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浜松医科大学 内科学第二講座

著者連絡先:千田金吾(ちだ きんご)

〒431-3192 静岡県浜松市東区半田山1-20-1 浜松医科大学 内科学第二講座

E-mail:[email protected]

Second Division, Department of Internal Medicine, Hamamatsu University School of Medicine

サルコイドーシスにおける診断・病態・治療・予後因子の解明に

ついての研究

千田金吾

【要旨】

 受賞の契機となった当施設の研究を4点に絞って紹介する.1)肉芽腫性肺疾患の診断法の検討のため,肉芽 腫を特異的に認識する単クローン抗体の作成を行った.その結果,肉芽腫形成の存在を病理組織学的に的確に行え るようになった.2)サルコイドーシスの病因論に関する検討では,ラットにおける死菌BCG肉芽腫反応での樹 状細胞の意義を経時的に解析した.また,サルコイドーシス病変部における樹状細胞のCD1分子発現の意義をあ きらかにし,脂質抗原の関与を推定した.3)サルコイドーシスの治療法の検討では,サルコイドーシスの治療 のためにステロイド隔日投与を行うと,副腎皮質の機能は保たれるが間脳下垂体機能の抑制はみられることを示 した.また,性ホルモンとサルコイドーシスの予後の解析から,ホルモン補充療法が肝臓サルコイドーシス病変 に有効であることを報告した.4)サルコイドーシスの予後関連因子の解析では,肺胞マクロファージにおける 25-hydroxyvitamin D3 1α-hydroxylase geneの発現とサルコイドーシスの予後の関連を見いだした.また,サル コイドーシスにおいて自己抗体検出の頻度が高く,自己抗体検出例では予後不良であることを示した.

[日サ会誌 2011; 31: 3-10]

キーワード:樹状細胞,CD1,ホルモン補充療法,25-ヒドロキシビタミンD3-1α水酸化酵素遺伝子,自己抗体

The Study of Sarcoidosis in Terms of Diagnosis, Pathophysiology,

Treatment, and Prognostic Factors

Kingo Chida

Keywords: dendritic cell, CD1, hormone replacement therapy, 25-hydroxyvitamin D3 1α-hydroxylase gene,

autoantibodies

はじめに

 サルコイドーシスの病因は未だ確定していない.一 方、病態についてはかなりの解明が進んだ.それに 従って,診断基準も概ね確立しつつある.また治療の 適応,治療法もある程度のコンセンサスを得るところ までに達した.今回,これらの知見に我々が関与でき た研究内容をレビューする.

1.肉芽腫性肺疾患の診断法の検討

 肉芽腫を特異的に認識する単クローン抗体の作成を 行い,サルコイドーシスを始めとする肉芽腫形成の存 在を病理組織学的に的確に行うことを可能にした1) 単クローン抗体作成のための抗原は,気管支肺胞洗 浄によって得られたBAL細胞を使用した.BAL細胞 (1.0×108/生理食塩水)を同量のフロインド・完全ア ジュバンドと混液を作り,その0.2 mLをBALB/cマ ウスに皮下投与した.KöhlerとMilsteinの方法に準じ

(2)

て脾細胞とP3-NS1/1-Ag4-1マウス骨髄腫細胞を,約 10:1にてポリエチレングリコールを用いて融合し た. ク ロ ー ン と し て,AMH-1,AMH-2,AMH-3, AMH-4の4つのクローンを準備できた.これらの免 疫反応性をTable 1にまとめた.Figure 1は免疫組織 化学的検討の一部を示す.本抗体を利用することに より,肉芽腫形成組織を的確に把握できると推定され る.この抗体によるマクロファージの解析によって, マクロファージの分化過程およびマクロファージにサ ブセットが存在するか否かの検討が可能となると思わ れる.  サルコイドーシスの診断に関してこの他,心臓病変 の有無はサルコイドーシスの予後を決定的に左右する ため,心病変検討の有無に対するタリウム心筋負荷シ ンチグラフィの有用性を検討した2)  加湿器による過敏性肺炎の臨床的意義を報告し3) また,診断が困難である慢性過敏性肺炎の病態につい て,全国集計を行い臨床病理学的特徴を検討した4)

2.サルコイドーシスの病因論の検討

 サルコイドーシス病態へのIFN-γの関与の程度を知 るため2’5’オリゴアデニル酸合成酵素活性について検 討した5).またT細胞レセプターβ鎖可変領域レパー トリーの解析を行い,Vβ2とVβ6との関連が高いこ とを見いだした6).サルコイドーシスの病変部由来の 線維芽細胞のeffector cellとしての働きを解析した7)  これまで肺肉芽腫形成過程における樹状細胞の役 割についての報告はなかったため,ラットにおける死 菌BCG肉芽腫反応での樹状細胞の意義を経時的に解 析した8).Figure 2に示すような実験系と種々の抗体 で28日までの経過を観察分析した。その結果(Figure 3),14日目にピークをもつ肉芽腫形成反応において, 樹状細胞は3日目の早期から未熟な肉芽腫の周囲に 認められ28日目の消褪期にはその数が減少した.14 日目での樹状細胞とT細胞の二重染色では(Figure 3 右),樹状細胞( ,blue)T細胞( ,red)が肉芽 腫辺縁で密に相対しており,樹状細胞からの情報がT 細胞に伝達されているものと推定された.Magnetic cell preparationによって準備された肉芽腫組織内の 細胞は,MHCクラスIIと反応性を持つOX6と樹状細 胞を示すOX62が陽性であった.サルコイドーシス患 者の臨床材料での樹状細胞の分布は,Figure 4に示す ごとくの結果であった.  また, サルコイドーシス発症の要因を探るため, 関与の立場とは異なった観 点から起因物質の検討を行った.すなわち,これまで のペプチド抗原の検索とは異なり,脂質抗原との関連 に焦点を当てるため(Figure 5)CD1陽性細胞の関与 を検討した9).サルコイドーシスの肉芽腫病変部にお けるCD1分子発現の検討のため,サルコイドーシス 患者9例の皮膚病変(1例),リンパ節病変(3例), 肺組織病変(1例),筋組織(4例),対照群としての

Cells tested Degree of labeling(%)with No. of determinations AMH-1 AMH-2 AMH-3 AMH-4

Peripheral blood monocytes 0±0 7.8±3.4 0±0 97.4±0.4 5 48-hr-cultured monocytes 0±0 13.6±2.3 13.8±1.1 94.8±0.3 3 BAL macrophages from nonsmokers 64.8±42.3 85.9±5.7 87.6±6.7 94.3±3.9 9 BAL macrophages from smokers 23.5±18.2 33.8±22.0 44.5±21.6 35.2±21.5 9 Pulmonary interstitial − + ++ ++ 10 macrophages <5 20-50 >90 >90 Epithelioid cells in lung − ++ ++ ++ 4 granulomas <5 >90 >90 >90

Percentage of labeled cells was calculated by EPICS-V analysis. Each value is expressed as the mean and SD. Bronchoalveolar lavage.

The degree of labeling of cells stained by the immunohistochemical method: − , negative( < 5 % ); + , some (20-50%); ++, the majority(>90%).

Lung granulomas were obtained from patients with pulmonary sarcoidosis or hypersensitivity pneumonitis.

(3)

肺組織(6例)を準備した(Figure 6).抗体として, anti-CD1a(O10),anti-CD1b(4A7.6.5),anti-CD1c (L161),anti-CD83(IM2069)を使用した.各組織に おいて免疫組織化学解析を行った結果,サルコイドー シス9例の検討材料中5例にCD1陽性細胞が認めら れた.陽性細胞は肉芽腫内部および近傍に分布してい た.一方,対照群では全例陰性であった.CD1陽性例 と陰性例の間に病勢との関連は認められなかった.ま たCD1a,CD1b,CD1cそれぞれの陽性細胞の出現頻 度には,一定の傾向は認められなかった.以上,CD1 を発現している細胞すなわち脂質抗原を抗原提示しう る細胞の存在の証明,および脂質抗原自体でも肉芽腫 形成反応が惹起されうることが示され,サルコイドー シスにおける肉芽腫形成反応には,樹状細胞を介した CD1/脂質抗原による免疫応答が関与している可能性 が示唆された.  さらに脂質成分が豊富な結核菌とサルコイドーシ ス発症との関連をみるため,サルコイドーシス患者で のクオンティフェロンテストの陽性率を検討した結果 (Table 2),3.3%の症例で陽性であったに過ぎず結核 菌の関与の可能性は低いと推定された10) Figure 1. AMH-2での免疫組織化学的反応性 対照 AMH-2 類上皮細胞肉芽腫 過敏性肺炎

Clone Isotype Antigen Positive cells Reference OX62 IgG1 α likeintegrin subunit, (γδ T cell ?)DC (1992)J. Exp. Med. OX52 IgG2a unknown(mem-brane) Pan T cell (1986)Immunol.

OX8 IgG1 CD8 Cytotoxic T cell Eur. J. Im-munol. (1980) V65 IgG1 γδ TCR γδ T cell (1988)J. Immunol. ED1 IgG1 gp90-110(cyto-plasmic granules)Monocyte, Mφ, DC (1985)Immunol. ED2 IgG2a unknown(mem-brane) Tissue Mφ Immunol.(1985) OX6 IgG1 RT1B, class II B cell, DC, Eur. J. Im-munol.

(1979)

Specificity of monoclonal antibodies for immuno-histochemistry(Rat)

Figure 2. ラット肉芽腫形成モデルにおける樹状細胞とT細胞の分布 Rat granuloma model protocol

(4)

Clone Specificity Source Species/isotype rabbit poly. S-100a Dako rabbit O10 CD1a Immunotech mouse IgG1 HB15a CD83 Immunotech mouse IgG2

Figure 4. サルコイドーシス患者の肺生検およびリンパ節標本の切片における免疫染色

Immunostaining of granuloma with OX62(DC)

Figure 3. 肺肉芽腫形成過程における樹状細胞(DC)の関与

Double staining of rat granuloma(day 14) OX62( ,blue), DC OX52( ,red), Pan T

(5)

CD1分子はMHC class Icに分類され,古 典的MHC class Iaやclass IIと異なり多 型性に乏しい分子である。脂質/糖脂質 抗原の疎水鎖と結合しその抗原をT cell に提示する. 第1染色体 MHC Class Ic ・ CD1分子の抗原結合部は,疎水性のアミノ酸で覆われ,ペプチド抗原では なく,脂質抗原に結合する. ・CD1a,CD1b,CD1c,CD1d,CD1e

Figure 5. T細胞への抗原情報の提示に関わるMHC Class I,MHC Class II以外のMHC

年齢(才) 性 B. I. 疾患 罹患臓器 生検組織 症例1 63 F 0 サルコイドーシス 眼,肺,筋 腓腹筋 症例2 31 M 300 サルコイドーシス 肺,耳下腺,リンパ節 リンパ節 症例3 23 M 140 サルコイドーシス 眼,肺,肝,リンパ節 リンパ節 症例4 59 M 0 サルコイドーシス 眼,肺 肺 症例5 72 M 80 サルコイドーシス 肺,皮膚 皮膚 症例6 54 F 0 サルコイドーシス 筋,眼 腓腹筋 症例7 57 F 0 サルコイドーシス 筋,肺,眼 腓腹筋 症例8 68 F 0 サルコイドーシス 筋 大腿筋 症例9 61 F 250 サルコイドーシス 眼,リンパ節 リンパ節 症例10 73 M 600 肺癌 肺 肺 症例11 61 F 0 肺癌 肺 肺 症例12 52 F 1280 肺癌 肺 肺 症例13 70 M 1250 肺癌 肺 肺 症例14 61 M 800 肺癌 肺 肺 症例15 41 M 0 炎症性肺病変 肺 肺 症例16 29 M 200 特発性リンパ節炎 リンパ節 リンパ節 Figure 6. サルコイドーシスの病変組織におけるCD1a,CD1b,CD1c,CD83の分布  CD1a CD1b CD1c CD83 症例1 − − − − 症例2 + − − − 症例3 − − − − 症例4 + − + − 症例5 + + − + 症例6 − − + − 症例7 − − − − 症例8 − − − − 症例9 + − − + 対象症例 サルコイドーシス群における免疫染色の結果 症例4:サルコイドーシス 肺組織 症例9:サルコイドーシス 頸部リンパ節

(6)

3.サルコイドーシスの治療法の検討

 サルコイドーシスの治療のためにステロイド隔日投 与を行うと,副腎皮質の機能は保たれるが間脳下垂体 機能の抑制はみられることを示した11)  サルコイドーシスに対して本邦で最初に低用量メソ トレキセート間欠投与の有用性について報告した12)  また吸入ステロイドの導入が治療効果があるか検討 し,その肺病変に対する治療の可能性を初めて報告し た13)  中高年女性のサルコイドーシスの予後は,他の年代 に比して不良であることが多い.そこで,後述するよ うに実験的に性ホルモンの低下が肉芽腫形成反応を助 長することを確認し14),これを基に臨床的な応用とし てホルモン補充療法が肝臓サルコイドーシス病変に有 効であることを報告した15)

4. サルコイドーシスの予後因子に関わる因子の検討

 サルコイドーシスは予後関連因子の解析では,中高 年のサルコイドーシスの予後が不良であり,妊娠・出 産を契機にサルコイドーシスの病勢が大きく変動する ことなどの臨床的観察から,性ホルモンと肉芽腫形成 の関係をあきらかにした14)  また肺胞マクロファージにおける25-hydroxyvita-min D3 1α-hydroxylase geneの発現を検討した.1,25

(OH)2D3が肉芽腫形成部位で産生されることが知ら

れているが,それは25(OH)D3 1α-hydroxylase gene

の発現の結果である.その機序をFigure 7に示す.結

果としてマクロファージ上の1,25(OH)2D3の受容体に

作用してマクロファージの融合が促されることにな る.このように25(OH)D3 1α-hydroxylase geneの発

現とサルコイドーシスの活動性や予後との関連が推 定される.実際,Figure 8に示すように25(OH)D3 1 α-hydroxylase geneの発現とBALリンパ球,CD4/8, ACEまた予後との関連を見いだした16)  サルコイドーシスの末梢血とBAL細胞における Th1/Th2,Tc1/Tc2のプロフィールと17).サルコイ ドーシスにおいて自己抗体検出の頻度が高く,自己抗 体検出例では予後不良であるため18),自己免疫疾患と の関連を抗TPO抗体測定を中心におこなった19).サ ルコイドーシスで抗血管内皮細胞抗体の検出例は,多 臓器病変の存在が示唆された20)

(7)

Figure 8. サルコイドーシスの活動性とマクロファージでの25-hydroxyvitamin D3 1α-hydroxylase gene expression

a)

b)

c)

Lym CD4/8 ACE

Cells from BAL fluid NA:nonadherent A:adherent 対象 報告者 症例数 年齢 TST† 陽性率 QFT 陽性率 サルコイドーシス 90 48.7 3.5% 3.3% (23-73) (3/84) 健常者 Mori 216 20* 64.6% 1.8% (18-33) (73/113) Kang 99 25* 51% 4.0% (24-36) (50/99) *median(range)

†TST = tuberculin skin test

(8)

引用文献

1) Akiyama J, Chida K, Sato A, et al: Four monoclonal an-tibodies, AMH-1, -2, -3, -4, give varied reactivities with monocytes, alveolar macrophages, and epithelioid-cell granulomas. J Clin Immunol 8: 372-380, 1988

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Table 1.   Cell Populations Labeled with AMH-1, AMH-2, AMH-3, and AMH-4
Figure 2.   ラット肉芽腫形成モデルにおける樹状細胞とT細胞の分布Rat granuloma model protocol
Figure 4.   サルコイドーシス患者の肺生検およびリンパ節標本の切片における免疫染色Immunostaining of granuloma with OX62(DC)
Figure 5.   T細胞への抗原情報の提示に関わるMHC Class I,MHC Class II以外のMHC
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