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博士(理学)岩崎一郎 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(理学)岩崎一郎 学位論文題名

Thermal evolution of the Kamuikotan zone

(神居古潭帯の熱史)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

北 海道 中 軸部 に は 高圧 変 成 岩類 を 含む 神 居 古潭 帯 が分 布 し てい る .90年 代以 前 は神 居 古潭 変 成 岩類 の 圧 力型 は 典型 的 な 高圧型 で,形成年 代はlOOMa以前 で あ ると 考 えら れ て きた . し かし , 最近 の 研 究によ り,lOOMaより若 い放射年 代 が 続々 と 報告 さ れ ,変 成 条 件も 下 は約2kbま で下がる 可能性が出 てきた( 岩崎 ほ か,1991; 太田ほ か,1991;山 崎,1992;な ど).こ の様な幅 広い神居古 潭 帯 の変 成 条件 ・ 放射年代 の広がり を説明す るために 様々な説が 唱えられ てきて い る, そ こで , 今回は神 居古潭帯 中央部地 域に分布 する岩石か ら神居古 潭変成 岩類を 形成していた沈み込み帯の,沈み込み剪断帯沿いのpaleogeothermを求め,

この paleo geothermについて熱移動に関する計算を行ない,その結果をプレート テクト ニクスと 関連づけ て議論を行 う.

  あ る 地 域か ら放 射年代値 と変成温 度圧力条 件を多数 求め,等し い放射年 代値 を 示す 岩 石の 温 度圧力条 件をP・T図 上で結ぶ とその時 期の地温勾 配を表し てい る と考 え るこ と が出来る .今回は それぞれ の地域で 変成鉱物分 帯のzoneごと に 変成温 度圧力条件をP一T図上にブロットし,ほほ等しい年代値を示すuneを結び,

そ れを そ の期 間 のpaleogeothermと考 え た .推 定 さ れたpaleogeothermは120‑

lOOMaが 最 も 低 く , そ れ よ り 古 い も の は 若 く な る に 従 っ て120―lOOMaの paleog eothermに向か い温度が 減少する 傾向.lOOMaより 若いものは若くなるに 従って 温度が増 加する傾 向を持つ・

  先に描 いたp aleogeothermを「 説明したい現象」として,沈み込み帯のモデル を 立て , 沈み 込 み剪断帯 に沿った 温度勾配 を計算し た,均質か つ等方的 な媒質 内 の熱 伝 導を 考 え,熱伝 導方程式 をADI法(Peaceman and Rachford,1954)を 用 い て差 分 方程 式 に表した ,内部発 熱は剪断 熱と放射 改変による 大陸(島 弧)地 殻 内の 発 熱を 考 えた,そ れぞれの 数値はFurukawa and Ueda (1989)の 値を使用 し た. 鉛 直方 向 は固定し 水平方向 のメッシ ュの幅を 変化させる ことによ って沈 み 込 み 角 度 を 表 現 し , ス ラ ブ の 動 き はQuasi−dynamc  scheme(mner  & T0kSoz,1970)を 使い表現 した.沈 み込むス ラブの年 齢は下か らの熱流量 を変 化させ て表現し た.また ,沈み込み 剪断帯に沿った流体の流れによる熱の運搬・

付 加ブ リ ズム 内 の運動に よる熱の 運搬・ウ ェッジマ ントルの対 流による 熱的影 響は無 視できる と考えた .

  ま ず , この モデ ルにおい て様々な パラメー タを変化 させ,その 地温勾配 に与 え る影 響 を見 た ,大陸( 島弧)地 殻内の放 射改変に よる発熱・ 沈み込み 速度・

沈 み込 み 角度 ・ 斜め沈み 込みの角 度・沈み 込むスラ ブの年齢の うち,沈 み込み 剪断帯 の温度勾 配に最も 影響を及ほ すの|よ,若いスラブの沈み込みと斜め沈み 込 みの 度 合い で ある.特 に,若い スラブが 沈み込む と密度が低 いため沈 み込み 角度も 浅くなる ことが予 想され,更 に温度が上昇することが予想される..沈み

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込 み速 度は温度 勾配の変化 の遠さに 影響する .沈み込 み速度が 速いと速 やかに 定常状態に達する.

  このこ とをふま え,モデル 計算を神 居古潭帯 のpaleog eothermに適応 した.

Hori and Sakakibara(1994)により,静内川流域において沈み込んだ海洋地殻の復 元 がなされ ており, ここでは135Maに 沈み込ん だスラブの年代として100m.y.old を仮定した.また,プレート相対運動のデータはEngebretson etal.(1985)のデー タを使用した.

  地 温勾 配 低下 の ス テー ジ (135−120Ma)では 角閃岩を 形成する ような高 い地 温 勾配 の状態か らの冷却速 度を考え た.結果 として沈 み込み角 度18度の時 は約 5c:mlyr, 沈み込み 角度6度の 時は約10cm/yr程度 で沈み込ませてやる必要があっ た . こ の時 期 のイ ザ ナ ギプ レ ート と ユ ーラ シ アプ レ ー トの 相 対速度は29.4− 20.4arjyrであり(Engebretson etal.,1985)計算された沈み込み速度に比べかな り 速い.こ の事はこ の時期の沈み込みが60−80度程度の斜め沈み込みであった事 を 示す.地 温勾配上 昇のステー シ(100―55Ma)のpaleogeothermの変化は,沈み 込 んでいる スラブの 年齢の変化 によると 考えられ る.300ー350℃.約5kbの近辺 の 温度 圧力条件 では55−75Maの放 射年代値 が得られ ており,lOOMah'ら55Matこ か けてほほ 均等な速 度で地温勾 配が上昇 するとpaleogeothermに良く合う.しか し ,時 間の経過 に対してス ラブの年 齢がコン スタント に若くな るように 沈み込 ま せると,20m.y.oldのスラブ が沈み込む あたりか ら温度上昇の速度が上がり,

300−350℃ . 約Skbの 近 辺 を 十 分 時 間 を か け て 通 過 し な ぃ . 結 果 と し て pale ogeothermの変化に合うようにするには,135Mtdこ10 0m.y.oldのスラブが,あ る 時期 に急速に 若くなり, その後ゆ っくりと 若くなる 状態を造 ってやる 必要が あ る.また ,地温勾 配上昇のス テージ中 約100−85Ma近辺で地温勾配が下がる傾 向 が見られ る,Engebretson色m.(1985)のデータによれぱこの時期,プレートの 相 対運 動が大き く変化する .っまり 斜め沈み 込みの角 度が変化 したこと による と 考え られるが ,この時期 は渡辺・ 岩崎(1993)とSakakibara and Ota(1994) に よっ て報告さ れた神居古 潭変成岩 類の放射 年代・変 成条件の ギャッブ に良く 一致する.

  55―75MaCこ300−350℃.約5kbの状態を保持するに|ま約10m.y.oldのプレートが 55―75Ma(こ沈み込 み続けて いる必要が ある.こ の様な状況を造るにはどの様な 条 件が考え られるか 見るために ,海嶺の 拡大速度 がブレー ト年代の 分布にど の 様 な 影 響を 及 ぽす か , 簡単 なモ デルで考 察した.120Maからの海 嶺拡大速 度の 増 加が若い ブレート を大量に生 産したた め,古い 海洋ブレ ートが急 速に消費 さ れ ,若いブ レートが 沈み込むよ うになり ,海嶺と 海溝の相 対運動と ,海嶺の 拡 大 速度のか ねあいに より,沈み 込むスラ ブの年齢 がゆっく りと若く なってい っ た と考える と説明で きる.また ,拡大速 度の増大 の影響が 沈み込み 帯に及ぶ に は 海嶺から の距離に よって時間 差が生じ る.三波 川帯・領 家帯の放 射年代値 が 東 ほど若い 値を示す 現象が確認 され海嶺 沈み込み の影響と 考えられ ているが , そ の様な年 代極性は 海嶺が南西 方向に存 在し,そ の拡大速 度が大き く増大す る こ とによっ てももた らされる可 能性があ る.Engebretson.et  a1. (1985)の reconstructionで は,日本列島の南〜南西にかけてイザナギー大平洋海嶺が存在 することは,このモデルと良く亠致する・

  同様の 手法で他 の高圧変成 岩類を分 析するこ と,また は沈み込 み帯で変成作 用を受 けた岩石 をより詳細 に分析し ,より精 密なモデ ルを立て 計算することに よって ,プレー トの運動や 海嶺の位 置などを より正確 に議論で きる可能性があ る.

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学位論文審査の要旨

主査  教授  渡邉暉夫 副査  教授  石原舜三 副査  助教 授  在田一則 副査  教授  板谷徹丸

    岡山理科 大学大学院 理学研究科(自然科学研究科)

    学位論文 題名

Thermal evolution of the Kamuikotan zone

(神居古潭帯の熱史)

     高圧 変成 帯は過去のプ レート沈み込 み帯とみなさ れ,変成岩の原 岩と 変成帝上昇の年代,変成帯の造構史はプレート運動の解明の鍵を握るものと考 えられてき ている.太平洋の中生代以降のプレート運動の復元は 1980 年代に Engebretson によって行なわれたが,北西太平洋の部分は詳しいデータが不足し ていたため,その復元に暖味な点が多かった.特に,海嶺がいつ,どこに沈み 込んだかについては定説がなかった.

     この 問題 の 解明 に は変 成 帯の 温 度ー 圧力 条件と その変遷の研 究が第1 に必要である.著者は神居古潭帯の岩石学的,年代学的研究を基礎にこの問題 に取り組んだが,最初の調査地域を中部神居古潭帯の泥質片岩の分布地域とし た.ここで著者は高圧変成岩に連続する地域でありながら,中圧の変成条件し か示さない変成岩が分布することを明らかにした.さらに,白雲母のK ーAr 年代 の研究を行 ない,これま で知られていな かった 100Ma より若い年代を持つ岩 石であることを明らかにした.この成果は神居古潭変成帯の造構造史を西南日 本に分布する三波川帯と連続する沈み込み帯で考えることを可能にするもので あった.そして,それまでの神居古潭帯復元のモデルに大きく修正を迫るもの であった.

     著者 は調 査地域を広げ ,また,年代 論と鉱物化学 的研究を深め, 神居 古潭変成帯が1 億年を越える長い上昇の歴史を持っものであること,この間,

変成温度の変化はあまり認められないものの,圧力変化が5 kb のも及ぶもので

あることを明らかにした.このような圧力幅は,連続する変成帯のそれとして

は例が少ない.また,神居古潭変成作用は年代的にも変成条件の上でも,白亜

紀の蝦夷層群を隔てて東側に分布するイドンナップ層に連続することを明らか

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にした.これはアメリカ西海岸のフランシスカン層群で予想されていた通時的 変成作用の例を鮮明にするものであった.なお,変成岩の白雲母 K ー Ar 年代論 では過剰Ar が組成に依存し,不正確な年代がでるとの見解がある.このため,

著者は Ar ーん法による年代をもとめ,K ーAr 年代では低温部でのAr の損出がわ ずかにあるにすぎないので,K ーAr 年代でも信頼にたる議論が出来ることを確認 した.

     この ような成果の上にたって,神居古潭帯の P ー T ー t 経路を検討した結 果,著者は神居古潭帯の地温勾配の変化が従来知られていたものとは違うこと を 発 見 し , 新 しく 熱 史 の モ デ ル 計算 を 行な った .この 計算 は Molnar and England(1990) によって提案され,Dumitru (1991 )によってフランシスカン層群 に適用された式を基本にしているが,神居古潭帯の熱史にもっとも良くフイツ ト す る 場 合 , 何 が 重 要 で あ る か を 検 討 し , 以 下 の 結 論 に 達 し た . 1 ) shear stress は無視しうる.2 )地殻内発熱は考慮しなくてよい.3 )沈み 込むプレートの斜交の程度と年代がもっとも重要である.4 )一部に知られて い る 重 複 変 成 作用 も 地 温 勾 配 の 回復 の 様式 の違 いによ って 説明し うる . このうち, 3 )の結論を神居古潭帯の熱史に適用されると,海嶺の位置の復元 を検討することが出来,ここに論争中のプレート復元について,新しいモデル を提出することが可能となった・

     神 居 古 潭 帯は , 白 亜 紀 初 期 の沈 み 込み の開 始以来 , 10 0Ma ま では 冷 たいプレートの沈み込みによって説明出来る.その後,若い海嶺が近ずくので,

地温勾配は上がるが,50 Ma 頃の最も高い地温勾配による変成作用は海嶺の沈 み込みを必要条件とはせず,トランスフオーム断層で切られた南北に伸ぴた海 嶺が北西大西洋を通過することによって起りうるものである,ということ明ら かにした.この結果は海嶺の沈み込みを想定していた西南日本の三波川変成帯 の上昇や領家変成作用の上昇年代の解釈にも影響を及ぽすものである.特に,

領家変成帯のマグマ活動が単純に東に移動したとは言い切れないというデータ

が出始めている現在,著者のプレート復元モデルは日本の中生代以降の変成帯

形 成 史 を 論 ず る 上 で , こ の 上 な く 重 要 な 貢 献 を す る も の と な っ た ・

     よっ て, 著者は 北海 道大学 博士 (理学 )の学位を授与される資格のあ

る者と認める.

参照

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