論文の内容の要旨
氏名:小 野 賀 功
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:脱分化脂肪細胞(DFAT)由来エクソソームの免疫制御作用
【背景】近年、間葉系幹細胞(MSC)から放出される細胞外小胞(Exosome)が、内包するmiRNAを標的細胞 に運搬し、免疫制御作用を示すことが報告がされている。我々は成熟脂肪細胞に由来する脱分化脂肪細胞 (DFAT)がMSCに類似した多能性を持つことを示してきた。DFATは少量の脂肪組織から低侵襲性に採取 できるために新たなExosome産生細胞として期待できる。今回ヒトDFATから放出されるExosomeの形 質解析およびT細胞の増殖やサブセット分化に対する作用を検討した。【方法】同一患者より外科手術時 に破棄される皮下脂肪組織の提供を受け、DFATおよび脂肪組織由来幹細胞 (ASC)を調製後、濃縮試薬を 用い Exosome を抽出した。Exosome は透過電子顕微鏡で形態評価を行い、ウエスタンブロット法で ExosomeマーカーCD63の発現を解析した。DFAT由来Exosome(DFAT-Exo), ASC由来Exosome (ASC- Exo)からそれぞれRNAを抽出しmiRNA マイクロアレイ法やRT-PCR法を用いて免疫制御に係わる遺伝 子群の発現を解析した。また末梢血T細胞増殖に対するDFAT-Exo, ASC-Exoの作用をCFSEアッセイに て評価した。さらに臍帯血ナイーブ T細胞から制御性 T細胞や Th17細胞への分化に対するDFAT-Exo, ASC-Exoの作用をフローサイトメトリーにて解析した。【結果】 DFAT-ExoおよびASC-Exo共に透過電 子顕微鏡で直径が 100-150nm の小胞を確認でき、ウエスタンブロット法でCD63 の発現を認めた。また DFAT-Exo、ASC-Exo共にT細胞の増殖制御作用が報告されているmiRNA-20a-5p, miRNA-17-5p、 制 御性T細胞への分化を制御するmiRNA-26a-5p, miRNA-100-5p、Th17細胞への分化を制御するmiRNA- 20b-5pの発現を確認した。DFAT-Exo, ASC-Exoは共に、ヒトT細胞の増殖を用量依存性に抑制した。ま たDFAT-Exo, ASC-Exoは共に、臍帯血ナイーブT細胞から制御性T細胞への分化を促進し、Th17細胞 への分化を抑制した。【結論】DFAT-ExoがASC-Exoと同等のT 細胞に対する免疫制御作用を有すること が明らかになった。今後、免疫疾患に対するDFAT-Exoを用いた治療開発が期待できる。