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学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 大 谷    誠

       Involvement of suppressor of      cytokine signaling‑l‑mediated degradation of    MyD88‑adaptor‑like protein in the suppression of TLR2‑mediated signaling by dendritic cell‑specific    ICAIVI3 grabbing nonintegrin‑mediated signaling

    (Dendritic cell ― specific ICAM3 grabbing nonlntegrin による TLR2 のシグナルの#p 制におけるsuppressorofcytokinesignaling ―1 を      介 し た MyD88 ― adaptorllikeprotein の 分 解 の 関 与 )

学位論文内容の要旨

  自然免疫系では,マクロファージ,好中球そして樹状細胞(DC)がToll‑like receptorぐrLRs)のような パターン認識レセプターで微生物の侵入を感知した後,貪食し,細胞内小胞で破壊することによって排 除 され てい る。TLRsは,現在までに10種類以上同定されており,リポ多糖0しPS),ペプチドグ リカ ン,リポタイコ酸,リポタンパク質,リポペプチドといったpathogen‑associated molecular patterns くPAMPs)を認識する。さらに ,TLRsによる認識シグナルが抗原特異的な獲得免疫の誘導に必須な抗原 提示の際の補助刺激シグナル 分子の発現も制御している。すなわち,TLRsは自然免疫と獲得免疫との 橋渡しを媒介する重要なレセ プターでもある。我々は,これまでにTLR2シグナルが貪食受容体として のMSRl (macrophage scavenger receptor)やCD36な ど の ス カ ベ ン ジ ャ ー 受 容 体 や ,DC‑SIGN (dendritic cell‑specific ICAM3 grabbing nonintegrin)やdectin‑lといったC‑type lectinの発現を増強 することにより貪食能を活性 化することを報告している。今回は逆に,貪食レセプタ ーの1っである DC‑SIGNに 注 目 し ,DC‑SIGNを 介す る貪 食シ グナ ルがTLR2の 認識 シグ ナル にど のよ うに 影響 する の か検 証し た。DC‑SIGNは ,主 にDCに発 現し てい る約44kDaのn型 の膜 タン パク 質で カル シウ ム依 存 的に 糖と 結合 するC‑type lectinである。DC‑SIGNは接着分子としての役割を担っており,DCの血 管外遊走の際の足がかりとな り,また,抗原提示の際にDCとT細胞接着においても重要な役割を果た している。

  マ ウ スDCと し てA/J mouse由 来のXS106細 胞を 用い た。 ヒ トDCは, 末梢 血よ り単 球を 分離 し,

GM‑CSFお よ びIL‑4に よ り 分 化 さ せ た 樹 状 細 胞(MDDC)を 用 い た 。TLR2リ ガ ン ド と し て は , Mycopぬ鋤a餾五瑠血ロ刃由来 の合成ジアシルリポペプチドFSL‐1,DC.SIG]吋またはDC‐SIGNのマウ スホモログSIGNR1のりガンドとしてはMannonanose‐di‐(N.acetyl・D―glucosanline)(以下Man9)およ び , 結 核 菌 ( 碯 シ 勿6acぬ ぬz皿 オuみ 鮒 凵 ぬ おAoyama ̄B) の 細 胞 外 壁 の 構 成 成 分 で あ る

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Lipoarabinomannan( 以 下ManLAM)を 用 い た 。XS106細 胞 をFSL‑1で 刺 激 し た 際 の サ イ ト カ イ ン (TNF‑a,IL‑6,IFN‑y,IL‑10)の 産 生 は り ア ル タ イ ムPCR法 な ら び にELISA法 に て 評 価 し た 。   ま ず ,XS106細 胞 に 機 能 的 なTLR2な ら びにSIGNR1を 発現 して いる こ とを 確認 した 。XS106細胞 をFSL‑1で刺 激し たと ころ ,TNF‑a, IL‑6,IFN‑YならびIL‑10産生は濃度依存的に増加 したが,Man9 あ る い はManLAMと の 共 刺 激 で は ,FSL‑1に よ るTNF‑a,IL‑6な ら ぴ にIFN‑y誘 導活 性は 有意 に抑 制 さ れた 。し かし なが ら, 炎症 抑制 性の サイ トカ インで あるIL‑10誘導活性は抑制さ れなかった。

こ れ ら の サ イ トカ イン の産 生は 転写 因子NF‑KBで制 御さ れて いる ので ,XS106細 胞にNF‑KBル シフ ェ ラ ー ゼ レ ポ ータ ー遺 伝子 を導 入し ,FSL‑1単 独あ るい はFSL‑1とMan9との 共刺 激に よるNF‑KBの 活 性化を調べた。NF‑1くニBはFSL‑1刺激で濃度依存的に活性化されたが,Man9との同時刺激で活性化が 抑 制 さ れ た 。 さ ら に ,SIGNR1をRNAi法 に よ ル ノ ッ ク ダ ウ ン し た と こ ろ,FSL‑1とManLAMの 共刺 激 に よ るTNF‑ぱ とIL‑6産 生 抑 制 活 性 は 有 意に 消失 した 。さ らに ,ヒ トのDCで あるMDDCを用 いて 同 様 な 実 験 を 行 っ た と こ ろ ,XS106細 胞 と同 様な 結果 が得 られ た。DC‑SIGNとTLR2の細 胞表 面で の 存 在 状 態 を 調 べ る た め に , ヒ ト 胎 児 腎 臓由 来のHEK293細 胞にFLAGタグ をっ けたTLR2を安 定発 現 さ せて ,DC‑SIGN遺 伝子 を導 入 し, 免疫 沈降 法で 確認 した 。そ の結 果,DC‑SIGNは テトラマーを 形 成 し た 状 態 でTLR2と 会合 して いる こと が判 明し た。 また ,XS106細 胞に おい てもTLR2とSIGNR1 は 会 合 し ,MDDCに お い て もTLR2とDC‑SIGNが 会 合 し て い た 。 最 近 , 結核 菌の 感染 にお いて ,サ イ ト カイ ンシ グナ ルの 調節 因子 であ るsuppressor of cytokine signalingl(SOCS‑1)がDC‑SIGNに よ るTLR2シ グ ナル の抑 制に 関与 して いる こと が報 告さ れた 。そ こで , 我々 もDC‑SIGNに よるTLR2 を 介したサイトカイン産生の負の調節にはSOCS‑1が関与し ているのではないかと考え,まず,XS106 細 胞 をFSL‑1ある いはManIよAMの 単独 なら びに 同時 に刺激し,SOCS‑1の発現を調べた 。その結果,

単 独 なら びに 同時 刺激 共に 時間 依存 的にSOCS‑1の 発現 が増 強 し, さら に,SIGNR1はSOCS‑1と会合 し て いる こと がわ かっ た。 次に ,SOCS‑1をRNAi法 でノッ クダウンしたところ,ManLAMによるFSL‑1 刺 激 によ るサ イト カイ ン産 生抑 制活 性が 有意 に減 弱した 。TLR4の下流のMyD88依存的 な経路におい てSOCS‑1がTLR4下流のアダプター分子であるMyD88‑adaptor‑like protein (MaDをユビ キチン化し,

プ ロ テア ゾー ムで 分解 するこ とが報告されている。そこで,SIGNR1によるTLR2シグナ ルの抑制にも 同 様 なこ とが 起こ って いる ので はな いか と推 測し ,FSL‑1とMaロLAMの 共刺 激でTLR2下流シグナル Malの分 解を 調べ た。 その 結果 ,FSL‑1とManIよAMの単 独な ら ぴに 同時 刺激 で,SOCS‑1の発現が増 強 し , さ ら に , 同 時 刺 激 で は 明 ら か にMalの 分 解 が 起 こ っ て い る こ と が 確 認 さ れ た 。   以 上 の 結 果 か ら ,TLR2シ グ ナ ル のDC‑SIGNシ グ ナ ル に よ る 抑 制 活 性で は,SOCS 1に よるTLR2 下 流 の ア ダ プ タ ー 分 子 で あ るMalの 分 解 が 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。

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学位論文審査の要旨

       Involvement of suppressor of      cytokine signaling‑l‑mediated degradation of    IVIyD88‑adaptor‑like proteinln the suppression of TLR2‑mediated signaling by dendritic cell‑specific    ICAINA[3 grabbing nonintegrin‑mediated signaling

    (Dendritic cell −specific ICAM3 grabbing nonlntegrin による TLR2 のシグナ ルの抑制に おける suppressorofcytokinesignaling ー 1 を      介 し た MyD88 − adaptor − likeprotein の 分 解 の 関 与 )

   審査は,審査員全員出席の下に,申請者に対して提出論文とそれに関連した学科目につ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た . 審 査 論 文 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る .

  FSL‑1 刺激で 惹起された TLR2 シグナルは,貪食受容体である MSR1 やDC‑SIGN の発現 を増強し,樹状細胞 (DC) の貪食能を活性化することが知られている.逆に, DC‑SIGN を介 する貪食シグナルは矼,R2 の認識シグナルにどのよう栓影響を与えるのか,本研究はその 点について検討したものである,マウスDC として A/J mouse 由来のXS106 細胞,ヒト DC として末梢血より単球を分離し,GM‑CSF およぴ IL‑4 により分化させた樹状細胞(MDDC) を用いた・

   実験に先立ち,XS106 細胞が機能的にTLR2 たらびにSIGNR1 を発現していることを確 認した.FSL‑1 単独刺激では,TNF‑a,IL‑6 ,IFN‑y およびIL‑10 の産生は濃度依存的に増加 したが,Man9 あるいはManLAM との共刺激では,FSL‑1 によるTNF‑a,  IL‑6 , IFN‑ の誘導 活性は有意に抑制された.ただしIL‑10 の誘導瀞陸は抑制きれなかった. 次に,XS106 細 胞にNF‑kB ルシフェラーゼレポーター遺伝子を導入してその活性化を調べると,NF‑kB 活 性は,FSL‑1 単独刺激では濃度依存的に活性化されたが, Man9 との共刺激では活性化は抑 制された.さらに, SIGNR1 を siRNA 法でノックダウンすると,FSL‑1 とManI ーAM の共刺 激によるTNF .‑a, IL‑6 , IFN‑Y の産生抑制活性は有意に減弱した.ヒトDC であるMDDC で

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則 郎

   

   

靖 健

塚 田

戸 柴

授 授

教 教

査 査

主 副

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も同様な結果であった.

  ヒ ト 胎 児 腎 臓 由来 のHEK293細 胞 にTIーR2とDC‑SIGNの遺 伝子 を導 入し ,免 疫沈 降法 でDC‑SIGNとTLR2と の 細 胞 表 面 で の 存 在 状 態 を調 べ る と ,DC‑SIGNはり ガン ドを 認識 する 際に オリ ゴマ ーを 形成 し,TLR2と 会合 して いる こと が判明した.同様にXS106細胞 で はTLR2とSIGNR1,MDDCでfrLR2とDC‑SIGNが 会 合 し て い る こ と が 確 認 さ れ た ,   次に,suppressor of cytokine signaling  (SOCS‑1)に着目し,XS106細胞でその動きをみる と ,SOCS‑1の発 現はFSL‑1とManI, 」Wの 共刺 激で 時間 依存 的に 増強 し, またSOCS‑1は SIGNR1と会 合し てい た. さら にSOCS‑1をsiRNA法 でノ ック ダウン する と,ManL」`Mに よる皿唖・叫Iし−6,ロN´の産生抑制は有意に減弱した.次いで,TLR2下流シグナルの MyD88‐証嶼畑卜丗【eprotemQ圧al)に着目し,その動きを見ると,FSL‐1とMam,AMの共刺激 でMalの分解が起こっていることが確認された.これらの結果は,DC−SI(Nシグナルによ るTLR2シグ ナル の瀞 陸抑 制に おいて はSOCS−1が 重要 栓役 割を演 じて おり ,SOCS−1が TLR2下 流 の ア ダ プタ ー 分 子 で あ るM甜を 分解 する こと によ りTLR2シ グナ ルの 活性 が抑 制されることを示している.また,樹状細胞においては,一目,貪食が開始されると皿 R2 による認識は抑制されることを示している.

  論文の審査にあたって,論文申請者による研究の要旨の説明後,本研究ならびに関連す る研究について質問が行われた・

主な質問事項は,以下の通りである.

  1)共刺激で,FSL‑1によるTNF‑a, IL‑6,IFN‑Yの誘導活性が抑制されたのに,LL‑10の誘     導活性は抑制されなかったのは何故か,

  2) MSR1やDC‑SIGNの 発 現 増 強 に よ る 樹 状 細 胞 の 貪 食 能 の 活 性 化 と は ,   3) SIGNR1をノ ック ダウ ンし ても ,FSL‑1とManI,AMの共 刺激 によ るTNF‑a等 の産 生     活性の抑制が完全に取り除かれないのはなぜか,

  4)細胞膜における会合とは何か,

  5) こ の よ う な 貪 食 とTLRと の ク ロ ス ト ー ク は 好 中 球 な ど で も 起 こ る の か ,   6) FSL‑1以 外 の TLR2リ ガ ン ド で も 同 様 な ク ロ ス ト ー ク が み ら れ る か ,   7) SOCS‑1はE3リガーゼとして働き,Malをユビキチンン化するということだが,ユビ     キチンン化を確認したか,

  いずれの質問についても,論文申請者から明快な回答が得られ,また将来の研究の方向 性にっいても具体的な回答が得られた.本研究は,樹状細胞においては、一旦貪食が開始 さ れる と貪 食シ グナ ルを 介し てTLR2による認識が抑制されることを明らかにし、さらに そ の 機 序 とし てSOCS‑1によ るTI風2下 流の アダ プタ ー分 子MaIの分 解の 可能 性が 高い こ とを示したことが高く評価された.本研究の業績は,口腔外科の分野はもとより,関連領 域 にも 寄与 する とこ ろ大 であ り, 博士(歯学)の学位授与に値するものと認められた.

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