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学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 鈴 木 由 美 子

学 位 論 文 題 名

     ハ イ パ ー ス ベ ク ト ル 画 像 解 析 に よ る 農地植生の地理情報化システムに関する研究

学位論文内容の要旨

1.はじめに

  農地にある作物生育量,植物種および土壌肥沃度などの多様な情報を取得・解析して作物生産 ヘフイードバックすることは,農作業の最適化および農業由来の環境負荷の軽減が図れるため,

国内生産基盤の強化および農業生産環境の保全に有益である。そのため,今後,商陸能な農地情 報計測技術の開発は重要となる。マクロからミクロまでの様々スケールで,対象の形状や陸質が 非接触で調査できるりモートセンシング,その中でも画像解析の利用は,農地情報の面的な変動 の検出または定量化に有用である。特に,グランドベースのハイパースペクトル画像解析では,

高空間分解能の分光情報を扱うため,対象の詳細な分光スペク卜ル分布の把握が期待できる。ま た,車両を利用した画像撮影システムより広大な農地の情報取得への展開も可能となる。そのた め,従来の手法よりも精緻な分析が実行可能となる。しかし,この手法により農地晴報を計測す る た め に は ソ フ ト ウ ェ ア お よ ぴ ハ ー ド ウ ェ ア 環 境 の 整 備 が 必 要 不 可 欠 と な る 。   本研究ではグランドベースのハイパースペクトル画像解析による農地植生情報の計測技術の 構築を目的とし,ハイパースベク卜ル画像から農地植生の面的な変動を捉えるための地理晴報f匕 システムを開発した。このシステムは多様な農地で多目的に利用することを想定しているため,

異なる4つの農地に適用し,その 陸能および有用性を評価した。

2.ハイパースペクトル恒艨解析による地理情幸剛匕システム

  グランドベースのハイパースペクトル画像から農地植生の面的な変動を捉えるため,統一的な 地理情幸剛いノステムを開発した。このシステムは,画像を取得する画像撮影システムと植生情報 マ ップを 生成す る画像解 析システ ムの2つの基 盤技術 から成る 一連の技 術体系 である。

  画像撮影システムは,広域画像撮影サブシステムと局所画像撮影サブシステムから成り立っ。

広域画像撮影サブシステムではマップ生成のための農地全面画像を取得し,局所画像撮影サブシ ステムでは値生情報の推定モデル開発のための高解像度画像を取得した。このシステムは,様々 な農地で多目的に利用できるf劃兼となっている。また,カメラ以外のシステム構成機器は全て民 生品であり,その構造は簡略である。よって,低コストで実用性の高いシステムといえる。

  画像解析システムは,フイールドスケール画像生成サブシステム,画素推定サブシステム,空 間処理サブシステムから成り立っ。フイールドスケール画像生成サブシステムでは,画像取得条 件や画像解像度に影響されず,取得した画像から自動的に農地全体を表すフイールドスケールの 画像を生成する。画素推定サブシステムでは,フイールドスケール画像の各画素の植生隋報を推 定し,初期マップを生成する。ここでは,高精度で植生晴報を推定するために推定モラシレ自動生 成システムを設計した。これは,多様なモデル開発アルゴリズムから最適な手法を自由に選択で

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きるため, 頑健で商t生能なモデルの開 発に役立っ。空間処理サブシステムでは,対象となる植生 情報やマッ プの使用用途により空間処 理手法が異なるため,ノイズ 除去や個体認識など複数の処 理が実行可 能なf矇となっている。

  以上のこ とから,開発した地理情報 化システムは汎用性に優れ,応用範囲が広いと考えられた。

3.ダイズ圃場に おける作物と雑草の個体認 識

  畑作物生産で の重要な管理作業のーっであ る除草作業に着目し,地理 情報化システムによルダ イズ圃場の作物 と雑草の個体認識を試みた。

  ダイ ズと 雑草 の個 体 を認 識す るた め,NDVIし きい 値法 に よる 植物 領域 画素 抽 出モ デル ,ス テップワイズ変数選択を用いた線形判別分析による作物雑草画素半岨1Jモラシレおよぴ個体認識のた めの空間処理を フイールドスケール画像に適 用した。その結果,93.6% のダイズ個体は正確に認 識でき,開発し た手法により大部分の作物と雑草が正確に認識できた。この手法は0.13〜 0.18m′S までの車両走行 速度に対応可能であった。現 行のうね間除草饑の走行速 度に対応するため,処理 ア ル ゴ リ ズ ム の 最 適 化 や 並 列 処 理 の 実 行 に よ り 処 理時 間 の短 縮を 図る こと が 必要 とな る。

  以上の結果よ り,ダイズと雑草の個体認識 速度には改善が必要であっ たが,高精度で大部分の 個 体 が 認 識 で き た 。 よ っ て , ダ イ ズ 圃 場 で の 地 理I晴 幸財bノ ステ ムの 有用 性 が示 され た。

4.放牧草地にお ける構成草種および草量の 分布推定

  飼料コストの 低下や飼料自給率の向上など の利点から再評価され始めている放牧草地に着目し,

地 理 情 幸 剛 匕 シ ステ ムに より 放牧 草 地の 構成 草種 およ ぴ 優先 草種 の草 量 の分 布を 推定 した 。   構成 草種の画素 判別では,ステップワイズ変 数選択を用いた線形判別分 析によルモデルを開発 した。モデルの 半IJsIJ率は82.7%で,シロクローバと雑草との間で多少の誤判別が生じたが,概ね 正 確に 判別 でき た。 優 先草 種の 草量推定ではPLS回帰分析によルモデルを 開発した。モデルの決 定 係数 は0.601〜0.620で,概ね推定が可能と判 断できた。これらのモデル をフイールドスケール 画像に適用する ことで生成された構成草種お よぴ草量マップは実際の草地の状態を反映していた。

  以上 の結果より ,放牧草地の構成草種および 草量の分布が良好な精度で 推定できた。よって,

放牧草地での地 理情幸町匕システムの有用´ 陸が示された。

5. 採草地における牧草の収量 およぴ成分の分布推定

  飼料自給率の向上および自給 飼料を基盤とした畜産経営への転換に重要となる採草地に着目し,

地 理 情 幸 町 匕 シ ス テ ム に よ り 採 草 地 の 刈 取 り 時 の 収 量 お よ ぴ 成 分7種 の 分 布 を 推 定 し た 。   PLS回帰 分 析に より 開発 した 収量推定モデルの決定係数は0.418,成分推定モデルでは0.389〜 0.705で,良好な精度であった 。これらのモデルをフイール ドスケール画像に適用することで生成 さ れ た収量マップは,実際の収 量分布を相対的に把握できる と考えられた。また,成分 マップか ら は 成 分 の 面 的 変 動 が 把 握 で き た が , 今 後 は マ ッ プ レ ベ ル で 検 証 が 必 要 と な る 。   以 上の結果より,採草地の牧 草収量および成分の分布が良 好な精度で推定できた。よ って,採 草 地での地理情幸剛匕システム の有用性が示された。

6. カ バ ー ク ロ ッ プ 試 験 圃 場 に お け る 構 成 草 種 お よ び 草 種 別 草 量 の 分 布 推 定   化 学資材投入量の削減,土壌 環境の改善などの多様な利点があるカバークロップ圃場に着目し,

地理 情報化システムによルカバ ークロップ圃場の構成草種お よぴ草種別草量の分布を推 定した。

  構 成草種の画素判別では,ス テップワイズ変数選択を用い た線形判別分析によルモデ ルを開発 した 。モデルの判別率は85.9% で,概ね正確に判別が可能と考えられた。草種別の草量推定では,

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画素単位の情報である分光スペクトルと区画単位の情報すなわち面的な情報である草種値被率を 説明変数とし,PLS回帰分析によルモデルを開発した。モデルの決定係数は0.724〜0.930で,概 ね推定が可能と判断できた。これらのモデルをフイールドスケール画像に適用することで生成さ れた構 成草種 および草 種別草 量推定マ ップは ,実際の 圃場の状態を概ね反映していた。

  以上の結果より,カバークロップ圃場の構成草種および草量の分布の概略が把握できた。よっ て , カ パ ー ク ロ ッ プ 圃 場 で の 地 理 情 幸 剛 い ノ ス テ ム の 有 用 性 が 示 さ れ た 。

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学位論文審査の要旨

主 査    准 教 授    片 岡    崇 副 査    教 授    柴 田 洋 一 副 査    教 授    野 口    伸

副 査    教 授    田 中 勝 千 ( 北 里 大 学 獣 医 学部 ) 副 査    助 教    岡 本 博 史

学 位 論 文 題 名

     ハ イ パ ー ス ベ ク ト ル 画 像 解 析 に よ る 農地植生の地理情報化システムに関する研究

   本 論文 は,全 7 章から 按る総頁数148 の和文論文である。論文には,図90 ,表 23 , 引 用 文 献 108 が 含 ま れ て い る 。 別 に 参 考 論 文 5 編 が 添 え ら れ て い る。

   農地の多様な情報を取得・解析して,作物生産ヘフイードバックすることは,農 業の生産性向上や生産環境の保全に有益である。そのため,高性能な農地情報計測 技術が重要となる。グランドベースのハイパースペクトル画像解析は,高い空間分 解 能 の 分 光 情報 を扱 うため ,詳 細な 農地 情報の 検出 ・定 量化 に有用 であ る。

   本研究では,ハイパースペクトル画像から農地植生の面的な変動を捉えるための 地理情報化システムを開発し,多様な農地の植生情報ヘ適用することでその性能お よび有用性を評価した。

1 .ハイパースペクトル画像解析による地理情報化システム

   ハイパースペクトル画像から農地植生の面的な変動を捉えるための地理情報化 システムは,画像を取得する画像撮影システムと植生分布マップを生成する画像解 析システムの2 っの基盤技術から成る。

   画像撮影システムは,農地全面の画像を取得する広域画像撮影サブシステムと植 生推定モデル開発のための高解像度画像を取得する局所画像撮影サブシステムか ら成り立っ。このシステムは多目的に利用でき,汎用的で実用性の高いシステムと 考えられる。画像解析システムは,フイールドスケール画像生成サブシステム,画 素推定サブシステム,空間処理サブシステムから成り立っ。フィールドスケール画 像生成サブシステムでは,撮影画像から農地全体を表す画像を生成する。画素推定 サブシステムでは,農地全体の画像から植生情報を推定し,初期マップを生成する。

ここでは,高精度で植生情報を推定するために,多様なアルゴリズムを備えるモデ

ル自動生成システムを設計した。空間処理サブシステムは,ノイズ除去や個体認識

など複数の処理が実行可能な仕様となっている。

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   以上のことから,開発した地理情報化システムは汎用性に優れ,応用範囲が広い と考えられた。

2 .畑作における作物と雑草の個体認識

   畑作物生産での重要な管理作業のーっである除草作業に着目し,ダイズ圃場を対 象に作物と雑草の個体認識を試みた。作物と雑草の個体判別では,93.6 %の個体を 正しく認識できた。この手法は0.13 〜0.18 m/s までの車両走行速度に対応可能と推 定できた。個体認識速度は現行のうね間除草機の走行速度より劣るが,コンピュー タ性能の向上や並列処理の活用により処理時間の短縮が期待できる。現状では処理 速度の改善が必要であったが,大部分の個体が認識できたため,畑作圃場の作物雑 草の個体認識における本システムの有用性が示された。

3 .放牧草地における構成草種および草量の分布推定

   飼料コストの低減などの利点から再評価され始めている放牧草地に着目し,放牧 草地の管理で重要な情報となる草地の構成草種および草種草量の分布を推定した。

構成草種の分布推定ではモデル検証時の判別率が80.3 %で,草量推定ではモデル検 証時の決定係数が0.601 〜 0.620 であったニ生成した構成草種船よび草量の分布マツ プは実際の草地の特徴を反映していた。そのため,放牧草地での構成草種およぴ草 量分布推定における本システムの有用性が示された。

4 .採草地における牧草の収量および成分の分布推定

   自給飼料を基盤とした畜産経営への転換に重要となる採草地に着目し,採草地生 産性の決定要因となる牧草の収量および成分の分布を推定した。収量分布推定では モデル検証時の決定係数が0.418 で,生成した収量マップから相対的な収量のバラ ツキを捉えることができた。成分分布推定ではモデル検証時の決定係数が0.375 〜 0.705 で,牧草の栄養評価や等級マップ生成への展開が期待できた。よって,採草 地で の 収量 韜 よぴ 成 分 の分 布 推定 に おけ る 本シ ス テム の 有用 性 が示さ れた。

5 . カ バ ー ク ロ ッ プ 試 験圃 場 にお け る構 成 草種 お よび 草 種 別草 量 の分 布 推定    化学資材投入量の削減などの多様な利点があるカバークロップ圃場に着目し,カ バ ークロップ 機能性の評価基準となる構成草種および草種別草量の分布を推定し た。構成草種分布推定ではモデル検証時の判別率が85.9 %で,草種別草量推定では モデル検証時の決定係数が 0.866 〜 0.930 であった。生成した構成草種および草種別 草量推定マップは,実際の圃場の状態を概ね反映していたため,カバークロップ圃 場 での構成草 種およぴ草種別草量の分布推定における本システムの有用性が示さ れた。

   本 研究で開発 した地理情 報化システ ムは,多くの情報を持つハイパース ベ クトル画像 の画像解析 を基本にし て構築したものである。そして,対象 と す る農 地 の植 生 情報 ご と に推定モデ ルの最適な 組み合わせ にっいて言 及 した。多様 な農地植生 解析に汎用 的に応用できること,農作業の自動化 や 作物生産管 理に必要な 情報取得の 指針を示し た。

   よ って,審査 員一同は, 鈴木由美子 が博士(農学)の学位を受けるのに

十 分な資格を 有するもの と認めた。

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