6.
1 緒 日
本研究ではバウシンガ効果の本質を明らかにするため、 特に圧縮に注目し、 第 2章で示した大変形を可能にした試験片と負荷装置を用い、 単純変形曲線が引振 りと圧縮で異なる銅を用いてかなり大きい予ひずみ範囲までパウシンガ曲線を高 精度に求めることにより、 第3章では弾塑性域から大変形域に至るパウシンガ変 形機構を提示し、 第4章では圧縮予ひずみ材の破断延性値を求めることにより、
バウシンガ効果の本質が転位の消滅に基づく加工軟化にあり、 これは予ひずみ時 と逆変形時のすべり系の相互関係に依存することを明らかにした。 これらを受け 第5章では、 これらの概念が、 内部に欠陥のない材料については多くの場合に適 用できることを確認した。 そこで、 本章では内部に欠陥を含む材料として球状黒 鉛鋳鉄を選び、 欠陥材の場合にもこの概念が適用できるかどうか検証を行おうと するものである。 また、 引張圧縮における単純変形およびそれらの逆変形におい て黒鉛が果たす役割についても検討を行い、 球状黒鉛鋳鉄の逆変形特性について
検討を行った。
6. 2 使用材料、 試験片および実験方法
用いた球状黒鉛鋳鉄はフェライト系(F C D 400)と/ぞーライト系(F C D700)で
ある。 材料は鋳放し状態のものを用いた。 図6-1に顕微鏡組織写真を示す。 組織は 基地の大部分がフェライトあるいはパーライトで占められており、 パーライト系 では黒鉛の周囲をフヱライトが取り囲んだブルズアイ組織になっている。 ここで
はこれらをF D 1およびP D 1と称することにする。 それらの化学成分を表6-1に、
機械的性質を表6-2に示す。 また黒鉛性状については画像処理装置を用いて行った。
黒鉛のしきい値は12μmとしている。 得られた黒鉛性状に関する諸特性を表6-3に 示す。
逆変形に用いた試験片形状は前章までのものとほとんど同じである。 これを図 6-2に示す。 引長予ひずみ材からはワイヤカットで円柱状の試験片を切り出し、 繰
返し潤滑法により圧縮を行った。 また圧縮予ひずみは繰返し切削法により与えて いるが、 どちらの予ひずみの場合も逆変形開始時の平行部寸法が処女材と同じに
•
表6-1
化学成分(wtぅ%)C Si Mn P S iVIg Cu
FDI 3.83 2.25 0.34 0.023 0.014 0.034 0.03
PDI 3.68 2.07 0.355 0.021 0.007 0.038 0.599 S23C 0.26 0.19 0.36 0.020 0.017 0.06
SI�3 0.85 0.28 0.3-1 0.01:) 0.005
表6-2
機械的性質(�\lIP(L, (/('))σ0,:2 σ13 Jl E H" (1/20)
FDI 309 434 19.1 16.6 X 10,1 ぽ158
PDI -163 813 6.6 16.6 X 10,1 減287
S23C 235 -130 3/.1 20.6 X 10'1 142
SI�3 510 969 22,0 20.6 X 10,1 288
J! : R('dttctioll of孔l"C'λ * : Hλ1・clll ('Sぉof lllatl'Ïx
表6-3
黒鉛性状D/) I/,y
(μ1/1)
( 1/
llU7/,'2-) (%)CYc) )
FDI 24.6 180 8.81 75.4
PDI 28.9 131 8.38 81.2
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d諭-フェライト系(FCD�100) パーライト系(FCD700) 図6-1
球状黒鉛鋳鉄の組織写真100μm
なるように、 予ひずみごとに平行部の寸法を変化させている。
引張圧縮負荷装置には前章までと同じものを用いた。 実験方法もこれまでと全 く同様である。 試験機にはオートグラフを使用し、 変形速度一定CO.2mm/min、
l.Omm/min)で実験を行った。
Tensile prestrain M22
136
COlnpressive prestrain M22
図6-2
逆変形開始時の引張圧縮試験片形状
6.3
球状黒鉛鋳鉄の引張りおよび圧縮による単純変形
6. 3. 1 単純変形曲線
図6-3に引張りおよび圧縮の単純変形曲線を示す。 実験値は引張りの方が圧縮よ
り2倍程度ぱらつきが大きかったが、 予想されるほど大きくはなく、 10%程度に 納まった。 単純変形曲線ではどちらも引張りの方が圧縮より強度が低くな ってい ることがわかる。 その減少率はひずみ が大きくなるにつれて増しており、 6 %ひ ずみあたりで10%ほど低下した値に漸近している。 また、 FDIでは圧縮ひずみ が100%以上になるまで破壊せず、 P D 1 でも約45%まで耐えており、 圧縮に対し てはかなり大きい延性をも っているo 引張りにおいてもある程度の延性があり、
特にFDIでは通常の延性材料と同じく、 15%近傍でくびれがみられた。
6.3.2 引張圧縮の単純変形における黒鉛の役割
球状黒鉛鋳鉄において、 引張りと圧縮で変形曲線が異なる原因が黒鉛にあるこ とは明らかであろう。 そこで、 黒鉛の影響を明らかにするため、 基地がFD 1あ るし1はP D 1とほぼ同じ材料としてS 25 C材とS K 5材を比較材に選び、 単純変
1500
(の仏一注)
• Point of maximum load
x Breaking point