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日本補完代替医療学会誌 総 説 ヘマトコッカス藻由来 アスタキサンチン アスタリールの安全性 The Safety of AstaREAL, an Astaxanthin Product Derived from Haematococcus pluvialis 第12 巻 第1号 2015 年 3

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藻由来アスタキサンチン製品である,富士化学工業の アスタリールを中心にまとめた.更に,最新の研究に 基づいて,医薬品との相互作用に関与する薬物代謝酵 素へのアスタキサンチンの影響を考察した.ヘマトコ ッカス藻由来アスタキサンチンであるアスタリールの 安全性は,多岐に渡るエビデンスにより確立されてい る. 【キーワード】 アスタキサンチン,ヘマトコッカス藻,食経験,安全 性,薬物相互作用 1. はじめに アスタキサンチンは,ニンジンの b カロテンやトマ トのリコピンと同じカロテノイドの一種であり,特に魚 介類に多く含まれる赤色の天然色素である(図 1).商 業的には,赤色色素として食品添加物や養殖魚の色揚剤 に使われる一方,優れた抗酸化作用を有すること,また, 眼の疲れ,脳機能,メタボリックシンドローム,アトピ ー性皮膚炎,美肌等に有益な効能を有することが見出さ れてからは,色素としてよりも健康食品素材として,サ プリメントや一般食品に利用されることが増えてきた1) そのような状況から,食品としてのアスタキサンチンの 科学的データに基づく安全性が求められ,これまで約 10 年の間に数多くの安全性試験や毒性試験が実施され ている. 食品で使用されるアスタキサンチン製品としては,培 養ヘマトコッカス藻,培養ファフィア酵母,またはオキ アミから抽出される生物由来の天然アスタキサンチンと 化学合成アスタキサンチンがある.経口摂取後の血中濃 度におけるバイオアベイラビリティの優位性2) や食経験 の豊富さから,市場で広く普及しているのは,ヘマトコ ッカス藻を由来とするアスタキサンチン製品である. 現在,ヘマトコッカス藻を由来とするアスタキサンチ ン製品の供給は,国内外の数社が行っている.製品の品 質は,原料である藻の培養法や,藻からのアスタキサン チンの抽出・精製法等の影響を受けるため,各メーカー

【総  説】

ヘマトコッカス藻由来

アスタキサンチン:

アスタリールの安全性

The Safety of AstaREAL, an

Astaxanthin Product Derived

from Haematococcus

pluvialis

高橋二郎

1,*

,本江信子

1

,大木史郎

1

北村晃利

1

,塚原寛樹

1

許 鳳浩

2

,鈴木信孝

2

Jiro TAKAHASHI

1,*

, Nobuko HONGO

1

,

Shiro OHKI

1

, Akitoshi KITAMURA

1

,

Hiroki TSUKAHARA

1

, Hoko KYO

2

,

Nobutaka SUZUKI

2 1 富士化学工業株式会社 LS 事業部 2 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 臨床研究開発補完代替医療学講座 【要 旨】 赤色のカロテノイドであるアスタキサンチンは,優れ た抗酸化作用や様々な生理作用を有すことが知られる ことから,機能性健康食品素材として注目されている. これまで約 10 年の間に,アスタキサンチンに関する 臨床試験が数多く実施され,その中で食品としてのア スタキサンチンの安全性が報告されている.本総説で は,これら安全性に関する臨床試験の報告と,遺伝毒 性及び急性・亜慢性毒性等の毒性試験の報告を,効能 研究及び安全性試験の報告が最も多いヘマトコッカス 受理日:2015 年 2 月 26 日 * 〒930–0397 富山県中新川郡上市町横法音寺 55 富士化学工業株式会社 LS 事業部 LS 開発部  Tel: 076–472–2389 Fax: 076–472–5090 E-mail: [email protected]

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いる微細緑藻類のヘマトコッカス藻は,安全性に加えて 規格及び用途の確立した天然物由来の既存添加物「ヘマ トコッカス藻色素」として,平成 19 年 8 月より第 8 版 食品添加物公定書に収載されている. 3. アスタキサンチンのヒト安全性試験(表 1 及び 2) アスタキサンチンの臨床効能試験では,アスタキサン チン 6 mg から 12 mg/ 日を 4 週間摂取し,その有効性を 認めた報告が多い.その経緯から,アスタリールの安全 性試験では,長期摂取としてアスタキサンチン 6 mg ま たは 9 mg/ 日を 12 週間摂る試験が実施され,また過剰 摂取としてアスタキサンチン 30 mg または 45 mg/ 日を 4 週間摂る試験が実施された.以下に,アスタリールを 用いた長期摂取試験及び過剰摂取試験を含む安全性試験 (表 1A)と,その他のヘマトコッカス藻抽出物を用いた 安全性試験について記述する. まず,長期摂取安全性試験であるが,健常成人(男性 8 名,女性 7 名,平均年齢 33 歳)がアスタリールをア スタキサンチンとして 6 mg/ 日で 12 週間摂取し,摂取前, 摂取開始 4 週後,8 週後及び 12 週後に理学的検査,問診, 血液学的検査,血液生化学的検査及び尿検査を行ったと ころ,臨床的に問題となる点はみられず,試験食品に起 因する有害事象も認められなかった4).さらに,健常成 人(男性 8 名,女性 7 名,平均年齢 39 歳)がアスタリ ールをアスタキサンチンとして 9 mg/ 日で 12 週間摂取 し,同様の検査を行ったところ,臨床上問題となるよう な異常は認めなかった5) 次に,過剰摂取安全性試験であるが,健常成人(男性 5 名,女性 5 名)がアスタリールをアスタキサンチンと して 30 mg/ 日で 4 週間摂取し,摂取前,摂取開始 2 週後, 4 週後,6 週後(摂取終了 2 週後)及び 8 週後(摂取終 了 4 週後)に理学的検査,眼科検査,問診,血液学的検 査,血液生化学的検査及び尿検査を行ったところ,臨 床上問題となるような有害事象はみられなかった6).ま た,平均年齢 42 歳の健常男女 23 名を,より客観的安全 性評価を可能とする二重盲検法で,アスタリールをアス タキサンチンとして 30 mg/ 日で摂取する群 11 名とプラ セボ群 12 名に分け,4 週間摂取し,摂取前,摂取開始 2 週後及び 4 週後に理学的検査,眼科検査,問診,血液学 的検査及び血液生化学的検査を行ったところ,摂取前後 及び群間で問題となるような推移や差は認められなかっ た7).同様に,平均年齢 41 歳の健常男女 22 名を,アス タリールをアスタキサンチンとして 45 mg/ 日で摂取す る群 15 名とプラセボ群 7 名に分け,摂取前,摂取開始 2 週後及び 4 週後に眼科検査及び問診を,摂取前及び摂 が採用する製法によって様々である.例えば,通常のヘ マトコッカス藻由来アスタキサンチン製品には,光合成 生物特有の色素であるクロロフィルが混在している.ク ロロフィルは,化学的・酵素的にフェオフォルバイド等 の分解物に容易に変換される.このクロロフィル分解物 は,太陽光によって皮膚等の炎症を引き起こす光過敏症 原因物質の一つであるため,クロロフィル及びその分解 物はできるだけ少ない方が,安全性の面から好ましい. 製品のクロロフィル含有量は,藻の培養方法や環境によ って,さらにクロロフィル分解物の生成は,抽出や製剤 化の工程や製剤の管理方法によって,大きく影響を受け ることが知られている3) 本総説では,安全性試験及び効能研究の報告が最も多 い富士化学工業株式会社のヘマトコッカス藻由来アスタ キサンチン製品,アスタリールの安全性について主に 検討した.当製品は,5%のアスタキサンチンを含有し, 上述のクロロフィル及びその分解物の含有量が他の製法 によるヘマトコッカス藻由来アスタキサンチン製品に比 べて非常に低いことが確認されている3) 2. アスタキサンチンの食経験 アスタキサンチンは,海洋性細菌,酵母,藻類等によ って産生され,食物連鎖を通じて,サケ,エビ,カニ等 の筋肉,体表,卵に取り込まれる.加熱調理したエビや カニが鮮やかな赤橙色を呈するのは,タンパク質に結合 していたアスタキサンチンが,変性タンパク質から遊離 することによる.赤色の水産物を日常的に食してきた日 本人は,豊かな天然アスタキサンチンの食経験を有して いるものと考えられる. また,化学合成アスタキサンチンは,長年に渡り水産 分野で養殖魚の色揚げ目的で飼料添加物として使用され てきた実績がある.養殖魚はヒトが食するものであるの で,食品安全委員会から厚生労働大臣及び農林水産大臣 に,食品健康影響評価の答申がなされている(厚生労働 省発食安第 0825002 号に係る食品健康影響評価の結果の 通知について,食品安全委員会 委員長 寺田雅昭,府 食第 281 号の 2,平成 16 年 3 月 11 日).その中で,飼 料添加物アスタキサンチンの安全性試験の結果において 問題を認めなかったこと,アスタキサンチンは自然界に 広く存在し食品として日常摂取されていること,アスタ キサンチンは食品添加物及び飼料添加物として使用実 績があることにより,1 日摂取許容量 (Acceptable Daily Intake, ADI) を設定しないこと,すなわち,特に摂取量 制限は不要であることが記されている. アスタキサンチンを高効率に産生することで知られて

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べられており,アスタリールの安全性について報告され ている(表 1B)12–24).表 2 には,アスタリール摂取の 安全性報告を臨床試験における摂取量と摂取期間の視 点からまとめた.これまで,アスタキサンチンとして 2 mg から 45 mg/ 日の用量で,10 日から 12 週間の期間 の連日摂取試験が実施されている.最も報告が多いのは 6 mg/ 日の 4 週間摂取試験であったが,45 mg/ 日を 4 週 間または 18 mg/ 日を 12 週間摂取した試験も報告されて いる.以上のいずれにおいてもアスタリールによる有害 事象はなかった. アスタリールの眼に対する安全性は,特に詳細に検討 されている.その理由は,アスタキサンチンと同じカロ テノイドに属し,類似の化学構造を有するカンタキサン チンでは,網膜上にカンタキサンチンの結晶が蓄積し, 視機能に異常をもたらす「カンタキサンチン網膜症」が 知られているからである.アスタキサンチンを摂取する ことで同様の障害が起こるのではないかと危惧され,先 の平成 16 年の「飼料添加物アスタキサンチン及びカン タキサンチンの食品健康影響評価」では,特に眼に関す る文献調査が詳細に行われた.結果は,カンタキサンチ ンは動物やヒトの網膜上に結晶の沈着が認められた一方, アスタキサンチンに関しては,「網膜に沈着しにくいと 判断した」旨が記されている.結論として,摂取量制限 (ADI の設定)は不要と記されたことは上述の通りであ る. アスタリールで眼の疲れ,眼底血流に関する臨床試験 取開始 4 週後に前述の検査に加え,血液学的検査及び血 液生化学的検査を行ったところ,摂取前後及び群間で臨 床上問題となるような点は認められなかった8).さらに, 中高年齢男女 19 名(平均年齢 62 歳)を,アスタリール をアスタキサンチンとして 45 mg/ 日で摂取する群 12 名 とプラセボを摂取する群 7 名に分けて,摂取前及び摂取 開始 4 週後に,眼科検査及び問診を行ったところ,摂取 前後及び群間で臨床上問題となるような変動は認められ なかった9) 米国で行われた二重盲検試験でも,35 歳から 69 歳の 健常男女を,ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチ ンとして 6 mg)摂取群 19 名とプラセボ摂取群 16 名に 分け,摂取前,摂取開始 4 週後及び 8 週後に血圧測定, 血液学的検査及び血液生化学的検査を行ったが,臨床上 重要な差異を認めなかったと報告している10) 3 段階の用量水準を設定した試験も行われている.総 数 127 名を,ヘマトコッカス藻抽出物アスタキサンチン 4 mg 群(男性 51 名,女性 22 名),8 mg 群(男性 21 名, 女性 17 名),20 mg 群(男性 12 名,女性 4 名)の 3 群 に分け,それぞれ 4 週間摂取し,摂取前及び摂取開始 4 週後に問診,血液学的検査及び血液生化学的検査を行っ たところ,いずれの摂取群においても摂取前後の検査値 に統計的な有意差はなく,有害事象がなかったことが報 告されている11) 安全性試験に限らず,アスタキサンチンの効能探索を 目的とした臨床試験でも,問診や血液検査等の項目が調 表 1A アスタリールのヒト安全性試験 対象者 用量 *:被験者数 期間 安全性に関する評価 文献 長期摂取 健常成人男女 (平均 33 歳) 6 mg/ 日:15 名 12 週間反復 ・身体計測及び理学検査で異常なし ・血液検査及び尿検査で異常なし ・自覚症状及び医師診察で有害事象の発生なし 4) 健常成人男女 (平均 39 歳) 9 mg/ 日:15 名 12 週間反復 ・身体計測及び理学検査で異常なし ・血液検査及び尿検査で異常なし ・自覚症状及び医師問診で有害事象の発生なし 5) 過剰摂取 健常成人男女 30 mg/ 日:10 名 4 週間反復 ・身体計測及び理学検査で異常なし ・血液検査及び尿検査で異常なし ・眼科検査で異常なし ・医師問診で有害事象の発生なし 6) 健常成人男女 (平均 42 歳) 30 mg/ 日:11 名プラセボ:12 名 4 週間反復 ・血圧測定で異常なし ・血液検査で異常なし ・眼科検査で異常なし ・有害事象の発生なし 7) 健常成人男女 (平均 41 歳) 45 mg/ 日:15 名プラセボ:7 名 4 週間反復 ・身体計測及び理学検査で異常なし ・血液検査及び尿検査で異常なし ・眼科検査で異常なし ・医師問診で有害事象の発生なし 8) 健常成人男女 (平均 62 歳) 45 mg/ 日:12 名プラセボ:7 名 4 週間反復 ・眼科検査で異常なし 9) * アスタキサンチンフリー体換算として

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スタキサンチンとして 30 mg/ 日でオープンラベル試験 と二重盲検試験が 1 回ずつ,45 mg/ 日で二重盲検試験 が 2 回実施されている.視力,眼圧,屈折,眼底,細隙 灯顕微鏡等の検査で異常は認められていない.これらに より,アスタリールを過剰に摂取しても,網膜に影響を 及ぼすことは無いものと考えられる. 他の食品素材とアスタリールを併用摂取した臨床試 験でも,有害事象は認められていない.健常成人(男 性 3 名,女性 10 名,平均年齢 36 歳)が,アマリグナ ン 50 mg/ 日とアスタリール(アスタキサンチンとして が多数あり,試験期間前後で,眼科医による検査が行 われている.11 報の論文のうち,7 報がプラセボ対照比 較二重盲検試験13,15,17–19,22,24),1 報が二重盲検クロスオー バープラセボ対照比較試験25),1 報がプラセボ対照比較 単盲検試験14),さらに 2 報がオープンラベル試験26,27)で, アスタキサンチンとして 2,4,5,6,9 または 12 mg/ 日を 2 または 4 週間摂取して,臨床上,特に眼科所見で 問題となる異常は報告されていない.さらに,上述した 様に,詳細な眼科検査を含む過剰摂取安全性試験が 4 回 行われている.摂取期間は 4 週間で,アスタリールをア 表 1B ヒト効能効果試験におけるアスタリールの安全性評価 対象者 用量 *:被験者数 期間 安全性に関する評価 文献 健常男性 (平均 20 歳) プラセボ:17 名6 mg/ 日:17 名 4週間反復 ・血液検査で異常なし 12) 健常成人男女 (平均 48 歳) プラセボ:13 名5 mg/ 日:13 名 4 週間反復 ・有害事象の発生なし 13) 健常成人男女 (平均 45 歳) 12 mg/ 日:13 名 4 mg/ 日:14 名 2 mg/ 日:12 名 プラセボ:10 名 4 週間反復 ・有害事象の発生なし 14) 健常成人男女 (平均 41 歳) プラセボ:18 名6 mg/ 日:18 名 4 週間反復 ・自覚症状,身体及び血圧計測で異常なし ・血液検査で異常なし ・眼科検査で異常なし 15) 健常成人 (平均 54 歳) プラセボ:10 名6 mg/ 日:10 名 10 日間反復 ・医師診察及び自覚症状所見で有害事象の発生なし 16) 健常成人男女 (平均 23∼49 歳) 6 mg/ 日:10 名 12 mg/ 日:10 名 プラセボ:10 名 4 週間反復 ・理学的検査で異常なし ・血液検査で異常なし ・眼科検査で異常なし ・医師問診及びアンケート調査で有害事象の発生なし 17) 健常成人男女 (平均 31 歳) プラセボ:20 名6 mg/ 日:20 名 4 週間反復 ・理学的検査で異常なし ・血液検査で異常なし ・眼科検査で異常なし ・医師問診及びアンケート調査で有害事象の発生なし 18) 健常成人男女 (平均 38 歳) プラセボ:28 名6 mg/ 日:31 名 4 週間反復 ・理学的検査で異常なし ・血液検査で異常なし ・眼科検査で異常なし ・医師問診で有害事象の発生なし 19) 健常フィンランド人男性 (19∼33 歳) プラセボ:19 名8 mg/ 日:20 名 12 週間反復 ・血液検査で異常なし ・血圧計測で異常なし ・有害事象の発生なし 20) 健常成人男女 (平均 38 歳) 6 mg/ 日:16 名 4 週間反復 ・医師問診で有害事象の発生なし 21) 健常成人男女 (平均 39 歳) プラセボ:41 名9 mg/ 日:43 名 4 週間反復 ・理学的検査で異常なし ・血液検査で異常なし ・眼科検査で異常なし ・医師問診で有害事象の発生なし 22) 健常成人男女 (平均 44 歳) 18 mg/ 日:16 名 12 mg/ 日:15 名 6 mg/ 日:15 名 プラセボ:15 名 12 週間反復 ・身体及び血圧計測で異常なし ・血液生化学的検査で異常なし ・脱落例なし 23) 健常成人男女 (平均 39 歳) 12 mg/ 日:10 名プラセボ:10 名 4 週間反復 ・血液検査で異常なし ・眼科検査で異常なし ・医師問診及びアンケート調査で有害事象の発生なし 24) * アスタキサンチンフリー体換算として

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サンチンとして 20 mg/ 日)を併用摂取する群 16 名とプ ラセボを摂取する群 15 名に分け,4 週間摂取させたが, 有害事象は報告されなかったと記している30) 4. アスタキサンチン(アスタリール)の毒性試験(表 3) 通常行われる食品素材の毒性試験とは,遺伝毒性試験 (Ames 試験,小核試験,染色体異常試験),げっ歯類に おける急性毒性試験及び亜慢性毒性試験等である. 大腸菌及びネズミチフス菌を用いた Ames 試験(復帰 突然変異試験)では,アスタリール(アスタキサンチン として 8.6∼275 mg/ プレート)を添加してコロニーの形 成を観察したところ,突然変異による異常なコロニーの 6 mg/ 日)とを 4 週間併用摂取したところ,血圧・脈拍 測定,血液学的検査及び血液生化学的検査において臨床 的に問題となる変動は無く,試験期間中試験食品に起因 する有害事象を認めなかった28).また,平均年齢 56 歳 の閉経後女性 20 名が,トコトリエノール 40 mg/ 日と L-アスコルビン酸グルコシド 15.6 mg/ 日と共にアスタリ ール(アスタキサンチンとして 12 mg/ 日)を 8 週間併 用摂取し,摂取前,摂取開始 4 週後及び 8 週後に身体及 び精神的自覚症状,理学的検査,血液学検査,血液生化 学的検査及び尿検査を行った試験でも,臨床上の問題 点は認めていない29).オランダで行われた二重盲検試験 では,平均年齢 25 歳の健常男性を,ビタミン C 300 mg/ 日及びビタミン E 50 mg/ 日とアスタリール(アスタキ 表 2 臨床試験におけるアスタリールの摂取量と摂取期間 摂取用量 * 反復摂取期間 10 日間 4 週間 8 週間 12 週間 2 mg/ 日 (14) 4 mg/ 日 (14) 5 mg/ 日 (13) 6 mg/ 日 (16) (12), (15), (17), (18),(19), (21), (28) (4), (23) 8 mg/ 日 (20) 9 mg/ 日 (22) (5) 12 mg/ 日 (14), (17), (24) (29) (23) 18 mg/ 日 (23) 20 mg/ 日 (30) 30 mg/ 日 (6), (7) 45 mg/ 日 (8), (9) * アスタキサンチンフリー体換算として ( ) は文献番号 表 3 アスタリールの毒性試験 評価項目 動物/細胞 用量 *,方法 投与期間(試験期間) 結果 文献 変異原性 (Ames 試験) ネズミチフス菌大腸菌 8.6∼275 mg/ プレート ― ・陰性 31) 変異原性 (染色体異常試験) CHL/IU 株 1.5∼6.5 mg/ml 6,18,24 時間 ・陰性 32) 変異原性 (小核試験) ICR マウス(雄) 25,50,100 mg/kg強制経口投与 (72 時間後まで観察)単回 ・陰性 32) 急性毒性 SD ラット (雌雄) 強制経口投与100 mg/kg (14 日後まで経過観察)単回 ・死亡例なし 31) SD ラット (雌雄) 強制経口投与420 mg/kg (14 日後まで経過観察)単回 ・死亡例なし 33) 亜慢性毒性 SD ラット (雌雄) 2,10,50 mg/kg強制経口投与 90 日間 ・一般状態,体重及び摂餌量に異常なし ・尿及び血液,生化学,病理学的検査で 異常なし 31) Wistar ラット (雌雄) 0.035∼0.7%混餌投与 90 日間 ・一般状態,体重及び摂餌量に異常なし ・尿及び血液,生化学,病理学的検査で 異常なし 33) * アスタキサンチンフリー体換算として

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題となる影響は認められなかった34).論文に記されて いる 7 週目のラット体重及び摂餌量のデータを用いて 推計してみると,NOAEL は,雄で 53.2 mg/kg,雌で 54.8 mg/kg となる.これは,アスタリールとほぼ同じ NOAEL である. これらラットに対する毒性が,ヒトに対する毒性と同 程度とは限らない.種差,ヒトではより大きな個体差 があるからである.そこで,ラット実験から得られた NOAEL を,経験的な安全係数(種差:10×個体差:10 = 100)で割る,すなわち NOAEL/100 が,ヒトが生涯に 渡り毎日摂取しても毒性のリスクは無い摂取量 (ADI) と 一般に考えられている.上述のように亜慢性毒性試験 におけるアスタリール31) 及び他のヘマトコッカス藻抽 出物34) の NOAEL は約 50 mg/kg なので,ヒトでは 1/100 の 0.5 mg/kg と推計され (ADI > 0.5 mg/kg),つまり体重 60 kg のヒトに対して 30 mg/ 日以下のアスタキサンチン 摂取は,十分に安全と言える.一般に国内で販売されて いるアスタキサンチンのサプリメント製品の推奨摂取量 は,アスタキサンチンとして 2 mg から 12 mg/ 日(体重 60 kg のヒトで 0.03 mg/kg から 0.2 mg/kg)である.この 1 日用量は,ラット毒性試験で安全と判断された用量に 一致し,またヒト安全性試験で安全性が確認された用量 でもあることから,十分に安全域内である.もっとも, この NOAEL は各実験で用いられた最高量なので,もっ と高い用量であっても安全であると考えられる. ヘマトコッカス藻由来アスタキサンチンに関して, Wistar 系ラットの妊娠出産に及ぼす影響が調べられて いる.雌ラットをアスタキサンチン 0.02%混餌で飼育 し,雄と交配させて,出産匹数,奇形の有無を対照群と 比較したところ,まったく差が無かったと報告されてい る35).交配時の体重が約 200 g と記されており,摂餌量 は約 15 g/ 日となるので,ラットの妊娠出産に影響無い アスタキサンチン用量は 15 mg/kg と推計される. 5. アスタキサンチンと医薬品の相互作用 近年,社会の高齢化に加え,補完代替医療の普及によ り,疾病の予防や治療にサプリメントが応用され,医薬 品とサプリメントが併用される機会が増えている.高血 圧や糖尿病等の疾病を改善するという研究結果が多数報 告されているアスタキサンチンも,代替医療での利用が 期待されている機能性健康食品素材の一つである.しか しながら,これまでアスタキサンチンと医薬品との相互 作用に関する臨床報告は知る限り見当たらない. 医薬品とアスタキサンチンの相互作用を予測するため に,薬物相互作用において主要な代謝酵素であるシトク 増加は見られず,結果は陰性であった31).マウスを用い た小核試験では,アスタリール(アスタキサンチンとし て 25,50 または 100 mg/kg)を単回経口投与し,投与 24 時間後,48 時間後及び 72 時間後に骨髄細胞中の病的 な核(小核)の形成を観察したところ,小核形成は見ら れず,結果は陰性であった32).ほ乳類培養細胞を用いる 染色体異常試験では,アスタリールを培養細胞に処理し て染色体異常の観察を行ったところ,染色体異常を持つ 細胞の出現頻度が対照と変わらず,陰性と判定された32) 急性毒性試験では,アスタリールを 2000 mg/kg(ア スタキサンチンとして 100 mg/kg)の用量で SD 系ラッ トに単回経口投与し,投与 14 日後まで観察したが,異 常行動や死亡例を認めなかった.その結果,急性毒性 試験における LD50 は 2000 mg/kg(アスタキサンチンと して 100 mg/kg)以上であると判定された31).亜慢性毒 性試験とは,被験物を連日投与して数週間から 3 ヶ月 の間に発現する毒性を調べる試験である.数段階の用 量を設定して,有害な影響が発現しない最大無毒性量 (No Observed Adverse Effect Level, NOAEL) を求める.先 の急性毒性試験に比較して詳細な項目(一般状態,体 重,摂餌量,尿検査,血液学的検査,血液生化学的検査 及び各臓器の病理組織学的検査等)を調べ,対照群と比 較して毒性を判定する.アスタリールを 0,37,185.2 または 925.9 mg/kg の用量で SD 系ラットに 13 週間連 日強制経口投与を行ったところ,NOAEL は最高用量の 925.9 mg/kg(アスタキサンチンとして 50 mg/kg)と判 定された31) ヘマトコッカス藻の藻体そのものでも,ラット毒性 試験が行われている.藻体とは,培養藻を乾燥させた 後に破砕したバイオマスであり,アスタキサンチンを 約 3.5%含有し,アスタリールオイルの前工程品(原 料)である.このヘマトコッカス藻体を SD 系ラットに 12,000 mg/kg 単回経口投与し,投与 14 日後まで観察し たところ,異常行動や死亡例はみられなかった.その結 果,藻体の急性毒性試験における LD50 は 12,000 mg/kg (アスタキサンチンとして 420 mg/kg)以上であると判 定された33).同じヘマトコッカス藻体を餌に 0,1,5 ま たは 20%の用量で混ぜて Wistar 系ラットに 13 週間連日 投与したところ,最高用量投与群でも悪影響は見られ ず,NOAEL は,雄で 14,161 mg/kg(アスタキサンチン として 465 mg/kg),雌で 17,076 mg/kg(アスタキサンチ ンとして 557 mg/kg)と判定されている33).アスタリー ル製品ではないが,F344 系ラットにヘマトコッカス藻 抽出物 0%(アスタキサンチンとして 0%),0.025%(同 0.00975%),0.075%(同 0.02925%)または 0.25%(同 0.0975%)の用量で 13 週間に渡り混餌投与したが,問

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6. まとめ ヘマトコッカス藻由来アスタキサンチン製品であるア スタリールは,下記の点からみて安全性が確立された食 品素材と考えられた. 1) アスタキサンチンは魚介類に多く含まれ,日本人は 天然アスタキサンチンの豊かな食経験を有する.ま た,既存添加物としてのアスタキサンチンには,摂 取量制限がなく,長年の使用実績がある. 2) ヒト安全性試験では,アスタキサンチン 18 mg/ 日 を 12 週間またはアスタキサンチン 45 mg/ 日を 4 週 間連日摂取して有害事象が認められていない.特に, 眼に対しては,より客観性の高いプラセボ対照比較 二重盲検試験で詳細に検査され,アスタキサンチン の安全性が示されている. 3) 毒性試験では,遺伝毒性を認めなかった.ラット の最大無毒性量はアスタキサンチンとして 50 mg/ kg であった.これからヒトの安全域を推計すると 0.5 mg/kg であり,体重 60 kg のヒトで用量 30 mg/ 日以下なら安全であると考えられる. 4) 現状では,特に問題となる医薬品相互作用はない. 参 考 文 献 1) 板倉弘重,高橋二郎,北村晃利.補完代替医療素材とし てのアスタキサンチン.日本補完代替医療学会誌.2008; 5(3): 173–182.

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(8)

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(9)

ABSTRACT

The Safety of AstaREAL, an Astaxanthin Product Derived from Haematococcus pluvialis

Jiro TAKAHASHI

1

, Nobuko HONGO

1

, Shiro OHKI

1

, Akitoshi KITAMURA

1

, Hiroki TSUKAHARA

1

,

Hoko KYO

2

, Nobutaka SUZUKI

2

1 Life Science Division, Fuji Chemical Industries Co., Ltd.

2 Department of Complementary and Alternative Medicine Clinical Research and Development, Kanazawa University Graduate

School of Medical Science

Astaxanthin, a red carotenoid, has been known to possess excellent antioxidant activity and various biological activities, thereby attracting attention as a functional food material. The safety of astaxanthin administered orally has been demonstrated in human clin-ical studies for about ten years. In this review, we summarized the clinclin-ical studies related to safety, as well as studies on genotoxicity, and acute and subchronic toxicity, with a focus on AstaREAL, an astaxanthin product derived from Haematococcus pluvialis which has been reported in numerous human clinical studies to be safe and to have multiple health benefits. Furthermore, based on the latest research, we reviewed the effect of astaxanthin on drug-metabolizing enzymes involved in drug interactions, and concluded that the safety of H. pluvialis-derived astaxanthin, AstaREAL has been widely confirmed.

図 1 アスタキサンチンの化学構造

参照

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