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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 天 羽 美 紀

    

学 位 論 文 題 名

A study of ocean productivity and its controlling factors in the western North Pacific during the last 130 kyr based     on organic and isotopic geochemistry

    

(有 機・同位体地球化学に基づく西部北太平洋の 過去13 万年間の生物生産とその支配要因に関する研究)

学位論文内容の要旨

  西部 北太平 洋の中緯 度域は 、偏西風 の流路の 直下に 位置し、 北緯40度 付近には 亜寒 帯 境界が 形成され ている。 このた め、この海域は気候変化に敏感で、氷期―間氷期サイ ク ル で海洋 環境が大 きく変化 したこ とが予想 される 。同海域 での過 去の研究 から海洋 で の 生 物 生 産 量 が 氷 期 ― 間 氷 期サ イ ク ルで 大 き く変 化 し たこ と が 報告 さ れ てい る (Kawahata etal.,1999;2000; Maeda etal.,2002; Yamane,2003)。これらはいずれも全有機 炭 素 (1oC)のフ ラックス から生 物生産量 を見積 もってい るが、TOCが海 洋で生産 さ れ た 有機炭 素からな っている かどう か明らか でない ため定量 性に欠 ける。ま た、生物 生 産 量が増 加した理 由につい て、亜 寒帯境界 の南下 と風送塵 の供給 量の増加 が関与し て い たこと が予想さ れるが、 これも 明らかに なって いない。 そこで 本研究で は、生物 生 産 量をよ り定量的 に見積も り、生 物生産量 の変動 要因を明 らかに すること を目的と し て、 北 太 平洋 中 緯 度域 か ら 採 取さ れ た7本 の マ ルチ プ ル コア と シ ャツ キ ー ライ ズ   330159咆)か ら採取 されたピ ストンコ アS−2中 に含まれ る230Th、TDCと その炭 素 安定同 位体比(613C)およ びバイオマーカーの分析を行った。230111は表層堆積物試 料 の 堆積速 度を求め るために 分析し た。また 、バイ オマーカ ーは海 洋起源の バイオマ ー カ ーとし てハプト 藻起源の 長鎖ア ルケノン と陸起 源のバイ オマー カーとし て陸上高 等 植物起 源の長鎖 門・アル カンを 分析した。その結果、以下のことが明らかになった。

1) 表 層堆 積 物7試 料 の230111の フ ラ ック ス は 予想 さ れ るフ ラック スよりも 少なか っ   た。 これは 、堆積後 の粒子 の移動、 水柱での 粒子の 移動によ るもの と考えら れる。

    こ のこと から他の コア間 で堆積フラックスを比較する場合は、横方向への移動量を   評価する必要があることが明らかになった。

2) 表層堆 積物の アルケノ ンとn‐アル カンのフ ラック スおよび ァルケ ノン水温 の結果   から 、北太 平洋中緯 度域に おいてこ れらの指 標が生 物生産量 、風送 塵の供給 量、水     ―1535

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    温を復元する上で有効な指標であることが示唆された。

3)シャツキーライズで過去13万年間について、長鎖アルケノンと長鎖かアルカン     の濃度から見積もった海洋起源および陸起源のTOCは、有機物の8'3Cから見積も     った結果とよく一致した。この結果、シャツキーライズに堆積する有機物の86    以上が海洋起源のものであることが明らかになった。また、シャツキーライズでの     生物生産量は現在とくらべて最終氷期の最寒期には最大で9倍高かったことが明ら     かになった。

4)亜寒帯境界の南下をアルケノンから見積もった水温から評価した結果、シャツキ     ーライズでは氷期に亜寒帯境界が現在よりも南下していたことが明らかになった。

  亜寒帯境界の南下によって栄養塩に富んだ水塊がシャツキーライズ上に分布してい     たことが生物生産の増加をもたらしたことが考えられたが、最終氷期最寒期での顕   著に高い生物生産は亜寒帯境界の南下分だけでは説明できなかった。生物生産量の   増加は亜寒帯境界が南下しており、かつ風送塵の供給量が増加する時にだけ見られ     ることから、風送塵の供給がこの海域の生物生産を増加する上で主要な役割をして   いたことが示唆された。本研究により、西部北太平洋中緯度域の氷期の生物生産の   増加は亜寒帯境界の南下だけでは説明できないことが初めて明らかになった。また、

  風送塵の供給が生物生産を加速する上で主要な働きをしていた可能性が高いことも   本研究により初めて明らかになった。

  以上の成果は、西部北太平洋の古海洋研究に新たな知見を与えるだけでなく、貧栄 養海域での生物生産変動の解明に貢献するものである。

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学位論文審査の要旨

    

学 位 論 文 題 名

A study of ocean productivity and its controlling factors in the western North Pacific during the last 130 kyr based     on organic and isotopic geochemistry

    

(有機・同位体地球化学に基づく西部北太平洋の 過去13 万年間の生物生産とその支配要因に関する研究)

  西部北太平洋の中緯度域は、偏西風の流路の直下に位置し、北緯40度付近には亜寒帯境界が形 成されている。このため、この海域は気候変化に敏感で、氷期ー間氷期サイクルで海洋環境が大き く変化したことが予想される。同海域での過去の研究から生物生産量が氷期―間氷期サイクルで大 きく変化したことが報告されているが、これらはいずれも全有機炭素量(TOC)から生物生産量を 見積もっており、TOCが海洋で生産された有機炭素からなっているかどうか明らかでないため定 量性に欠ける。また、生物生産量が増加した理由について、亜寒帯境界の南下と風送塵の供給量 の増加が関与していたことが予想されるが、これも明らかになっていなしゝ。そこで、主として次 の三つの課題1)バイオマーカーの古環境指標としての評価、2)生物生産量のより定量的な見積 もり、3)生物生産の支配要因の解明に関して研究を行った。試料は北太平洋中緯度域から採取さ れた7本のマルチプルコアとシャツキーライズ(33°N,159゜E)から採取されたピストンコアを用 い、その中に含まれる230h、TOCとその炭素安定同位体比(6|3C)およびパイオマーカーの分析 を行った。これにより、以下の成果が得られた。

1)表層堆積物の゜3叶hのフラックスは予想されるフラックスよりも少なく、堆積後の粒子の移動、

    水柱での粒子の移動によるものと考えられる。他のコアと堆積フラックスを比較する場合、こ     の点を評価する必要がある。

2)表層堆積物の結果から、北太平洋中緯度域においてパイオマーカーが生物生産量、風送塵の供     給量、水温を復元する上で有効な指標であることが示された。

3)過去13万年間について、バイオマーカーと有機物の613Cから海洋起源の有機炭素フラックス     を見積もることができた。その結果、シャツキーライズに堆積する有機物の86%以上が海洋     起源のものであることが明らかになった。また、生物生産量は現在とくらべて最終氷期の最寒     期には最大で9倍高かったことが明らかになった。

4)亜寒帯境界の南下をアルケノン古水温から評価した結果、シャツキーライズでは氷期に亜寒帯     境界が現在よりも南下していたことが明らかになった。生物生産量の増加は亜寒帯境界が南下

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授 授

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    しており、かつ風送塵の供給量が増加する時にだけ見られることから、亜寒帯境界の南下によ     って栄養塩に富んだ水塊がシャツキーライズ上に分布し、さらに風送塵によって微量栄養塩が     供給されたことで生物生産が増加したと考えられた。本研究により風送塵の供給が生物生産の     増 加 に 関 与 し て い た と い う こ と が 初 め て 定 量 的 に 明 ら か に な っ た 。   以上の成果は、西部北太平洋の古海洋研究に新たな知見を与えるだけでなく、貧栄養海域での 生物生産変動の解明に貢献するものである。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、大学院課 程における研鑽や取得単位なども併せ申請者が博士(地球環境科学)の学位を受けるのに充分な 資格を有するものと判定した。

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