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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

電子供与体(D)-受容体(A)系の光誘起電子移動反応と 超分子構造制御の効果に関する研究

米村, 弘明

https://doi.org/10.11501/3105036

出版情報:Kyushu University, 1995, 博士(工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

可_...

第4章 D -A連結化合物の光誘起電子移動反応に対する磁場効果

4 - 1 序

第l章で述べた様に自然、における光合成の初期過程はチラコイド膜での光誘起

電子移動で生成するラジカル対の形成である。 溶液における光励起で生成するラ ジカル対の動的挙動は磁場効果によって明らかにされている。 この磁場効果は実 験的また理論的に研究され、 反応機構がほぼ統一的に解明されてきた。 溶液中で 自由に運動するラジカル対に対して、 チラコイド膜でのラジカル対の分子運動は 周りのミクロ環境によって強く抑制されている。 この抑制されたラジカル対の運 動は磁場効果を調べることで明らかにできると考えられる。 DとAを共有結合で つないだD - A連結化合物を用いる事や、 分子組織体の様な堅いマトリックスに よって固定する事で、 固定されたラジカル対のモデル系を構築することができる。

実際に、 松尾らによってポルフィリンービオローゲン連結化合物について、 2 分子膜また逆ミセルに担持された光生成ラジカル対の減衰速度が外部磁場の印加 によって著しく抑制されることが報告されている1 )。 加えて、 ゼロ磁場でのラジ カル対の減衰速度はポルフィリンとビオローゲンの間のスペーサ鎖長の増加に伴 って増加するという興味深い結果が得られている2 )。 これらの観測結果は三重項 うジカル対のサブレベルのゼーマン分裂とラジカル対の三重項一一重項のエネル ギー差のラジカル間距離依存性によって説明できると考えられている1 )。

ポルフィリンービオローゲン連結化合物は人工光合成の光反応中心の研究にお けるモデル化合物といて有用である。 しかしながら、 この研究ではラジカル対の 動的挙動がメチレン鎖の動的挙動に非常に大きな影響を受けるため、 連結スペー サー鎖の自由度が常に問題として残っていた。 著者らはこの問題を解決する新規 方法として、 第3章で述べた C Dが連結スペーサ部分に包接した “Through-Ring

c 0錯体" を形成させる方法を見いだした。

そこで、 本章では超分子構造としてThrough-Ring C D 錯体または逆ミセルを 選び、 光誘起電子移動反応及びその逆反応に対する磁場効果の検討を行った。 こ

」で、 D - A連結化合物としては励起三重項の量子収率の比較的高いフ ェノチア ンンまたはカルパゾールをビオローゲンに連結した化合物を使用した。

(3)

可・w

4 - 2 光反応に 対する磁場効果の歴史

人類が磁石を発見したのは紀元前3世紀と言われる。 中国では昔磁石は「慈石」

と 呼ば れていた。 これは磁 を引き る様が慈し 母親 子を 招き寄せる様に 似ているところから名付られた呼び名である3 )。

また、 “Magnet" という言葉は “磁石" という意味の他に 、 “人を引きつける

物(人) " という意味がある。 その意味の通り古代より、 人々を色々な形で魅了 してきた。

上記の磁石の特徴 である を引きつける原 の電子スピンに よるも のであ

る。 電子スピンとはオランダのUhlenbeckとGoudsmitに よって1925年 に 提唱され た電子の自転運動 に 伴う角運動量のことをいう4 )。 易しく例えると電子はミクロ な磁石と考えることができる。

量子力学に よれば、 電子スピン状態は量子化されており、 α スピンとβスピン の2つの状態しかとり得ない。 多くの物質(分子やイオン〉は “Pauliの原理"

により 、 α スピンとβスピンを つ電子が2 個 ず つ対をしてる。 そのた 物質全体としては電子に よる磁性は打ち消されてしまう。

ここで、 磁場中の電子や核スピンの挙動はご存じの様に ESR やNMRスペクトル に代表されるように 分析測定機器に 利用されている。

中 の電子スピンは磁 の方向か 方向に しか存 ない。 この分裂は1896 年にオランダの物理学者 Zeernan に よって発見され、 “ゼーマン分裂" として良 (知られて いる。 この分裂は電子の場合 に おいて、 1 T (テスラ) (= 10.000

ga u s s (ガウス))の磁場中で3 kcal/molしかない。 この値は室温(298 K)で

の熱エネルギー(k T) の約 200分の l の値 しかない。 従って 室温では熱運動の影 響によって電子は絶えず変化しており、 熱平衡状態では、 磁場の方向に 対して平 行と反平行のスピンの数の差はほとんどない。

次に、 子 〈 プロ トン〉の場合 いても 電子の場同様 に 、 プロ トン のス ピン (核 ス ピン〉は磁 中 では磁 の方向か方向の態を取 り る。 但 し、 子スピン と なるのは磁の方向の状 方向の状態より 安定であることで あ る。 また、 核スピンのゼーマン分裂は電子の分裂よりさらに約1 000分のlの値しか

15 1

(4)

可・v

ない。 その他の磁気同位体においても核スピンのゼーマン分裂はプロトンの場合 と同程度かそれよりも小さい値しかならない。

1 T程度の磁場中の電子スピンと核スピンのゼーマン分裂幅はそれぞれマイク ロ波とラジオ波のエネルギーに相当している。 磁気共鳴測定はゼーマン分裂幅は スピンの種類や物質中の環境によって微妙に変化する。 よって、 磁気共鳴測定に よってわかる物質の化学構造や化学反応に関する豊富な情報の恩恵に特に化学者 が預かっている訳である。

化学反応が磁場の影響を受けるかどうかという問題は古くから化学者の興味の 的になっていた。 しかしながら、 上記に述べたように、 通常の磁場中では電子ス ピンや核スピンのゼーマン分裂幅は室温での熱エネルギーに比較して著しく小さ い。 従って、 ゼーマン分裂の影響は熱エネルギーによって乱されてしまい、 化学 反応には影響を与えないと考えられる。 しかも、 化学反応を起こすためには、 通 常、 lモルの分子あたり数 kcal以上のエネルギーを熱や光の形で与えてやる必要 がある。 この値も、 電子スピンや核スピンのゼーマン分裂の値より非常に大きい ので、 反応経路が磁場の影響を受けるのは難しいと考えられていた。 すなわち、

磁場効果が発見される約2 0年前までの科学者の常識は磁場が化学反応に影響す る可能性は極めて少ないということであった5)。

1967年にNMRにおけるC 1 D N P ( Che凹ically lnduced Dynarnic Nuclear

PO 1 a r i z a t i 0 n )が発見された6)0 1969年にKaptein とClossが独立にこの現象に

ついてラジカル対機構によって理論的に解明した7 )。 このラジカル対機構に基づ き、 LawlerとEvansが197 1年に溶液中でおこるラジカル対の反応に対する磁場効果

を議論している8 )。 そして、 旧ソビエトのMolinらのグループが1972年にラジカル 対機構から起こる化学収量に対する磁場効果をぺンタフルオロフ ェニルメチルク

ロライドなどとブチルリチウムとの熱反応ではじめて観測することに成功したU0 1976年にラジカル対機構から起こる化学収量に対する磁場効果を光反応において 次のグループによって報告された。 長倉らのグループによってビベンゾニルパー オキサイドの光分解反応において磁場効果を観測した10 )。 また、 西ドイツの Weller らと Michel-Beyerle ら グループによってジエチルアニリンによるピレ

ノの励起一重項の消光から生成する励起三重項の生成に対する磁場効果を報告し

152

(5)

たl1 )。 また、 秦らはキノリンまたはイソキノリンの光反応に対する磁場効果を

報告している12),13)。

均ー系においてはラジカルの拡散が速いので、 ラジカル対はS - T mixingを起 こす前に消失してしまう。 そこで、 ミセルによるかご効果でラジカル対を閉じこ め大きな磁場効果が観測するという方法がTurroらによって報告された1-l )。 ミセ jレを用いる方法はその後多くの研究者に利用されている。

このミセル系での磁場効果は坂口、 林らによってナノ秒レーザーフ ォトリシス 測定を用いて動力学が詳細に検討されている15 )。 この方法を用いた研究が谷本ら

16 )またScaianoら17)によっても報告されている。 この方法は多くの研究者に幅広

〈利用されているo

iセルを利用する他にラジカル対を固定する方法としてメチレン鎖によってラ ジカル同士をつなぐ方法がある。 この方法で得た連結化合物においてラジカル対 を形成させる方法としては次の3つの反応例が報告されている(図4 - 1 )

( 1 )光誘起電子移動反応

( 2 )光誘起水素引き抜き反応

( 3 )光解裂反応

1 8 )

まず、 光誘起電子移動反応についてはWellerらによって報告されたピレンとジ メチルアニリンをメチレン鎖でつないだ化合物の分子内エキサイプレ ックスの生 成に対する磁場効果がはじめての研究例である19 )。 その後、 谷本らによってフ ェ ナントロリンとジメチルアニリンの連結化合物について同様な挙動が報告され一 いる20)。

光誘起電子移動反応では上記以外で松尾らのグループによってポルフィリン ー ビオローゲン連結化合物で磁場効果が報告されている1 )。 その後にポルフィリン ービオローゲン連結化合物については斉藤、 又賀ら21 )、 または旧ソ連のLevin ら 22)によって報告されている。

光誘起水素引き抜き反応では、 谷本らによってキサントンとキサンテンをメチ レ ン鎖でつないだ連結化合物で検討されている23)。 また、 中垣らによって4 -ニ トロー1 -フ ェノールや4 -ニトロ ー1 -ナフトールとアニリンをつないだ化合物の光 還元反応の生成物に対する磁場効果が報告されている2-1 )。

153

(6)

可_...

さらに、 シクロアルカノン誘導体の光解 裂によって生成するビラジカルに 対す る磁場効果も報告され、 メチレン鎖長の効果が詳細に検討されている25)-29)。

磁気同位体効果はBuchachenkoらまたMolinらによって報告されている30)。 ラジ カル対を経由する反応ではS - T IIlixing においてhfc 機構による影響が考えら れる。 それ故、 核スピンの影響が上記の反応に観測される。 この効果は通常の質 量の差による同位体効果とは異なり、 “磁気同位体効果" と呼ぶ。 この効果をミ セル系に発展されたのがTurroらのグループである31 )。 均一系に比較して大きな

臨気同位体効果が観測されている。

最近では重原子ラジカルに対する磁場効果が理研の林らによって精力的に研究 されている32)。

( 1 )光誘起電子移動反応

D大 A

\ノ \ノ

(2 )光誘起水素引き抜き反応

v XH・ \ノ y.

(3 )光解裂反応

\ノ

ヌ1 4 - 1 連結ラジカル対の形成方法

154

(7)

..._,.

4 - 3 磁場効果の理論

4 - 3 -1 ラジカル対の磁気的性質31 )

図4 -1に示した様に、 分子の結合の光解裂、 光誘起電子移動、 光誘起水素引 く抜き反応などにより2つのラジカルが対となったラジカル対を形成する。

ここで、 解裂 反応の場合を考える。 1つの結合のホモリック分解によって、 2 つのラジカルが生成する時、 2つのラジカルはラジカル対を形成する。 ラジカル 対のスピン状態の変換より分解が速いため、 もし、 一重項( s )状態から分解が 起こる(熱反応〉ならば、 生成するラジカル対はS状態になる。 同様に、 三重項

( T )状態から分解が起こる(光反応)ならば、 ラジカル対はT状態になる。

ラジカル対とは2つのラジカルが相互作用(スピン 相関〉したラジカル2つの ことをいう。 ラジカル対はスピン状態は図4 - 2のように表される。 ここで、 合 成スピンの大きさが1のものを三重項ラジカル対(T )、 0のものを一重項ラジ カル対( s )という。

SからT。の遷移は位相変化が必要であり、 SからT +またはT -への遷移にはス ピンモーメン卜の変化(スピンフィリプ〉が必要である。 磁気的相互作用が存在 しない場合では、 S -T聞の遷移(項間交差〉は禁制である。

したがって、 2つのラジカルが溶液中で再遭遇するとき、 一重項ならば再結合 反応が起こり、 三重項ならば 反応が起こらない。

また、 ラジカルの交換相互作用によって、 三重項ラジカル対(T )と一重項ラ ジカル対(S )はエネルギ一的に異なる。 そして、 このエネルギー差は図4- 3

の関係があり、 ラジカル聞の距離の増加に伴って減少し、 距離が離れるとTと が縮重することになる。

ここで、 ラジカル対を経る化学反応を考えよう。 反応機椛は図4 - 4のように なる33)。 反応の前駆体が一重項の場合、 生成するラジカルは2つのラジカルの電

子スピンが反平行の一重項ラジカル対を形成する。 これに対して、 反応の前駆体 が三重項の場合、 生成するラジカルは2つのラジカルの電子スピンが平行の三重 項ラジカル対を形成する。 溶液中では近接ラジカル対を形成する2つのラジカル

155

(8)

司司_..

THE TRI PLET 5TA了E (5) THE SINGLET 5TATE

マ 込 マ ? マ 色 色 込

Hz T. T_ 了。 S

5.' 5.1 5., 5.0

M, ., M, a・1 M, ・0 A'-.。

図4

-

2 ラジカル対のSとT状態のベクトルモデル3 1 )

ー一二1

gβN gβN ðE

s

s-了。

ISC ISC

f

図4

-

3 ラジカル対機械におけるエネルギーダイアグラム3 1 )

r ラジカル間距離、 J : ラジカル対の交換積分

156

(9)

可_...

A-B↑↓

一重項前駆体

A-B �一一I(AfiB) かご生成物 一重項近接対

↓↑

A i + B i 散逸ラジカル

A-B↑↑

三重項前駆体 3( A Î↑B)

J

三重項近接対

H

/

図4 - 4 ラジカル対を経る反応の初期過程33 )

157

(10)

『・・v

I�互いに離れ、 遠隔ラジカル対を形成する。 ここで、 遠隔ラジカル対は1部が再

接近するが、 残りは散逸したラジカルを与える。 一重項近接ラジカル対はある確

率でラジカルの再結合が起こり、 かご生成物が得られる。 散逸したラジカルはラ ジカル同士もしくは溶媒と反応して散逸生成物を与える。

このような反応において、 一重項と三重項ラジカル対の間に項間交差がおこり、

この項間交差過程の速度が外部磁場の影響を受けるならば、 かご生成物( c p ) と散逸生成物(E P )の収量が磁場によって変化することになる。

遠隔ラジカル対において容易にS - T変換がおこる。 なぜなら、 図4 - 3にお いて論じたように遠隔ラジカル対ではSとTが縮重しているからである。

4 - 3 - 2 ラジカル対の項間交差と磁場効果の機構33)-37)

ラジカル対の項間交差を支配するのは、 ( 1 ) 電子スピンと外部磁場による

Zeem a n 相互作用と、 ( 2 )電子スピンと核スピンの超微細相互作用( hyperfine

interac t i on)と( 3 )電子スピンと電子スピンの交換相互作用(exchange in-

teraction)があり、 スピンハミルトニアン(H S T )は次のように表せる。

4π2] _ _ 2 πβH

H ST = -2一一一::_ S 1 . S % + ,� ,-� � (g 1 S 1 + 9 2 S % ) h

+

{L, �マli

S1 Ia +

1

� S.. 1

J}

( 4 - 1 )

ここで、 SlとS 2はそれぞれラジカルl及び2の電子スピン、 1 iと1 jはそれ

ぞれラジカルl及び2内の核スピンを示す。 Jは交換積分、 g 1とg 2はそれぞれ うジカルl及び2のg値、 A knはラジカルk内での核nとのh f定数を示す。

( 4 -1 )式の第一項目のJはI 2 J Iの大きさがラジカル対の一重項(S )

ー三重項(T )状態のエネルギ一差に相当する(図4 - 3 )。 そして、 この項が

第二項 、 第三項に比較して大きい時は磁場効果は観測されない。 通常の化学結合 においては電子対内のスピン ー スピン相互作用は大変大きいので、 通常の分子の 項間交差には磁場効果は観測されない。 これに対して、 ラジカル対ではスピン ー スピン相互作用は第二項、 第三項に比較して小さく成り得るので磁場効果を観測

(11)

することができる。

ここで、 ラジカル対に及ぼす磁場効果には現在4つの機構が考えられている。

ラジカル対の 磁場効果は次の ように説明されている。

( 1 )ムg機構

6 g機構はラジカルを構成 している原子がどれも核スピンを持た ない場合に対 応し、 近似的に外部磁場が非常に強い場合にも適用 できる。

ここで、 ラジカル対を構成する2つの ラジカルはそれぞれ、 磁場中ではω = jπgßH/hの速度で歳差運動を行う。 従って、 ラジカルを構成する2つの ラジ カルにg値の差 があるとき、 その ため電子スピンの位置関係(位相:ムg g ,

g 2 i= 0 )がずれを生じ三重項から一重項状態に項間交差する。 この機構がムg機 構である。 この時の 項間交差 の 速度(k isc ( ムg ))は次式で表される。

kisc( 6. g ) =2π 6. gβH/h - (4- 2)

従って、 項間交差速度(k isc)は外部磁場強度の増加と共に速くなる。 有機ラ ジカルの場合、 ムg =0.001程度で1 Tの外部磁場でki s cは108 S-l程度となる。

( II) h f c機構

同じg値を持つラジカルからなる場合、 ムg機構は作用 しない。 した がって、

( 4 - 1 )式の第三項目の 効果が単独で作用する。 核スピンと電子スピンとの超 微細相互作用 のため、 核スピンは電子スピンに対して局所磁場として作用する。

このため、 磁場中にラジカル対を置くと2つの 電子スピンは異なった速さで歳差

連動を行う。 そのため、 電子スピンの位相(位置関係〉がずれ始め三重項から一 重項状態に項間交差する。 この段構がh f c機織である。

SとTがほぼ縮重しているときには、 その速度は(4 - 3 )式によって見積も ることができる38)。

k isc (hfc) = 2π gβB av/ h

Bav= (B,2+B22) (B,+B2) Bi = [l:Aiklk(Ik+l) ] '/2

(4 - 3 )

1... 1....で、 A i kはi番目のラジカルの電子スピンとk番目の核スピン1 kとの h f 定

159

(12)

可...

教である。 ゼロ磁場ではTの3つの副準位(T。、 T +、 T _)とSは縮重していて、

これらの聞で項間交差が起こる。 外部磁場が印加されると、 Tの副準位のゼーマ ン分裂が起こり、 T +とT _の副準位はSとの縮重から解かれ、 項間交差の速度が

遅くなる。 さらに外部磁場が強くなるとT +とT _はSから離れ、 S - T 0遷移しか 起こらなくなる(図4 - 5 )。 従って、 h f c機構では6. g機構と異なり、 外部 臨場強度に伴って項間交差は起こりにくくなる。

ここで、 有機ラジカルの場合、 Bavは 0.001 ---0.01 Tなので、 k i scは108,,-,

10 9 S -1となる。 従って、 外部磁場がO. 1 T以上(H) Bav)では、 T +とT ーから

Sへの遷移は起こらず、 S - T。遷移しか起こらなくなる。 すなわち、 h f c機械

では項間交差の減少は通常O. 1 T以下で飽和する。

( III )スピン緩和機構39)

6. g機構、 h f c機構の2つの機織によれば、 ラジカル対の電子スピンは磁場

中での向きを正しく保ったまま永遠に追いかけることになる。 しかし、 現実には うジカル対の分子回転などにより向きがだんだん唆昧になってしまう。

電子スピン同士の相対的向きが不安定になるとラジカル対機構は働かなくなる が、 逆に確率的に項間交差が起きることになる。 この様な過程を緩和という。 こ の緩和の速度が磁場に支配されることによって起こる機構がスピン緩和機構であ る。 緩和現象は電子スピンの磁気的な揺らぎによって起こる。 この時、 電子スピ ンと核スピンの双極子相互作用による縦緩和速度(k r) は(4 - 4 )式によっ て表される。

たr 二 2π2τc I V mn I 2

h 2 (1 +ωmfτC 2 ) (4 - 4 )

( 4 -4 )式より、 分母に共鳴角周波数ω m nが含まれているので、 磁場が増加

すると緩和速度は遅くなることがわかる。 緩和速度はマイクロ秒のオーダであり、

うジカル対の寿命が長い時にこの緩和過程が磁場効果において重要な役割を果た すことになる。

l60 _

(13)

図4 - 5 h f c機構による磁場効果の概念図

制υ口市】。」向日ω【凶伺Umω

一 一一一= L1g mechanism

一一一一一一一一一hI mechanism

一一一 一 一 一一一一relaxation mecnanism 同02ELF

T _-s level crossing

Magnetic fjeJd strcngth

図4 - 6 各機構による散逸生成物に対する磁場効果3 5 )

表4-1 生成物に対する磁場効果

前駆体のスピン状態 1重項

3重項

かご生成物 増加 減少

散逸生成物 減少 増加

1 6 1

(14)

『司・・F

(IV) T--Sレベル交差機構

ここで、 2つのラジカルがスペーサによってつながれた場合において、 T_ -S

レベル交差機構が観測される場合がある。 TとSのエネルギー差( 2 J )とラジ カ/レ間距離には図4 - 3の関係があるので、 ラジカル間距離が短い時には、 交換 相互作用によってゼロ磁場においてもTとSは縮重しない。 この時、 磁場を増加

していくと、 ある磁場においてT ーとSが縮重することになる。 したがって、 項間 交差速度はゼロ磁場から最初増加し、 T _とSが縮重したところで最大となりそれ

から減少することになる。

ラジカル対の項間交差は上記の4つの機構によって外部磁場によって変化する。

したがって、 溶液中でラジカル対を経る化学反応においては散逸生成物またはか ご生成物の収量はいずれも外部磁場の影響を受けるはずである。

反応前駆体を励起三重項とした場合、 上記の4つの散逸生成物に対する磁場効 果を磁場強度に対してプロ ットすると図4 - 6の様になる。 また、 反応前駆体を 励起一重項と した場合は図4 - 6と逆の磁場強度依存性になる。 また、 散逸生成 物とかご生成物の磁場効果は逆になる(表4 - 1 )。 実際の磁場効果はこれらの 機構が複合した形で観測される。

162

(15)

司司・E

4 - 4 フェノチアジン ービオローゲン連結化合物の光誘起電子移動反応に対す る磁場効果40),41)

4 - 4 - 1 フェノチアジンービオローゲン連結化合物のシクロデキストリン錯 体における光誘起電子移動反応に対する磁場効果

(実験方法) PHnV(n=4, 6, 8,10,12)またはPH12AB(0.lrnM)とC D (2rnM)を溶かした 水溶液(pH=7.2:t 0.1)をレーザーフ ォトリシス用石英セルに採り、 脱気アルゴン置 換した。 この試料 を電磁石中に置き、 レーザ一光励起(351 nrn : XeFエキシマー

レーザーまたは355 n田: Y A Gレーザーの第3高調波)し、 過渡吸収スペクトル及び

ÔO 3 n田 における吸光度の時間変化を2 5 oCで測定した。 また、 同じ試料の蛍光ス

ペクトルも測定した。

。 り

H2)n-N ト(CH2hCH

4-4-1-1 光誘起電子移動反応に及ぼすC D添加効果

n = 6:α-(0

n = 7:

ß

-(0

n = 8 : 'y -(0

3種類のC Dとフェノチアジンービオローゲン連結化合物のメチレン鎖長の影 響について検討した。 まず、 最初にメチレン鎖の長いPH12V の場合から述べる。

PH 12 Yについてはβ- C D添加系においてレーザ一光励起によって過渡吸収スペ

クトルにビオローゲンカチオンラジカル( ). rnax = 6 03 nm)とフェノチアジンカ チオンラジカル( ). max = 520 nrn)が得られた(図4 - 7の内図〉。 すなわち、

フ ジ カル対の吸収が得られる ことがわかった。 また、 これらのラジカル対の減衰

163

(16)

司司・・v

l�外部磁場の印加によって著しく抑制された(図4- 7)0 CD無添加系では外

部磁場の印加にかかわらずラジカル対の吸収は得られなかった。 従って、 この効 果は明らかに C D 添加の効果であることがわかった。 ここで、 第3章の 1 H -

"i M Rスペクトルの結果と呼び起こしてみよう。 PH12Y-βーCD系においては、

詩体種のシグナルが フリ一種から離れて低磁場側に観測された。 また、 この場 合

では錯化反応は2段階でおこり、 メチレン鎖に錯化するl段目の錯生成定数は

1: 1錯体として2.5 X 104 十lであることがわかった。 従って、 この錯生成定数 より、 この条件では97 %以上のβ- C D が連結化合物のメチレン鎖に錯化してい ることがわかった。

この系のラジカル対の速い減衰はl次の動力学に従った。 よって、 この反応は 分子内反応に対応すると考えられる。 詳細な検討により、 レーザー励起直後のラ ジカル濃度は磁場の影響を受けず、 減衰のみが外部磁場の印加によって著しく抑 制されることがわかった。 この著しい磁場効果はここで観測しているラジカルは 三重項ラジカル対を形成していることを強く示している。 ビオローゲンカチオン うジカルの吸収(え=603 nm)の速い成分より評価した逆電子移動反応速度定数

( k d ) は磁場強度の増加に伴って減少し、 約 0.3 T 以上で一定値となった

(図4 - 8 )。 磁場を印加すると反応速度が減少し、 O. 1 T以上の磁場で速度定 数が一定になる事より、 この磁場効果はスピン緩和機構3 9 )であると考えられる

(図4 - 9 )。 すなわち、 光励起で生成する分子内ラジカル対の分子内逆電子移 動反応は図4 - 9の項間交差過程(k 4)によって支配されている(k 4が律速段 階)。 この磁場効果は磁場を印加していない時には三重項ラジカル対サブレベル は縮重しているが、 磁場を印加すると三重項ラジカル対のサブレベルがゼーマン 分裂し、 生じたサブレベル(T +、 T -)から一重項ラジカル対(s )またはT0

への遷移が抑制されることで説明される。 言い替えれば、 高磁場ではk 4は三重項 フジカル対のスピンー格子緩和過程によって支配されていることを示している。

これらの磁場効果の特徴はポルフィリンービオローゲン連結化合物を用いた測定

結果と良く一致した 1 )。

吹に、 α - C D添加系ではβ- C D添加系と同様に過渡吸収スペクトルにラジカ ル対に帰属される吸収が観測された。 同じ条件で測定した場合においては α -

164

(17)

500

0.5戸S

サ�

Wovelength / nm 600 H

=

1. OT

0.04

0.02

UUC03」om心〈

H

=

1. OT

0.06

Q) 0.04

u C O 工コI.._

0 υ3 工コ

〈ξ

0.02

可・v

10 G O

t / IJS

トルに及ぼす外部位iLj丈}J J).�

nmの過渡吸収スペク β- C D添加系での603

図4

-

7

の7.K i容j夜

-巳yu m川

[β- C D ]

‘‘、川" m川

o. 1 [PH12V]

0.5μs1えひ: I O;L S

Tの磁場印加時におけるレーザー励起後 1. 0

内図

トノレ

• α-CD の過渡吸収スペク

ß-CD

ω

<D

o

て一一

〉く 寸コ ミ乙

。 QOO�oOoQ

ハU ハυ ハU

0.5 什/T

に及ぼす外音I�磁以

。AU UK 〆rt、

P lI 1 2 Vでのラジカル対の減衰速度定数 図4

-

8

β- C D系 ( 0 )

α - C D系、

効果 (・〉

(18)

可�

( A )

P H -V 2+ hv

1 PH本r._ V 2+

kO

/

k6 /ら

3 P H*-V 2+

l(P H:-V7)

k4

3( PH� -V: )

iks

V

iniermolecul6r electron tr6nsfer

門口

s 乙To �

J ホ す

reverse

ET

(iJ Zero Field

reverse

ET

(iiJ Hign Field

図4 - 9 ( A ) ェノチアジン ービオローゲン連結化合物における光誘起電子

移動と逆電子移動を含んだ反応機構

( B )ラジカル対の逆電子移動を導く項間交差過程( k 4)に及ぼすゼ

ーマン効果

(19)

『司・・F

C D添加系ではβ-C D 添加系に比較して初期のビオローゲンカチオンラジカル

の収量は約2倍程度増加した(図4-1 0 )。 この減衰には速い成分(τ < 10μ

s)と遅い成分(て >0.6 ms)が得れられた。 ここで、 外部磁場を印加すると短寿

命成分の減衰速度が抑制され、 長寿命成分の相対的寄与が増加した。 ここで、 遅

、成分を差しヲI l \た速い成分は1次の動力学に従い分子内反応と考えられる。 速

、成分の磁場効果は本質的にβ-C D 添加系と同様であった(図4- 8 )。 従っ て、 短寿命成分はα -C D 添加系と同様に光生成によって生じた分子内三重項ラ ジカル対に帰属される。 また、 遅い成分の速度定数は磁場の影響を受けず、 また 2次の動力学に従うことより、 分子問反応と考えられる。 この反応はスキームl に示す分子間反応(k 7) と帰属される。 磁場の印加に伴って長寿命成分の相対 的寄与が増加する現象は次の様に説明できる。 磁場によって項間交差(k 4 ) が 抑制され、 結果として三重項ラジカル対の寿命が長くなり、 近くにある基底状態 の連結化合物の衝突によって生じる散逸ラジカルが増加するため先の効果は起こ ると考えられる。

y - C D添加系では外部磁場の有無にかかわらずラジカル対の吸収は得られなっ

PH 1 0 VについてはPH12Yと同様にα ーC D、 β-C D添加系においてラジカル対の 吸収が観測され、 ラジカル対の減衰に磁場効果が観測された。 PH8Vについてはα ーC D添加系でのみラジカル対の吸収が観測され、 ラジカル対の減衰に磁場効果が f�られた。 メチレン鎖長の短いPH6Y及び Pfl4YではC Dを添加し、 かつ高磁場でも うジカル対の吸収は観測されなかった。

この様に、 C Dの種類、 磁場、 メチレン鎖長によってD- A連結系の光誘起電 子移動反応が大きく変化すること が明らかになった。 言い換えれば、 C Dの種類、

監場、 メチレン鎖長によってD - A連結系の光誘起電子移動反応を制御できるこ とがわかった。

逆電子移動反応及び磁場効果に及ぼすメチレン鎖長の効果はα -C D錯体を用い て4-4-1-4で詳しく議論する。

4-4-1-2 磁場効果に関連した蛍光とNMRスペクトルからの考察

167

(20)

むUCO心」Oω2く

O. l5

0.05 O. lO

ωUC02」Oω心〈

60 lOO

戸、.dけr f/ ら1・、

20 G O

トルに及ぼす外部位場効 nmの過渡吸収スペク

α - C

D添加系での603

図4 - 。

問木

の水溶液

m川 D ー、日 ''EEA ハHU

T

[β-

C

D ] 2

( C )

0.2、

‘且巴,u mω

O.

06、

O.

1 ( B ) [ PH12V]

、 ハUU

( A )

k6

�PH・Vι+

1(PH+. - v+.)

K4 Scheme 1

3(PH七回v+.)

Ilia-LV

RJV LR

+

PH - V2+

2 PH - V2+

K7

PH・v+.

PH+. - V2+

+

(21)

PHnV(n=4. 6. 8.10.12)のフ ェノチアジン部分からの蛍光強 度 をC D添加系で比較 した。 PH12Vの場合から述る。 ビオロ ゲン部分のないフ ェノチアジン誘導体を 用いたPH12AB-βーC D系を基準として用いると、 PHnVだけの系ではほとんど発光

し なか った。 C Dを添加すると、 PH12Vからの蛍光強度はα -C D添加系>β-C D

添加系> r -C D添加系~無添加系の順序になった(図4 - 1 1 ) 。

PH 10 VではPH12Vと同様にα ーまたはβ-C D添加系で蛍光強度が増加した。 PH8Y

ではα ーC D添加系でのみ蛍光強 度 が増加した。 しかしながら、 PH6V 、 PH4Vでは C Dを加えても蛍光強 度 は増加しなかった。

これらの測定結果はPH12V とα ーまたはβ-C D、 PHIOVとα ーまたはβ-C D、

PH 8 yとα -C D が錯化することにより、 フ ェノチアジン励起一重項の失活を抑制

していることがわかった。 また、 蛍光強度が増加する系ではlH-NMRの測定に おいて、 フリ一種と錯体種のシ グ ナ ルが離れて別々に観測された。 この場合、

C Dが連 メチレン鎖に錯化した交換速 度 の遅いThrough-Ring C D 錯体を形成 していることがわかった。 一方、 蛍光強 度 の増加しない系ではフリ一種と錯体種 のシグナルが離れて別々に観測されなかった。 交換速 度 の速い錯体を形成してい ることがわかった。 (第3章参照〉。

ここで、 Through-Ring C D 錯体での励起一重項からの光誘起電子移動はメチ レン鎖長の効果を含めて第6章にて詳しく議論する。

上記のlH-NMRの結果は蛍光スペク ト ルの結果と良く 致した。

すなわち、 錯体種とフリ一種の交換速度の遅い錯体はNMRの時間域で安定で あり、 かつ連結メチレン鎖に錯化するため、 フ ェノチアジンとビオローゲンの聞 の直接的相互作用を抑制できる。 結果として、 フ ェノチアジンの蛍光強度が増加

し、 三重項ラジカル対を生成する割合(k2/ (k o+k1+k2) ) が増加する。 こ

れに対して、 錯体種とフリ一種の 交換速度が速い場合はフ ェノチアジンとビオロ

ーゲンの相互作用があるため、 励起積は容易に失活し、 過渡吸収スペクトルにお

い て ラ ジ カ ル対の吸収は観測されないとれる

もちろん、 C Dによって錯化挙動が異なり、 コンホマーの分布や励起状態の減 要過程がC Dの錯化状態によって影響されることが知られている。 しかしながら、

169

(22)

D35μc-むυFbuωωLQJE

Q∞ 5∞

陥ve同19th /川

図4- 11 PHl2Yの蛍光強度に及ぼすCD添加効果

[PHl2YJ = 0.1 州、 [ C D ] = 2 rnMの水溶液: (A) α ーCD、 ( L3 ) β-C D、 (C) y -CD :励起波長 350 nm、 250C

(D) PH12AB (0.1 mM)、 [β-C D ] = 2 mM の水溶液を参照とし一 使用

(23)

この研究ではラジカル対の吸収が観測される場合のみ、 異常な安定性を持つ錯体

(Through-Ring C D 錯体)を形成するので、 この現象については今まで報告さ

れている寄与は少ないと考えられる。

4-4-1- 3 磁場効果の観測によって示される分子間電子移動の寄与

連結化合物のα -C D 錯体の場合において、 速い成分に対する磁場効果は遅い 成分の増加を伴う(図4 - 1 0 )。 遅い成分は2次の動力学に従って減衰するo ß -C D錯体の場合において観測される挙動はα - C D錯体の場合と異なる。 速い

成分に対する磁場効果はβ- C D 錯体の場合と同じであった。 しかしながら、 遅

、成分は1 T時の場合においても増加 しなかった(図4 - 7 )。 分光学的測定 (UY-YIS、 円偏向二色性、 NMRスペクトル)よりもう一つのβ-C Dが錯化するこ とが可能であることはすでに第3章で述べた。 また、 フ ェノチアジン誘導体とβ

-c Dとの錯生成定数は103 "-1 の桁であることも知られている42)。 一方、 α -C D錯体の場合は1 : 2錯体を形成しない。 従って、 この現象の違いは容易に理

解できる。 フ ェノチアジン部分はβ-C Dの空洞(7.0 Â)には包接できるが、 α -C D の空洞(4.0 Â)には包接できない。 以上の観測結果を基本とすると、 α -C Dの遅い成分は図4 - 1 2に示すように分子間電子移動反応によるものと考え

られる。 ここで、 分子間電子移動反応は磁場効果によって連結化合物のラジカル 対の寿命が数μsの時間域まで長くなることが重要である。 ここで、 β- C Dの場 合はビオローゲンカチオンラジカルから近くに存在する連結化合物のβ- C D が 包接したフ ェノチアジン部分への電子移動が遅いのでこの時間域では電子移動が 起こらないと考えられる。

4- 4 - 1 - 4 Through-Ring C D錯体におけるラジカル対の減衰に対する磁場 効果に及ぼすメチレン鎖長の効果

第3章でのlH -NMR測定により、 フ ェノチアジンービオローゲン連結化合物 のメチレン鎖が長い化合物(PHnY: n=8, 10,12)とα- またはβ- C Dと組み合わ

171

(24)

PH�コvt+

PH

+ L__J

V2+

; ? ; : l r u

e

: H i ;

fe

PH�

--8-

V2+

+

PH

V� 2 PH

B

V2

(iiJJ口vt+田口Y

2+ intermolecular electron transfer

prohibited

図4

-

1 2 光生成ラジカル対と励起されていないフ ェノチアジン ービオ口ーゲ

ン連結化合物を含んだ分子間電子移動過程におけるα - C 0とβ- C [) の聞の違い

(25)

せた時に、 C Dがメチレン鎖に錯化したThrough-Ring C D錯体を形成することが

わかった。

そして、 Through-Ring C D錯体を形成する場合のみ、 過渡吸収スペクトルにラ ジカル対の吸収が観測され、 ラジカル対の減衰に磁場効果が観測された(4 - 4 ー1 - 1参照〉。 そこで、 メチレン鎖8. 10, 1 2の連結化合物でラジカル対の吸収U 得られるα - C D錯体の場合について磁場効果に及ぼすメチレン鎖長の効果 を詳

細に調べた。

まず最初に、 ゼロ磁場では3種類のメチレン鎖の異なる連結化合物はどれもビ オローゲンカチオンラジカルの減衰には始めに速く減衰する成分と遅く減衰する 成分があった(図4 - 1 3 )。 遅い減衰はラジカル同士が2分子で反応する分子 間反応に帰属される。 遅い減衰を差しヲ|し1た速い減衰は一次の動力学に従い、 分 子内反応によるラジカルの消失と帰属できる。 これ により求めた減衰速度定数 ( k d) を図4- 1 4に示した。 ここで、 図4- 1 4により明らかにゼロ磁場で

はメチレン鎖が短くなるに伴って減衰速度が遅くなるという興味深い結果が得ら れた。 この事については4 - 4 - 3で詳しく議論する。

ここで、 初期のビオローゲンカチオンラジカルの生成量はメチレンの増加に伴 って増加した。 この事は蛍光強度〈図6 - 5、 表6 - 3 )また蛍光寿命(表6 - 4 )に及ぼすメチレン鎖の影響と良く一致した。 しかしながら、 蛍光強度の増加 量とラジカルの生成量は直線関係を示さなかった。

過渡吸収スペクトルにおける初期のラジカル対の速い減衰は磁場の印加によっ て著しく抑制された(図4 - 1 5 )。 どの場合でも、 レーザー励起直後のラジカ ルの初期濃度は磁場の印加によって影響されなかった。 減衰速度定数(k d) は 臨場強度の増加に伴って減少し、 0.3 T以上で一定値になった〈図4- 1 4 )。

ゼロ磁場では、 k dの値は明らかにメチレン鎖の短い化合物(PH8Y) の方がメチ

レン鎖の長い化合物(PH10Y 、 PH12Y)の方より一桁小さいことがわかった。 また、

高磁場時でのk d の値はメチレン鎖の違いにかかわらず同じ値を示した。 結果と して、 磁場効果(k (H) /k (0) : k (H)及びk (0)はHT時及びo T

の減衰速度を示す)はメチレン鎖の長い化合物ほど大きくなった。 この磁場効果 の特徴はポルフィリン ービオローゲン連結化合物の場合1 )と一致した。

173 -

(26)

0.08

PH8V 0.04 " _ - -・ ー.

� 0.04

〈之

内ノ』nu

nU 的心

. -_ ._ ­. . - ._ - ー-- .

・,→一一ー .‘、 d ,、- ー .

100

Lコ(/)

〈之

50 【

。 。 5 10 15 20 25

t /υs

0.15

PH10V

0.1

(/) iコ〈之

0.05

。。 5 10 15

t /μs

20' 25

0.3 PH12V

ω24 0.2

0.1

。。 5 10 15

t /μs

20 25

図4 - 1 3 ビオローゲンカチオンラジカルに帰属される603nmの過波l以収の減示

山線 PH8Y、 PH10Y, PH12Y

上図の内図 : 遅い減衰における2次動力学解析

(27)

PH12V PHIOV 6

PH8V 6 6

、ド 5

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J /.,)

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1i威主:iにお ビオローゲン連結化合物での述

に及ぼす外部磁場効果 ェノチアジン-

、、,ノ-AU

〆rt、、 EK

度定数 4 フ

図4 -

(28)

0.08

PH8V

� 0.04

〈コ=

。 。 5 10 15

t /ぃs

20 25

0.15

0.05 0.1

-ω24

。。 5 10 15

t /μs

20 25

0.3

2ω 0.2

0.1

G σ 5 10 15

t /いS

20 25

図4 - 1 5 α ーC Dを錯化させたフ ェノチアジン ービオローゲン連結化合物にお

ける603nmの過渡吸収に及ぼす外部磁場効果

(29)

ここで、 α ーC D の空洞によってメチレン鎖は延びたコンホメーシ ョ ンを強い られるので〈図 3 - 1 3 )、 図4 - 1 4の測定結果は各々の磁場でのk d の値に

&Iiすラジカル間距離の影響を一般的に示した例になると考えられる。 先の4 - 4 - 1 - 1において示した様に、 生成したラジカル対は三重項である。 また、 ラ ジカル対の減衰での律速段階は図4 - 9に示す様に系間交差過程(k 4)である。

高磁場では大きなゼーマン分裂を引き起こすので、 系間交差過程は三重項サブレ ベルから一重項への緩和速度によって支配されていると考えられる。 従って、 高 臨場(>O.3T)ではメチレン鎖長に関係なくk d が一定値を示すということは、

高磁場ではスピン -格子緩和過程が律速段階になっていること(スピン緩和機構) で容易に理解できる。 この様に、 この系は “ スピン緩和機構" で進行する磁場効 果の一つであることがわかった。

ゼロ磁場でのk d の値に及ぼすメチレン鎖長の効果は非常に興味深い。 また、

↑hrough-Ring C D 錯体ではメチレン鎖は延びたコンホメーシ ョ ンをとっている

ので、 逆電子移動反応に及ぼすD - A間の距離依存性を厳密に議論できると考え られる。 これについては4 - 6にて詳しく議論する。

177

(30)

J - 4 - 2 逆ミセル内でのフ ェノチアジンービオローゲン連結化合物の光誘起 電子移動に対する磁場効果

(実験) A 0 T逆ミセル〈溶媒イソオクタン[AOT] = O.lM、 w = [H20] / [AOTJ

; 10)中にPHnV(n二4.6.8.10.12)(0.1 mM)を担持させ真空脱気後アルゴン置換 した。 この試料を電磁石中に置き Nd:YAG レーザーの第三高調波( 355 n田〉 にて 光励起し、 生成するラジカル対の減衰速度を 25 oc で測定した。 また、 同じ試料 の賞光スペクトルも測定した。

(結果及び考察〉

A 0 T逆ミセルでのラジカル対の減衰挙動に及ぼす磁場効果はポルフィリンー

ピオローゲン連結化合物の場合について報告されている。 そこで、 フ ェノチアジ ンービオローゲン連結化合物(PIInV)の場合についても同様な検討を行った。

内水相の大きさであるwの値は10にして測定を行った。 PHnVを光励起すると過 度吸収スペクトルにビオローゲンカチオンラジカル(え田ax = 600 nm付近〉とフ ェ/チアジンカチオンラジカル(え田ax = 520 nl1l)が観測され、 すなわち、 ラジ カル対の吸収が得られることがわかった〈図4 - 16) 0 PHnV (n=8. 10.12) の

うジカル対の減衰は外部磁場によって抑制された(図4 - 1 7 )。 ラジカルの減 まはl次の動力学に従い、 分子内反応に対応すると帰属される。 減衰より評価し たうジカル対の減衰速度定数(k d )は磁場強度の増加に伴い減少し約0.2 T以上 で一定値になった(図4 - 1 8 )。 高磁場時のkdは少しPH12Vの場合が大きいが ほぼメチレン鎖に関係なく同じ値を示した。 観測された磁場効果は4 - 4 - 1で 示したThrough-RingC D錯体の場合と同様であり、 磁場効果はスピン緩和機構で 説明される(図4 - 9 )。 しかしながら、 逆ミセル系の場合はThrough-RingC D 詰体系と異なり、 分子内反応に帰属される反応はほとんど観測されなかった。 こ の事は逆ミセル間同士の反応は遅く、 ラジカルの寿命が磁場によって延びても、

他のミセルに存在する連結化合物に電子を渡せないためと考えられる。 さらに 、

r� 6 YにおいてはC D包接系で得られなかったラジカル対の吸収が観測された。 こ

れに対して、 Pfl4Yでは過渡吸収スペクトルにおいてラジカル対の吸収は観測され

178

(31)

..c

.08

.06

100 ns 500 ns

<t .04.

.02

o 4ó0 480 500 520 54.0 560 580 600 620 6ω660 680 700 λ/nm

図4-16 AOT逆ミセル系におけるP!-I 1 � Vの1. 0 Tの磁場印加時におけるレー ザー励起後 100 ns及び500 ns後の過渡吸収スペクトル

179

(32)

.』.E円HU《HHν.的DJc、

0.1

PH6V PHIOV

。 。 2 3 4 5 。 。

2 3

t/μs t/μs

0.05

PH8V

0.1

:〈

11 \� �且

0.05

2 3

t/ト!S

PH12V

00 2 3

t/ト!S

4 5

図4-17 AOT逆ミセルに担持したフ ェノチアジンービオローゲン辿結イヒ41 物における603nmの過渡吸収に及ぼす外部磁場効果

( A) 0 T、 ( B) 1 T

(33)

PH12V PHIOV

。(9)00000。

0.8 0.6 0.4 0.2

PH8V

0.4 卜卜卜卜卜卜一一一一-一一一一一十十一一÷十-十十十トトト一一-一一一一→“汁:

0.2億一_._�.___�

___ l___ γ

。CIDOOQoo。

0.8

」[1ω

0.6

トOJ[~匂uA

0.2 0.4 0.6 0.8

H庁 0.2 0.4 0.6 0.8

H庁 0.2 0.4 0.6 0.8

H庁

フ ェ ノチアジンービオローゲン連結化合物での減衰における辿( )え:正

?山 ?

CH3(CH2)3CH CH20C?HS03

Nぷ

CH3(CH2)3WCH205CH2

C2Hs 0

w=lH20]

[AOT]

AOT

に及ぼす外部磁場効果

、、,ノJc bA 〆ft、

数 図4 - 8

ビオローゲ

A 0 T逆ミセルの内水相に担持されたフ ェノチアジン ー

ン連結化合物の模式図 図4 - 1 9

(34)

なかったo PH 4 Yではメチレン鎖が短いためフ ェノチアジンとビオローゲンの相互

作用が強いため、 フ ェノチアジンの励起状態が容易に失活してしまいラジカル対 の吸収が得られないと考えられる。

ここで、 連結化合物は疎水性のフ ェノチアジン部分をノぐルク有機相側に親水性 のピオローゲン部分を内水相側に担持されていると考えられる(図4 - 1 9 )。

結果として、 連結メチレン鎖はThrough-RingC D錯体の場合と同様に延びたコン ホメーシ ョ ンを強いられている。 この事はフ ェノチアジン部分の蛍光強度に及ぼ すメチレン鎖長の効果によっても確かめられる。 A0 T逆ミセル系のフ ェノチア ジン部分の蛍光強度はメチレン鎖の増加と共に増加した〈図4 - 2 0 )。 すなわ ち、 この結果はPHnYのビオローゲンによるフ ェノチアジン部分の蛍光消光はメチ レン鎖が増加するに伴って減少する事と示している。 この結果は、 A 0 T逆ミセ ルのミクロ環境によって延びたコンホメーシ ョ ンを強いられ、 メチレン鎖の増加 と共にD - A聞の距離は増加し、 蛍光消光過程は減少することで説明され、 先ほ どの考察と良く一致する。

PA 6 yではゼロ磁場時と1 T時のk d の値は変わらなかった。 ゼロ磁場から1 T

まで注意深く各磁場での測定を行ったが磁場効果は観測されなかった。 この結果 はラジカル対の三重項と一重項のエネルギー差( - 2 J )の増加がk d の値の減 少の原因であることと一致した。 大きなエネルギ一差のため、 系間交差過程にお いてラジカル対のh f c や ムgが重要な役割を果たしてないのかもしれない。

ここで、 ゼロ磁場時ではメチレン鎖が増加するとkdが速くなるという、 蛍光消 光測定におけるメチレン鎖依存性と逆の相関を示す興味深い結果が得られた(表

4 - 2 )。

この結果はメチレン鎖にC Dを包接させたThrough-RingC D錯体系で得られた 結果と同様であった。 ゼロ磁場時での興味深い結果については4 - 6でまとめて 議論する。

以上より、 AOT逆ミセルにおいてもThrough-RingC D錯体と同様にミクロ環 境によって連結メチレン鎖のコンフ ォメーシ ョ ン制御ができることがわかった。

182 -

(35)

ヘ223日ωogυωωHO口広

PH12AB

PH12V

450 500

入Inm

図4-20 AOT逆ミセルに担持したフ ェノチアジンービオローゲン連結化合 物のフ ェノチアジン部分からの蛍光強度に及ぼすメチレン鎖長の効 果: [P H n Y (n = 4 '"" 1 2) ] = O. 1 rn M " [A 0 T ] = O. 1 �I" w = 1 0のイ ソオクタン溶液、

励起波長 320 nm、 250C、 スリット:励起光側 10 nm、 発光側 4 nm [PH12ABJ

=

O. 1 m�1、 [ A OT ] = O. 1 M" w = 1 0のイソオクタン溶液

を参照として使用

表4-2 磁場無印加時におけるフェノチアジンービオローゲン辿結化合物の

AOT逆ミセノレ系で、の逆電子移動反応速度定数(

kd; sイ) (こ及ぼすメ

チレン鎖長の効果

kd; s・1

PH6V 8.6X105

P HsV 1.7X106

PH10V 5.6 X 106

PH12V 7.9X106

183

(36)

4 - 5 カルバゾールービオローゲン連結化合物のシクロデキストリン錯体にお ける光誘起電子移動反応に対する磁場効果43)

フェノチアジンービオローゲン連結化合物のC D包接系において電子移動反応

及び磁場効果が連結化合物のメチレン鎖長とC Dの空洞の大きさに著しく影響さ れることがわかった。

そこで、 本節ではこのC D包接系の一般性また連結化合物の構造因子が上記の 効果にどのような影響を及ぼすかを検討するためにフ ェノチアジンの代わりに同

じπ型電子供与体であるカルパゾールを用いたカルバゾールービオローゲン連結 化合物の光誘起電子移動反応及びこの反応に及ぼす磁場効果を検討した。

(実験方法) CzCnVCn=4, 6, 8,10,12) またはCzC12ABCO.lrnM)とC D C2m\!)を溶かし た水溶液(pH=7. 2:t O. 1)をレーザーフ ォトリシス用石英セルに採り、 脱気アルゴン 置換した。 この試料を電磁石中に置き、 レーザ一光励起C 35 1または355 nl1l)し、

過渡吸収スペクトル及び603 nm における吸光度の時間変化を250Cで測定した。 ま た、 同じ試料の蛍光スペクトルも測定した。

11\

シー(CH2) n-NU古川h-CH3

� ,)

2B(

CzCnV

(n=4,6,8,1 0,12)

N一(CH 2)'2 N+ー(CH3) 3 Br-

CZC12AB

4 - 5 - 1 光誘起電子移動反応に及ぼすC D添加効果

(結果及び考察〉

n = 6:α-co

n = 7:

ß

-CD

n = 8 : -y -CD

CzC12Yについてはα ーC D 添加系では過渡吸収スペクトルにビオローゲンカチ オンーフジカノレ(ì. max = 603 nm) 44)とカノレノくゾーノレカチオンラジカノレC ì. max

184

(37)

780nm) 45)に帰属される吸収が得られた〈図4 -2 1 )。 これらのラジカル対 の減衰に著しい磁場効果が得られた〈図4-22)0 CD無添加系では外部磁場 の印加にかかわらずラジカル対の吸収は得られなかった。 従 って、 この効果は明 らかにC D添加の効果であることがわかった。 ここで、 CzC12Y-C D系において、

1 H -N M Rスペクトルの結果〈第3章参照〉より、 α -C Dがメチレン鎖に錯化

した1: 1のThrough-Ring C D錯体がしていることを確認した。

ラジカル対の減衰にはl次の動力学に従う速い成分(分子内反応〉と2次の動 力学に従う遅い成分(分子間反応)が観測された。 後者の遅い成分は分子間反応 により得られた2分子反応とカルパゾール部位の光イオン化によって得られた2 分子反応があると考えられる。 ビオローゲンカチオンラジカルの吸収 (え =603 nm)の速い成分より評価した逆電子移動反応速度定数( k d)は磁場強度の増加に

伴って減少し0.3 T 以上で一定値となった(図4 -2 3 )。

フェノチアジンービオローゲン連結化合物の場合と同様な結果を示すことより

反応機構は図4 -2 4のように考えられ、 ここで得られた磁場効果はスピン -緩 和機構と考えられる。

ß - C D添加系ではα -C D添加系と同様な磁場効果が観測された〈図4 -2 3 )。

担し、 ß -C D添加系ではα -C D添加系に比較して初期のビオローゲンカチオン

うジカル対の収量は約2分のl程度に減少した。 そして、 r -C D添加系では外部 臨場の有無にかかわらずラジカル対の吸収は得られなった。

Cz C 1 0 VについてはCzC12Yと同様にα -C D、 βーCD添加系においてラジカル対 の吸収が観測され、 ラジカル対の減衰に磁場効果が得られた。 CzC8Vについてはα -c D添加系でのみラジカル対の吸収が観測され、 ラジカル対の減衰に磁場効果が 得られた。 CzC6Y 、 CzC4YではCD添加かつ高磁場でもラジカル対の吸収は観測さ れなかった。

以 上 の 結果は、 フ ェノチアジンービオローゲン連結化合物の場合と一致し、

C Dの種類、 磁場、 メチレン鎖長によってD- A連結系の光誘起電子移動反応が 大きく変化することが明らかになった。 言い換えれば、 C Dの種類、 磁場、 メチ

レン鎖長によってD- A連結系の光誘起電子移動反応を制御できることがわかっ

185

(38)

0.05

山ハ以《

。 500 600 700

Wavelength / nm

800

図4 - 2 1 カルバゾール-ビオローゲン連結化合物のα - C D添加系での1. 0 T

の磁場印加時におけるレーザー励起後5μs及び40μsの過渡吸収ス ベクトル: Æ ex=351 nm

0.08

od

H = 1.00 T 0.20 0.06 0

10 20

t /μs

図4 - 2 2 α - C D添加系での603 nmの過渡吸収スペクトルに及ぼす外部磁場効

果: Æ ex=351 nm

[CzC12V] = 0.1 mM. [α - C D] = 2 mM の水溶液

186

(39)

-α-CD

o

ß-CD

3.0

2.0

←ー ω \ ω l O 「 × ℃ v一

1.0 �.

ハU •

��

ー- 0.5 H/T ム羽

。 。

CzC12Yでのラジカル対の減衰速度定数(k d ; S-l)に及ぼす外部磁 図4

-

2 3

β- C D系 ( 0 )

187

α - C D系、

場効果 (・〉

(40)

司_...

( A)

hv

1CZ'%._V2+

Cz -V2+

kO

k2/ 3CZ本-V2+

1( CZ:-V:) k4 3( Cz�-V� + +)

(8)

T + 1

←←レ

ι To �

b 句

、、T-1 )

reverse ET reverse ET

(i) Zero Fi e

1

d (ii)

High

Field

図4-24 (A)カルバゾールービオローゲン連結化合物における光誘起電子 移動と逆電子移動を含んだ反応機構

( B )ラジカル対の逆電子移動を導く項間交差過程(k 4)に及ぼす

ゼーマン効果

(41)

4 - 5 - 2 磁場効果に関連した 蛍光とNMRスペクトルからの考察

CzCnYCn=4. 6. 8.10.12)のカルパゾール部分からの蛍光強度をC D添加系で比較

した。 CzC12Vの結果から述べる。 ビオローゲン部分のないカルパゾール誘導体を 用いたCzC12AB-β-C D 系を基準として用いると、 CzCnVCn=4. 6. 8.10.12)だけ

の系ではほとんど発光しなかった。 C Dを添加すると、 CzC12Vからの蛍光強度 はα ーC D 添加系>βーC D 添加系> r - C D 添加系~無添加系のJI頂序になった

(図4 - 2 5 )。

CzCIOVでは同様に蛍光強度の順序はα -C D添加系〉β-C D添加系> r -C D添

加系~無添加系になった。

CzC8 Yで はα - C D添加系でのみ蛍光強度が増加した。 しかしながら、 CzC6V、

CzC4 YではC Dを加えても蛍光強度は増加しなかった。

これらの測定結果はフ ェノチアジンービオローゲン連結化合物の蛍光測定の結 果と良く一致した。

ここで、 蛍光強度が増加する系ではC Dが連結メチレン鎖に錯化した 安定な錯

体(Through-Ring C D錯体〉を形成していることはNMR測定より確かめた(第

3章参照)。

以上より、 フ ェノチアジン-ビオローゲン連結化合物の場合と向様に安定な錯

体(Through-Ring C D錯体〉を形成する場合はカル バゾールとビオローゲン聞の

分子内相互作用を抑制でき、 かつ磁場効果の得ることのできる三重項ラジカル対 が生成することがわかった。

4 - 5 - 3 Through-Ring C D錯体におけるラジカル対の減衰に対する磁場効果 に及ぼすメチレン鎖長の効果

lH-NMR測定により、 フ ェノチアジンービオローゲン連結化合物の場合と同 援にカルパゾールービオローゲン連結化合物においてもメチレン鎖が長い化合物

(CzCnY: n=8. 10. 12) とα ーC Dと組み合わせた時に、 α-C Dがメチレン鎖に錯

化したThrough-Ring C D錯体を形成することがわかった。

189

参照

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