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アクション・リサーチによる授業改革

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アクション・リサーチによる授業改革

スピーキングを重視した中学校入門期の英語指導(その3)

藤 田 絹 子*・長 澤 邦 紘**

(1996年10月14日受理)

Innovations of English Classes through Action Research:More Weight on Speaking at the Introductory Stage of Junior High School(Part 3)

Kinuko FuJ【TA*and Kunihiro NAGAsAwA**

(Received October 14,1996)

Abstract

This is the thifd part of a three−part series of an article which describes an action research study on innovations in the teaching of junior high school English dasses. It deals wit㎞the final stage of the project:reflection. The most important findings of the prqlect were:(1)students, while improving their motivation for English study, improved their oral sk皿ls;(2)re−oτganisation of the curriculum, which was lequiled fbr the planned teaching of oral activities, allowed us to devise many useful(pseudo−)communicative activities;(3)the cyclic action of the pr(オect enhanced the quality of teaching.

第5章 プロジェクトの評価

5.1話す活動の評価 5.1.1成果

本節では,スピーキングを重視した本研究の評価を行う。我々は,生徒の英語の学習意欲を喚起 するための主たる手だてとして「話すこと」を選んだ。我々はこの実践を通して以下のような成果

を得た。

第1に,書くこと,読むこと,聞くことに比べて,話すことに焦点を合わせたことにより,教室を 活気づけることができた。生徒は課題達成のために,時々立ったり,席を離れたりすることを求め

*茨城大学教育学部附属中学校(〒310水戸市文京1−3−32;Attached Junior High Schoo1, Faculty of

Education, Ibaraki University, Mito, Ibaraki 310 Japan).

**茨城大学教育学部英語教育講座(〒310水戸市文京2−1−1;English Language Teaching, Faculty of Educa一 tion, Ibaraki University, Mito, Ibaraki 310 Japan).

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られたが,それは彼らを活気づけた。また,我々は,生徒に話す活動をさせることによって,彼ら が退屈しているのか,それともほかの活動をしたがっているのか,というようなことを容易に推測

できた。

第2に,生徒は自分の努力や成功についてAETからすぐに賞賛してもらうことができた。生徒は AETと話すことによって,たやすく自分の進歩を確認することができたのである。

第3に,忍耐強く地道に努力を重ねることを好まないタイプの生徒達一これは女子より男子の方 に多く見られがちだが一には,話すことを重視した指導方法は歓迎された。第2学期末テストの結 果を見てみよう(付録1参照)。1,2,3組男子の平均点は,他クラスの男子の平均よりも比較的高 めである。その上,この3クラスの男子の点数は女子の点数と比較してもあまり遜色ない。(通常女 子の得点の方が男子のそれよりはるかに高い。)

4番目に,英語が苦手で,特に書くことが好きでない生徒は,話すことを重視したことによって大 いにやる気を起こした。すらすら書くことができる生徒もいれば,書くことが苦手な生徒もいる。話 すことに重点を置いたことで,書くことが苦手な生徒の負担は減ったのであった。

5番目に,話すことを重視した指導法は,生徒の他の能力をも活性化した。コミュニケーション活 動をする前に生徒はワークシートを読み,時には何か書き込みをする必要があったし,活動の最中 には友人の英語を聞き,自分自身英語を話す必要があった。話す活動は4技能を統合する形で行われ たのである。

6番目に,生徒は級友の力を目のあたりにすることによって刺激を受けた。一人の生徒が話す時に,

他の生徒はそのメッセージを聞いて理解しなければならない。友人の英語を聞くことで,生徒は級 友の能力に気づくことになった。それは,生徒相互のライバル意識を刺激した。ある生徒は「彼は 全文暗記していた!だから,ぼくも暗記しようと思った」とレポートに書いている。

7番目として,話すことを重視することによって,生徒の自主的学習態度が伸長した。アンケート 結果に見られるように,生徒は書く能力をつけたいと願っている。話すことに慣れたかもしれない が,生徒は自分の書く能力に自信を持っていない。1学期の中間テストの結果でも,書く力が弱いと いうことが明らかになった。そこで,生徒に家庭学習の課題を与えることにした。生徒は「チャレ

ンジ・ノート」という家庭学習用のノートに,こちらで与えた課題のリストから自分の課題を設定 して,朝提出する。それはその日のうちにチェックされ,返却される。ある生徒は「僕は書くこと は得意じゃない」と書いてきた。このような自分自身の弱点への気づきは,どんどん書こうという 刺激になったようである。

8番目に,カリキュラムを改編したことは思いもよらぬ結果を生んだ。それは,我々に教科書をど のように扱うかという問題に対して根本的な問いを投げかけた。それまでの授業では,コミュニケー ション活動を取り入れているとはいうものの,文法訳読的な面もあった。本研究では,場を作って 生徒に繰り返し有効な表現を練習させるための時間が必要だったので,教科書の言語材料の扱いに 細心の注意を払って改編しなければならなかった。そのため,かえって様々なよいアイディアが浮 かんだのである。我々は注意深く指導過程を検討し,資料を準備した。様々な能力を持った生徒に 対応できるように何種類かの課題を設定して生徒に提示した。たとえ課題が簡単であろうとも,自 分自身の力で一旦成し遂げられ,その正しさが確かめられれば,生徒は「間違わなかったんだ!」と 満足できるものである。この達成感によって,生徒はより高いレベルの課題に取り組む勇気を得た

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ようだった。このように,教科書の内容を再構築することによってコミュニケーション活動により 多くの時間を割くことができるようになったのみならず,それは生徒にとっても有益なものである

ことがわかった。

9番目に,話すことを重視した活動を通して,生徒は英語の総合力を伸ばすことができた。一つの 例をあげれば,3組の生徒は5教科の総合得点では通常全9クラス中,最下位もしくは第8位である。

しかし,英語に関しては常にトップであった。生徒はよく「僕らは英語だけはいいんだけど,ほか は9クラス中ビリなんですよ」と言っていたが,それは賞賛に値することだった。生徒のレポートや アンケートの結果からすると,3組の生徒は英語学習に肯定的な姿勢でいることが推察できる。

10番目として,生徒は自分に肯定的なイメージを持つことができた。1組は私が教えている3ク ラス中では平均点がいつも最下位である。従って,1組の何人かの生徒は英語をよく理解していない のではないかと思われるふしがあった。しかしながら,アンケートの結果は興味深いことを示唆し ている。18人の生徒は,自分達は英語の授業はよくわかると答えている。そして,残りの生徒もほ ぽわかると解答している。誰も「わからない」とは答えなかった。これは,生徒が自分の英語の力 に自信をもち,プラスのイメージを持っていることを示している。

11番目として,生徒たちの情意フィルターは終始低かった,と結論づけられると思う。3回目の アンケート結果(付録2参照)によると,12人の生徒(11.1%)が外国人との出合いは避けたいと答 えている。だが,生徒の自由記述の部分を詳しく検討してみると,そのような出合いを避けたいと 答えたのは2人だけであるということがわかった。あとの10人は,先の回答の他に「理解するよう ベストをつくしたい」とか「既習事項を使って通じるよう努力する」という回答もしているのであ る。この10人の生徒は,他の95名の生徒よりも情意フィルターは高いかもしれないが,英語を 話す人々との接触を全く避けているわけではない。その上,3回目のアンケート調査(「その2」の 付録6参照)で「緊張した」とか「英語を話すことは好きではない」(自由記述のコメント)と答え た生徒の数は2回目の時(付録3参照)とほぼ同じであった。ということは,生徒の情意フィルター は新しくつくられてはいないということが言えよう。

最後に,生徒の情意フィルターを減少させるためにどのようなことをしたかについて触れたい。そ れは生徒が強い情意フィルターを形成する前に「これは英語の授業なのだから,授業中英語を話す のは当然」という考えを生徒に徹底させたのである。かねがね我々はこのような態度形成をするに は1年生の授業が最も大事だと考えていた。なぜなら,1年次の経験は今後の英語学習の方向に影響 するからである。教師がどのように1年生にアプローチするかということで,英語や英語学習へのイ メージが決まると考えている。この意味で,最後のアンケート結果からすると,「もっと話す活動を してほしい」(自由記述の部分から)とあり,我々の刷り込みは成功したと判断できる。

5.1.2問題点

この研究を行っていく過程でいくつかの間題が生じた。第1は時間の問題である。授業をおもしろ く,意義あるものにするためには常にワークシートを準備しなければならなかった。ワークシート は,ゆっくりしか書けず,理解も遅い生徒には大きな助けとなったはずである。しかし,これらの ワークシートを作るには膨大な時間を費やした。

第2の問題は,スピーキング中心というこのプロジェクト自体が内包しているものである。話す活

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動は生徒を喜ばせたが,評価は簡単ではなかった。話すことに関する評価の特徴の一つは,即時に 行われるということである。録画と録音は評価のためには有効だったが,分析に時間がかかりすぎ る。話す活動は何らかの工夫を凝らして行われるべきであった。準備にも時間がかかるのである。

3番目の問題は,生徒が思春期にあるという事実に関わる。クラスには話すことを好まない生徒が いる。このような生徒は話すことよりも書くほうを好んだ。従って,このプロジェクトの活動は時々 彼らを動揺させたように思われる。また彼らにとって,ペアで活動したり,クラスの前で話をした りすることは大きな負担だった。「私はみんなの前で話すのは嫌いです。私は自分で勉強したい」と か「ペアで活動することがいやになった」と書いている生徒もいる。

4番目の問題は,生徒の情意面の問題である。スピーキング重視の活動では,何人かの生徒が自信 をなくしたように思われる。Moskowitz(1978)はリスクの少ない活動を用いるように我々に勧めて いる。我々はまた,失敗の経験は生徒の考え方や態度に影響すると思っている。努力して自分の失 敗から立ち直る生徒もいるかもしれないが,自信を失う者もいる。この意味で,面接テストは1年生 にとっては少しレベルが不適切な活動だったかもしれない。

5番目の問題は話すことへの偏りである。話すことを重視するのは,当初よりこのプロジェクトの 目標であった。授業に書くことを本格的に導入したのは1学期も2か月が過ぎた頃だった。しかし,

生徒たちの書くことへの要求があったので,ここでプランを変更して,書く練習の不足を補った。

最後の問題は,教科書指導のためにその内容を再構成したことで生じた混乱である。思春期の特 徴の一つに潔癖さがある。生徒達は学習内容をきちんと,詳しく教えてもらいたいと願っている。例 えば,英文を読むにしても概要をつかんだだけでは理解したように思わず,全訳しないと気が済ま ないようなところがある。全文翻訳しなくても概要がわかればよいというような考えは理解されに くい。このような彼らの特徴を踏まえた指導法を考慮すべきであった。教科書指導の再構成は教師 の視点からは効果的だったが,生徒からすると混乱を来すものだったかもしれない。

5.2研究の評価

5.2.1成果

以下,このプロジェクトの成果を8項目にまとめたい。

第1に,このプロジェクトを行っている間,我々は研究の計画や指導法について常に検討する必要 があった。我々は,計画・準備したことを教え,その指導を分析・評価し,必要なときはいつも計 画を練り直す必要があった。このような教え方についての絶えざる検討は,教師としての力量の向 上に役だったと思う。この過程は次第に楽しいものになった。全力を尽くせば,それが教え方に反 映し,生徒はそれに満足し,さらに生徒の喜びと充足感が今度はこちらに跳ね返ってきた。口頭に よる活動を重視するという考えは,生徒の学習意欲を大いに刺激した。こちらが努力すればするほ ど報われたのである。

第2に,我々は計画した活動について生徒がどのように感じているかを知るためのアンケート調査 をおこなった。アンケートへの回答は生徒の状態をよく示すものであった。励ましが必要な生徒に は助言をし,ワークシートにヒントを増やしたりもした。このようにして生徒をよく観察した結果,

彼らとの距離が縮まり,彼らと感情を共有できたように思う。例えば,第1回目のアンケートには「僕

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は英語の授業がよく分からない」と書いてきた生徒がいた。しかし,実際はこの生徒の定期テスト の成績は彼が自分で思っているほど悪くなかった。この生徒には機会ある毎に話しかけ,今進歩し ている途上にあるのだと言って励ました。3回目のアンケート調査でこの生徒は「この頃,自分が進 歩しているのがわかってうれしい。授業もわかるようになってきた」と書いている。もし,早い時 期にこの生徒がこのように考えているということを知らないでいたら,彼にこれほど注意を向けた かどうかはわからない。生徒は英語能力を伸長し,教師は自分の教え方と生徒理解という2つの点で 進歩したのである。

第3に,この計画を実行するために我々は様々な文献を読んだ。アクション・リサーチ関連のもの ばかりでなく,誤答分析(Corder 1967;Selinker 1972),第二言語習得研究(デュレイ・バート1984;

Kτashen and Terrel11983),コミュニカティヴ・アプローチ(ジョンソン・モロウ1984;長澤1988),

ヒューマニスティック・アプローチ(Moskowitz l 978;縫部1991)等である。これらの研究成果か ら得た知識は,我々の英語教育への視野を広げてくれた。例えば,学習者は間違いながら言語を学 ぶということは第二言語習得研究から学んだ。このことによって生徒の誤りに対する考えが変わり,

将来の成果を期待して教えることができるようになった。このことは生徒をマイナスのイメージで 見ないという考えにも通じ,学習者の肯定的側面を見ようとするヒューマニスティック・アプロー チの考えと重なる。

4番目として,本研究は藤田の同僚にも影響を与えた。同僚教師の一人は,自分の授業をコミュニ カティヴなものにするために,明らかに従来よりも多くの時間を割いて準備を行っていた。同時に 彼女は,我々にも授業を面白くするアイディアを提供してくれた。アクション・リサーチはそれを 行っている教師その人ばかりでなく,同僚教師にも働きかけるのである。

5番目に,深田(1995)が述べているように,アクション・リサーチは教師を主体的で自律的な教 師に育てた。本研究を計画するまでは,我々は教科書の内容や他の言語材料を編集して独自のカリ キュラムを作るなどということは想像もしなかった。教科書に示された順序ではなく,独自に何を いつ教えるかを決めることは不可能だと思われていたのである。しかしながら,本研究では生徒の 要求と研究の目的に従って大幅にカリキュラムを変え,それが一定の成功を収めたのである。

6番目として,我々は授業改善のためには2通りのやり方があると気づいた。第1は,問題に気づ いた時にはいつでも計画作成にかかるのである。これは「今,ここで」という問題解決型である。第 2は,学年当初から計画的に改善策を練る場合である。これは慢性的問題を抱えている場合で,年度 当初から研究に取り組む場合である。

7番目として,一旦自分の研究について振り返り,それについて書き始めれば,計画や実践上の不 備が明らかになる。Nisbet and Entwistle.(1984:252)が言うように,「書く作業は終わりまで残して おくべきでない。研究の進展とともに書き進めれば,重荷のかなりがなくなるものである。」研究成 果を公にする事はアクション・リサーチにとって絶対条件ではないが,研究自体を利するものであ

る。

最後に,我々教師がアクション・リサーチの手法に慣れれば,もっと効果的に計画を実行するこ とができるだろう。Walker(1985:3)が言うように,アクション・リサーチは教師の持つ「技術の 持ち駒」になるべきである。自分の研究を実践すればするほど,我々の技術は洗練されるのである。

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5.2.2 問題点または注意を要する事項

本節では本研究を振り返って,アクション・リサーチの「問題点」とは呼べないにしても,実施 上注意を要する事項についてふれてみたい。

まず,深田(1996)が指摘しているように,アクション・リサーチを実践する事で我々教師は喜 びと満足を得られる。なぜなら,研究を成功させるためにより一生懸命取り組めば取り組むほど結 果はよくなり,我々は報われるのである。しかしながら,我々は生徒のことを第一に考えるべき教 師であり,プロの研究者ではない。英語学習を通して,生徒が望ましい方法で自己実現できるよう に援助する責任がある。深田(1995)は,もし自分が研究者として研究したいテーマに集中するな ら,その姿勢は教師としての適切な行動を損ないかねない危険をはらむと述べている。我々はこの 危険に注意すべきである。我々は教師としての仕事を疎かにしてはならない。

第2に,教師はアクション・リサーチの可能性を過大評価し,計画を大きくしがちである。我々が この研究を計画したとき,テーマは単純なものであった。しかしながら,一旦これを始めると,多 くの問題が生じた。例えば,ワークシートを毎日準備するということ,あるいは,当初の計画に従 って初めのクラスを教えてみて明らかになった指導過程上の問題を改善するために計画を変更する ことは必要不可欠の作業であった。アクション・リサーチでは,自分の計画の不備に気づいた時は いつでも,自分の指導をよりよくする事を目指して計画を変えることが可能である。そのような変 更をしやすくするためには,我々は小規模の研究から始めるべきなのである。

第3に,アクション・リサーチでは,教師はすべてのことを自分でできる。問題に直面した場合,

多くの解決策の中からどれを選ぷかは教師の自由である。しかしながら,よりよい解決策があるこ とに気づいていないかもしれないという危険がある。もし,アクション・リサーチが他の教師と共 同で行われたら,この危険性は減少するだろう。

第4に,あまりにも主観的な評価は避けねばならない。本研究でも,データを楽観的に解釈しすぎ たところがあると思う。プロジェクトを評価する時には,一人よがりにならないためにも同僚や研 究者など他人の意見を求めるべきである。

最後に,データを集めることは手段であって目的ではないことを理解すべきである。データは目 的にかなった適切なものを選ぶようにする。それは時間の節約になるし,もっと重要なことには,デー タを誤って解釈する危険をさけることができるからである。例えば,3回目のアンケート調査で,英 語を話す機会が多くなかったと不満を述べた生徒が何人かいた。しかし,この印象は相対的なもの である。英語学習が始まった4月には, English Time は印象的でわくわくするものだっただろう。

しかしながら,7か月が過ぎて,生徒は英語を話すことに慣れてきている。 English Time は生徒に とって特別なものでなくなり,英語をもっと話したいと感じているのである。その結果,不平が出 たのであろう。このデータ結果を額面通りに評価していたら,結果は異なって解釈されていたこと

だろう。

5.2.3今後の計画

このプロジェクトを通して,我々は生徒についての様々な種類の情報を得,彼らの学習方略を知 った。生徒を自主的学習者とするためには,この情報をどのように利用し得るだろうか,また,ど のように処理できるかということが次の課題になろう。

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我々の研究は一定の成果を挙げたと言えようが,この研究も最終段階になって新たな問題が生じ た。この研究は,中学校の英語学習入門期という限定された期間に実施されたものであり,その上,

音声を重視して指導されたものであった。日本では入学試験は筆記テストで行われるように,生徒 は書く能力,それも文法的に正確に書く能力を身につけることを求められている。今後の実践で解 決されるべき最も大きな課題は,上級学年の生徒の書く能力をどのようにすれば伸ばすことができ るか,そしてそのようなプロジェクトにおいてもアクション・リサーチが有効であることを実証す ることである。

結  論

本研究は2つの問題に答えを出すために着手された。一つは,生徒の英語への学習意欲をどのよう に維持できるかということであり,もう一つは自分の授業をどうしたらよりコミュニカティヴにで きるかということである。それまで我々はコミュニカティヴ・アプローチを重要な指導法の一つと していたが,これらの問題を解決するには指導法の改善だけでは十分でないことを認識した。そこ で,授業研究をするために計画,実践観察,分析・評価という4段階を踏むアクション・リサーチ の手法を使うことに決めたのである。これはつまり,現場の教師が指導上の問題点を認識して,そ のための解決策を計画し,それを実行し,観察し,その効果を考察するというものである。そして 実際の指導上の問題点を考えたとき,もし,我々が支持的で「人間中心的」な教室風土の中でコミ ユニケーション活動を生徒に与えられれば,我々は生徒が英語学習に取り組む意欲を喚起できるで あろうという仮説を立てたのである。

かくして,我々は本研究の目的を達成するための主要な方略として,話すことを重視した活動に 焦点を合わせることに決めた。そして,6種類の口頭活動を行うことを計画した。すなわち,フォニ

ックスの指導 English Time の設定,個人面接並びに集団面接テスト,スピーチそして劇の上演 である。これらの活動はすべて観察され,分析された。観察は生徒へのアンケート調査,生徒のレ ポート,教師の授業記録,録音,録画などの手段を使ってなされた。例えば,アンケート調査や生 徒のレポートはフォニックスの教え方についての反省のためのよい材料となった。面接の様子はテー プに録音され,後で分析された。スピーチと劇は生徒とAETによって評価され,その評価カードは 分析のために用いられた。これらすべての記録は学級内での指導,そしてこのプロジェクトそのも のの分析・評価のための資料となった。

以上の資料の分析から,我々はいくつかの結論を導き出すことができる。第1に,生徒は英語を学 習する意欲を増進させ,自分の話す能力に自信を持つようになった。これは教師の授業記録によっ ても認められる。第2に,言語習得に影響を及ぼすと思われる生徒各々の性格感情,考えについて の情報を詳しく得ることができた。第3に,録音や録画によって個々の生徒の言語能力上の違いが明 らかになった。第4に,資料分析を通して,我々は常に授業について考察し,そうすることで授業者 の力量を高めたといえる。その上,我々の実践は当初の目的以上の成果をもたらした。授業者・藤 田の学校の同僚の考えや指導技術をも変えたのである。藤田は本研究を実践する中で同僚というい ろ意見を交換したが,アクション・リサーチの考え自体彼らには目新しいものだったので,彼らは

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それに大いに興味を示した。彼らは本研究に対して非常に協力的で,本研究遂行のために多くの有 益な考えを提供してくれた。しかしまた,反面,彼らもまた本研究からアイディアを得て,自分の 授業に組み入れていった。

要約すると,このアクション・リサーチによる研究は3つの成果を上げた。第1に,生徒を望まし い姿に変容させることができ,第2に,授業者としての藤田の教え方の改善に役だった。第3に,授 業者の同僚に好影響を与えた。つまり本研究は生徒の学習と教師の指導の質を高めたのである。

しかしながら,この研究の過程で新たな問題にも気づいた。第1に,コミュニケーション活動のた めの教材準備をするために,そして資料を分析し,指導過程を評価するためには非常に時間を要す るということである。研究の時間を節約するためには,非常に限定された問題に焦点を合わせるこ とが必要であろう。第2に,英語のスピーキングの技能に焦点を当てたことは,何人かの生徒が英語 学習に関して持っている信念と抵触したようであった。彼らのほとんどはすばらしく知的能力の高 い生徒であるが,我々が行わせたような口頭による活動は彼らの好みではないのである。彼らは個 人の作業としてできるもっと認知的な学習を好む。第3に,自分の研究の成否を評価するためにはも

っと客観的な資料を収集すべきだと感じた。我々が用いた最大の資料は,生徒へのアンケート調査,

生徒のコメント,教師の授業記録等,通常「主観的」と考えられている資料であった。今後はテス トの得点のような,より客観的な資料が必要であろう。

[謝  辞]

本研究を遂行するにあたり,豊田工業高等専門学校・深田桃代氏よりアクション・リサーチに関 する数多くの資料の紹介とご助言をいただきました。深く感謝の意を表します。

引 用 文 献

Corder, S. P.1967. The Significance of Learners, Errors,, 1侃4L, VoL 5, No.4,161−170.

Krashen, S. D. and T. D. TeπelL 1983.η昭ハハα∫麗rα14ρρroαcんLαπg〃48ε!蛋cq顔∫π o〃 π〃診εαα∬700配.

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Moskowitz, G.1978. Cα7επ8αη43加rε〃8加玩εFoγθ∫8η加π8κ48θαα∬ .4∫o那rcεわoo死oπHκ脚π∫5∫ c τεc加 g〃ε∫.Massachusetts:Heinle&Heinle Publishers.

Nisbet, J. D. and N. J. Entwistle.1984. Wπiting the Report. In J. T. Be11, T. Bush, A. Fox, J. Goodey and S. Goulding, Coπ4麗c∫ π85〃2α〃−5cα」ε、伽v8∫∫ご8α∫∫oπ5επE4μcα∫ごoπαムMlαπα8θ〃2εη∫(London:Paul Chapman Publishing), pp.252−257.

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【Translation of H. Dulay, M. Burt and S. Krashen,加π8κα8εTwo(New York:Oxford University Press,1982).]

深田桃代.1995.「教育改革におけるアクション・リサーチの役割」r中部地区英語教育学会紀要』第25号,

31−36.

(9)

深田桃代.1996.「アクション・リサーチと教師の自己実現」『全国高等専門学校英語教育学会研究論集』

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ジョンソン,K.・K.モロウ.(小笠原八重訳).1984. rコミュニカティブ・アプローチと英語教育』.東京

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長澤邦紘.1988.rコミュニカティヴ・アプローチとは何か』.東京:三友社出版.

i縫部義憲.1991.r日本語教育学入門』.東京:創拓社.

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