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博士(工学)松岡建志 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)松岡建志 学位論文題名

マイクロ波領域での氷結晶の誘電的性質と不純物効果 学位論文内容の要旨

  南極 やグ リー ンラ ンド など の極 域雪氷 圏の気候や環境を広域に観測することは、

地 球規 模で の気 候や 環境 の変 動を 解明す る上で非常に重要になっている。何故なら 極 域氷 床は 、そ の拡 大お よび 縮小 規模、 表面形態、氷床の流動速度などをパラメー タ とし て、 地球 全体 の気 候変 動と 複雑に 相互作用をもらからである。これらのパラ メ ータ を観 測す るた め、 現在 、雪 氷圏に おいてマイクロ波を用いた人工衛星による り モ ー ト セ ン シ ン グ や ア イ ス レ ー ダ 観 測 が 盛 ん に お こ な わ れ て い る 。   しか しな がら 、氷 体内 での マイ クロ波 の伝播特性(伝播速度や反射、散乱、減衰 な ど) を規 定す る物 理量 であ る氷 結晶の 誘電率の測定値が、この周波数領域で極め て 乏 し い の が 現 状 であ る。 それ 故に 、こ れら のマイ クロ 波レ ーダ で得 られ た探 査 デ ータ を正 確に 解析 する ため には 、精度 の高い氷結晶の誘電率測定が必要とされて い た。 この 必要 性に 応え るた め、 本研究 では高精度の誘電率測定手法である空洞共 振 器 法 お よ び 開 放 型共 振器 法を 用い たシ ステ ムを作 製し 種々 の測 定を 行な った 。   本 論 文 は 、 マ イ クロ 波領 域で の氷 結晶 の誘 電的特 性を 氷結 晶の もつ 種々 の物 性

( 結晶 粒径 、結 晶方 位、 含有 不純 物等) との関連で明らかにした一連の研究の結果 を述べたものである。

  本論文は6章から構成されている。

  第1章では、本研究の背景と目的を述べる。

  第2章では 、本 研究 で開 発さ れ氷 結晶 の複 素誘 電率 の精 密測 定に使 用された、空 洞共振器法および開放型共振器法について詳細に述べる。

  第3章では不純物を含まない純粋氷結晶の比複素誘電率を温度範囲190K (‑83℃)か ら265K (‑8℃)にわたり測定した結果について述べる。5,10 GHzでは空洞共振器法 で 、33,39 GHzでは 開放 型共 振器 法によ り測定を行った。誘電率実数部は周波数に は 依存 せず 、ほ ぽ一 定値 にな った 。また 、誘電率実数部は温度上昇に対して増大し た 。こ れら につ いて 、氷 結晶 の赤 外分極 率(分子分極率)の非調和効果の寄与とし て論じる。誘電率虚数部は桁が10の―4乗から・3乗の非常に小さい値であり、その温度

(2)

依存性・周波数依存性が明らかになった。誘電率虚数部の測定値は過去に行われた 測定の温度・周波数範囲の空白を埋めるものであり、その温度依存性・周波数依存 性は主に赤外領域の格子振動による吸収帯の効果として論じる。また、温度降下に 伴い、周波数に対する誘電率虚数部の変化が大きくなることが明らかになった。こ のことから、赤外領域よりも低周波数側にも誘電分散による吸収が起こっている可 能性を示す。

  第4章では、開放型共振器法によって39 GHzでの氷結晶のc軸に対して平行な方 向と垂直な方向の誘電率を温度範囲194Kから262Kで精密に測定した結果について 述べる。マイクロ波帯の周波数での氷結晶の誘電異方性は極域雪氷圏でのアイス レーダや人工衛星搭載型のマイクロ波レーダおよび放射計で得られるりモートセン シングデータの正確な解釈に重要である。極めて精密な誘電異方性の測定は共振器 中のーつの単結晶氷試料からニつの共振ピークを同時に検出することにより達成さ れた。39 GHzでの誘電率実数部の異方性(△£´=£沈−£´I。)は252Kで0.0339土 0.0007(1.07%土0.020/0)で、僅かに温度依存性を示す。また、参照測定としてl MHzでも平行円盤電極を用いた容量法を使って誘電異方性を測定した。マイクロ波 帯で測定された誘電異方性の値は1 MHzの誘電異方性の値と非常に良く一致した。

39 GHzでの£磊およびsr亠。の絶対値はそれぞれ1MHzでの£鷹および£1。よりも小 さく、252Kでその差はおよそ0.044であった。この結果は、マイクロ波帯とMHz帯 の間に小さな誘電分散(配向分極の誘電分散に比べ)が存在するが、誘電異方性の 絶対値は周波数に依存していないことを示す。

  第5章では、イオン性不純物を含む多結晶氷の比複素誘電率を周波数5 GHzでの空 洞共振器法を用いて温度範囲‑80℃から−2℃にわたり測定した結果について述べる。

氷結晶に混入した不純物は塩としてNaCl、酸としてHN03、H2S04を用いた。不純物     丶

濃度はlO‑sM (molarity)からl0.3Mであった。多結晶氷の誘電率虚数部は、温度上 昇、不純物濃度増加に伴い増大した。‑80℃から温度を上昇させながら測定すると NaCl、HN03. H2S04を含む氷の誘電率虚数部の値はそれぞれの共晶点ー21℃、―43

℃、‑73℃、の直上で急激に増大した。この変化は多結晶氷に含まれている不純物が 共晶点より高温で液相を形成することに起因する。顕微鏡観察により、氷試料中の 液相は三つの結晶粒に挾まれる三叉粒界の管の中とニつの結晶粒の間の結晶粒界面 のレンズ形包含物として存在することを確認した。また、本研究で使用した試料で は液相の90%がレンズとして存在していることが分かった。不純物を含む氷の誘電 率虚数部の変化を支配する機構について、温度変化にともなう不純物液相の氷に対 す る 体 積 比 の 変 化 と 不 純 物 液 相 中 の 濃 度 の 変 化 か ら 議 論 す る 。   第6章では本研究を総括する。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

マイクロ波領域での氷結晶の誘電的性質と不純物効果

  南極や グリーン ランドな どの極域 雪氷圏の気 候や環境を広域に観測することは、地球規 模での 気候や環 境の変動 を解明す る上で非常 に重要になっている。何故なら極域氷床は、

その拡 大およぴ 縮小規模 、表面形 態、氷床の 流動速度などをパラメータとして、地球全体 の気候変動と複雑に相互作用をもっからである。これらのノヾラメータを観測するため、現 在、雪 氷圏にお いてマイ クロ波を 用いた人工 衛星によるりモートセンシングやアイスレー ダ観測が盛んにおこなわれている。

  しかし ながら、 氷体内で のマイク ロ波の伝播 特性(伝播速度や反射、散乱、減衰など)

を規定 する物理 量である 氷結晶の 誘電率の測 定やそれに基づく研究が、この周波数領域で 極めて 乏しく、 リモート センシン グデータの 解析が進んでいないのが現状である。それ故 に、こ れらのマ イクロ波 レーダで 得られた探 査データを正確に解析するためには、精度の 高い氷 結晶の誘 電率測定 が必要と されていた 。この必要性に応えるため、本研究では高精 度の誘 電率測定 手法であ る空洞共 振器法およ び開放型共振器法を用いたシステムを作製し 種々の測定を行なった。

  本論文 は、マイ クロ波領 域での氷 結晶の誘電 的特性として、マイクロ波リモートセンシ ングデ ー夕解析 にとって 重要な誘 電異方性、 温度依存性および地球環境変動の重要な指標 である 酸や塩等 の不純物 の効果に ついて明ら かにした一連の研究の結果を述べたものであ る。本論文の主要な成果は次の通りである。

@ 開放 型 共振器法 によって 、39GHzでの誘 電異方性 を極めて 高い精度(2U/o)で、か   つ 広 い 温度範囲( ―79℃〜―10℃)で測 定した。 この誘電 異方性は1 MHzの誘電   異方性 と良く一 致するこ とから、周 波数に依 存しない ことおよび温度変化が極め   て小さ いことが 明らかと なった。

◎マイ クロ波誘 電損失は 、低周波分 散である デバイ分 散および高周波分散である赤   外分散 による損 失の重な りから主と して決定 されるこ と、およぴ赤外より低い周   波 数 領 域 に も 新 た な 誘 電 分 散 が 存 在 し て い る 可 能 性 を 示 し た 。

◎地球 環境を表 す指標と して知られ る酸およ び塩を含 有する氷結晶の誘電損失は、

  不純物 の共晶点 温度で急 激に変化す ることを 明らかに した。この結果から、共晶   点より 高い温度 では酸や 塩が結晶の 境界面や 三叉粒界 で溶液を形成することを示   した。

  以 上のよう に著者は 、マイク ロ波におけ る氷結晶誘電率の精密測定を行い、誘電異方性 温 度変化お よび不純 物効果を 明らかにし たもので あり、応用物性学と応用物理学の進歩に 寄 与すると ころ大で ある。よ って著者は 、北海道 大学博士(工学)の学位を授与される資 格 あるもの と認める 。  coc

爾 郎

   

   

晋 健

耀

   

   

前 丸

授 授

教 教

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主 副

参照

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