明治前期における代理法の展開
靱
は じ め に︱ 課 題 の設 定 一 法 令 一一 法 慣 行 一 伺 指 令 1 明 治 九 年 代 言 人 規 則 以前 2 明 治 九年 代 言 人 規 則 以後 四 判 例 お わり に
橋 本 誠 一
―‑205‑―
は じ め に︱ 課 題 の設 定 本
稿 の課 題 は︑ 明 前治 期
︵明治 民法 施行 前︶ おに け る代 理 法 制 の変 遷 を 法︑ 令
・法 慣 行
・行 政 庁 伺の 指令
・判 例 の各 レ ベ ル にお
いて 追 跡 す る こと あに る︒ そ の際
︑ 関 心 の中 心 は訴 訟代 理と 任 意 代 理 一般 と の関 連 に置 か れ て いる
︒ こ の よう な 課 題 設定 を行 う 至に
たっ 理由 に つい て
︑ 以 下︑ 簡 潔 に説 明 し てお こう
︒ 筆 者 は
︑ 拙 著
﹃在 野
﹁法 曹
﹂ と 地 域 社 会
﹄ に お いて 以 下 のよ う な 歴 史 的事 実 を 明 ら か に し た
︒ す なわ ち
︑ 明治 九 貧 七八 工O 年 月二 二 二 日 司法 省 甲 第 一号 布 達
﹁代 言 人 規 則﹂
によ り 訴 訟 代 理 が免 許 代 言 人 の独 占 業 務 とさ たれ 後 あで てっ も
︑ 大審 院
・諸 裁 判所
では
︑ 代 言 人免 許 を 持 た な い者 が
﹁代 人
﹂ の肩 書 き で訴 訟 代 理 を 行 てっ いた だ け でな く
︑ そ の中 に は反 覆
・継 続
=業 と し て訴 訟 代 理 を 営 み︑ 依 頼 人 から 報 酬 を 得 る者 も 少 な く な か たっ
︒ うい ま でも な く代 言 人 の地 位
・職 務等
は 代︑ 言 人 規 則 に よ って 規 律 さ れ て いた
︒ これ に対 し 代︑ 人 の地 位 を 根 拠 づ け た のは 明︑ 治 六
︵一 八菫 一︾
年 月六
一人 日太 政官 第 二 一五 号布 告
﹁代 人 規 則﹂
︑ 明治 九
︵一 七人 工O 年 月二 二 二 日司 法 省 甲 第 一号 布 達
﹁代 言 人 規 則
﹂ 布 達 文 但 書
︑ 明 治 一三 年 五 月 一三 日 司 法 省 甲 第 二号 布 達
﹁代 言 人 規 則 改 正 二付 詞 訟 代 入 心 得 方
﹂
︵以下
﹁詞︑ 訟代 入心 得方
﹂と で 2 な ど あで
たっ
︒ こ のよ う 代に 入 と 代 言 人 と が 同 訴じ 訟 代 理 を 担 う 者 と し て法 廷 と うい 空 間を 共 有 す ると
いう 状 態 は 明 治 一〇 年 代 後 半 に お いて も 確 認 でき るが
︑ い つし か 消 滅 し て い たっ ので あ る
→﹂れ は岱 百人
・弁 護士 の業 務独 占が 確立 たし こと を意 味し た︶︒
た だ
︑ 拙 著 を ま と めた 段 階 で は︑ 単 代に 人 肩の 書 き で代 言 人 資 格 を 持 た な い者 が数 多 く 訴 訟 代 理 を 行 って いた と い
法政研究11巻 1・ 2・ 304号 (2007年)
‑206‑
明治前期における代理法の展開
う 歴 史 的 事 実 を 指 摘 す るだ け で︑ 当 時 の代 理法 制 の在 り 方 と 関 わ ら せ てよ り 総 体 的 問に 題を 把 握 す まる で には 至 てっ いな か たつ
︒ そ のた め
︑ た とえ ば 代 人 よに る訴 訟 代 理 と 代 言 人 に よ る訴 訟 代 理 と の法 的 な 意 味 で の異 同 に つい てさ え 十 分 な 解理 を 持 ち 合 わ せ て いな か たっ
︒ そ こ で本 稿 では
︑ 代 言 人 規 則 あ る いは 代 言 人 と の関 連 を 常 留に 意 し な が ら︑ 明 治前 期 にお け る代 理法 制 の実 態 を 明 ら か に し て いき た い︒ うそ し 作た 業 を 通 じ て︑ 近 代 本日 おに け る代 言 人
・弁 護 士 法 制 の発 展 とに
てつ 代 理法 制 の果 た し た歴 史 的 役 割 を 明 ら か に でき る の では な いか と う思
︒ 以 上 の課 題 に アプ
ーロ チ す る た め 本︑ 稿 で は
︑ 明 治 民 法 施 行 前 に お け る各 種 単 行 法 令 一︵
︶︑ 明 治 初 期 の法 慣 行 公 し︑ 行 政 庁 の伺 指 令
︵三
︶︑ そ し 判て 例
︵四
︶ に つ いて そ れぞ れ 分析 作 業 行を う
︒ 一
社 暦 △ 7
︵1︶ 代 入 規則
︵明 治 六年
︶ 本 章 で は
︑ 明 治 前 期 に お け る 主 要 な 代 理 関係 法 令 を 整 理 し てお うこ
︒ ま ず
︑ 明 治 六
︵一 人生 こ 年 六月
一人 日太 政 官 第 二 一五 号 布 告
﹁代 入 規 則
﹂は
︑ 明 治 三 一
︵一 八九 八︶ 年 に明 治 民 法 が 施 行 さ れ るま で の間 代︑ 理法 制 を 一般 的 規に 律 す る基 本 法 令 と し て重 要 な役 割 を担
い続 けた
︒ 以 下︑ そ の全 文 を 引 用 し うよ
︒
︵傍点 引は 用者 以︒ 下︑ 同じ
︶︒ 第 一条 凡 ソ何 人 二限 ラス 己レ ノ名 義 ヲ以 テ他 人ヲ シテ 其事 ヲ代 理セ ムシ ルノ 権ア ル可 シ 但シ 本人 幼年 等 ニテ 其事 理ヲ 弁シ キ難 時 ハ其 後見 人及 ヒ親 ノ属 者協 ノ議 代上 入ヲ 任 スル ヲ得 可シ
‑207‑―
第 二条 凡 ソ他 人 ノ委 任 ヲ受 ケ其 事 件 ヲ取 扱 フ者 ハ代 人 ニシ テ其 事 件 ヲ委 任 ス ル者 ハ本 人 ナ リ 故 二代 人 委 任 上 ノ所 業 ハ本 人 ノ関 係 タ ル可 シ 第 三条 凡 ソ代 入 ハ心 術正 実 ニシ テ二 十 一歳 以 上 ノ者 ヲ撰 ム可 シ 第 四条 代 入 ハ総 理 代 人部 理 代 入 ノ別 ア リ総 理 代 入 ハ其 本 人身 上 諸般 ノ事 務 ヲ代 理 ス 者ル ニシ テ部 理 代 人 ハ特 二其 委 任 ス ル部 内 ノ事 務 代ヲ 理 スル ヲ得 ル者 ト ス
第五 条
胎ン ぉヵ ぉい 僣た 螢ナ 砂ン たい 勢紆 恥訃 争か ない 衡い 斧か やい かか 寿力 船弁 枠ン 分か 奔螢 おア 争ア 研ン
但 シ其 家 業 取扱 フ場 所 二於 テ通 常 ノ事 務 ヲ取 扱 ハシ ム ル ノ類 ハ別 段委 任 状 ヲ与 フル ニ及 ハス 第 六条 委 任 状 ハ総 理代 入 又 ハ部 理 代 入 タ ル事 実 及 ヒ其 委 任 シ タ ル権 限 ヲ明 白 二記 載 ス可 シ 第 七条 委 任 状 書 式左 ノ通 拙 者 総 理代 入 拙 者 共儀 某 ノ事 件 二付 何 ノ誰 ヲ以 テ部 代理 人 卜 定 メ拙 者 ノ名 義 ニテ 左 ノ権 限 ノ事 ヲ代 理為 致 候事 一 何 々 ノ事 但 シ権 限 ノ次 第 ヲ分 条 記載 ス可 シ 右 代 理 ノ委 任状 而如 件 年 号 何 年 何月 何 日
法政研究11巻1・ 20304号 (2007年)
住 身
姓 所
分 名 印
‑208‑
明治前期における代理法の展開
後 見 人 等 ハ住 所身 分 何 誰 ノ後 見 人 何 誰 卜 記 ス可 シ 第 八 条 代 入 ヲ任 スル ノ期 限 ハ予 メ規 定 難シ キ ノモ ト 雖 モ其 本 人 幼 弱 疾 病事 故 等 ニテ 長 ク委 任 セ ント ス ル時 ハ其 地 方 二新 聞 紙 ア ラ ハ 之 二記 入 セ シ メ世 上 二公 布 ス可 シ こ
よの う に代 人 規 則 は︑
﹁何 人﹂ も
﹁己 レ ノ名 義 ヲ以 テ他 人 ヲシ テ其 事 ヲ代 理 セシ ム ノル 権
﹂を 有す ると し
︵第 一条
︶︑
本 人 の委 任 を受 け た 代 人
=代 理 人 の行 為 は本 人 の行 為 と 見 な さ れ る こと を 確 認 し た
︵第二 条︶︒
さ ら に代 入
=代 理 人 にな うり る者 の資 格 に つ いて
︑
﹁心 術 正実
﹂ か つ
﹁二 十 歳一 以 上 ノ者
﹂ と 規定 たし が
︵第二 条︶︑
こ の規 定 解の 釈 と適 用範 囲 に つ いて は 後 に議 論 が分 か れ る こと に な る
︒ ま た 代︑ 入
=代 理 人 は
﹁総 理 代 人
﹂ と
﹁部 理 代 人
﹂ の二 つに 分 け ら れ た
︵第四 条︶︒
総 理代 人 は
︑
﹁本 人 身 上 諸 般 ノ 事 務 代ヲ 理 ス ル者
﹂︑ す な わち 本 人
=委 任 者 か ら 諸 般 の事 務 を 悉 皆 受 任 す る代 理 人 であ る︒ 他 方 部︑ 理 代 人 は︑
﹁特 ニ 其 委 任 スル 部 内 ノ事 務 代ヲ 理 ス ル ヲ得 ル者
﹂︑ す な わ ち 本 人 か ら 指 示 さ れ 特た 定 の事 件 ま た は 性 質 の確 定 し た事 務 に 限 てつ 処 理す る代 理 人 であ る︒ こ よの う な 区 分 は フラ ン ス法 の影 響 を受 け た も のと いわ れ て いか
︒ そ し て最 後 に
︑ 代 人 規 則 は 委︑ 任 代 理 契 約 を 有 効 に成 立 さ せ る 要 件 と し て委 任 状 の授 受 を 義 務づ け る
︵第五 条︶ と と も に 委︑ 任 状 の書 式 掲を げ た
︵第七 条︶︒
後 に見 るよ う に︑ 実 務
・判 例 では
︑ こ の形 式 要 件 の法 的効 如果 何 大が き な 解 釈 上 の課 題 と な った
︒
︶︵2 訴 答 文 例
︵明治 六年
︶ 他 方
︑ 訴 訟 代 理 に関 し ては
︑ 明 治 三
︵一 七八
〇︶ 年 一 月一 二 八 布日 告
﹁府 藩 県 交 渉 訴 訟 准 判 規 程﹂ が︑ そ の第 条一
‑209‑―
に お い て︑
﹁凡 訴 訟 ヲ准 判 ス ル ハ其 本 人 二限
﹂ル こ と
︵本 人訴 訟︶ を 原 則 と し な が らも
︑
﹁若 シ 疾 病 老 幼 或 ハ廃 疾等
﹂ の理 由 に より 本 人 が
﹁親 族 其 他 ノ代 入﹂ を 立 てる こと を請 求 す る場 合 には
﹁事 実 ヲ純 訊﹂ し うた え で許 可す ると し た︒ こ れ 近が 代 本日 に おけ る代 人 に よ る訴 代訟 理 の晴 矢 であ る︒ そ の後
︑ 周 知 のよ う に︑ 明 治 五
︵一 人七 一じ 年 八 月 三 日
﹁司 法 職 務 定 制
﹂ に よ り
﹁代 言 人
﹂ 制 度 が設 けら れ
︑ さ ら に 明 治 六
︵一 八菫 こ 年 七 月 一七 日太 政 官 第 二 四 七 号 布 告
﹁訴 答 文 例﹂
に より 代 言 人 依 頼手 続 が 定 め ら たれ
︵第 一巻 第 一〇 章︑ 二第 巻第 三章 以︑ 下︑ これ らの 条章 を
﹁代 言人 条﹂ と記 す︶︒
そ の規 定 は 以 下 の通 り であ る
︒ 第
三 十 条
原告 ノ人 情願 二因 テ代 言人 ヲシ テ代 言セ ムシ ルコ トワ ス許 僣静
︐ た 肝ア ンな か難 静お か野 計い 僣計 たい 僣酔 ン分 ン静 訃か 軒ン 康か 争
人 及 ヒ代 言 人 ノ連 印 ヲ為 ス可 シ若 シ連 印 ナ ケ レ ハ代 言 セ シ ム ル コト ワ許 サ ス 第 二十 一条 原 告 人 代言 人 ヲ シ テ代 言 セ シ ム ル時 訟 庭 二同 席 ス ル コト ハ其 情 願 任二 ス 第 三十 二条 訴 訟 二関 係 ス 書ル 類 ハ代 言 人 又 ハ保 証 人 ノ類 雖卜 モ原 告 人 ノ証 為卜 ル可 キ者 ハ原 告 人 ノ撰 ヒタ 代ル 書 人 ヲシ テ代 書 セ メシ 其代 書 人 ノ 氏 名 ヲ記 入 セ シ ム可 原シ 告 人 ノ自 書 ヲ用 フル コト ラ得 ス 書 面 ノ末 二署 ス 氏ル 名 ハ其 本 人 ノ自 筆 ヲ用 ヒ代 書 人 ヲシ テ代 書 セ シ ム可 カ ラ ス若 シ本 人 自 署 ス ル コト 能 ハサ レ ハ其 旨 ヲ氏 名 ノ肩 二記 ス可 シ但 第 二章 但 シ書 ヲ見 ル可 シ
法政研究11巻1・ 2・ 3・ 4号 (2007年)
―‑210‑―
明治前期における代理法の展開
諦謝 中府 争た 力か 僣静 たか かか 争静 い殴 か優 いか 骨静 たナ 肝た いか 康争 た乃 骨か 計た いナ 優ナ 僣ハ 計た
︐ 螢 酔カ ンか 書訃 ナ肝 千力 ン
若 証シ 書 ナ ケ レ ハ仮 ノ代 言 人 為卜 ス コト ワ許 サ ス 第 三十 五条 被 告 人 ノ代 言 人 ヲ用 ル モ亦 其 情 願 二任 ス然 レト モ必 ス本 自人 ラ同 伴 シ テ訟 庭 二出 席 其シ 結局 ハ本 人 ヨリ 決 答 為ヲ ス可 シ 第 三十 六条 被 告 人 代 言 人 ヲ出 ス時 ハ答 書 ノ奥 書 及 ヒ連 印 等 ノ方 法 ハ第 三 十条 二照 ラ ス可 シ 第 二十 七条 答 書 二関 係 ス ノル 書 類 ハ代 言人 又 ハ保 証 人 ノ類 雖卜 ト モ被 告 人 ノ証 為卜 ル ヘキ 者 ハ被 告 人 ノ撰 ミ タ ル代 書 人 ヲシ テ代 書 セ シ メ且 ツ代 書 人 ノ氏 名 ヲ記 入 セ シ ム可 シ被 告 人 ノ自 書 用ヲ フ ヲル 得 ス 書 面 ノ末 二署 スル 氏 名 ハ其 本 人 ノ自 筆 ヲ用 ヒ代 書 人 ヲシ テ代 書 セ シ ム可 カ ラ ス若 シ本 人自 署 ス ル コト 能 ハサ ル時 ハ其 旨 ヲ氏 名 ノ肩 ニ 記 ス可 シ こ
れ に よ れ ば
︑ 原告 人
・被 告 人 と も に代 言 人を 依 頼 す る場 合 は
︑
﹁訴 状
﹂
︵被生回 人の 場合 は
﹁答書 し の奥 書 に
﹁代 言 人 二依 頼 シ タ﹂ 旨 を 記 載 す ると と も に
︑ 原告 人
︵また は被 生回人
︶と 代 言 人 の連 印 を 必 要 と たし
一一δ︵第
一三︑ ハ条︶︒
原告 人 ま た は 代 言 人 が 疾 病事 故 あに たっ 場 合 に は︑ さ ら に
﹁仮 リ ノ代 言 人﹂ を 依 頼 す る こと が でき た
︵第≡ 一条︑ おな そ︑ 場の 合︑ 頼依 証書 必が 要で あ たっ
︶︒ な お
︑ 原 告 人 代が 言 人 を依 頼 し た場 合
︑ 原告 人 本 人 は ず必 もし 法 廷 に出 廷し くな ても よ いが
︵第二 一条
︶︑被 告 人 場の 合 は 代︑ 言 人 を 依 頼 し ても 必ず 本 人 が 出廷 し なけ れ ば な ら な か たっ
︵第一一五 条︶︒
‑211‑