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(1)

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,Lt 

公 示 送 達 と 再 審

申立人悪意の場合 はじめに ー 判 例

2

411~人過失の場合

1

判 例

2

じ訴り追完との関係

(2) 

否定説 五号及び三号説

(3) 

8 ‑ 2 ‑179 (香法'88)

(2)

しばしば主張されている︒例えば︑再審事由︵民訴四︱

: 0

条一項︶は制限列挙

それでは狭すぎる故に︑類推解釈を認めるべく︑例示的と解する説も出てきて いる︒制度論としても︑旧法で認められていた新証書発見の場合がないのはおかしいし︑

︵﹁当事者が悪意の欺岡によって判決の既判力を瞬取したとき﹂︶ 一九三一年草案五四六条六

(1 ) 

のような規定の追加も主張されている︒そして︑

本稿で取り扱おうとしている︑前訴が公示送達で結審された場合に︑その被告は︑何らかの救済方法が認められるか︑

そこで本稿では︑公示送達と再審事由との関係を検討することにしたい︒公ホ送達制度を悪用する場合には︑

ゆる確定判決の編取の

1例として議論されるところである︒この場合には︑公ぷ送達中立人に故意のある場合である︒

そ れ に 対 し て

︑ 相 手 方 の 住 所 等 を 過 失 重 過 失 の 場 合 も あ れ ば 軽 過 失 の 場 合 も あ る に よ っ て 知 ら ず に 公 示 送 達 それが認められた場合が考えられる︒あるいは︑故意も過失も全くない場合もあろう︒逆に︑相手方 にも︑転居について故意・過失がある場合も考慮する必要があるであろう︒

そこで︑以下では場合を分けて考察する

(l

)

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谷忠

之・

民事

再審

い広

即︵

.九

八八

年︑

法律

文化

社︶

:・

貞以卜参照︒^ 1

( 2

) 簡単に西ドイツでの議論を紹介しておくことにしよう︒西トイツては︑公小送達の垢取︑

こと

にす

る︒

を申し立てて︑ という問題もある︒ 号 で

ある

︑ と解するのが通説であるが︑ 現行の再審規定が厳格にすぎる旨が︑

は じ め に

すなわち︑確定判決の瞬取の場合には︑

8‑2‑180 (香法'88)

(3)

公示送達申立人が︑被告の住所を知りながら︑ 代理権欠訣を規定する西ドイツ民訴五七九条.項四号の取消事由には該消しないが︑詐欺罪による処罰が可能であり︵西ドイツ刑法 .

1

0

条↓項五号に該渭する西ドイツ民訴五八

0

条四号による原状回復の訴えを認める

のが多いといえようか︒例えば︑SteinJonas'Grunsky•

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2 

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19 77

.  §579 

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.   5

れば︑﹁取消しの訴えは︑公ぷ送達の要件がないのに公小送逹されたときにも認められない﹂が︑了580

R d

n r

.  

13

では︑﹁更に詐欺

は︑公不送達0編取によってなされうる﹂という叙述があり︑西ドイツ民訴五八〇粂四号の再審事由に該崎することを示唆してい

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3.

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98 1,

  §161 

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  ( S .

  9

76 f. )

によれば︑﹁その法定要件が存在しないのに公ポ

送達がなされた場合︑五じ九袋.項四号は直接適用又は類推されない︒芍に︑このことは︑許

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決定の法的再審杏と同じことにな

O L G

申立人悪意の場合

あえて公示送達を申し立てることは︑

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2.  A

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4︑ 安

§579

An

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( S .  

1181) 

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580 

An

m.

 

( S .  

1183)

]

取消しの訴えは許されないが︑蝙取の場合には異なり︑後者の場合には︑刑法ご六て条になるのが通常である︑と述べている︒ま

た ︑

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14

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A u f l

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19 84 , 

§579 

An

m.

 

( S .  

1356)では︑﹁編取された公ホ送達によっては︑四号の適用を

(

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tNJW 57,307; 

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69,370)

︑おそらく︑訴訟詐欺が存在し︑したがって︑五八

0

条四号による原状回復の訴えの可能性がある﹂と︑五七九条の取消しの訴えのところでは解説しながら︑五八

0

条の解説のとこ

8

0A

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. 

11 

( S .  

1360)では︑﹁公示送達の編取による訴訟詐欺がなされる場合には︑五七九条一項四号の適用の余地がある﹂

と述べている︒代理権欠訣の取消市

1

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21 . 

A u f l

. ,  

19 85 , 

§ 7 9  I I  

( S .  

282)

で ︑

﹁事情によっては︑確定判決に対して︑五七九条二唄四号の類推による再審の訴えが許される(OLGHamm MDR 

79 , 

766)﹂と

述べている︒

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t ,

 

Fa

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19 56 , 

385(387 

1

8  8  ,

, 1,  

8  確定判決を蝙取しようとする

(4)

まず︑判例を見てみよう︒旧民訴法下における判例であるが︑︹一︺東京控判大正一四・六・ニ四︵法律新聞二四四四

﹁被控訴人力控訴人ノ住所ヲ知悉シ乍ラ故意二住所地以外ノ管轄裁判所二訴ヲ提起シ不法ニモ其所在不明ナリ

ト称シテ公示送達手続ヲ以テ自己勝訴ノ判決言渡ヲ受ケ該判決ヲ︹﹁確定﹂が脱落ー三谷︺スルニ至ラシメタル場

合ハ民事訴訟法第四百六十八条︹﹁第一項﹂が脱落ー三谷︺第四号二該当スルモノト解スルヲ妥当トス蓋シ同号カ

前訴訟手続二胎テ訴訟当事者力法律ノ規定二従ヒ代理セラレサリシ場合卜雖モ

尚再審取消ノ訴ヲ認許シタル律意二鑑ミレハ本件ノ如ク訴訟当事者ノ一方力故意二基ク行為二因リ他方力全然訴

訟行為ヲ為スコトヲ妨ケラレ而モ不利ノ判決確定スルニ至リタル場合二於テハ前記法条二依リ取消ノ訴ヲ

は﹁メ﹂ー三谷︺認許スルモノト解スルハ同条ノ律意二適合スル所以ナレハナリ然リ而シテ成立二争ヒナキ甲第

六号証二依レハ控訴人力大正十二年十一月二十九日該確定判決謄本ノ下附ヲ受ケ漸ク該判決ノアリタルコトヲ知

リタル事実ヲ認メ得ヘク而シテ本訴再審ノ訴力同日ヨリ一ヶ月ノ不変期間内ナル大正十二年十二月二十四日二提

起セラレタル事実ハ本件訴状二押捺セル原裁判所ノ受附印二徴シテ明白ナルカ故二本訴再審ノ訴ハ適法ノモノト

シテ許容スヘキモノトス﹂

と判示している︒旧民訴四六八条一項四号は︑現行法四︱

1 0

条一項三号に該当するものであり︑﹁訴訟手続二於テ原告

若クハ被告力法律ノ規定二従ヒ代理セラレサリシトキ‑

由を認めたものである︒ 号

︱二

頁以

下︶

は︑

1

判 例

場合

であ

る︑

と考えて大過ないであろう︒

と定めていた︒

つまり︑右判決は︑代理権欠鋏による再審事

︹原

︹原

文は

﹁場

背卜

類モ

1

三谷

8 ‑ 2 ‑182 (香法'88)

(5)

で︑仮処分登記抹消請求の訴を提起した同年

一月一日の当時も千葉市亥の鼻町三番地が控訴人の住所であると それに対して︑次の二つの判決は︑民訴四二

0

条一項五号の再審事由を認めるだけである︒︹二︺長野地判昭和三九・

﹁一旦成立した判決を当然無効なものとしてその効力を否認しうるとすることは裁判制度の趣旨に沿わないも

のであるから︑判決に手続上の瑕疵がある場合は上訴の追完︑再審の訴など法律上認められた不服申立によって

その判決の取消を求めるべく︑右の手続を経ずに判決の無効を主張することは許されない︒この理は当事者が相

手方の送達場所を知りながら公示送達の申立をし裁判長を欺いてその許可を得︑相手方の出頭を妨げて勝訴の確

定判決を得るいわゆる確定判決の蝙取の場合でも同様であって︑この場合は民訴法第四二

0

条第一項五号により

再審の申立をすることが許されるものと解する︒しかしながら本件においてはそもそも被控訴人が公示送達を申

立てた際控訴人の真の住所がいづれにあったかは控訴人の主張自体明らかでなく被控訴人が控訴人の真の住所を

知っていたとの事実は本件全証拠によっても認めることができない︒却って︿証拠略︾を綜合すれば︑当時控訴

人は千葉市内において住居を転々としており被控訴人はその住所を知りえず︑たまたま昭和三五年五月一

0

日頃

控訴人に連絡するについて訴外丁に照会した結果同人から同年四月一七日付葉書で千葉市亥の鼻町︱︱一番地が控訴

人の住所であるとの返事を受け同所にあてて書面を郵送したところ︑控訴人から返事を受領することができたの

信じていたことが認められ︑これらの事実からは同人がそう信ずるには少なからぬ根拠があったものということ

ができる︒そうだとすれば被控訴人が抹消登記手続を命じた勝訴判決を馴取したものというのは当らない︒﹂

と判示している︒本件は︑判決の不成立又は無効を前提に︑旧判決の取消しと抹消登記の回復登記手続を求めたもの

であった︒したがって︑再審の訴えを求めたものではなく︑右該当部分は傍論ということになる︒次の︹三︺札幌地 八

・ニ

五︵

判時

︱︱

︱九

0

四二

頁以

下︶

は︑

8 ‑ 2 ‑183 (香法'88)

(6)

判示したのであって︑

︵判

タ一

八九

号一

0

頁以

下︶

は︑当事者が代理権欠鋏の再審事由︵民訴四二

0

条一項三号︶を主

張してきたのに対して︑右再審事由に該当しない旨判示して︑更に民訴四︱

‑ 0

条一項五号後段にあたるだけであると 決の訴訟手続において代理権の欠訣ある場合に関する規定であり︑本件において再審原告の主張するように本訴

再審原告は前記再審事由をもって︑民事訴訟法四︱

‑ 0

条一項三号に該当すると主張するが︑同号は確定判

原告が本訴被告の住所を知りながら公示送達の申立をなし︑本訴被告の欠席のまま勝訴の判決を得たという事由 は同号の再審事由にあたらないと解するのが相当である︒けだし︑再審は︑確定の経局判決に対する特別の不服 申立方法であり︑法的安定性に対する例外異例の制度であるから︑法も再審事由を限定的に列挙しているとみる べく︑したがって再審事由の規定はこれを制限的に解釈すべきであって︑みだりにこれを拡張しないしは類推し て解釈することは原則として許されないものといわなければならず︑この趣旨からして︑前記三号の規定を本件

において再審原告の主張するような事由の場合まで拡張ないしは類推することはできないからである︒

もっとも︑民事訴訟法四二

0

条一項三号の解釈について︑当事者が口頭弁論期日にその責に帰すべからざる事

由で欠席のまま判決され︑

その判決が確定したような場合には︑該当事者側の訴訟追行者の欠鋏を理由に︑同号

の再審事由に該当することもあり得るとする見解もあり︑これが是認され得るにしても直ちに本件の場合と同一

に論ずることはできない︒なんとなれば本件再審原告の主張するように一方の当事者の不実の申立てによって公 示送達がなされたとしても︑それについて裁判長︵単独事件において裁判官︶の許可がなされた以上申立当事者 につき刑事上の犯罪が成立し︑または民事上損害賠償の責を免れないことは別として︑右の公示送達の手続は有

効というべきであり︑ 判昭和四一.︱ー・ニ五

しかも︑本来公示送達は︑受送達者たる当事者の側において実際上送達の事実を了知し難

'  

/'¥ 

8‑2‑184 (香法'88)

(7)

く︑従ってその訴訟追行を行い難いことを当然予想している制度であり︑

における審理の場合にあっては︑通常の送達手続による審理において受送達者の欠席により被ることのあるべき

以上のように本件再審事由は民事訴訟法四.↓

0

条一項三号には該甘せず︑

す限りにおいて︑同号後段の再審事由として主張し得るのみといわなければならない︒しかも︑右五号の再審事

由を理由とする再審の訴は同法四二四条三項所定の期間内に訴を提起しなければならないところ︑本件原判決が

再審原告の主張するとおり昭和二六年一

0

月二五日言渡され︑同年一一月一五日に確定したことは当裁判所に顕

著な事実であり︑本件再審の訴が原判決確定後五年を経過したのちである昭和四一年一月七日に提起されたもの

であることは本件記録により明らかである︒したがって︑本件再審の訴は前記五号の再審事由の主張を含むとし

ても︑すでに出訴期間経過後の訴として訴訟要件を欠き不適法といわなければならない︒

よって︑本件再審の訴は本案の判断に入るまでもなくその主張自体から適法な再審事由を欠く不適法なも

のであることが明らかであり︑

(三)

そのためにまた︑公示送達手続のもと

ただ同条同項五号の要件を充た

しかも右欠鋏は補正することができない事由に該当するから︑民事訴訟法四ニ︱︱︱

条︑二

0

二条に則り本件再審の訴えを却下す﹂る︑

というのである︒この判決では︑当事者が自己の責に帰しえない理由で口頭弁論期日に欠席して不利な判決を受けた

者には代理権欠訣が認められる可能性あるも︑公示送達の場合はそのような場合とは異なる︑という︒その意味する

ところは︑前者においては擬制自白が認められる可能性があるのに対して︑後者の公示送達の場合には擬制自白は認

められていない︵民訴一四

0

条︶︑という差異があるというのであろう︒しかしながら︑代理人が代理権を欠いていた場

合であっても︑相手方と通謀していなければ︑必ずしも︑裁判上の自白によったり請求認諾・放棄で訴訟が終了する 不利益を除外しているからである︒

8‑2‑185 (香法'88)

(8)

わけのものでなく︑

ば種々の態様があるのであって︑擬制自白の有無だけで︑右判例のように民訴四二

0

条一項三号の適用の可否を区別

するのは問題と思われる︒また︑右判決は︑不実の申立てによる公示送達が許可されても︑﹁民事上損害賠償の責を免

れな

い﹂

やはり相手方としては所定の事実を証明する必要がある︒代理権欠鋏の事案にも︑具体的にみれ

が︑損害賠償はできる︑ と述べている︒不実の申立てによったとしても判決は有効である︒そういう有効な判決が存在しているにも

かかわらず︑何故に損害賠償請求権が発生するのか︑理解できない︒再審事由に該当しない故に判決を取り消せない

という︒最三判昭和四四・七・八︵民集二三巻八号一四

0

七頁︶の趣旨を示唆しているのであろ

ところが︑︹四︺横浜地判昭和五三・九・六︵判夕三七三号一四二頁以下︑判時九三八号九三頁以下︶

よ ︑

9

̲  

﹁民事訴訟法四二

0

条一項三号に規定する再審事由は︑確定判決の訴訟手続において代理権の欠鋏ある場合に関 機会が与えられないまま判決され︑ するものであるが︑当事者がその責に帰すべからざる事由で口頭弁論期日に出頭できず︑攻撃防禦方法の提出の

その判決が確定したような場合も︑同号の再審事由に該当するものと解すべ

く︑同号の規定は︑当該当事者のため有効な訴訟追行がなされなかった場合に再審による不服申立を許容する趣

旨をも含むものと解される︒

もっとも︑再審は︑確定の終局判決に対する特別の不服申立制度であって︑法的安定性に対する例外の制度で

あるから︑再審事由の規定は︑原則として制限的に解釈すべきものであり︑

そこで︑再審原告の みだりにこれを拡張し又は類推して

﹃再審被告は再審原告の住所ないし送達先を容易に知り得たにもかかわらず公示送達の申

立をなし︑再審原告の欠席のまま勝訴判決を得たのであるが︑再審原告は前訴訟において過失なく本人又は代理 解釈すべきでないことは勿論である︒ ︑ 入0

> っ

/¥ 

8‑2‑186 (香法'88)

(9)

人が口頭弁論に出席できなかったもので︑これは同号の再審事由にあたる︒﹄旨の主張について検討する︒

公示送達の制度は︑受送達者たる当事者の側において実際上送達の事実を了知し難く︑従ってその訴訟追行を

行ない難いことを当然予想している制度であり︑そのため︑公示送達手続による審理にあたっては︑通常の送達

手続による審理において受送達者の欠席により被ることのあるべき不利益が除外されているのであるから︑過失

なく公示送達を了知しなかったため︑訴訟追行の機会が奪われたとしても︑公示送達の制度が設けられている趣

旨からして︑これをもって直ちに同号の再審事由に該当すると解することは相当でない︒﹂

と︑ほぼ︹三︺札幌地判昭和四一・ニ・ニ五と同旨を述べながら︑続けて︑

﹁しかしながら︑公示送達は︑送達名宛人の所在不明により訴訟上の書類の送達ができず︑訴訟手続の進行が不

能になるのを避けるための最後の︑補充的な送達制度であり︑従って︑当事者が︑相手方の送達場所を知ってい

ながら公示送達の申立をなし︑又は︑送達場所を知ろうとすれば容易に知ることができたのに重大な過失により

知らずに公示送達の申立をなし︑公示送達の許可を得たうえ︑勝訴判決を得たという場合のように︑公示送達制

訴えを起こせる︑

度が本来予定していた実質的要件を欠くような場合にまで︑過失なくして公示送達を了知しえず︑そのため訴訟

追行の機会が与えられなかった当事者に再審による不服申立を拒むのは酷に失するというべきであり︑右のよう

な場合には︑民事訴訟法四二

0

条一項三号を根拠に再審の訴を提起しうるものと解するのが相当である︒従って︑

再審原告の右再審事由の主張は︑右の限度において適法なる再審事由の主張があるというべきである︒﹂

と判示しているのである︒この判決によれば︑公示送達の申立人に故意・重過失があり︑相手方において過失なく公

示送達を了知しえず︑そのため訴訟追行の機会が与えられなかった場合には︑民訴四二

0

条一項三号を根拠に再審の

というのである︒なお︑右判決は︑公示送達申立てについて故意・重過失はなかった︑として再審

8 ‑ 2 ‑187 (香法'88)

(10)

請求を棄却している︒

〔五〕大判大正一0•五•四(民録二七輯一四巻八六一頁)は︑不実の公示送達申立てが官署に対する不実の申述とい

う警察犯処罰令︵現在の軽犯罪法︶違反を理由とした事件で旧民訴四六九条一項二号の﹁原告若クハ被告ノ法律上代 理人若クハ訴訟代理人又ハ相手方若クハ其法律上代理人若クハ訴訟代理人力罰セラル可キ行為ヲ訴訟二関シテ為シタ リシトキ﹂を再審事由とするものである︒本件での旧訴訟は︑職権審理のなされる家督相続人廃除事件である︑とい

う特殊性がある︒そして︑大審院第三民事部は︑

﹁然レトモ民事訴訟法第四百六十九条第一項第二号二所謂罰セラルヘキ行為ハ刑法上罰セラルヘキ行為ヲ指称

︵当院明治三十七年︵オ︶第五百号同年十一月十日判決参照︶警察犯処罰令二依リ処罰セラ

ルヘキ行為ハ此二該当セサルモノト解スヘキモノナルヲ以テ縦令訴訟ノ相手方力警察犯処罰令二依リ罰セラルヘ

キ行為ヲ訴訟二関シ為シタルトキト雖モ之ヲ以テ原状回復ノ訴二囚ル再審ノ事由卜為シ得サルモノトス本件二於 テ上告人力原状回復ノ訴二因ル再審ヲ求ムル事由卜為ス所ノモノハ被上告人力其家督相続人タル上告人二対スル 家督相続人廃除請求事件二関シ上告人ノ所在力被上告人二判明セシニ拘ラス被上告人ハ不実二其所在不明ナリト シテ受訴裁判所二対シ公示送達ノ申立ヲ為シ裁判所ハ此申立二基キ訴状及呼出状ノ送達ヲ公示送達二依リテ為シ 上告人欠席ノ侭審理判決ヲ為シ判決亦公示送達二依リテ之ヲ為シ判決確定スルニ至リタルヲ以テ民事訴訟法第四 百六十九条第一項第二号ノ事由二基キ再審ヲ求ムルニ在リ故二右公示送達ノ申立ヲ為スニ当リ上告人ノ所在ヲ不 明ナリトシテ被上告人力裁判所二為シタル申立力官署二対スル不実ノ申述ナリトスルモ警察犯処罰令第二条第二 十一号二依リ処罰セラルルニ止リ刑法上処罰セラルルコトナキヲ以テ右事由ハ再審ノ原因タル事由卜為ラサルモ

ノトス殊二原状回復ノ訴二関スル第四百六十九条ノ規定ヲ取消ノ訴二関スル第四百六十八条ノ規定二対照シテ之 スルモノト解スヘク

1 0  

8 ‑ 2 ‑188 (香法'88)

(11)

の場合に採るかは︑明確に断定しえない︒ ヲ考察スルトキハ原状回復ノ訴ハ判決ノ実体力同条規定ノ事由ノ為メニ真実二反スルニ至リタルヲ以テ之ヲ原状二回復シテ更二真実二合スル判決ヲ得ンコトヲ目的トスルモノナルニ公示送達ヲ為スヘカラサル場合二之ヲ為シタリトスルモ単二送達手続ノ違法ヲ来タスニ過キス特二本件︱一於ケル如キ家督相続人廃除事件二於テハ裁判所ハ職権審理ヲ為スモノナルヲ以テ縦令被告欠席ノ侭審理判決ヲ為スモ其判決ヲ以テ真実二反スルモノト倣シ得ヘキモノニアラス故二公示送達力不実ノ申述二因リテ為サレ為メニロ頭弁論期日二出頭スルコトヲ得サリシ結果ヲ生スルモ其不実ノ申述力真実二反スル被告不利益ノ判決ノ原因ヲ為シタルモノト為シ難キカ故二第四百六十九条ノ規定二該当セサルコトト為リ従テ再審ノ原因卜為ラサルモノトス﹂

項三号の適用を否定した︒事実関係は︑次の

・ニ

いずれの見解を︑通常の民事訴訟 と判示した︒本件に対しては︑加藤博士は︑家督相続人廃除事件の審理の性質の点から正当だと評されている︒もちろん︑一方当事者の提出した資料だけでなく︑裁判所も現実に調査したことが前提である︒

以上のように︑判例には︑公示送達の申立人に故意がある場合︑訴訟詐欺で有罪確定判決等が存すれば民訴四二〇

条一項五号に該当するのみであるとするもの︵︹二︺長野地判昭和一二九・八・ニ五及び︹三︺札幌地判昭和四一・ニ・ニ五︶

と︑詐欺罪で有罪確定判決を得れば当然に右条文の再審事由に該当すると前提していると思われるが︑有罪確定判決

等の有無にかかわらず、代理権欠鋏(民訴四二0条一項1•1号)の再審事由として認めるもの([-〕東京控判大正一四・六.

ニ四及び〔四〕横浜地判昭和五――-·九・六)とがある。〔五〕大判大正一0•五・四は、

(5 ) 

ところが︑︹六︺最︳判昭和五七・五・ニ七︵判時一

0

五二号六六頁以下︑判夕四八九号五六頁以下︶が現われ︑過失に

よる公示送達の獲得の場合に民訴四二

0

条一項三号に該当しない旨を判示した後述︹七︺大判昭和一

O ・

︱ ︱

  に続き︑故意による公示送達の獲得の場合についても︑民訴四二

0

8 ‑ 2 ‑189 (香法'88)

(12)

(二) 本件は民事訴訟法第四二条一項三号の解釈ということになるが︑同条と同様の条文は同法三九五条一項四号がそれで

0

ある︒同条文の解釈においては︑代理欠訣だけではなく訴訟能力の欠鋏︑中断中の弁論に基づく判決︑当事者の責に帰し得

ない事由に基づく欠席のまま受けた判決等にこれが頷推されるとする︒

民事訴訟法四二

0

条一項三号にも同一の条文があり同様に解釈されなければならない︒

原判決は再審制度は特別のものでありその事由はこれを厳格に解釈されるべきものとする︒しかし︑民事訴訟法︱︱一九五条

一項四号︑同四二

0

条一項三号は同じ内容であって︑同一に解釈されなければ︑法解釈の一貫性に欠けるものである︒

よって四二

0

条一項︱︱一号においても当事者の責に帰し得ない事由に基づく欠席のまま受けた判決にもこれが類推される

こととなる

(一)

ようである︒

前訴訟で

X l

.ふ・ふ︵原告︑再審被告・被控訴人・被上告人︶

Y

が行方不明であったため︑公示送達の申立てが認められ︑

Y

は︑民訴四二

0

条一項三号を理由に再審の訴えを提起した︒原審は︑公示送 達の申立てによる勝訴判決があっても再審事由に該当しないこと︑

再審の訴えを認める必要はないとの理由で︑再審の訴えを却下した︒

﹁原判決は判決に影響を及ぽすこと明らかな民事訴訟法︵同四︱

‑ 0

条一項三号︶の解釈に違背せるものであって破棄され

るべ

きで

ある

原判決は公示送達の申立により欠席のままの勝訴判決については再審申立における事由とはならないという︒

︵民事訴訟法体系︑兼子一︑

訴の第一審判決が確定した︒そして︑ 等請求の訴えを提起した︒

とこ

ろが

一八

四頁

︶︒

は ︑

Y

︵被告︑再審原告・控訴人・上告人︶

ところで前件訴訟においては公示送達の手続により︑上告人欠席のまま判決がなされている︒

Y

欠席のまま

x

そして︑右場合には上訴の追完が可能であるから そこで︑更に

Y

は次のような理由で上告した︒

に対して離婚

8 ‑ 2 ‑190 (香法'88)

(13)

このような上告理由に対して︑最高裁判所は︑ と

前件訴訟における原告︑特に花子とは前件訴訟中に会い︑夫婦間の問題につき話し合ったことがあり︑又︑勤務先に連絡

して︑来たほどであって︑その送達場所を知っていたものである︒かかる場合は当然公示送達の取下げをしなければならな

く︑もし上告人にこの訴訟がわかっていれば︑攻撃防禦方法の提出の機会もあり︑判決の結果は変わっていたものと考えら

れる︒まさしく本件の場合は︑当事者の責に帰さない事由に基づく欠席のままの判決ということができる︒

右上告人の事実主張も充分証拠調べし︑これに基づく判断を原審はすべきであり︑違法をまぬがれない︒﹂

﹁上告人の主張する事由は民訴法四二

0

条 一 項 三 号 の 再 審 事 由 に 該 当 し な い と し た 原 審 の 判 断 は

︑ 正 当 と し て 是 認することができる︒論旨は︑採用することができない︒

よ っ て

︑ 民 訴 法

0

一条︑九五条︑

八九条に従い︑裁判官全員一致の意見で︑主文のとおり判決する︒﹂

と の 簡 単 な 理 由 づ け で

︑ 上 告 棄 却 の 判 決 を 言 い 渡 し た の で あ る

︒ そ し て

︑ そ の 要 旨 と し て 掲 げ ら れ て い る の は

﹁ 相 手 方 の 住 所 な い し 送 達 先 に つ い て の 故 意 ま た は 過 失 に よ る 不 実 の 申 述 に 基 づ く 公 示 送 達 手 続 に よ り 確 定 判 決 が な さ れ た

ことは民訴法四︱

1 0

条 一 項 三 号 の 再 審 事 由 に 該 当 し な い

﹂ と い う こ と で あ る

︒ 正 式 の 判 例 集 に は 掲 載 さ れ て い な い の で あ る が

︑ 最 高 裁 の 判 断 に し て は

︑ 今 少 し 詳 し く 理 由 づ け て ほ し か っ た と こ ろ で あ る

( l

)

兼子一・判例民事訴訟法︵一九五

0

年六

月三

0

日︑弘文堂︶一三三頁︑兼子一・条解民事訴訟法上(‑九五五年六月一五日︑弘文

堂︶

0

三頁︑三九二頁以下及び九三五頁︑兼子一・新修民事訴訟法体系︵一九五六年︱二月一八日︑酒井書店︶一八四頁︑ニ︱

四頁及び四六三頁︒これに賛成するのは︑岩松三郎

1 1兼子一編・法律実務講座民事訴訟編第二巻(‑九五八年五月二

0

日︑

有斐

閣︶

8 ‑ 2 ‑191 (香法'88)

(14)

( 2

)  

( 3

)  

( 4

)  

( 5

)  

4七五頁︑三ヶ月章・民事訴訟法︵↓九五九年二月三

0

日︑有斐閣︶一七二頁︑菊井維大﹁当事者の欠席﹂菊井維大編・全訂民事

訴訟法︵上巻︶︵一九六三年ーニ月こ九日︑青林書院新社︶ニ一七頁︑兼子一

0

1 1小山昇編・民事訴訟法講義(‑九七年五月一五日︑

青林書院新社︶︱

0

二頁︹石川明︺及びご七九頁︹江藤俯泰︺︑斎藤秀夫編著・注解民事訴訟法②︵一九七一年四月1五日︑第.

法規出版︶四五九頁︹林屋礼二︺︑新堂幸司・民事訴訟法︵一九七四年

: o

月 一

1 1

一日︑筑摩書房︶二六四頁及び三一

0

頁︑小山昇・

民事訴訟法︹.

1 ‑

訂版︺︵.九七九年六月一

1 : Q

日︑青林書院新社︶

1

.七一頁︑斎藤秀夫編著・注解民事訴訟法⑥(‑九八

0

1 0

五日︑第.法規出版︶:九四頁︹小室直人︺︑斎藤秀夫・民事訴訟法概論︹新版︺︵1九八1

‑ 0

日︑有斐閣︶六一五頁︑小

室直人

1 1賀集唱編・基本法コンメンタール第;.版民事訴訟法ー^

1 ‑

エハ頁︹賀集唱︺︑兼子

1

・条解民事訴訟法︵/九八六年五月

1 1 1 0

日、弘文堂)^•'O四頁以下〔新堂幸司〕、::八一・一頁〔竹下守夫〕及び 1二ニ二頁〔松浦馨〕、中野貞一郎11松浦馨11鈴木正裕編・民事 訴訟法講義︹補訂第:版︺︵.九八六年六月/

0

日︑有斐閣︶こご七頁以ド︹鈴木正裕︺及び;四

0

頁︹鈴木重勝︺︑吉村徳重

1 1

ド守夫11谷口安平編・講義民事訴訟法(-九八七年四月•:o日、青林書院)一ご五頁〔河野正圭旭〕である。反対するのは、菊井維

1 1村松俊夫・民事訴訟法

I (

.九五七年1

・ , : o

日︑日本評論社︶五一七貞であるが︑菊井維大

1 1村松俊夫・民事訴訟法

I I

(

九六四年四月

1

・ o

;

日︑日本評論社︶六五五貞では︑賛成しており︑菊井維大

1 1村松俊夫・全訂民事訴訟法

I

0

月四

日︑日本評論社︶八八

0

頁と︑菊井

1 1 村松・全

i i J I l l

擬制自白が認められていないとしても︑本間義伯﹁公ポ送達と相手方の救済し民商法雑誌九:一巻臨時増刊号①(‑九八六年一月1

0

日︶こ五七貞によれば︑﹁現実の訴訟ては︑控訴の追完を忍めた場合︑裁判所は殆んど本案の審理を行い︑原判決取消・請求棄

却の裁判を行っている﹂のである︒

この判例解説として︑

1

公谷忠之ご→甘執行に対する救済﹂新堂幸司1

1 1F

守夫編・基本判例から見た民事執行法(‑九八三年三月

: :

0 日︑有斐閣︶:こ

 

頁以F

加藤正治・法学協会雑誌四四巻八号

( 1

1 : l i

年︶.五

0

.頁以下︒なお︑同.五.

0

頁では︑﹁是レ皆連続的二似告

;

1

二依リテ確定判決フ受ケタルニ同シク被告ハ全然其ノ訴訟二関係セサリシニ均シ故二広義二於テハ被告力其訴訟二於テ代理セサ

リシモノト謂フコトヲ得ルナリしと迩べて︑代理権欠訣の再審事由に該甘することを主張している︒

この判例批評として︑;公谷・民事再審の法理;:こしハ貞以ドがある︒

一 四

8 ‑ 2 ‑192 (香法'88)

(15)

(3)  ③五号及び・ニ号説

(3 ) 

があ

る︒

0

条一項五号の再審事由に該当するとして認容した事例である︒

学①

五 号 説 故 意 に 不 実 の 公 示 送 達 申 立 て を し て 確 定 判 決 を 取 得 し た 場 合 に つ い て

︑ 詐 欺 罪 で 処 罰 さ れ た こ と を

前提に民訴四こ〇条二項五号に該当する、と解する説がある。詐欺罪(刑法•四[Lハ条)は、過失による場合を罰する旨

の規定がないから︵刑法.^.八条二唄参照︶故意犯であり︑過失犯は処罰することができない故に︑山且然のことながら︑

詐欺罪による有罪確定判決等を要求するこの五号説は︑過失による場合ではなく︑故意による場合のみが対象として

もっ

とも

︑ 三号説

この説に対しては︑

一 五

い渡

そもそも詐欺罪の構成要件に該当するか疑問であり︑再審事由 五号に該当するのは︑詐欺罪だけが念頭に置かれているようであるが︑文書偽造や偽証の場合も考えら

れる︒そして︑最近の大阪地堺支判昭和六

O ・

六・ニ六︵判時一/七

1

0

頁以下︶は︑離婚した夫の暴力脅迫等を畏

怖して行方をくらました妻からの︑夫が提訴し公示送達︵ただし︑故意・過失による場合ではない︶により審理・

され確定した離婚無効確認判決に対する再審の訴えが︑夫の傷害罪を理由とする有罪確定判決ある場合に︑民訴四二

故意による公示送達について︑民訴四二

0

条︱項五号以外に同三号の再審事由も認める説

(4 ) 

松浦教授は︑故意の場合に五号に該当することを認められるが︑更に︑三号に該当するかどうかについては︑公示 送達申立てが信義則又は公序良俗に違反するかどうかを基準にし︑

( 5 J  

れる

民訴四二

0

条一項三号の再審事由のみを認める説もあり︑

にならない︑ 議論されることになる︒

しか

し︑

との批判がある︒

その考量要素として︑故意・重過失を挙げておら

(6 ) 

まず梅本教授は︑氏名冒用訴訟と等置で

8 ‑ 2 ‑193 (香法'88)

(16)

あることを理由にするもので︑﹁本来︑受送達者の所在がわかっているにもかかわらず︑所在不明として公示送達によ って訴訟を進行させ︑確定判決を取得する行為は︑相手方とすべき者ならびにその所在がわかっていながら︑故意に

その者の訴訟手続への関与を妨げた上で︑判決を取得するという点において︑

あるといえる︒そうした関連性を考えると︑故意による公示送達の場合について︑民訴法四二

0

条一項三号によって

救済をはかることは︑同条の趣旨に反しないのみならず︑文理上も無理な解釈とはいえないといえよう﹂と主張する︒

その他︑三号該当説は︑当事者権・手続権の保障がなかったことを挙げている︒例えば︑本間教授は︑﹁要件を欠く

公示送達の問題の本質は︑訴状・呼出状の送達が不当に公示送達の方法でなされ︑受送達者がそれを知らず︑

って︑弁論に参加して自己の利益を守るための訴訟活動を行うことができなかった︵当事者権の保障がじゅうりんされ

た︶点にこそ存するのであって︑⁝訴状・呼出状の送達が公示送達でなされた場合は︑四二

0

条一項三号の適用を考え

(8 ) 

るのが本来の筋ではないか﹂と主張され︑竹下教授も︑五号説を採りえない理由とともに︑﹁相手方が名宛人の住所等

を知っていただけで当然に詐欺罪にならないし︑

を救済する必要があるからである﹂と主張されている︒

判決無効説

を受ける権利が実質的に保証されなかった場合であり︑氏名冒用訴訟判決の効力と同じに︑当然無効の主張を認める べきであろう﹂というのは︑新堂教授の見解である︒この見解によれば︑判決の当然無効を前提に︑例えば不法行為

そして︑既判力制度を動揺させることに基づく損害賠償請求の通常の民事訴訟を提起することができることになる︒

になるのではないか︑ したが

また一般に誤って公示送達がなされ︑弁論の機会を奪われた当事者

故意に被告の住所不明として公示送達を申し立てて確定判決を取得した場合には︑﹁被告の裁判

という疑問に対しては︑裁判所が再審事由にあたる事由︑特に民訴四二

0

条一項三号の事由が

あるかどうかを厳格に判断した上で当然無効の主張を認めるならば︑既判力制度を動揺させることにならない︑

と主

いわゆる氏名冒用訴訟と等しい行為で

一 六

8 ‑ 2 ‑194 (香法'88)

(17)

一 七

ここだけ﹁厳格に判断﹂するのか︑他の場合は︑代理権欠鋏を審理において厳格に判断する必要が

(l)兼子一・条解民事訴訟法上(一九五五年六月1五日、弘文堂)四二.二貝、五―-0頁及び九九二貝、兼子_•新修民事訴訟法体系(­九五六年一こ月こハ日、酒井書店).こ•こ・ニ頁及び四八二頁。山木炉克己「民事訴訟と信義則」末川先生古稀記念・権利の濫用中(→

九六二年一

0

1五日︑有斐閣︶二七九頁は︑この説を通説と評価している︒その他︑民訴四二

0

1項五号に該当する︑と主張

する説は︑岩松三郎

1 1兼子一編・法律実務講座民事訴訟編第二巻︵一九五八年五月一

' O

日︑有斐閣︶三三七頁︑兼子一編・判例民

事訴訟法上巻︵一九六二年三月三

0

日︑酒井書店︶四七四頁︑菊井維大

1 1村松俊夫・民事訴訟法

I I

︵一

九六

四年

四月

︱二

0

日︑日本

評論社︶七六一頁︑七六三頁及び七六四頁︑池田浩一﹁公示送達手続の違背﹂別冊ジュリスト五号・民事訴訟法判例百選︵一九六

五年︱一月一

0

日︑有斐閣︶一七九頁︑中野貞一郎﹁確定判決に基づく強制執行と不法行為の成否﹂判例問題研究強制執行法︵一

九七五年︱一月二

0

日︑有斐閣︶一

0

五頁︑菊井維大

1 1村松俊夫・全訂民事訴訟法I

︵一

九七

八年

0

月四日︑日本評論社︶九七

四頁︑斎藤秀夫編著・注解民事訴訟法⑦(‑九八一年︱一月二五日︑第一法規出版︶ニニ頁︹小室直人︺︑小室直人編著・民事訴

訟法講義︹改訂版︺︵一九八二年四月二

0

日︑法律文化社︶一〇六頁︵もっとも︑一六八頁では︑﹁既判力との関係からみて︑再審

原因の規定を例示的と解して︑これによる取消しをみとめる説が妥当であろう﹂と主張されている︶︑三ヶ月章・民事訴訟法第二

版(‑九八五年四月一

0

日︑弘文堂︶五四九頁︑小室直人

1 1賀集唱編・基本法コンメンタール第三版民事訴訟法1

︵一

九八

五年

0

月一五日︑日本評論社︶一九六頁︹小川英明︺︑菊井維大

1 1村松俊夫・全訂民事訴訟法

I I I

︵一

九八

六年

九月

0

日︑

日本

評論

社︶

三七八頁︑三八

0

頁及び三八一頁︒

なお︑本間義信﹁公示送達と相手方の救済﹂民商法雑誌九三巻臨時増刊号①(‑九八六年一月二

0

日︶二五四頁は︑兼子編・判

例上巻及び菊井・︹補正版︺の見解について︑全面的に再審を否定するものとして分類されているが︑いずれも︑過失による公示

送達の結果獲得した判決に対する再審を否定した後述︹七︺大判昭和一

O ・

︱ニ・ニ六を引用しているに過ぎず︑故意の場合には

民訴四二

0

条一項五号の可能性を認めているから︑この分類には疑問がある︒念のため︑当該箇所を引用しておくと︑兼子編では︑

﹁許可も裁判であるから︑たとえ証明や調査が不十分で住所等送達場所が簡単に知りえたのに︑それを誤って許可をし公示送達を ないのであろうか︒

( 1 0 )  

張される︒なぜ︑

8‑2 ‑195 (香法'88)

(18)

( 2

)  

( 3

)  

( 4

)  

( 5

)  

( 6

)  

( 7

)  

その効力に影響はなく︑再審事由ともならない﹂と主張されており︑菊井・民事訴訟法上補正版(‑九六八年四月三

0

日 ︑

弘文堂新社︶一九

0

頁では︑﹁公示送達の申立人は:・⁝公示送達の制度を逆用して︑送達場所が明かであるのに敢て不明であると

して公示送達の申立をして︑訴訟を追行し︑確定判決を受けることが暖々ある︒かような場合における送達受領者の救済は︑第一

五九条所定の訴訟行為の追完︵⁝⁝︶によってうけることができる︵再審の訴は提起できぬ︑大判一

O ・

これに反し訴訟の途中で公示送達になり︑第二皿九条によることができないが︑その際相手方が故意に住所不明と偽って公示送達

の申立をした場合には再審の訴︵四二

0

条一項五号︶を提起して︑救済を受けることができる﹂となっている︒

村松俊夫

1 1小山昇

1 1 中野貞

1

1 1倉田卓次

賀集唱編・判例コンメンタール1 1

1 6 民事訴訟法

I I

( .九七六年一月二五日︑三省堂︶六二頁

︹川谷昭︺︒石井彦寿﹁不実の公示送達申立により確定判決を得た場合と再審事由﹂季刊実務民事法l︵一九八三年四月二

0

二五頁は︑特に人事訴訟について︑﹁人事訴訟の如く身分に関する形成判決がされるものについて確定判決の蝙取は詐欺罪を構成

しないのではないかと思われ﹂るから︑再審による救済が認められなくなって不公平である︑と批判する︒なお︑中野・判例問題

0

五頁でも︑確定判決を獲得しただけではなく︑確定判決に基づいて執行した場合を想定されて︑給付判決が前提となって

斎藤秀夫編著・注解民事訴訟法③︵.九七三年︱一月三

0

日︑第1法規出版︶八五頁︹斎藤秀夫︺は︑これが通説である︑と評価

している︒もっとも︑斎藤教授は︑﹁有罪の確定判決があるかぎり︑同条五号によるとの立場が最も筋の通る見解である︒しかし

有罪の確定判決がない段階においても救済のみちを開く必要があるから︑四︱

!Q

条一項三号の拡張解釈ないし頷推解釈により再

審の救済を許すのが正当である﹂と主張される︒なお︑池田浩一﹁送達の方式と効果﹂中田淳了"三ヶ月章編・民事訴訟法演習ー(一九六:二年四月三0日、有斐閣)二且七頁は、便法として、民訴四•

I Q

条一項三号の再審事由をも認める︒

兼子一.条解民事訴訟法︵一九八六年五月一^

1 0

日︑弘文堂︶︱二七四頁︹松浦馨︺︒

兼子・条解︱二七二貞︹松浦︺︒

梅本吉彦﹁不意打防止と訴訟法理論﹂月刊法学教室︱q

( 1

九八;一年六月.日︶三四頁︒なお︑故意に訴訟手続に関与すること

を妨げた氏名冒用訴訟との対比をされていることからも分かるように︑梅本教授は︑過失の場合は二号に該当しない説を採られて

いる︒積極的理由を示してはいないが︑鈴木正裕

1 1 鈴木重勝

1 1 福永有利

1 1井上治典・注釈民事訴訟法(‑九八五年

‑ 0

0

日︑有

斐閣︶六︱‑︳五頁以下︹鈴木正裕︺も故意の場合について三号説を採る︒

本間・民商九三巻臨時増刊①ご五七頁︒

一 八

8 ‑ 2 ‑196 (香法'88)

(19)

判例

は︑

1

判 例

リーディング・ケイスとしての に該当することはない︒

一 九

( 8

)

f.条解四五九頁以ド︹竹下守夫︺︒

( 9

)

新堂幸司・民事訴訟法(‑九七四年一

0

月一

.︱

‑日

︑筑

摩書

房︶

0

二 貝

( 1 0 )

新堂四

O '

頁以

F

︒これに賛成するのは︑斎藤秀夫・民事訴訟法概論︹新版︺︵1

九八

一一

年四

月:

IQ

日︑有斐閣︶三六四頁である︒

なお︑新堂教授は︑本文のような事例の場合には︑送達も判決も無効とされるわけであるが︑判決の形式的存在を消滅させるため

に、t訴の追完と再審の訴えの選択権も甘事者に認めておられる。新堂-•七三貞参照。

申立人過失の場合

公示送達を申し立てた当事者に過失があった場合には︑公示送達によって獲得された確定判決に対して︑敗訴者は 一体どのような救済手段が認められるのであろうか︒これが次の問題である︒すでに述べたように︑詐欺罪のみを前 提とするかぎりは︑刑法上の詐欺罪は故意犯であるため︑過失の場合には詐欺罪に該当せず︑民訴四二

0

条一項五号

けをしていたにもかかわらず︑

︹七︺大判昭和︳

o

.︳ニ・ニ六︵民集一四巻二四号ニ︱︱︱九頁︶が︑寄留届 それを調査しなかった場合につき︑原審が民訴四二

0

条一項三号の再審事由を認めた のに対し︑原判決を破毀して︑再審の訴え却下の自判を言い渡した︒すなわち︑寄留届けがあっても現実にそこに居

住していたかどうか不明であり︑

しかも︑再審事由は厳格に解釈するべきであることと︑公示送達によった場合には

代理人による手続がなされたとはいえない︑ということを理由とするのであり︑

8 ‑ 2 ‑197 (香法'88)

(20)

﹁案スルニ原判決ノ確定シタル事実二拠レハ原判決ハ上告人ハ昭和七年一月中被上告人ヲ被告トシ損害賠償ノ 訴訟ヲ京都区裁判所二提起スルニ当リ夫レヨリ約半歳前被上告人力居住シタル京都市下京区高倉通万寿寺上ル西 入福田寺町ヲ其ノ住所トシテ表示シ該訴状ヲ同裁判所二提出シタルニ当時既二被上告人ハ右居所ヲ引払ヒ其ノ後 転帳シタル為送達ヲ為スヘキ場所力知レサルモノトシテ上告人ノ申立二基キ公示送達二依リ訴訟手続力運ハレ党 二本件再審ノ目的タル終局判決ノ確定ヲ見ルニ至リシモ甲第二︑三号証二依リ認メ得ルカ如ク右訴提起ノ当時被 上告人ハ同市上京区小山上総町六十七番地二居住シ其ノ後同市左京区上高野稲荷町十三番地二移住スルニ及ヒテ モ其ノ旨寄留届ヲ為シ居リシモノナルヲ以テ若シ上告人ニシテ其ノ寄留簿ヲ調査シタランニハ容易二被上告人ノ 所在ヲ確認シ得タリシ関係存シタルモノトシ斯ル場合ニハ法定代理権︑訴訟代理権又ハ代理人力訴訟行為ヲ為ス 二必要ナル授権ノ欠訣アリタルトキト同︱二論シ民事訴訟法第四百二十条第一項第三号ノ再審事由アルモノト判 定シタリ然レトモ原判決援用ノ甲号証二依リテハ唯被上告人力前記ノ如キ住居寄留ノ届出ヲ為シ居リシコトヲ認 メ得ルニ止リ果シテ現実当該寄留ノ場所二居住セシヤ否ヤハ不明ナルノミナラス元来再審ノ訴ハ終局判決ノ確定 カヲ除去スルコトヲ目的トスルモノニシテ従テ法力其ノ訴ノ事由ヲ特二制限的二規定シタルコトニ鑑レハ該事由 ノ存否ハ法ノ規定スルトコロヲ厳格二解釈シテ決スヘキモノト倣スヲ以テ法ノ精神二適合スヘシ然ラハ仮二原判 示ノ如ク被上告人側ニテハ寄留届二依リ其ノ居住地ヲ明二為シ置キタルニ単リ上告人二於テハ其ノ過失二依リ之 ヲ知ラス公示送達ノ申立二及ヒタリトスルモ確定判決ノ訴訟手続ハ法定代理人若ハ訴訟代理人二依リテ為サレシ モノニ非ス従テ法定代理権若ハ訴訟代理権ハ代理人力訴訟行為ヲ為スニ必要ナル授権ノ欠訣アリタルモノトハ云 ヒ得サルコト洵二明瞭ナルニョリ民事訴訟法第四百二十条第一項第三号ノ再審事由二該当セス其ノ他原判決ノ確 定シタル事実関係二於テハ同条項所定各号ノ敦ニモ該当セサルヲ以テ結局本件再審ノ訴ハ之ヲ却下スルノ外ナキ

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8 ‑ 2 ‑198 (香法'88)

参照

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