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高等学校数学科における授業改善に関する実践的研究

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BulletinofFacultyofEducation,NagasakiUniversity:Cu汀iculumandTeachingNo.41(2003)15‑28

高等学校数学科における授業改善に関する実践的研究

平 岡 賢 治 * 梅野 呂高 **

(平成

1 5

3

1 4

日受理)

APr a c t i c a lSt ud yo nt heI mp r o v e me n to f Ma t he ma t i c sLe s s o nsi nHi g hSc ho o l

Ke n j iHi r a o ka

*

■Ma s a t a ka■ Ume no

* *

(ReceivedMarch14,2003)

1

̀は じめに

高等学校では 「生 きる力」「数学的活動」「創造性の基礎 を培 う」な どをキーワー ドとす る新学習指導要領 によるカ リキ ュラムが平成

1 5

年度か ら実施 される01)筆者の一人 **は, 教職

1 0

年 目を迎 え 「もっ といい授業をするには, どうすればいいのだろうか。」 とい う悩 みを 日々抱 き続けている。毎 日の授業では,生徒か ら考 え方を引 き出す というよりも,教 師側か ら一方的な教 え込みにな りやすい。例えば,新 しい定理や公式の教授,■問題演習な ど,知識の伝授や技術の習熟が中心になる。「これではいけない

/ 」

と考 え始めたのは, 前任校で進路指導を担当 した ときであった。就職担当 として企業の方 との話 し合いの中で, 授業に対する考 え方が変化 して きた.数学の問題が解けるだけの授業七はな く,一人ひ と

りの進路や卒業後の人生を見据 えた生涯学習 としての授業を考 えるようになった。それは ち ようど新学習指導要領の数学科の 目標 と一致 しているように感 じた ものである。2)

われわれは,授業改善の方策 として次の2つの観点か ら考察することとする。

1つめは,「生徒たちが 自ら考 え問題解決を行 う」の視点に立ち,「問題解決学習」を具 体的に実践を行 う。

2

つめ として,生徒たちが 自ら考 えてい くためには,授業での生徒一 人ひ とりの考 え方がどの ようになっているのか,それに伴 う活動は何を行 っているのかを 理解 し,把握する。そのため,授業構成では生徒たちに数学的な考 え方を促す教材の扱い について考察 し,工夫する土とが必要である と考 えた。 ところで,新学習指導要領 には, 上記の

2

つを実践するもの として 「数学的活動」が取 り入れ られている。本稿では,この

「数学的活動」について考察する とともに,「問題解決学習」の観点か ら授業構成 を考 え る。

すなわち,「問題解決学習」 と 「数学的活動」をあわせた授業構成を行 うことにより授

*長崎大学教育学部数学教育講座 **長崎県立長崎東高等学校

(2)

業改善が行われ,生徒一人ひ とりの考 え方を捉 えることがで き,また学習 とともに変容す る生徒の姿を授業全体の中で考察 し,把握することを通 して学習の意義を実感させること がで きると考 えている。

2

「間違解決学習」について

G. Po l ya

は 『いかにして問題を とくか』において,問題解決の過程を次の

4

段階に分類 している。3)

・理解 :問題を理解すること。

未知の ものは何か。条件は未知の ものを定めるのに十分であるか。図をかけ。

適当な記号を導入せ よ。条件の各部 を分離せ よ。それをかき表す ことがで きる か。

・計画 :計画を立てること。

前にそれを見たことがないか。似た問題を知 っているか。その結果を使 うこと がで きないか。その方法を使 うことがで きないか。役に立つ定理を知 っている か。 もっとやさしくて これ と似た問題はないか。 もっと一般的な問題は ? も っと特殊な問題は ? 条件の一部 を残 し他を捨てよ.そ うすれば どの程度まで 未知の ものが定 ま り, どの範田まで変わ りうるか。

・実行 :計画を実行すること。

解答の計画を実行するときに,各段階を検討せ よ。その段階が正 しいことをは っきりとみ とめ られるか。

・検討 :振 り返 ってみること。

結果 (議論)をためす ことがで きるか。結果を違 った仕方で導 くことがで きる か。それを一 目の うちに捉 えることがで きるか。他の問題 にその結果や方法を 応用することがで きるか。

問題解決においては,問題の意味を理解することか ら始まる。すなわち,条件は何か, わかっているものは何か,求めるものは何か,な どをはっきりさせることが必要である。

そ して,これ らの ものの関連について考察 した り,文字や計算,グラフ化や図示などを通 して,既知 と未知の ものの結びつ きを把握することが,解決のためのス トラテジーを模索 することになる。次に,このス トラテジーの決定が問題解決の計画をたてることになる.

これに基づいて計画を実行 し求めた解答が正 しいかどうかの判定を行 うことになる。 さら に,その結果や方法を何か他の問題に活用で きるか,条件を変 えることにより新たな問題 を作 ることがで き,新 しい 「問題解決学習」をスター トさせ ることも可能 になる。

ところで,われわれは算数 ・数学科の授業を 「問題解決学習」の観点で授業構成を行 う 場 合,/晋虜J,胤 の

2

つの段階に視点を当てることが大変重要であると考 えている。

算数 ・数学科の授業では,導入時に具体的な教材を教師が提示 し,その教材の持つ算数 ・ 数学的な性質や課題を生徒一人ひ とりが 「理解」を深めれば深めるほ ど

,

「計画」,「実行」

の段階に至 るまでのス トラテジーになる と考 えることがで きる。それはより具体的な教材 であればあるほ ど,教材の算数 ・数学的な課題を考 えることが可能になる。生徒たちが 自

ら積極的に考察す ることによ り,一人 ひ とりがその問題 について 「知 っていること」「似

(3)

平岡 ・梅野 :高等学校数学科における授業改善に関する実践的研究 17

ている問題」な ど既習の知識や数学的な考 え方などを発表 し,コミュニケーシ ョン活動 を 通 して問題の意味を理解することになる。 と同時に,発表 された意見や考 えを理解するこ とを通 して 「計画」

,

「実行」 とい う

G. Po l y a

3

つの段階をあわせて行 っていると考 える ことができ,われわれはこの ことを新 しく 鳳 と定義する。

次に,傾 討」 の段階は,提示 された具体的教材を 「知 っていること

似ている問題」

な ど他の生徒の 「理解」 と比較 しなが ら異なる内容や疑問,考 え方の違いな ど新たな課題 を抱 くことで,授業のね らいに一歩近づけることができる。 この とき, 自分の考 えを他の 生徒の考 え とともに振 り返 りることによって,生徒一人ひ とりの問題か らクラス共通の新 しい問題が生まれて くる。 このように一人ひ とりの考 えが深ま り,同時に問題が具体例か ら数学化 されることにな り,具体的教材か ら数学的問題に課題を変化 させることがで きる。

そ して,新たな /普

の段階を生 じさせ,数学化 された問題の /晋

/が問題解決のた めに必要 となる。授業はこのように展開されてい ぐことによって,生徒たちが 自ら問題解 決を 目指 して取 り組む授業へ と変化することになると考 える。

すなわち,われわれの 「問題解決学習」の考 え方を図式で表す と次の ようになる0

「 理解 」 「計画 」 「実行」

\ \ 、1\ノ /

摺 廟リ

「 検討」

ー \ 、」 、 、 〜 /

「検, yJ ,

「問題解決学習」では,具体的教材,数学化 した課題,解決 した課題の教材への適応な どの 鳳 の段階で,

G. Po l ya

のス トラテジーを深 く行 ってい くことは,生徒が 自ら問 題解決を行 うために非常に有効であると考 えている. さらに,「検討」 の段階では 胤 の段階で創 り出した課題を新たな視点か ら考察 し,.新たな課題の 鳳 へ とつながって い くことが授業展開になると考 えている。 この ように授業では

,

「問題解決学習」の 摺

腐り

と 「検討

の段階を繰 り返す ことによ り,具体的教材 か ら数学化 された新たな問題

を創 り出し,授業のね らいを達成 して新 しい知識を獲得することがで きると考 えている。4)

われわれは,授業構成において 「問題解決学習」の /晋

MJ

と r検.

yJ ,

に焦点を当てて, 教材の具体化 とその分析,授業のね らいの明確化,生徒の既習の知識の内容分析,●そこで 使われているス トラテジーの考察な どを行い,授業実践を通 して授業改善の方法を研究す

る。 この ことより,本稿における ・「問題解決学習」を次の ように定義する。

「問題解決学習」 とは具体的な問題 について

,

展J

と 「検討

を繰 り返 しなが ら

3 ・

「数学的活動」について

平成14年度か ら小 ・中学校において,平成15年度か ら高等学校において学年進行で新学 習指導要領の もとで授業が始まる。それによる と,高等学校数学科の 目標は,小学校及び

(4)

中学校の 目標 との一貫性を一層図るとともに,生徒の発達段階に応 じた適切かつ効果的な 学習が行われるように配慮 されている。

小学校算数科及び中学校数学科の 目標は次の ように示 されている5,6)

く小学校算数科)

数量や図形 についての算数的な活動を通 して,基礎的な知識 と技能を身に付け, 日 常の事象について見通 しをもち筋道を立てて考 える能力育てるとともに,活動の楽 し

(中学校数学科)

数量,図形な どに関する基礎的な概念や原理 .法則の理解を深め,■数学的な表現や 処理の仕方を習得 し,事象を数理的に考察する能力を高めるとともに,数学的活動の

高等学校数学科の 目標は,小学校及び中学校の 目標を踏 まえて,次の ように示 されてい る。

数学における基本的な概念や原理 .法則の理解を深め,事象を数学的に考察 し処理 する能力を高め,数学的活動を通 して創造性の基礎を培 うとともに,数学的な見方や

今回の学習指導要領改訂で強調 されていることは

,

「数学的活動を通 して創造性の基礎 を培 う」 ということである。 これは小学校の

(算数的)活動の楽 しさ (に気付 き

) 」

と, 中学校の 「数学的活動の楽 しさ (を知 り)」の表現 に対応 してお り,各学校段階における 算数的活動や数学的活動 を授業の中に取 り入れ 「生 きる力の育成 を 目指 した ものであ

る。

高等学校学習指導要領解説数学編 によると 「数学的活動」の具体的内容を次の ように述 べている。

数学的活動については,観察,操作,実験 .実習な どの外的な活動 と,直観;類推

「数学的活動」 とは,今回の改訂 において新 しく用い られた文言である。今までも数学 科の学習指導上,その趣 旨は問題解決能力や考 える力の育成な どとして重要視 されて きた が,今回の改訂のキーワー ド 「生 きる力」に対応 して算数 ・数学科の具体的 目標 として導 入された ものであると考 えられる。

ところで,

Ke i t hDe vl i n

『 TheFo urFa c e so fMa t he ma t i c s 』

の中で次の ように述べて いる。7)数学科の授業では, とか く計算や形式的な推論,問題解決が強調 される場合が多 い。 もちろんこれ らは大切であるが, これ らを含めた次の

4

つの視点か ら捉 えることが重 要である。

(5)

平岡 ・梅野 :高等学校数学科 における授業改善に関する実践的研究

1 9

・数学 とは計算であ り,形式的な証明であ り,・問題解決である。 (数学的な考 え方)

・数学 とは知 るための方法である。 (既知の数学的な知識)

・数学 とは創造の手段である。 (獲得する創造性)

・数学の活用 (他の ものへの活用)

この視点に立つ と,数学科の授業構成の中で 「数学的活動」を誘発する要因 として次の

4

つ要因を考 えることがで きる。すなわち,「数学的な考 え方」,「既習の知識」,「創造性 の基礎」,「数学の活用」である。具体的な教材,数学化 した課題,解決 した課題の教材へ の適応な ど /賓

腐り

と 「検.

yJ ,

の段階で生徒一人ひ とりの思考活動を捉 えることが可能に なると考 えている。 さらに,授業構成においては,外的および内的な 「数学的活動」の場 面を想定することが容易になって くる。 これ らの

4

つの要因は生徒が数学的考察をする時 に相互に関係 しあいなが ら 「数学的活動」を誘発する要素である と考 えることがで きる。8)

生徒一人ひ とりの考 え方 ・能力 というものは当然異なるものである。われわれは, 1時 間の授業の中で,生徒が考 えを深め,その時間で獲得 してい く知識が形成 される授業構成 を設定 し,実践,分析をしてい くことが,その時間の 目標を明確にし,授業改善 につなが ると考 えた。

4

授業構成について

われわれは授業構成 において,「問題解決学習」 と 「数学的活動」 を次の ように捉えて いる。

クラス全体の思考の流れ方 に視点をあてた 「問題解決学習」,生徒一人ひとりの個..

授業では導入問題 として具体的な問題 を示 し, この問題を /理解

J

L,傾

計̲

/するこ とで数学化を行 う。 この段階をわれわれは第 1水準 と呼ぶ ことにする。次に,数学化され た新 しい問題 を解決するために次の 摺

ノのス トラテジーが始 まる。そ して,「検

京U

のス トラテジーで具体的な問題 と数学化 された問題 との関連を考察する。 これを第

2

水準 という。そ して,問題を条件や見方を変えることによって,新 しく得 ることがで きた定理 や公式な どの考 え方について振 り返 ることになる。 この ことによって,生徒一人ひ とりの 数学的考察が深まることになる。つま り,

3

回 目の 鳳 と 「検討

J

が行われる。 これ をわれわれは第

3

水準 という。

(6)

この ようにして 「問題解決学習」では授業の中に

3

つの水準を設定することにより,

1

時間の授業構成を行 う。 これは図形学習における

va nHi e l e

の 「学習水準理論」9)を 1時 間の授業に適用 した ものである。後で実践例を示す ように具体例,数学化 された内容,数 学的な考察の授業内容によって,

3

つの水準を設定 している。

I 水

[③理解2 l l @

⑤理解

鮒 2 3l J l ⑥ 検 討 3

l ①理解

1

l

l

◎ 検討

1

l

導 入 展開 1 展開

2

ま とめ

(1

)導 入 :①理解 1‑具体的な問題 について,何をやろうとしているのかを既習の知識 をもとに理解する。

(2)展開1:②検討 1‑具体的な問題を変化 させることによって,新たな問題を作 る。

〜③理解2‑新たな問題について,数学的な見方や考え方によって理解を深める。

(3

)展開

2

:④検討

2

‑・さらに条件や見方を変 えることによって課題を発展 させてい く。

〜⑤理解

3

‑新 しい課題を通 して,新 しい知識を獲得 し理解 してい く。

(4

)ま とめ :⑥検討

3・

‑獲得 した新 しい知識を他の ものへ活用で きないか検討する。

われわれの 「問題解決学習」の授業は,次の ような授業展開を考 えている。

第 1水準 として,具体的な問題が教師側か ら提示 し,生徒たちはそれぞれに問題解決の 過程を行 うことによって,それぞれの課題をもつ。

2

水準 として,それぞれの課題を数学化するために,新たな問題へ と置 き換 えること によって生徒の思考水準が上がる。その新たな問題をクラス全体の共通の問題 として,問 題解決の過程を行 う。

第3水準 として,第2水準で導かれた考 えを基に,他の考 え方はないのか,別の ものに 用いることはできないのか,具体例 との関連などについて,さらに深 く考 えてい く必要が ある。そこで,新たな問題へ と置 き換 えることによって理解を深めてい く。 この時に生徒 の思考水準が上が り,

3

回 目の問題解決の過程を行 うことによって解決がなされる。

次に,「数学的活動

を誘発する

4

つの要因 「数学的な考 え方」「既習の知識」「創造性 の基礎」「数学の活用

の観点か ら各過程で生徒の思考活動 を考 えることが重要である。

われわれは学習指導案を作成するに当たって, これ らの活動を明確にするために次の記号 を導入する。

知 識 創 造

三 ̲‑il=

なお,数学的な考 え方はその都度用いた活動 として,中に書 き込んでい く。10・11)

(7)

平岡 ・梅野 :高等学校数学科における授業改善に関する実践的研究

2 1

5

実践例 (数学 Ⅰ :数 と式の分野よ り)

1.項 目

(x

+

y)nの展開式

2.

ねらい

本時では,整式の加法 ・減法 と乗法のま とめ として, (Ⅹ+ y)nの展開式 について考 え てい く。

既に,生徒た.ちは

n.

‑ 2, 3の場合, (x+ y)2, (Ⅹ+y)3の展開公式は学習 してお り, また因数分解の学習 も終わって,計算練習を十分に行 った後の授業である。 この単元の導 入では,生徒たちが中学校で習 って きた (x+ y)2について,正方形の面積 を用いなが ら展開式の意味を考 えさせる授業を行 った。 また,高等学校において学習する (x+y)3

・についても,同様 に体積へ と考 えを深めてい くことによって,生徒たちが公式の意味を考 えてい く授業を行 った.12.13)

式の展開や因数分解の授業では,いかに生徒がこれ らの公式を暗記 して活用で きるよう

・になるかが焦点にな りやすい。その結果,どうしても生徒は公式の暗記中心?学習にな り,:

さらにそのことで学習がで きた と思いがちである.高等学校の数学七は,た くさんの公式 が出て くるが,それを意味 もな く覚えてい くだけでは学習の成果 も上が らない し,公式を 忘れて しまった らどうしようもない という状態 に陥 って しまう。そ うではな く,生徒たち が授業を通 して,‑フ一つの公式のできる過程や意味を理解することによって,数学の楽 しさや美 しさを実感することができ,また,忘れて も自分で導 くことができるようになるI ことが大切である。そ こで,1年生の最初の時期だか らこそ,本時では公式ので きる過程 や意味を理解することの重要性を強調 し,単純な公式を全体か らみてい くことによって, 展開公式で使われている数学的な考 え方について,生徒たちに考 えさせたい。

3.

授琴計画

パスカルの三角形 を作 る

(Ⅹ†y)5を予想

導 入 展開 1

係数 との関連 に 気づ く

展開 2

(Ⅹly)

1 0 は

Ⅹ4y3の係数は

ま とめ

(8)

4.

予想 される主 な数学的活動

「問題解決学習」 「数学的活動」

①理解1 ・112,113を計算する

・(x+y)2, (Ⅹ+ y)3を展 開する

知 識 ・計算 と展開をすること

・112と (Ⅹ+y)2,113と (Ⅹ +y)3を見比べて関連を予想 すること

(類推的な考 え方)

②検討 1 (Ⅹ+ y)4の展開された式を 予想する

・実際に展開 して確認する

知 識

知 識

・(Ⅹ+y)4を展開 した式を (x +y)2, (x+y)3とまた114 か ら予想をし,式をつ くる

(瑛推的な考 え方)

・展開を し,予想の確認をする く帰納的な考 え方)

③理解

2

(Ⅹ+y)5の展開された式を 予想する

・実際に展開 して確認する

知 識

知 識

・同様 に して (Ⅹ + y)5の展 開 した式 を115か ら予想を し,式 をつ くる

(類推的な考 え方)

・展開をするもののここで初めて 予 想 と異 な る結果 とな ったの で,その理 由について視点を変 え,考 える

く帰納的な考 え方)

④検討

2

・別の視点で考 えてい くため, 元に返 って (Ⅹ+y)2の展 開を図式化する

・(Ⅹ+y)3の展開を図式化する

知 識

創 造

(Ⅹ + y)2,(Ⅹ+ y)3を分配 法則を使 って図式化する

(記号化の考 え方)

2

つを見比べることによって, 係数 との関連に気付 き同 じよう に3乗,4乗,5乗へ とつなが ってい くことが分かる

く帰納的な考 え方)

⑤理解3 ・自ら発見 した係数を抜 き出す

(む検討3 ・(Ⅹ+y)10を展開する

・115ではなぜ うま くいかなか ったのかを考 える

創 造 ・係数を抜 き出す ことによってパ スカルの三角形がで きて くる

(一般化の考 え方)

・パスカルの三角形を使って求める (発展的な考 え方)

・獲得 した知識を用いて振 り返 る (統合的な考 え方)

(9)

平岡 ・梅野 :高等学校数学科における授業改善に関する実践的研究 23

5.

学習指導案

全体の学習活動 数学的活動 指導上の留意点

導入教材と既習の

112,113を計算 して求めようo: l

【理解】.答えだけではな く,計算の過程を <脚2+2Xy+y23+関連を予想する

3

x2y+な考え方>

3

おさえるo 展開公式との関連 ‑

「(Ⅹ+y)2,.(x+y)3を展開するとどう y2+y3に気づかせたいo な りましたか・展開することによってできる項 に着 目し,

o 」

その係数を調べるo 11 121

×11 × 11 (XL+y)2‑

11 121

11 121 .(x+y)3‑

121 1.331

展 【検討】 <類推解な考え方予想をたてる> 114との関連か ら 開1 「(Ⅹ+y)4を展開するとどうなるか実際に 予想 させたい人の意見を聞 くこ0

計算をせずに,まず予想 してみ ようo」

・現れる項を確認するo

「それでは,予想 してで きた ものを発表 し とによって 自分の

て くださいo」 考えを深めさせるo予想を確認するこ解決の過程をふまとによって,問題

・理 由も発表 させるo

lそれでは,実際に計算 して確認 しましようo l

「自分の予想 と比べて どうだったで しょう

かo」・予想 と比較することによっていろいろ琴 違

>l

題を出させたいo えさせるo

114‑14641 (x+y)4=;Ⅹ4+4Ⅹ3y+6x2y2+4Xy3+y4

【理解】

「(Ⅹ+y)5は どの ようになると予想 されま

すか・予想 したことを発表 させるo

o 」

F<芸 芸 蔓,1

(10)

14641

(x+y)

5

Ⅹ 5

+

5Ⅹ 4

y+

10Ⅹ 3

y2+

10

x2

y 3

+

5

X

y 4

+

y 5

× 11

【検討】

「( Ⅹ+y)2

を図式化 してみ よう それか ら 何 か気づいた ことはあ りませんか。」

「( Ⅹ+

y)3も同 じよ うに図式 化 で きます か。」

・係数の関係を考 えさせ る。

予想 との確認

<脚 な考え方

>

式化 す る

< ltの考え方>

図示化す るルール として

「X

を掛けた ときにで きる項 を左 に,

( Ⅹ+y)×( Ⅹ+y)

115で は上手 くい かない こ とか ら視 点を変えさせたい。

(Ⅹ+y)2を分配 則で えること

って気づかせた い。

yを掛けた ときにで きる項 を右 に書いてい くこ と

とす る。

係数の関係

+

y

① Ⅹ / パ

◎ y

◎ Ⅹ /

,

Ⅹ2 +Xy+Ⅹy+y2

=

Ⅹ2 +

2Ⅹy + y2

/ / ‑ ‑ プ / へ 卜\

Ⅹ3 +Ⅹ2 y+2Ⅹ2 y+2Ⅹy2 +Ⅹy2 +y3

‑x3 +3x3 y+3xy3 +y3

【理解】

「係数 を抜 き出 してみ よう。」

・既知の考 えか ら新 しい考 えを獲得 させ る。

1 I

1 2 1

1 3 3 1 1 4 6 4 1

1

5

10 10

5

1 パスカルの三角形

(Ⅹ+y)

10を展開す る とどうな りますか。

【検討

・パスカルの三角形 を使 って考 えさせ る。

・115ではなぜ上手 くいかなか ったのかを振 り返 らせ る。

活用す る 発展助な考え方

パ スカルの三角形 の紹介をす る。

あま り深 くは説 明 しない。

パ スカルの三角形 を使 うこ との よさ を伝 えたい。

全体 を振 り返 って 考 えをま とめ させ た い。

(11)

平岡 ・梅野 :高等学校数学科 における授業改善に関する実践的研究

2 5

6.

反省点

授業終了後 に行 った授業 についてのアンケー ト結果 について考察する。 (ただ し,番号 はそ う思った方か ら

54321

となっている)

1

.授業 に積極的に取 り組んだ

20151050 Ill.: IJE .lJ,lt蚕 々hJ.:I;,...rp=.

擁:. l

jif'l Tl(:/̲i. 諌‥借問

5 4 3 2 1

2.

楽しい教材だった

20 15

1005 ri: 'l.:..

;I‑;i一L::;:91

故 ‑

7十JLpj

;

. . .

蕃 ?

3.質問に答えることができた

25

20151050 違tl. ",L‑ 鵜艦 ;i̲,

.

#t.iI.㌻ ‑.I:..,.l!,J h.lip;J車.i.,I,:‑pl‑ ;;̲i:.脚,.,i,} ='‑礎護染:::LE:F!Jl=:;rJl'l

/ i i ,耳lt.i;

4.説明がよくわかった

擢1r, rl,̲I.li +.ItJJl,ll. ll.淋L‑5‑:I:i‑A:llII;i.LL l/

lj̲

矧莱

2

クラス ともに積極的に取 り組んで いることが分かる。 しかし,

1‑4

に 数名気になる生徒がいる。

授業中の雰囲気は

1‑8

のほうが良 かったため,教材に対する評価 も高い。

授業 における発問には,考 える場面 が多 くてあま り答 えることができてい なかった ことが分かる。

質問

2

で楽 しい教材だった という解 答が多かった

1‑8

のほうが説明に対 する理解度 も高い。 この ことか ら生徒 たちが授業に望む姿勢が理解に対 して 大 き く影響することが分かる。

(12)

質問事項はこのほかに,

・どこが一番おもしろかったですか.

・分か らなかった ところがあ りますか。具体的に書いて下 さい

・今回の授業の中で重要なことは何ですか。

・今回の授業に関 しての意見 ・感想

というのがあ り,それには文章で書かせた。 ここでは生徒が書いた感想をもとに授業を 振 り返 る。

1

年生では

2

クラスで授業を行 った。先に行 ったクラス (

1

4

組)の感想で は 「この授業で大切な ことは何だ と思いますか。」 とい う質問に対 して 「パスカルの三角 形

という解答が

8

名 と多かった。その ことを強調 したつ もりはなかったが,生徒達に と

っては,まだまだ考 え方 よ り公式 として捉 えようとしている と感 じた。それで も,「お も しろかった ことは何ですか。」 という質問に対 しては,「パスカルの三角形の発見がおもし ろい」が

4

,「( Ⅹ+y)n

の規則性が分かった ことがお もしろい」が

3

,「2

つの関連 性がお もしろい」が9名 とね らい通 りに教材の考 え方に興味を持 った生徒 も4割程度いた。

また,

3

名ではあるが

,

「簡単な方法を見つけて解 く」 ことや 「予想 してヒン トを手がか りに解 く」 ことのな どの数学的考 え方 に重要性を感 じている生徒 もいて,少 し驚いた。な お,「お もしろ くない

と感 じた生徒 も

5

名いた。

この ことか ら本時の授業 については,「数学的活動」の観点 としてみてみると, 自ら予 想を立てて考 えてい くというメインの 「数学的活動」について,ほ とん どの生徒は積極的 に取 り組んでいた。 またなぜそうなるかの理 由を帰納的に考 えてい くな どの活動が よ く見 られたので,良かった と思 う。ただ,時期的に

5

月 ということで,授業の展開 としては教 師側か らヒン トをた くさん与 え,「数学的活動」を促 してい くことが多かった。それで も, 初めてにしては よ く取 り組んだのではないか と思 う。

また,「問題解決学習」の観点 としては,生徒の 「関連性が分 かった ときがお もしろか った。」とい う感想 もあ り,ね らい通 りに学習水準があがっていった。授業では,問題解 決の第

2

水準である検討

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の ところで,係数 との関連に気づかせるところで少 し時間を と

って しまい,第

3

段水準の検討

3

のパスカルの三角形 を使 ってい くとい うところまでは進 むことがで きなかった。それによって,パスカルの三角形を使 うことの よさを伝 えるとい う観点か らすると少 し時間的に足 りなかった と思 う。それで も,生徒たちが, 自分で気づ いた ということを大切にしたかったので,遅れていると感 じつつも無理をしなかった。生 徒の肯定的な感想が多かったことか らも結果的に良かった と思 う。それで も,まだ,公式 として捉えていこうという生徒 もいた し,少数ではあるが授業がおもしろ くない といった 感想を持 った生徒 もお り,授業に関心が持てるように発問を工夫するな どして,やる気を 持てるようにしていき,授業のね らいをしっか りと伝 えていこうと思 った。

このクラスの反省点をもとに 1年

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組での授業を行 った。 このクラスではいろいろな感 想が開けた。それは

,「 1

1の累乗 と

x+y

の累乗 との関連性がお もしろい。」 といったこと や

,

「自分の予想が見事 にはずれたこと。」が印象深いな ど, 1年

4

組 とはまた違 った感想 が多かった。「パスカルの三角形が大切である。」 という感想は

3

名 と少な く前時の反省が 上手 くいかされた。また,「わかった とき,数学 っておもしろいな と思 った。」 といった理 解することの楽 しさを感 じた生徒が

5

名いて,私 自身たいへん うれ しかった。なお,「数 学について もっといろいろなことが知 りたい。」と感想をもった生徒 もいた。

(13)

平岡 ・梅野 :高等学校数学科における授業改善 に関する実践的研究

2 7

授業者 も

2

回 目ということもあ り,授業ははば計画通 りに進んでいた という感触を得た。

生徒の反応 もよ く,たいへん良かったのではないだろうか。「数学的活動」を積極的に取 り入れることによって,多 くの生徒が興味 ・関心を持 って授業 に取 り組み,「問題解決学 習」の過程を

3

つ取 り入れた ことによって学習水準 もあが り十分に手応 えを感 じた授業だ った。

一方で,見に来ていた学校の先生か らは,「何故 この時期 にパスカルの三角形 を扱 う必 要があるのか。二項定理の ところで十分ではなかったか。」 とい う意見 もあった。授業の 進度 との兼ね合いか らを考 えての意見で,や りたいこと ・伝 えていきたいことと授業の進 度の問題は,今後の課題である。

全体的にみると,今後の方向性 として,「何故そ うなるかを, 自ら考 える。」 ことを示す ことができたことは非常に有意義なことであった。

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おわ りに

本稿では,「問題解決学習」 と 「数学的活動」という

2

つの視点で,授業構成およびそ の実践を行 った。授業者が生徒たちに伝 えていきたいことは,決 して 「数学がで きるよう になる」 ことだけではない。数学の良さや美 しさに気づ くことな どの数学 に関することか ら,いろいろな場面で問題解決が行えるように,物事の本質を考 えることの大切 さや何事 にも積極的に取 り組む姿勢,物事の見方な どこれか ら生活の中で役 に立 って くれれば と願 うこともある。授業改善 とは,今回の研究だけで行われるべ きもので もな く,成果が出る もので もない。授業改善を行 うことによって,その結果 として生徒たち一人ひ とりの考 え 方や意識が変化 してい くことをね らっている。そのため,成果を感 じるのはかな り後の こ

とである。だか らこそ,これか らも継続 して研究を行いたい。

また ここで発表 した以外 にも, 日頃の授業の中で この

2

つの視点を意識 した授業を行 う よう心がけて きた。ただ,授業の進度 という点 との関係はなかなか解決で きそ うにもない。

これはまだ転勤 してきて 1年 目ということとも関係 していると思 うので,これか ら経験 を 積む ことによって解決の方法を探 っていきたい。今年度は現場 に戻 って,多 くの授業を見 つめなお してい くことによって,考 えを深めていき,授業改善を 目指 して取 り組んできた。

生徒たち も授業に積極的に取 り組み,簡単には結果がでないがあきらめずによ く頑張 って い る。生徒の意識は確実 に変わって きている と思 う。私**も負けない ようしっか り取 り 組んでいきたい。そ して,一人で も多 くの生徒に数学の よさがいつまで も心に残 るような 授業を 目指 して取 り組んでいきたい。高校の 3年間で,教 えてい くべ き内容は,まだまだ た くさんある。そ ういった意味か らも, 日頃か らの授業改善への意識が とて も重要 となっ て くる。 もっともっと内容を深めていけるように研究を続けたい。そ して,よりよい授業 実践が行 えれば と思 う。また,「問題解決学習」 と 「数学的活動

とい う

2

つの視点か ら 授業を振 り返 って見て きた申,この

2

つの視点に関 して もまだまだ研究をしてい く必要を 感 じている。 これについて も,あわせて研究を続けていきたい。また,高校数学 における 授業 について,単なる教材ではな く授業構成についで情報交換がで きる場所があれば と思

う。そ ういったこともこれか ら行 っていけた らと思 う。

(14)

1)『高等学校学習指導要領解説 数学編平成1112月 文部省

2)吉田明史編著 (2000) 『高等学校新学習指導要領の解説 数学』 学事出版 3)G.Polya (1954) 柿内賢信訳 『いかに して問題を とくか』 丸善株式会社 4)G.Polya (1961) 柴垣和三雄 ・金山靖夫訳

数学の問題の発見的解 き方 1

,2』

みすず書房 5)『小学校学習指導要領解説 算数編』 平成115月 文部省

6)『中学校学習指導要領解説 数学編』 平成119 文部省 .

7)KeithDevlin (2000) 『TheFourFacesofMathematics』NCTM2000YEARBOOK 8)平岡賢治 (2002) 授業における数学的活動の研究

( Ⅰ)

‑ 創造性の基礎 について 一

長崎大学教育学部紀要 一 教科教育学 一 第38 9)平林一条先生頒寿記念出版全編 (1990) 数学教育学のパースペ クティブ』 聖文社 10)片桐重男著 (1988) 数学的な考え方の具体化』 明治図書

ll)片桐重男著 (1988) 『問題解決過程 と発問分析』 明治図書

12)『改訂版 高等学校 新編 数学A』 平成9215日 文部省検定済 数研出版 ‑ 13)『改訂版 高等学校 新編 数学Ⅰ』 平成9215日 文部省検定済 数研出版

参照

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