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1 Blood chemistry Peripheral blood Viral marker TP 5.4 g dl WBC ml Syphilis TPAb Alb 2.7 g dl RBC ml HBsAg T. bil 2.3 mg dl Hb 11 g dl

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日門亢会誌 2012; 18: 200─207

症例報告

Necropsy で鉄過剰症と診断された自己免疫性肝炎の 1 例

綾 田   穣

1

,堀 田 直 樹

1

,黒 川   剛

2 症例は 65 歳,女性.平成 11 年に他院で自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)と診断された. 平成 14 年より当院へ転院となり,肝硬変に伴う胸腹水貯留のため入退院を繰りかえしていた.平成 21年 1 月,胸水の増加による呼吸困難のため再入院となった.治療に対し増悪と寛解を繰り返し,同 年 5 月 13 日,門脈圧亢進症の増悪による,胸水,腹水の増加に伴う呼吸不全により死亡した. Necropsy所見では CH(F1 / A1)相当である他に,小葉全体に褐色色素の肝細胞内への沈着が目立ち, 褐色色素は Kupffer cell にも貪食されており,hemosiderin の色素沈着と考えられた.褐色色素が Berlin blue染色陽性であったことより,本症例は鉄過剰症と診断された.網内系のみならず肝実質細胞内へ の鉄沈着が認められておりヘモクロマトーシスと考えられた.遺伝子検査は行っていないが,家族歴 を認めず,皮膚色素沈着,糖尿病,関節痛なども欠くため,肝疾患に伴う二次性のヘモクロマトーシ スと考えられた.肝障害の進行に鉄過剰症の関与が示唆された.

KEY WORDS: hemochromatosis, autoimmune hepatitis, liver cirrhosis, necropsy

Ayada M1, Hotta N1, Kurokawa T2: A case of autoimmune hepatitis diagnosed with iron overload disease in the necropsy. JJPH 2012; 18: 200 ─ 207

I. は じ め に 本邦において網内系のみならず肝実質細胞まで鉄沈着 を来した二次性鉄過剰症の報告は少ない.われわれは, 自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)と診断・ 治療され 11 年経過し,necropsy の結果,二次性鉄過剰 症と診断された肝硬変症の 1 例を経験した.AIH の病態 に鉄過剰が増悪因子として関与をしている可能性が示唆 されたため,文献的考察を行い報告する. II. 症   例 症 例 65 歳,女性. 主 訴 呼吸困難. 現病歴 平成 11 年に他院で AIH と診断された.平成 14 年 よ り 当 院 に 転 院 と な っ た. 当 院 初 診 時,Child-Pugh 分類 Grade B であった.AIH に対し,ウルソデオ

キシコール酸 300 mg /日の投与が行われた.低アルブ ミン血症に対し分枝鎖アミノ酸製剤,胸腹水貯留に対し フロセミド 40 mg /日・スピロノラクトン 25 mg /日の 経口投与が開始された.繰り返す胸腹水貯留の増悪た め,外来通院中にアルブミン補充療法や利尿剤の増量が 行われたが,コントロール不良のため,胸水穿刺排液や 胸水穿刺排液濃縮再灌流などの治療目的に入退院を繰り かえしていた.平成 20 年 12 月より,胸水の増加による 呼吸困難が出現したため,フロセミド 80 mg /日,スピ ロノラクトン 50 mg /日,アゾセミド 120 mg /日と利尿 剤の増量を行ったが症状の改善をみないため,平成 21 年 1 月入院となった. 既往歴 平成 18 年 8 月に食道静脈瘤破裂のため内視 鏡的食道静脈瘤結紮術を施行され,その際,赤血球濃厚 液(Red Cells Concentrates:RCC)5 単位の輸血が行わ れた.鉄剤の投与の既往はない. 家族歴 血液疾患,代謝異常,肝疾患を含めて特記事 項なし. 嗜好歴 喫煙,飲酒の習慣やサプリメントや健康食品 の摂取歴はない. 海外渡航歴 なし. 入院時現症 身長 149 cm,体重 44 Kg,体温 36.2℃. 血圧 100 / 82 mmHg,脈拍数 86 /分,SATO2 96%.意識 清明.眼瞼結膜に貧血を認めず.眼球結膜の軽度の黄染 を認めた.胸部聴診上,右呼吸音の減弱と軽度のラ音を 聴取した.腹部は平坦,軟で,圧痛を認めず.下肢に著 1 医療法人衆済会増子記念病院肝臓内科(〒 453-0016 愛知県名古屋 市中村区竹橋町 35-28) 2 同 肝臓外科(〒 453-0016 愛知県名古屋市中村区竹橋町 35-28)

1 Depar tment of Hepato-Gastroenterology, Masuko Memorial

Hospital, 35-28 Takebashi Nakamura-ku Nagoya-shi, Aichi, 453-8566 Japan

2 Depar tment of Surger y, Division of Hepato-Gastroenterology,

Masuko Memorial Hospital, 35-28 Takebashi Nakamura-ku Nagoya-shi, Aichi, 453-8566 Japan

本論文の要旨の一部は第 18 回日本門脈圧亢進症学会総会,福岡 (2011)にて発表した.

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明な浮腫を認めた.明らかな神経学的異常所見を認めな かった.皮膚に異常所見なく,色調変化も認めなかった. 表在リンパ節を触知しなかった. 入院時検査所見(表 1) Hb 11 g / dl と軽度の貧血を 認 め,Plt 4.2×104/ ml と 著 明 な 血 小 板 低 下 を 認 め た. Alb 2.7 g / dl と著明な低アルブミン血症を呈し,T. bil 2.3 mg / dl, AST 52 mg / dl, ALT 41 mg / dl, LDH 414 mg / dl, ALP 440 mg / dl,g-GPT 13 mg / dl と肝胆道系酵素の軽 度の上昇を認めた.プロトロンビン時間は 49%,ヘパ プラスチンテストは 56%と凝固能の低下が認められた. 抗核抗体価は 2560 倍(正常値:40 倍未満)と著明な上 昇 を 認 め た. 動 脈 血 ガ ス 分 析(room air)pH:7.506, 図 1 入院時胸部 X-P(著明な右胸水を認めた.) " TVQJOFQPTJUJPO TUBOEJOHQPTJUJPO # 表 1 入院時検査所見 軽度の貧血と著明な血小板低下を認めた.著明な低アルブミン血症を呈し,肝胆道系酵素の軽度の 上昇を認めた.凝固能の低下が認められ,抗核抗体価の著明な上昇を認めた.動脈血ガス分析では, 低酸素血症を呈していた.

Blood chemistry Peripheral blood Viral marker

TP 5.4 g / dl WBC 4.3×103 / ml Syphilis TPAb (−)

Alb 2.7 g / dl RBC 302×104 / ml HBsAg

(−)

T. bil 2.3 mg / dl Hb 11 g / dl HBsAb (−)

GOT 52 IU / l Ht 32.2 % HCVAb (−)

GPT 41 IU / l Plt 4.2×104 / ml Blood gas analysis

LDH 414 IU / l Differential white blood count pH 7.506

ALP 440 IU / l Neutro 79.2 % PO2 70.2 mmHg

g - GTP 13 IU / l Eosino 0 % PCO2 32.2 mmHg AMY 98 IU / l Lymph 11.8 % HCO3 24.9 mmol’/ l BUN 50 mg / dl Mono 8.1 % SATO2 97.8 %

Cr 1.03 mg / dl Baso 0.9 %

Na 131 mEq / l Coagulation

K 4.3 mEq / l PT 49 %

Cl 99 mEq / l HPT 56 %

glu 112 mg / dl Tumor marker

UA 6.1 mg / dl AFP 3.7 ng / ml(normal range:0.0 16.5) T. cho 150 mg / dl PIVKA Ⅱ 19 mAU / ml(reference value:< 40) CRP 0.1 mg / dl Autoantibody

ANA 2560 times(reference value:< 40)

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著明な右胸水に加え,下葉の一部に無気肺を認めた. 図 2 入院時胸部 CT " $ # % " $ # % 肝萎縮と脾腫,および,傍臍静脈の拡張を認めた.肝内に明らかな腫瘍病変は指摘できなかった. 肝 CT 値は 70 HU(Hounsfield unit)であった. 図 3 入院時腹部 CT

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PO2:70.2 mmHg, PCO2:32.2 mmHg, HCO3:24.9 mmol / l, SATO2:97.8%と低酸素血症を呈していた. 入院時画像検査所見 胸部 X-P(図 1)では著明な右 胸水を認めた.胸部 CT(図 2)では著明な右胸水に加え, 下葉の一部に無気肺を認めた.腹部 CT(図 3)では, 肝萎縮と脾腫,および,傍臍静脈の拡張を認めた.肝 CT 値は 70 HU(Hounsfield unit)であった.肝内に明 らかな腫瘍病変は指摘できなかった. 入院内視鏡検査所見 上部消化管内視鏡所見(図 4) は,Lm, F1, Cb, RC0,Lg(−)の食道静脈瘤と PHG を 認めた. 臨床経過(図 5) 入院後,胸水貯留と下腿浮腫に対し, フロセミドによる治療を開始するも十分な効果が得られ ないため,カンレノ酸カリウムを追加し,アルブミン補 充療法に加え,胸水穿刺排液濃縮再灌流,ドパミン低用 量持続投与を行った.軽快,増悪を繰りかえし,門脈圧 亢進症の増悪による,胸水,腹水の増加に伴う呼吸不全 により,入院 4 か月目に永眠された.インフォームドコ ンセントが得られたため necropsy を行った. 病理所見(図 6 図 8) Hematoxylin-eosin 染色では, 軽度の炎症細胞浸潤を認めた.小葉全体に褐色色素の肝 内への沈着が目立ち,褐色色素は肝細胞内に沈着してお り,Kupf fer 細胞に貪食されている,hemosiderin の沈 着と考えられた.Azan 染色では,門脈域の軽度の線維 性拡大を認めた.これらの軽度の線維化と炎症細胞浸潤 は,CH(F1 / A1)相当と考えられた.Berlin blue 染色 では,門脈域を中心とした肝小葉内の Kupf fer 細胞およ び肝細胞に著明な鉄沈着を認めた.広範囲の強い線維化 や bridging fibrosis,肝細胞ロゼット形成,著明な形質 細胞浸潤,高度の壊死などの AIH に特徴的な所見を認 めなかった. III. 考   察 AIH は,中年以降の女性に好発し,自己抗体陽性,高 ガンマグロブリン血症,副腎皮質ステロイドが著効を示 すなど,発症・進展に自己免疫機序の関与が推定されて いる原因不明の慢性疾患である1 3).診断方法に特異的 なものはなく,既知のウイルス感染,アルコール,薬物, 代謝異常,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの 肝障害の原因を除外することから行われる.典型的な症 例であれば,抗核抗体などの自己抗体およびガンマグロ ブリン,グロブリン G(IgG)などを測定し,肝生検を Lm, F1, Cb, RC0,Lg(−)の食道静脈瘤と PHG を認めた. 図 4 上部消化管内視鏡所見 " $ # %

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行い,本邦の診断基準や国際診断基準を用いて診断す る1 3). 本症例は,他院で AIH と診断された後に当院に転院 となっており,最初に診断された経緯は不明であり,当 院初診時にはウルソデオキシコール酸による治療が行わ れていた.当院に転院後は,肝生検の同意が得られず, 抗核抗体,抗ミトコンドリア抗体以外の自己抗体の測定 やガンマグロブリン,IgG などの測定も行われておらず AIH の再評価が困難であった.入院時に測定された項目 のみで判断すると,1999 年の国際診断基準ではスコア 13 で疑診であり,2008 年の国際診断基準ではスコア 4 で AIH に合致する点数を確保できず,確定診断は得ら れていない.しかし,発症時期が中年女性であり,慢性 に経過する肝炎であること,肝炎ウイルス,アルコール, 薬物による肝障害が除外できることなどが,1996 年の 本邦の診断指針の概念に一致することや,抗核抗体価が 2560 倍と陽性で,肝炎ウイルスマーカーが陰性,および, 反復性の血清トランスアミナーゼ値の異常をみるなど, 同指針の 5 つの主要所見のうち 3 つに合致しており相当 の程度 AIH が疑われた.腹部 CT 所見でみられた著明 な肝萎縮と脾腫,傍臍静脈の拡張や,上部消化管内視鏡 所見の食道静脈瘤の所見などから AIH による肝硬変症 として治療が継続された. 鉄は生命活動に必須であるが,過剰になると細胞障害・ 臓器障害を発症する.生体の鉄代謝は,能動的な排泄機 構を持たず,体内での鉄の再利用が主体で半閉鎖的な回 路を構築している4 6).鉄は大量出血などの体外への喪 失や鉄摂取不足で容易に鉄欠乏に陥る一方,鉄剤の過剰 投与や大量の輸血,食事などでの過剰摂取など何らかの 理由で体内への鉄負荷が増加すると鉄過剰となり臓器障 害を起こす4). 体内に鉄が過剰に蓄積する状態を鉄過剰症という.鉄 過剰症は鉄の沈着の状態により大きく 2 つに分類され る.網内系細胞のみに鉄が沈着する場合をヘモジデロー シス,網内系細胞のみならず実質細胞にまで鉄沈着がお よぶ場合をヘモクロマトーシスと呼ぶ7, 8).また,遺伝 的素因を持つものを原発性ヘモクロマトーシス,輸血や 鉄剤の大量投与のほか,血液疾患による無効造血などが 入院後,利尿剤の投与,アルブミン補充療法,胸水穿刺排液濃縮再灌流,ドパミン低用量持続投 与などを行った.治療に対し増悪と寛解を繰り返し,入院 4 か月目に永眠された.インフォーム ドコンセントが得られたため necropsy を行った. 図 5 臨床経過

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主な原因であるものを二次性(続発性)ヘモクロマトー シスという7, 13). 本邦では,輸血を原因としたものの報告が最も多いが, 慢性 C 型肝炎,アルコール性肝炎,NASH,慢性腎臓病, 神経変性疾患などの多くの病態で,鉄が諸臓器に蓄積 し,基礎疾患や心・血管病変を修飾,悪化させたとされ

る報告も散見する4, 9 13).AIH においても,Kupf fer 細

胞 や 肝 細 胞 に 鉄 沈 着 を 認 め た ケ ー ス が 報 告 さ れ て い 図 6 病理所見:弱拡(×40) " # A:×100:CH・A1 相当の軽度の炎症細胞浸潤を認めた.B:×200:小葉内に hemosiderin の色 素沈着と考えられる褐色色素の肝細胞内への沈着が認められた. 図 7 病理所見:Hematoxylin-eosin stain " $ # A:Hematoxylin-eosin stain:軽度の炎症細胞浸潤を認めた. B:Azan stain:CH・F1 相当の門脈域の軽度の線維性拡大 を認めた.

C:Berlin blue stain.小葉全体に Berlin blue 染色陽性であっ

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る2, 14).アルコール性肝炎では,肝細胞におけるトラン スフェリンレセプターの発現亢進や hepcidin の肝細胞 での産生低下に基づく小腸からの鉄吸収の亢進などが鉄 過剰症に関与していると考えられている4 6, 15).慢性 C 型肝炎においても血清中の hepcidin の発現量が低下し ており,肝内鉄過剰の原因として,肝臓での hepcidin の発現異常の関与の可能性が示唆されている16 18). 本症例は necropsy の所見で,門脈域を中心とした肝 小葉内の Kupf fer 細胞および肝細胞に著明な鉄沈着を認 めた.これは炎症に伴う肝細胞壊死の結果として鉄が Kupf fer 細胞に貪食されたことや,C 型慢性肝炎やアル コール性肝炎のように hepcidin の発現異常の関与に よって肝細胞に鉄が過剰蓄積された可能性を示唆するも のと考えられた. 他の鉄過剰症の原因として輸血歴があげられるが,2 年半前に RCC を 5 単位施行されたのみであり,今回の 鉄過剰症の主な原因とには考えにくいと思われた.ま た,サラセミアや鉄芽球性貧血,骨異形成性疾患などに よる無効造血をきたす疾患も原因の鑑別が必要となる が10 13, 18),本症例の末梢血像は正常であり否定的であ ると考えられた. 本症例においては,インフォームドコンセントが得ら れず遺伝子検査は行っていないが,家族歴を認めず,皮 膚色素沈着,糖尿病,関節痛なども欠くため,肝疾患に 伴う二次性のヘモクロマトーシスと考えられた. 肝臓の CT 値および血清フェリチン値は体内鉄貯蔵量 とよく相関するといわれており19),肝 CT 値は正常で 22 から 72 HU で 72 HU 以上は高度の鉄沈着を示すと報 告されている20).本症例では血清フェリチン値は測定 されなかったが,肝 CT 値は 70 HU であり,病理所見 の軽度∼中等度の鉄沈着と一致するものであった. 鉄は生体内において必要不可欠であるが,過剰に存在 すると,逆に生体に障害をもたらす2, 21, 22).過剰な鉄が 細胞内に存在すると,ヘモジデリン鉄やフェリチンとし て隔離貯蔵されると同時に自由鉄の濃度も上昇する21) 細胞内の自由鉄は,クエン酸や adenosine triphosphate (ATP)などと結合した 3 価鉄が大部分を占めるが,2 価鉄もわずかに存在する.2 価鉄イオンは,Fenton 反 応を介して,活性酸素種であるヒドロキシラジカルを産 生させる.このヒドロキシラジカルは活性が非常に高 " " $ # " $ #

図 8 病理所見:Berlin blue stain

A:×100:小葉全体に Berlin blue 染色陽性であった. B, C:×200:門脈域を中心とした肝小葉内の Kupffer 細

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く,脂質,核酸,蛋白など多くの細胞構成物を攻撃す る2, 21 23).本症例の肝障害の進行の過程においては, AIH の他に,このような鉄を介した細胞障害の機序の関 与が示唆された. AIH に特徴的な所見として,広範囲の強い線維化や bridging fibrosis,肝細胞ロゼット形成,著明な形質細 胞浸潤,高度の壊死などが知られていると同時に,障害 の部位差というものが知られている24).すなわち,同 一症例の肝臓で塊状脱落がある一方で,ほとんど変化の ない領域が存在する場合があり24),AIH における病理 組織像の多様性,あるいは,不均一性を代表する所見と して重要である. 本症例の necropsy の病理標本では,hemosiderin の 沈着以外は F1 / A1 相当の慢性肝炎の所見であったが, 画像上の肝萎縮と門脈圧亢進症の所見などの臨床所見か ら肝硬変症に相当すると考えられた.病理所見と臨床所 見の解離は,AIH の病理像の特徴の 1 つである障害の部 位差が反映された,すなわち,necropsy では変化の乏 しい部位の組織が採取されたと考えられた. AIH においては,比較的早く肝硬変に進展する症例が あることが知られているが25, 26),本症例は初診時には 肝硬変に至っており,肝炎から肝硬変に移行した期間に ついては不明である.また,本症例は necropsy により 鉄過剰症と診断されたが,それ以前の病理学的検証はな く,AIH に鉄過剰症が合併した期間は証明できていない. よって,肝炎から肝硬変への移行時期における鉄を介し た細胞障害の機序の関連性は不明である. 本症例の胸水貯留の原因は門脈圧亢進症であり,その 主因は AIH による肝硬変によるものと考えられたが, 鉄過剰症が増悪因子として働いた可能性が推察された. IV. 結   語 今 回 わ れ わ れ は, 自 己 免 疫 性 肝 炎 と 診 断 さ れ, necropsy で肝細胞内に鉄沈着がみとめられ,鉄過剰症 と診断された肝硬変症の 1 例を経験した.肝硬変症の進 行時には鉄過剰症の合併も念頭においた精査治療を要す ると考えられた. 文   献 1) 小塚立蔵,榎本 大,河田則文:自己免疫性肝炎.内科 2010; 105: 986 991 2) 則武秀尚,影山富士人,竹平安則,他:セレスタミン® を長期内服し休薬後に重症自己免疫性肝炎を発症した 1 例.肝臓 2006; 47: 341 346 3) 勝嶋史子,阿部和道,横川順子,他:新しい国際診断基 準を用いた自己免疫性肝炎の再評価に関する検討.肝臓 2009; 50: 618 625 4) 高後 裕:鉄代謝と鉄過剰.内科 2011; 100: 2412 2424 5) 生田克哉,鳥本悦宏,高後 裕:鉄代謝におけるヘプシ ジンの機能.臨床血液 2007; 48: 36 45

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17) Naoki Fujita, Ryosuke Sugimoto, Satoshi Motonishi, et al: Patients with chronic hepatitis C achieving a sustained virological response to peginterferon and ribavirin therapy recover from impaired hepcidin secretion. J Hepatol 2008; 49: 702 710 18) 藤田尚己,竹井謙之:肝疾患における鉄代謝異常.成人 病と生活習慣病 2009; 39: 418 425 19) 内田立身,田中鉄五郎,梅野政治,他:貯蔵鉄量の評価 としての血清フェリチン値.臨床血液 1979; 20: 1435 1439

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図 8 病理所見:Berlin blue stain

参照

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