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非結核性抗酸菌症の治療―その課題克服に向けて菊地 利明835-836

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835

非結核性抗酸菌症の治療―その課題克服に向けて

菊地 利明

 非結核性抗酸菌症は,抗酸菌から結核菌とらい菌を除 いた非結核性抗酸菌による感染症で,その多くが Myco-bacterium aviumと M. intracellulare(いわゆる MAC)によ る肺 MAC 症である。肺 MAC 症の薬物治療については, 日米の診療ガイドラインが整備されたことと,そのガイ ドラインで推奨されているクラリスロマイシン,リファ ンピシン,エタンブトールが本邦の保険診療下で使える ようになったことから,非専門医でも比較的容易に行え るようになってきた(Am J Respir Crit Care Med. 2007 ; 175 : 367 _ 416/結核. 2012 ; 87 : 83 _ 86)。しかし,肺MAC 症の病態は症例ごとに異なり,薬物治療についていくつ かの臨床的課題が残されている(Respir Med. 2014 ; 108 : 417 _ 25)。すなわち,肺 MAC 症には,「無治療でも目立 った進行が見られない」という症例がある一方で,「 1 年 以上の薬物治療を行っても,臨床症状は改善せず,喀痰 中の菌も陰性化しない」という症例が混在している。そ のため多くの臨床医は,肺 MAC 症と診断のついた患者 を前にして,経済的コストと副作用リスクを伴い年に及 ぶ薬物治療を開始すべきか否かに悩まされている。  このような状況を踏まえ,われわれは「肺 MAC 症にお ける薬物治療への反応性は,その起因菌に依存している のではないか」という仮説を立て,この仮説を川崎医科 大学の小橋吉博先生との共同臨床研究で検証した(Clin Microbiol Infect. 2014 ; 20 : 256 _ 62)。解析に用いた症例 は,クラリスロマイシンを含む多剤併用療法を受けた肺 M. avium症の全 59 例で,治療経過から,30 例を治療反応 群,29 例を治療抵抗群と判断した。これらの症例の起因 菌をタイピングするために,VNTR(Variable Numbers of Tandem Repeats,反復配列多型)法を行った。具体的には, M. aviumのゲノム上に散在するミニサテライト領域から 16 カ所を取り上げ,それぞれのミニサテライト領域に おいて,反復配列の反復回数を菌株ごとに調べた。この VNTR データを樹形図分析と主成分分析したところ,い ずれの解析方法でも M. avium 菌株は 3 つのクラスターに 分類された。そして,分類された菌株のクラスター分布 と,菌株が由来する症例の治療反応性との関連を検討し たところ,樹形図分析では菌のクラスター分布と治療反 応性との間に有意な関連が認められなかったものの(P = 0.06),主成分分析では有意な関連が認められた(P < 0.05)。  そこで,VNTR 法に用いた 16 カ所にミニサテライト領 域のうち,どの領域が治療反応性と関連しているのかを, ロジスティック回帰分析で調べた。多変量解析を行い, 16 カ所のミニサテライト領域から変数増減法で変数選択 したところ,MATR 2(3,836 Kbp),MATR 3(4,792 Kbp), MATR 8(2,424 Kbp),お よ び MATR 16(384 Kbp)と 4 カ所のミニサテライト領域が選択された(それぞれのミ ニサテライト領域のゲノム位置は,M. avium 104 株につ いて公開されているゲノムデータ〔NCBI 参照番号 NC_ 008595.1・全長 5,475 Kbp〕を基に表記した)。さらに,こ れら 4 カ所のミニサテライト領域の VNTR データのみを 用いて,東北大学病院の患者コホート(反応群 15 例,抵 抗群 13 例)で治療反応性予測モデルを構築してみたと ころ,この予測モデルで川崎医科大学附属病院の患者コ ホート(反応群 15 例,抵抗群 16 例)の治療反応性を有意 に予測することができた(P < 0.05)。すなわち,これら 4 カ所のミニサテライト領域付近に位置する菌遺伝子の 産物が,肺 M. avium 症の治療反応性に影響を及ぼしてい ることが考えられた。  以上の結果から,肺 M. avium 症の薬物治療に対する治

Kekkaku Vol. 89, No. 12 : 835_836, 2014

東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野 連絡先 : 菊地利明,東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学 分野,〒 980 _ 8574 宮城県仙台市青葉区星陵町 1 _ 1

(E-mail : [email protected]) (Received 15 Sep. 2014 / Accepted 16 Oct. 2014)

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836 結核 第 89 巻 第 12 号 2014 年 12 月

が必要と考え,現在その準備を進めている。

 なお本稿は,2014 年 5 月に岐阜市で行われた第 89 回 日本結核病学会総会での教育講演の内容をまとめたもの である。

 著者の COI(confl icts of interest)開示:本論文発表内 容に関して特になし。 療反応性は,その起因菌の形質にある程度左右されてお り,菌ゲノムの遺伝子多型から予測可能であることが示 唆された。ただし,今回の研究は少数例を用いたレトロ スペクティブ解析である。また,VNTR データと薬剤感 受性との間には関連性が既に報告されている(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2012 ; 31 : 445 _ 54)。今回のわれわれ の知見を臨床応用につなげていくためにはさらなる検討

参照

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