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金属材料の逆変形機構と低サイクル疲労挙動に関す る研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

金属材料の逆変形機構と低サイクル疲労挙動に関す る研究

森野, 数博

https://doi.org/10.11501/3097529

出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第4章 破断延性値に及ぼす圧縮予ひずみの影響

4. 1 緒 日

前章においては、 第2章で示した試験片、 負荷装置および実験方法に基づき、

引張りと圧縮で単純変形曲線が異なる真空焼なまし銅を用い、 弾塑性域から大変 形域まで精度よくバウシンガ曲線を求め、 バウシンガ効果に及ぼす負荷順序の影 響について検討した。 その結果、 逆変形は、 弾塑性域においては逆変形 直前の加 工硬化状態に支配され、 大変形域においては逆変形方向の変形特性に支配される ことを明らかにし、 パウシンガ効果が転位の消滅により生じていることを示唆し た。 このことは、 逆変形を伴う挙動においては、 与えた予ひずみに応じた加工硬 化と逆変形に基づく加工軟化という相異なる二つの要因が関係していることを示 唆している。 そこで、 その関係をより明確にするため、 圧縮予ひずみ材の破断延 性値に注目した。

破断延性値は低サイクル疲労に密媛に関連しているといわれており、 また延性 破壊機構を解明するための指標としても重要な役割を果たしている。 そのため、

破断延性値に影響を及ぼす因子については多くのものが検討されてきた。 予ひず みの影響に関してもいくつか検討が行われている1 0 3) 1 2 0 )ー12 2) 1 2 5 )ー13 1 )が、 予

ひずみ材の破断延性値は予ひずみの与え方により傾向が異なっているように思わ れる。 なかでも逆変形挙動となる圧縮予ひずみ材に関しては、 これまで得られて いる破断延性値の傾向が必ずしも一致してはいないようである103)120)0 そこで 本章では、 広い範囲の圧縮予ひずみを与えた試験片について高精度のもとで引張

破断試験を行い、 他の予ひずみ材の延性低下傾向と比較することにより前章で得 た結果を明確にし、 バウシンガ効果の本質について検討を行おうとするものであ る。 素材には前章までと同じ単相材料の銅を用いた。

4. 2 使用材料、 試験片および実験方法

図4-1に用いた試験片形状を示す。 ここでは、 第3章と同じく圧縮予ひずみε p に応じて平行部の寸法(直径d。、 長さ1 0 )を変化させており、 1 0/ d 0は2として

いるが、 これは引暖変形開始時の試験部寸法をすべて処女材と同じ(た だし80%予 ひずみ材では試験機容量の関係から直径8mm、 長さ16mm)にするためである。

(3)

2.4.2(l)項で述べたように、 この形状を用いれば、 破断点の真ひずみすなわち破 断 延性値は平行部長さが十分長い試験片に比べてたかだか2%ほど低くなるにす

ぎず、 真の値のよい近似を与えることがわかる。 圧縮予ひずみは約15 %ずつ変形 させては平行部を繰返し切削することにより与えた。 再切削後の平行部の縦横比 はいずれも2としている。

素材には前章までと同じく銅を用いており、 図4-1の形状に加工した後、 8000C で1 hの真空焼なましを行い実験に供した。 材料の機械的性質を表4-1に示す。

表4-1 機械的性質(MPa,

%)

σo 2 σB σT 中

20. 6 215 597 75. 1

中: Reduction of area

M22

εp

。 1 0.0 2 O. 0 30.0

- -0.1 1 0.5 2 1 .0 3 1 . 0 - -0.2 1 2.0 24.0 33. Ü - -().3 1 3.5 27.0 3 G.4 - -O.G 1 5.0 3 0.0 3 ü . G - -0. ü 1 ü. 0 36.0 Ll 2 .0

図4-1 圧縮引張試験片形状

28

(4)

圧縮引張負荷装置も前章までと 同じものを用いた。 試験機にはオートグラフを 使用し、 変形速度一定CQ.2mm/min)で実験を行った。 破断11寺の最小断面直径は 輪郭投影機で測定した。 なお得られた破断延性値の信頼度を評価するため、 圧縮 予ひずみ時および引仮試験時の変形曲線を同H寺に求めている。 ひずみの測定には どちらも標点間距離が1 Q. Q m mの伸び計を用いており、 圧縮ではビッカース圧痕

を併用し、 引振りでくびれを開始した後は最小断面直径をフレードマイクロメー タで測定した。

4. 3 圧縮予ひずみに伴う破断延性値の低下

図4-2に破断延性値ε Fと圧縮予ひずみε pの関係を示す。 破断延性値は引援前の 平行部直径d 0と破断時における最小断面直径dFとから

ε F二2 InCdo/dF) C 4. 1)

で求めている。 図中には予ひずみを引張りで与えた場合のε Fの変化を一点鎖線 で 併記した。 これから、 ε Fは引暖予ひずみの場合とは異なり単調には減少していな

ーもe一一一一ー-.一一一一ー-i一一一一司r一一一一一

\ で

ρ」JUv e

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F\d・1I CJ

「d nvcJ r+し ρ」F' m e nu v' Fしnv

IL

仏コ

• Annealed after prestrained

1 0

Relation for���train

へ �

O. 8

。 0.2 0.4- 0.6 0.8

le pl

1 0

図4-2 破断延性値と圧縮予ひずみの関係

(5)

いことがわかる。 すなわち、 圧縮予ひずみが20%までの小さい予ひずみ範囲では ε Fは処女材の値よりわずかに小さくなっている程度であるが、予ひずみが20----25

%になると大きく低下し、 その後は予ひずみが大きくなるにつれゆるやかに減少 している。

これを他の予ひずみ材の破断延性値と比l絞したものが図4-3である。 さまざまな

変形を比較するため予ひずみにはM ises 型の相当ひずみεJを用いており、 また 異なる材料の値を比較するためε F とεJはいずれも各材料の処女材における破断 延性値ε f 0で無次元化している。 ここには予ひずみとして引張り、 せん断(試験部 断面内でひずみこう配がほぼ無視できるもの)1 3 1) "引暖軸と直交方向の圧縮1 2 8 ) および引張軸方向への圧縮1 2 0 )とスエージ加工1 0 3 )を選んだ。 図4-3からε Fの低 下の傾向は予ひずみの与え方に より異なることがわかる。 すなわち引張予ひずみ を与えた場合、 ε Fは容易に理解できるように予ひずみに対し直線的に減少してい る。 せん断予ひずみ(タフピッチ銅)1 3 1 )と直交方向圧縮予ひずみ(S 17 C材)1 2 8 )

を与えた場合、 両者は値に多少の差はあるものの傾向は似ており、 小さい予ひず

(0

O. 6

0.4-

。 O. 2

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0 Ohj i et a 1 .

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8

O. 4- O. 6 O. B 1 0

18 ,,-1/8

F・

図4-3

さまざまな予ひずみによる破断延性値の比較

(6)

み範囲では引振予ひずみを与えた場合とほぼ同様に直線的に減少しているが、 予 ひずみが大きくなるとε Fの減少度は小さくなり、 下に凸の変化をしている。

これに対し圧縮予ひずみを与えた場合、 タフピッチ銅を用いた大路らの値12 0 )

は予ひずみが30%を越えたあたりから著者らの値と差が生じており、 大きい予ひ ずみ域までほぼ直線的に減少している。 一方、 同じくタフピッチ銅にスエージ加 工を行った丹羽の値10 3 )は予ひずみが45%あたりでは著者らと同等の値をとって いるが80%と予ひずみが大きくなっても値はほとんど変化せず、 著者らの値と差 が生じている。 このように本研究で得た破断延性値の低下の傾向はどちらとも異 なっていることがわかる。 この差の原因は明確ではないが、 本研究では試験片に 円柱形を用いているのに対し大路らは砂時計形を用いていること、 丹羽の用いた 引張試験片はスエージ加工を行った円柱材から削り出していることなどが理由と して考えられる。 しかし、 いずれにせよ圧縮予ひずみを与えた場合、 他の予ひず み材よりすべての予ひずみ範囲において大きい延性をもつことは確かである。

4.4 破断延性値の低下要因

一般に、 破断延性値が低下する要因としては試料内部の初期欠陥体積率13 2 )

1 3 4 )や試料表面に発生する微小き裂31)125) 136)あるいはボイドやき裂の発生 ・ 成長に伴う内部損傷の変化120) 121) 135)や材料の加工硬化度の変化31)103) 120) 121) 127) 129) 130)などが考えられる。 このうち前二つについては、 行っている実 験条件を考えれば除外すべき要因であることがわかる。 残りの二つの要因につい

て検討するため圧縮予ひずみを与えた試験片を再び焼なまし、 破断延性値を求め た。 8000Cで1 h真空焼なましを行った場合の値を図4-2に・印で示す。 80%とか なり大きい圧縮予ひずみに至るまで、 破断延性値はほぼ完全に処女材の値に回復 していることがわかる。 これより、 圧縮予ひずみ銅の破断延性値の低下は加工硬 化が主因であろうと考えられるが、 念のため、 圧縮ひずみを与えることにより材 料内部にどの程度の 内部煩傷が生じているか顕微鏡観察を行った。

図4-4に圧縮ひずみを与えた場合の縦断面における組織変化の一例を処女材とと

もに示す。 ここには圧縮ひずみが60%と150%のものを示した。 試料は研磨後腐食 し、 金属顕微鏡で観察した。 腐食液には硝酸1Oc m 3と過酸化水素水14cm 3をエチ ルアルコール80cm 3に混ぜたものを用いている。 これから、 結晶粒は圧縮ひずみ

(7)

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Jち禾又丈に\; 示丈 し 〆Y〆寸

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20μm

(c)ε=

-1.50

図L-4 圧縮を与えた銅の縦断面の組織観察

(8)

が増加するにつれ大きく偏平化している様子がよくわかる。 また、 タフピッチ銅 には介在物として酸化物が含まれているが、 その大きさはかなり小さい[( a ) ]。

一方、 酸化物を起点として成長するボイドは圧縮ひずみが増すにつれ角ばってく るとともに次第に大きくなっている[( b )、( c ) ]。

圧縮に伴うこれらの変化をより詳細に 検討するため、 圧縮判!と平行に切断した 縦断面をダイヤモンド粒子で研磨し、 走査電子顕微鏡で観察した。 図4-5にこれを 示す。 また一部を拡大したものもそこに並べて示した。 基地材料である銅中に散 在している酸化物は150 %ときわめて大き い圧縮ひずみを与えても押しつぶされた 様子はほとんど見られない。 しかるに酸化物には割れが生じており、 その数は圧 縮ひずみが大きくなるにつれ増加している。 しかしながら酸化物の大きさはたか だか2 '"'-' 3μmであり割れl幅はサブミクロンのオーダーであること 、 しかも本研 究で検討の対象としている80 %予ひずみの範囲内では酸化物の割れも少なかった ことから圧縮ひずみを与えることによる内部損傷の変化はわずかであると考えら れ、 酸化物の割れが破断延性値の低下に及ぼす影響はきわめて小さいものと思わ れる。 これらのことから、 圧縮予ひずみを与えた銅の破断延性値の低下は加工硬 化が主因となり生じることが微視的観点からも裏づけられたものと思われる。

図4-6

圧縮を受ける介在物の割れモデル

(9)

ε= - 0.60

-‘

‘'"

4・ •

_-

10μm

ε二- 1.50

.‘

10μm

図-!-õ 圧縮を与えた銅の縦断面観察

2μm

」ー」

c o 万一応一×〈目。ω」

2μm

」ー・」

(10)

なおこれらの観察から、 等方性の硬い介在物が軟らかし、基地材料中に散在する ような材料が圧縮を受ける場合、 中に含まれる介在物の害IJれ方を模式的に描いた ものを図4-6に示すo 介在物は黒、 基地材料は白で示しているが、 介在物を含む柱 部の基地材料を特に斜線で示した。 大変形を受けた 基地材料は組から密な斜線の ように変形するが介在物はほとんど変化せず、 そのため介在物の側面にウスズミ で示すようなひずみの不整合が生じる結果圧縮とは垂直な方向に引猿力が生じ、

介在物は圧縮を与えた方向と平行に害IJれるものと考えられる。

4. 5

予ひずみ材における破断延性値の低下機構

バウシンガ効果は予ひずみの与え方により差が生じることが知られている。 た とえばねじりの逆変形と圧縮後の引張りによる逆変形の場合64 )、 図4-7に示すよ

σ

C-T Torsional

G t--ーレI

,F J' / / / / / / / ,F dF dF

E

図4-7

変形によるバウシンガ効果の差異

うに同じ相当予ひずみεJを与えると予ひずみが小さい範囲では予ひずみ曲線は ほぼ等しくなるが逆変形曲線は一致せず、 ねじりのほうが引張圧縮よりバウシン ガ効果が著しくなる。 この理由に関して、 西谷は逆変形におけるすべり帯を観察 することにより、 次のような結論を得た64 ) 引張圧縮ではτ ma l(の面が軸と450 をなすすべての面であるためすべり系の干渉が起こりやすいのに対し、 ねじりで

(11)

はτma xの面が車Ibに直角な面と判lを含む面に限られているので予ひずみl時のすべり 系と逆変形時のすべり系がほぼ等しくなり、 そのため転位の消滅が前者における より後者において起こりやすい。

転位の合体 ・ 消滅により加工軟化が起こり、 これがバウシンガ効果の発生原因 だといわれているIJ 7) 6 4 )が、 予ひずみ後の変形によって加わる本来の加工硬化度 ε H 0から変形の可逆性により転位の消滅を伴う加工軟化(負の加工硬化)分ε H ßを 差し引いたものが予ひずみ材の加工硬化度ε Hであるものと考えられ、 次式で表わ される。

ε H- ε H 0 ε H B (4. 2)

このように、 予ひずみ11寺と異なる方向に変形を行う場合、 これら二つの加工硬化 系が存在すると考えれば、 図4-3にみられた予ひずみの与え方が異なることによる 破断延性値の大小関係は容易に理解することができる。 図4-8にこの概念をもとに 考えた予ひずみ材における破断延性値の低下機構を示す。 予ひずみ材における本

来の加工硬化度ε H 0は予ひずみ後の変形と同じ方向の引張予ひずみ材に表れてお

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弘3

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O. 6

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。 O. 2 0.4- 0.6 0.8

le p.l/e同

図4-8 予ひずみ材における破断延性値の低下機構 1 0

(12)

り、 変形の可逆性に基づく加工軟化度ε H Bは引張予ひずみ材の値から回復した加 工硬化量がそれにあたる。 一方、 前節で述べたことからわかるように、 予ひずみ 材の破断延性値εFは材料固有の値である処女材の破断延性値ε r 0から予ひずみを 与えたことによる加工硬化度ε Hを差し引くことにより求められる。 すなわち

(4. 3) ε r- ε r 0 ε H

式(4.2)(4.3)からε Fは次のように表わされる。

ε r- ε r 0一 ε H 0 + ε H B (4. 4)

したがって、 ε r 0とε H 0が予ひずみの与え方には無関係に一定であることを考慮、

すれば、 予ひずみ材の破断延性値は予ひずみを与えたことによる加工軟化度ε Hß だけで変化し、 この値が大きいほど大きくなることがわかる。 転位の合体 ・ 消滅 に伴うこの値は主として予ひずみ時とその後の変形11寺における結晶のすべり系の 相互関係に依存するので変形方向が同ーである引張予ひずみ材では零になり、 せ ん断後の引張りでは互いのすべり系に角度差があるため転位の消滅は少なく、 そ の値は小さくなる。 引援制と直交方向に圧縮予ひずみを与えた場合もこれと同様

だと考えられる。 これに対し圧縮後の引張りでは互いのすべり系が似かよってい るため転位の消滅が多く生じ、 加工l欧化度が大きくなるものと思われる。 このこ とが、 圧縮予ひずみ材の破断延性値が他の予ひずみ材より大きくなる原因であろ うと思われる。

最後に、 4. 3節で指摘したように、 20---25%の圧縮予ひずみを与えたところで破 断延性値は大きく低下しているが、 この現象は図2-16にみられた二つのくびれ発 生点の存在と深く関係している。 すなわち、 20---25%以上の圧縮予ひずみを与え た銅では逆変形直後にくびれを生じるが、 くびれの著しい試験片ではそうでない ものに比べ転位の消滅が起こりにくく、 そのため加工軟化度が小さいことから破 断延性値が急減するものと考えられる。 ここにみられる選移現象はバウシンガ効

果が転位の消滅で起こっていることの裏づけになっているものと思われる。

4. 6 結

広司

圧縮予ひずみを与えた銅の破断延性値を求め、 バウシンガ効果に関する検討を 行った。 試験片には円柱形を用い、 広い範囲までひずみを変化させた圧縮予ひず み材の引張破断試験を高精度で行い、 他の方法でひずみを与えた予ひずみ材と比

(13)

較を行った結果、 次の結論を得た。

( 1 ) 圧縮予ひずみの増加に伴う銅の破断延性値は単調には減少しない。 破断 延性値は予ひずみが20----25%で急減するが、 すべての範囲において他の予ひずみ 材より大きい延性をもっ。

( 2 ) 圧縮予ひずみ銅における破断延性値の低下は本研究の範囲内では加工硬 化が主因である。

( 3 ) いろいろな方法で予ひずみを与えた材料を引張る場合、 二つの加工硬化

系が存在する。 一つはあとの変形によって加わる本来の加工硬化であり、 もう一 つは変形の可逆性により転位の消滅を伴う加工軟化であるo 予ひずみ材の加工硬 化度はその差で表わされる。

( 4 ) 加工軟化度は予ひずみ時とその後の変形11寺における結晶のすべり系の相 互関係に依存しており、 すべり系が近いほどその値は大きい。

( 5 ) 圧縮予ひずみ銅の引援破断延性値が他の予ひずみ材より大きくなるのは、

圧縮予ひずみ材においては、 他の方法で予ひずみを与えたものにおけるより、 引 張時のすべり系が予ひずみ時のすべり系により近いためである。

( 6 ) 圧縮予ひずみ銅の破断延性値が20----25%の予ひずみを与えたところで大

きく低下するのは、 圧縮予ひずみを与えたことにより生じる新しいくびれの存在 が関係している。 このとき、 くびれは逆変形直後に生じ、 そのため転位の消滅は

起こりにくい。

(14)

第5章 逆変形特性と加工軟化およびすべり系との関係

5.

1 緒 日

バウシンガ効果に関してはこれまでにもいくつかの考え方が提示されてきた。

本研究においても単純変形曲線が引援りと圧縮で異なる銅を用い、 第3章では、

弾塑性域から大変形域までパウシンガ曲線を精度よく求め、 パウシンガ効果に及 ぼす負荷順序の影響について検討し、 弾塑性域および大変形域における逆変形の 支配因子について一つの見解を示した。 また、 第4章では、 広い範囲までひずみ を変化させた圧縮予ひずみ材の破断延性値を精度よく求め、 他の予ひずみ材の延 性低下傾向と比較することにより、 予ひずみ材における破断延性値の低下機構に ついて一つの考えを提示した。 これらの概念は、 転位の消滅を伴うことが原因で バウシンガ効果が発生する4 7) 6 4 )との考えをいずれも支持しており、 その結果生 じる加工軟化は、 予ひずみ時と逆変形時におけるすべり系の優先方位の相互関係 に大きく依存することが考えられる。 そこで本章では、 3種類の炭素鋼の引張圧 縮および銅のねじりを行うことにより、 前章までに提示した逆変形機織が材料お

よび負荷方法に関係なく成り立つかどうか検証を行おうとするものである。

5.2 炭素鋼の引張圧縮によるバウシンガ効果 5. 2. 1 使用材料、 試験片および実験方法

処女材の単純変形曲線における引張りと圧縮の関係は材料により異なる87)0 こ れは、 引暖りと圧縮におけるすべり系の優先方位の相互関係に依存している1 3 7 ) といわれており、 優先方位がほぼ等しい鋼やアルミや黄銅では両者がほぼ一致し、

それがわずかに異なるといわれている銅1 3 7 )では両者は一致していない。 そこで、

ここでは銅とすべり系が異なる供試材として3種類の炭素鋼(S 25 C材、 S 45 C材、

S K 5材)を用いた。 このうちS 25 C材とS 45 C材はそれぞれ8800Cと8450Cで1 h の焼なましを、 S K 5材については9000Cで1 hの焼ならしを行ったものを所定の

形状に機械加工した後、 いずれも6000Cで1 hの真空焼なましを行い、 実験に供し た。 それらの化学成分を表5 - 1に、 機械的性質を表5-2に示す。 また、 引張りと圧

縮における単純変形曲線を比較したものを図5-1に示す。 よく知られているように 炭素量が増すにつれ強度が増加している様子がみられるが、 いずれの材料におい

(15)

表5-1 化学成分(wt,%)

C Si Mn P S Cu

S25C 0.26 0.19 0.36 0.020 0.017 0.06 S45C 0.44 0.20 0.79 0.024 0.015 TR.

SK5 0.85 0.28 0.34 0.015 0.005

表ふ2 機械的性質(MPa,%)

σ0.2 σB σT

Cu 20.6 215 597

S25C 235 430 789

S45C 354 637 1118

S K 5 510 969 1167

ゆ: Reduction of area

1500

Breaking point

cu I

・ Point of maximum load Q_

1000 ヒコ

500

。 0.2 0.4 0.6

Ni Cr

0.05 0.07 0.01 0.15

ψ 75.1 57.1 52.2 22.0

Tensile Compressive

0.8

ε|

Ni+Cr・

0.12 0.16

1.0

図5-.1 引張りと圧縮における単純変形曲線の比較

(16)

ても、 かなり大きい変形域まで両者は等しくなっていることがわかる。

逆変形に用いた試験片形状を図5-2に示す。 実験方法は前章までと同様に行って いる。 引張予ひずみ材からはワイヤカットで円柱状の試験片を切り出し、 繰返し 潤滑法により圧縮を行った。 圧縮予ひずみは繰返し切削法に より与えているが、

どちらの予ひずみ材の場合も、 逆変形開始1I寺の平行部寸法が処女材とほとんど同 じになるよう予ひずみごとに平行部の寸法を変化させている。

引張圧縮負荷装置も同じものを用いており、 ひずみの測定 方法などもすべて同 様である。 試験 機にはオートグラフを使用し、 平行部のひずみ速度がほぼ同じに なるように変形速度一定CO.2mm/min、 1.0mm/min)で実験を行った。 なお 実験は室温で行っており、 ひずみH寺効はほとんど無視でき るものと思われるが、

念のため、 予ひずみ後21時間以内には逆変形を行った。

5. 2. 2 iJ!ìi塑性域におけるバウシンガ効果

図5-3に引暖圧縮におけるバウシンガ曲線を示す。 予ひずみは引張りではくびれ を開始する直前のひずみまで、 圧縮では通常より大きい30%程度まで 与えており、

バウシンガ曲線はいずれも12%までのものを示した。 なお最高荷重点以降の引張 変形山線では、 銅の場合と問機にくびれ部の 形状を測定し、 応力値を補正した。

これから、 引張予ひずみ後の圧縮と圧縮予ひずみ後の引張りではともに変形抵 抗が低下し、 バウシンガ効果を生じているが、 これらのバウシンガ曲線は負荷順 序を逆にしてもほぼ一致していることがわかる。 これは、 処女材の単純変形曲線 が引暖りと圧縮で互いに 等しいため、 それらが一致するものと理解することがで きる。 このことをより明確にするため、 逆変形時の応力σを逆変形直前の除荷応 力σpとの比σ/σpで表わしたバウシンガ曲線の一例C Iε p=0.041)を図5-4に示 す。 ここでは図3-2 、 3-3に示した銅のパウシンガ曲線も併記したが、 異なってい たこつの曲線がきわめて よく一致している。 このことは、 3.3節で提示した弾塑性

域における逆変形機構の考え方、 すなわち、 再負荷直後の逆変形曲線は逆変形直 前の加工硬化状態に依存すること、 また負荷順序を逆にし異な る逆変形曲線が得 られても逆変形機構は変わらないことを意味しているが、 ここで用いたいずれの 炭素鋼の場合も負荷順序に関係なく両者はよく一致しており、 炭素鋼の場合にも この槻念が適用でき ることがわかる。

(17)

Tellsdc prestraìn M22

εp

do

COlnpressive prestrain M22

εp

。 -0.01 ー0.02 -0.04 ー0.08 ー0.12 -0.16 ー0.20 -0.25 -0.30 -0.40 -0.60

Lーーーーーーーーー

0 6.00

do 6.00 6.06 6.12 6.25 6.50 6.77 7.04 7.33 7.71 8.10 8.95 10.94

0.01 6.03

12.00 12.12 12.24 12.50 13.00 13.54 14.08 14.66 15.42 16.20 17.90 21.88

0.02 6.06

24.00 24.12 24.24 24.50 24.99 25.52 26.03 26.59 27.30 28.01 29.53 32.82

図5-2 試験片形状

0.04 6.12

108.00 108.12 108.24 108.50 108.99 109.52 110.03 110.59 111.03 112.01 113.53 116.82

0.08 6.24

2 8

(18)

Point of maximum load Simple compressive Simple tensile

T→C C→T

S25C

750

nu nu FD

(CnL2)一

250 b

0.3 0.4 0.1 0.2

ε

1000

Simple compressive Simple tensile

Point of maximum load

T→C C→T

S45C

一回止工)一む一

0.3 0.2

I EI O. 1

Simple compressive

Point of maximum load SK5

Simple tensile

1500

0...

2

- 1000

500 b

0.3 0.4 0.2

。 0.1

ε

炭素鋼の引張圧縮におけるバウシンガ曲線 図5-3

(19)

1.25

止1.00

b

b

0.75

0.50 0.25

εp I = 0.04

0.02

竺ジジ二三二

T→C C→T

|ε|

0.06

図5-4 弾塑性域のバウシンガ曲線に及ぼす負荷順序の影響

また、 図5-4からはパウシンガ効果の大きさが材料により異なっていることもわ かる。 その特徴を明確にするため、 図3-6で定義したパウシンガひずみε 日( n ) (た だしn σ R/σ p)でバウシンガ効果の大きさを表わした。 図5-5に n = O. 75の場 合について求めた結果を示す。 これから、 バウシンガひずみは大きい予ひずみ範 囲まで負荷順序に関係なくよく一致しており、 すべり系の優先方位が引張りと圧 縮でともに等しい炭素鋼においても、 上で示した概念が成り立つことがわかる。

また、 炭素鋼では一般に銅よりバウシンガ効果が大きいこと、 同じ炭素鋼で も炭 素量の多い方がバウシンガ効果が大きくなることもこれからよくわかる。 パウシ ンガひずみは予ひずみが10%前後になるとほぼ一定になっていることから、 その 値を用いて炭素量との関係を求めたものを図5-6に示した。 バウシンガひずみは炭 素量が増すとやや増加率が増す傾向がみられるが、 これは、 絶対値は多少小さめ

であるが、 五弓ら4 7 )の5 %予ひずみを与えた焼なまし材の結果と同じ傾向を示し ており、 熊倉75 )の結果とも一致している。

(20)

。 0.1 0.2 0.3

εp

I

0.4

図5-5

いくつかの材料におけるバウシンガひずみの比較

0.08

n

0.50

o 0.75

× Gokyu et al.

(n=0.75)

/

×

- 0.04

0.02

×

。 0.3 0.6 0.9

C (%)

1.2

図5-6

炭素鋼におけるパウシンガひずみと炭素量の関係

(21)

5. 2. 3 大変形域におけるバウシンガ効果

図5-7に引張予ひずみを与えた後の圧縮変形曲線を示し、 図5-8に圧縮予ひずみ

を与えた後の引張変形曲線を示す。 ここではいずれも原点を一致させた ものを示 した。 そのため、 図が煩雑にな ることから、 全体の傾向が表われていると思われ る二つの予ひずみ材でバウシンガ曲線を代表させている。 予ひずみにはいずれの 場合もほぼ同程度のものを選んだ。 変形曲線の求め方あるいは表示の方法などは 3. 4. 1項で述べた銅の場合と全く同様に行っている。 また、 比l絞のため図3-17およ

び図3-18に示した銅のパウシンガ曲線も併記した。 なお基準となる単純変形曲線 には、 3.4節で得た結果から、 逆変形を支配すると考えられる逆変形方向の単純変 形曲線を用いている。

これから、 大変形域におけるバウシンガ曲線と基準曲線との関係は、 負荷順序

に関係なくほぼ同様の傾向を示していることがわかる。 このことは、 すでに示し たように大変形域では逆変形方向の変形特性により逆変形が支配され、 この傾向 は負荷JI国序に関係なく成り立っとする考えが妥当であることを示している。 また、

大変形域でのバウシンガ曲線はおおむね基準曲線と同等かそれ以上の変形を して おり、 与えた予ひずみの影響はずっと後まで残っていることがわかる。 この関係 は材料により異なっていることもわかる。 すなわち、 炭素鋼では炭素量が増すほ ど基準曲線に対するバウシンガ曲線のずれが増加しており、 バウシンガ効果が著 しくなっている様子がうかがわれる。 また、 これらのずれ量は、 一般的には銅よ り炭素鋼の方が大きくなっているように見受けられる。 このような大変形域での 材料によるバウシンガ効果の差異は、 前項の弾塑性域で得ら れた傾向と全く同じ である。

5.2.4 圧縮予ひずみ材の破断延性値

図5-9にS 25 C材とS K 5材の破断延性値ε Fと圧縮予ひずみε pの関係を示す。

図中には図4-2に示した銅の値も併記した。 また、 予ひずみを引張りで与えた場合 の破断延性値の変化も一点鎖線で示している。 なおここでは、 与えた圧縮予ひず

みと破断延性値の関係をより明確にするため処女材の値であるε F 0を基準にとり、

それからの変化として破断延性値を示した。

これから、 圧縮予ひずみを与えた場合、 引張予ひずみ材の場合のように与えた

(22)

1500

Simple Compressive (εp = 0)

500

• • • • • • • • • • • • • • • • • • ・

ro 仏

三1000

b

• • • • • • • • • • • • • • , • ・'

。 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

- Plastic strain

図5-7

引張予ひずみ材の大変形域における圧縮変形曲線の比較

1500

x Braeking point Simple Tensile

(εp = 0)

ヒコ

a, •

主1000

、-〆

。 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

Plastic strain

図5-8

圧縮予ひずみ材の大変形域における引張変形曲線の比較

(23)

0.2

o LL

→ ←(;:?c

új

I

0.0

LL

új

-0.2

ベ ノ之、ド 卜.... "

ずで)戸ぞF1A

o Cu

-0.4

。 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

P Cし

図5-9

圧縮予ひずみ材の破断延性値の比較

予ひずみ分だけ延性が減少してはおらず、 また、 銅にみられたような特異性のあ る結果ともかなり傾向が異なっていることがわかる。 予ひずみの増加に伴う炭素 鋼の破断延性値の変化量はいずれも銅より大きくなっているが、 特に顕著な特徴 は、 予ひずみを与えているにもかかわらず処女材より逆に延性が増加している点 であり、 この増加の傾向は炭素量の多いS K 5材で著しい。 このような破断延性 値の傾向は弾塑性域および大変形域でみられた逆変形挙動と全く同じである。 特 に、 前項で示した大変形域における基準曲線とパウシンガ曲線とのずれ量の傾向 は、 ここで得られた破断延性値の変化の傾向と比較的よい一致を示しているよう に見受けられる。

圧縮予ひずみを与えることにより、 炭素鋼では処女材より逆に延性が増加する 特徴はすでに大路ら1 2 1 )により指摘されている。 しかしながら、 予ひずみに伴う 破断延性値の変化についてはいくぶん結果が異なっている。 ここで重要なことは、

予ひずみの小さい領域では破断延性値の増加量が与えた予ひずみ量とほぼ等しく なる点である。

圧縮と引張りのすべり系がどちらも同じ材料の場合、 圧縮予ひずみ材で破断延

(24)

性値が増加する理由を図5-10に模式的に示した。 すなわち、 この場合、 圧縮時に 生じた転位はそれと同じだけ引張ることにより消滅すると考えるとその後の変形 挙動は処女材と同じになるものと考えられ、 結果的には与えた予ひずみ分だけ延 性が増加することになる。 また、 ある程度予ひずみが大きくなると逆変形により 消滅しない転位も存在するようになり、 それだけ延性は低下することになる。 こ のように考えると、 得られた実験結果の傾向は合理的に説明できる。 このことは、

第4章で示したように、 バウシンガ効果の本質が転位の消滅にあることを裏づけ ているものと思われる。

5. 2. 5 考 察

Stress

Plastic strain

図5-10 圧縮予ひずみ材における破断延性値の模式図 (圧縮と引張りのすべり系が同じ材料の場合)

材料が異なる場合、 予ひずみを与えた後の引暖圧縮における逆変形特性は、 す でに述べたように弾塑性域から大変形域におけるバウシンガ曲線あるいは圧縮予 ひずみ材の破断延性値のいずれにも共通した特徴を有している。 すなわち、 銅よ り炭素鋼の方が逆変形量は大きく、 炭素鋼 では炭素量が多い方が大きな逆変形を

示した。 このときノ〈ウシンガ効果の本質は転位の消滅に基づく加工軟化にあり、

このことは、 これまでの検討により間違いのないところであろうと思われる。 で は、 逆変形に伴う転位の消滅は何が原因で生じるのであろうか。

前章までの検討では、 予ひずみ11寺と逆変形H寺のすべり系の相互関係に依存する

(25)

と考えると合理的に説明できることを示した。 そこで、 材料が異なる場合にもこ の考えが適用できるかどうか、 以下検討を行うことにする。

図5-11に銅における引張りと圧縮のすべり帯を示す。 これから、 すべり帯の形

状は引張時と圧縮時で全く同じにはなっておらず、 両者はわずかに異なっている ことがわかる。 すなわち、 引張りでは直線的で段差が少なくいくぶん長めのすべ り帯が鋭く伸びているのに対し、 圧縮ではそのような直線状のものに混じってい くぶん wavy で段差のある短めのすべり帯が存在している。

一方、 炭素鋼では、 引張りと圧縮のすべり系は変わらないといわれている。 図

5 -12に引張圧縮を受けるS 25 C材とS K 5材のすべり帯を示す。 引張りを受ける

S 25 C材ではすべりは結晶粒内で生じており、 形状はわずかに wavy である。 そ のため、 引張りと同じだけ圧縮ひずみを与え、 ひずみを巨視的に零にしてもAl

合金62 )のようにはすべり帯は消滅せず、 むしろわずかに増加気味でさえある。 こ の傾向は、 これまで観察された低炭素鋼での結果6 4 )とも合致している。 一方、 S

K 5材ではすべり帯は平行なパーライト層に沿って発達しており、 直線状に長く 延びている。 このように、 すべり帯の発達方向が拘束されているS K 5材では、

引張りと同じだけの圧縮ひずみを与えると、 すべり帯は同じ経路をたどらざるを 得ないことから容易に消滅することが予想されるが、 図5-12からその様子がよく 観察される。

これらのことから、 炭素量の違いによるパウシンガ効果の差異は、 転位の消滅 が予ひずみ時と逆変形時のすべり系の相互関係に依存するとする考えが妥当であ ることを示している。 一方、 炭素鋼と銅のバウシンガ効果の差異は、 すべり系の 相互関係も一因であろうとは思われるが、 それ以外の要因も考慮することが必要 だと思われる。 銅では積層欠陥エネルギが小さいため、 変形を与えることにより 拡張転位ができやすい。 拡張転位は逆変形H寺に障害となりやすく、 そのため転位 の消滅が起こりにくくなることが考えられるが、 これが炭素鋼より銅のバウシン

ガ効果が小さくなる主因であろうと思われる。

このように、 逆変形に伴い転位が消滅する原因としては、 予ひずみ時と逆変形 H寺におけるすべり系の相互関係への依存性および従来から指摘されている材料ご との積層欠陥エネルギの大小関係47) 4 8 )が大きな要因となっているように思われ る。

(26)

ε= 0.04

ε= -0.04

図ふ11 銅における引張りと圧縮のすべり帯

cozoω」一万一回一×〈

30μm

l |

(27)

ε=

0.04

ε= 0.04

S25C

ε= 0.04.-0.04

S K 5

cozoo」一万一応一一〉〈〈

20μm

| |

ε=

0.04.-0.04

図5-12 引張圧縮を受ける炭素鋼のすべり帯の比較

(28)

5. 3 銅のねじりによるバウシンガ効果

5. 3. 1 使用材料、 試験片および実験方法

処女材のねじりでは変形方向が異なることにより単純変形曲線に差が生じると は考えられず7 1 )、 �I G長りと圧縮で変形曲線が異なる銅においてもこの関係は変わ らないものと思われる。 そこで、 ここでは銅を用いて薄肉円管のねじり試験を行

った。

用いた試験片形状を図5-13に示す。 ここでは肉厚を均一にするため、 わずかに 穴径を小さくした中央部のリーマ穴に治具をはめこんで試験片を回転させ、 その 外形を仕上げた。 ねじり試験機には自作したものを用いた。 試験部には20.0m m の 距離にビ ッカース圧痕を打ち、 それらの点にねじれ角測定装置を取り付け、 標 点聞の相対角度を測定した。 またねじり速度は、 試験片外周における相当ひずみ 速度が引張圧縮の場合とほぼ等しくなるようにした。

図5-13

ねじり試験片形状

5. 3. 2 弾塑性域におけるバウシンガ効果

図5-14にねじりの単純変形曲線を示す。 ここにはせん断ひずみが120%あたりま で描いであるが、 そこまで良好な変形状態が保たれているわけではない。 薄肉円

管では、 座屈させることなく変形させうるせん断ひずみの限界は50%程度7 1 ) (こ の限界値は試験片の寸法により異なるが、 通常このような実験に用いられる試験 片の場合)であるといわれており、 ここでの結果も信頼がおけるのはそのあたりま でであろうと思われる。 また図中には、 引張りと圧縮の単純変形曲線も参考のた

め併記した。 ここで、 引張りにおける最高荷重点以降の値はくびれ部の形状を考

(29)

500

b

可EEE・「d

+しρ」vv ハu

nu tvA スu nH m e nuJ AU AU

・11MV -­ い'

「d nD nu

nHU ハυ門4U(何仏三)

'"

。 o . 2 o . 6 0 . 8

|ε台|

図5-14

単純変形曲線の比較

0.4- 1 0

慮、した補正値であり、 ねじりではM ises 型の相当応力および相当ひずみを用いて

いることから、 圧縮以外は値の正確さに対する信頼度が必ずしも高いとはいえな いが、 およその傾向は示しているものと思われる。 これから、 変形の小さい聞は すべての曲線がほぼ一致しているが5 %あたりで引張りがずれ始め、 15%あたり では圧縮とねじりも異なり始めることがわかる。 これらは引張り、 圧縮、 ねじり の順に変形しやすくなっている。 この結果はOFHC銅を用いたT ome らのもの1 3 7 ) あるいは純鋼を用いたW i tze 1のもの73 )と同様の傾向を示しており、 圧縮曲線 が少し低めにでている点だけが異なっている。 圧縮とねじりの関係はWat ts らと

S herby らが別々に求めたもの13 8 )に類似している。

得られたバウシンガ曲線を図5-15に示す。 図中には処女材の単純ねじり曲線を 併記した。 応力とひずみにはM ises 型の相当応力と相当ひずみをそれぞれ用いて いる。 予ひずみは座屈の限界7 1 )に近い約25% (せん断ひずみで43% )まで与えた。

バウシンガ曲線は8 % (せん断ひずみで14% )までのものを示している。 なお変形 曲線は、 引張圧縮の場合と同じく第l象限にまとめて示した。

これから、 銅のねじりにおける単純変形曲線は右回転時と左回転時でほとんど

(30)

Monotonic Left turn

R→L L→R Right turn

300

\-1

100

0.2 0.3 0.4- 1γVJざ O. 1

銅のねじりにおけるバウシンガ曲線 図5-15

0.015

0.90 A 0.50 0.75

A v

v

T→C 』‘

C→T Torsional

Cu

n

0.01

0.005

(cy白川W

0.4 ε

P

0.2 0.1

銅の引張圧縮とねじりにおけるパウシンガひずみの比較

図5-16

(31)

等しくなっており、 また右回転後の逆転と左回転後の逆転ではともに変形抵抗が 低下しバウシンガ効果を生じていることがわかる。 また、 両者は負荷順序に関係 なく互いにほぼ一致し、 等しくなっていることがわかる。

5.3.3 考 察

ねじりと引張圧縮のパウシンガ効果を比較したものを図5-16に示す。 予ひずみ

とバウシンガひずみにはM ises 型の相当ひずみを用いている。 これから、 ねじり におけるパウシンガひずみの傾向は、 すでに5. 2.2項で述べた引張圧縮のものとほ

ぼ同じであることがわかる。 ただし、 パウシンガひずみの大きさは両者で異なっ ており、 引張圧縮よりねじりの方でバウシンガ効果が大きくなっているが、 これ は西谷ら64 )がS 10 C材を用いて得たのと同じ結果である。 このことはすでに4. 5

節で詳しく述べたように、 負荷方法が異なることによる予ひずみ時と逆変形時の すべり系の相互関係を考えれば首肯できることから、 パウシンガ効果が転位の消 滅を伴うものであるとの考えが負荷方法を変えた場合にも成り立つことを裏づけ ているものと思われる。

5.4 結 目

前章までに提示した逆変形機構を検証するため、 引張圧縮を受ける銅とはすべ

り系の相互関係が異なるものとして3種類の炭素鋼の引暖圧縮および銅のねじり を選び、 材料および負荷方法の影響について検討した結果、 次の結論を得た。

( 1 ) 引援圧縮による逆変形特性は弾塑性域、 大変形域から破断時まで傾向が

共通している。 このとき、 銅より炭素鋼の方が逆変形量は大きく、 炭素鋼では炭 素量の多い方が大きな逆変形を示す。

( 2 ) 圧縮予ひずみの小さい範囲では炭素鋼の破断延性値は与えた予ひずみ分 だけ増加する。 これは転位の消滅が原因であり、 この傾向は炭素量の多いもので 著しい。

( 3 ) 本研究で提示した逆変形機構は材料および負荷方法に関係なく成立する。

これらはパウシンガ効果の本質が転位の消滅にあることをいずれも示唆している。

( 4 ) 逆変形に伴う転位消滅の原因は、 予ひずみ時と逆変形時のすべり系の相

互関係への依存性と材料のもつ積層欠陥エネルギの大小関係が関係する。

(32)

第6章 逆変形特性と黒鉛介在物との関係

6.

1 緒 日

本研究ではバウシンガ効果の本質を明らかにするため、 特に圧縮に注目し、 第 2章で示した大変形を可能にした試験片と負荷装置を用い、 単純変形曲線が引振 りと圧縮で異なる銅を用いてかなり大きい予ひずみ範囲までパウシンガ曲線を高 精度に求めることにより、 第3章では弾塑性域から大変形域に至るパウシンガ変 形機構を提示し、 第4章では圧縮予ひずみ材の破断延性値を求めることにより、

バウシンガ効果の本質が転位の消滅に基づく加工軟化にあり、 これは予ひずみ時 と逆変形時のすべり系の相互関係に依存することを明らかにした。 これらを受け 第5章では、 これらの概念が、 内部に欠陥のない材料については多くの場合に適 用できることを確認した。 そこで、 本章では内部に欠陥を含む材料として球状黒 鉛鋳鉄を選び、 欠陥材の場合にもこの概念が適用できるかどうか検証を行おうと するものである。 また、 引張圧縮における単純変形およびそれらの逆変形におい て黒鉛が果たす役割についても検討を行い、 球状黒鉛鋳鉄の逆変形特性について

検討を行った。

6. 2 使用材料、 試験片および実験方法

用いた球状黒鉛鋳鉄はフェライト系(F C D 400)と/ぞーライト系(F C D700)で

ある。 材料は鋳放し状態のものを用いた。 図6-1に顕微鏡組織写真を示す。 組織は 基地の大部分がフェライトあるいはパーライトで占められており、 パーライト系 では黒鉛の周囲をフヱライトが取り囲んだブルズアイ組織になっている。 ここで

はこれらをF D 1およびP D 1と称することにする。 それらの化学成分を表6-1に、

機械的性質を表6-2に示す。 また黒鉛性状については画像処理装置を用いて行った。

黒鉛のしきい値は12μmとしている。 得られた黒鉛性状に関する諸特性を表6-3に 示す。

逆変形に用いた試験片形状は前章までのものとほとんど同じである。 これを図 6-2に示す。 引長予ひずみ材からはワイヤカットで円柱状の試験片を切り出し、 繰

返し潤滑法により圧縮を行った。 また圧縮予ひずみは繰返し切削法により与えて いるが、 どちらの予ひずみの場合も逆変形開始時の平行部寸法が処女材と同じに

(33)

表6-1

化学成分(wtぅ%)

C Si Mn P S iVIg Cu

FDI 3.83 2.25 0.34 0.023 0.014 0.034 0.03

PDI 3.68 2.07 0.355 0.021 0.007 0.038 0.599 S23C 0.26 0.19 0.36 0.020 0.017 0.06

SI�3 0.85 0.28 0.3-1 0.01:) 0.005

表6-2

機械的性質(�\lIP(L, (/('))

σ0,:2 σ13 Jl E H" (1/20)

FDI 309 434 19.1 16.6 X 10,1 ぽ158

PDI -163 813 6.6 16.6 X 10,1 減287

S23C 235 -130 3/.1 20.6 X 10'1 142

SI�3 510 969 22,0 20.6 X 10,1 288

J! : R('dttctioll of孔l"C'λ * : Hλ1・clll ('Sぉof lllatl'Ïx

表6-3

黒鉛性状

D/) I/,y

(μ1/1)

( 1/

llU7/,'2-) (%)

CYc) )

FDI 24.6 180 8.81 75.4

PDI 28.9 131 8.38 81.2

" t

.?

,、4

‘'

•• • 4・

司圃'司・F

司.

d諭-

フェライト系(FCD�100) パーライト系(FCD700) 図6-1

球状黒鉛鋳鉄の組織写真

100μm

(34)

なるように、 予ひずみごとに平行部の寸法を変化させている。

引張圧縮負荷装置には前章までと同じものを用いた。 実験方法もこれまでと全 く同様である。 試験機にはオートグラフを使用し、 変形速度一定CO.2mm/min、

l.Omm/min)で実験を行った。

Tensile prestrain M22

136

COlnpressive prestrain M22

図6-2

逆変形開始時の引張圧縮試験片形状

(35)

6.3

球状黒鉛鋳鉄の引張りおよび圧縮による単純変形

6. 3. 1 単純変形曲線

図6-3に引張りおよび圧縮の単純変形曲線を示す。 実験値は引張りの方が圧縮よ

り2倍程度ぱらつきが大きかったが、 予想されるほど大きくはなく、 10%程度に 納まった。 単純変形曲線ではどちらも引張りの方が圧縮より強度が低くな ってい ることがわかる。 その減少率はひずみ が大きくなるにつれて増しており、 6 %ひ ずみあたりで10%ほど低下した値に漸近している。 また、 FDIでは圧縮ひずみ が100%以上になるまで破壊せず、 P D 1 でも約45%まで耐えており、 圧縮に対し てはかなり大きい延性をも っているo 引張りにおいてもある程度の延性があり、

特にFDIでは通常の延性材料と同じく、 15%近傍でくびれがみられた。

6.3.2 引張圧縮の単純変形における黒鉛の役割

球状黒鉛鋳鉄において、 引張りと圧縮で変形曲線が異なる原因が黒鉛にあるこ とは明らかであろう。 そこで、 黒鉛の影響を明らかにするため、 基地がFD 1あ るし1はP D 1とほぼ同じ材料としてS 25 C材とS K 5材を比較材に選び、 単純変

1500

(の仏一注)

Point of maximum load

x Breaking point

500 1000

POI

ヒコ

Tensile Compressive

。 0.1 0.2 0.3 0.4

|ε|

0.5

図6-3 単純変形曲線の比較

(36)

形曲 線を比較した。 このとき、 単に視覚上基地を同じにするだけではなく、 硬さ も同程度にすることで定量的な議論が行えるよう、 比較材を調質した。 S 25 C材 は8800Cで1 hの焼なましを、 S K 5では9000Cで1 hの焼きならしを行った後図

6-2の形状に仕上げ、 その後どちらも6000Cで1 hの真空焼なましを行っている。

それらの化学成分および機械的性質を表6-1、 6-2に併記した。 得られた材料の基 地硬さはどちらもほぼ同程度になっている。 これらの単純変形曲線を図6-3に併記

した。 どちらも引援りと圧縮で単純変形曲線はよく一致していることから、 球状 黒鉛鋳鉄においても、 基地の材料強さは引張りと圧縮で等しいものと考えられる。

このことから、 球状黒鉛鋳鉄にみられる引張りと圧縮の強度の差はそれらに対す る黒鉛の役割が異なるためであろうと考えられる。 すなわち、 黒鉛は引張りに対 しては荷重を受けもたない空孔として作用するのに対し、 圧縮に対しては荷重を 受けもつ充てん物として作用すると考えると、 上に述べた現象がよく理解できる。

それを明確にするため、 同じひずみを生じるときの圧縮応力σ cに対する引張応 力σ Tの比|σ T/σ c Iを塑性ひずみとの関係で求めたものを図6-4に示す。 どちら

1.1

o

b 1.0

0.8

0.7 å 0.05

o

FDI

・ PDI

0.1 0.15

I Plastïc strain I

図6-4 単純変形における引張応力と圧縮応力の比較

0.2

(37)

の材料 もほぼ同じ挙動を示しており、 5 %ひずみの近傍でほぼ一定値に漸近して

いる。 参考のため、 黒鉛面積率f gを画像解析装置により求めた値を図中に示した。

このとき、 黒鉛のしきい値には4μmを用いている。 これから、 どちらの材料と も|σ T/σ c Iの値は黒鉛面積率よりわずかに大きめではあるがほぼ同程度の値に なっていることがわかる。 このことは、 黒鉛は引張りに対しては荷重を受け もた ない空孔として作用することを示しており、 圧縮に対しては荷重を受け もつ充て ん物として作用することを意味している。

6.4

球状黒鉛鋳鉄の引張圧縮による逆変形

6. 4. 1 バウシンガ曲線

引援圧縮のバウシンガ曲線をF0 1については図6-5、 6-6に、 PDIについて

は図6-7と図6-8にそれぞれ示した。 応力とひずみはすべて真の値をとっており、

変形曲線は原点(荷重が零の点)に対しそれぞれ点対称移動し、 第l象限にまとめ て示している。 これらの変形曲線は処女材の引張りを除けばさほど大きなばらつ きはみられなかった。

これから、 引張りと圧縮の 負荷順序を変えるとバウシンガ曲線は大きく異なっ ていることがわかる。 しかしながら、 引張後の圧縮曲線ではどの予ひずみにおい て も弾塑性域では単純引暖曲線を越えておらず、 大変形域では引張変形曲線を越 え単純圧縮曲線に近づいている。 一方、 圧縮後の引張曲線では多少明白さに欠け はするが、 大変形域においては単純引張曲線を越えていないことがわかる。

弾塑性域のバウシンガ曲線については、 5.2. 2項で示した方法により、 負荷順序 の影響について検討した。 予ひずみが2 %と12%のFD 1の例を図6-9に示す。 逆 変形直前の除荷応力を基準にとって示したバウシンガ曲線は、 予ひずみの広い範 囲でよく一致していることがわかる。 このことは、 弾塑性域では逆変形直前の加 工硬化状態が逆変形を支配し、 その逆変形機械は負荷順序に関係なく成り立つこ とを意味している。 この挙動はFDIとP D 1で共通していることから、 これは 逆変形の基準となる単純変形曲線が引張りと圧縮で異なっていることに起因して いると考え れば、 弾塑性域から大変形域に至る複雑な挙動 も容易に理解すること ができる。 このことは前章までに提示した弾塑性域と大変形域に関する逆変形機 構の概念が内部欠陥材の場合に も適用できることを意味している。

(38)

FDI

1000

800

600 (ω仏三)一

200

0.3 0.4 0.1 0.2

ε

引彊予ひずみ後の圧縮変形曲線(F

D 1 ) 図6-5

Simple compressive FDI

800

600

200 1000

[L C

2

ヒコ

0.3 0.4 0.1 0.2

ε

圧縮予ひずみ後の引張変形曲線(F

D 1 ) 図6-6

(39)

1500 0..

2

1000 ヒコ

500

1500

Qの-

、国...

1000 ヒ〉

500

PDI

Simple compressive Simple tensile

0.1 0.2

0 ,

0.3

1ε|

0.4

図6-7 引張予ひずみ後の圧縮変形曲線(P D 1 )

I PDI

0.1 0.2

0.3

iε|

0.4

図6-8 圧縮予ひずみ後の引張変形曲線(P D 1 )

(40)

4, '

'

|εp I

=

0.02 |εp I

=

0.12

T→C C→T

0.02 0.04

I Plastic strain

図6-9 �ììl塑性域におけるバウシンガ曲線の比較(F Dい

。 0.06

6.4.2 圧縮予ひずみ材の破断延性値

図6-10に球状黒鉛鋳鉄の破断延性値εFと圧縮予ひずみε pの関係を示す。 図中

には予ひずみを引張りで与えた場合のεFの変化を一点鎖線で併記した。 これから、

球状黒鉛鋳鉄ではεFにおいては特にF D 1で多少ぱらつきがみられるが、 材料の もつ特徴はある程度うかがうことができる。 すなわち圧縮予ひずみを与えた場合、

引張予ひずみを与えた場合のように与えた予ひずみ分だけ延性が減少してはおら ず、 また、 第4章の銅にみられたような特異性のある結果ともかなり傾向が異っ ていることがわかる。 破断延性値はフェライト系のF D 1の方がパーライト系の

P D 1より当然大きくなっているが、 予ひずみの小さい範囲において、 いずれも

処女材よりほぼ与えた予ひずみ分だけ延性が増加しており、 この傾向はP D 1で 著しい。 しかし予ひずみが10%あたりからεFは低下しはじめ、 数%程度の値に漸 近していることがわかる。

これらの特徴が表われる原因を明らかにするため、 すでに6.3.2項で述べた基地

がF D 1あるいはP D 1とほぼ同じ材料であるS 25 C材とS K 5材を比較材に選

(41)

0.3

LL

り 0.2�

0.1

。 0.2

o FOI

・ POI

0.4

P

刈6-10

破断延性値と圧縮予ひずみの関係

0.6

び、 基地硬さが同程度になるように調質することにより、 検討を行った。

図6-11にS25 C材とS K 5材の破断延性値をFDIおよびPD 1と比較したも のを示す。 黒鉛を含まない基地だけの材料の方が当然のことながら破断延性値は 大きくなっている。 図6-12にそれぞれの処女材の値ε f 0を基準にとった場合の破 断延性値ε Fの変化をまとめて示した。 これから、 すでに5. 2. 4項で述べたように、

S 25 C材とS K 5材の破断延性値は処女材より増加しており、 その増加量は与え た圧縮予ひずみとほぼ等しくなっていることがわかる。 それに対しFDIとPD Iでは、 増加の程度はそれらほど大きくはないが、 明らかに基地の材料に対応し て予ひずみ分だけ同様に増加しようとする傾向がみられる。 炭素鋼におけるすべ り帯は図5-12に示したようにわずかに wavyなため可逆性は必ずしもよくはない が、 すべり系は圧縮と引張りで変わらないといわれていることから、 5,.._, 10%程 度の比較的小さい予ひずみ範囲であれば圧縮予ひずみ11寺に生じた転位は引張りに より消滅する47) 6 4 )と考えるとこの現象は合理的に理解することができる。 この ことはすでに5.2.5項で述べたが、 基地の材料がそれらと同じである球状黒鉛鋳鉄

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