91 臨床報告
嗜黙構、画塾、車窓〕
術前の経血管的塞栓術が効果的であった脳動静脈奇形の1例
東京女子医科大学付属第二病院 脳神経外科 タケ ヤマ エ ミ ジン ボ ミノル武山英美・神保 実
東京女子医科大学付属脳神経センター 神経放射線科 コ バヤシ ナオ トシ小 林 直 紀
東京女子医科大学付属第二病院 放射線科 オ ノ ユウ コ小 野 由 子
戸田中央病院 脳神経外科 コシ ミズ ケン ジ タケ ヤマ エイ ジ輿水健治・竹山英二
(受付平成3年9月19日) 緒 言 手術的治療の対象となる脳動静脈奇形(以下 AVMと略)は直達手術による全摘出術が原則で ある.一方,超選択的な頭蓋内動脈catheteriza・ tionが可能となり,大きなAVMに対する根治的 手術の補助手段としての塞栓術の評価が高まりつ つある. 我々は超選択的血管造影用のmicrocatheter を用いてN−buty1・2・cyanoacrylateを右前頭葉 1arge AVMの流入動脈に注入し摘出術前塞栓術 を行い,良好な結果を得たので報告する. 症 例 患者:48歳,女性. 主訴:意識喪失発作. 家族歴:特記すべきことなし. 既往歴:幼児期に2回の意識喪失発作があっ た. 現病歴:平成2年6月17日歩行中全身けいれん を伴う意識喪失発作があり,他医より紹介されて 6月21日戸田中央病院脳神経外科外来を訪れた. 神経学的に異常無く,脳波(EEG)にて右前頭葉 にθ波帯域の徐波焦点を認めた.頭部CTにて右 前頭葉AVMを疑い,脳血管撮影を施行. AVMの 確定診断を得た.根治術を勧めるも希望せず,以 後抗てんかん剤を服用しつつ外来通院を継続して いた.同年11月24日,外出先にて強い頭痛発作あ り他医入院.くも膜下出血と診断された. 12,月5日根治術を希望して戸田中央病院脳神経 外科に入院した. 入院時所見:胸腹部所見に異常無く,神経学的 所見にも異常を認めなかった.頭部にbruitを聴 取しなかった.血液,尿,生化学検査にて異常を 認めなかった. 脳血管撮影所見(写真1,2):右前頭蔀に大き なAVMのnidusを認め,その栄養」血管は右中大 脳動脈(写真1左),左前大脳動脈より供給されて いた. draining veinは上矢状静脈洞へ流入する直前 Emi TAKEYAMA and Minoru JIMBO〔Department of Neurosurgery, Tokyo Women’s Medical Co11ege Daini Hospita1〕, Naotoshi KOBAYASHI〔Department of Neuroradiology, Neurological Institute, Tokyo Women’s Medical College〕, Yuko ONO〔Department of Radiology, Tokyo Women’s Medical College Daini Hospital〕, Kenji KOSHIMIZU and Eiji TAK:EYAMA〔Department of Neurosurgery, Toda Chuo Hospital〕Asuccessful case of arteriovenous malformation by preoperative transarterial embolization一91一
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R L R L
写真1 右:左内頚動脈写動脈相前後像,左:右内頚動脈写動脈相前後像 AVM nidusは左前大脳動脈と右中大脳動脈よりのfeeding arteryにより描出され る.R L R l一
写真2 右:左内頚動脈写毛細血管相前後像,左:左内頚動脈写後期動脈相前後像 draining veinは上矢状静脈洞へ入る直前で静脈瘤様に拡大している. で静脈瘤様に拡大していた(写真2). AVM nidusのサイズは6×6×5cmであった. 経血管的塞栓術:開頭摘出前,平成3年1月4 日,2月1日の2回,経血管的塞栓術を施行した. EEG,体性感覚誘発電位(SEP)をモニターし ながら超選択的にマイクロカテーテルチップを nidus近くまで進めたうえで,チオペンタールナ トリウムを注入し神経脱落症状の発現しないこと を確認した. 上記テスト後リストアクリルブルー(N・buty1− 2・cyanoacrylate)とりピオドールの混合物を 0.2∼0.3m1注入してfeeding arteryおよび nidusの閉塞を試みた. 2回目の塞栓術中,右pre・frontal arteryに embolusを注入後マイクロカテーテル抜去時に 右肉頚動脈C5部の閉塞を来した.幸い右後交通動 脈を介して右中大脳動脈領域の血流は保たれ, EEG, SEPに変化なく,神経学的脱落症状は惹起 しなかった. 都合2回の塞栓術で主な栄養動脈である右中大 脳動脈の枝3本と左前大脳動脈の枝3本のうち2 本を塞栓した.一92一
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post EMBOuZATlON
写真3 塞栓術前後の左内頚動脈写前後像 nidus volumeは1/2以下になっている.左前大脳動脈 からの主なfeeding arteryは3本のうち2本が閉塞 し1本となっている, 写真4 AVM開頭摘出術後の左内頚動脈写 AVM nidusは消失している, 塞栓術後の左内頚動脈写前後像にてnidusの明 らかな縮小が認められnidus volumeは1/4に なっていた(写真3). 手術所見:3月13日摘出術を施行した.両側前 頭皮切にて正中を越えた右前頭開頭を施した.ま ず,大脳縦裂間にて残存した左前大脳動脈からの 1本の栄養動脈をクリップ切断後nidusを剥離 し,draining veinと共に摘出した.出血は少なく, 無輸血にて手術を終了した.術後経過:術後の左内頚動脈写にてAVM
nidusは消失していた(写真4).4月12日軽度の 嗅覚低下以外の神経学的脱落症状なく退院した. 考 察 AVMに対する塞栓術の方法は, Serbinenco1) のdetachable balloonによる88例の報告, De− brunら2)のisobuty1・2・cyanoacrylateをemboli としてcalibrated・1eak balloon catheterを用い た46例の報告が有名である. Serbinencoは88例のradically inoperableAVMにおいて,殆どの症例で塞栓術により
AVM vo1㎜eの75%の減少をみたと報告してい る, Debrunらはcomplete obliterationが難しいこ と,接着剤が正常血管に入ることも有りうること, latex製のballoonの方が合併症を起こしにくい ことをコメントしている. Takiら3)はdetachable balloon法の経験から,バルーンはAVMの塞栓子としては限界がある
が,生体接着剤を用いた場合はパルーソが血管に 接着する危険性を指摘している. Lussenhopら4)はルーチンな術前塞栓術を施行 しない理由として,主な栄養動脈を閉塞すると, より深い部位に外科的な処置のしにくい栄養動脈 が発達してしまうからであると述べている. 本症例では,新たな深部の栄養動脈の発達は塞 栓術後の血管撮影,手術所見にて認められなかっ た.現在ではAVMに対する塞栓術は一部の症例
を除いて完全閉塞を期待するものではなく,開頭 術を前提とした補助手段であるという考えが一般 的であると思われる.塞栓術プラスplamed sur− geryの適応はcirculatory breakthroughの可能 性のあるもの,主な栄養動脈へのアプローチの困 難なものに大別される4).本症例は前者の範時に 入ると思われる. 従来の実積を考慮すると,AVM nidusそのも のの閉塞を期待する塞栓術の方法としては,生体 接着剤を用いたcalibrated leak balloon法2), detachable leak balloon法5)がすぐれているよう一93一
94 である.合併症としては,血管破裂2),接着剤の正 常血管への流入6),カテーテルの接着等がある. 本症例でも2回目の塞栓術中に右内頚動脈に接 着剤の流入を来した.幸い豊富な側副血行路の存 在により神経症状を惹起しなかったが,接着剤の 量,注入圧,マイクロカテーテル抜去のタイミン グ等,テクニヅク上の課題が残った. 上記合併症を克服して術前の塞栓術が極めて安 全に施行できれぽ,本症例の手術経験一出血が少