実 施 す る こ と と な り、 Macは 専 門 教 育 と して の 情 報 教 育 で 利 用 さ れ る こ と に な っ た 。 こ の こ と に よ りMac教 室 の授 業 で の 占有 時 間 が 減 少 し、 自習 利 用 の た め に 開 放 で き る 時 間 が 大 幅 に増 加 した 。 そ の他 、 第2期 情 報 シ ス テ ム の 特 徴 の う ち 全 学 共 通 情 報 教 育 と関 連 の 深 い もの を以 下 に 示 す: ●Webメ ー ル サ ー ビ スやVPNサ ー ビス 等 、 ダ イ ヤ ル ア ップ 回 線 に よ らず 学 外 か ら学 内 リ ソー ス ヘ ア ク セ スす る 簡 便 なユ ー ザ サ ー ビス を充 実 させ た。
京都 女子 大学 の情 報環境 と全学 共通情 報教 育 に関 す る一考 察 67 ●認 証 シ ス テ ム を 一 元 化 す る こ と で 、 ユ ー ザ 名 と パ ス ワ ー ドを 各 ユ ー ザ ご と に1組 だ け と し た 。 ●1ユ ー ザ あ た りの ホ ー ム デ ィ レ ク ト リ容 量 を 旧 環 境 の10倍(500MB)と し た 。 2007年 度 に は ネ ッ トワ ー ク機 器 を 更 新 した (宮 下,2007)。 こ の 更 新 に よ りKWIINSは 基 幹 経 路 を 中 心 に2倍 程 度 に高 速 化 され た。 これ は 、 全 学 共 通 情 報 教 育 を中 心 に 利 用 が 始 ま っ て い たe-learningや 授 業 収 録 動 画 の 配 信 等 を ス トレス な く実 現 す る こ と を 目指 し た も の で あ る 。 ま た 、 そ れ ま で は 各 自が 持 参 した 端 末(ノ ー トPCや 携 帯 情 報 端 末 等)を KWIINSへ 接 続 す る 際 にMACア ドレ ス を事 前 登 録 して お くこ とが 必 要 だ っ た が 、 この 更 新 に よ り接 続 の 都 度 ユ ー ザ 認 証 を行 う方 式 に 変 更 した 。 これ は 上 記 の よ う な端 末 が 普 及 し て き た こ と を背 景 に 、 よ り安 全 な情 報 環 境 を 提 供 す る こ と を意 図 して い た 。 4 後 期(2008年 度 以 降) お お よ そ1995年 以 降 、 一 般 社 会 で は イ ン タ ー ネ ッ ト接 続 の 劇 的 な 大 衆 化 に 加 え て ソ フ トウ ェ ア 環 境 の 変 化 が 著 し か っ た 。 特 に 広 く 普 及 し たWindows、 Mac OS、 Officeス イ ー ト(MS OfficeとOpenOffice.org)の 変 遷 が 大 学 教 育 へ 与 え た 影 響 は 無 視 で き な か っ た 。 例 え ば 保 護 者 会 の よ う な 大 学 教 育 説 明 の 機 会 に は 、2000年 当 初 、Mac OSを 情 報 リ テ ラ シ ー 教 育 に 使 う こ と に 反 対 の 声 が 聞 か れ た が 、 そ の 数 年 後 か ら そ の 声 は 小 さ く な つ て い る 。 こ の よ う な社 会 状 況 の 中 で 大 学 教 育 の 理 念 を 明 確 に しつ つ 、 そ れ に 相 応 しい シ ス テ ム を 導 入 す る こ と は必 須 の 課 題 と な っ た 。 4.1 情 報 教 育 内 容 ・方 法 の 改 善 2008年 度 に は2回 目の 大 きな カ リキ ュ ラ ム 変 更 を実 施 した。 大 きな 変 更 点 と して 、 教 育 方 法 に プ ロ ジ ェ ク ト型 の 課 題 研 究(PBL)を 取 り入 れ た こ と が 挙 げ ら れ る(表1の3行 目)。 これ は ア カ デ ミ ッ ク ス キ ル 教 育 を 目 的 と した もの で 、 具 体 的 に は 各 種 デ ー タ検 索 と そ れ に よる 情 報 学 的 な リテ ラ シー 、 共 同 研 究 (グ ル ー プ ワー ク)等 の 基 礎 力 や プ ロ ジ ェ ク ト管 理 の 基 礎 知 識 、 レポ ー ト ・論 文 作 成 と プ レゼ ンテ ー シ ョ ン等 の 知 的 生 産 の ス キ ル教 育 を主 な テ ー マ と して い る 。 こ れ は情 報 教 育 を 利 用 ス キ ル 、 コ ンセ プ ト(原 理 、 仕 組 み)、 ケ ー パ ビ リ テ ィ(知 的 生 産 技 術)教 育 の3種 類 に 分 類(田 中,2005;Computer Science and Telecommunications Board,1999)し 、 そ れ らす べ て を必 修 科 目 と して 初 年 次 に教 育 す べ き と情 報 教 育 委 員 会 で 判 断 した た め で あ る。 そ の た め 、1回 生 前 期 で ス キ ル と コ ン セ プ ト を学 び 、 後 期 で ケ ー パ ビ リテ ィ を 身 に付 け る とい う科 目構 成 に な っ て い る 。 授 業 方 法 の 改 善 と して 、 以 下 の4点 が 挙 げ られ る 。 ●前 述 の よ う に 、2回 生 以 上 の 学 生 に よ る 授 業 支 援 ス タ ッ フ(SS)を 養 成 、 配 置 して い る こ と に 加 え 、 業 者 にTA業 務 を委 託 し、 学 生 のSSと 社 会 人 のTAの
1名 ず つ ペ ア で1つ の授 業 を支 援 す る体 制 を整 え た。 これ は授 業 支 援 体 制 の 質 を 向 上 す る こ と を 目指 して 導 入 した。 ●情 報 リテ ラ シー 基 礎 お よび 応 用 は 主 に 非 常 勤 講 師 が担 当 して い た が 、 ク ラ ス ご と の 学 習 内容 と進 度 を統 一 し、 学 習 達 成 度 を改 善 す るた め 業 者 に 委 託 した。 これ は 大 学 教 員 よ りも情 報 リテ ラ シ ー教 育 を担 当 す る に相 応 しい教 育 ス キ ル を 身 に 付 け た 人 に現 場 で の 授 業 運 営 を担 当 させ 、 ま たそ れ らの 担 当者 の 授 業 内容 や 進 度 の 監 督 も一 括 して 業 務 委 託 す る こ とで 、 学 習 効 果 を 高 め る ね らい で あ る3>。た だ し、 教 育 内 容 と結 果 の 評 価 、 単 位 認 定 につ い て は専 任 教 員 が 行 い 、 情 報 教 育 委 員 会 で 確 認 して い る。 ●授 業 の様 子 を ビ デ オ カ メ ラ で収 録 し、 ス ラ イ ド等 と合 わせ て コ ンテ ン ツ化 して 提 供 す る よ う に した 。 授 業 ア ンケ ー トの 結 果 か らは 、 全 体 の1割 程 度 の学 生 が 自主 的 に予 習 復 習 や 欠 席 し た授 業 の 補 習 に利 用 して お り、 そ の う ち の 約 半 数 が 「役 立 っ た 」 と答 え て い る。 ま た教 員 が 授 業 改 善 の た め に利 用 す る こ と も期 待 して い る。 ●個 人 差 の 大 きな 分 野 に つ い て はe-learning コ ンテ ン ツ を導 入 して 自習 を促 し、 そ れ を 成 績 評 価 の 一 部 と して い る 。 こ れ は 個 々 の 受 講 生 の学 習 達 成 度 の ば らつ き を 小 さ く し、 さ らに 全 体 を底 上 げ す るた め で あ る。
また 、MS Word、 MS Exce1な どOffice ス イ ー トの 基 礎 的 ス キ ル は 情 報 リ テ ラ シ ー教 育 の 内容 に 取 り入 れ 続 け る こ と と した 。 こ れ は ま だ 一 部 の 学 科 で 情 報 教 育 を実 施 して い た 頃 か ら続 い て い る 。高 校 で の普 通 教 科 「情 報 」 の必 修 化 に よ つ て 不 要 とな る可 能 性 もあ っ た が 、 高 校 時 代 に教 科 「情 報 」 を履 修 して い な い学 生 が 相 当程 度 存 在 す る こ と(尾 池 佳 子 他, 2006;CIEC小 中 高 部 会,2007;2008;大 橋 真 也 他,2009)と コ ン ピ ュー タ利 用 経 験 の 個 人 差 が 大 きい こ と に よ り、 入 学 時 点 で の 基 礎 的 ス キ ル の 個 人 差 が 年 々 拡 大 して い る た め 継 続 す る こ と と した 。 さ ら に、 こ れ らの 基 礎 的 ス キ ル は 学 生 に と っ て 「で き る 」 つ も りの も の で あ り、 大 学 で 学 ぶ 意 欲 を持 て な い 場 合 が 多 い(尾 池 佳 子 他,2006;CIEC小 中 高 部 会, 2007;2008;大 橋 真 也 他,2009)。 しか し情 報 教 育 委 員 会 で は 、 だ か ら こ そ こ れ らの基 礎 的 ス キ ル を初 年 次 に教 育 す る 内 容 とす べ きで あ る との 結 論 に 至 っ て い る。1年 次 に こ の よ うな 基 礎 的 ス キ ルへ の 関 心 を持 た せ る こ とで 、 2回 生 以 降 でOfficeス イ ー トの 応 用 ス キ ル を 学 ぶ 科 目を履 修 す る 学 生 が 多 くな っ て い る。 4.2 高 校 普 通 教 科 「情 報 」 の 履 修 状 況分 析 本 節 で は、 前 節 の 判 断 をす る 上 で 参 照 した 高校 普 通 教 科 「情 報 」 の 履 修 状 況 に つ い て 、 そ の 概 要 を紹 介 す る 。 こ の 調 査 は 上 記CIEC (コ ン ピ ュ ー タ利 用 教 育 協 議 会)の 小 中 高 部 会 に よ る も の で あ る(尾 池 佳 子 他,2006; CIEC小 中 高 部 会,2007;2008;大 橋 真 也 他, 2009)。
京 都 女子 大学 の情 報環 境 と全学 共通情 報教 育 に 関す る一 考察 69 調 査 の サ ン プ ル 数 は2007年 度 で45大 学 、 9634人 、2008年 度 は27大 学 、3795人 な ど比 較 的 大 規 模 な調 査 結 果 で あ る。 な お 高 校 で 教 科 情 報 を 選 択 必 修 で 学 ん だ 生 徒 の 大 学 入 学 の 初 年 度 は2006年 度 で あ る。 こ こ で は そ の 翌 年 か ら3年 間 の デ ー タ を分 析 し た。 な お 京 都 女 子 大 学 並 び に京 都 女 子 大 学 短 期 大 学 部 の 新 入 学 生 もそ の 回 答 の 一 部 に寄 与 して い る。 まず 高 校 に お け る教 科 「情 報 」 の 履 修 年 度 は 高 校1年 生 段 階 が 最 も多 い 。 そ の 割 合 は 2007、2008、2009年 度 そ れ ぞ れ43%、46%、 56%で あ り漸 増 傾 向 に あ る。 そ の 後 の 大 学 入 学 生 で は 半 数 以 上 が 高 校1年 生 に 履 修 した と 推 測 され る。 こ れ は 大 学 入 学 段 階 で 高 校 で の 履 修 内 容 を ほ ぼ 完 全 に忘 れ て い る(受 験 科 目 に な い こ と も影 響 す る)こ とを 意 味 す る と思 わ れ る 。 ま た何 年 生 に履 修 した か 「分 か らな い」 選 択 肢 と 「未 履 修 」 の 合 計 は 、 ど の 年 度 も約11%と な っ て い る 。 こ の結 果 は2006年 度 高 校3年 生 段 階 で 発 覚 し全 国 的 に 問 題 に な っ た(日 本 史 ・世 界 史 の)未 履 修 問 題 と は 異 な り、 マ ス メ デ ィア で 注 目 さ れ て い な い。 しか し大 学 にお け る 情 報 教 育 の カ リキ ュ ラ ム 設 計 に お い て は 、 無 視 で き ない 結 果 で あ る と言 わ ざ る を得 な い 。 す な わ ち半 数 以 上 の 学 生 は 、 大 学 入 学 後 に 改 め て情 報 活 用 に つ い て学 ぶ と 考 え る必 要 が あ る。 次 に履 修 科 目名 の推 移 も 見 て お き た い 。 科 目名 と は 、 高 校 にお い て 教 科 「情 報 」A、B、 Cと3種 類 あ り、 そ れ ぞ れ1科 目以 上 の 選 択 必 修 で あ る。 内 容 は そ れ ぞ れ 「情 報A」 は 一 般 的 な コ ン ピュ ー タ と ネ ッ トワー ク情 報 活 用 が 中 心 の 内 容 、 「情 報B」 は ア ル ゴ リ ズ ム ・ プ ロ グ ラ ミ ン グ を 含 む 理 系 風 の 情 報 学 、 「情 報C」 は メ デ ィ ア社 会 論 を 含 む文 系 風 の 情 報 学 に 近 い 内容 で あ る 。 履 修 科 目 の 割 合 は 情 報 Aが 最 も多 く、2007、2008、2009年 度 そ れ ぞ れ49%、58%、47%で あ る 。次 に多 い の は 「分 か らな い 」 とい う選 択 肢 で あ り、 そ の割 合 は そ れ ぞ れ22%、26%、35%と い っ た 風 に 高 率 で あ る。 こ の 原 因 は 、 本 当 に覚 え て い な い と い う正 直 な もの が 多 い と思 わ れ る 。 しか しこ の結 果 か ら、 科 目 に 対 して 関 心 が 比 較 的 低 い こ と も看 取 で き る。 す な わ ち情 報 処 理 や 情 報 倫 理 の 重 要 性 の 理 解 か らは ほ ど遠 い 結 果 か も しれ ない(ど の 科 目 も 関心 が 低 い 可 能 性 も あ る 〉。 他 方 で 携 帯 電 話 の 所 持 は 高 校 生 は ほ ぼ 100%で あ ろ う し、使 用 も 日常 的 に な っ て い る 。 また 自宅 の情 報 環 境 も2000年 に 入 っ て 劇 的 に 改 善 した結 果 、 自宅 で の ネ ッ ト利 用 経 験 の 若 年 化 も 当然 予 測 さ れ る。 そ こ で 図2に は 、 大 学 入 学 段 階 で の コ ン ピ ュー タ とイ ン ター ネ ッ トの 利 用 経 験 年 数 を 聞 い た 結 果 を 示 す 。 こ の 図 か ら次 の こ とが わ か る。 1.2007∼2009年 度 新 入 生 の どの 学 年 で も、 小 学 生 か ら の コ ン ピ ュ ー タ と イ ン タ ー ネ ッ ト利 用 経 験 者 が 最 も多 い 。 2.2007∼2009年 度 と年 度 が 進 む に 従 い小 学 生 か らの 利 用 経 験 の 割 合 が ま す ます 増 加 して い る。 3.約15%の 学 生 は 高 校3年 で 初 め て(恐 ら く受 験 の た め)使 い 始 め 、 約5∼10% 程 度 は 大 学 入 学 後 に 初 め て 使 い 始 め る 。
2007年 新 入 生 2008年 新 入 生 2009年 新 入 生 経験 な し(大 学 か ら) 1年 未 満(高3か ら) 2年(高2か ら) 3年(高1か ら) 4年(中3か ら) 5年(中2か ら) 6年 未 満(中1) 6年 以 上(小 学 校 か ら) コ ン ピ ュ ー タ利 用 イ ン タ ー ネ ッ ト利 用 図2 コ ン ピ ュ ー タ と イ ン タ ー ネ ッ トの 利 用 経 験 年 数(CIEC調 査 結 果 か ら著 者 作 成) 4.利 用 経 験 が0年 か ら6年 まで 見 事 に フ ラ ッ トに(ほ ぼ 一 様 に)分 布 して い る。 こ の 結 果 か ら、 大 学 で の 情 報 教 育 にお い て は、 学 生 の コ ン ピ ュ ー タ と イ ン ター ネ ッ ト利 用 経 験 に お い て 驚 くほ どの 多 様 性 が あ る こ と に留 意 す る 必 要 が あ る こ とが わ か る。 図3は 高校 段 階 で 履 修 した は ず の 内 容 の 如 何 を聞 い た 結 果 で あ る 。 た だ し この 図3で は 2007年 度 を基 準 と して 、2008年 度 と の 比 、 2009年 度 との 比 を 、 そ れ ぞ れ プ ロ ッ トした 。 ワー プロ ソ フ トの 操作 表 計 算 ソ フ トの 操作 プ レゼ ンテ ー シ ョンの 技法 電 子 メー ルの マ ナー とモ ラル Web検 索 タッチ タイ ピング プロ グ ラ ミング PCや ネ ッ トの仕 組み モ デル化 とシ ミュ レー シ ョン デー タベ ース 画 像処 理 とマル チメデ ィア ホ ーム ペー ジの 作成 著 作権 個 人情 報 保護 や プ ライバ シー 情 報 社会 の 利点 と問 題点 メデ ィア リテ ラシ ー 情 報 関連 資格 取得 比2008/2007;高 校 まで に学 習 した 比2009/2007:高 校 まで に学 習 した 図3 大 学 新 入 生 の 高 校 ま で の 「情 報 」 履 修 内 容 の 比 (2008年/2007年,2009年/2007年)(ClEC調 査 結 果 か ら著 者 作 成)
京 都 女 子大学 の情 報環 境 と全学 共通情 報教 育 に 関す る一 考察 71 この 結 果 か ら次 の こ とが わ か る。3つ の 例 外 (「プ ロ グ ラ ミ ン グ 」 と 「モ デ ル 化 と シ ミュ レー シ ョ ン」 と 「資 格 」)を 除 い て 、 これ ら の 比 は 、 残 り14項 目で ほ ぼ 一 定 で あ り値 は1 に近 い こ と、 す な わ ち 入 学 年 度 に よ り履 修 内 容 が 余 り変 わ らな い こ とが わ か る 。 履 修 内 容 分 布 に つ い て は 、3年 間 に ま た が り、 大 部 分 異 な る サ ン プ ル で あ る。 よ っ て履 修 内 容 の 年 度 比 較 に も、 一 定 の 意 味 が あ る こ とが 示 唆 さ れ る。 図4は 、 高 校 時 代 に これ らの 項 目 を履 修 し た結 果 、 自分 が 理 解 し活 用 で きる と(大 学 入 学 時 点 で)思 っ て い る か ど うか 、 自 己 認 識 を 聞 い た 結 果 で あ る。 この 図4で も2007年 度 を 基 準 と し て 、2008年 度 と の 比 、2009年 度 との 比 を 、 そ れ ぞ れ プ ロ ッ トした 。 この 結 果 か ら 2007年 に比 べ 、2008年 は理 解 度 が 全 項 目 にお い て10%∼50%も 減 少 して い る こ と 、2009 年 度 は こ れ が さ らに10%∼20%程 度 も低 下 し て い る こ とが わ か る 。 こ れ は驚 くべ き結 果 で あ る 。 図5は 、 一 定 の 内 容 を 履 修 し、 あ ま り使 え な い と い う 自己 認 識 の 状 況 下 で 、 大 学 で さ ら に 学 び た い か ど うか を 聞 い た 結 果 で あ る。 こ の 図5で も2007年 度 を基 準 と して 、2008年 度 との 比 、2009年 度 との 比 を、 そ れ ぞ れ プ ロ ッ ワー プ ロソ フ トの操 作 表 計算 ソ フ トの操 作 プ レゼ ンテ ーシ ョンの技 法 電 子 メール の マナ ー とモ ラル Web検 索 タッチ タイ ピ ング プロ グ ラ ミング PCや ネ ッ トの仕組 み モデ ル化 とシ ミュ レー シ ョン デー タペ ース 画 像処 理 とマ ル チメデ ィア ホ ー ムペ ー ジの 作成 著 作権 個 人情 報保 護 や プ ライバ シ ー 情 報社 会 の利 点 と問 題 点 メデ ィア リテ ラ シー 情 報関 連 資格 取得 比2008/2007:現 在 、 自分 が 理 解 、 活 用 で き る 比2009/2007:現 在 、 自分 が 理 解 、 活 用 で き る 図4 高 校 「情 報 」 履 修 内 容 の う ち 大 学 新 入 生 段 階 で 理 解 し活 用 で き る 内 容 の 比 (2008年/2007年,2009年/2007年)(ClEC調 査 結 果 か ら著 者 作 成)
ワー プロ ソ フ トの 操作 表 計 算 ソ フ トの 操作 プレゼ ン テー シ ョンの 技法 ・ 電 子 メール の マナ ー とモ ラル Web検 索 タ ッチ タイ ピング プ ロ グラ ミ ング PCや ネ ッ トの 仕組 み モ デル化 とシ ミュ レーシ ョン デー タベ ース 画像 処理 とマル チメデ ィア ホー ムペー ジ の作成 著作権 個 人情 報保 護や プ ライバ シー 情 報社 会 の利 点 と問題 点 メディア リテ ラシー 情 報関 連資 格取 得 比2008/2007:今 後 大 学 で さ らに学 び た い 比2009/2007:今 後 大学 で さ らに学 びた い 図5 高 校 ま で の 「情 報 」 履 修 内 容 の う ち,大 学 で さ ら に 学 び た い 内 容 の 比 (2008年/2007年,2009年/2007年)(CIEC調 査 結 果 か ら著 者 作 成) トした。 こ の 結 果 か ら次 の こ とが わ か る。 す な わ ち 、 あ る 程 度 は学 び 、 結 果 的 に は あ ま り 使 え な い との 自 己認 識 に もか か わ らず 、 大 学 で 学 ぶ 意 欲 は 、2007年 度 に比 較 して2008年 度 は20%ほ ど減 少 し、2009年 度 は そ の 減 少 が さ ら に5%∼10%程 度 も継 続 して 減 少 して い る こ とで あ る 。 これ も驚 くべ き結 果 で あ る と考 え ざる を得 な い。 この 状 況 の 理 解 、 す な わ ち 学 ぶ 意 欲 の 喚 起 必 要 性 は実 際 に 、 授 業 支 援 の 学 生 ス タ ッ フ で あ るSSを 見 て い て も感 じ ら れ る 。 す な わ ち 本 学 で 例 え ばSS採 用 試 験 に 一 般 のP検 定(パ ソ コ ン検 定)の 問 題 を課 して も、 驚 くほ ど正 解 で きな い と い う結 果 が 得 ら れ て い る 。 情 報 教 育 委 員 会 で は 、 こ の よ う な 分 析 結 果 を参 照 しつ つ 学 生 の 情 報 活 用 の 現 状 と学 部 で の 情 報 教 育 ニ ー ズ 、 ま た今 後 の 情 報 教 育 の 方 向 性 等 に つ い て 継 続 的 に議 論 を行 つ て き た。 す な わ ち 高 校 か ら大 学 入 学 時 点 で の 入 り口段 階 で の状 況 の 傾 向 を把 握 し、 ま た卒 業 後 に広 が り続 け る 情 報 社 会 へ の適 切 な橋 渡 し と して 、 情 報 教 育 を大 学 に お い て 引 き続 き重 視 す る こ とが 適 切 で あ る と判 断 した 。
京 都女 子 大学 の情 報環境 と全学 共通情 報教 育 に関 す る一 考察 73 4.3 情 報 環 境 の 改 善 全 学 共 通 情 報 教 育 で は コ ン ピュ ー タ操 作 法 を 身 に 付 け る観 点 か ら、 コ ン ピ ュー タ教 室 の ハ ー ドウ ェ ア ・ソ フ トウ ェ ア は そ の 時 点 で 最 も 普 及 して い る もの に揃 え る よ う努 力 して き た。 た だ しハ ー ドウ ェ ア の 更 新 は最 短 で も5 年 間 隔 で な け れ ば な らず 、 予 算 も 限 られ て い る の で 一 度 に す べ て の コ ン ピュ ー タを 更 新 す る こ と は不 可 能 で あ り、 そ れ らの 制 限 下 で 最 善 に 努 力 す る 必 要 が あ っ た。 そ の た め 、 例 え ば バ ー ジ ョ ン番 号 が1だ け異 な る こ と(例: Windows 2000とWindows XP)は 止 む を得 な い と して もそ れ 以 上 の 差 異 は で きる だ け 避 け られ る よ う更 新 を 計 画 して き た。 2010年 度 に は半 数 の コ ン ピ ュ ー タ教 室 で 機 器 更 新 が 行 わ れ 、 社 会 変 化 に 取 り残 され て い た ハ ー ドウ ェ ア を最 新 の もの に変 更 した 。 2011年 度 に は4.4節 で 述 べ る よ う な教 育 内 容 を実 現 す る た め にWindowsの 更 新 を実 施 し た 。 具 体 的 に はWindows XPを Windows 7に 改 め る こ とで 、 学 生 の 多 くが 慣 れ 親 しん で い る で あ ろ うOSと の バ ー ジ ョ ン番 号 の 大 き な差 異 を解 消 した 。 こ れ は 、 全 学 共 通 情 報 教 育 を含 む 情 報 教 育 の そ れ ぞ れ の 科 目 で 利 用 し て い る ア プ リ ケ ー シ ョ ン が Windows 7上 で 問 題 な く動 作 す る こ と を確 認 した 後 に 実 施 さ れ た 。 さ らに 、2011年 度 半 ば に はMac教 室 の 設 備 を 更新 した 。 これ はハ ー ドウ ェ ア をPowerPC ア ー キ テ ク チ ャ(2006年 に 生 産 終 了)か ら Intelア ー キ テ ク チ ャ に 更 新 し 、 OSも10.4 (Tiger)か ら10.6(Snow Leopard)に 更 新
した 。 こ れ も上 記 と同 様 、 社 会 変 化 に取 り残 さ れ た ハ ー ドウ ェ ア ・ソ フ トウ ェ ア の 更 新 が 目的 で あ り、Macを 利 用 して い る 情 報 教 育 科 目担 当者 か ら の 更 新 要 求 を受 け て実 施 さ れ た 。 以 上 の 更 新 に よ り、 全 学 共 通 情 報 教 育 を 含 む 情 報 教 育 にお い て 利 用 す る コ ン ピ ュー タや ソ フ トウ ェ アの 操 作 方 法 等 が 社 会 に 普 及 して い る もの と一 致 し、 学 生 が ス ト レス な く教 育 を受 け る 環 境 を 整 え る こ と が で きた 。 ま た 、2010年 度 末 に は 無 線LANの 整 備 を 実 施 した 。 今 ま で ご く小 規 模 に しか 敷 設 して い な か っ た 無 線LANを3つ の 校 舎 に 拡 大 し、 ス マ ー トフ ォ ンや タ ブ レ ッ ト端 末 等 、 無 線 で しか ネ ッ トワ ー ク接 続 で き な い 機 器 へ の 対 応 を強 化 した 。 こ れ も社 会 に お い て 普 及 して い る機 器 へ の 対 応 を 実 現 し た もの で あ る。 4.4 将 来 の 情 報 教 育 に 向 け て 本 学 で は 、2011年 で 短 期 大 学 部 を 廃 止 し、 法 学 部 を 新 設 、 また 現 代 社 会 学 部 現 代 社 会 学 科 に情 報 課 程 を 創 設 した 。 併 せ て 、 こ のll年 間 で3度 目の 全 学 情 報 教 育 カ リ キ ュ ラ ム 改 革 を行 っ た(表1最 下 行)。 こ の 際 、 教 務 委 員 会 に て全 学 的 な カ リ キ ュ ラ ム 構 造 の 見 直 しが 行 わ れ 、 全 学 の1回 生 が 以 下 の4科 目 を 初 年 度 に学 ぶ べ き で あ る と決 定 され た 。 1.基 礎 演 習1:大 学 で の 学 び 方 入 門 2.基 礎 演 習ll:所 属 学 科 で 扱 う学 問 分 野 入 門 3.情 報 リテ ラ シ ー 基 礎:情 報 リ テ ラ シー
4.情 報 リテ ラ シ ー応 用 ア カ デ ミッ ク ス キ ル 情 報 教 育 委 員 会 で は こ れ を受 け て情 報 リテ ラ シ ー 基 礎(1回 生 前 期)お よ び 情 報 リ テ ラ シー 応 用(1回 生 後 期)の 開 講 形 態 と授 業 内 容 につ い て議 論 し、 以 下 の よ う な結 論 を得 た (表1の4行 目)。 情 報 リテ ラ シー 基 礎 は 全 学 必 修 科 目の ま ま とす る こ とが確 認 さ れ た 。 科 目内容 は本 学 の 情 報 環 境 の説 明 に加 え 、 学 習 目標 と して 、 コ ン ピ ュ ー タ、 ア プ リケ ー シ ョ ン、 ネ ッ トワ ー クの 利 用 法 の 習 得 に徹 す る こ と と した 。 こ こ で 学 習 意欲 を向 上 させ る た め にパ ソ コ ン検 定 (P検)4級 水 準 ク リア を 掲 げ る こ と と し た。 こ れ は 学 生 に と つ て 学 ぶ 目的 と 目標 を可 視 化 す る こ との 効 果 を重 視 した結 果 で あ る。 さ ら に、Of丘ceス イ ー トと してMS Officeで は な くOpenOffice.orgを 採 用 す る こ と と し た。 こ れ は 、 今 後 の 社 会 で 必 要 と され る パ ソ コ ン ・ア プ リ ケ ー シ ョン ・ネ ッ トワ ー ク の リテ ラ シー と は、 結 局 ア プ リケ ー シ ョ ンの持 つ 本 来 的 な機 能 に 自覚 的 か つ 意 識 的 に な る こ とで あ り、 そ れ を 意 識 させ る教 育 が リテ ラ シー 育 成 の 早 道 で あ る とい う、 情 報 教 育 委 員 会 で の 結 論 を 元 に し て い る 。 授 業 で は こ れ ら の Office系 ア プ リ ケ ー シ ョ ンの 差 異 を利 用 して 、 学 生 が 普 段 は 気 付 き難 い 部 分(例 えば フ ァイ ル の拡 張 子 や メニ ュ ー 項 目 の配 置 の 考 え方 な ど)の 説 明 を行 っ て い る。 た だ し、 一 般 的 な 情 報 環 境(学 生 の 自宅 等)と の 互換 性 を考 慮 して 、MS Office 2010も 利 用 で き る よ う に し て い る。 ま た 、USBメ モ リ にOpenOffice. orgを イ ンス トー ル して 携 帯 す る こ と を情 報 リテ ラ シー 基 礎 の 中 で 推 奨 し、 自宅 等 のPC にOpenOffice.orgを イ ン ス トー ル す る こ と な く利 用 で きる よ う に して い る 。 情 報 リ テ ラ シー 応 用 は 各 学 科 で 必 修 か 選 択 か を選 べ る よ う に した%そ の 結 果 、 従 来 通 り必 修 とす る こ と を希 望 した学 科 は学 生 数 で 約3割 と な り、 残 りの7割 は選 択 科 目 とす る こ と に な っ た 。 学 生 の 選 択 結 果 は 、 こ の7割 の 約 半 数 が 履 修 を選 択 した とい う結 果 で あ っ た 。 つ ま り、 全 学 の約6割 の学 生 が こ の 科 目 を履 修 す る こ と と な っ た 。 2回 生 以 降 の 選 択 科 目 は、 プ ロ グ ラ ミ ン グ 、 セ キ ュ リテ ィ、 情 報 倫 理 の3科 目 を組 み 換 え る こ と で 、ITパ ス ポ ー ト試 験 に お け る3分 野(テ ク ノ ロ ジ ー系 、 ス トラテ ジ ー系 、 マ ネ ジ メ ン ト系)に 対 応 し た科 目 に よ っ て 構 成 す る予 定 で あ る(2012年 度 実 施 予 定)。 こ れ は 、 情 報 リテ ラ シー 基 礎 と 同様 、 広 く知 られ て い る 資格 に よ って 学 習 目標 を 明 確 化 す る こ とで 学 生 の学 習 意 欲 が 高 ま る効 果 を期 待 して い る 。 そ の 他 に も、MS WordとMS Excelの 科 目 をP検3級 ∼ 準2級 合 格 を 目指 す 内 容 に 変 更 す る こ と や 、MS Accessの 科 目 を デ ー タ ベ ー ス 系 の 資格 を 目指 す もの に 変 更 す る こ と、 Webと デ ー タ ベ ー ス との 連 携 の 仕 組 み を 理 解 す る実 習 を 追 加 す る こ と等 を予 定 して い る。 4.5 現代 社会学部 情報課程 現代社会学 部で は、従 来か ら全学共通情 報 教育 とは別 に専 門的 な情 報教育 を実施 してい
京都 女子 大学 の情 報環 境 と全学 共通 情報 教育 に関す る一 考 察 75 る 。2008年 度 か ら採 用 さ れ た ダ ブ ル ク ラ ス ター 制 で は、 マ ネ ジ メ ン トや 公 共 政 策 、情 報 、 地 球 環 境 とい っ た テ ー マ で 分 類 した 科 目群 (ク ラ ス ター)か ら学 生 が 任 意 の2つ を組 み 合 わせ て 履 修 す る こ とで 、 現 代 社 会 に対 す る 複 眼 的 視 座 を養 成 す る こ と を 目的 と して い る。 情 報 ク ラス ター に は 、 ネ ッ トワー ク や プ ロ グ ラ ミ ン グ を 中心 に した 情 報 科 目が 含 ま れ て い る。 2011年 度 か ら は情 報 ク ラ ス ター の 科 目群 や ク ラ ス ター に 関 わ りな く履 修 で き る基 礎 科 目 と して の 情 報 科 目 を再 構 成 し、 さ らに情 報 課 程 を新 設 して専 門 性 を 高 め る こ と と した 。 こ れ は イ ン ター ネ ッ トの 原 理 や 仕 組 み を 実 習 に よつ て 理 解 す る ネ ッ トワー ク科 目、 プ ロ グ ラ ミ ン グ言 語Rubyに よ る プ ロ グ ラ ミ ン グ科 目、 情 報 学 お よび 数 学 に よ る 理 論 科 目、 情 報 倫 理 、 プ ロ ジ ェ ク ト管 理 な どそ の 他 の 科 目か ら な る カ リキ ュ ラム で あ る 。 情 報 課 程 を選 ん だ学 生 が 履 修 で き る 情 報 科 目の 相 関 を 図6に 示 す (横軸 は セ メ ス ター)。 情 報 課 程 の 教 育 が 目指 す の は 「企 業 等 に お け る情 報 基 盤 の 理 解 に必 要 な 知 識 を 学 び 、 社 会 認 識 を深 め 、 ス キ ル を 身 に つ け る こ と」 で あ る。 前 述 の よ うに 、 今 や 情 報 通 信 技 術 は 生 活 や 産 業 に 幅 広 く必 要 不 可 欠 と さ れ る基 盤 と な っ て い る 。 情 報 基 盤 の構 築 や 維 持 管 理 に は よ り専 門 的 な 情 報 工 学 教 育 が 必 要 と され る が 、 情報学基礎1 数学入門 情報学基礎II 基礎数学1 アル ゴリズム とデー タ構造 コ ンピ ュー タ ・ ネ ッ トワー ク1 基礎数学ll コ ンピ ュー タ ・ ネ ッ トワークil 統計学 プ ロ グ ラ ミン ゜ グ演 習i Webア プ リ ケー シ ョン 情報数学 社会情報学 情報論 情報文明論 数理 モデル 情報セ キュリ テ ィ ス U ー ベ 習 タ 演 嶺 デ デ ー タベ ー ス 演 習II 知的財産権論 メディア文化 論 1 2 演習置 プ ロ グ ラ ミン グ演 習II
捗鞍
演 習II 応 用 ネ ッ ト ワ ー ク プロジェク ト 管理 演 習III ネ ッ トワー ク 運用 情 報技 術者の 社会 的責任 演習IV 6 演 習V,VI 7,8 図6 情報 課程 の カ リキ ュ ラムそ れ を発 注 し利 用 す る ユ ー ザ 側 に も情 報 通 信 技 術 に対 す る深 い理 解 が 求 め られ て い る。 そ の 両 者 の ス ム ー ズ な協 力 ・連 携 が 情 報 基 盤 を 活 用 した 業 務 の 成 功 の 鍵 を握 つ て い る とい え る。情 報 課 程 で は 、ダ ブ ル ク ラ ス ター 制 に よ っ て 現 代 社 会 を構 成 す る 他 の 領 域(マ ネ ジ メ ン トや 地 球 環 境 、 コ ミュ ニ テ ィな ど)と 情 報 ク ラ ス ター を理 解 す る と と もに 、 情 報 通 信 技 術 につ い て の 深 い理 解 を有 す る 人 材 を社 会 へ 輩 出す る こ と を 目的 と して い る。 情 報 課 程 の カ リキ ュ ラ ム 策 定 にあ た っ て は 、 情 報 処 理 学 会 の情 報 専 門学 科 カ リ キ ュ ラ ム標 準(JO7)中 に あ る イ ン フ オ メ ー シ ョ ン テ ク ノ ロ ジ領 域(駒 谷,2008)を 参 考 に した 。 こ の 領 域 はACMとIEEEに よ るCC2005 (Computing Curricula 2005)で 初 め て 策 定 され た も っ と も新 しい 領 域 で あ り、現 代 社 会 学 部 の 情 報 課 程 の カ リキ ュ ラ ム は お そ ら く日 本 初 の 日本 語 版 カ リ キ ュ ラム で あ る 。 また 情 報 課 程 の 教 育 内 容 に 関す る 議 論 は 、 全 学 共 通 情 報 教 育 の 内 容 改 訂 に も反 映 さ れ て い る。 5 お わ りに 本 学 で は 毎 年 、 全 学 共 通 情 報 教 育 科 目 につ い て 授 業 ア ンケ ー トを 実 施 して い る 。 これ は、 そ の 結 果 を 元 に して情 報 教 育 委 員 会 で 次 年 度 の 教 育 内 容 お よ び教 育 方 法 を微 調 整 して 改 善 す る た め で あ る。 また 、 情 報 環 境 の 変 更 を伴 う改 善 で あ れ ば情 報 シス テ ム 運 営 委 員 会 に も 諮 っ て きた 。 こ の よ う な改 善 を して きた背 景 に は 、 社 会 が 劇 的 に情 報 化 して い る こ とや 入 学 生 が 高 校 で 学 ん だ 情 報 教 育 の 内 容 や 達 成 度 が 大 き く変化 して い る と い う事 実 が あ る。 こ の よ う な 変 化 を受 け 、2011年 度 の カ リ キ ュ ラ ム で は 資格 取 得 を 強 調 して 「教 員 が 教 え た い 内 容 」 か ら 「学 生 が 学 び た い 内 容 」 へ の 転 換 と融 合 を 企 図 して い る。 本 稿 で は 、2000年 か らの11年 間 に わ た る本 学 で の全 学 共 通 情 報 教 育(提 案 、 試 行 とそ の 成 果)と そ れ を支 え て き た情 報 環 境 の 変 遷 を 振 り返 り、 そ の 問題 点 と成 果 と を述 べ た 。 ま た 、 こ れ ら を考 察 した 結 果 と して の2011年 度 以 降 の全 学 共 通 情 報 教 育 お よ び情 報 環 境 に つ い て 、展 望 と準 備 状 況 を記 し た。 こ の よ う な議 論 の 詳 細 は 、 各 教 育 機 関 ご と の 状 況 や 歴 史 的経 緯 、 学 内 の 事 情 等 に よ りそ れ ぞ れ に 異 な る こ と は 当 然 で あ る 。 しか し こ のll年 間 に生 じた 情 報 社 会 の 革 命 的 変 化 は 非 常 に 大 き く、 こ の 間 の 各 大 学 に お け る情 報 教 育 の指 針 整 備 や そ の た め の 情 報 環 境 整 備 に は 多 くの 試 行 錯 誤 が 伴 つ た もの と思 わ れ る 。 本稿 は 、2011年 の 段 階 にお い て 、 大 学 の 情 報 教 育 と情 報 基 盤 整 備 を 振 り返 りつ つ 、 そ の 論 点 整 理 を試 み た もの で あ る 。 本 稿 が こ れ か らの 社 会 と大 学 で の 情 報 教 育 に お い て い さ さ か で も有 用 な もの とな れ ば と願 っ て い る 。 〈参 考 文 献> CIEC小 中 高 部 会,2007,2007年 度 高 等 学 校 教 科 「情 報 」 履 修 状 況 調 査 の 集 計 結 果 と分 析 報 告, コ ン ピ ュ ー タ & エ デ ュ ケ ー シ ョ ン,vol.23, 113-119,CIEC。 CIEC小 中 高 部 会,2008,2008年 度 高 等 学 校 教 科 「情 報 」 履 修 状 況 調 査 の 集 計 結 果 と分 析 報 告, コ ン ピ ュ ー タ & エ デ ュ ケ ー シ ョ ン,vol.25,
京 都女 子大 学 の情報 環境 と全 学共 通情 報教 育 に関す る一考 察 77
112-116,CIEC。
Computer Science and Telecommunications Board,1999, Being Fluent with Information Technology,4, NATIONAL ACADEMY PRESS. 尾 池 佳 子 他,2006,高 等 学 校 教 科 「情 報 」 の 履 修 状 況 調 査 の 集 計 結 果 と分 析,コ ン ピ ュ ー タ & エ デ ュ ケ ー シ ョ ン,voL 21,10-16, CIEC。 大 橋 真 也 他,2009,2009年 度 高 等 学 校 教 科 「情 報 」 履 修 状 況 調 査 の 集 計 結 果 と 分 析 報 告,コ ン ピ ュ ー タ & エ デ ュ ケ ー シ ョ ン,voL 27,93-9& CIEC。 高 度 情 報 通 信 ネ ッ トワ ー ク社 会 形 成 基 本 法(「IT 基 本 法 」),http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ it2/hourei/,平 成12年ll月29日 成 立,平 成13 年1月6日 施 行 。 駒 谷 昇 一,200& イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン テ ク ノ ロ ジ 領 域(JO7-IT),情 報 専 門 学 科 カ リキ ュ ラ ム 標 準JO7,情 報 処 理voL 49, No, 7,759-767。 情 報 処 理 学 会 初 等 中 等 情 報 教 育 委 員 会 ワ ー キ ン グ ・グ ル ー プ,199& 高 等 学 校 普 通 教 科 「情 報 』 試 作 教 科 書(仮 称),情 報 処 理 学 会 。 大 学 等 に お け る情 報 処 理 教 育 検 討 委 員 会,1992, 大 学 等 に お け る 情 報 処 理 教 育 の た め の 調 査 研 究 報 告 書(文 部 省 委 嘱 調 査),情 報 処 理 学 会 。 田 中 克 己,2005,情 報 フ ル ー エ ン シー:大 学 の こ れ か らの 「情 報 教 育 ⊥ 京 都 大 学 学 内 誌 「共 通 教 育 通 信 」voL 5 ,3, http://www.z.k.kyot()-u. ac.jp/p〔hン'link/linkO233。 pdf 中 央 教 育 審 議 会,1996,21世 紀 を 展 望 した 我 が 国 の 教 育 の 在 り方 につ い て,文 部 省 。 松 葉 龍 一 他,2006,初 等 ・中 等 教 育 に お け る情 報 教 育 の 履 修 状 況 調 査 一 大 学 の 情 報 教 育 の あ り 方 を 考 え る 一,学 術 情 報 処 理 研 究N(). 10,15- 20。 水 野 義 之,宮 下 健 輔,2004,京 都 女 子 大 に お け る 学 内LAN(KWIINS)の 構 築 と こ れ を 基 盤 と す る 情 報 教 育 プ ロ グ ラ ム の 構 築 ・運 用,現 代 社 会 研 究 第6号,139 一 168。 宮 下 健 輔,2㎜,京 都 女 子 大 学 ネ ッ トワ ー ク構 築 記,UNIX Magazine 2000年10月 号,104-11& ASCH。 宮 下 健 輔,水 野 義 之,2002,京 都 女 子 大 学 学 内 ネ ッ トワ ー ク(KWIINS)の 構 築 と運 用,平 成14年 度 情 報 処 理 教 育 研 究 集 会 講 演 論 文 集,310- 313。 宮 下 健 輔,水 野 義 之,2005,京 都 女 子 大 学 に お け る 情 報 機 器 更 新 計 画,情 報 処 理 学 会 研 究 報 告, 2005-DSM-39(5),25-30。 宮 下 健 輔, 2007,京 都 女 子 大 学 に お け る ネ ッ トワ ー ク 機 器 の 更 新 一 安 全 ・快 適 な ネ ッ ト ワ ー ク を 目指 して 一,分 散 シ ス テ ム/イ ン ター ネ ッ ト運 用 技 術 シ ンポ ジ ウ ム2007論 文 集,情 報 処 理 学 会 シ ン ポ ジ ウ ム シ リー ズ,vol. 2007. No.13,59 -64。 〔注 〕 1)以 下,MicrosoftをMSと 略 す 。 2)内 容 は 「こ の 用 語 の 意 味 を知 っ て い ま す か 」 「キ ー 入 力 の 速 度 は ど れ く ら い で す か 」 な ど 。 3)こ れ は2007年 度 に 初 心 者 ク ラ ス の み の 業 務 委 託 を試 行 し,そ の 結 果 を評 価 して 決 定 した 。 4)選 択 科 目 と し た 場 合 は,こ れ に 相 応 す る ア カ デ ミ ッ ク ス キ ル 教 育 を 学 科 専 門 科 目 の 中 で 展 開 す る こ と が 期 待 さ れ て い る。 こ れ は,学 生 は 4.4節 冒 頭 の4科 目 を 学 ぶ べ き だ か らで あ る 。