博士(工学)沖中憲之 学位論文題名
MHD プ ラ ズマの 乱流ス ペクト ル解 析と その計測への応用に関する基礎研究
学位論文内容の要旨
MHDプラズマは,アルカリシード高温燃焼,衝撃撃破管,アークジェットなどで得られる圧 力1気圧,温度2500〜3000K程度の熱平衝弱電離プラズマ であり,近年MHD発電などの 高温 工ネルギー技術,プラズマ推進,製鋼・精錬,宇宙関連技術なでの分野で重要性を増している。
これらMHDプラズマの流れ場 と温度場は時空間で不規則な揺らぎをともなう乱流状態にある ことが多くその解明は学術上のみならず工業上重要である。これまで導電性流体の乱流は液体金 属に関して多く研究が行われスペクトル特性,2次元乱流構造などが逐次明らかにされつっある。
しか しMHDプ ラズ マの 乱流 特性に関する研究はほとんど 先例がない。MHDプラズマは 液体 金属と異なり磁気レイノルヅ数が一般に小さく,さらに熱流体場と電磁場は温度に対して強い非 線形関数性を持つ電気伝導率を介して結合しており,その乱流場は電気伝導率が乱流揺らぎと無 関係な液体金属とは異なる 物理過程に支配されていると考えられる。またMHDプラズマの流 れ場の解析も少なくないがそこでは通常の非導電性流体の乱流モデルが仮定されている。すなわ ち種々の基本変数の平均値 からの揺らぎの相関の影響は現在のところ不明であって乱流MHD プ ラ ズ マ の 巨 視 的 方 程 式 系 自 体 が 不 完 全 な 現 状 で あ る 。 本研究は,MHDプラズマの乱流巨視的方程式系を明らかにすることを目的にした研究の一貫 として,炭酸カリウム微粉末をシードしたアルゴンを衝撃波で加熱して得られる熱平衡プラズマ を具体的な対象として,MHD発電チャネル内から速度場,温度場,輻射場,粒子密度場,電気 場の揺らぎ自身の性質を統計的観点から調ベ,`さらに揺らぎの性質と解析手法を応用した2,3 の高速MHD乱流プラズマの計 測法に関する研究を取りま とめたものであり,全7章から構成 されている。
第1章は序論であり,関連する従来の研究の概説,本研究の背景,目的,工学的意義にっいて 述べている。また,衝撃波管で発生する短時間のプラズマを対象として乱流の性質を論じる立場 から統計的定常性と平均操作にっいて著者の見解をまとめている。
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第2章 で は , 本 研究 に 関 連 す る乱 流 の 統 計 理 論に っ い て , 現在 ま で の発展 の経過 ,MHDプラ ズ マ に お ける 理 論 の 適 用の 現 状 に っ いて 述 べ , 本 研究 でMHDプラ ズ マ に 適 用し た い く っ かの 統 計流体 理論に っいて 説明し てい る。
第3章 で は , 本 論 文 の ス ペ ク ト ル 解 析 法 で あ る 最 大 工 ン ト ロ ピ 一 法(MEM:Maximum Entropy Method) に っ い て 説明 し て い る 。ま ず , 計 算 式, 方 法 を 述 べ た後 ,MEM解 析 法 が 衝 撃 波プラ ズマの ように 短時間 現象 に対し ても正 しいパ ヮー スペク トルを 与え得ることを強調して い る。
第4章では ,本研 究に 使用し た実験 装置と 測定 方法, 数値解 析方法 を述べ てい る。ま ず,実 験 に 使 用 し た衝 撃 波 管 お よびMHD発電 チ ャ ネ ル 体 系を 説 明 し , 次に 誘 導 ポ テ ンシ ャ ル に よ り流 速 ,加速 度,渦 度の測 定法, 半導 体圧力 変換器 による 圧カ の測定 ,偏光 ラインリバーサル法によ る 温度, 輻射光 ,電子 密度の 高速 測定法 を説明 してい る。 次に, それら のデ一夕のスペクトルに 現 れ たMHDプ ラ ズ マ特 有 の 乱 流 構造 を 説 明 す る ため に 行 っ た 数値 解 析 法 ( スペ ク ト ル 法 )に っ いて説 明して いる。
第5章は, 実験結 果, スペク トル解 析結果 ,数 値解析 結果の 説明と 統計流 体理 論に立 脚した 考 察 である 。その 結果, 流速, 加速 度,渦 度,電 子密度 のい ずれの パヮ― スペクトルにも低波数領 域 にk−5/3の 等 方性3次 元乱 流構造 ,それ より高 波数 領域にk・3の2次元 乱流構 造を 持っこ と,
お よび 両者の 波数 領域配 分が外 部磁場 に依存 して 変化す ること を示し た。 液体金 属が2次元 乱流 構 造を持 っこと は既に 示され てい るが, ここで の結果 は気 体プラ ズマで も同様な構造を持っこと を 示し たもの であ り,ま た在来 統計流 体力学 で思 考モデ ルとし て位置 ずけ られて いた2次元 乱流 が プラズ マでは 現実の 現象で ある ことを 示した 新しい 知見 である 。さら に本結果によって本研究 の 前提と した現 象の統 計的定 常性 が衝撃 波プラ ズマの よう な短い 現象で も成り立っことを結果的 に 示し たこと にな ってい る。ま た本章 では2次元 構造を 数値 的に示 すため に行っ たス ペクト ル法 に よ る 渦 度方 程 式 の 解 析結 果をま とめ,3次 元等方 性乱流 から2次元 乱流へ 移行 してい く様子 を 示 し ,2次 元 乱 れ 構 造 を 特 徴 的 に 示 す 面 を 特 定 す る こ と に も 成 功 し て い る 。 第6章 で は ,MEMス ペ ク ト ル 推 定 法 をMHDプ ラ ズ マ の 流 れ 場 と 輸 送 定 数 の 計 測 に 応 用 し た 実 験 研 究を ま と め て いる 。ここ で検討 した測 定法は ,相 互相関 関数法 による 速度 測定, 高速 NMR法 に よ るMHD乱 流 の 可 視 化 の 基 礎 的 実 験 , 強 制 電 流 ゆ ら ぎ 印 加 に よ る 導 電 率・ 移 動 度 測 定であ り,そ れぞれ の測定 結果 と問題 点,改 良点を 論じ ている 。
第7章 は結論 であり 主な知 見は 以下のようにまとめられる,(1)従来液体金属でのみ観測されて い た2次 元 等 方 性 乱 流 がMHDプラ ズ マ で も 存在 す る こ と を広 い パ ラ メ ー タに っ い て 実 験的 に
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示した。(2)数値解析により実験結果を確認すると共に2次元渦面を特定した。(3) MEMスペク トル解析法を適用し 信頼性の高いMHDプラズマ輸 送定数の測定法を開発する と共に,高速 NMR法によるプラズマ乱流場の可視化の可能性を示した。
学位論文審査の要旨
MHDプラズマは,圧力1気圧,温度2500〜 3000K程度の熱平衡弱電離プラズマであり,近年 MHD発電などの高温 工ネルギー技術,プラズマ推進,製鋼・精錬,宇宙関連技術などの分野 で重要性を増している。これらの流れ場と温度場は時空間で不規則な揺らぎをともなう乱流状態 にあることが多いが,乱流モデル化に必要な乱流構造に関する研究は通常流体と比べて十分とは 言えない。これまで導電性流体の乱流は液体金属に関して多く研究が行われスペクトル特性,2 次元乱流構造などが 逐次明らかにされっっある。しかしMHDプラズマに関する研究はほとん ど先例がない。MHDプラズマは液体金属と異なり磁気レイノルヅ数が一般に小さく,さらに熱 流体場と電磁場が,温度に対して強い非線形関数性を持つ電気伝導率を介して結合している特徴 を有する。従って,その乱流場は電気伝導率が速度と温度に無関係な液体金属とは異なる物理過 程に支配されていると考えられる。
本研究は,磁場中 のMHDプラズマの乱流構造を明らかにすることを目標に,炭酸カリウム 微粉末をシードしたアルゴンを衝撃波で加熱して得られる熱平衡プラズマを対象として,MHD 発電チャネル内の速度場,温度場,輻射場,粒子密度場,電気場の揺らぎ自身の性質を統計的観 点から実験と数値解析により調べ,さらに揺らぎの性質とスペクトル解析手法を応用した2,3 の高速MHD乱流プラ ズマの計測法に関する研究を取りまとめたものである。対象としたプラ ズマfま1ミリ秒程度の短時間の系であるが,それにより在来障害とされた高い熱流束による計測 上の困難さが除かれていることと,統計的な定常性が保障されにくい時系列デ一夕に対して最大 工ントロピ一法(MEM)を採用し得られるスペクトルの信頼性を高めていることが特徴である。
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之 二
勝 男
尚
亮
初
川
黒
谷
崎
粥
石
木
山
授
授
授
授
教
教
教
教
査
査
査
査
主
副
副
副
本 研究で 著者が 明らか にした 知見 は以下 の4点であ る。
(l) 磁場 下 のMHDプ ラ ズ マ 揺 らぎ に は , 低 波数 領 域 に コ ル モゴ 口 フ の3次元 等 方 性 乱 流ス ペ ク トル,kー5/ 。モー ド,高 波数領 域に2次元 等方 性乱流スペクトルk‑。モ―ドが混在する。こ の2次 元 ス ペ ク トル モ ード は磁 場強度 の増加 と共に 低波 数から 出現し 始めk ‑領域 が広 がるこ と を観測 した。
(2)速 度と 温度乱 れの動 的シミ ュレー ショ ンより 初期状 態とし て与 えた3次元等方的な揺らぎが 時 間と 共 に2次 元構 造 化す るこ とを解 析的に 示した 。ま た2次 元渦 は磁場 ベクト ルを含 む内面 に あるこ とを明 らか にした 。
(3) 電気 場 に 与 え た 外乱 揺 ら ぎ に 対応 す る プ ラ ズマ の 応 答 信 号のMEMス ペクト ル解析 によル プ ラ ズ マ の バ ル ク 導 電 率 , ホー ル 係 数 , 平 均流 速 を 精 度 よく 測 定 で き るこ と を 示 し た。
(4) ‑高 速NMR法 を 初 め て プ ラ ズ マ の 流 れ 場 に 適 応 し 乱 れ 場 の 可 視 化 の 可 能 性を 示 し た 。 こ れ を 要 す る に , 本 論 文 は ,こ れ ま で 思 考 モデ ル で あ っ た2次 元 乱 流 がMHDプ ラズ マ で 実 在 で あ る こと を 初 め て 実験 と 数 値 解 析に よ り 明 らかに すると 共に,MEMス ペク トル解 析法に 基 づ く新し いプラ ズマ計 測の可 能性 を示し たもの で電磁 流体 力学お よびプ ラズマ工学に寄与すると こ ろ大な るもの がある 。よっ て著 者は,博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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