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(臨床実験)急性炎症々状を呈した所謂鼻前庭嚢腫並に上顎洞を占據した大なる濾胞性歯牙嚢腫

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(1)

〔臨床実験〕

(東京女医大誌。第24巻第6号頁229−235昭禾029年12月遅

急性炎症k状を呈しアこ所謂鼻前庭嚢腫並に

上顎洞を占篠しブこ大なる濾胞性歯牙嚢腫

緒 東京女子医科大学耳鼻咽喉科学教室

教授 佐

助手 長

ナが 言 藤 トヴ 沼 ヌマ / 雅 マサ (受付 昭和29年8月28日) 鼻翼附着部を中心として犬歯窩や鼻下部の腫脹 を来す疾患には,原因が鼻腔,副鼻腔に存する もの,歯牙に関するもの等があって,鼻科と歯科 とのGre耶gebietに立ち・腫瘍か炎症性産物か 等診断困難な揚合が旧くない。私共ぱ外観上同様 所見を呈し乍ら,全く発生原因?異にした嚢腫の 二例に遭遇したので,鑑別診断上興味あるものと 思v・報告する。 症 例 第1例(所謂鼻前庭嚢腫例) 患者:吉川某,20才男子,学生 初診:昭和28年1月1日 暴言斥:鼠算iJ顔面腫脹 家族歴及び既往歴:特記すべきものなし。 現病歴i:昭湘27年12月28日頃より,原因と思われる ものなく右頬部が腫脹し,肇熱38β。C,歯痛あるた め歯科医を訪れたが歯牙に異常なく,他医を訪れ丹毒 の疑いでPenicillin注射(160万)とス剤内服を行 い,翌日少し楽になったが筒微熱が続き頬部腫脹が去 らぬため,31日当院外科に紹介され入院。1月1日診察 を依頼され一診したが,右鼻翼附着部を申心とする禰 蔓性腫脹で皮膚発赤なしQ患者は鼻翼附着部の腫脹IC は:今迄全く気付いてv・なかったが,所謂鼻前庭嚢腫 で,恐らく久保教授の上顎粘液腺嚢腫の急性炎症を起 したものと思い,Penicillin注射を続行して消炎を計 る事とし1月6H当科へ転科した。当日迄約500万単 位のP注射をうけでいる。 現症:1月6日入院時の一般所見,体格栄養中等 度,体温36.4。C,胸腹部に著変なし。尿に糖, ク ヨ 子 コ 蛋白(一)。一血液所見は第1表の如くで軽度の白血 壬求増多を認む。 第1表 血液検査所見 第1例 第2例 吉○ 長○川 赤 血 球 数 白 血 球 数

血色素量(ザrり一)

血 色 素 指 数

i血

{類

中性好性分節白血球

桿 型 分 葉 型

「エ」好性分節白血球

塩基好性分節白血球

淋 巴 球 単 球 血 沈 (中 等 値) 血 液 ワ 氏 反 応 560万 8,600 110% O.98 59% 2% く 57% 1% 「498万 一 6,800 105% 1.05 69% 4% 〈 65% 2% o% o% 290/5 11% 16 (一) 26% 3% 24 (一) 局所所見:右側頬部より下眼瞼に亘り浮腫性彌 蔓性に腫脹し発赤なし。鼻翼附着部より鼻下部は 浸潤性腫脹で波動をふれす圧痛あり。口腔は右上 顎切歯,犬歯に叩打痛あり,該部の齪頬移行部は 浸潤性に腫脹し圧痛あり,波動を触れす。歯牙, 凶事に変化なしQ 鼻腔を診るに,右側前庭の外側下壁より下訳道 側壁に亘って腫脹し,車引もゲルベル隆起様の膨 隆を認めるが,鼻腔内は清潔。

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, 第1二図 嚢腫内にモルヨドー7レ注入,正面 レ線撮影後,前庭に近い下鼻道側壁で試験穿刺 を行い,帯黄色透明の液0.5ccを吸引し得たの で,共まま同量のMo!jodo1を注入して更にレ線 撮影を行った。 レ線所見:普通写真では歯牙に異常なく,副鼻 腔陰影なし。M一注入写真では陰影は梨子状孔縁 下で蔓」の上に座し(第1図),側位撮影(第 2図)では軟部と上顎骨との間に在り,歯牙や上 顎洞との関係は認められない。 穿刺液検査所見は第2表の如く,蛋白に富み, ムチン(+)。 第2表 穿刺液検査成績

第1例吉○ 第2例長○川.

第2図 側画,嚢腫ぱ上顎骨に関係なし

て 321の部に認められ,共尖端ぱ暗赤色を呈 して薄い(第3図),剥離に際して破れてMoljodo1 少量を漏出した。嚢腫の骨面を剥離すると, 第3図 軟部より剥離して獲腫の表面を露出 骨騰剥離せず [外徽び穿刺量

缶蛋 白

諾・チ・

馨・・ステ・・ 細菌学的検査 (血液寒天培養) 淡黄色,透明,粘チョ.コ」ニト色 稠度少し,約5.Occ漿液約18cc 5,280 mgfdl (+) 298 mg/dl 菌(一) 1,676 mg/d1 134 mgfd1 1,119 mg/dl 菌(一) コレステリン結晶. (一) (+) 診断及び治療:以上の所見及び検査成績より, 急性:炎症を伴った所謂前庭嚢腫で,恐らく上顎性 粘液腺嚢腫,の臨床診断のもとに,嚢腫摘出術を 行った。 乎術所見:口腔前庭にて粘膜切開を加え,申喫 より剥離した。嚢腫の下縁は歯上縁近く迄剥離し 輿中隔 嚢腫 第4図 嚢腫摘出後の歯牙と鼻底;蝋夢霧「 介前端きthヒt 鼻中隔 側壁肥厚1.非常ド厚し 斜線rユt刀除面を示オ 嚢腫の眉…ゼLE区fi 一q2一.の歯根中央都で壊死にβ塗り,歯根膜を失い 露出していたっ之ぱ術前該歯の叩打痛が強かった のに一一一致し℃、・る,上方に剥離すると二丁が現

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オ1,内側は容易に剥離できたが,タi・側は出鼻道側 壁に至るに従って厚く肥厚し剥離不能となり,下 鼻元粘膜と共に切除して嚢腫を摘出した。(第4 図参照)。術後の経過良好で2週間後全治退院し た。 病理組織学的所見:嚢腫の大きさは一指頭大で あるが,内腔ぽ0.5ccをみたづ’小腔にすぎす,’下 :方1/3は壊死に陥り,上方2/3ぱ弾力性硬で,特 に上外側が肥厚して懸鼻道側壁に移行している( 第5図)。 第5図 嚢腫摘出標本 費

1麹

第6図肇腔内腔の多層円柱上皮層 弱拡大 140倍 第7図 強拡大 450f音 組織標本(ヘマトキシリン,エオジン染色)で は嚢腫ぱ内外二層より成り,内腔は主として多層 円柱上皮で被覆され,一電話急な部ぱ股子形を呈 し,随所に.状細胞を多数認めた。外層は厚い結 合組織よリカっている。基質中では嚢腫の下部の 歯牙に接し力部位でぱ大部分壊死に陥り,退行変 性せる核の散在,禰蔓性出血,充tht,円形細胞浸 潤著明で炎症像が強くみられたが,鼻底に近い上 半部では軽度で浮腫と充血を呈した。粘液腺又は 共排泄管と思わるるものは認められなかった(第 5図,6図参照)。 第2例:(濾胞性歯牙嚢腫症例) 患老:長谷川某,22才男子,工員 初診;昭和28年6月29日 主訴:右頬部腫脹と歯痛 家族歴:特記すべきものなし。 既往歴:幼時FI・耳炎,19才湿性肋膜炎に羅患 現病歴:4∼5年前から一門部の腫脹に気付ぎ,1年1 回位」::」を中心としで歯痛と歯の浮いた感あり,右 二部に鈍痛を覚えたが発熱せず,鼻閉塞,鼻漏等著明 ではないが,耳鼻科医に急性蓄膿症と云われ,べ注射, 二二子等により2週四位で症状消退するを常とした。 歯痛の起る度に頬部腫脹が増強してきた。今回ぽ初診 5日前から右上顎歯の痛と浮感が起り,人中部から右 鼻翼にわたり圧痛著明となったが,発熱せず,近医を訪 れ同医師より当科へ紹介された。 現症;一般所見,体格大,栄養良好,体温36.5。 C,胸腹部に所見なし。尿に蛋白,糖を認めす。 珀L液検査所見は第1表の如く,赤沈軽度に促進せ るのみ。 局所所見;右頗部は栂指頭大の限局性腫脹を呈 し,硬変精硬く圧痛あり,波動,発赤なく,羊皮 紙様捻髪音も触知せす。右上顎歯一体に浮感あ り。同歯齪より犬歯窩に向い軽度に発赤腫歯し圧 痛あり。鼻腔を診るに,右側の鼻底がゲルベル氏 隆起様に高く,下甲介附着側壁ぱ内:方に圧出され た如く腫脹しているが清潔で,後鼻孔にも変化な し。 レ線所見:後頭前頭位普通撮影にて,両側共中 ・切歯・々根部に過剰歯の埋伏を認め,右側過剰歯は 嚢腫中にあり(第8図)。此関係は門歯撮影(第9 図)にて著明に認められる。 次で右側下二道側壁より上顎洞を穿刺すると, チョコレート色漿液18ccを吸引除去し,其針の まま40%Moljodo115cc注入し得て撮影した。 前後位撮影(第10図)では左門歯部から続き殆ど 上顎洞全部を占めてみえる。右側位撮影では洞の 後方と上方に造影剤の入らぬ所を認める。他の副 鼻腔に陰影を認めない。 嚢腫穿刺液検査成績ば第2表の如くでコレステ リンに富み,同結晶を認めた。

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第8図両側中切歯々根部に過剰歯を認む

第9図 右側過剰歯は嚢中に在り 第10図 嚢中にモルヨド・一7レ注入

麟翻彪

馳総

へ 等・ ハ敵ぺ 診断:長い経過及び検査成績により右側中切歯 部の過剰歯より発生して,上顎洞を占拠した濾胞 性歯牙嚢腫と診断した。 治療:Caldwe11−Luc氏術i式により嚢腫摘出術 を行った。局麻の下に齪頬移行部で6cmの切開を 加え,骨膜を剥離すると門歯部には既に小指頭大 の骨欠損を認め,犬歯窩骨壁は鋸歯状の骨欠損を 認め,非常に菲薄で軟部と強く癒着していた。嚢 腫は右中切歯部から上顎洞外側壁に達する巨大プよ ’t,ので,船内に残溜した赤褐色液を拭去すると, 外側後方に術淡黄色半透明の膠様物質の潴溜を認 めたが,両液の間に隔壁はない。術前M一注入撮 影で造影剤の入らぬ所は此所であろうと思われ た。 門歯部を精検すると中切歯の上方に小歯冠を露 第11図 i嚢腫内に過剰歯の歯冠露出 過剰箇の噛冠露出 出した歯牙を発見したが(第11図),之はX線写 真で認められた中切歯上の埋伏過剰歯IC相当す る。洞内の嚢腫は,容易に袋状に剥離できたが, 只過剰歯露出部の周囲のみが剥離困難で嚢腫を切 離して摘出したが,共際該過剰歯は嚢腫内に脱落 した。上顎洞内は非常に拡大されて居り,門歯部 は上下2.0×左右2.5×深さ1.Ocmで,固有の上顎 洞は上下4.8x左右5.2×前後6。Ocmで,門歯部に 発生した歯牙嚢腫が漸次発育して上顎洞に侵入 し,之を圧迫拡張して巨大IC形成されるに至った ものと思う。下学道に対孔を設け,口腔温は第一 期縫合として術を了る。術後気分爽快となり,経 過良好で入院13日で退院した。 嚢腫の病理組織学的所見 摘出した嚢腫は鶏卵大,門歯部と上顎洞内側半 椰は暗赤色を呈し繊維性で薄く,外側部では蒼白 で嚢腫壁中に薄い骨片を含んで厚い。t..1一一.の上 棉に過剰歯々冠を露出していた(第12図)。 嚢腫壁の組織所見は,門歯部では固有の嚢腫壁 で内外2層より成る。内壁は薄v・上皮層で,殆ど股 子骨細胞のみ2∼3層の所と,基底部は1∼2層の股 子型細胞で,表層が扁平上皮細胞の所とあり。外層 は細胞浸潤や血管に乏しき結合組織より成ってV・ る。上顎洞内で外側部の組織をみると,嚢腫内腔 の上皮層は著明に圧迫された3∼4層の重層扁平上 皮より成る部と,基底より3∼4層は般子型細胞で

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第12図 摘禺した歯牙嚢腫と歯内の過剰歯

第13図弱拡大70f音

alt.ms胞性歯牙嚢腫の上皮層 bは同上結合織層 。は:骨壁を含有 dぽ上顎洞粘膜の顧幽幽上皮 奪

第14図強拡大400倍

濾胞性歯牙嚢腫上皮層の股子形乃至扁平上皮細胞 k 叢 竃

S

表層のみ扁平上皮で被われる部とあり,この部の 上皮下に殆ど出血なく,前者には赤血球の禰蔓性 散在,血管拡張あり組総の中央部には薄き骨組織 あり,その内外両側は繊維性になっている。外側 は粘膜下層を距てて,1∼2層の円柱上皮層を認 め,上皮脱落部が多いが,輪虫では蔑毛円柱上皮 である。即ち骨油より外側が固有の上顎洞粘膜で 炎症像は余り認められない(第13,14図参照)。 本例の歯牙嚢腫は,嚢腫内に過剰歯の歯冠を露 出した嚢腫で,組織像からも濾胞性歯牙嚢腫で ある。 考 按 鼻唇溝外側部から犬歯窩に亘って円形の膨隆を 来し,経鼻道外側前端に所謂ゲルベル氏隆起とし て現れ,徐々に発育する無痛性の良性嚢腫とし て,共外観の酷似するものは,久保教授の上顎粘 液腺嚢腫(広意には所謂鼻前庭嚢腫),上顎歯牙 嚢腫及び術後性頬部嚢腫であろう。之等は発生学 的に異るもので鑑別診断上興味が深い。 久保教授の術後性頬部嚢腫は上顎洞根治手術に よる晩発性合併症で,手術を受けた既往歴がある が,前述の挙例共之がないので除外し得る。 久保教授は上顎粘液腺嚢腫と歯牙嚢腫との鑑別 について次の諸点を注意されている。 一1)上顎粘液腺嚢腫(S.Zと略称)は触診上柔 軟で波動を触れるが,歯牙嚢腫(Z.Zと略称)の 如き羊皮紙様捻髪音を認めずと。第1例ぱ急性炎: 症併発時,第2例は既に骨欠損の為かかる症状は 認められ,なかった。 2)下輩道膨隆の位置が少し異る。S・Zは歯牙 嚢腫よりも梢々前方に位する。 3) S.Zは上顎骨骨膜の外部にあって,上顎骨 とは関係がない。 4)嚢腫の内容はS.Zでは粘稠でMucinを主 成分とする。Z,Zではコレステリン結晶を多く含 有し,歯牙を含み歯根と関係あり。 5)S.Zは手術に際して上顎骨面より自由に 剥離し得るが,唯鼻腔粘膜前端と癒着して離れ す。Z.Zでは歯牙の植立する場所で剥離されな い。 以上の諸点は何れも私共の両前とよく一致して いる。 6) X線検査でS.Zな梨子状孔の下縁が腫瘍 のため著しく圧平せられて二重の線として暗影を 呈する事あ1)。Z.Zでは梨子状孔下縁が挙上せら るる事を注意されている。 歯得用撮影によって歯牙嚢腫の診断は決定的で ある。其他に私共は嚢腫の造影剤注入撮影を行っ たが,其位置,上顎骨との関係が明かにされ,最

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も重要な鑑別診断法であるQ 7) 組織学的に嚢腫内壁の上皮は,S・Zでは圧 平された粘液腺上皮を登出し,Z.Zでは般子型細 胞乃至重層扁平上皮であると。私共の第2例ぱ Z.Z va一・一致ナるが,第1例ぱ久保教授の上顎粘液 嚢腫の組織像とは少しく異るので其成因について 老察を試みる。 所謂鼻前庭嚢腫ぱ1882年Zuckerkand1により 始めて記載せられたもので,其成因について種々 論議があり,名称もいろいろである。 1)潴溜嚢腫説 Brawn−Kelly(1898)が病理組織学的研究によ り腺排泄管の潴溜嚢腫である事を認めた。本邦で は大正5年(1916)久保教授により上顎粘液腺潴 溜に因るとされた。 2) 胎生時迷入説 Blumenthal, Klestadt(lg13)により,胎生時 鼻の形成に際し,中央及び側鼻突起の癒合の際 に,将来鼻粘膜を形成すべき外胚葉の縄入によ り,生する事を原因として報告され,1921年 Klestadtは34例の胎児について研究し,この説 を最:適と考えGesichtspaltencyste顔面破裂嚢腫 と命名されたQ現今この説に賛同者が多b。 3) 胎生期器官の残存説

Wingrave(1918)は, Stenon氏管, Sca「Pa

氏管,Nicolson氏管等の如き胎生期的器管の遺 残物に注目すべき事を述べた。Gri加wald(1904) な鼻四病管に,Bruggemann(1920)は鼻涙管前 端部等に関係があるとした。 以上の3説であるが,本嚢腫の成因決定の要素 は其局所的位置と嚢腫壁の組織像である。 翻1つて第1例は一般的には所謂鼻前庭嚢腫であ るが,其成因について考察を試る。 嚢腫壁上皮に関してぱ,三毛円柱上皮の由来は 鼻腔,副鼻腔に求むべく(顔面破裂嚢腫),腺細 胞叉は蜜蝋点画よりの潴溜嚢腫とすれば,額毛の 無い円柱上皮又は殿子型上皮を本態とすべきであ る。扁平上皮を有する場合に,それが完全なもの ならば其由来を口蓋粘膜に帰すべぎであろう。而 乍ら本病は発病期間が長く,内容物の圧迫等によ り影響うけるため,顛毛上皮も頭毛を失って円 柱,股子型細胞に,更に扁平上皮にも化生し得る ので,原基組織と必ずしも同一と考えてはならな bといわれている。ee一・一例の揚合は急性炎症を起 していたにも拘らす,嚢腫壁の上皮は主として多 層円柱上皮で,一部に真締をも認めるもので,腺 上皮どは認定されす,又いっこにも腺及腺排泄管 を癸見出来ながつ融点等よりして,予想した上顎 粘液腺嚢腫の組織像とは異る。発生部位及び組織 所見よりして,成因的にはKlestadtのGesichtL spaltencyst e顔面破裂嚢腫に一致するものと思惟 する。 (310回東京地方会の席上では:,其成因を上顎粘 液腺嚢腫(?)としたが,其後に連続切片を作り取払の 結果,前記の如く彰渥大暮を財乱す■一。) 本嚢腫の化膿機転に関しては,二部粘膜よりの 淋巴道感染も起り得るが,本例では鼻腔掻破の習 慣もなく,嚢腫下半部の歯牙に接する面に於て炎 症像強しく,一部歯根膜を失ってv・た点から,歯齪 部より上行性に歯根膜:炎:を起し,之が嚢腫に感染 して急性化膿性炎症を惹起したものでわないかと 考える。 歯牙嚢腫にぱ濾胞性歯牙嚢腫Follikulare Za− h icysteと歯根嚢腫Wurzelcysteが区別され る。濾胞性歯牙嚢腫は,歯牙上皮遺残が逆性歯牙 叉は過剰歯等のために刺戟されて生する真性の歯 系腫瘍で溜潴嚢腫に属するが,歯牙を含有するの で含歯嚢腫ともいう。嚢腫壁は内外二層で,内層 は呼子型上皮乃至扁平上皮,外層は結合組織より 成る。歯根嚢腫は鶴歯があって歯根骨膜に炎症を 起し,其滲出物が歯根周囲に潴溜して嚢腫を形成 したもので真性の腫瘍でわない。其嚢腫壁は扁平 上皮細胞層,肉芽層,結合組織層の三層より成 る。第2例は嚢腫壁が股子型上皮と結合織の二層 を:有し,明らかに⊥i上に埋伏した過下歯によ る濾胞性歯牙嚢腫で,而も上顎洞を全く占拠した 巨大なものである。 結 語 右側鼻翼附着部を中心として頬部腫脹し,外観 の酷似した鼻前庭嚢腫と濾胞性歯牙嚢腫症例を経 験し,其鑑別を述べ,前者の成因につV・て老察し た。 第1例(鼻前庭嚢腫例)は20才の男子。急性炎 症消退後口腔より摘出するに,上顎洞と関係なく, 剥離容易なるも下愚道外側に至りて癒合せるため 鼻底粘膜と共に切除摘出した。嚢腫底面は遡 に接して壊死を呈した。嚢腫内貼は多層円柱上 皮で被覆され一部に頭毛を認め,杯状細胞多し。 腺及び腺排泄管は何処にも認められない。本例の

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嚢腫成因は,胎生期迷入による顔面破裂嚢腫に一 致するものと考え,急性化膿性機転は歯根膜炎の 上行に因るものと思惟する。 第2例(濾胞性歯牙嚢腫例)は22才の男子Q 5年前より右頬部腫脹し時々歯痛あり。嚢腫は 一一L」1上に埋伏した過剰歯を含有し,上顎洞を全 く占拠拡大せしめた巨大なもので,Caldwe11− LUC氏術式により摘出治癒した。 本稿の大要は,昭和28年11月日本:耳鼻咽喉科学会第 310回東京地方会,及び同年12月東京女子医科大学会 学第63回例会の席上報告した。 稿を終るに臨み,種々御教示を頂いた病理学教室佐 藤やい教授,今井助教授,並びに歯科村瀬教授に深甚 なる謝意を表する。 文 献 鼻前庭嚢腫に関するもの 1)早川・山口::耳鼻咽喉科,24巻,12号,562頁, 昭和27. 2) 石原 雄:耳鼻咽喉科,24巻,5号,216頁,昭 27. 3)石井 正:大日耳鼻33巻,5号,328頁,昭2.. 4)久保藩之吉:大日耳鼻,26巻,262頁,大正9. 5)加藤=戻B:東京医事新誌,2927∼8号,昭10. 6)黒像静之::耳鼻咽喉科,22巻,2号,85頁,昭25. 7)小幡達男:耳鼻咽喉科,25巻,8号,379頁,昭 28. 8)梅村走道:耳鼻咽喉科,22巻,7号,301頁,昭 25. 濾胞性歯牙嚢腫に関す’るもの 1)阿部勝治:大日耳鼻,31巻,659頁,大正14.

2) Denker u. K ahler : Handbuch der Hals−N.

O. heilk. B. 5.

3)猿藤・正木:日本耳鼻咽喉科全書,6巻の5,472 頁,昭16.

4) Hajek:Nebenh6hle der Nase, S. 166.

5)細見慶吉:大日耳鼻,32巻,893頁,大正15. 6)石井 正:大日耳鼻,33巻,11号,1036頁, 昭2’ 7)久保蟹之吉:耳鼻咽喉科,5巻,719頁,昭7. 8)梶村正義:耳鼻咽喉科,5巻,737頁,昭7. 9)股野景一:耳鼻臨床,30巻,250頁,昭10.

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