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(2) BCC 鉄合金の疲労特性に関する転位論的研究

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(1)BCC鉄合金の疲労特性に関する転位論的研究 著者 著者別表示 雑誌名 学位授与番号 学位名 学位授与年月日 URL. 桜田 栄作 Sakurada Eisaku 博士論文要旨Abstract 13301甲第4562号 博士(工学) 2017‑03‑22 http://hdl.handle.net/2297/48049. Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja.

(2) BCC 鉄合金の疲労特性に関する転位論的研究. Study on fatigue properties of BCC iron alloys based on dislocation theory 専攻:機械科学専攻. 次世代鉄鋼総合科学 氏名:桜田 栄作. 主任指導教員名:潮田 浩作. Abstract: The aim of this study is to clarify the fatigue crack initiation behavior of ferritic steels as bcc poly crystalline materials, and to construct a crystal plasticity model for designing crack initiation in high strength steels. To accomplish the aim, the following investigations has been conducted; 1) explication of dominant factor determining fatigue crack initiation life in practical high strength steels based on dislocation theory, 2) crystal plasticity analysis of cyclic deformation in bcc Fe-16mass%Cr alloy with huge grain, 3) study on the relationship between fatigue crack initiation life and active slip systems considering their interaction, 4) crystal orientation dependency of cyclic deformation behavior and evolution of dislocation structure in Fe-3mass%Al single crystal. From the results of these investigations, it is concluded that material hardening rule, which reflects dislocation interaction between each active system, may be applied to the constitutive equation of materials. However, for establishing the analytical methodology for quantitatively predicting the fatigue crack initiation life, future work is needed on the identification of criteria and the elucidation of mechanism for persistent slip band formation, which is crucial to. understand the fatigue crack initiation behavior.. 1.. 緒言 近年、CO2 排ガス規制と安全規制の強化を背景に、自動車車体の軽量化と安全性の両立が進められており、. 今後、加工性と耐久性に優れた高強度鋼板の開発が求められる。自動車部品は複雑な成形履歴を経て製造さ れる。そのため、部品耐久性を向上させる鉄鋼材料の開発には、成形による微視的な損傷状態を考慮した金 属組織設計を行うことで達せられる。近年、金属組織の微視的な損傷状態あるいは力学状態を評価する手法 として、結晶塑性論を取り入れた FEM(Finite Element Method)解析(以後、結晶塑性 FEM と呼ぶ)技術が開発さ れている. 1). 。今後、鉄鋼材料の開発には、このような計算力学を活用して金属組織設計を行うことが必要と. なると考えられる。そこで本研究では、優れた耐久性を有する自動車部品の提供を可能とする鉄鋼材料の開 発のため、結晶塑性論を取り入れた評価技術を確立していくことを大きな目標とする。 しかしながら、これまで結晶塑性 FEM は、結晶回転を伴う大変形現象を対象として発展しており、疲労破 壊現象にどのような材料モデルを適用すべきかは、十分に明らかでない。また、疲労変形挙動へ結晶塑性 FEM を適用した研究例は、fcc あるいは hcp 金属を取り扱うものがほとんどで 2)、これらは塑性ひずみ分布状態と き裂発生位置の比較など、定性的な評価技術の領域に留まっている。定量的な評価技術としての確立のため には、疲労き裂発生現象を支配する因子あるいはき裂発生のクライテリアの計算力学上の表現手法を明らか にする必要がある。これまで、観察実験を基盤とした研究では、多結晶材であってもそれを構成する個々の 単結晶としての振る舞いが、疲労き裂発生挙動を支配していることが分かっている 3)。そのため、fcc 金属で は単結晶を用いた研究が進められ、疲労き裂の核となる固執すべり帯(Persistent Slip Band を略し、以後、PSB と呼ぶ)の形成応力は、金属によらず一定の値となることが明らかとされた。この応力に至るまでの繰返し変 形挙動は結晶方位依存性を持ち、転位間相互作用の違いによる転位下部組織の特徴によって説明できること が明らかとされつつある. 4). 。さらに、疲労変形中の転位間相互作用と積層欠陥エネルギーとの関係、疲労寿. 命に及ぼす固溶元素の影響などの転位論的な解釈が進んでいる。一方、bcc 金属である Fe は積層欠陥エネル ギーが高く、容易に交差すべりを生ずる特徴がある. 5). 。この特徴が疲労き裂寿命にどのような影響を及ぼす. かなど、bcc 金属の疲労き裂発生現象を支配する因子やそのクライテリアは十分に明らかになっていない。 そこで、本研究の大きな目的を達成するため、本論文では Fe 合金の疲労き裂発生挙動を支配する因子の結 晶塑性論的および転位論的な解明をし、結晶塑性 FEM の材料モデルの指針を得ることを目的とした。. 1.

(3) 2.. 学位論文の章構成 前節で述べた目的から、本論文は以下のように構成した。. 第 1 章 :緒言 背景および本研究の目標を示し、従来研究の課題に基いた本論文の目的と構成を述べた。. 第 2 章:実用鋼の疲労き裂発生寿命の転位論的解明 実用高強度鋼の強化機構と疲労寿命の関係の調査を行った。その結果、疲労き裂発生に至る繰返し硬化-軟 化寿命は、転位運動の抵抗に支配され、繰返し降伏応力で規格化することで、強化機構によらず統一的に整 理できたことから、計算力学上で強化機構を微視的降伏応力の違いとして表現すればよいことが分かった。. 第 3 章:Fe-16%Cr 合金多結晶材の疲労変形の結晶塑性 FEM 解析 第 2 章で得られた知見に基づき、従来の結晶塑性 FEM モデルを用い、金属組織内の微視的な力学状態と 疲労き裂発生現象との比較調査を行った。その結果、観察結果と計算結果の比較では、活動すべり系の不一 致が認められ、材料構成式および硬化発展則に課題があることを明らかにした。. 第 4 章:Fe-16%Cr 合金多結晶材の疲労き裂発生寿命と活動すべり系の関係 第 3 章で明らかとなった課題に基づき、bcc 構造を有する Fe 合金多結晶材の疲労き裂発生寿命に及ぼす活 動すべり系の影響を調査することで、微視的な力学状態は主として弾性異方性に起因しており、疲労き裂発 生寿命は本質的に単結晶としての転位間相互作用の種類に支配されることを明らかにした。. 第 5 章:Bcc-Fe-3%Al 合金単結晶材の繰返し変形挙動と転位下部組織の発達 bcc-Fe-3%Al 合金単結晶材の繰返し変形挙動と転位下部組織の発達挙動との関係を調査した。単結晶の疲 労変形挙動や繰返し降伏応力の結晶方位依存性は活動すべり系の数に支配されており、結晶塑性モデルにお ける材料構成式は、不動転位の形成頻度に基づいた表現する必要があることを明らかにした。. 第 6 章:結言 第 5 章までに得られた知見をまとめ、本論文での研究課題と将来展望を述べた。. 6.

(4) 3. 実用鋼の疲労き裂発生寿命の転位論的解明 3.1 目的 自動車用鋼板には強度と成形性の両立のため、さまざまな強化機構が利用されるようなった。例えば、足回 り部品では、V, Ti, Nb, Mo などのマイクロアロイを活用した金属組織設計がなされ 6)、延性が必要な場合、 マルテンサイト等を利用した複相組織設計がなされる 7)。そこで、繰返し変形挙動と疲労き裂発生寿命に及 ぼす強化機構の影響を明らかにするため、Fe-C-Ti 合金と Si で固溶強化させた DP 鋼の 2 種類の供試鋼を用 い、繰返し変形中の硬化-軟化挙動とその応力依存性を比較調査した。さらに、疲労破断に至るまでの転位下 部組織の変化を TEM 観察した。これらの結果から、強化機構の違いによる疲労き裂発生寿命の違いを転位 論的視点で考察し、高強度鋼の疲労き裂発生寿命支配因子を抽出した。. 3.2 実験方法 Table 1 に示した組成を有する 2 種の DP 鋼板(Si を添加し固溶強化させた A 鋼、Ti と Nb を複合添加し 析出強化させた B 鋼)を試作した。試作鋼を軸力疲労試験片に加工し、MTS 社製 10 ton 疲労試験機にて、 応力比 R=-1、周波数 f=15 Hz の応力振幅一定条件で疲労試験を Table 1. Chemical compositions of Steel A and B 実施した。疲労試験中はひずみゲージにて繰返しひずみを計測 Chemical Composition (mass%) Mechanical Properti Sample し、繰返し硬化-軟化挙動を調査した。疲労停止材および破断材 C Si Mn Ti Nb YS(MPa) UTS(M Steel A 0.072 0.94 1.84 tr. tr. 510 810 について、転位下部組織の観察を行い、繰返し変形挙動と転位 Steel B 0.046 0.02 1.46 0.10 0.02 693 785 下部組織の形成過程との比較調査を行った。 b). 1.0E-02 -2 10. 470MPa 446MPa. 1.0E-03 -3. 405MPa. 1.0E-04 -4. 365MPa. 1.0E-05 -5. a). d). Strain. 510MPa. 1.0E-03 -3 10. 395MPa 1.0E-04 -4 10. 430MPa. 10. 1 1.E+01. 10. 2 1.E+02. 3 1.E+03 10. 4 1.E+04 10. 10. 5 1.E+05. 1.0E-06 -6 10 1.0E+00 100. 6 1.E+06 10. Number Cycles, N/Cycles Number ofofCycles, N/Cycles. 470MPa. 10. 1 1.0E+01. 10. 2 1.0E+02. 10. 3 1.0E+03. 10. 4 1.0E+04. 10. 10. 5 1.0E+05. 6 1.0E+06. Number Cycles, N/Cycles Number of ofCycles, N/Cycles. Fig. 1. Effect of applied stress amplitude on the change in cyclic plastic strain with number of cycles of c) a) steel A and b) steel B. b). 1μm 1μm. 1μm. Fig. 2. TEM micrographs showing dislocation structure of fatigue fractured specimen off)a) steel A and b) steel B a) 1.2. b). 1.21.2. DP鋼. A 開発鋼 B. 3.4 小括 実用高強度鋼において疲労き裂発生に至る繰返し硬化-軟化寿 200nm 200nm 200nm 命は、転位運動の抵抗に支配され、繰返し降伏応力で規格化する ことで、強化機構によらず統一的に整理できた。計算力学上は、 この強化機構を微視的降伏応力の違いとして表現すればよいこと が明らかとなった。. 7. 200nm 200nm. 1.1. 1.01.0. 1.0. 0.90.9. 0.9. Nh 0.8. 1.11.1. 200nm. 0.80.8. N. Δεp. 0 1.E+00. σa=550MPa. Δεp. 1.0E-05 -5 10. Stress Amplitude/Cyclic Yield Stress. 1.0E-06 -6. f=15Hz,R=-1 Stress Controlled Fatigue Test. Steel B. Stress Amplitude/Cyclic Yield Stress Stress Amplitude/Cyclic Yield Stress. Strain, Δε PlasticStrain, Δε Plastic p p. σa=486MPa. f=15Hz,R=-1 Stress Controlled Fatigue Test. Strain, Δε PlasticStrain, Δε Plastic p p. 3.3 結果及び考察 10 破断寿命に至るまでの繰返し塑性ひずみ 10 の変化を Fig, 1 に示した。鋼種によらず負荷 後は塑性ひずみが減尐する繰返し硬化域を 10 示した後、塑性ひずみが増加する繰返し軟化 10 を示した。この硬化から軟化に遷移する繰返 し数は応力値が高いほど短寿命となる。また、 10 10 この繰返し硬化寿命は、いずれの応力でも析 出強化させた Ba) 鋼が長い。転位下部組織の b)c) b) 観察から、繰返し硬化域ではタングルした転 a) 位の増加、軟化域では Cell 組織の形成が認 められた。なお、析出強化させた B 鋼では、 Fig. 2 のように Cell 形成が遅延してた。さ らに、転位の観察の結果、TiC にピンニング されることで移動障害となり、長寿命となっ たことが分かった。 Fig.6この転位の移動障害は繰 Controlled 1μm 1μm1μm 返し降伏応力の違いとして現れる。そこで、 d) e) e)f) 繰返し降伏応力で規格化した応力と繰返し 硬化寿命の関係を調査した結果、Fig.3 のよ うに強化機構によらず統一的に繰返し硬化 寿命が整理された。 1.0E-02 -2. 1.0E-01 -1 10. Steel A. Δεp. 10. 1.0E-01 -1. Stress. a). N. N 0.7 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03 1.0E+04 1.0E+05 1.0E+06 Number of Cycles at the cyclic hardening, Nh/Cycles. Fig. 3. Effect of cyclic yield stress on cyclic hardening life.. 0.70.7 1.0E+03 1.0E+03. 1.0E+01 Number ofofCyC Number.

(5) 4. Fe-16%Cr 合金多結晶材の疲労変形の結晶塑性 FEM 解析 4.1 目的 前節の微視的降伏応力は、鉄鋼材料の強化機構による内部応力を表現するものであり、降伏状態は金属組 織形態に由来した組織内部の不均一な応力にも依存する。この多結晶を構成する結晶間の相互作用は疲労き 裂発生挙動を支配する一つの因子と考えられる。そこで、結晶塑性 FEM を用いて、Fe-16%Cr 合金の多結 晶材の疲労変形状態を解析し、実験結果によって得られた疲労き裂発生挙動との関係を明らかにしていく。 さらに疲労き裂発生挙動に及ぼす活動すべり系の相互作用の影響を調査し、その結果を踏まえ、疲労き裂発 生現象を表現可能な結晶塑性 FEM の課題について明らかにすることを目的とする。 4.2 解析モデルおよび実験方法 Cottrell の転位 glide モデルによれば 8)、各すべり系のせん断ひずみ速度は式(1)で示される。疲労変形中 には、転位は他の転位と固着反応をすることで、移動が阻害される。そこで、完全等方硬化を再現した硬化 則による材料構成式を用いて、弾性異方性に加え塑性異方性を再現できる結晶塑性 FEM 解析を行う。.   * V    H    sinh  kT   kT .   b 2 exp . ・・・(1). Fe-13%Cr の組成を有する bcc 粗大多結晶材から 4 点曲げ切欠き疲労試験片を作製し、疲労試験を行った。 試験片表面の SEM 観察および EBSP 解析によって結晶粒形態と方位を同定し、実験に用いた試験片表面の 組織を再現した FEM 解析モデルを作製した。この解析モデルに実験と同じ負荷を与え、計算結果と実験結 果との比較を行った。 4.3 結果及び考察 疲労試験の結果、疲労き裂が発生位置は、粒界や結 晶粒内と試験片によって異なった。例えば、Fig. 4 の ように、切欠き底に粒界がある試験片 1 では粒内とな り、試験片 2 では粒界となった。また、粒界の無い試 験片 3 では切欠底の右側でき裂が発生した。結晶塑性 解析では、いずれの試験片でも数繰返し後には疲労き 裂の発生位置で、塑性ひずみが累積していくことが再 現できた。このような塑性ひずみ分布は結晶の配置や 異方性に由来しており、粒界でも粒内でも個々の単結 晶の変形とそれらによる拘束で生まれる不均一な塑性 ひずみ分布によって疲労き裂の発生位置が決まると考 えられる。また、本結果は既存の結晶塑性 FEM モデル では疲労き裂発生位置を再現することが可能であるこ とを示している。ところが、き裂近傍のすべり線と計 算上の活動すべり系とは対応しない結果が得られ、疲 労き裂発生寿命と累積塑性ひずみ量とが対応しない結 果が得られた。計算上の活動すべり系の数は、極めて 尐なく、このすべり系の不一致は、一つのすべり系が 活動すると全てのすべり系が硬化する完全等方硬化と CRSS に課題があると考えられる。. a). Grain Boundary. b). Grain Boundary. d) Crack initiation. 100mm. e) Crack initiation. 100mm. c). Grain Boundary. f) Crack initiation. 100mm. Fig. 4. The fatigue fractures observed and the distributions of accumulated plastic strain by CPFEM. a) and d): Specimen 1, b) and e) : Specimen 2, c) and f) : Specimen 3.. 4.4 小括 以上の結果から、現状の結晶塑性 FEM では、硬化則、すなわち、転位間相互作用や CRSS の表現に課題 があり、定量的に疲労き裂発生寿命を評価することは困難であることが分かった。この結果を踏まえ、次節 では改めて、bcc 多結晶材の疲労き裂発生挙動を支配する因子を明らかにする。. 6.

(6) 5. Fe-16%Cr 合金多結晶材の疲労き裂発生寿命と活動すべり系の関係 5.1 目的 結晶塑性 FEM での累積塑性ひずみ量とき裂発生寿命との間には相関が認められず、疲労き裂発生寿命の 定量的な予測までには至っていないことが課題であった。これは疲労変形中の素過程が十分に明らかになっ ていないこと、き裂発生をもたらす支配的現象とき裂発生のクライテリアを十分に表現できていないためと 推定する。 この結果を踏まえ、 粗大な多結晶体の Fe-Cr 合金を用いて 4 点曲げ切欠き疲労試験を追加実施し、 活動すべり系と疲労き裂発生挙動の関係を詳細に調査した。その結果に基づき、bcc 金属である Fe の疲労き 裂発生寿命を支配する因子を明確化することを目的とする。 5.2 実験方法 前節で用いた Fe-13%Cr の組成を有する bcc 粗大多結晶材から、新たに 6 本の 4 点曲げ切欠き疲労試験片 を作製し、疲労試験を行った。疲労試験中はマイクロスコープにて、2700 回毎に切欠き近傍の表面状況を 写真撮影し、疲労き裂長さが 50 μm を超えた繰返し数を疲労き裂発生寿命とした。前節での塑性挙動に課 題があることから弾性異方性のみを考慮した FEM 解析を行い、各すべり系のせん断応力を求め、疲労き裂 近傍で観察されたすべり線との比較を行った。 a) c) Slip Band a). Fig.10 011 001 111. 5μm. 101. 011. 110 111 100. Grain Boundary. 111 211. 110. 010. 50μm. 101. 111. b) 90 80 70 60 50 40 30 20. (211)[111]. (121)[111]. (112)[111]. (211)[111]. (121)[111]. (112)[111]. (211)[111]. (121)[111]. (112)[111]. (211)[111]. (011)[111]. (121)[111]. (112)[111]. (101)[111]. (110)[111]. (011)[111]. (101)[111]. (110)[111]. (011)[111]. (101)[111]. (110)[111]. (011)[111]. 0. (101)[111]. 10 (110)[111]. Shear Stress on Slip Sytem, τ/MPa. Index of Slip System. Fig. 5. Relationship between slip bands near initiated crack and active slip systems. a) SEM micrographs showing slip bands, b) shear stress on each slip systems, c) pole figures projecting active slip planes and trace of slip band 280. Principal Stress Amplitude(by FEA), σa/MPa. 5.3 結果及び考察 疲労試験の結果は前節と同様で、疲労き裂が発生位置 は試験片の切欠き周りの結晶粒形態によって異なった。 しかしながら、疲労き裂発生位置は弾性異方性のみよっ てもたらされた応力集中位置と対応していることが明 らかとなった。これは高サイクル疲労条件では大きな結 晶回転を伴わない変形状態であることに起因すると考 えられる。この結果に基づき、き裂発生位置での応力テ ンソルから求めた各すべり系のせん断応力を基に優先 すべり系と、疲労き裂近傍で観察されたすべり線との比 較を行った。例えば、Fig. 5 では切欠き肩で疲労き裂が 発生し、その近傍には複数のすべり線が認められる。こ のすべり線は詳細に観察すると、(110)、(101)および (211)のすべり面のトレースに対応する突出しが連なる ように構成されている。これらのすべり面の合ベクトル となるトレースがすべり線の方向と対応する。このよう な結果は、いずれの試験片でも認められた。そこで、活 動すべり系同士の転位間相互作用に着目し、疲労き裂発 生位置の主応力と疲労き裂発生寿命との関係を、Fig. 6 に整理した。その結果、優先すべり系が交差すべりを生 ずる組合せと、Lomer-Cottrell 固着を生ずる組合せに よって、疲労き裂発生寿命が整理できる結果を得た。こ のことから、多結晶材の疲労変形中では、弾性異方性に 基づいた不均一な応力状態に加え、疲労き裂を発生する 結晶粒の単結晶の疲労き裂発生寿命に及ぼす転位間相 互作用の影響を明らかにすることで、本論文の目的が達 せられる指針が得られた。. 260 240. Fe-Cr Alloy with Huge-Crystal Four-Point Bending Fatigue f=15Hz, R=-1. Specimen D. 220. Cross Slip - Pair. 200. Specimen B. 180. Specimen E Specimen C Specimen F. 160 140 120. Specimen A. 100. Lomer-Cottrell - Pair. 80 1.0E+03. 1.0E+04. 1.0E+05. 1.0E+06. Number of Cycles to Crack Initiation, Ni/Cycles. 5.4 小括 Fig. 6. Relationship between number of cycles to crack Fe-13%Cr 合金多結晶材の疲労き裂発生寿命は、弾性 initiation and calculated principal stress amplitude 異方性に起因した発生応力と、疲労き裂を発生する結晶 の転位間相互作用の種類に支配されており、単結晶の疲労き裂発生寿命を明らかにすることが重要である。. 7.

(7) 6. Bcc-Fe-3%Al 合金単結晶材の繰返し変形挙動と転位下部組織の発達 6.1 目的 これまでの調査の結果、bcc 多結晶材の疲労き裂発生寿命は、多結晶を構成する個々の単結晶の特性に支 配され、活動すべり系間の相互作用が重要な因子となることが明らかとなった。単結晶材においては、一定 の負荷応力状態では結晶方位によって活動すべり系が変化する。そこで、bcc 金属の繰返し変形挙動に及ぼ す結晶方位の影響を明らかにすることを目的に、Fe-3.0%Al 合金の単結晶試験片を作製し、応力振幅を一定 とした疲労試験によって繰返し変形中の応力ひずみ曲線の変化と転位下部組織の変化を調査した。 6.2 実験方法 供試鋼の化学組成は、高温度域でも bcc 相が平衡となる Fe-3.0mass%Al とした。20 kg の鋳片を溶製後、 1573 K に設定した窒素置換雰囲気炉内で 72 h の保持を行い、正常粒成長させることにより粗大結晶粒を作 製した。得られた粗大結晶粒ブロック試料から、所定の結晶方位となる軸力試験片を作製した。試験片断面 は正方形とし、応力軸の結晶方位が[001]や[111]として、断面内での非対称変形を避けるよう他の面の結晶方 位を決定した。疲労試験は、周波数 f=5 Hz、応力比 R=-1、応力一定の条件で行い、1.0×106 回で未破断の ものを疲労限とみなした。疲労停止材および破断材について、転位下部組織の観察を行い、繰返し変形挙動 と転位下部組織との関係および結晶方位依存性を調査した。 6.3 結果及び考察 a) 10 E=200GPa E=158GPa E=100GPa b)10250 Young’s Modulus(Calc.)* Stress Axis: [001] StessAxis=[001], Stress Axis: [011] E =96GPa f=5Hz, R=-1 Fig. 7 には、[001]方位の疲労試験中に破 111: 180MPa E =156GPa Fe-3.0wt%Al/Single Crystal 011: 160MPa 200 E =197GPa Strain 断あるいは疲労限に至るまで繰返し塑性 E =155GPa Δε E =156GPa 10 10 150 ひずみの変化と応力漸増試験による繰返 Elastic Stiffness** 001: 190MPa C =144GPa し降伏応力の測定結果を示した。数十回ま C =72GPa 100 112: 152MPa C =82GPa 10 10 170MPa 155MPa で繰返し塑性ひずみが減尐し、その後、増 123: 130MPa *Calculated by Elastic Stiffness 190MPa 160MPa 50 **Estimated by (E ,ν ) 200MPa 165MPa 加する傾向が認められ、この変化は繰返し 210MPa 175MPa Miller Index of Stress Axis : Yield Stress 10 10 0 降伏応力を分岐として、それより低い応力 10 10 10 10 10 10 10 10 0 10 10 10 10 0.001 10 0.002 10 0.003 Number of Cycles, N/Cycles Number ofStrain, Cycles, Number of Cycles , N/Cycles ε N/Cycles では認めらない。繰返し塑性ひずみが減尐 Fig. 7. a) Changes in cyclic plastic strain with the する領域では転位の交差や直線的な転位 number of cycles, b) cyclic stress-strain curves when the stress axes are [001],[112],. [123] and [111] の消滅が確認され、増加領域に転じプラト ーを示した段階では点状の転位組織が形 a) b) 002 011 211 成されていた。この傾向に結晶方位依存性 011 200 は認められなかった。しかし、Fig.8 に示 020 αFe-[011] したように、活動すべり系の多い[001]方位 αFe-[100] では、ある特定の結晶面に点状の転位は配 列し転位下部組織のような形態をとる。一 方、[011]方位では疎らに分散するのみとな る。この点状の転位は、せん断応力から計 500nm 500nm 算される優先すべり系同士の反応によっ Fig. 8. TEM micrographs showing dislocation structure of て生ずる不動転位の交差線トレースと対 fatigue fractured specimen. a) when the stress axis is [001] and b) [011]. 応する。[001]方位では最も活動すべり系の 数が多く、不動転位の形成頻度が高いが、 [011]方位では交差すべり頻度が高くなる。疲労破断は[001]方位にのみ認められている。これらの結果から、 活動すべり系同士の相互作用に基づいた不動転位の形成頻度によって、転位下部組織の結晶方位依存性が決 められ、疲労き裂発生から破断までの特徴づけがなされると考察した。 1.0E-03-3. Stress. 1.0E-03-3. 001. Accmulated Plastic Strain, εp. 1.0E-04-4. 1.0E-05-5. 111. σ/MPa Stress, Δεp Strain, Plastic. Strain, Δε Plastic p Δε Strain, Plastic p. 011. 112. 1.0E-04-4. p. 123. 11 12. 44. 1.0E-05-5. 001. 1.0E-06-6. 0 1.0E+00. 1 1.0E+01. 2 1.0E+02. 3 1.0E+03. 4 1.0E+04. 5 1.0E+05. 6 1.0E+06. 1.0E-06-6. 0 1 2 3 4 5 6 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03 1.0E+04 1.0E+05 1.0E+06. [001]:Stress Axis. Number of Cycles , N/Cycles. 6.4 小括 bcc-Fe-3%Al 合金単結晶材の繰返し変形挙動と転位下部組織の発達挙動を調査した。疲労後の転位は活動す べり系同士の転位反応によって生ずる不動転位から構成され、不動転位の形成頻度によって転位下部組織の 特徴付けがなされると考察された。今後、下部組織の特徴と PSB の形成の関係を明らかにする必要がある。. 6. 001.

(8) 7.. 結言 本研究の目的は、優れた耐久性を有する自動車部品の提供を可能とする鉄鋼材料の開発を目指すべく、自 動車部品の耐久性を向上させる金属組織の設計手法として、結晶塑性論を取り入れた評価技術を確立してい くことである。そのため、本論文では、Fe 合金の疲労き裂発生挙動を支配する因子の結晶塑性論的および転 位論的な解明をし、結晶塑性 FEM の材料モデルの指針を得ることを目的とした。目的を達成するための各章 で得られた知見を列挙する。 ・実用高強度鋼において疲労き裂発生に至る繰返し硬化-軟化寿命は、転位運動の抵抗に支配され、繰返し降 伏応力で規格化することで、強化機構によらず統一的に整理できた。計算力学上は、この強化機構を微視 的降伏応力の違いとして表現すればよいことが明らかとなった。 ・現状の結晶塑性 FEM では、硬化則、すなわち、転位間相互作用や CRSS の表現に課題があり、定量的に 疲労き裂発生寿命を評価することは困難であることが分かった。 ・この結果を踏まえ、活動すべり系と疲労き裂発生挙動の関係を詳細に調査した結果、多結晶材の疲労き裂 発生寿命は、弾性異方性に起因した発生応力と、疲労き裂を発生する結晶の転位間相互作用の種類に支配 されており、単結晶の疲労き裂発生寿命を明らかにすることが重要であることが分かった。 ・そこで、bcc-Fe-3%Al 合金単結晶材の繰返し変形挙動と転位下部組織の発達挙動を調査した。疲労後の転 位は活動すべり系同士の転位反応によって生ずる不動転位から構成され、不動転位の形成頻度によって転 位下部組織の特徴付けがなされると考察された。 本研究では、bcc 金属の疲労き裂発生挙動を表現するための結晶塑性モデルを構築することを最終目標に、 基礎的検討を行った。しかし、基礎的検討として、単結晶の疲労き裂発生挙動そのものを明らかにするには 至っていない。そのためには、bcc 単結晶材の PSB 形成と転位下部組織の関係、また、その結晶方位依存性 を明らかにし、PSB 形成をもたらすクライテリアを明確にすることが課題である。 今後はこれらの課題を解決することが必要である。またこれと同時に、BCC 金属における 3 次元の疲労き 裂発生に関する結晶塑性 FEM 解析手法を平行して確立・実行し、実験による検証を行うことが重要であろう。 また、将来的にはき裂の発生だけではなく、き裂の伝播挙動に対するモデル化も必須となる。これらを合体 させ、疲労耐久性に優れる金属組織の提案に結び付けたい。. 参考文献 1) R. Asaro and A. Needleman: Acta Metall. 33 (1985), 923. 2) F. P. E. Dunne, A. J. Wilkinson and R. Allen: Int. J. Plasticity., 23 (2007), 273. 3) T. Tanaka and M. Kougi: J. Soc. Mat. Sci., 33 (1984), 659. 4) P. Li, S. X. Li, Z. G. Wang, Z. F. Zhang: Acta Mater., 58 (2010), 3281 5) P. Franciosi, L. T. Le, G. Monnet, C. Kahloun and M. -H. Chavanne: Int. J. Plasticity., 65 (2015), 226. 6) Y. Funakawa,T. Shiozaki, K. Tomita, T. Yamamoto and E. Maeda: ISIJ Int., 44 (2004), 1945. 7) M. Takahashi : Tetsu-to-Hagane, 100 (2014), 1. 8) A. H. Cottrell: Dislocation and Plastic Flow in Crystals, OUP, UK (1953), 193.. 7.

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参照

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