博 士 ( 工 学 ) 志 垣 雅 文
学 位 論 文 題 名
モ ノ リ シ ッ ク マ イ ク ロ 波 集 積 回 路 の 回 路 設 計 に 関 す る 研究
学 位論文 内容の 要旨
今日 ,通 信機器 は我々 の生活 あるい は世界の経済活動に深くかかわり,その基盤を支えている。
あら ゆる通 信機器 は信 頼性の 向上, 小型化 等の 要求が あり, マイク ロ波回 路も これらの要求を満 たす べく多 くの試 みが なされ てきた 。
GaAs FETの 出 現に よ り , そ れ まで 立 体 回 路 で構 成 さ れ て いた マ イ ク 口 波帯 の回路 を平面 ヘ 集 積 化し , マ イ ク 口 波集 積 回 路 (MIC)と して 構 成 す る こと に よ り , 小 型化 ,高 信頼化 が実現 さ れ た 。 さ ら に モ ノ リ シ ッ クMIC(MMIC)に よ っ て, 従 来 考 え ら れな か っ た 新 しい 通 信 シ ス テ ム が実 現 す る 可 能 性が あ っ た 。 しか し ,MMICの 実 現 には 多 く の 技 術 的問 題を 解決し ていか な け れ ば な ら な い 。 す な わ ち ,GaAs FETを 均 一 に 大 量 に 作 製 す る 技 術 の 開 発, ま たMMIC に適 した新 しい回 路形 式と設 計手法 が必要 であ った。
本 研 究 は こ の よ う なMMICの 回 路 設 計 手 法 の 確 立 , 特 に 非 線 形 なGaAs FET素 子 を合 む 回 路 の 設計 方 法 , お よ びMMIC化に 適 し た 回 路形 式 の 提 案 と, こ れ ら の 回 路の 解析 手法の 確立を 行っ たもの である 。こ れらを 達成す るため ,汎 用的な 回路が 適する 部分と ,専 用の回路が必要な 部分 に分け て論じ る。
汎用 的な 使用が 適する 回路は ,従来 のマ イク口 波で行 われて いた 分布定 数を使 用した回路形式 では 実用化 に不十 分で ある。 このた め,デ ィジ タル型 の回路 を使用 し,チ ップ 面積の有効利用と 広帯 域化を 実現す る方 法を提 案した 。新た に提 案し, 実験し た回路 は直結 型帰 還増幅器,非安定 マル チバイ ブレー 夕型 発振器 ,分周 器,さ らに これら を組み 合わせ た回路 等で ある。さらにディ ジ タ ル型 回 路 と 分 布 定数 回 路 と の 融合 も 検 討 し た。 ま た,こ れらの 回路 設計に 必要なFETの 非 線形 等価回 路モデ ルを 提案し た。こ のモデ ルは キャリ ア濃度 がガウ ス分布 して いると仮定したモ デ ル と ス パ イ ス シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 用 に ―1/2乗 と 直 線 近 似 を 取 り 入 れ た モ デ ル で あ る。
直 結 型 増 幅 器 の 回 路 構 成 モ デル に っ い て は ディ ジ タ ルICの 回 路 で 使 用さ れ る バ ッ ファ ド FETロ ジ ッ ク 回 路を 基 本 に ア ナ口 グ 増 幅 器 とし て 改 良 した。 さらに ,より 広帯 域化す るため , マイ ク口波 回路の 整合 を高周 波側で 行い, 低周 波側で はディ ジタル 回路を 応用 した回路として広
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帯 域 化 を 図 る 方 法 を 提 案 し ,DC〜 6.4GHzの 可 変 利 得 増 幅 器 を 実 現 し た 。 より小型化 を目指し,MMICに適した発振器として非安定マルチバイブレー夕型発振器に関 する検討を行い,現在でも最も高い17GHzの発振を実現した。また,素子性能が同じ場合,ス タティック型より高速化できる回路としてダイナミック分周器の検討を行い,差動増幅器を使用 したダブルループ型ダイナミック分周器を提案した。これにより安定に,従来形式に比べて50% の高速化が図れるようになった。さらに,この分周器を利用し,初めて位相雑音をSi分周器と GaAs分周器を 同一条件で比較し,GaAs分 周器は無線システムに使用可 能な位相雑音をもつ ていることを明らかにした。また,アナ口グ分周器を用いた新しい概念による可変分周器を提案 し,基本的動 作を確認するため,1/3,1/4分周器を試作した。この結果,奇数分周できる 可 変分周器と して最高の6 GHzの動作を確 認した。これらのMMICを使用 して,ループ帯域 をlMHzと , 従 来 に ない 広 い帯 域と した 位 相同 期発 振器 を構 成 し, 低いQし かも たな い MMIC発 振器 でも 実 用に 耐え うる回路が構 成できることを示した。複合 機能をもったMMIC にも取り組み ,チップサイズl mm角に4GHzまで動作する直結型のコンバータをわが国で初め て実現した。
論文の後半部分は汎用化できない部分の回路にっいて論述している。まず,少量多品種のマイ ク 口波 回路 のMMIC化に 適し た回 路と し て, マス ター ス ライ ス型MMICの提 案 を行い,Ku 帯増幅器の試 作により実用性を確認した。さらに,ミリ波帯のMMICにも取り組み,技術試験 衛 星u型に搭載 する目的で回路開発を行っ た。これは衛星搭載用として 世界初のミリ波帯 MMIC増幅器で ある。ミリ波という高い周波数においてのパラメ一夕の測定方法とそれを利用 した設計手法 の研究を行った。ミリ波帯 では測定困難な大信号インピ ーダンスをMMICイン ピーダイス変換器を用いて測定する方法を提案し,実験により正確に測定できることを実証Lた。
搭載用として信頼度管理を確実なものとするため,ミリ波帯のパッケージを開発した。また,衛 星搭載用のス クリ―ニングにおいて38GHz帯で全数チップのRF検査を行うという手法を使つ た。
以上のよう に,本研究では,MMICにどのような回路を用い,どのような手法によって設計 を行えばよいかを提案し,実際に試作することにより検証した。この結果,多くの新しい回路構 成,測定方法,MMIC回路の設計概念を明確にした。
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学位論文審査の要旨
主査 教授 小 柴正則 副査 教授 伊 藤精彦 副査 教授 小 川吉彦 副査 教授 長 谷川英 機
半導体 の進歩 により ,従 来立体 回路で 作られ ていた マイ クロ波 回路は 半導体素子を使用した平 面 回 路(MIC)に よ っ て 構 成 さ れ る よ う に ナ ょ り , さ ら に ,モ ノ リ シ ッ ク化(MMIC)す る た め 研 究 が 開 始 さ れ た 。MMIC化 に は 従 来 のMICに は な い 新し い 回 路 形 式, 設 計 精 度 が 要求 さ れ て いた 。
本 論 文 は こ の よ う な 状 況 の 中 で ,MMICの 回 路 設 計 手 法 の 確 立 , 特 に 非 線 形 なGaAs FET 素 子 を 含 む 回路 の 設 計 方 法 ,お よ びMMIC化 に 適 した 回 路 形 式 の提 案 と, これら の回路 の解 析 手 法の 確立を 行った もので ある。
ま ず , 設 計 に 必 要 なFETの非 線 形 等 価 回路 モ デ ル を 提案 し て い る が ,こ れ はFETの 能 動 層 の キャ リア濃 度がガ ウス分 布して いる と仮定 したモ デルで ある 。また ,従来のマイク口波回路で 用 いら れてい たアナ ログ回 路方式 では なく, ディジ タル回 路で 使用さ れていた回路形式をマイク ロ 波 帯 で 用 い, よ り 小 型 で ,汎 用 性 の 高 いMMICの実 現 を 目 指 して い る。 新たに 提案し ,実 験 し てい る回路 は直結 型帰還 増幅器 ,非 安定マ ルチバ イブレ ー夕 型発振 器,分周器,これらを組み 合 わせ た回路 等であ る。さ らに, ディジタル型回路と分布定数回路との融合を検討するとともに,
直 結 型 増 幅 器の 回 路 構 成 は ディ ジ タ ルICの 回 路 で 使 用さ れ る バ ッ ファ ドFETロ ジ ッ ク 回 路 を 基 本に アナ口 グ増幅 器とし て改良 して いる。 分布定 数回路 によ る整合 を高周波側で行い,低周波 側 では ディジ タル回 路を応 用した 回路 とする ことに より広 帯域 化を図 る方法を提案し,DC〜6.4 GHzの可 変利 得増幅 器を実 現して いる 。
よ り 小 型化 を 目 指 し ,MMICに適 し た 発 振 器 とし て 非 安 定 マル チ バ イブレ 一夕型 発振 器の研 究 を 行 い , 現在 で も 最 も 高 い17GHzの 発 振 を 実現 してい る。ま た, 素子性 能が同 じ場合 ,ス タ テ ィッ ク型よ り高速 化がで きる回 路と してダ イナミ ック分 周器 の研究 を行い,差動増幅器を使用 し たダ ブルル ープ型 ダイナ ミック 分周 器を提 案して いる。 これ により 従来形式に比ベ50%の高速 化 が 図 れ る よう に な っ て い る。 さ ら に , この 分 周 器 を 利用 し て , 初め てSi分 周器とGaAs分周 器 の 位 相 雑 音を 同 一 条 件 で 比較 し ,GaAs分 周 器 は無 線 シ ス テ ムに 使 用可 能な位 相雑音 を持 つ
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ていることを明らかにしている。また,アナ口グ分周器を用いたまったく新しい概念による可変 分周器を提案している。この基本的動作を確認するため,1/3,1/4分周器を試作している。
この結果,奇数分周できる可変分周器としては最高の6 GHzの動作を確認している。これらの MMICを 組み 合わ せる こ とに より ,ループ帯域をlMHzと従来にない広い帯域とし た位相同 期発振器を構成 し,低いQしか持たないMMIC発振器でも実用に耐えうる回路が構成できるこ と を示 して いる 。複 合 機能 を持 ったMMICに も取 り組 み, チップサイズlmm角に4GHzの直 結型のコンバー タをわが国で初めて実現している。少量多品種のマイク口波回路のMMIC化に 適した回路とし て,マス夕一スライス型MMICの提案を行い,Ku帯増幅器 の試作により,そ の実現性を確認している。
ミリ波帯のMMICにも取り組み,技術試験衛星VI号に搭載する目的で回路開発を行っている。
これは衛星搭載 用として世界初のミリ波帯MMIC増幅器である。この開発の中でミリ波という 高い周波数においてのパラメータの測定方法と,それを利用した設計手法の研究を行っている。
すナょわち,ミリ波帯では測定困難な大信号インピーダンスをMMICインピ―ダンス変換器を用 い て 測 定 す る 方 法 を 提 案 し , 実 験 に よ り 正 確 に 測 定 で き る こ と を 実 証 し て い る 。 以上のように 本論文は,MMIC回路設計法に関して,ディジタル回路を融合した回路形式,
およびマス夕一スライス型の回路を使用した方法を提案するとともに,各種のモノリシックマイ ク口波回路を開発し,新しい回路構成法と設計法を確立したもので,マイク口波回路工学の進歩 に寄与するところが大きい。
よ っ て , 著 者 は 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る 。
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