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授業改善のためのアクション・リサーチ

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Academic year: 2021

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(1)

1. はじめに

日本でも多くの大学で授業評価が行われるよ うになってきた。しかし、アメリカの大学に比 べると授業評価の重みも違うし、歴史も浅いの で、学生から自分の授業を評価されることに違 和感を覚える教員も少なくないかもしれない。

また、授業評価のアンケート項目は、できるだ け多くの授業で共通して使用できるように作成 されており、授業評価の結果をもらっても、評 価が良かったのか、悪かったのかという面に意 識が流れ、授業を具体的にどのように改善して いこうかというレベルまでは、考えられない場 合もあるのではないだろうか。

この稿では、授業改善のためのアクション・

リサーチを行うことによって、半期に一度の大 学の授業評価では得られない授業改善の方法に ついて考えてみたい。

2. アクション・リサーチとは

授業改善のためのアクション・リサーチは、

その定義やプロセスにも色々なバリエーション が あ る。そ の 名 称 自 体 も、Gay & Airasian

(2000:593)によると teacher research、practi- tioner inquiry、teacher professional develop- ment、teacher  as  researcher、teacher  self evaluation など様々な名称で実践されている。

この稿では、ここ10年ほどの間に学校現場に 密着したリサーチとして、日本でもかなり浸透 してきたと思われるアクション・リサーチ(以 下 AR)という用語を使用したい。

また、この稿で筆者が AR と言うときの定義 は、授業改善のためのものなので、三上(2000:

87)にならい「授業内におけるさまざまな問題 を解決するために、教師自らが中心となって、

その授業に関するデータを収集・分析し、その 問題の解決策を導き出していく研究方法」とす 1)

この定義を見ても分かるように AR は、きち んとした教師なら誰もが授業の振り返りとして 行 っ て い る こ と の 延 長 線 上 に あ る。佐 野

授業改善のためのアクション・リサーチ

田 中   誠

(長崎国際大学  人間社会学部  国際観光学科)

要 約

この稿は、授業改善のためのアクション・リサーチを紹介し、さらなる普及を目指すものである。ま ず、アクション・リサーチとはどういうものかについて概観し、次に筆者の行った英語力の格差の大きい クラスで、読む能力と書く能力を効果的に伸ばすことをテーマにしたアクション・リサーチの実践例を 紹介する。その中で、特にシャドウイングは、英語力が高い学生にも低い学生にも、英語力の向上に役 立つと実感できるトレーニングであるということを示した。

教育の現場には理論と実践のギャップがあることもあり、学生のニーズに応えるためにも教育現場に いる教師のアクション・リサーチが必要である。アクション・リサーチは授業改善のための重要な要因の 1つである。

キーワード

アクション・リサーチ、質的研究、教育、授業改善、理論と実践

(2)

(2005:5)で述べられているように、『AR は、

ある特定問題への「振り返り」を体系的に持続 すること』と考えることができる。AR のプロ セスも、殊更変わったものではない。AR のプ ロセスの例は以下の通りである。

 1)問題の発見:直面している事態から扱う 問題を発見する。

 2)事前調査:選んだ問題点に関する実態を 調査する。

 3)リサーチ・クエスチョンの設定:調査結 果から研究を方向づける。

 4)仮説の設定:方向性に沿って、具体的な 問題解決の対策を立てる。

 5)計画の実践:対策を実践し、計画を記録 する。

 6)結果の検証:対策の効果を検証し、必要 なら対策を変更する。

 7)報告:実践を振り返り、一応の結論を出 して報告する。

佐野(2005:5)

このような手順を踏み、授業を行いながら、

それと同時にリサーチをして、改善すべき点が あれば改善し、その改善が本当にうまくいって いるのかリサーチを続けるという、「計画→実 践→観察・省察→計画の修正→実践→観察・省 察→計画の修正……」というようなスパイラル 状の流れを行っていく。

研究手法としては、質的研究手法が中心とな る。量的研究手法で見られるような、実験群と 統制群を設定して、統計的手法を用いて分析を するような手法を通常はとらない。よって、

AR は一般的な真実を追究する科学的研究では ないと指摘される側面はもっているのかもしれ ない。しかし、教育の現場では、理論と実践に はかなりのギャップがあるように思われる。理 論では分かるが、それをどう実践していけばよ いのかが分からないということは、教育現場で は頻繁に起こりえる。だからこそ、現場で指導

している教師だからできるリサーチというもの は、非常に重要であり、このようなリサーチの 積み重ねにより、類似のパターンが検出され、

実践的指導の理論として一般化することが可能 であれば、教育現場にとっては大きなプラスに なると考えられる(cf. 佐野 2005)。

元々、日本の学校での AR は小学校・中学 校・高等学校の先生が中心になって実践されて きているが、大学の授業でも必要になってきて いるのではないかと筆者は考える。学生の学力 格差の拡大はどの大学でも頭の痛い問題であろ う。毎年、同じように授業をしていては、より 良い授業は提供できないし、授業評価で学生の 満足度を高めることはできない。大学の教員は リサーチには慣れているのだから、大学の教員 こそ AR を実践して授業改善を行うべきだと 思う。

次の節では、筆者の AR の実践例を示す。こ の AR が模範的なものとは言い難いかもしれ ないが、実践例を見ることで、より AR に対す る理解が深まるであろうし、大学で語学の授業 を担当している人とっては、有益なことも多い と思う。

3. AR の実践例 3.1

 テーマ

英語力の格差の大きいクラスで、読む能力と 書く能力を効果的に伸ばすための AR。

3.2

 背 景

リサーチを行ったのは「英語表現法」(3年 次以降配当科目、週1回半期の授業)という平 成18年度から新たに設置された科目である。本 学の英語関連科目は、オーラルによるコミュニ ケーションを重視した授業が多いので、読む力 を中心に書く力も伸ばすことに特化した授業を 提供するために新たに設けられた科目である。

筆者にとっても新たなチャレンジとなるので、

数年間に渡り AR を実践して、年々充実したも のにしていくことが目標である。よって、今回

(3)

の AR は数年間に渡って行われる予定の一部 に過ぎない。

この授業はシラバスに中級レベルと書いてい たが、選択科目であることもあり、受講生の英 語力の格差が大きいことが予測された。実際に 受講してきた学生は、予想通り、TOEIC 900点 レベル(英検1級レベル相当)の英語力のある 学生から、英検3級レベルより少し上程度のレ ベルの学生まで、英語力の格差が大きい学生11 名であった。英語力の差は大きいが、幸い11名 という少人数であったので、目が届きやすい し、よく観察もできる。そこで、英語力が高い 学生にも、英語力が低い学生にも満足できるよ うな授業を提供したいと考えた。テキストは、

土屋武久他著『大学英語総合ナビゲーター リ メディアル・グラマー編 (Book 3)』(金星堂)

を使用した。このテキストは、平易な英語で書 かれているので、英語力が高くない学生も何と か読めるし、CD 付きなので、学生は家でも  CD を聞きながらトレーニングをすることがで きる。英語力が高い学生にとっては、読んで訳 をするような授業をすれば物足りないレベルの テキストであるので、テキストを発信型の英語 の訓練にも使うように指示し、このレベルの英 語を使いこなせるようになることを目標とし た。そして、そのためのトレーニングを意識し た授業を行った。

3.3

 仮 説

この授業の内容を考える際に、設定した仮説 は以下の5つである。

 仮説1:和訳先渡し方式2)  の授業をすること により、授業中に読む回数を増やせ ば、英文の理解力が増すだろう。

 仮説2:和訳先渡し方式の授業をすれば、特 に英語力が低い学生の役に立つだろ う。

 仮説3:英文全体の解説をする前に、要約で 大枠をつかませることは、英文全体

の理解に役立つだろう。

 仮説4:要約を短時間で覚えさせ、逐次通訳 のように口頭英作文をさせれば、ス ピーキングとライティング両方の力 の向上に役立つだろう。

 仮説5:和訳先渡し方式で浮いた時間をシャ ドウイングのトレーニングに当てれ ば、英語力が向上するだろう。

3.4

 授業の流れ

テキストの各ユニットの構成内容は以下の通 りである。

・Vocabulary Bank(単語・熟語のチェック)

 ・One 

piece Talk(重要表現のリスニング穴 埋め問題)

・英語の本文(210語程度)

・Focus on Grammar(文法事項の確認)

 ・Drill(上記の文法事項を使っての整序英作 文)

 ・Listening(CD を聴いて空所に適語を入れ る練習問題)

 ・Plus One Activity(単語や語法に関するミ ニテスト)

但し、何度も英文を読ませることを重視した ので、基本的な授業の流れは、テキストの順番 通りには行わず、以下のような形で行った3)

(テキスト本文の指導の流れ以外は簡略化して 記述している。)

1 前時の復習として、前ユニットの英文の シャドウイングをする。シャドウイングの 際には、必ず語順通りに意味をイメージし ながら行うように指示を出す。基本的に は、1

  回目は文字を見て、2

  回目は文字を 見ないで行う。但し、英語力が高い学生は 2回とも文字を見ないで行うように指示を する。

2 Focus on Grammar の解説。

(4)

3 Drill を解いて答え合わせ。

4 One 

 piece Talk を解いて答え合わせ。

5 Vocabulary Bank の確認。

6 本文を見ながらリスニング。内容を理解 しながら聞くように指示。

 7 本文の英語の要約(cloze test 方式で穴が 開いている)、それに対応する日本語の要 約、全文和訳が印刷されたプリントを配布 し、日本語の要約に目を通させる4)。自分 が考えていた内容と一致していたかどうか 確認するように指示。

8 英語の要約に目を通させる。

 9 英語の要約の穴にどういった単語が入る か考えるように指示を出して、2

  回目のリ スニング。

10 英語の要約の穴に単語を入れるように指 示。英語力の高い学生は、早くできるの で、要約の英文を覚えるように指示。

11 英語の要約の答え合わせと解説。

12 教師の後につけて、英語の要約の音読。

意味をイメージしながらと指示。

13 英語の要約を覚えるように指示。(英語 の要約にはセンスグループごとに斜線が引 いてあり、和文はそれに対応するように同 時通訳方式の日本語になっている。)

14 ペアワークで一人が要約の日本語を言っ て、もう一人が英語を言う通訳練習(口頭 英作文)をする。または、教師が日本語を 言い、学生は各自英語を言う通訳練習(口 頭英作文)をする。(英語力の低い学生も要 約は120語程度なので、何とか頑張れる。

ダメなときはプリントを見てもいいことに している。英語力の高い学生は、できるだ け流暢に通訳しようと頑張る。)

15 要約の英文を教師が読み、学生はシャド ウイングをする。英語力の高い学生は、要 約を見ないで、低い学生は見ても構わない ように指示。

16 本文全体のリスニング。

17 本文をポイントのみ解説。

18 教師の後につけて、本文の音読。意味を イメージしながらと指示。

19 本文のシャドウイング1回目。文字を見 ながら、意味をイメージしながらと指示。

20 本文のシャドウイング2回目。原則とし て文字を見ないで、但し、どうしても見な いとできない学生は見ても良いという指示 を出す。意味をイメージしながらとも指 示。

21 Listening を解いて答え合わせ。

22 Plus One Activity を解いて答え合わせ。

23 要約の英文を書いて覚えさせる。

このようにして、英語力の高い学生も、英語 力の低い学生も、どちらも英語力を高めること ができるだろうと考えたトレーニングを行っ た。

3.5

 結果の検証

授業中に学生の様子を観察したり、授業後の 学生との話しの中で授業に対する意見を求めた りして、最後の授業までに仮説の修正が必要か をチェックしたが、読む能力と書く能力は短期 間で効果を実感することは難しいので、最終的 に最後の授業でアンケート調査を実施すること にした。アンケートの形式は、各項目に対して 答えを5段階(5=かなりあてはまる、3

  =ど ちらとも言えない、1

  =全くあてはまらない)

で選択するものと、自由記述である。以下、項 目別に表にまとめて見ていきたい。

仮説1に関して、「授業中、繰り返し読むこと で理解力が増したと思う」かどうかの質問に対 する回答が、表1である。なお、期末試験の成 績が90点以上の学生6名を英語力の高いグルー プ、80点未満の学生5名を英語力の低いグルー プとして分類している。

表1に関して、英語力が高いグループでは概 ね評価が高いが、英語力が低いグループでは、

さほどでもなかった。英語力が高いグループに は、理解力が増したという自覚症状があるが、

(5)

低いグループではそこまで至っていないよう だ。低いグループではもっと更に読ませる必要 があるのかもしれない。これは、今後の課題と したい。

仮説2に関して、「英文の解説の前に日本語 の訳をもらうのは役に立った」かどうかの質問 に対する回答が表2である。

表2に関しては一人を除いて高い評価をして いるのが分かる。この一人は、英検1級レベル の英語力があり、和訳など必要のない学生で あったためである。よって、このような例外的 に英語力の高い学生を除いては、仮説2は妥当 なものであったと言えよう。

仮説3に関して、「英文の解説の前に要約で 大枠をまずつかむことは英文全体の理解に役

立った」かどうかの質問に対する回答が表3で ある。

表3に関しては、どちらのグループでも評価 が高いことが分かる。まずは大枠で、英文に何 が書かれているのかが分かれば、英文全体の理 解に役立つと考えている学生が多い。授業中、

要約のプリントには、全ての学生がいつも真剣 に取り組んでいたように思う。

仮説4に関して、「要約を短時間で覚えて、逐 次通訳のように口頭英作文をするのはスピーキ ング力の向上に役立つと思った」かどうかの質 問に対する回答が表4であり、「要約の日本語 を英語に直す練習は、ライティング力の向上に も役立つと思った」かどうかの質問に対する回 答が表5である。

表1 「授業中、繰り返し読むことで理解力が増したと思う」についての結果5)

1 2

3 4

5 ポイント

0 0

3 2

英語力が低い 0 グループの人数

0 0

0 3

英語力が高い 3 グループの人数

0 0

3 5

3 全体の人数

(低いグループ平均=3.4、高いグループ平均=4.5、全体平均=4.0 )6)

表2 「英文の解説の前に日本語の訳をもらうのは役に立った」についての結果 1 2

3 4

5 ポイント

0 0

0 2

英語力が低い 3 グループの人数

1 0

0 3

英語力が高い 2 グループの人数

1 0

0 5

5 全体の人数

(低いグループ平均=4.6、高いグループ平均=3.8、全体平均=4.2

表3 「英文の解説の前に要約で大枠をまずつかむことは英文全体の理解に役 立った」についての結果

1 2

3 4

5 ポイント

0 0

0 2

英語力が低い 3 グループの人数

0 0

1 1

英語力が高い 4 グループの人数

0 0

1 3

7 全体の人数

(低いグループ平均=4.6、高いグループ平均=4.5、全体平均=4.5

(6)

表4に関して、英語力の高いグループの評価 は高いが、英語力の低いグループは、そうでは ない。これは、英語力の低いグループはスピー キング力の向上に役に立つと実感できるレベル まで至らなかったためではないかと考えられ る。これは、今後の指導の課題としたい。

表5に関しては、どちらのグループでも、ま ずまずの評価を得ている。表の4と5でこのよ うな違いが出たのは、授業の最後に英文の要約 を実際に書いて覚える作業をしたことがライ ティング力向上にも役立つと感じることができ た原因の一つであろう。

仮説5に関して、「シャドウイングは英語力 の向上に役立った」かどうかの質問に対する回

答が表6である。

表6に関しては、どちらのグループにおいて も評価が高い。シャドウイングはきちんとレベ ルに応じた学生別の指示を出せば、英語力の高 い学生にも、英語力の低い学生にも、どちらに も英語力の向上に役立つと実感できるトレーニ ングとなりえると言えそうだ。

次に主な自由記述の内容は、以下の通りであ る。

〈英語力が高いグループ〉

 ・口頭英作文は、スピーキングやライティン グ力の向上に非情に有効だと思うので、続 けた方がよい。

 ・英語コミュニケーション7)より、とても理

表6 「シャドウイングは英語力の向上に役立った」についての結果 1 2

3 4

5 ポイント

0 0

0 2

英語力が低い 3 グループの人数

0 0

0 2

英語力が高い 4 グループの人数

0 0

0 4

7 全体の人数

(低いグループ平均=4.6、高いグループ平均=4.7、全体平均=4.6)

表5 「要約の日本語を英語に直す練習は、ライティング力の向上にも役立つ と思った」についての結果

1 2

3 4

5 ポイント

0 0

1 1

英語力が低い 3 グループの人数

0 0

1 2

英語力が高い 3 グループの人数

0 0

2 3

6 全体の人数

(低いグループ平均=4.4、高いグループ平均=4.3、全体平均=4.4)

表4 「要約を短時間で覚えて、逐次通訳のように口頭英作文をするのはス ピーキング力の向上に役立つと思った」についての結果

1 2

3 4

5 ポイント

1 0

2 1

英語力が低い 1 グループの人数

0 1

0 3

英語力が高い 2 グループの人数

0 1

2 4

3 全体の人数

(低いグループ平均=3.2、高いグループ平均=4.0、全体平均=3.6 )

(7)

解しやすく、英文は無理なく頭に入ってき たのでやりやすかった。

 ・授業内容の流れが一定だったので、分かり やすかったし、Unitごとの内容もつかみや すかった。

 ・要約に大事なポイントや大体の意味が含ま れているので、その後に本文の長文を読ん でも理解しやすかった。

 ・シャドウイングも初めに比べるとだいぶ言 えるようになってきたので、自分でも自主 的に続けようと思いました。

 ・私にちょうどいいレベルのテキストだった のでよかったと思います。

 ・口頭英作文の際、要約を覚える時間がもう 少しあった方が良いような気がした。

 ・作文の練習があればもっといいと思いま す。

 ・文法事項の解説の時、受験英語での教え方 みたいな時があったのはどうかと思った。

〈英語力が低いグループ〉

 ・この授業のレベルは難しくもなく、簡単で もなく、ちょうどよいレベルだったが、自 分でも努力しないと、授業を受けるだけで は英語力は向上しないということがよく分 かった。

 ・テキストのレベルがちょうど良かったの で、授業が受けやすかった。

 ・全部英語で行う授業ではなかったので良 かった8)

 ・授業のペースが少し早いと感じるときが あった。

 ・逐次通訳練習は、プリントをつい見てし まって、そのまま読んでしまうこともあっ て、自分のものになることができなかっ た。

自由記述で特に興味深いのは、英語力が高い グループも英語力が低いグループもテキストの レベルや授業のレベルが適切であったと感じて

いる点である。特にテキストに関しては、英語 力が高いグループには易しすぎるのではないか と心配もあったので、TOEIC 900点レベルの学 生に、テキストのレベルについての意見を求め た。その学生のコメントは「確かにあれは高校 レベルな気がしますが、簡単すぎることはない です。速読や、スピーキング、ライティング等 の発信型の訓練においては、あの程度のレベル が最適だと思います。」ということであった。

他の学生も英語力の格差があるクラスにもかか わらず、自由記述にある通り、レベル的には適 切であったと考えているようだ。これは、授業 の流れの所を見ていただければ分かるように、

授業中の活動の指示を英語力のある学生向けと 英語力の低い学生向けの両方に対応できるよう な指示を与えていたことが大きな要因だと考え られる。また、英語力の高い学生にはテキスト を発信型の訓練に使うように日頃から話してい たことにより、ただ読むだけでなく、読んだも のを使って発信することを意識して活動をした ことで、易しめの英文でも適切なレベルだと思 えたのだと考えられる。

自由記述の指摘にあるいくつかのマイナス要 因は、今後の課題として改善したい。特に、口 頭英作文に関しては、もう少し時間をとるべき であったと感じている。

以上のアンケートの結果を見てみると、学生 はこの授業に関して、英語力の格差の大きいク ラスでありながら、得るものは大きかったので はないかと思われる。但し、今後に課題を残し た仮説もあり、次年度からも継続してARを続 けることにより、さらなる改善を行っていきた い。

4. まとめ 

最新の理論を実践して、より良い教育を行う ということは大切なことである。しかし、理論 と実践は教育の現場ではギャップがあることも 見受けられる。そのため、AR は良識ある教師 にとって、今後ますます重要性を増してくると

(8)

思われる。特に、「役に立たない」と常に批判に さらされてきた日本の学校での英語教育は、

AR を実践していくことによって、変わってい けるのではないかと考えている。最近、大学生 の英語力がどんどん低下しているという声を聞 くが、それだからこそ、学生と一緒になって授 業を作り上げて、この授業は有益であったと学 生に言われるようなものにしたい。AR はその ための重要な要素である。

1)アクション・リサーチは,授業改善のためだけ のものではなく,看護や福祉の分野などの様々な 分野で行われている(cf. 佐野 2005:3).その 場合の定義は当然異なるが,この稿では教育現場 のためのアクション・リサーチの定義を使用す る.

2)「和訳先渡し方式」とは,英文を日本語に丁寧 に訳していくことに時間を割かずに,先に和訳を 渡して,その分,浮いた時間を他の活動に使い英 語力を高めようという授業方式である.(cf. 金谷 他 2004)

3)「覚える」という表現を授業の流れの中では使 用しているが,実際の授業中は極力使用しないよ うにしている.学生は,暗記は嫌がるからであ る.代わりに「すり込む」という表現を授業中は 使用している.頭の中にすり込み,いつでも引き 出して,状況に応じて使いこなせるようにしなさ い と 言 っ て い る.例 え ば,My favorite subject  is mathematics. という文を暗記しても,その英 語を使用する状況でしか使えない.すり込むとい うのは,その型をすり込んで,My favorite food  is〜. とか My favorite music is〜. 等と応用が利 くようにすることだと説明をしている.すると,

結局は同じようなことであるかもしれないが,学 生は受験英語の丸暗記とは何となく違いそうだと 理解してくれる.

4)付録参照.

5)人数が少ないので実数表記の表にしている(cf. 

佐野 2005:29).また,授業の最初と最後でどの 程度,読む力と書く力が伸びたのかテストで計測

することも可能であるが,今回は,半期週1回の 授業であり,飛躍的に数値が向上することは難し いので,学生がどのように感じているかの調査と した.

6)グループごとのポイントの平均値である.

7)ここで学生が言っている「英語コミュニケー ション」という授業は,筆者が担当している,「難 しくて,きつくて,宿題が多い」上級レベルの英 語の授業のことを指している.よって,「英語表 現法」の授業は中級レベルがターゲットなので,

「英語コミュニケーション」を履修した後に受講す る学生は,易しく感じるであろう.

8)英語の授業であるので,筆者は授業中,もちろ ん極力英語を使用するようにしている.但し,な ぜこのトレーニングをする必要があるのか等の説 明や,これだけは絶対徹底しておきたい指示,学 生のモーティベイションを高めるための話し等は 日本語を使用している.よって,英語と日本語の 両方を使い分けて授業をしているので,日本語ば かりを筆者が話しているという意味ではない.

参考文献

金谷 憲, 高知県高校授業研究プロジェクト・チー ム(2004)  『和訳先渡し授業の試み』三省堂.

佐野正之(編著)(2005)『はじめてのアクション・

リサーチ―英語の授業を改善するために』 大修館 書店.

高梨庸雄(編著)(2005)『英語の「授業力」を高め るために―授業分析からの提言』三省堂.

三上明洋(2000)「英語授業改善のためのアクション・

リサーチに関する一考察」『英語教育研究』23号  8596. 関西英語教育学会.

三上明洋「アクション・リサーチ入門」

 http://engserve.edu.mieu.ac.jp/˜eg6003/AR/

 ar1.html

Gay,  L. R.  &  Airasian,  Peter.(2000)Educational Research:Competencies for Analysis and Appli- cation.(6th ed.) Prentice  Hall.

Nunan,   David.   (1989)  Understanding  Language  Classrooms : A Guide for Teacher initiated Action.

 Prentice  Hall.

(9)

付録 授業で配布していた要約プリントの一例

1 要 約

Most  people  think  /  the(      )(      )/  is  a  fairly  recent  invention.// 

However,/ the world’s first vending machine / was built in the(      )century B. C.// Japan’s  first vending machine / was made in(      ).// It sold stamps and(      )/ and  was attached to a mailbox.//

Today,  /  vending  machines  sell(      )/  from  canned  coffee  and  juice  /  to  instant  cameras and film / to magazines and comic books.//

Vending machines / are(      )all the time.// Vending machines have become / an

(      )part of our lives.//

たいていの人が考えている / 自動販売機は / かなり最近の発明であると。// しかしながら /世界最初の自動販 売機は / 紀元前3世紀に作られていた。// 日本最初の自動販売機は / 1904年に作られた。// それは切手と葉書 を売るもので / 郵便箱に取り付けられていた。//

今日 / 自動販売機は何でも販売する / 缶コ一ヒーや缶ジュースから / 使い捨てカメラやフィルム / 雑誌、漫画 本に至るまで。//

自動販売機は / 常に進歩している。// 自動販売機はなりました / 私たちの生活の重要な一部に。//

Unit 1 自動販売機

① たいていの人が、自動販売機はかなり最近の発明であると考える。しかしながら、世界最初の自動販売機は、

紀元前3世紀に作られていた。エジプトの神殿では、硬貨を入れると聖水が購入できたのである。17世紀のイ ギリスでは、パイプタバコを売る機械が酒場にあった。日本最初の自動販売機は1904年に作られた。その自動 販売機は切手と葉書を売るもので、郵便箱に取り付けられていた。

② 今日、自動販売機は缶コ一ヒーや缶ジュースから使い捨てカメラやフィルム、雑誌、漫画本に至るまで、何で も販売する。

③ 全国には550万台以上の自動販売機がある。この数は、23人に1台という計算になる。米国では700万台もの 自動販売機がある。これは35人に1台という計算になる。日本の自動販売機による年間売上はなんと7兆円に 近い! この数値はどの国よりも高い。

④ 自動販売機は、コンピュータ化されたり省エネされたりすることで、絶え間ない進化をとげている。中には、

電話回線を通じてコンピュータに繋がっているものもあり、これによってトラックの運転手が―車から降りる ことなしに―販売機に商品を入れる必要があるかを知ることを可能にしている。

⑤ 自動販売機は、まさに私たちの生活の重要な一部になっている。

参照

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