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博士(工学)泉 岳志 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)泉   岳志 学位論文題名

Ti‑Al 系合金の耐酸化性向上を目指した      表 面 改 質 法 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

  近 年、 ジェ ット エン ジン 、ガス ター ビンなどのエネルギー関連機器では、高 効率化を目指して高温・軽量化が進められており、Ti−Al系金属間化合物(TiAl) は高 温で の比 強度 に優 れる ことか ら、 次世代の軽量耐熱材料として期待されて いる 。し かし 、約1100K以上 での 耐酸 化性 に乏 しい ため 、耐熱 材料 としてはそ の使用温度域が低く抑えられており、耐酸化性付与技術の開発が望まれている。

  本研究では、まず、Tiの選択硫化反応を利用して合金表面に耐酸化性に優れた TiAl3,TiAl2層を 自己 組織 的に形 成さ せる硫化処理法(17元素の影響について 詳細 に調 査し た) につ いて 検討し た。 その成果を基礎として、Niめっき後にAl 拡散 浸透 処理 を行 う、 簡便 で量産 可能 なプロセスを提案した。この方法は最外 層よ りもAl濃 度の 高い 内層 を形成 する ことから、Up―hill diffusion処理と命 名し た。 この コー ティ ング が優れ た耐 酸化 性を 有す るこ とを1万時 間にわたる 酸化 実験 から 実証 した 。本 論文は 全7章か ら構 成さ れて おり、 概要 は以下の通 りである。

  第1章は 緒言であり、工学的背景およ.びTiAlの研究開発の現状についてまと め、本研究の目的について述べている。

  第2章 で は16種 類 の 合金 元素(X)を選定 しTiAl‑2at. %X合 金の 硫化 実験 を行 い、 合金 表面に形成するAl‑rich層の形態と添加元素の挙動について調査した。

その 結果 、合 金表 面に 形成 するAl‑rich層 の形 態はV,Mn,Ni,Y,Zr,Laの添 加合金では、TiAlと同様に、TiAl3,TiAl2を形成する。一方、Co,Nb,Mo,Ta, Wで は ス ケ ー ル ・ 合 金 界面 に添 加元 素(X)とAlの化 合物 層が 、Si,Cu,Ge,Ag ではTi (Al,X)3;Ll2層を形成し、Feでは、スケール・合金界面にFeAl3とさら にTiAl3とTiAl2の間にTi (Al,Fe)3;Ll2を形成する。この添加元素による差異は TiAl3,TiAl2およ びTiAlに おける 第三 元素の固溶限の大小、また、Tiの選択硫 化が達成される条件の違いによることを明らかにした。

  第3章で は、硫化処理TiAl‑2at. %X合金の酸化試験(大気中、1173K)から硫化 処理 で形 成し た合 金表 面の 層構造 と耐 酸化性の関連にっいて調査した。その結 果、 耐酸 化性 が硫 化処 理TiAlに比 べ低 下し た、 又は 同等 であ ったV,Mn等の添 加合 金で は、TiAlと同 様に 、合金 表面 のAl‑richなTiAl3,TiAl2が 消失したの に対 して 、耐 酸化 性が 向上 したFe,Nb,Mo,Ta,Wの添 加合金 では いずれもス ケー ル・ 合金 界面 にTiAIX合 金層 を形 成し 、Al‑richなTiAl2が 残存 する。これ らの 合金 は、硫化時にスケール・合金界面にX―Al化合物層を形成し、酸化の進

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行 に伴 いこ のX一Alが酸 化し、Al203と スケ ール との 密着性 に優 れたTiAIXに 変 化 す る こ と で 、 保 護 的 Al203ス ケ ー ル が 維 持 さ れ た も の で あ る 。 第4章 は 、 第3章 で 得 ら れ た 知見 に 基づ き、 硫化 処理 より も簡 便に 耐酸 化性 を 向上 させ る手 段と して 、試 料形 状に とら われ ず、 また膜厚調整の容易なめっき と拡 散浸 透処 理を 組み 合わ せTiAl上 にNi―Al合金 層によるコーティング層の形 成 を試 みた 。特 に、 高Al活量 で処 理す ると 、最 表面 のNi2Alユ より もAl濃度 の 高いTiAlユが 合金 側に 形成 する こと を見 出し た。 これは、Alがその濃度勾配に 逆ら って 拡散 する いわ ゆる Up−hill diffusion によるもので、Al蒸気の活 量 が 純Alと ほ ば 等 し い こ と から 、NiはAlと の平 衡相 であ るNiZAl3に変 化し 、 さ ら にAlが 一 方 的 に 内 部 に 拡散 す るこ とで 、合 金側 のAl活量 も上 昇し 、最 終 的にAlと 平衡 するTiAlヨが 形成 され たた めと 考察 した。また、この方法をその 特 徴 的 なAl濃 度 の 分 布 か ら 「Up―hill diffusion処 理 」 と 命 名 し た 。   第5章 で は 、NiーAlコ ー テ ィ ン グを 施し たTiAlの 耐酸化 性を 大気 中、1173K で最長36,OOOks (10,OOOh)におよぶ酸化試験により評価し、耐酸化性とコーテ イン グ層 構造 との 関連 と、 酸化 中の コー ティ ング 層構造の変化について調査し た。 その 結果 、Up−hill diffusion処理TiAlは耐 酸化性に非常に優れているこ とを明らかにした。.また、Al20ユスケールの剥離も見られないという特長を有す る。 さら に、 コー ティ ング 最表 面よ りも 合金 側でAl濃度の高い構造を持つコー ティングは、長時間に亘って維持されていた。

  第6章 で は 、 第4章 と5章 で 提 案 し たUp−hill diffusion処 理 を 耐熱Ti合 金 へ 適用 し、 大気 中、1023Kでの 酸化 実験 によ り、 その 効果 につ いて 検証 した 。 その 結果 、Up―hill diffusion処理 を行 った 耐熱Ti合金では、TiAlへの適用例 と同 様に 、コ ーテ ィン グ最 表面 はNi2Al3とな り、 合金側にはさらにAl濃度が高 いTiAl3,Ll2とTiAl2が形成することが明らかとなった。3,600ks酸化後の酸化 量は 約6g/m2であ り、 かつスケールの剥離も検出されず、非常に密着性の良いス ケー ルが 形成 し、 耐酸 化性 が著 しく 向上 した 。ま た、コーティング層の構造は 基本 的に 酸化 前後 で変 化が なく 、高 いAl濃度 が維 持されていることから、耐熱 Ti合 金の 耐酸 化性 向上 に関 して も、Up―hill diffusion処理が非常に有効であ ることを明らかとした。

  第7章 は 本 論 文 の ま と め で あ り 、 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を 総 括 し た 。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    成田敏夫 副 査    教授    瀬尾眞浩 副 査    教授    高橋英明 副 査    教授    黒川一哉 副査   助教授   大笹憲一

学 位 論 文 題 名

Ti‑Al 系合金の耐酸化性向上を目指した      表 面 改 質 法 に 関 す る 研 究

  近 年、 ジ ェ ッ トエ ン ジ ン 、ガ ス タ ー ビン な ど の エネ ル ギ ー関連 機器で は、高 効率化 を目指 し て 高 温 ・軽 量 化 が 進め ら れ て おり 、Ti‑Al系 金 属 間 化合 物(TiADは 高温で の比強 度に優 れるこ と か ら 、 次 世 代 の 軽 量 耐 熱 材 料 と し て 期 待 さ れ て い る。 し か し 、約1100K以上 で の 耐 酸化 性 に 乏 し い ため 、 耐 熱 材料 と し て はそ の 使 用 温度 域 が 低 く抑 え られ ており 、耐酸 化性付与 技術の 開 発が望まれている。

  本研究では、まず、Tiの選択硫化反応を利用して合金表面に耐酸化性に優れた′I`iAl3.´I'iAI2 を 自 己 組織 的 に 形 成さ せ る 硫 化処 理 法 (17元 素 の 影響 に つ いて詳 細に調 査した )につ いて検 討 し た 。 そ の 成 果 を 基 礎 とし て 、Niめ っ き 後にAl拡 散浸 透 処 理 を行 う 、 簡 便で 量 産 可 能な プ ロ セ ス を 提 案 し た 。 こ の 方 法 は 最 外 層 よ り もAl濃 度の 高 い 内 層を 形 成 す るこ と か ら 、Up‑hill cliff118ion処理と 命名し た。こ のコー ティン グが優 れた耐酸 化性を 有する ことを1万時間 にわた る 酸 化 実験 か ら 実 証し た も の で、 本 論 文 は全7章 か ら 構 成さ れ て お り、 概 要 は 以下 の 通りで あ る。

  1章 は緒 言 で あ り、 工 学 的 背景 お よ び ′riAlの研 究 開 発 の現 状 に つ いて ま と め 、本研 究の 目的について述べている。

  2章 では16種 類の 合 金 元 素(X)を 選 定 し´riAl‑2at.X合金の 硫化実 験を行 い、合 金表面 に 形 成 す るAl‑rich層 の 形 態 と添 加 元 素 の挙 動 に つ いて 調 査 し た。 そ の 結 果、 合 金 表 面に形 成す Al‑rich層 の 形態 はv Mn,NiY ZrLaの 添加 合 金 で は、′n甜と同 様に、 nm3,BAkを形 成 す る 。一 方、Co,Nb,MoT|a,Wではスケ ール・ 合金界 面に添 加元素 (めとmの化合 物層が 、 SiCuGeAgで はn(触 , 勘3L12層 を形 成 し 、Feで は 、 スケ ー ル ・ 合金 界 面 にFem3とさ ら IIm3とTi2の間に 恥(魁 ,Fe)3;L12を形成する。この添加元素による差異は′IW8,Ti触2 よ び ′ri触 に お ける 第 三 元 素の 固 溶 限 の大 小 、 ま た、nの 選 択 硫 化が 達 成 さ れる 条 件 の違い に よることを明らかにしている。

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  3章では、硫化処理 r1Al‑2at.%X合金の酸化試験(大気中、1173K)から硫化処理で形成し た合金表面の層構造と耐酸化性の関連について調査した。その結果、耐酸化性が硫化処理TiAl に比べ低下した、又は同等であったvMn等の添加合金では、′riAlと同様に、合金表面の Al‑richなTiAl3.′IAl2が消失したのに対して、耐酸化性が向上したFe,Nb,Mo,Ta,Wの添加 合金ではいずれもスケール・合金界面 に罰AX合金層を形成し、mdchTi心2が残存する。

これらの合金は、硫化時にスケール・ 合金界面にXm化合物層を形成し、酸化の進行に伴い このX.mが酸 化し 、m208とス ケー ルと の密 着性 に優 れた恥AlXに 変化することで、保護的 m203スケールが維持されたものである。

  第4章は 、第3章で得られた知見に基 づき、硫化処理よりも簡便に耐酸化性を向上させる手 段として、試料形状にとらわれず、また膜厚調整の容易なめっきと拡散浸透処理を組み合わせ Ti魁上にNi.触合金層によるコーティ ング層の形成を試みた。特に、高m活量で処理すると、

最 表 面 のNi2m3よ り もm濃 度 の 高 いnm3が 合 金 側 に形 成す るこ とを 見出 した 。こ れは 、m がその濃度勾配に逆らって拡散するい わゆる Up‐h皿diabsion によるもので、m蒸気の活 量 が 純mと ほ ば 等 し いこ とか ら、Nimとの 平衡 相で あるNi2心3に 変化 し、 さら にmが 一 方的に内部に拡散することで、合金側 のm活量も上昇し、最終的にmと平衡する′I丶触3が形 成されたためと考察した。また、この方法をその特徴的なm濃度の分布から「Uph皿difmsion 処 理 」 と 命 名 し た 。 こ の 独 創 的 な 概 念 は 世 界 的 に も 高 く 評 価 さ れ て い る 。   5章 で は 、Ni. 心 ゴ ー テ ィ ン グ を 施 し た ′IWの 耐 酸 化 性 を 大 気 中 、1173Kで 最 長 36000k8(10000h)におよぶ酸化試験により評価し、耐酸化性とコーティング層構造との関連 と、酸化中のコーティング層構造の変 化について調査した。その結果、Up.hiudiah8ion処理 I ̄i触は耐酸化性に非常に優れていることを明らかにした。また、Ab03スケールの剥離も見ら れないという特長を有する。さらに、 コーティング最表面よりも合金側でm濃度の高い構造 を持つコーティングは、長時間に亘って維持されていた。

  6章で は、 第4章 と5章で 提案 したUphmdifsion処 理を 耐熱 恥合 金へ 適 用し、大気 中、1023Kでの酸化実験により、その効果について検証した。その 結果、Uphmdifm8ion 理を 行っ た耐 熱n合 金で は、n魁への適用例と同様に、コーティン グ最表面はNbとなり、

合金側にはさらにm濃度が高い′IiAb,L12と恥A12が形成することが明らかとなった。3,600k8 酸化後の酸化量は約6g/n12であり、かつスケールの剥離も検出されず、非常に密着性の良いス ケールが形成し、耐酸化性が著しく向上した。また、コーティング層の構造は基本的に酸化前 後で 変化 がな く、 高 いm濃度が維持さ れていることから、耐熱n合 金の耐酸化性向上に関し て も 、 Up hmdi bsion処 理 が 非 常 に 有 効 で あ る こ と を 明 ら か と し た 。    7章 は 本 論 文 の ま と め で あ り 、 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を 総 括 し た 。

  これを要するに、著者はTiAl系合金の耐酸 化性を付与する新しいコーティング皮膜を提案 し、長時間に亘る酸化試験からその長寿命・高信頼性を実証したもので、材料工学ならびに界 面制御工学に対して寄与するところ大なるものがある。よって著者は、北海道大学博士(工学)

の学位を授与される資格あるものと認める。

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