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不浸透率と晴天時流量との相関に関する一考察

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Academic year: 2022

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(1)II‑029. 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月). 不浸透率と晴天時流量との相関に関する一考察 国土交通省 国土技術政策総合研究所 正会員 ○水草 浩一 国土交通省 国土技術政策総合研究所 正会員 末次 忠司 1.目的 昨今、山林や農地の宅地化進行や、道路網の整備に伴う地表面のアスファルト・コンクリートによる被覆化にともない、 従来よりも都市部およびその周辺の近郊地域における自然地面積が徐々に減少してきている。関係者からは都市内中小河 川における晴天時の流量が年々減少している、という指摘がされており、また晴天時流量の統計データからもそれを裏付 けるような傾向が見られる 1)。 以上2点の傾向に対して何らかの相関の可能性について推測できるため、既にこの類の研究は多方面で検討がされてい るが、それらのほとんどが特定の1河川に対してのみを対象としていた。そこで本考察においては、都内の複数中小都市 河川に関する経年的な流量および土地利用に関する様々なデータを用いて、流域の都市化の進展状況と晴天時流量の相関 に対して考察を加えることを目的とする。 2.流域設定 対象河川には、都内特別区および多摩地区を流域とする中小河川の、野川(上・下流) 、石神井川(上・下流) 、白子川、 落合川の4河川6区域を対象とした。具体的諸元については表−1に示すとおりである。 3.不浸透率の算定 不浸透率の算定手法については、大きく分けて以下の2手法が多くの研究者により提案されている 2),3)。 手法Ⅰ:航空写真や地図上の不浸透性面積を黒く塗りつぶしその面積を算出する直接的な手法 手法Ⅱ:流域を含む行政区の宅地(住宅地・商業地・工業地等)の統計的な資料を用いて算出する手法 手法Ⅰについては、航空写真の入手によって、地図上では判断が困難な駐車場・運動場等の不透水性の人工建造物も容 易に判別可能であることから、相当な精度で不浸透面積を算出することも可能である。手法Ⅱについては、経年的な統計 データの入手と、データ処理手法が確立されていれば、塗りつぶし等による解析者ごとの個人差を生じることなく算出を 行うことができる。なお、GIS データや細密数値情報等の電子データが数多く出版されているものの、過去のデータは未 整備の場合が多く、本考察での利用は困難である。 以上を踏まえ、本考察においては、手法Ⅰ・Ⅱを併用した手法を採用することとした。 手法Ⅰは、国土地理院発行の 2 万 5 千分の1地図を使用して道路・家屋を不浸透面積とする不浸透率の算出を行った。 一般には地図上の不浸透面積箇所を塗りつぶし、デジタイザによって算出する手法が用いられるが、本考察においては作 業効率を上げるため、流域全体を 0.5km メッシュに分割し、メッシュごとの不浸透面積の割合を図−1に示す見本を参考 に5段階評価で行った。なお、評価者ごとの個人差も評価するため、評価は2人で行った。 手法Ⅱは、東京都統計年鑑(東京都統計協会発刊)により各年の道路面積および宅地面積を得た。道路に関しては、不・ 難透水性とし、宅地に関しては、不浸透性・難浸透性を有する箇所の多くは屋根・建物部分であると考え、建坪率を用い て不浸透性・難浸透性を推定することとした。一般に建坪率は土地利用計画において制限されるものなので、経年的に大 きな変化はしないものと考えられることから、対象市区町村全体の建坪率は直近の10年平均を用いた。 表−1 対象河川諸元 対象河川. 野川. 野川(仙川). 対象流域. 源流〜 天神森橋. 源流〜 多摩川 合流点前. 48.0. 67.8. 対象流域面積(km2). 石神井川. 石神井川. 源流〜. 源流〜 区市界. 25.9. 台橋 49.4. 落合川 源流〜 黒目川 合流点前 14.6. 白子川 源流〜 別荘橋 6.6. 例: 1/25000 地図 0.5km メッシュ. 不浸透率. 10%. 25%. 40%. 55%. 70%. 図−1 地図からの不浸透率の分類(目安) キーワード : 都市化、晴天時流量、不浸透率 連 絡 先 : 〒305‑0804 茨城県つくば市旭1 国土交通省 国土技術政策総合研究所 水害研究室 Tel 029‑864‑2211(代) ‑57‑.

(2) 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月). 4.水文データ 水文データは、東京都環境局(旧環境保全局)発刊公共用水域の水質測定結果 に記載されている流量データを用いる。この観測は、晴天時の河川流における水 質検査が主な目的であることから、観測日およびその数日前まで遡って晴天であ ることが条件となっている。 一方、降水量と関連がある地下水位の変動が、晴天時流量に対して大きな影響 を与える可能性があるため、解析対象となる期間の標準偏差からはずれた年間降 雨量を観測した年の流量データは解析の対象外とした。. 40 35 不浸透率(%). II‑029. 30 25 20 15 10. 6.まとめ 本考察は、不浸透率の変化が晴天時流量に与える影響を比較し検討を加えた。 その結果、不浸透率が上昇すると流量は指数関数的に減少する傾向が明らかにな った。この手法を用いることで、将来の都市化にともなう流量変化の予測がある 程度可能であると考えられる。また、浸透施設の普及施策に対する評価への反映 も考えられる。 野川 ・合流点前 野川 ・天神森橋 石神井川・台橋 石神井川・区市境 落合川 ・合流点前 白子川 ・別荘橋. 不浸透率(%). 35 30 25 20 15 10 40 35 30 25 20 15 10 1970. 1980. 流量 (m /sec). 2000. ・合流点前 野川 野川 ・ 天神森橋 石神井川・台橋 石神井川 ・区市境 落合川 ・ 合流点前 白子川 ・別荘橋. (上段) (中段) (下段) 図‑2. 手法Ⅰ(評価者1) 手法Ⅰ(評価者2) 手法Ⅱ 不浸透率の経年変化 野川 ・合流点前 野川 ・天神森橋 石神井川・台橋 石神井川・区市境 落合川 ・合流点前 白子川 ・別荘橋. 100. 3. 100. 1990. 年(西暦 ). 101. 3. 流量 (m /sec). 101. 40. 不浸透率(%). 5.解析結果 手法Ⅰの結果を示す図−2(上段)および(中段)からは、経年的に不浸透率 が上昇する傾向を見いだすことができる。なお、1987 年において不浸透率が減少 している理由としては、用いた地図のコピー鮮度の違いが考えられる。手法Ⅱの 結果の図−2(下段)は、経年的に不浸透率が上昇していることがわかる。 手法Ⅰ・Ⅱを比較した場合、白子川と落合川については他河川よりも多少差異 が大きい。この理由として、2河川とも対象流域が狭いため、流域面積に対する メッシュが大きく、少しの算定違いが全体に大きく影響してしまった可能性が考 えられる。しかし両手法にさほど顕著な差異は生じておらず、いずれの手法を用 いても妥当な結果が得られることが判明した。 次に、図‑3に示す晴天時流量の変遷について着目すると、全ての河川におい て流量の減少傾向が見られるが、1975 年から 1985 年にかけて特に晴天時流量が 減少していることがわかる。不浸透率は一定の傾向で上昇しており、また対象地 域における下水道普及率は従来から高い整備率で一定のため、この期間に晴天時 流量の減少に影響する何らかの原因が生じたことが考えられる。 手法Ⅱによる不浸透率に対する流量を図‑4に示す。図中の線は最小二乗法に よる近似線である。この近似線の負の傾きが大きいということは、不浸透率の増 大化にともなう流量の減少割合が大きいことを示す。ここからは全体として一様 な減少傾向が確認できる。石神井川(台橋)と白子川(別荘橋)の傾きが他と比 較して多少緩いのは、比較的農地が多く残存している練馬区を含み、またその農 地(関東ローム)の浸透率が、一般の自然地よりも高いことが考えられる。. 10‑1 1970. 10‑1 1980. 1990. 2000 年(西暦). 【参考文献】. 20. 30. 40 不浸透率(%). 図‑4 不浸透率と晴天時流量の関係. 図‑3 晴天時流量の変遷. 1)飯田輝男;湧水と水循環;雨水技術資料,Vol.28,pp.31‑40,1998 2)富田正;石神井川流域の都市化による流出変化と水害の傾向に関する考察(第1報); 地理学評論,42‑10,pp.667‑678,1969 3)水越三郎,尊田継明;都市域からの流出計算(第1報),土木技術資料 8‑9,pp.11‑19,1966. ‑58‑.

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