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濡れ性の悪い固体壁における気液界面の動的挙動に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 )    酒 井 祐 介

学 位 論 文 題 名

濡れ性の悪い固体壁における気液界面の動的挙動に関する研究

(Study on dynamic behavior of gas‑liquid interface on poorly‑wetted solid wall)

学位論文内容 の要旨

  西 山ら (統 計 データからみる地 球環境・資源工ネ ルギー論)によると ,2007年度に我が 国から排出 さ れ た 温 室 効 果 ガ ス の 約95パ ー セン ト を占 める 二 酸化 炭素 排 出量 は全 体 で13億tと をっ て おり ・ 排 出 量の 内訳 を 列挙すると,産業 部門から42.5パー セント,運輸部門か ら19.1)くーセン ト,業務そ の 他 から18.1パ ーセ ント , 家庭 から13.8パ ーセ ン トが 排出 されており ,産業部門からの 排出量が最 も 大 きい ,さ ら に産 業部 門 での 業種 別の内 訳を見てみると, 最も排出量の多い のは,鉄鋼業(32パー セ ント)で,続いて化 学(11パ ーセント),機械(7パーセント),窯業土石(6.5パーセント)となってい る . この 数字 か ら分 かる よ うに ,鉄 鋼 業は 日本 全 体の 二酸 化炭素排出 量の13.6パーセン トも占めて い る.鉄鋼業の中でも ,上工程に位置す る製銑,製鋼プロ セス分野による二酸化炭素排出量が大きく,

逼 迫 した 地球 環 境を顧みると,上 工程における二酸 化炭素排出量の削減 は喫緊の課題とな っている.

  二 酸化 炭素 排 出量の削減には, プロセスの高効率 化が必要不可欠であ る.そのためには ,反応容器 内 の 化学 反応 お よび流動などの正 確を把握が必須と をるが,溶銑,溶鋼 は非常に高温であ り,実際の 反 応 容器 内を 直 接観察することは 困難である,そこ で、水を用いた水モ デル実験に基づく 研究が世界 的 に 活発 に行 わ れてきた.製鋼分 野を対象とした水 モデル実験では.反 応容器内の溶鋼や 吹き込まれ た ガ スの 流動 特 性を らび に 均一 混合 時 間を どに つ いて 様々 を有用を知 見が得られている .しかし教 が ら ,そ れら は 主として,反応容 器内部の流れ場を 対象としており,容 器壁近傍を対象と した研究は 限 ら れて いる . 容器壁近傍を対象 とする場合には, 溶鋼と耐火物の濡れ 性は悪いことから ,溶器壁の 濡 れ 性を 考慮 し をけれぱをらをい ,そこで,本研究 では今まであまり考 慮されてこなかっ た製鋼プロ セ ス に関 わる 濡 れ性に着目し,濡 れ性が影響すると 予想できる箇所,例 えば,気泡が耐火 物近傍を上 昇 す るRH脱ガ ス 装置 ,ス ピ ッテ ィン グ によ って 生 じた 溶鋼 滴が耐火物 に衝突する転炉, さらには脱 硫 剤 が溶 鋼に 侵 入す る溶 銑 予備 処理 装 置を どに 焦 点を あて ,可視化実 験および数値計算 によって固 体 壁近傍における気液 界面の動的挙動に ついて検討した.

  本論文の構成を以下 に示す.

  第 一章 では , 我が国の鉄鋼業に おける二酸化炭素 排出量と今後の対策 ,それに関わるプ ロセスの高 効 率 化を 目的 と した 既存 の 水モ デル 実 験と 濡れ 性 につ いて 記述し,本 研究の意義と内容 について述 べ た,

  第 二章 は, 鉛 直に設置した濡れ 性の悪い平板に沿 って上昇する気泡群 の動的挙動につい て,可視化 実 験 によ って 検 討したものである .気泡の上昇速度 ,気泡の長軸長さと 短軸長さ,気泡噴 流の広がり と 厚 みを 測定 し ,平板の濡れ性の 違いによる比較を するとともに,ノズ ルからの高さによ ってこれら 気 泡 の動 的挙 動 がどのように変化 するのかについて 調査した.気泡が上 昇するにっれて. 濡れ性の影 響 は小さくをることが 分かった.

  第 三章 は, 濡 れ性 の悪 い 固体 壁に 衝 突す る単 一 気泡 の動 的挙動につ いて可視化実験に よって検討 し た もの であ る ,す教わち,気泡 体積と平板(固体 壁)の傾斜角が気泡 の上昇速度および 水平方向ヘ

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の気 泡長 さ に与 える 影 響に つい て調査した ,気泡体積が小さい 場合には,濡れ性 が気泡の動的挙動 に 及ば す影 響 は大 きい が ,平 板の 傾斜角の影 響は小さかった.気 泡体積が大きい場 合には.平板の傾 斜 角が大きくをるにっ れて濡れ性の影響 は小さく誼ること が分かった.

  第 四章 で は, 傾斜 し た濡 れ性 の 悪い 固体 壁 に沿 って 降 下す る液 滴 の動 的挙動 について実験的に 検 討した.液滴には, イオン交換水,水 銀,炭酸カルシウ ム含有液を用いた. 濡れ性の悪い固体壁に沿っ て降 下す る 粘度 の小 さ い液 滴に は 壁面 の摩 擦 の影 響は 少 をく .そ の 加速 度は重 力加速度の傾斜平 板 成分 とほ ば 等し いこ と が分 かっ た.液滴の 粘度が大きくをると ,粘性によるエネ ルギ散逸により, 降 下加 速度 は 小さ くな っ た. 液滴 の 降下 加速 度 と固 体球 の 降下 加速 度 との 比とし て定義される降下 加 速 度 比 を 導 入 し , 降 下 加 速 度 比 に 対 す る 実 験 式 を モ ル ト ン 数 の 関 数 と し て 導 出 し た .   第 五章 で は, 濡れ 性 の悪 い固 体 壁に 衝突 す る液 滴の 動 的挙 動に つ いて 可視化 実験および数値計 算 によ って 検討し た,液滴にはイオン 交換水,水銀を用 いた,平板の傾斜 角は0度,15度である.濡れ 性 の悪 い固 体 壁に 液滴 が 衝突 する と バウ ンド す る様 子が 観 察さ れた . この 現象は 数値計算でも確認 さ れた.液滴の扁平率 と反発係数に関す る実験式を提案し た.

  第 六章 で は, 水面 に 衝突 する 濡 れ性 の悪 い 固体 球の 動 的挙 動に つ いて 実験的 に検討した.水よ り も密 度の 大 きい 球だ け で橡 く, 密度の小さ い球も用いた.単一 球,水平方向に設 置した複数の球, 鉛 直方向に設置した複 数の球で実験を行 い,最大気柱深さ ,気柱破断時間,最 大到達距離をどを測定し,

実験式を提案した.

  第 七章 は ,撥 水平 板 上に ある 薄 い水 膜の 上 に水 滴を 滴 下し たと き 水膜 が破れ て後退していく挙 動 を, 高速 度 カメ ラを 用 いた 可視 化実験によ って検討した.水面 に水滴が衝突した ことを契機として , 水膜 が後 退 して いく 過 程は ,三 つの段階を 経ることが分かった ,後退していく水 膜の速度に対する 実 験式を水膜厚さの関 数として導出した .

  第 八章 で は, 第二 章 から 第七 章までの成 果を要約するととも に,実用化に向け ての課題と今後の 展 望について述べた.

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学位論文審査の要旨 主査   特任教授   井口   学 副 査    教 授    岩 井 一 彦 副査    准教授    大参達也

学 位 論 文 題 名

濡れ性の悪い固体壁における気液界面の動的挙動に関する研究

(Study on dynamic behavior of gas‑liquid interface on poorly‑wetted solid wall)

  2007年 度 に 我 が 国 か ら 排 出 さ れ た 温 室 効 果 ガ ス の 約95パ ー セ ン ト を 占 め る 二 酸 化 炭 素 排 出 量 は 全 体 で13tと 教 っ て お り 。 そ の う ち 鉄 鋼 業 は13.6パ ー セン ト も占 めて い る. 鉄鋼 業 の中 でも , 製 銑・ 製鋼 プ ロセ ス分 野 によ る二 酸 化炭 素排 出 量が 大き く ,逼 迫し た 地球 環境 を 顧み ると ,この分野 に おけ る二 酸 化炭 素排 出 量の 削減 は 喫緊 の課 題 とを って い る,

  二酸 化炭 素 排出 量の 削 減に は, プ ロセ スの 高 効率 化が 必 要不 可欠 で ある .そ の ため には ,反応容器 内 の化 学反 応 およ び流 動 をど の正 確 を把 握が 必 須と なる が ,溶 銑, 溶 鋼は 非常 に 高温 であ り,実際の 反 応容 器内 を 直接 観察 す るこ とは 困 難で ある . そこ で, 水 を用 いた 水 モデ ル実 験 に基 づく 研究が行わ れ てき た. 製 鋼分 野を 対 象と した 水 モデ ル実 験 では ,反 応 容器 内の 溶 鋼や 吹き 込 まれ たガ スの流動特 性 なら びに 均 一混 合時 間 をど につ い て様 々を 有 用を 知見 が 得ら れて い る, しか し をが ら, それらは主 と して ,反 応 容器 内部 の 流れ 場を 対 象と して お り, 容器 壁 近傍 を対 象 とし た研 究 は限 られ ている.容 器 壁近 傍を 対 象と する 場 合に は. 溶 鋼と 耐火 物 の濡 れ性 は 悪い こと か ら, 溶器 壁 の濡 れ性 を考慮し教 け れば なら を い. そこ で ,本 研究 で は今 まで あ まり 考慮 さ れて こな か った 製鋼 プ ロセ スに 関わる濡れ 性 に 着 目 し , 可 視 化 実 験 お よ び 数 値 計算 に よっ て固 体 壁近 傍に お ける 気液 界 面の 動的 挙 動に つい て 検 討し た.

  本学 位論 文 は次 の8つ の章 か ら構 成さ れ てい る.

  第一 章で は ,我 が国 の 鉄鋼 業に お ける 二酸 化 炭素 排出 量 と今 後の 対 策, それ に 関わ るプ ロセスの高 効 率 化 を 目 的 と し た 既 存 の 水 モ デ ル 実験 と 濡れ 性に つ いて 記述 し ,本 研究 の 意義 と内 容 につ いて 述 べ た,

  第 二 章 は , 鉛 直 に 設 置 し た 濡 れ 性 の悪 い 平板 に沿 っ て上 昇す る 気泡 群の 動 的挙 動に つ いて 検討 し た もの であ る .気 泡の 上 昇速 度, 長 軸長 さと 短軸長 さ,気泡噴流の広が りと厚みを測定し ,平板の濡れ 性 の 違 い に よ る 比 較 を す る と と も に ,ノ ズ ルか らの 高 さと とも に 気泡 の動 的 挙動 がど の よう に変 化 す るの かに つ いて 調査 し た. 気泡 が 上昇 する に っれ て, 濡 れ性 の影 響 は小 さく を るこ とが 分かった,

  第三 章は , 濡れ 性の 悪 い固 体壁 に 衝突 する 単 一気 泡の 動 的挙 動に つ いて 検討 し たも ので ある.すを わ ち, 気泡 体 積と 平板 ( 固体 壁) の 傾斜 角が 気 泡の 上昇 速 度お よぴ 水 平方 向へ の 気泡 長さ に与える影 響 に つ い て 調 査 し た . 気 泡 体 積 が 小 さい 場 合に は, 濡 れ性 が気 泡 の動 的挙 動 に及 ぼす 影 響は 大き い が ,平 板の 傾 斜角 の影 響 は小 さか っ た, 気泡 体 積が 大き い 場合 には , 傾斜 角が 大 きく なる につれて濡 れ 性の 影響 は 小さ くを る こと が分 か った ,

  第四 章で は ,傾 斜し た 濡れ 性の 悪 い固 体壁 に 沿っ て降 下 する 液滴 の 動的 挙動 に つい て検 討した.濡

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れ性 の 悪 い 固 体壁 に 沿 っ て 降下 す る 粘 度 の 小さ い 液 滴 に は壁 面 の 摩 擦 の影 響 は 少 哲 く. そ の加 速度 は重 力 加 速 度 の傾 斜 平 板 方 向成 分 と ほ ば 等 しい ことが 分か った. 液滴の 粘度が 大きく をる と,粘 性に よる エ ネ ル ギ 散逸 に よ り , 降下 加 速 度 は 小 さく をった ,液 滴の降 下加速 度と固 体球の 降下 加速度 との 比と し て 定 義 され る 降 下 加 速度 比 を 導 入 し .降 下 加 速 度 比に 対 す る 実 験式 を モ ル ト ン数 の 関数 とし て導 出 し た .

  第 五 章 で は, 濡 れ 性 の 悪い 固 体 壁 に 衝突 す る 液 滴 の動 的 挙 動 に つ いて 可 視 化 実 験お よ び 数値計 算 によ っ て 検 討 した . 濡 れ 性 の悪 い 固 体 壁 に 液滴 が衝突 する とバウ ンドす る様子 が観察 され た.こ の現 象 は 数 値 計 算 で も 確 認 さ れ た . 液 滴 の 扁 平 率 と 反 発 係 数 に 関 す る 実 験 式 を 提 案 し た .   第 六 章 で は, 水 面 に 衝 突す る 濡 れ 性 の悪 い 固 体 球 の動 的 挙 動 に つ いて 実 験 的 に 検討 し た .水よ り も密 度 の 大 き い球 だ け で を く, 密 度 の 小 さ い球 も用い た. 単一球 ,水平 方向に 設置し た複 数の球 ,鉛 直方 向に設 置した 複数の 球で実 験を 行い, 最大気 柱深さ ,気 柱破断 時間, 最大到 達距離 をど を測定 し,

実験 式 を 提 案 した ,

  第 七 章 は ,撥 水 平 板 上 にあ る 薄 い 水 膜の 上 に 水 滴 を滴 下 し た と き 水膜 が 破 れ て 後退 し て いく挙 動 を, 高 速 度 カ メラ を 用 い て 検討 し た , 水 面 に水 滴が衝 突し たこと を契機 として ,水膜 が後 退して いく 過程 は , 三 つ の段 階 を 経 る こと が 分 か っ た .後 退して いく 水膜の 速度に 対する 実験式 を水 膜厚さ の関 数と し て 導 出 した .

  第 八 章 で は, 第 二 章 か ら第 七 章 ま で の成 果 を要 約す るとと もに, 実用化 に向 けての 課題と 今後の 展 望に つ い て 述 べた .

  こ れ を 要 する に , 著 者 は, 鉄 鋼 プ ロ セス 反 応容 器内 の流動 現象の 中でも ,従 来あま り研究 されて い をか っ た 反 応 容器 内 の 固 体 ー液 体 ー 気 体 か らを る 界 面 近 傍の 流 動 現 象 に着 目 し , 特 に固 体 表面 と溶 銑や 溶 鋼 と の 濡れ 性 が 流 動 現象 及 ば す 影 響 につ い て モ デ ル実 験 と 数 値 計算 を 行 い 多 くの 有 用な 知見 を得 た , こ れ らの 知 見 は 既 存の 鉄 鋼 プ ロ セ スの 効率改 善や 新しい プロセ スの開 発はも とよ りのこ と、

材料 工 学 の 発 展に 寄 与 す る こと 大 を る も の があ る 。 よ っ て著 者 は 、 北 海道 大 学 博 士 (工 学 )の 学位 を授 与 さ れ る 資格 が あ る も のと 認 め る .

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