別紙1
論 文 審 査 の 要 旨
報告番号 甲 第 2777 号 氏 名 泉田 恵理
論文審査担当者
主査 教授 美島 健二 副査 教授 馬場 一美 副査 教授 桑田 啓貴 副査 教授 柴沼 質子
(論 文 審 査の 要 旨)
学 位 申請 論 文「 Functional analysis of parathyroid hormone receptor -1 mutations responsible for primary failure of tooth eruption」 につ い て , 上 記の 主 査 1名 , 副査 3名 が 個 別 に審 査 を行 っ た .
原 発 性萌 出 不全 は 側 方歯 開 咬 を特 徴 とす る 成 長障 害 で あり , これ ま で に本 疾 患 患者 に 特異 的 に PTH/PTHrR受 容体 (PTH1R)遺 伝 子に ヘ テロ 接 合 型の ミ ス セン ス 変異 が 報 告さ れ て いる . 本研 究 で は , これ ま で解 析 の 進ん で い なか っ た P119L, R147C, R383Qの アミ ノ 酸置 換 に よる PTH1Rの 機 能 変 化 につ い て解 析 し た . す な わち , レン チ ウ イル ス を 用い て これ ら の 変異 を HeLa細 胞 に遺 伝 子 導 入 した 後 , PTH刺激を 行 っ た . そ の結 果 , これ ら の 変異 遺 伝子 導 入 株に お い て , cAMP産 生低 下 が 認 めら れ ると と も に , 発 現 蛋白 の 分子 量 の 低下 が 認 めら れ た . こ の 理由 と し て , 糖 鎖修 飾 が 阻 害 され て いる こ と が明 ら か とな り , PTH1Rに導 入 し たア ミ ノ酸 置 換 の中 で も 特に P119Lと P132Lは N-グ リ コシ ド 結合 性 糖 鎖修 飾 を強 く 抑 制す る と 考え ら れた . 加え て , P119L, P132L, R147C変 異体 は 蛍光 ラ ベル PTHの PTH1R親和 性 を 減少 さ せ るこ と が示 唆 さ れた . 以 上よ り , 395C>T(P132L)のみ な らず , 356C>T(P119L)も PTH1Rの 機 能を 低 下さ せ る 変異 で あ るこ と が明 らか と な っ た .
本 論 文 の 審 査 に お い て , 副 査 の 馬 場 委 員 , 桑 田 委 員 お よ び 柴 沼 委 員 か ら 多 く の 質 問 が あ り , そ の 一 部 とそ れ らに 対 す る回 答 を 以下 に 示す .
馬 場 委 員 の 質 問 と そ れ ら に 対 す る 回 答 :
1. 原発性萌出不全で同定された 4 つの変異に関連性はあるのか .
(今回, 原発性萌出不全で特定された 4 つの変異は, 2 つの家系と血縁関係のない孤発した 2 名の原発性萌出不全罹患者について調べました. 原発性萌出不全罹患者 4 名を含む 2 世代 6 名の家系を調べ, 罹患者のみに R383Q のアミノ酸置換を引き起こす PTH1R 遺伝子の変異が検出 されました. さらに, 罹患者 3 名を含む 3 世代 8 名の家系, および血縁関係のない罹患者 2 名についても PTH1R の全 exon を解析したところ, それぞれ P119L, P132L, R147C のアミノ酸 置 換 が も た ら さ れ る 遺 伝 子 の 変 異 が 検 出 さ れ ま し た . こ れ よ り , 永 久 歯 萌 出 不 全 の 原 因 遺 伝 子の変異の位置は家系により異なっており, 4 つの変異に関連性はないと考えられる. )
(主査が記載)
2. cAMP産生量の低下と糖鎖修飾の抑制とは関連性があるのか.
(リガンド結合領域の糖鎖修飾が野生型と著しく異なっている変異PTH1Rでは, リガンド結 合性が低下することで下流シグナルである cAMP 産生量が低下した可能性があると考えられ る. 両者の関係を証明するためには, N-グリコシド型の糖鎖修飾を受けるアスパラギン残基を グルタミン残基に置換するといった, 変異を導入したPTH1Rの発現系の構築が有効かもしれ ない.)
桑 田 委 員 の 質 問 と そ れ ら に 対 す る 回 答 :
免疫蛍光染色と蛍光ラベルを用いた PTH 結合実験から言えることは何か?
(野生型および変異型 PTH1R を導入した HeLa 細胞を作製し, anti-PTH1R 抗体を用いて免疫蛍 光染色により細胞膜上の PTH1R 発現を確認した. さらに, 発現した PTH1R が機能的にリガンド (PTH)結合能を有するかを確認する目的で, 蛍光標識 PTH を用いて受容体の結合性を調べた.
これにより, 導入した PTH1R は Hela 細胞表面において, リガンドである PTH と結合すること が可能であることを確認出来た. )
柴 沼 委 員 の 質 問 と そ れ ら に 対 す る 回 答 :
免疫蛍光染色の実験で細胞膜のみならず, 細胞内も染まっているように見えるのはなぜ .
(免疫蛍光染色の結果より, PTH1R は細胞膜上に発現する受容体ですが , 細胞内まで染まって いるように見えます. 野生型および変異 PTH1R の亜細胞分布をコンフォーカル顕微鏡等によ り詳細に解析する必要があると思われます. ラットの PTH1R の細胞表面への送達が糖鎖修飾 の影響を受けるという報告がありますので, Western blot 分析で認められた, 野生型と変異 PTH1R の糖鎖修飾の違いが亜細胞分布に関係している可能性と考えられます . )
美 島 委 員 の 質 問 と そ れ ら に 対 す る 回 答 :
変異型 PTH1R でリガンド親和性が低下 しているが, そのメカニズムは何があるか .
(過去の報告では, ヒト PTH1R ではリガンド結合領域に N-グリコシド結合性の糖鎖修飾を受 けることが知られている. またラットの PTH1R では, ヒトと全く同じ位置が N-グリコシド結 合性の糖鎖修飾を受けるが, 糖鎖修飾の欠如により , 細胞表面への PTH1R 送達の低下が示唆 されている. 今回の研究で, 野生型 PTH1R 導入細胞では, 本来の PTH1R ペプチド部分の分子量 より大きい値を示しており, 高度な糖鎖修飾を受けていると考えられた . これに対し, 変異 PTH1R導入細胞では, 変異の違いで異なるものの糖鎖修飾が抑制している可能性がある. こ れと蛍光標識リガンド結合の実験の結果から, 細胞表面への PTH1R の送達あるいは PTH1R のリ ガンド結合領域の立体構造の変化によりリガンド結合能の低下が起こった可能性が考えられ る. )
主 査 の 美島 委 員は , 両 副査 の 質 問に 対 する 回 答 の妥 当 性 を確 認 する と と もに , 本 論文 の 主張 を さ ら に 確認 す るた め に 上記 の 質 問を し たと こ ろ , 明 確 か つ適 切 な回 答 が 得ら れ た .
以 上 の審 査 結果 か ら , 本 論 文 を博 士 (歯 学 ) の学 位 授 与に 値 する も の と判 断 し た .
(主査が記載)