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(1)

社会福祉における民間企業の貢献に関する研究 :  地域巡回入浴サービスに関わる事例(A 社)を通し

著者 嶋田 芳男

著者別名 SHIMADA Yoshio

その他のタイトル Research on Ways in which Private Companies Contribute to Social Welfare : Based on Cases of Involvement in Local Home‑Visit Bathing Services (Company A)

ページ 1‑161

発行年 2016‑03‑24

学位授与番号 32675甲第372号

学位授与年月日 2016‑03‑24

学位名 博士(公共政策学)

学位授与機関 法政大学 (Hosei University)

URL http://doi.org/10.15002/00013069

(2)

社会福祉における民間企業の貢献に関する研究

―地域巡回入浴サービスに関わる事例(A 社)を通して―

嶋 田 芳 男

(3)

法政大学審査学位論文

社会福祉における民間企業の貢献に関する研究

―地域巡回入浴サービスに関わる事例(A 社)を通して―

嶋 田 芳 男

(4)

目 次

第 1 章 研究の背景・意義と研究目的とその方法、および先行研究の検討 ·· 4

第 1 節 研究の背景・意義 ··· 4

第 2 節 研究目的およびその方法 ··· 6

1.研究目的 ··· 6

2.研究方法 ··· 7

第 3 節先行研究の検討 ··· 9

1.地域巡回入浴サービスに関する先行研究の現況 ··· 9

2.福祉用具等の安全に関する先行研究の現況 ··· 10

3.先行研究の現況からみた研究課題 ··· 14

第 2 章 社会福祉と民間企業 ··· 18

第 1 節 社会福祉概念 ··· 18

第 2 節 社会福祉政策・施策と福祉民間企業 ··· 20

第 3 節 社会福祉における福祉民間企業の位置づけ ··· 23

第 4 節 社会福祉に関係する本研究対象企業の位置づけ ··· 25

第 3 章 国および地方自治体による施策 ··· 35

第 1 節 国および地方自治体による施策 ··· 35

1.社会福祉拡大期(1960~1975 年) ··· 35

2.社会福祉見直し期(1975~1985 年) ··· 36

3.社会福祉改革期(1985~1999 年) ··· 37

第 4 章 地域巡回入浴サービスの萌芽とその後の展開 ··· 42

第 1 節 地域巡回入浴サービスの萌芽 ··· 42

1.宇都宮市における地域巡回入浴サービス ··· 42

2.水戸市・他市町村および老人福祉開発センター等による地域巡回入浴サービス ···· 43

3.考察 ··· 45

(5)

第 2 節 地域巡回入浴サービスのその後の動向 ··· 52

1.社会福祉見直し期における動向 ··· 52

2.社会福祉改革期における動向 ··· 53

第 3 節 民間活動の動向 ··· 56

1.ボランティアと地域巡回入浴サービス ··· 56

2.民間組織による地域巡回入浴サービスへの支援 ··· 57

第 5 章 社会福祉領域の他分野によるサービス内容の改善に向けた取り組み ·· 62

第 1 節 全国老人福祉施設協議会による取り組み ··· 62

1.全国老人福祉施設協議会とは ··· 62

2.研修 ··· 63

3.資格の創設 ··· 65

4.出版物 ··· 65

第 2 節 老人福祉開発センター等による取り組み ··· 69

1.老人福祉開発センター等とは ··· 69

2.研修 ··· 69

3.教材の作成 ··· 73

第 6 章 福祉用具等関係企業 A 社による取り組み ··· 81

第 1 節 A社の概要 ··· 81

1.A社の企業方針および事業内容 ··· 81

2.A社の経営戦略 ··· 82

第 2 節 地域巡回入浴サービスのソフト面に関わる各種事業 ··· 84

1.安全確保対策の方法 ··· 84

2.安全確保対策の結果 ··· 85

第 3 節 その他の事業 ··· 89

1.全国調査 ··· 89

2.保険の創設 ··· 89

第 4 節 福祉用具等関係企業A社による実践方策··· 90

1.取り組まれた背景の観点から ··· 90

2.実践手法の観点から ··· 90

(6)

第 7 章 福祉用具等関係企業 A 社による各種事業の有益性 ··· 101

第 1 節 地域巡回入浴サービスにおける安全確保対策の有益性 ··· 101

1.「人(従事者)」に関わる取り組みと「行政」の取り組みの 2 つの 観点からみた有益性 ··· 101

2.その他事業の有益性 ··· 110

第 2 節 社会福祉領域の他分野における取り組みの観点から ··· 112

1.他分野における取り組みと福祉用具等関係企業A社による取り組みの検討 ··· 112

第 3 節 介護職の資格化への変遷から ··· 120

1.1970 年代における 3 つの資格制度案 ··· 120

2.介護職の個別性と、福祉用具等関係企業A社による民間資格が介護職の 国家資格の創設に与えた影響の観点からの検討 ··· 125

第 4 節 海外(韓国)における地域巡回入浴サービスの創設に関わる 観点から ··· 131

第 8 章 まとめ ··· 138

第 1 節 小括 ··· 138

1.地域巡回入浴サービスに関する研究課題 ··· 138

2.福祉用具等の安全に関する研究課題 ··· 140

第 2 節 総括 ··· 145

初出論文一覧 ··· 148

口頭発表論文一覧 ··· 150

参考文献一覧 ··· 151

(7)

1

図表一覧

【図】

第 4 章

図 4-1 市町村から派生した都道府県による取り組み ··· 49

図 4-2 国による取り組み ··· 49

第 5 章 図 5-1 研修実施期間[1963~1986 年までの間] ··· 63

図 5-2 研修実施期間[1971~1986 年までの間] ··· 71

第 6 章 図 6-1 地域巡回入浴サービスの安全確保に関わる実践方策 ··· 92

第 7 章 図 7-1 アプローチの方法 ··· 119

図 7-2 サービス提供時間の違い ··· 119

図 7-3 社会福祉専門職教育のとらえ方 ··· 126

図 7-4 全社協案 ··· 127

図 7-5 社会福祉士制定試案 ··· 127

図 7-6 教育問題検討委員会案 ··· 128

図 7-7 社会福祉士および介護福祉士資格制度 ··· 128

【表】

第 2 章 表 2-1 官営方式・民営方式の特徴 ··· 23

第 3 章 資料 政策・施策・福祉関係審議会関係年表 ··· 39

(8)

2 第 4 章

表 4-1 入浴車貸与先 ··· 45

第 5 章 表 5-1 『ハンドブック』および『旧ガイドブック』の内容 ··· 66

表 5-2 機関誌『老人福祉』のポイント ··· 67

表 5-3 『老人ホームの処遇と記録』『よりよい処遇のための事例シリーズ』の ポイント ··· 68

表 5-4 埼玉県における活動事例 ··· 71

表 5-5 関東ブロックの一部実施例 ··· 72

表 5-6 教材として作成された本の内容のポイント ··· 73

表 5-7 機関紙『ホームヘルパー』の内容のポイント ··· 75

表 5-8 視聴覚教材として作成された 16 ㎜フイルムの内容のポイント ··· 77

表 5-9 視聴覚教材として作成されたスライドの内容のポイント ··· 78

第 6 章 表 6-1 各種活動年表 ··· 84

表 6-2 研修内容のグループとサブグループ ··· 86

表 6-3 作成された教材(テキスト)内容 ··· 87

資料 研修内容の詳細 ··· 95

第 7 章 表 7-1 厚生省案と報告書案で共通している内容のポイント ··· 106

表 7-2 在宅入浴サービス基準と報告書案で共通している内容のポイント ··· 107

表 7-3 全国老人福祉施設協議会による各種事業 ··· 113

表 7-4 老人福祉開発センター等による各種事業 ··· 113

表 7-5 A社による各種事業 ··· 114

表 7-6 全国老人福祉施設協議会による取り組み内容 ··· 115

表 7-7 老人福祉開発センター等による取り組み内容 ··· 116

表 7-8 社会福祉専門職制度案における適用される職種 ··· 122

(9)

3

表 7-9 社会福祉士制定試案における適用される職種 ··· 123 表 7-10 さまざまな機関による実績と提案 ··· 129 表 7-11 韓国における地域巡回入浴サービスに関わる活動 ··· 132

第 8 章

表 8-1 福祉用具専門相談員の新カリキュラム ··· 146

(10)

4

第 1 章 研究の背景・意義と研究目的とその方法、および先行研究の検討

本章では、本研究を行う背景と意義を示した上で、研究目的と研究方法を提示する とともに、本研究に関係する先行研究を検討していく。

第 1 節 研究の背景・意義

第 2 次世界大戦後の 1946(昭和 21)年に「生活保護法」、1947(昭和 22)年「児童福祉 法」、1949(昭和 24)年「身体障害者福祉法」が制定され、「福祉三法」時代になった。1950

(昭和 25)年には「旧生活保護法」が全面的に改正され、現行の「生活保護法」が制定さ れるとともに、1951(昭和 26)年に社会福祉の基本法となる「社会福祉事業法」が制定さ れた。また、高度経済成長期の 1960(昭和 35)年に「精神薄弱者福祉法(現:知的障害者 福祉法)」、1963(昭和 38)年「老人福祉法」、1964(昭和 39)年「母子福祉法(現:母子 及び父子並びに寡婦福祉法)」が制定され、「福祉六法」体制となった。そして、「老人福祉 法」の中で在宅福祉サービスの 1 つに位置づけられる「家庭奉仕員派遣事業」(現在のホー ムヘルプ事業)が法定化された。

こうしたなか、1968(昭和 43)年の民生委員による「ねたきり老人実態調査」により、

全国に 20 万人のねたきり高齢者の存在が確認され、その対策の必要性が社会的に認識され た。このような状況を背景に、1969(昭和 44)年に「老人日常生活用具給付等事業」の創 設や、ねたきり老人家庭奉仕員事業運営要綱があらたに定められた。この結果、1969(昭 和 44)年末にはホームヘルプ事業の実施市町村、ホームヘルパー数が前年末に比べ約 3 倍 になるなど、ホームヘルプサービスの改善が図られた。また、この時期には全国の地方自 治体においても要支援高齢者に対する単独事業に取り組み始めていた1)

1970(昭和 45)年に宇都宮市においても、入浴車による入浴サービス(以下、地域巡回 入浴サービス)が創設されたが、同サービスは、わが国ではじめて試みられた実践であっ た。同サービスは、これ以降大きく発展し、今日では有力な介護サービスの 1 つに位置づ けられている。そして、同サービスが進展した背景には、国や地方自治体による施策だけ でなく、さまざまな民間による取り組みが存在していた。とくにそのなかでも、地域巡回 入浴サービスに関わる福祉用具・福祉機器(以下、福祉用具等)を製造・販売していたA 社による取り組みは、顕著な実践であった。A社は、おもに地域巡回入浴サービスが安全 に提供されるよう、福祉用具等自体(以下、ハード面)の安全対策だけでなく、福祉用具 等を利用する側、すなわち人(以下、ソフト面)に対する安全対策のために、研修をはじ

(11)

5

めとする各種事業を展開していた。また、これらの事業以外にも、同サービスの進展に寄 与する取り組みを行っており、福祉用具等を製造・販売する民間企業(以下、福祉用具等 関係企業)の参考になるような取り組みであった。

戦後の福祉用具等に関する制度を紐解くと、身体障害者を対象とし、盲人用の杖、義手、

義足、車いすなどを給付する「補装具の給付制度」から始まっている。その後、高齢者を 対象とする「老人日常生活用具給付等事業」が 1969(昭和 44)年に創設され、介護問題を 背景に 19990 年代に給付制度も拡充された。しかし、高齢者を対象とする福祉用具等は身 体障害者を対象にしたオーダーメイドのものとは異なり既製品であったため、「…そこで求 められたのはそれを提供する受け皿であり、この受け皿として民間企業の福祉用具販売事 業者が生まれ、全国に波及していった。…」2)が、課題も存在していた。「補装具の給付制 度」では、医師や理学療法士らの専門家が福祉用具等を選定する際に介入し、適合判断に よってオーダーメイドの福祉用具等が交付されていたが、「老人日常生活用具給付等事業」

で福祉用具等の給付を委託された事業者は、「…適合という考えはなかった…」3)ようであ り、供給するだけであった。公益財団法人テクノエイド協会の『福祉用具の安全な利用を 推進するための調査研究事業報告書』(2012年)によると、重大製品事故に関して「…利 用者による誤使用や不注意、さらには利用者と用具や使用環境の不適合から生じた事故等 が約6割を占めている…」4)と指摘される状況にある。

2008 年 12 月に東畠5)が福祉用具専門相談員を対象に行った調査結果「認知症高齢者の 事故に関してメーカーへの要望」(有効回答数 908、複数回答)をみると、福祉用具等製造 企業に事故・ひやりはっと情報の提供、研修の実施、対応方法の提示、マニュアル作成な どの多様な取り組みを期待していた。しかし、福祉用具等関係企業でA社と同様の取り組 みを行っていた企業を研究対象期間で確認することはできず、さらには、これに関する先 行研究を確認できなかった。このため、本研究で福祉用具等関係企業A社が、地域巡回入 浴サービス業界で実践していた多様な事業を詳細に分析し、他の福祉用具等関係企業の参 考となるような実践形態(モデル)を明らかにしていくことも意義あることと考える。

(12)

6 第 2 節 研究目的およびその方法

1.研究目的

第 1 節で示したように、本研究対象である福祉用具等関係企業A社は、地域巡回入浴サ ービスが安全に提供されるよう、ハード面の安全対策だけでなく、ソフト面に対する安全 対策のために、各種事業を展開していた。そこで本研究では、A社によるソフト面の安全 対策を明らかにしていくことで、他の福祉用具等関係企業の参考となる、あるいは参考に すべき1つの実践形態(モデル)を提示することを目的に、次節において本研究に関わる 先行研究の検討を行った。先行研究の検討からつぎの研究課題が読み取れた。

研究課題の 1 つ目は、地域巡回入浴サービスの成立過程とその後の展開過程を明らかに すること、である。福祉用具等関係企業A社によるさまざまな取り組みを分析する前提と して、A社が活動していた同サービスの成り立ちやその後の展開過程を明らかにしておく ことも必要と考える。また、A社が地域巡回入浴サービスの成立過程とその後の展開過程 に関与していたと考えられたため、研究課題とした。2 つ目の研究課題は、福祉用具等関 係企業A社による各種事業と有益性、および実践方策を明らかにすること、である。これ ら 2 つの観点から研究を進めることで、他の福祉用具等関係企業の参考となる、あるいは 参考にすべき 1 つの実践形態(モデル)を提示することを研究目的とした。これにより、

障害者と違い、福祉用具等使用時のソフト面に関わる安全に課題がある高齢者が、地域や 施設等で安心して生活していく環境が整えられていく可能性が高まるものと期待できる。

なお、A社は安全対策以外の事業も実施し、同サービスの進展に寄与していたと考えら れたため、この点についても併せて検討し、補足的に論述していく。

各々の観点の詳細は、つぎのとおりである。

(1)地域巡回入浴サービスの成立過程とその後の展開過程を明らかにする

本研究では、先行研究で示されていない地域巡回入浴サービスの成立過程として、宇都 宮市や福祉用具等関係企業A社が関わっていた水戸市における事業の成り立ちや、事業内 容およびこれ以降の取り組みを関係資料から示したうえで、政策・施策・事業の階層性、

市町村・都道府県・国への影響、有益性と課題の 3 つの視点から同事業を検討し、巡回入 浴サービスというシステムがどのように体系化され、どのような有益性と課題が存在して いたのかについて論述していく。また、先行研究で詳細に検討されていない地域巡回入浴 サービスの施策の変遷(A社が関わっていた施策を含む)を示すとともに、同サービスに

(13)

7

関わっていた事業者の縦断的な動向、およびそれら事業者が有していた課題や、A社が関 与していた民間活動にも焦点をあて詳細に検討していくことで、地域巡回入浴サービスの 展開過程を明らかにしていく。

さらに、サービスの「…質を保証するためのアプローチは、安全を保証するための要素 を多く含んでいる」6)との指摘に基づき、社会福祉領域の他分野でA社と似たような取り 組み、すなわち、サービス内容の改善に向けた実践を行っていた福祉系団体による取り組 みにも着目し、それらの実践を示していく。

(2)福祉用具等関係企業A社による各種事業と有益性、および実践方策を明らかにする 福祉用具等関係企業A社によるソフト面の安全対策に関わる各種事業の全体像を一次資 料を含む関係資料から分析する。その分析過程では、福祉と「…人に対するサービス・給 付という共通点があり、最終的には『健康で安心できる生活保障』という理念と目標を持 つ点で合致する…」7)医療領域では、サービス対象者に対して「組織運営管理」・「人(従 事者)」に関わる取り組みと、「行政」の取り組みをキーワードとする安全確保対策を講じ ているため8)、このキーワードに着目し、A社が関わっていた「人(従事者)」に関わる取 り組みと、「行政」の取り組みの 2 つの観点を分析枠組みに位置づけ、同社による各種事業 の有益性を示していく。また、関係資料の分析から、それら事業の実践方策を明らかにし ていく。

また、福祉用具等関係企業A社は安全対策以外の事業として、地域巡回入浴サービスの 進展に寄与する取り組みも行っていたため、それら事業の有益性についても併せて示すと ともに、社会福祉領域の他分野におけるサービス内容の改善に向けた取り組みと、介護職 の資格化への変遷に関わる視点から有益性を示していく。とくに、資格化への変遷の視点 からの検討について補足するならば、A社は独自の民間資格を創設しており、この民間資 格が介護福祉士国家資格の創設に至る底流を形成した 1 つの要因となっていたと考えられ たためである。

2.研究方法

地域巡回入浴サービスに関する一次資料を含む関係資料を分析するとともに、研究対象 の関係者(同サービスの業界団体である全国入浴福祉事業協議会関係者を含む)、他分野の 福祉系団体、および同サービスを管轄していた厚生省(当時)の元行政官へのインタビュ

(14)

8

ーを行った。インタビューは、対象者および対象企業の希望によって電話や訪問による半 構造化面接法に基づいて行った。だが、本研究は、社会福祉系学会(日本社会福祉学会、

日本介護福祉学会)による研究倫理指針に基づき研究を進めてきたため、研究対象者の要 望により、一部インタビュー内容の論文への記載は行っていないが、インタビューによっ て得られた貴重な情報は、適宜、研究に反映させ、これに基づき論文作成を行っている。

また、研究対象者が特定されないようにするために、企業名、各種事業などの名称に対し て、匿名化、仮名使用していることを付記しておく。

なお、本研究対象期間は、地域巡回入浴サービスに関する第 1 段階の研究に位置づけて いるため、介護サービス給付制度の大きな転換点であった介護保険法が施行される 2000

(平成 12)年以前の取り組みについて検討していく。その理由は、介護保険法施行にとも なう契約制度への移行により、研修などでは、安全対策以外の内容がより多く採り入れら れていたことも想定され、同法施行前後では、その内容に違いが生じると考えられたため である。

(15)

9 第 3 節 先行研究の検討

本研究では、福祉用具等関係企業A社による各種事業に焦点をあて、研究を進めること とし、先行研究を検討した。

A社は地域巡回入浴サービスに関わるさまざまな取り組みを行っていたため、第 1 に地 域巡回入浴サービスに関する先行研究について、そして、第 2 に同社の主要な取り組みで あった福祉用具等の安全に関わる先行研究について検討を行った。

1.地域巡回入浴サービスに関する先行研究の現況

本項では、つぎに示す「地域巡回入浴サービスの萌芽」、「地域巡回入浴サービスに関わ る施策」、「地域巡回入浴サービスの動向」、「地域巡回入浴サービス提供に関わる知識と 技術」の 4 つの観点から先行研究の現況を示していく。

(1)地域巡回入浴サービスの萌芽

地域巡回入浴サービスの萌芽に関する先行研究として、「小笠原祐次:福祉サービスと しての入浴福祉.(一番ヶ瀬康子監修);訪問入浴介護の理論と実践,115-134,一橋出版,

東京(2000)」がある。

(2)地域巡回入浴サービスに関わる施策

地域巡回入浴サービスの施策に関する先行研究には、「小笠原祐次:福祉サービスとし ての入浴福祉.(一番ヶ瀬康子監修);訪問入浴介護の理論と実践,115-134,一橋出版,

東京(2000)」と、「浅野芳生:訪問入浴介護事業のこれまで、そしてこれから.(一番ヶ瀬 康子監修);訪問入浴介護の理論と実践,135-147,一橋出版,東京(2000)」がある。

(3)地域巡回入浴サービスの動向

地域巡回入浴サービスの動向に関する先行研究として、「古瀬 徹:移動入浴介護の現 状―老人介護への基礎的取り組みを―.厚生福祉(6 月号):2-5(1984)」、「小笠原祐次:

福祉サービスとしての入浴福祉.(一番ヶ瀬康子監修);訪問入浴介護の理論と実践,115

-134,一橋出版,東京(2000)」がある。

また、地域巡回入浴サービスに掛かるコストを地方自治体と民間で比較した「地方自治 経営学会:高齢者福祉における公立と民間とのコスト比較―全国延 437 自治体,民間 203 社からの報告とその分析―.地方自治経営学会,東京(1997)」や、在宅入浴サービスガイ ドラインに基づく(社)シルバーサービス振興会による自主規制について検討した「橋本

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10

宏子:改正老人福祉法と法的課題―民間事業者の位置づけに関連して―.総合都市研究,

42:31-57(1991)」がある。

(4)地域巡回入浴サービス提供に関わる知識と技術

地域巡回入浴サービスに従事する際に必要となる生理面や衛生面(感染防止など)、入 浴介護の知識や技術に関する先行研究には、「白倉卓夫:入浴の生理と健康.(一番ヶ瀬康 子監修);訪問入浴介護の理論と実践,33-49,一橋出版,東京(2000)」、「柴田 博:訪 問入浴利用者の社会医学的特性.(一番ヶ瀬康子監修);訪問入浴介護の理論と実践,14-

32,一橋出版,東京(2000)」、「小池和子:訪問入浴介護における感染防止.(一番ヶ瀬康 子監修);訪問入浴介護の理論と実践,50-85,一橋出版,東京(2000)」、「柴田 博:訪 問入浴利用者の社会医学的特性.(一番ヶ瀬康子監修);訪問入浴介護の理論と実践,14-

32,一橋出版,東京(2000)」、「西 三郎、高森美智代:入浴介護を実施するための注意点.

(一番ヶ瀬康子監修);訪問入浴介護の理論と実践,87-96,一橋出版,東京(2000)」、「西 三郎、高森美智代:訪問入浴介護の実際.(一番ヶ瀬康子監修);訪問入浴介護の理論と実 践,97-114,一橋出版,東京(2000)」があり、入浴介護の知識や技術について体系的に 示している。

2.福祉用具等の安全に関する先行研究の現況

本項では、つぎに示す「福祉用具等の使用」、「福祉用具等の臨床的評価」、「福祉用具等 に関わる専門職」、「福祉用具等の規格・基準」、「福祉用具等の開発・改良」、「福祉用具等 に関わる法・制度」、「福祉用具等による事故・予防」、「業界・現場による取り組み」の 8 つの観点から先行研究の現況を示していく。

(1)福祉用具等の使用や活用

福祉用具等の使用や活用に関する先行研究には、「電動車いす安全普及協会事務局:電動 車いす.リハビリナース 7(4):348-353(2014)」、「松本琢磨:現場からみたベッド管理.

福祉介護機器 techno プラス,3(7):35-38(2010)」、「石塚弘人:ベッドの安全-その 正しい使い方.福祉介護機器technoプラス 3(7):27-34(2010)」、「田中康之:福祉用 具専門相談員スキルアップ講座(第 17 回)車いす(4)ハンドル型電動車いすの安全な導 入のために.福祉介護機器 techno プラス,3(1):17-22(2010)」、「片山 旭、永尾淑 恵、山田勝士:当施設デイケアにおけるシーティングアプローチの現状と今後の課題.日

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本理学療法学術大会 2008,(2009)」、「加島 守:在宅での安全で快適な福祉用具の活用方 法 日常生活の中から解決できるものを目標にケアプランを立て、福祉用具でできること、

それを使いこなすことが大切.ジーピーネット,55(7):48-53(2008)」、「北野義明:安 全な車いすの選び方.地域リハビリテーション,2(8):669-671(2007)」、「渡辺崇史:

生活を支援する機器・道具、テクノロジー(第 10 回)福祉用具メンテナンスの基礎知識.

臨床看護,33(11):1665-1668(2007)」、「堤 文生:安全な歩行補助具の選び方.地域 リハビリテーション,2(8):664-667(2007)」、「山内 繁:福祉用具の安全な選択のた めに.地域リハビリテーション,2(8):661-663(2007)」、「Part5 チームケアを目指し て.ケアマネジャー,7(8):32-35(2005)」、「Part4 私の視点.ケアマネジャー,7(8):

28-31(2005)」、「Part3 導入のポイント.ケアマネジャー,7(8):22-27(2005)」、「生 田宗博:達人が教えるワンポイント・レクチャー―福祉用具の適応(4)杖・歩行器を、安 全に、美しく使うコツ.作業療法ジャーナル,39(4):340-343(2005)」、「清水壮一:

JASPAの取り組み 業界団体として安全規格に取り組む日本福祉用具・生活支援用具協会

(Special Feature1 福祉用具、その適切な利用法―利用者にとって真に合った機器をケ アプランに).月刊ケアマネジメント,15(10):24-26(2004)」、「宮永敬市:痴呆性高齢 者とその家族のための福祉用具活用.精神認知と OT,1(3):205-213(2004)」、「Special Feature2 福祉用具を活かすスーパービジョン―安全で使いやすくてピッタリを提供す るために―.月刊ケアマネジメント,12(10):19-26(2001)」、「萩原章子:こうして使 え!介護者の願いを実現した安全でラクな車椅子への移乗装置.地域ケアリング,3(3):

42-45(2001)」、「徳田哲男、嶌末憲子、國澤尚子:高齢者の自立支援に有効とされる製品 提供のあり方に関する基礎調査.埼玉県立大学紀要 12:25-31(2010)」など、多くの先 行研究がある。

また、特定地域を対象とした調査研究として、「縄井清志、田辺勇人、土屋美智子ほか:

介護サービスにおける福祉用具使用時の安全に関する研究―印旛村における疫学調査から

―.理学療法学,31(1):51-55(2004)」、「縄井清志、北村純一、南和文ほか:印旛村に おける福祉用具使用時の安全管理―平成 17 年における現状―.つくば国際大学研究紀要,

14:151-159(2008)」、「縄井清志:地域における福祉用具の安全管理の動向―4 年間の変 化―.理学療法学,34(supplement 2):517(2007)」があり、これ以外の調査研究には、

「山口英典、末永達也、高橋利幸:当院における家屋評価を実施した患者の追跡調査―退 院後の家屋状況とその使用頻度―.日本理学療法学術大会 2009,(2010)」がある。

(18)

12

福祉用具等の使用効果に関する研究として、「本村光節:社会福祉施設における腰痛防止 のための福祉用具利用の現状及び効果的な活用と課題.日本労働安全衛生コンサルタント 会機関誌,33(108):20-25(2013)」、「高橋悠、山路雄彦、中島明子ほか:短下肢装具使 用者における装具使用満足度と装具使用による心理面への効果について.日本理学療法学 術大会 2012(2013)」、「壬生尚美、後藤真澄、佐分行子、浅野恵美ほか:移動介助動作に よる要介護者・介護者の負担軽減に関する研究―寝たまま移乗できる介護用可変スライド ボードの有効性―.介護福祉学,17(1):76-84(2010)」、「山本将之、松本大輔、栄健一 郎:回復期リハビリテーション病棟における職員に対する腰痛対策プロジェクト(第三報)

―福祉用具の拡充による効果についての検討―.日本理学療法学術大会 2009(2010)」、「消 毒・メンテ、このようにしたら安全・安心.福祉環境,9(9):16-21(2003)」、「消毒・

メンテ、このようにしたら安全・安心.福祉環境,9(10):24-30(2003)」がある。

(2)福祉用具等の臨床的評価

福祉用具等の臨床的評価に関するものでは、「五島清国:福祉用具の臨床評価.福祉介護

機器 techno プラス,3(7):14-16(2010)」、「五島清国:福祉用具の臨床評価システム

の構築について.厚生労働,64(1):12-16(2009)」、「鈴木寿郎:福祉用具研究 車いす の安全性評価.地域ケアリング 10(12):80-83(2008)」、「電動車いす及び電動スクータ ーの安全性等に関するアンケート.福祉住環境,9(1):29-31(2003)」などがある。

(3)福祉用具等に関わる専門職

福祉用具等に関わる専門職の役割に関する研究として、「柳谷哲史、臂 美穂:緩和ケア 病棟配属の療法士の役割について.日本理学療法学術大会 2011(2012)」、「相談員のいる 現場ご存知ですか、プロのお仕事『力になります』福祉用具専門相談員.月刊ケアマネジ メント,19(7):18-21(2008)」、「笹田 哲、宮前珠子:福祉用具による作業療法アプロ ーチの実施と今後の課題―日本作業療法学会誌 10 年の分析から―.広島大学保健学ジャー ナル 3(2):20-26(2004)」、「川野和也:住宅アドバイザーとしての理学療法士が行うべ き役割.日本理学療法学術大会 2003,(2004)」がある。また、専門職に対する研修効果に ついて論じた「縄井清志、鮎川史郎、木原康彦ほか:福祉サービス事業者への安全管理研 修会の教育効果―介護支援事業者のリスクマネジメントの現状―.理学療法学,30

(supplement 2):269(2003)」がある。

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13

(4)福祉用具等の規格・基準

福祉用具等自体の安全確保対策に関わる規格・基準に関する先行研究には、「清水壮一:

福祉用具の安全に関する規格・基準.日本義肢装具学会誌,28(3):152-158(2012)」、「久 保寛之:福祉用具の安全・安心を目指して―JISによる取組み―.福祉介護機器techno プ ラス,3(10):15-18(2010)」、「森田伸介:介護用ベッドのJIS改正とJISマーク制度.

福祉介護機器technoプラス,3(7):21-26(2010)」、「山内 繁:福祉用具の規格と安全.

地域ケアリング,11(5)24-30(2009)」、「鈴木寿郎:福祉用具の試験機関.厚生労働,64

(1):25-27(2009)」、「矢野友三郎:安全に貢献するこれからの福祉用具規格.厚生労働,

64(1):19-21(2009)」、「井上剛伸:福祉用具の安全供給基準.地域ケアリング,10(12):

10-15(2008)」、「矢野友三郎:安心・安全な福祉用具を実現するために.福祉介護機器techno プラス,1(9):1-4(2008)」、「黒川秀一:福祉用具の ISO 規格に関する海外の試験方法 とメカニズム.日本機械学会誌,106(1012):174-175(2003)」、「企業を超えて連携、安 全性を追求して業界基準を確立.福祉住環境,9(1):23-25(2003)」などがある。

(5)福祉用具等の開発や改良

福祉用具等の開発による安全を追求した研究では、「花岡 徹:段差解消機の安全性 利 用する人の気持ちをかたちに.福祉住環境,9(1):20-22(2003)」、「中島 聡、渡辺崇:

乗用車用着脱式乗降補助椅子.デザイン学研究作品集,9(9):22-25(2004)」、「井上剛 伸:電動車いすの開発最前線―安全性の追求―.地域リハビリテーション,6(4):287-

291(2011)」、「武政誠一、日高正巳、徳原尚人ほか:高齢者起立補助シートの開発―座面 の上昇速度と前傾角度が使用者の身体・心理面に与える影響―.神戸大学医学部保健学科 紀要,17:33-41(2001)」があり、改良に関する研究には、「山下協子:脚分離型ハイバ ック吊り具の改良(試作).四條畷学園大学リハビリテーション学部紀要 ,創刊号: 55-58

(2005)」がある。

(6)福祉用具等に関わる法・制度

法による福祉用具等の安全に関する先行研究には、「山崎栄一:福祉用具の安全と法制度.

日本機械学会年次大会講演論文集,2006(7):7-8 (2006)」があり、制度に関わる研究 には、「井上剛伸:補装具支給制度における安全の取り組み.福祉介護機器technoプラス,

3(7):17-20(2010)」がある。

(20)

14

(7)福祉用具等による事故・予防

福祉用具等の事故ついて論じた先行研究には、「なぜ!?介護ベッドで死亡事故が続発.

月刊ケアマネジメント,19(7):12-15(2008)」、「特集 介護ベッドで死亡事故―福祉用 具の安全性を考える―.月刊ケアマネジメント,19(7):11-21(2008)」があり、その 予防の観点から述べられたものに、「新田淳子:福祉介護の『ひやりはっと』.福祉介護機

器technoプラス,3(7):9-13(2010)」、「大福敏彦:福祉用具安全情報の収集と提供に

ついて.機会振興,32(9):57-62(1999)」がある。また、調査結果を基に予防の観点か ら論じた「東畠弘子:福祉用具の『安全』を考える.福祉介護機器technoプラス,3(7):

5-8(2010)」や、事故や「ひやりはっと」に関する調査結果等をまとめた「福祉用具の安 全な利用を推進するための調査研究事業報告書.公益財団法人テクノエイド協会(2012)」 がある。

(8)業界・現場による取り組み

福祉用具等業界による取り組みに関する先行研究には、「三浦正二:日本福祉用具・生活 支援用具協会(JASPA)安心安全部会の取組み.日本生活支援工学会誌 9(1):15-21(2009)」、

「清水壮一:福祉用具の安全性―業界での取組―.厚生労働,64(1):19-21(2009)」、

「医療・介護用ベッド安全普及協議会これまでの活動について.福祉環境,10(2):18-

20(2004)」、「黒川秀一:視点 福祉用具と製品安全.日本生活支援工学会誌,2(2):41

-44(2003)があり、福祉用具等を使用する現場の取り組みについて論じたものには「新 田淳子:福祉用具の安全性―介護現場における取組―.厚生労働,64(1):16-19(2009)」、

「大嶋清治:医療機器開発とディペンタビリティ.電子情報通信学会総合大会講演論文集,

情報・システム(1):377-378(1996)」などがある。

また、国立障害者リハビリテーションセンターを中心にした取り組みについて論じた「井 上剛伸、相川孝則:福祉用具の安全性について.厚生労働,64(1):8-12(2009)」があ る。

3.先行研究の現況からみた研究課題

(1)地域巡回入浴サービスに関する先行研究における研究課題

地域巡回入浴サービスの萌芽として、宇都宮市や福祉用具等関係企業A社が関わってい

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た水戸市における取り組みが紹介されているが、それらサービスの成立過程や、それぞれ のサービスの具体的内容についてまで明らかにされていない。また、これら地方自治体 以降の取り組みについても、A 社が関わっていたと考えられた老人福祉研究会・老人福 祉開発センター9)(以下、老人福祉開発センター等、現長寿社会開発センター)による 入浴車貸与事業が紹介されてはいるが、十分な検討は行われていない。

つぎに、地域巡回入浴サービスの成立以降の動向をみると、同サービスに関わる国によ る主要な施策については示されているが、それら以外の制度についてまで触れられていな い。そして、在宅における入浴サービス全体の実態やその効果、問題や課題は示されてい るものの、事業者として地域巡回入浴サービスに関わっていた市区町村、市区町村社会福 祉協議会、福祉民間企業の縦断的な動向と課題について、十分に検討されているとは言い 難い。

さらに古瀬10)は、「…移動入浴車による入浴介護という国際的にみてもユニークな方式 が発展し、在宅の老人介護の一翼を担うまでに充実してきた背景には民間の積極的な活動 があった。…」と指摘し、なかでも入浴車の寄付を行っていた日本テレビによる取り組み と、A社研修部門の活動を重要と位置づけているが、その詳細とそれら以外の取り組みに ついてまで言及していない。

以上の点から、研究課題として「地域巡回入浴サービスの成立過程とその後の展開過程 を明らかにすること」が読み取れた。具体的には、つぎに示す 3 つの観点から明らかにし ていく必要がある。

① 地域巡回入浴サービスの成立過程を明らかにする

② 地域巡回入浴サービスの成立以降の動向と課題を縦断的に明らかにする

③ 地域巡回入浴サービスに関わっていた民間活動を明らかにする

(2)福祉用具等の安全に関する先行研究における研究課題

既述したとおり、福祉用具等の安全に関する研究は多様な観点から行われているが、本 研究対象は福祉用具等関係企業A社によるソフト面を中心とした取り組み、すなわち、研 修をはじめとする各種事業である。この観点から研究課題をみていくと、福祉用具等に関 わるリハビリテーション専門職や福祉用具専門相談員の役割と、福祉サービス事業者に対 する研修効果について論じたものがあるが、A社のようにソフト面を中心とした多様な実

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16

践に関する先行研究を、今回の調査で確認することができなかった。

以上の点から、研究課題として「福祉用具等関係企業A社による各種事業と有益性、お よび実践方策を明らかにする」が読み取れた。具体的には、つぎに示す 2 つの観点から明 らかにしていく必要がある。

① 福祉用具等関係企業 A 社によって実践されたソフト面の安全対策に関わる各種事業

(一部、ソフト面以外の事業を含む)の全容を明らかにするとともに、それらが有益 な実践であったか、について検討する

② ソフト面への各種事業がどのような方策によって実践されていたかを明らかにする

1)一番ヶ瀬康子:訪問入浴介護の理論と実践.120,一橋出版,東京(2001).

2)東畠弘子:福祉用具の歴史―並行する二つの議論.Senior Community,3・4 月号:23

-24(2008). 3)同上書

4)福祉用具の安全な利用を推進するための調査研究事業報告書.テクノエイド協会,東京

(2012).

5)東畠弘子:福祉用具の安全を考える.福祉介護機器technoプラス,7:5-8(2010).

6)棟近雅彦、水流聡子:福祉サービスの質保証―職員の質を高めて利用者満足を獲得する

―.42,全国社会福祉協議会,東京(2009).

7)大田 普:政策・制度・法律からみた「医療福祉」.川崎医療福祉学会誌,17(増刊):

39(2007).

8)医療安全推進のための標準テキスト.55,日本看護協会,東京(2013)では、医療安全 に関する法令上の規定を「組織体制に関する内容」、「報告制度に関する内容」、「研修制 度に関する内容」、「指針・マニュアル作成に関する内容」に分類しているが、さらに大 きな括りで分類するならば、サービスを提供する事業者の「組織運営管理」に関わる取 り組みと、「人(従事者)」に関わる取り組みに分類できる。また、法令によって安全対 策が講じられている点から、「行政」の取り組みも必要となる。つまり、これら 3 つの取 り組みをキーワードとし、医療領域の安全確保対策が講じられているといえる。

9)老人福祉研究会は、1969 年 12 月 1 日に設立されたが、1974 年 4 月 1 日に老人福祉開発

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17 センターと合併し、1975 年に解散している

10)古瀬徹:移動入浴介護の現状―老人介護への基礎的取り組みを―.厚生福祉,6 月号:

2-5(1984).

参考文献

医療安全推進のための標準テキスト.55,日本看護協会,東京(2013).

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18

第 2 章 社会福祉と民間企業

地域巡回入浴サービスに関わる民間企業について論じていくとき、社会福祉において民 間企業がどのように位置づけられてきたかを明らかにしておく必要があると考える。この ため、本章では地域巡回入浴サービスに関わる民間企業の位置づけを明確にしていく。だ が、同サービスに関わる民間企業には、サービスを供給する事業者としての民間企業(以 下、福祉民間企業)と、その事業者に関わる民間企業(以下、一般民間企業)がある。本 研究対象の福祉用具等関係企業A社は後者の一般民間企業であるため、本章では、社会福 祉における一般民間企業の位置づけを最終的に提示していくことにする。

その過程では、社会福祉の根幹である社会福祉概念を概観し、社会福祉を運営してきた 国による政策や施策(政策・施策によって整えられた実践の場におけるソーシャルワーク、

ケアワークの活用によっても運営されてきた。また、これら概念が政策・施策に影響を及 ぼしている可能性を否定するものではないことを付記しておく)における福祉民間企業の 位置づけを明らかにする必要がある。その上で、研究対象であるA社が社会福祉のなかで、

どのように位置づけられるかを提示していく。

第 1 節 社会福祉概念

本節は、第 2 次世界大戦後に示された社会福祉の概念について概観していく。戦後、社 会福祉の概念は、つぎに示すような多くの研究者によって、さまざまな視点からの検討が 試みられてきた。そこで本項では、社会福祉概念を 8 つの視点、すなわち「政策論的視点」、

「技術論的視点」、「制度論的視点」、「運動論的視点」、「生活論的視点」、「社会福祉学の視 点」、「社会学的な視点」、「人権論的な視点」からグループ化した田代 1)の分類に基づき、

さまざまな社会福祉概念を提示していく。

政策論的視点は、社会福祉が社会政策を補充・代替するものと規定する立場であり、孝 橋正一2)、浅沼和典3)がいる。技術論的視点は、技術的処遇を強調する立場で社会福祉を 規定したものであり、竹内愛二4)、谷川貞夫5)、杉町八重充6)、黒木利克7)、大久保満彦8)、 中村 遥9)、早崎八洲10)がいる。また、制度論的視点は、できるだけ制度化を図ることで 社会福祉のニーズを充足させていくという立場で社会福祉を規定したものであり、竹中勝 男11)、雀部猛利12)、木田徹郎13)、岡田藤太郎14)、桑原勇吉15)がいる。運動論的な視点は、

社会福祉運動、ソーシャルアクションの重要性を強調する立場から社会福祉を規定したも のであり、嶋田啓一郎 16)、糸賀一雄 17)がいる。生活論的視点は、社会福祉は生活問題を

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取り扱うものと位置づける立場からの規定であり、岡村重夫18)、一番ケ瀬康子19)がいる。

つぎに、社会福祉学の視点は、社会福祉学が社会科学の 1 つとして成立するためには、

社会福祉原論、社会福祉史、社会福祉方法論という社会科学の 3 原則を踏まえての学問体 系でなければ成立しないといった立場から社会福祉を規定したもので、田代不二男20)、村 松常雄21)、社会事業研究所22)、川崎 肇23)、田村米三郎24)、塚本 哲25)がいる。社会学 的な視点は、社会福祉の対象を、社会学的理論を応用した概念や社会病理現象として捉え る立場からの規定であり、磯村英一26)、森永松信27)、三吉 明28)、柴田善守29)、星野周 一郎30)、笠原正成31)、田中太郎32)、中本博通33)がいる。そして、人権論的な視点は、人 間の生存権を基底にした基本的人権を強調する立場からの社会福祉の規定であり、小川政 亮34)、田代国次郎35)がいる。

このように多くの研究者等によって、さまざまな視点から社会福祉の概念が示されてき たが、社会福祉は国や地方自治体による政策や施策によって運営されてきたため、第 2 節 では、国による政策・施策と福祉民間企業との関係について検討していくことにする。

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20 第 2 節 社会福祉政策・施策と福祉民間企業

本節では、第 2 次世界大戦後から研究対象期間である 1999(平成 11)年までに示された 国の政策・施策のなかで、福祉サービスを供給する福祉民間企業がどのように位置づけら れていったかを政策・施策の変遷から示していく。

第 2 次世界大戦後、GHQ が示した「無差別平等」、「国家の責任」、「最低生活の保障」

などの諸理念の下で、1946(昭和 21)年に「旧生活保護法」が施行された。そして、同年 制定された憲法第 25 条の生存権は、社会保障・社会福祉体系の整備過程の基本的な拠り所 となり 36)、1947(昭和 22)年「児童福祉法」、1949(昭和 24)年「身体障害者福祉法」、 1950(昭和 25)年「生活保護法」が相次いで制定され、福祉 3 法体制が整えられた。また、

1951(昭和 25)年に社会福祉事業の基本法である「社会福祉事業法」が制定されたことで、

社会福祉法体制と運営実施体制の基本的な枠組みが確立した37)

1950(昭和 25)年になると、イギリスのベヴァリッジ報告の影響を受け作成された「社 会保障制度に関する勧告」(以下、50 年勧告)が社会保障制度審議会から提出された。ベ ヴァリッジの報告は、1942 年にイギリス政府に提出された報告書「社会保険および関連サ ービス」であり、戦後のイギリスにおける社会保障計画を提案したものである。そのなか では、均一額の最低生活費給付、均一額の保険料拠出、行政責任の統一、適正な給付額、

包括性および被保険者の分類の 6 つの原則を基礎にした社会保険を中心に、国民扶助と任 意保険を補足的方法に位置づけた体系が示され、戦後のイギリスの社会保障制度の構築に 大きな影響を与えるだけでなく、わが国をはじめ、他の国々にも大きな影響を及ぼした。

50 年勧告のなかでは、社会保障を「疾病、負傷、分娩、廃疾、老齢、失業、多子その他の 困窮の原因に対し、保険的方法又は直接の公の負担において経済的保障の途を講じ、生活 困窮に陥ったものに対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公 衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する 生活を営むことができるようにすること」と定義し、社会保険、社会福祉、公的扶助、公 衆衛生の 4 部門を社会保障制度の主要な要素に位置づけた。この基本的な枠組みは、50 年 勧告を出発点として、今日まで引き継がれているといってもよく38)、既述した社会福祉事 業法に反映されるとともに、その後創設された各種保険制度に影響を及ぼした。

1960(昭和 35)年には、所得倍増論という経済政策が出されるとともに、国民総生産は 世界第 2 位となった。この国民総生産の伸びによる豊かさは、国民の福祉にこそ反映され るべきであるという、福祉国家の方向性が明確に示された39)。また、同年代には従来の福

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祉 3 法に加え、「精神薄弱者福祉法(現知的障害者福祉法)」(1960 年)、「老人福祉法」

(1963 年)、「母子福祉法(現母子及び父子並びに寡婦福祉法)」(1964 年)が制定され たことで、福祉 6 法体制となり、社会福祉体制の充実が図られた。

しかし、1973(昭和 48)年のオイルショックによる高度経済成長から低経済成長への移 行にともなう国や地方財政の逼迫と、高齢化の進展や福祉ニーズの多様化に対応していく あらたな対応が求められるようになった40)。1975(昭和 50)年に発表された財政制度審議 会や経済審議会による報告を契機として「福祉見直し論」が強調されることとなる。1979

(昭和 54)年に閣議決定された「新経済社会七ヵ年計画」のなかでは、個人の努力、家庭、

近隣、地域社会等の連帯を基に、効率のよい政府が適正な公的福祉をめざす「日本型福祉 社会」が提起されるとともに、そのなかでは、在宅福祉サービスの充実や民間活力の導入 の必要性が示された。この「日本型福祉社会」論は、1981(昭和 56)年に発足し、社会保 障制度改革を促した第 2 次臨時行政調査会の報告・答申のなかに引き継がれ41)、福祉国家 をめざす政策から新自由主義に基づく政策へと方向転換が図られていった。また、同時期 には特定の高齢者を対象とする福祉からすべての高齢者を対象にしていく福祉の普遍化や 一般化の進展、自立概念、ノーマライゼーション理念の浸透もあり、3 つの在宅福祉サー ビスの制度化が図られている。

この後も社会保障制度審議会建議「老人福祉のあり方について」(1985 年)、閣議決定さ れた「長寿社会大綱」(1986 年)、福祉関係 3 審議会合同企画分科会から意見具申された「今 後のシルバーサービスの在り方について」(1987 年)、同合同企画分科会から意見具申され た「今後の社会福祉のあり方について」(1989 年)のなかでも、在宅福祉サービスや民間 サービスの育成と活用が示され、これら各種審議会の影響を受けながら在宅福祉サービス や福祉民間企業の参入が可能となるような環境整備が施策によって整えられていった。

1994(平成 6)年になると、高齢社会福祉ビジョン懇談会の「21 世紀福祉ビジョン―少 子・高齢社会に向けて―」のなかで、新たな介護システムの必要性と多様なサービス提供 機関による質の高いサービス提供などが提言された。また同年、高齢者介護・自立支援シ ステム研究会から報告書『新たな高齢者介護システムの構築を目指して』が出され、社会 保険方式による新介護システムの創設(介護保険制度)、在宅福祉サービスの拡充、多元的 なサービス提供主体の参加などが示された。これらの提言や報告書を受けた形で 1995(平 成 7)年から老人保健福祉審議会による公的介護保険制度に関わる論議が始まり、さまざ まな審議や調整を図りながら 1997(平成 9)年に、「在宅福祉サービスの充実」と「民間

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活力の導入」といった観点が盛り込まれた介護保険法が制定され(2000 年施行)、この後、

福祉民間企業の福祉分野への参入が本格化した。

つまり、政策・施策面における福祉民間企業の導入は、1970 年代初頭の低経済成長によ る財政逼迫を契機とした新自由主義の下で、当時のイギリス同様、「…国の役割を縮減し、

民間営利部門の役割を高め、社会福祉サービスに民間営利部門の管理運営技術の導入を図 ることを意図した…」42)政策・施策によって図られたといえるだろう。

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23

第 3 節 社会福祉における福祉民間企業の位置づけ

第 2 節で示した政策や施策における福祉民間企業の位置づけを踏まえながら、同企業が 社会福祉にもたらす利点を示していく。

吉田43)は、公共サービスにおける官営方式を、「官」の指導監督の下での政府部門(中 央政府・都道府県・市町村・公社・公団など)によるサービス提供方式、民営方式を民間 部門(民間非営利・民間営利セクターの市民・民間非営利団体・企業など)によるサービ ス提供方式であると述べ、表 2-1 に示したメリットとデメリットを提示している。

また吉田 44)、本研究対象期間における社会福祉について、「…行政処分である措置決定 という行政の裁量による福祉サービスの提供であり、『福祉の世界』はその多くを実質的に 官営方式に独占されていた」と指摘している。

表 2-1 官営方式・民営方式の特徴

官 営 方 式 民 営 方 式

メリット デメリット メリット デメリット

公 共性 に対 する理 解度 が高く、公平である

職 員の 高齢 化など によ りコスト高になる

人 件費 など の節 減によ りコストが安く、費用対 効果が高い

営利本位になりやすく、

公 正な 市民 サー ビスに 欠ける

仕 事の 管理 体制が 明確 であり、責任ある仕事の 処理がなされる

規 制重 視で 画一的 であ り、柔軟な対応に欠ける

競争原理が働き、能率的 である

責 任の 所在 が不 明確で ある

公 正な 市民 サービ スが 徹底され、親切である

利 用者 の立 場より も供 給 者で ある 行政の 立場 を 重視 した お仕事 着せ の サー ビス となり がち である

早朝・夜間・休祭日など 勤 務時 間に かか わりな く、柔軟な対応ができる

業 務の 実態 が把 握でき ず、市民要望に即応でき ない

仕 事の 処理 などで 連絡 調整が密であり、適切な 解決が図られる

お役所仕事で、勤務時間 にロスが大きく、非能率 である

専門的な知識・技術が導 入できる

汚職につながりやすく、

また、職場の縮小や労働 条件の悪化を招く 出典 吉田民雄:福祉施策における官営・民営方式の選択.都市政策,114:4-5(2004)を参考に筆者

が作成した

しかし、1997(平成 9)年から中央社会福祉審議会社会福祉構造化企画分科会により検 討されてきた社会福祉構造改革案に基づいた社会福祉事業法の改正(以下、社会福祉法)、 公的介護保険制度、障害者支援費制度の導入などによって、措置制度から利用制度への転 換や、福祉民間企業をはじめとした多様な事業者による福祉サービスへの参入が可能とな った。これにより、「…官営方式か、民営方式かという二者択一論は成り立たず、多元的な

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24

福祉サービス・モデルの適用により、政府部門と民間部門の多様なサービス提供主体を組 み込んだ多元的な福祉サービス・ネットワークの形成・管理に力点を置いた福祉政策が探 求される時代…」へと転換した45)。この際、社会福祉サービスへの福祉民間企業の参入に 賛成の論者と反対の論者が、先に示したメリット、デメリットを掲げながら、その是非を 問う議論が展開された。星野46)は、福祉民間企業参入の反対論に関して、「…確かに多く の意見として、民間企業の参入に対して、そのような立場から無意識的に懸念するという ことが見られる。何か根拠があるというより、生理的に拒否するという心理が働くかもし れない。…」と述べている。この見解に基づけば、福祉民間企業の参入による弊害は一般 論として認識されるレベルのものであり、アンデルセン47)が指摘している「そのような議 論は陳腐であり、真実は細部に宿る」、つまり、社会福祉における福祉民間企業の位置づけ は、現実に即し、かつ個別の事案ごとに十分な検討を経ながら行っていくことが重要と理 解すべきであろう。

本研究対象企業が関わっている地域巡回入浴サービスは、2000(平成 12)年に高齢者福 祉分野で導入された公的介護保険制度における居宅サービス 1 つに位置づけられ、多くの 福祉民間企業の参入が図られたが、京極48)は「…営利目的の企業の参入によって福祉の世 界もコスト意識に目覚めざるを得ないわけで、それはさらに仕事全体に効率化をもたらし、

仕事のパイを大きくしていく方向に向かいます。…」といい、福祉民間企業の効率性が社 会福祉の拡大に寄与していく可能性を示唆している。また、島津49)は「…たしかに企業は 営業利益を追求するものだが、その経営戦略や地域ネットワークの構築は、21 世紀の福祉 の規制緩和のなかで、時代の突破口を創っていく可能性を秘めているものと思われる。…」

と述べ、福祉民間企業の柔軟性によるネットワークの構築や経営ノウハウが、ルーティン 化した社会福祉を変えていく可能性を示している。このような点を考えると、福祉民間企 業には既述したようなデメリットはあろうが、社会福祉の拡大やそのあり方に変化をもた らす存在に位置づけることができよう。

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第 4 節 社会福祉に関係する本研究対象企業の位置づけ

社会福祉に関わる民間企業は、第 3 節で示した福祉サービスを供給する事業者としての 福祉民間企業だけでなく、事業者に関わる一般民間企業も存在する。ベッドや車いす、福 祉車両をはじめとした各種福祉用具・福祉機器(以下、福祉用具等)を製造・販売あるい はリースする企業、リネン類をリースする企業、給食を請け負う企業、福祉人材を派遣す る企業などであり、本研究対象企業も福祉用具等を製造・販売する一般民間企業として、

この企業群に位置づけられる。

そこで本節では、本研究対象企業A社が社会福祉のなかで、どのように位置づけられる かを提示していく。

今日、要支援者が自宅で自立生活を続けるように支援するために、さまざまな福祉用具 等)の活用が欠かせない。福祉用具等に関わる安全を確保するためには、ハード面とソフ ト面への対応が必要である。

ハード面の安全確保は、福祉用具の業界団体である日本福祉用具・生活支援用具協会を 中心とした取り組みによって、ISO、JIS、SGマーク制度といった福祉用具等の安全性を 確保できる標準化が進められてきた。一方、ソフト面では、公益財団法人テクノエイド協 会や日本福祉用具・生活支援用具協会がソフト面の事故防止に関する情報発信などの取り 組みを行っているが、公益財団法人テクノエイド協会の『福祉用具の安全な利用を推進す るための調査研究事業報告書』(2012 年)によると、重大製品事故に関して「…利用者に よる誤使用や不注意、さらには利用者と用具や使用環境の不適合から生じた事故等が約 6 割を占めている…」49)と指摘される状況にある。

また、東畠50)が福祉用具専門相談員を対象に行った調査結果をみても、福祉用具等製造 企業に多様な取り組みを期待していた。このため、福祉用具等製造企業は今後、福祉用具 に関わる福祉用具専門相談員、介護支援専門員、介護職、看護師、理学療法士、作業療法 士などの専門職に対するさまざまな取り組みをつうじて、ソフト面の事故や 2 次的障害の 予防を図ることも必要になってくると想定される。

これらの点から考えると、福祉用具等関係企業は、今後、さまざまな方策を用いながら 事業者へのサポートを行っていく必要性に迫られており、その活躍が期待される状況に置 かれていると理解できる。しかし、企業である以上、それらの実践が自社の本業に寄与す るような形で取り組んでいくことが最良の方法と考えられる。つまり、それらのサービス は、付加価値としてのサービスということである。

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近年では、社会福祉と接点を持っていなかったコンビニエンスストアや宅配企業が、一 部地域ではあるが、社会福祉に関連する付加価値のあるサービスを始めている。ローソン は、福祉民間企業と提携し、高齢者への介護相談や交流できるサロンをコンビニエンスス トア内に設置し、また、セブンイレブンでは市町村と協定を結び、弁当の宅配と同時に高 齢者の見守り事業を展開している。こうした取り組みは、「…高齢者や介護する人が足を運 ぶきっかけをつくれば、おむつなどスーパーなどで買っていた生活用品に手を伸ばし、新 しい客層の開拓につながる可能性がある。…」51)との期待から実践されているものである。

また、宅配企業であるヤマト運輸は、市町村や市町村社会福祉協議会と協定を結び、利用 者が購入した商品を宅配する際、同時に高齢者の見守りサービスを低額な料金で実施して いる。これらのサービスは、まさに付加価値としてのサービス提供といえよう。

地域の生活の拠点となりつつある民間企業のコンビニエンスストアや宅配企業が、このよ うなサービスを展開することで、地域における社会福祉のあり様が変化していく可能性が ある。本研究対象企業A社も、これらの企業と同様、付加価値としてのサービスを提供し ており、社会福祉に貢献するものと考える。

本章を総括すると、地域巡回入浴サービスに関わる民間企業には、同サービスを供給す る福祉民間企業と同サービスの事業者に関わる一般民間企業がある。このため本章では、

社会福祉におけるA社の位置づけを明らかにするために、第 2 次世界大戦後から多くの研 究者等によって、さまざまな視点から社会福祉の概念を示した上で、1973(昭和 48)年の オイルショックなどを契機に福祉国家をめざす政策から新自由主義に基づく政策へと方向 転換が図られ、国の政策や施策のなかで福祉民間企業の位置づけが明確になっていった過 程を明らかにした。しかし一方で、社会福祉サービスへの福祉民間企業の参入に賛成の論 者と反対の論者が、メリット、デメリットを掲げながら、その是非を問う議論が展開され ていたため、本章では、社会福祉における福祉民間企業を肯定的に捉える論拠を示した。

このような社会福祉の概念、政策や施策における福祉民間企業の位置づけやその必要性を 明らかにした上で、本研究対象企業であるA社の社会福祉における位置づけを提示した。

参照

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