博 士 ( 医 学 ) 福 水 亮 朗
学位論文題名
CD8+TILs together with CD4+TILs and dendritic cells improve prognoslSforpatientSWith panCreatiCadenOCarCinoma
(CD8+TIL はCD4+TIL とdendritic cell と共に 膵 癌 患 者 の 予 後 を 改 善 す る )
学位論文内容の要旨
背 景 と 目 的
H 萃 癌 は 難 治 性 癌 の ー っ と し て 知 ら れ て お り 、 外 科 的 切 除 が 根 治 の 望 め る 唯 一 の 治 療 手 段 で あ る が 、 根 治 的 手 術 を 施 行 し え た 症 例 で も 5 年 生 存 率 は 10 % 程 度 に と ど ま っ て い る 。 最 近 、 癌 患 者 の 予 後 に お け る 腫 瘍 免 疫 の 役 割 が 重 用 視 さ れ 、 大 腸 癌 な ど で は 予 後 決 定 因 子 と し て CD8 陽 性 Tumor infiltrating lymphocyte(TIL) の 存在 がき わめ て重 要で ある こと が示 さ れ て い る 。 ま た 近 年 CD4 陽 性 Tcell は 腫 瘍 免 疫 に お い て 中 心 的 、 統 率 的 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 明 ら か に な り つ っ あ る 。一 方、 Dendritic cells は 抗原 提示 細胞 とし て腫 瘍免 疫 反 応 の 初 期 に 作 用 し 、 CD4 陽 性 Tcell は こ の よ う な 抗 原 提 示 細 胞 か ら MHC classII を 介 し て 抗 原 認 識 を 行 う と 考 え ら れ て い る 。 今 回 我 々 は 免 疫 組 織 学 的 手 法 を 用 い て 膵 癌 の 予 後 に つ き 臨 床 病 理 学 的 因 子 と の 相 関 , CD4 , CD8 陽 性 TIL の 関 係 、 ま た Denrritic cells の 存 在 と の 関 係 を 明 ら か に す る 事 を 目 的 と し 、 検 討 を 加 え た 。
方法
1992 年 か ら 1999 年 に 手 術 さ れ た 膵 癌 切 除 症 例 80 例 を 対 照 と し た . 術 前 に 遠 隔 転 移 の あ っ た 症 例 、 cystadenocarclnoma 、 ム チ ン 産 生 腫 瘍 は 本 検 討 か ら 除 外 さ れ た 。 年 齢 は 31 才 か ら 83 才 ( 平 均 年 齢 62.0 才 ) で あ っ た , 切 除 さ れ た 膵 癌 組 織 に 存 在 す る 免 疫 胆 嚢 細 胞 を 調 ぺ る た め 、 抗 CD4 抗 体 、 抗 CD8 抗 体 、 dendritic cell の マ ー カ ー で あ る 抗 S100 抗 体 を 一 次 抗 体 と し 、 HRP 標 識 二 次 抗 体 お よ び SAB を 用 い て 免 疫 染 色 し た , 染 色 さ れ た 各 標 本 に 対 し り ン バ 球 が 癌 組 織 に 最 も 浸 潤 し て い る 部 位 を 5 箇 所 選 択 し 、 400 倍 視 野 に お け る り ン ノ ヾ 球 の 個 数 の 平 均 値 を 評 価 の 対 象 と し た 。 CD4 に つ い て は 20 以 上 を CD4 ( 十 ) , CD8 に つ い て は 100 以上をCD8 (十)と判定した。更にそれぞれを組み合わせてCD4 /8 (十/十),CD4 /8 (十/・),
CD4/8( ―/十),CD4 /8 (一 /l )の4 群にグループ分けし 、膵癌症例80 例における病理学的因子との
相 関 を 比 ! I 炎 検 討 し た , 次 に こ れ ら の 4 群 の 生 存 率 を Kaplan‑Meier 法 を 用 い て 算 出 し ,
Log‑rank test にて比較 検討した.さらに単・多変量解析をもちいて,CD4 / 8 ( 十/十)が予後に
お よ ぽ す 影 響 を 検 討 し た 。CD4/8( 十 / 十 ) とdcndi'itic ccllの関 係を 調べ るた め 同様 の方 法で 癌 組 織 中 の dendl‑itic cellの 個 数 を 数 え 、 Mann‑Whitney検 定 を も ち い て 検 討 し た 。
結果
1)発現頻度:CD4(十)は47例(58.8%) 、CD4(‑)は33例(41,3 010)、CD8(十)は16例(20.0010)、CD8(‑) は64例 (80.0% ) で あ り 、 腫 瘍 浸 潤 リ ン バ 球 個 数 の 平均 値はCD4(十 ) で87.6、CD4(‑)で1.9、 CD8( 十 ) で148.4、CD8(‑)で45.3で あ っ た 。Kaplan‑Meier法 に よ る 生 存 曲 線 で はCD8( 十 ) は 5年 生 存 率 で42.2%とCD8(ー ) の 7.0%に 対 し 有 意 に 予 後 良 好 で あ っ た(log‑rank test P=0.0228)が 、 CD4に 関 し て は 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 次 にCD4と CD8を 組 み 合 わ せてCD4/8(十/十)、CD4/8(十/‐)、CD4/8(ー/十)、CD4/8(./一)の4つの群に分けたところ5年 生 存 率 で そ れ ぞ れ48.40/0、10.1% 、0% 、4.6% で あ り 、CDッ8( 十 / 十 ) の み が 非 常 に 予 後 良 好 で あ っ た 。CD4/ 8( 十 / 十 ) 以 外 の3つ の 群 を 合 わ せ た5年 生 存 率 は6.8%で あ り 、 CDツ8( 十 / 十 ) と そ れ 以 外 の2群 に 分 け 検 討 を 行 っ た と こ ろP=0.0098(log‑rank test)と 有 意 に予後良好で あった。
2)CD4/8( 十 / 十 ) と 病 理 学的 因子 と の関 連: X2検定 によ りCDッ8(十 / 十) と各 臨床 病理 学 的因 子 と の 関 連 を 調 べ た と こ ろ 、 腫 瘍 深 達 度(P=0.013)、stage( ヰ0.009)と の 間 で 有 意 な 逆 相関が認めら れた。
3) 予 後 と の 関 連 : 単 変 量 解 析 を 行 っ た と こ ろCD4/8( 十 / 十 ) は 予 後 良 好 因 子 で あ り 、 リ ン バ 節 転 移 、 腫 瘍 径 、surgical .marginと 共 に 有 意 な 予 後 規 定 因 子 で あ っ た(P=0.0136)。 さ らに 多変 量解 析に てCD4/8( 十/ 十 )の 危険 率は0.380 (p:ニ ニ0.0305,95% 信頼区間0.158‑0.913) であり、独立 予後因子であった。
4) Dendritic cellとの 関連 :腫 瘍に 浸 潤し てい るdendritic cellの 個数 はCD4/8( 十/ 十) と その 他 の 群 で 比 較 し た と こ ろ23.8対9.9とCD4/8( 十 / 十 ) で 多 く 、Mann‑Whitney検 定 に て 有 意差を認めた(P=0.0069)。
考察
当 初 、 CD4陽 性 TILと CD8陽 性TILの 予 後 に 与 え る 影 響 を 調 べ た が 、CD4( 十 ) は 有 意 な 予 後 規 定 因 子 で は な く 、CD8( 十 ) は 有 意 な 予 後 規 定 因 子 で は あ っ た が 多 変 量 解 析 の 結 果 、 独 立 予後規定因子ではなかった。そこでCD4/8(十/十),CD4/8(十/.),CD4/8(‐/十),CD 4/8(./l)の4群に 分 け た と こ ろCDツ8( 十 / 十 ) の み が 他 の3群 と 比 較 し て 有 意 に 予 後 が 良 く 、 か つ 独 立 予 後 規 定 因 子 で あ っ た 。 こ の こ と か ら 膵 癌 に お け る 腫 瘍 免 疫 に お い て CD4陽 性TILがCD8陽 性TIL と 共 に 存 在 す る 事 が 極 め て 重 要 で あ る と 考 え ら れ た 。 な お 最 初 の 検 討 に お い てCD8( 十 ) の 予 後 が 有 意 に 良 か っ た の , はCD4/8( 十 / 十 ) が 多 く 含 ま れ て い た た め と 考 え ら れ た 。 病 理 組 織学 的 因 子 と の 相 関 に お い てCDッ8( 十 / 十 ) が 腫 瘍 深 達 度 、stageと 逆 相 関 し た こ と か ら 、 腫 瘍 免 疫 が 膵 癌 の 進 展 を 妨 げ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 更 に 腫 瘍 に 浸 潤 し て い るdendritic cellの 個 数 を 調 べ た と こ ろ 、CD4/8( 十 / 十 ) で は 他 の 群 に 比 較 し て 有 意 に 多 い こ と が 示 さ れ た 。 こ れ ら の こ と か らCD4/8( 十/十 ) の 症 例 で は 抗 原 提 示 細 胞 に よ る 抗 原 認 識 か らcytotoxicTcellに
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よる腫瘍細胞攻撃までの一連の腫瘍免疫が協調的に働いていると推察された。以上のこと
か ら検 体のCD4 陽性TIL および CD8 陽性TIL を調べることにより膵癌手術症例の予後を
より正確に予測する事が可能となり適正手術の選択に重要な示唆が与えられた。またCD4
陽性T リンバ球とCD8 陽性T リンバ球を同時に活性化する新たな治療法の開発により膵
癌患者の予後を改善できる可能性が示された。
学位論文審査の要旨
学位論文題名
CD8 十TILs together with CD4 十TILs and dendritic cells improve prognoslSforpatientSWith panCreatiCadenOCarCinoma
(CD8 ゛TIL はCD4 十TIL とdendritic cell と共に ゛ 膵 癌 患 者 の 予 後 を 改 善 す る )
膵癌は難治性 癌のーっとして知 られており、根治手 術を施行しえた症 例でも5年 生存率は10%程 度である。最近, 癌患者の予後におけ る腫瘍免疫の役割 が重用視さ れて来ているが 今回,申請者は膵 癌の予後、臨床病理 学的因子とCD4.CD8陽性TIL
の 関 係 、 ま たDenrritic cellsの 存 在 と の 関 係 を 明 ら か に す る 事 を 目 的 と し 、 免 疫 組 織 学的手法を用い て検討した。
対照は1992年 から1999年に手術 された膵癌切除症例80例で、年齢は31才から83 才(平均年齢62.0才)であり、男 女比は45:35であっ た.切除された膵 癌組織 に存在する免疫 担当細胞を調べる ため、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗S100抗体を 一次抗体として 免疫染色した.リ ンバ球が癌組織に最 も浸潤している部 位を5箇所 選択し、400倍視野におけ るりンバ球数の平 均値を評価の対象 とした。CD4につい
て は 20以 上 を CD4( 十 ) ,CD8に つ い て は100以 上 をCD8( 十 ) と 判 定 し 、 更 に そ れ ぞ れ を組み合わせてCDツ8(十 /十),CD4/8( 十/‐),CD4/8(‐/十),CD4/8(一/一)の4群に分け、Kaplan− Meier法 及 びLog−ranktestに て 検 討 し た .CD4/8( 十 / 十 ) と 病 理 学 的 因 子 と の 相 関 を 笂2 検 定 に て 検 討 し た . さ ら に 単 ・ 多 変 量 解 析 を 用 い て ,CD4/8( 十 / 十 ) が 予 後 に お よ ぽ す 影 響 を 検 討 し た 。 ま た 同 様 の 方 法 で 癌 組 織 中 のdendriticcellの 個 数 を 数 え 、CD4/8( 十 / 十 ) とその他の群と の間はMann・Whitney検定を もちいて検討した 。
結 果 と し てCD4( 十 ) は47例 (58.8% ) 、CD4( , )は33例(4113% )、CD8( 十) は16例 (20.0% ) 、 CD8( ・ ) は64例 (80.0% ) で あ っ た 。KaplanーMeier法 に よ る 生 存 分 析 で はCD8( 十 ) は5年 生 存 率42.2% とCD8( − ) の7.0% に 対 し 有 意 に 予 後 良 好 で あ っ た (log‐ranktestP=0.0228)
敬 俊
之
弘 紘
木 田
藤
吉
秋
加
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
が、CD4に関しては有意差を認めなかった。次にCD4/8(十/十)、CD4/8(十/‐)、CD 4/8(‐/十)、
CD4/8( −/ − ) の4群 に 分け た と こ ろ5年生 存 率 で それ ぞ れ48.40'/0、10.1% 、0% 、4.6u/0で あ り 、CD4/ 8( 十 / 十 ) 群 はP=0.0098(log‑rank test)と 有 意 に 予 後 良 好 で あ っ た 。 X2検 定 に よ りCD4/8( 十 / 十 ) と 各 臨 床 病 理 学 的 因 子 と の 関 連 を 調 べ た と こ ろ 、 腫 瘍 深 達 度(P=0.013)、stage(P=0.009)と の 間 で 有 意 な 逆 相 関 が 認 め ら れ た 。 単 変 量 多 変 量 解 析 に てCD4/8( 十 / 十) の 危 険 率は0.380 (p=0.0305,95% 信頼 区 間0.15 8‑0.913)で あり、 予後良 好 な 独 立 予 後 規 定 因 子 で あ っ た 。 腫 瘍 に 浸 潤 し て い る dendritic cellの 個 数 を CD4/8( 十/ 十 ) と その 他 の 群 で比 較 し た とこ ろ23.8対9.9とCD4/8(十 / 十 ) で多 く 、Mann− Whitney検定にて有意差を認めた(P=0.0069)。
以上の結果から膵癌における腫瘍免疫においてCD4陽性TILがCD8陽性TILと
共 に 存 在 す る 事 は き わ め て 重 要 で あ り 、CD4/8( 十 / 十 ) の 症 例 で は 腫 瘍 免 疫 が 膵 癌 の 進 行 を 妨 げ 、 予 後 を 改 善 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 更 に 腫 瘍 に 浸 潤 し て い るdendritic cellはCD4/8(十 / 十 ) 群で 他の群 より有 意に多 く、CD4/8(十/ 十)群 ではり ンノヾ 球と抗 原提 示 細 胞 が 協 調 し て 働 い て い る と 推 察 さ れ た 。 切 除 さ れ た 検 体 の CD4陽 性 TILお よ び CD8陽 性 TILを 調 べ る こ と に よ り 膵 癌 手 術 症 例 の 予 後 予 測 が よ り 正 確 に 行 い 得 る こ とが示された。
口 頭 発 表 に お い て 、 秋 田 教 授 よ りTILの 評 価 方 法 、thresholdの 決 め 方 、CD4/8(十 / 十 ) 群 の 細 胞 生 物 学 的 特 徴 、TILの 実 際 の 活 動 性 の 評 価 、 膵 癌 に お け る 腫 瘍 抗 原 に つ い て 質 問 が あ っ た . つ い で 加 藤 教 授 よ り 陰 性 例 の 解 釈 の 仕 方 、 術 前 生 検 を 用 い た 診 断 の 可 能 性 に つ い て 質 問 が あ っ た , ま た 吉 木 教 授 よ り 臨 床 病 理 学 的 因 子 と の 相 関 の 解 釈 お よ び 、 治 療 へ の 応 用 に つ い て 質 問 が あ っ た 。 最 後 に 近 藤 助 教 授 よ り 治 療 へ の 展 望について質問があったが、申請者はおおむね妥当な回答をした,
膵 癌 に お け るCD4,CD8, 陽 性TILの 臨 床 病 理 学 的 意 義 を 明 ら か に し 、 予 後 の 予 想 、 治 療 へ の 応 用 の 可 能 性 を 示 唆 し た 本 研 究 の 意 義 は 大 き く 、 審 査 員 一 同 協 議 の 結 果 、 本論文は博士(医学)の学位授与に値するものと判定した.