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ボディ・ワークによる「援助技法」の授業

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Academic year: 2021

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ボディ・ワークによる「援助技法jの授業

今 野 義 孝 *

Practice of Body-work for the Students in Caring Professional Course Y oshitaka Konno はじめに わが国は,今や急速な勢いで高齢化社会へ と向かっている.それにともなって,高齢障 害者の数も急増している.このような状況の 中で,介護福祉従事者の養成が急務となって きている. 筆者は,埼玉県内のK短期大学に新設さ れた福祉学科の学生を対象に, 2年間にわた って,

I

援助技法jの授業を行った.この授 業は,介護福祉士養成の授業のカリキュラム として開講されたものである. 介護福祉の従事者に求められるのは,良質 の援助技法を身につけることである.そのた めには,それぞれの援助技法の理論的な根拠 を正しく理解することや個々の利用者(ここ では,援助を受ける人を意味する)の障害の 実態を正しく把握することが必要である. しかし,これだけでは十分とは言えない. どんなに優れた援助技法であっても,心が通 ったものでなければ,それは単なる機械的・ 形式的な施しにしかならない.ここで,求め られているのは,利用者の身になった援助で ある. 私たちは,ややもすると,

I

障害者二被援 助者

J

I

健常者=援助者

J

といった固定観念 に陥りがちである.こうした固定観念は,援 *こんの ょしたか文教大学教育学部 助者と利用者との聞に,

I

援助者=主体,利 用者二客体」という関係や「援助者=能動, 利用者=受動」という関係,さらには「援助 者=主,利用者二従

J

といった対立的な関係 をもたらす. こうした関係からは,利用者の身になった 援助は生まれてこない.利用者の身になる援 助は,援助者と利用者との聞に「主-客

J

や 「主-従jといった対立関係がなく,両者が 対等の立場で相互にかかわりあうことを通し て成立するものである.そのためには,援助 者自身が利用者の抱えている困難を体験した り,自分が援助を受付る立場になってみると いう体験が必要である. このような観点、から,筆者は援助技法の授 業においてボディ・ワークを取り入れたロー ル・プレーによる体験学習を試みた.本報告 は,その実践内容をまとめたものである. 第 1部では,ボディ・ワークのプログラム の紹介とそこでの受講生の体験について報告 する.第2部では,この授業を通して受講生 が利用者の視点、に立って自分の住んでいる町 をとらえるようになったことを報告する.第 3部では,この授業を通して受講生が抱いた 感想、についてのレポートを紹介する. 第

1

部 ボディ・ワークの体験 1.授業の進め方 援助技法の授業は,平成6年度と 7年度の

(2)

後期に開講された.それぞれの受講生の数は,

2

2

名と

2

3

名である.一回の講義時間は

9

0

分である.最初の授業では,互いの自己紹介 と援助技法についてのオリエンテーションが 行われた.最初から二回目の授業と最後から 三回目の授業では,第

2

部で報告する調査が 実施された.ボディ・ワークによる体験学習 は,三回目の授業から開始された.また,最 後の二回の授業では,レポート発表が行われ た. 一回の授業では,一種類のボディ・ワーク が行われた.それに引き続いて全員がその体 験について感想を報告し,それを筆者が逐一 板書した.さらに,板書された記述内容を

KJ

法を用いて分類し,それにもとづいて望 ましい援助のあり方について討議した. ボディ・ワークの内容は,安藤ら(1

9

8

7

)

のハンディキャップ・オリエンテーリングの プログラムや伊東

(

1

9

8

3

)

のニューカウンセ リングのプログラム,

f

ケ内

(

1

9

9

0

)

のレッス ン・プログラム,今野

(

1

9

9

0

)

の動作法のプ ログラム,それに,金子ら(1

9

8

7

)

の摂食指 導プログラムなどを参考にしたものである. 以下,それぞれのボディ・ワークの実践に おける受講生の感想を述べることにする.

2

.

手の不自由の体験 このボディ・ワークでは,手の動作の不自 由を体験するために,①非利き手で文章を綴 る体験(書字の体験)と,②非利き手で箸を 用いて食事をする体験をした.書字の体験で は,

1

0

分間にできるだけ多くの文章を綴る ことを課題とした. これらのボデ、イ・ワークにおける受講生の 感想の主なものは,次の通りである. (1) 書字の体験 ・手が思うように動かず,イライラした. ・うまく書こうとすればするほど手が動かな くなってしまった. ・肩や首にまで力が入ってしまい, とても疲 れた. ・手が思うように動かないと,書こうとする 内容も思うように浮かばなかった. ・気持ちだけが空回りし,焦ってしまった. (2) 食事の体験 ・うまく箸が使えず,ポロポロこぽしてしま い,自分が情けなくなってしまった. ・箸を使うことに神経が集中し,食事の味が わからなかった. -肩に力が入り,肩がこった. ・あまりにも不器用なので,人に見られるの が恥ずかしかった.

3

.

目かくし歩行の体験 このボディ・ワークで、は,二人が一組にな り,一人が目かくしで白杖歩行をし,もう一 人がそれを援助した.援助の内容は,①1メ ートル離れて横からことばをかけることと, ②ことばをかげながら手を引いて援助するこ との二種類である. ボディ・ワークは,キャンパスを一周する コースで行われた.このコースは,平坦な舗 装道路に始まり,起伏に富んだ砂利道と階段 を経由して,平坦な舗装道路に戻るというも ので,全長約1キロメートルである.一周し た後で,援助者と利用者の役割を交替して, 再度同じ体験学習を行った. (1)利用者の感想 このボディ・ワークにおける利用者の感想 の主なものは,次の通りである. ①見えないことによる不安 ・常に障害物が気になり,神経が疲れた. ・小さな物を踏んでも,それが大きな障害物 のように感じられた. ・ちょっとした段差が,とても大きく感じら れた. -方向が分からず,自分がどこにいるのか分 からなかった. ②ことばかけだけの援助 ・ことばかけをしてもらって少し安心した.

(3)

ボディ・ワークによる「援助技法」の授業 -ことばかけがあるのでまっすぐ歩けた. -少し先までの進路の様子をことばで言って もらうと,見通しがもてるので安心した. .援助者がきちんと自分に顔を向げてことば をかけてくれると,本当に寄り添ってもら っている感じがした. ・援助者があまりに細かい支持を出すので, 気持ちが張りつめて疲れて. ③ことばかげと手を引く援助 ・頼りになる人が手を引いてくれるので安心 した. ・歩く速さが合わないと,引っ張られる感じ で不安だった. -自分が進路の様子を確かめる前に引っ張ら れると,不安で腰が引けてしまった. -自分のペースに合わせて,手をヲ│いてくれ ると安心した. ・ことばかけだけのときよりも身体を支えて もらった方が,相手の存在がわかるので安 心できた. ・援助のスピードが速いか遅いかなどを開い てくれて,自分のペースに合わせてもらう と安心できた. -相手に任せられるという安心感があると, 速く歩くことができた. (2) 援助者の感想 援助者の感想は,次のようなものである. .目の見えない人の行動がゆっくりしている のは,知らないことに対する怖さや,しっ かりと自分で情報を確かめようとするから であることが分かった.そのためには,き ちんとした情報を提供することが大切であ ると思った. ・その人の気持ちを考え,いかにして不安を 取り除いてあげられるかが大切だと思った. .自分の思い込みゃ先入観による援助ではな く,互いのことを知り合い,信頼関係をつ くる必要があることを痛感した. ・一方通行の援助は良くない.利用者のニー ズを確認しながら援助することが大切であ ると思った. ・ことばだけの援助のときは,どこまで詳細 に情報を伝えてよいか分からなかったが, 手を添える援助ではことばだけに頼らなく てすむので自然な援助ができた. 4. 目が見えない状況での会話の体験 このボディ・ワークは,目の不自由がコミ ュニケーションに及ぽす影響を体験するもの で,次の二種類の状況で行われた.①二人が 一組になり,互いに背を向け合って会話をす る.②互いに向い合い,表情やジェスチャー を用いないで会話をする.このボデ、イ・ワー クにおける受講生の感想、は,次の通りである. ①背を向け合った会話 ・相手の顔が見えないので不安で,何を話し ていいか分からなかった. -話をじていても互いに気持ちが通じていな い気がした. -相手の表情が見えないので,相手が何を考 えているのか分からなくて怖かった. ・何から話をしていいか分からなかった. -自分の話を聞いてもらえているかどうか不 安だった. -相手の顔が見えないため,突然話しかけら れたように感じてしまった. ・互いに喧嘩をしているような話し方になっ てしまった. -相手が見えないので寂しくなったり,自分 の殻の中に閉じ込もってしまった. ②ジェスチャーのない会話 ・表情やジェスチャーがないと,楽しい話を しているはずなのに,それが実感できなか った. ・会話に気持ちがのれなかった. -互いに物に向かつて話しかけている感じだ った. ・会話をするとき相手の表情やジェスチャー を見ることによって,生き生きと話したり, 相手と気持ちを共有できることが分かつた.

(4)

-ことばだけでなく,体全体で気持ちを伝え ることの大切さを知った.

5

.

食事の介助の体験 このボディ・ワークでは,①自の見えない 人への食事の介助,②目が見えず耳も聴こえ ない人への食事の介助,③目が見えず耳も聴 こえず,自分では口を閉じることのできない 人への食事の介助を体験した. 自の見えない人への食事の介助では,利用 者は椅子に座り,自かくしをしたまま,援助 者にことばかけをしてもらいながら,スプー ンでヨーグルトやゼリーを食べさせてもらっ た.目が見えず耳も聴こえない人への食事の 介助では,ことばかけを用いない状況で援助 が行われた. 目が見えず耳も聴こえず,自分では口を閉 じることのできない人への食事の介助では, 利用者は首を「く」の字に曲げた状態で援助 を受けた.それぞれのボディ・ワークにおけ る受講生の感想は,次の通りである. (1)利用者の感想 ①目が見えない場合 ・食べ物の大きさが分からないので,どれく らい口を開けてよいか分からなかった. -本当は甘い食べ物でも,

I

辛いよ

J

と言わ れるとそのように感じてしまった. -自分から食べるのと比べて,食べさせられ るのでは味があまりしなかった. ・口の奥までスプーンを入れられると気持ち が悪かった. ・食べ物の量を教えてもらうと,安心して口 を聞けることができた. ・食べ物を口に入れるとき,ことばで合図を してもらうと気持ちの準備ができた. ②目が見えず耳も聴こえない場合 ・いつ食べ物が口に入るのかが分からず怖く て絶えずドキドキした. -最初に食べ物(スプーン)を下唇に当てて もらうと安心して口を聞けることができた. 逆に上唇に当てられると,不快な感じがし て緊張した. ・手や体の一部に触れて,合図をしてもらう と安心して口を開けることができた. -最初に臭いを嘆がせてもらうと食事の内容 が分かるので安心できると思った. ③口が閉じられない場合 ・口を閉じないと飲み込みにくく,食べずら いことが分かつた. ・口を開げたままでは,誤聞東(食べ物が気管 に入る)を起こしやすかった. ・口を閉じることができないので,口の奥に 食べ物を送ることができなかった. ・援助者が指で唇を閉じてくれると飲み込み やすかった. (2) 援助者の感想 -相手が緊張している様子を見ると,ことば かけのタイミンク、が難しかった. ・どのくらいの量を口に運んだらよいか分か らなかった. ・利用者の気持ちを理解しにくいという不安 が,いっそう利用者の不安や緊張を強める ことが分かつた. ・目が見えず耳も聴こえない人への介助では, 体や唇に心地よく触れて合図することや, 臭いを嘆がせて合図することが大切である と実感した. ・利用者が美味しく食べるためには,自分自 身も美味しく食べているような雰囲気で援 助することが大切であると思った. -首が「く」の字に曲がっているときは,首 を起こしてあげると口を閉じやすくなるこ とが分かった.

6

.

声を届ける体験 このボディ・ワークでは,一人の人が後向 きにー列に並んで椅子に座っている 5人に対 して, 5メートル離れたところからランダム な順序で「こんにちは」や「おはよう」と声 をかけ,自分に声がかけられていると思った

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ボディ・ワークによる「援助技法」の授業 ら右手をあげて合図をする. ボディ・ワークは,最初に,いきなり「こ んにちはj と声を届ける条件(声だげを届け る条件)で行われた.次に,声を届ける人が あらかじめ一人ひとりの両肩に気持ちよく手 を当てながら,声が相手の肩や首筋に響くよ うに「こんにちはj と声をかけた後に,あら ためてランダムな順序で声を届ける条件(体 に声を響かせる条件)で行われた. このボディ・ワークにおける受講生の感想、 は,次の通りである. (1) 届けられる人の感想 ①声だけを届ける条件 -自分に声がかけられているのかどうか,ほ とんど確信がなく不安だった. ・声が途中で地面に落ちたようで,自分の背 中に届かなかった. -自分に声がかけられたのを当てなければと 思うと緊張してしまい,いっそう分からな くなった. ・いつ自分に声が届けられるか分からず緊張 してしまい,実際に声をかけられても気が つかなかった. ②体に声を響かせる条件 ・声が背中にしっかりと届くのが分かつた. ・声をかけられたとき,声が背中に気持ちよ く響いてくるのが分かつた. -自分以外の人に声がかけられたときも,誰 にかけれられたかが分かつた. ・声を届ける人が自信をもって声をかけてい ると感じられた. (2) 声をかける人の感想 ①声だけを届ける条件 ・一生懸命に声をかけているのに相手に届か ず,だんだん自信がなくなってしまった. ・声を届けることができないと,相手が自分 を無視しているように思われ,悲しい気持 ちになった. ・声が届かないので,自分の声が空しく感じ られた. -相手と自分の聞に,目に見えない壁がある ように感じられた. ・声が届いていかないので,物に向かつて声 をかけているような寂しさを感じた. ②体に声を響かせる条件 -自然な感じで声を届ザることができた. -自分の声が自然に相手の背中に染み込んで いくような感じがした. -相手の体に気持ちよく触れることによって, 自分の声が相手の体に伝わるのを実感した. ・声をかけるときは,相手の体に気持ちよく 触れて互いに信頼関係をつくることが大切 なことを感じた. 7.目の見えない人の身体に触れる体験 このボディ・ワークでは,どのようにした ら目の見えない人に心地よく触れることがで きるかを体験した.ボディ・ワークは,二人 が一組になり,互いに向い合い,触れる人が 目を開き,触れられる人は目を閉じている条 件で行われた.このボディ・ワークにおける 受講生の感想、は,次の通りである. (1) 触れられる人の感想 -何の合図もなくいきなり触れられると,ビ クッとしてしまった. ・いつ触れられるのか分からないので緊張し た.いざ,触れられるとくすぐったくて不 愉快だ、った. ・どこに触れられるのか分からず心配だった. .遠慮がちに触れられるともぞもぞして気持 ちが悪かった. ・声をかけてもらってから,触れられると安 心した. -触れるところをあらかじめ言ってもらって, 優しくぴったりと手を密着して触れてもら うと安心した. -信頼関係があるときは,触れられたときに 気持ちがよかった. (2) 触れる人の感想 -相手がどんなふうに触れて欲しいかわから

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ないので緊張した. ・自分が緊張していると,その雰囲気が相手 にも伝わり,緊張させてしまった. ・どこに触れてよいか分からず、不安だった. ・相手に対して気持ちを込めてぴったりと触 れると,安心してもらえた. ・自分も気持ちよい感じで触れると,相手も 気持ちよくなることが分かつた. -自分が相手に心を開いて触れると,相手も 気持ちよくそれを受け止めてくれることが 分かつた. 第

2

部 障害者の視点で見た自分の町 1 . 目 的 私たちは,様々な環境に固まれて生活して いる.その中には,障害者にとって便利なも のもあれば,生活を妨害するものもある.し かし,健常者はそうしたものをあまり意識し ないで生活している.この調査では,ボデ ィ・ワークによる体験学習を通して,受講生 があらためて自分の町のそうした環境を障害 者の視点で見直すことができるようになった かどうかを検討するものである.

2

.

方 法 対象者は,実験群と統制群によって構成さ れている.実験群の対象者は,平成6年度と 7年度に「援助技法

J

の講義を受講した上記 の45名の学生である.統制群の学生は,同 短期大学の他学科の一年生45名である. 調査は二回行われ,最初の調査(プリテス ト)は,実験群の場合は,二回目の授業で実 施された.次の調査(ポストテスト)は,最 後から三回目の授業において行われた.統制 群の場合も,実験群とほぼ同じ時期に実施さ れた. この調査では,

1

自分の町を障害者の視点 で点検する

J

というテーマで,自分の住んで いる町の略図をB5版の用紙に描き,その中 に障害者の視点、からのコメントを記入する課 題を求めた.この課題は,対象者が事前に準 備することを避けるために,予告なしに実施 された.

3

.

結 果 対象者が描いた略図に記載されたコメント の中から,全員のコメントに共通する項目と して,①

f

歩きにくい歩道

J

(でこぼこして いたり,段差があったり,急に狭くなってい たりする歩道),②「危険な交差点

J

(信号機 が設置されていなかったり,見通しがよくな かったり,すぐに信号が変わってしまう交差 点),③「車の多い危険な道路

J

(車道と歩道 の区別がなかったり,スピードを出す車の多 い道路),④「邪魔な放置自転車

J

(歩道に自 転車が放置されていたり,点字ブロックに乗 り上げられた自転車),⑤「車の違法駐車」 (車道と歩道の区別がないところで,歩行を 妨げている違法駐車),⑥「歩道の点字ブロ ック

J

,⑦「百人用信号機

J

,⑧「公共機関の 福祉設備

J

(駅や図書館,役所などにおける 点字案内,車椅子用のスロープやエレベータ ーなど)を抽出した.そして,これらの項目 についての記載者数の割合をプリテストとポ ストテストの間で比較した. 表

1

に示すように,実験群ではどの項目で も記載者数の割合が増加しているが,その中 でも特に,

1

歩きにくい歩道

J

1

危険な交差 点 、

J

1

車の多い危険な道路

J

1

歩道の点字ブ ロック」の項目において,ポストテストにお いて大きな増加が見られた.X2検定を行っ たところ,これらの項目では,ブリテストと ポストテストの間に統計的に有意差が認めら れ た

(

1

歩 き に く い 歩 道

J

X2ニ6.453,dfニ 1, pく0.05:

1

危 険 な 交 差 点

J

x

2=6.588 df=

1

, pく0.05:

1

車 の 多 い 険 な 道 路

J

X2=6.597P0.01:

1

歩 道 の 点 字 ブ ロ ッ

J

X2ニ4.894, df

=

1, pく0.05).また, 実験群の対象者の多くは,ポストテストにお いて,自分の町の略図の中で,自分たちの町 の施設・設備や環境が障害者にとって不適切

(7)

-126-ボデ、ィ・ワークによる「援助技法

J

の授業 なことを認識したということや,あらためて 自分の町を障害者の視点で見つめるようにな ったことをコメントしていた. 一方,統制群の場合は,プリテストとポス トテストの聞には,ほとんど全ての項目にお いて記載者数の違いが見られなかった.また, 略図に記載されたコメントの中にも,障害者 の立場を考慮したものはほとんど見られなか った. 表1 実験群と統制群における Pre-testと Post-testの比較 群 実験群 統制群 ア イ テ ム ¥ 前 後 Pre-test Post-test Pre-test Post-test 歩きにくい歩道 40.0% 66.7% 20.0% 26.7% 危険な交差点、 28.8% 62.2% 22.2% 3l.1% 車の多い危険な道路 44.4% 7l.1% 5l.1% 55.6% 邪魔な放置自転車 20.0% 28.9% 26.7% 3l.1% 車の違法駐車 15.6% 22.2% 24.4%20.0% 歩道点字ブロック 24.4% 46.7% 17.1% 22.2% 盲人用信号機 11.1% 18.9% 6.7% 11.1% 公共機関の福祉設備 33.3% 42.2% 22.2% 24.4% 第 3部 受 講 生 の レ ポ ー ト ここでは,ボディ・ワークによる体験学習 の後に提出された受講生のレポートの中から 代表的なものとして4点を紹介することによ って,受講生がこの授業を通して援助につい ての新たな視点、を獲得したことを報告する. 1.自の見えない人への援助で大切なこと 私が特に印象に残っているのは,自の見え ない人への食事介助の体験だった.目の見え ない利用者の体験をしたとき,ほんの一時的 に目が見えないのに,急に不安な気持ちにな ったり,なんでもないのに異常に恐怖心を抱 いてしまった.目が見えないということは, ただ不便ということだけではなく,常に恐怖 に襲われているような感じになることではな いかと思った.また,私たちは,いかに普段 の生活で視覚に頼って判断したり行動したり することが多いかをあらためて思い知らされ た.でも,その代わり,聴覚や触覚,嘆覚が 敏感になるような感じがした.援助するとき も,これらの感覚を活用できるように工夫し』 なければならないと思った. 私が実際に体験して,初めに頼ったのは, やはり援助者の声かけだ、った.目では食事が のっているスプーンを確認できないので,援 助者の声かけで食べるタイミングをつかまな ければならなかった.スプーンが口の前に来 たかどうか分からなかったから,私は口を開 けて待っていた.待つというほどの長い時間 ではなかったが,今まで口を開けたままの状 態でいたことがなかったから,その状態でい るのがとても長く感じられ,なんだか情けな い気分だった. 口の前にスプーンが来たことがわかる援助 は,利用者の下唇にスプーンの先端部を当て て,食べ物が口の前にあるということを知ら せることがとても重要であると思った.また, スプーンの上にのせる食事の量や大きさなど は,普段の生活ではあまり意識していないし, 適当に目で確認して調節して食べることがで きるが,目の見えない利用者は確認すること ができないので,介護者がその人に適した量 と大きさを判断しながら援助していくことが 大切だと思った. 次に私が印象深かったのは,二人が一組に なって目の見えない人の体験をしたことだ、っ た.互いに向かい合って会話をしているのに 相手の表情が見えないので,意志が伝わりに くかった.相手が話ていることが自分にしっ くりと伝わってこないし,自分が話している ことが相手に伝わっていないのが感じられた. 互いの表情や身振りが,こんなにもコミュニ ケーションにとって大切なものであることを それまで知らなかったことを痛感させられた. このような体験を通して,私は,目が見え ない人に援助するときは,目が見えないこと からくる恐怖心を取り除き,互いに心が通じ 合えるようにすることが大切であると思った.

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そのためには,相手を思いやる心をもつこと がなによりも大切であると思った. 2. 声かけや会話で大切なこと 私が援助技法の授業の中で最も印象に残っ ているのは,

r

声かけ」である.5人が横に 並んで椅子に座り,少し離れたところから一 人が,

r

こんにちは」や「おはよう」など, 自分の好きな言葉で一人に向かつて声をかけ る.一回目に,ただ、離れて声をかげただけの とき,その声は目的の人に届かず,途中で落 下してしまう感じがした.実際, 5人のうち で自分に声が届いたと実感した人はいなかっ た.二回目には,まず声をかける人が一人ず つの肩に手を置きながら言葉をかける.その 後,一回目と同じことを行ってみた.すると, 不思議と声は目的の人にしっかり届くのであ る.私が声をかけてもらうのを体験したとき も,確実に私に向かつて話しかけられている という実感があった.このことは,私にとっ てとても不思議なことのように感じられ,い くら考えてみても理由は思い浮かばない.し かし,このことで私が感じたことは,私が援 助者の立場に立ったとき,利用者とコミュニ ケーションをとろうとするときの大切にすべ きことを教えられたように思う.それは,遠 くの方から遠慮がちに話しかけるのと,相手 の近くに寄っていき,スキンシップをはかり ながら声をかけるのでは,受付取り方がまっ たくちがうのだろうというこである.後者の 方が,こちらがリラックスしている分,相手 もリラックスでき,親近感がもてるためにこ ころがうちとけ合うのではないかと思う. 声かけについてもう一つ心に残っているの は,二人で向かい合って目をっぷり話しをす るというものである.一見,何でもない簡単 なことのように思えるが,実際やってみると, お互い何を話したらよいのかが分からなくな る.普段から仲のよい友達とでさえ,ぎこち ない会話になり,心の仲は不安でいっぱいに なった.まして初対面の人だったら,なおさ らではないかと思う.それどころか,もしか したら,一声も出せないかも知れない. ここで私が感じたことは,話しをするとき には相手の立場になったつもりで話すと,相 手とより良い関係がつくれるのではないかと いうことである.互いに目をつぶ、った状態で 話そうとする場合は,相手の不安を和らげる ような話し方や接し方をし,見えない分,よ けいに相手を思いやって話すことが大切だと 思った.もし,目が見えるのだ、ったら,ちょ っとした表情や仕草によって受け手は安心感 を与えられることが可能だ、からである.これ を普段の生活での会話に置き換えてみると, よほどコミュニケーションが成立している者 同士でない限り,冷たくそっげない態度をと られたら,やはり不安になったりあるいは不 機嫌な気持ちになるだろう.だからやはり, 目の見える者同士の普段の会話の場合におい ても,相手の気持ちを考え,相手の立場にな って話すことが必要だ、と感じた. 私は,援助技法という授業を次のように受 け止めた.何かを表現するときには自分が受 けるときのことを考えて表現すると,相手は より受け取りやすいということを教えてくれ た授業であると思った.コミュニケーション をとることは,介護するにあたってとても重 要であると考えている.

3

.

コミュニケーションで大切なこと 援助技法の授業を受けてみて,援助にとっ て大切なのは,①相手の身になることと,② コミュニケーションをはかるときにはリラッ クスすること,を学んだ. まず,一つ目の相手の身になることについ てだ、が,これは授業で実際に自らが体験して みて,初めて障害をもった人やお年寄りの立 場で物事を考えられるようになるのだと思っ た.授業では,目隠しでの散歩や目隠しでの 食事,言葉のない会話などについて,援助す

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-128-ボディ・ワークによる「援助技法

J

の授業 る側と援助される側になって体験した.私は, そこで,目の見えないときの歩行中の段差の 恐ろしさ,声かけなしでは不安でたまらない こと,何の合図もない食事は目の見えない人 にとっては不快でたまらないことなどを自ら 感じ取ることができた.このように,私たち はありがたいことに健康であるために,体の 不自由な人の気持ちを普段の生活の中では感 じ取ることができない.しかし,そういうこ との体験から,言葉ではなく体で知ることが できるのだ. 私は,以前に

A

区のボランティアセンタ ーで催された「高齢者疑似体験プログラム」 というのに参加したことがあった.このとき にも,同じことを考えさせられた.相手の身 になるということは,大変難しいことである が,それが分かつてこそ相手とのコミュニケ ーションがすばらしいものとなってくる.こ れから介護する立場になっていく私にとって, これは永遠のテーマとなることであろう. 次に,コミュニケーションをとる際には, 緊張したり身構えたりせずにリラックスした 態度で接することが大切だ、と思った.これは, 私自身の最大の課題であると言える.私は, 他人の目を気にしてしまう性格なので,初対 面の人とはうまくコミュニケーションがとり にくいところがある.そのため,対人関係で はもちろんのこと,福祉施設での実習中にも このことが問題になり,いつも私の悩みの種 となっている.しかし,このことについては 体験によって学ばされることがあるのだ.そ れは,援助する側が臆病で消極的では,援助 される側も心を開かなくなってしまうのだ. 確かに,自分が援助される立場にいて,援助 者がおどおどして頼りなく,無表情で会話も 少なかったら,私はその援助者に自分らしさ を見せたいとは思わないし,頼ってみようと は思わない.やはり,援助する際には,相手 を安心させられるようなゆったりとした気持 ちと笑顔,声かけなどが必要となってくる. 私は他人の目を気にしていると言ったが, 本当はそうではなくて,自分のことしか見て いないのだと気づいた.もっと相手を気遣う ことを心がければ,あまり緊張をしないでス ムースにコミュニケーションをはかれるよう になるのではないだ、ろうか.自分なりに努力 して,少しずづでよいから見直していこうと 思っている. このように,私はこの援助技法の授業の中 で,援助の基本的かつ最も大切なことを学ば されたと思う.頭では分かつていても,実際 には理解できないことを教えてもらったよう に思う.

4

.

r

専門家j にとって大切なニと 私たちは,この短大に入ってから常に「介 護の専門家」でいるように求められてきた. 専門家は,専門家としての権威をもつことが 大切だと思う.私の考える権威とは,熟達し た技術や専門知識をもっていることはもちろ ん,人間としてもすぐれた人格の持ち主をい う.権威とは,専門家自身が意識して感じる ものではなしほとんどの場合,援助の対象 となる利用者が,専門家である援助者に対し て感じるある種の信頼と尊敬の念であると思 う.このような意味において,権威は援助を すすめていく上で有効なものであり,ときに は非常に効果的に機能することがある.その 反面,権威も度を越すと,利用者から反発を 買ったりすることになる.したがって,相手 に威圧的になったり,自分の意のままにしよ うとしたり,相手を支配しようと思ってはな らない.これは,授業で行った体験を通して 強く感じたことである. また,私がこの授業で感じたことは,いか なる場合の援助過程においても,援助者は絶 えず利用者である相手の立場に立って感じ, 考えられる人でなければならないということ である.相手の立場に立って感じて考えるこ とによって,相手を深く理解することができ

(10)

るし,相手から気持ちゃ考え,情報といった ものを引き出すことができると思う.また, 相手の立場に立つこと自体が,

r

私はあなた の味方ですよ j というサインを送っているこ とになる.そうと分かれば,相手もより心を 聞いて話すようになるだろう. より相手の立場に立って考えたり感じたり するためには,相手を尊重する気持ちが非常 に重要である.援助者と利用者は,えてして 強者と弱者の関係になったり,上下の関係に 陥ったりすることが多い.私たち援助者は, 利用者との関係を同じ人間として対等な関係 であると意識して実践することが大切である と思う. まとめ 本報告は,筆者が2年間にわたって行った ボディ・ワークによる「援助技法」の体験学 習の実践記録をまとめたものである.この体 験学習では,受講生が自分自身の体験にもと づいて利用者の視点に立った援助のあり方を 身につけることを最大の目標とした.したが って,それぞれのボディ・ワークの実践にあ たっては,そのねらいや理論的な背景に関す る予備知識は最小限にとどめ,できるだけ受 講生が自らの体験によってそれらを理解する ようにした.本報告が,ある特定の仮説検証 的な方法にもとづいたまとめ方でなく,受講 生の体験談の羅列的な記述に終始しているの は,こうした理由によるものである. ところで,こうした授業の進め方は,当初 は,受身的な授業に慣れていた受講生に大き な戸惑いを与えたようである.筆者自身にと ってもこうした試みは初めてであり,これま で理論や理屈を中心にした授業に慣れてしま っていたため,本当にこれでいいのだろうか という心配があった.しかし,何回か授業を 進めるうちに,受講生の多くが,ボディ・ワ ーク後の体験談やレポートの中で,

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この授 業では,頭で考えるのではなく,具体的な体 験によって利用者の立場を理解することがで きた

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いつもとは違った角度から物事を見 つめることができた

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普段の生活では気づ かない新たな発見をした」と語るようになっ た.筆者は,受講生のこうした変化に励まさ れながら,受講生と一緒に授業を創造するこ との楽しさをあらためて体験することができ た.こうした,筆者と受講生の間の生き生き したコミュニケーションが,受講生にとって も筆者にとっても,あらためて望ましい援助 のあり方を考えていこうという態度をもたら したものと思っている. 最後になるが,筆者は,受講生がこの授業 で身につけた知識や態度を利用者への実際の 援助において役立ててくれるものと確信して いる.そして,受講生がそこで身につけたり 発見したことを持ち寄って,互いに語り合う 機会がくることを心から願っている. 参考文献 安 藤 忠 ・ 原 田 昭 知 ・ 森 脇 賢 司 (1987)

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ンディキャップ・オリエンテーリング 松籍社. 伊 東 博 (1983):ニュー・カウンセリング 誠信書房. 金子芳洋編 (1987):食べる機能の障害-そ の考え方とリハビリテーション- 医歯 薬出版. 今野義孝 (1990):障害児の発達を促す動作 法 学 苑 社 . 竹内敏晴 (1990):

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からだと j と「ことば」 のレッスン講談社現代新書.

参照

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