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表面補修による

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Academic year: 2022

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(1)

表面補修による ASR 構造物の膨張抑制効果

九州工業大学院 学生会員 三浦正嗣 阪神高速道路株式会社 正会員 松本 茂

九州工業大学 正会員 幸左賢二 住友大阪セメント株式会社 正会員 草野昌夫

1. はじめに

本検討は,アルカリ骨材反応(ASR)を生じた実構造物の補修効果を検 証することを目的とし,関西地区のASR橋脚12基(供用年数33~37年)

を対象として経年的な調査データの分析を行った.図-1に検討フローを 示す.検討データは 1) 外観のひび割れ密度,2) 測線の膨張量とし,補 修前後での劣化進展を比較することでASR橋脚の補修効果を評価した.

2. 対象橋脚と調査概要

分析対象は,関西地区のASR橋脚87基である.ASR橋脚87基の中で も損傷度が比較的大きく,管理上特に注意を要する橋脚は31基存在する.

本稿での検討対象は,それら31基の中でも,補修効果の評価を行うため に,竣工年・補修がほぼ同時期に施工されている橋脚12基とした.

橋脚12基の調査方法を以下に示す.

1) 外観のひび割れは,補修時に点検車等による接近目視によって調査 されており,図-2に示すようなひび割れ注入が可能な幅0.2 mm以上の ひび割れ分布図が作成されている.

2) 測線の膨張量は,コンタクトストレンゲージ(検長300 mm,測定精 度1/1000 mm)を用いて,80~159測点が補修後から毎年計測されている.

3. 分析結果および考察

3.1 外観のひび割れ密度(12 基)

図-2に損傷が特に大きかった橋脚Eの外観のひび割れ調査例を示す.

図より,竣工後7年ではASR特有の亀甲状のひび割れが確認され,梁部 主鉄筋方向に沿って最大幅2.0 mmのひび割れが発生していた.そこで,

このような外観のひび割れ損傷度を評価するために,累積ひび割れ密度 の算出(ひび割れ総延長÷対象面積)を行った.算出方法は,経年的な 劣化進展を表すために,補修後に発生したひび割れ密度を累積している.

図-3に橋脚12基の累積ひび割れ密度の経年変化を示す.図中のプロ ットは各橋脚の補修実施時期および補修材種別を示している.図より,

橋脚12基の累積ひび割れ密度最終値の平均は2.1 m/m2となった.この平 均2.1 m/m2を越える橋脚7基は,1度目の補修が実施された竣工後8年程 度までにひび割れ密度が大きく進展し,その後は漸増していく傾向が認 められた.一方,平均2.1 m/m2以下となる橋脚5基では,21年間で累積 ひび割れ密度は1 m/m2以下と小さいが,ひび割れ密度の進展はほぼ線形 的に増加している傾向が認められた.ここで,補修前後での累積ひび割 れ密度の進展量を比較するために,竣工から1度目の補修までの約8年 間と,その後再補修が実施されるまでの約14年間の2つの期間に分類し て比較を行った.

図-4に補修前後の年間進展量を示す.図より,まず,ひび割れの進展 が大きい橋脚 7 基は,補修以降の累積ひび割れ密度の年間進展量が 0.1

劣化

図-1 検討フロー

2.0 m1.02.0 m

図-2 外観のひび割れ調査例(橋脚 E)

累積ひび割れ密度(m/m2

図-3 累積ひび割れ密度(12 基)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

E J I L D C H K B F A G 橋脚名

塗膜系 5基 撥水系 7基 低減率(%)

補修以降(約14年間)

補修以前(約8年間)

図-4 補修前後の年間進展量

土木学会西部支部研究発表会 (2009.3) V-010

-763-

(2)

m/m2/年程度,もしくはそれ以下に低減している.これは,補修前と比 較すると9~58 %に低減しており,補修によってひび割れの進展速度が抑 制されている可能性が示された.次に,ひび割れの進展が比較的小さい 橋脚 5 基は,補修実施の前後で累積ひび割れ密度の年間進展量がともに 0.1 m/m2/年以下と小さい傾向が得られた.

3.2 測線の膨張量(9 基)

図-5に測線の膨張量算出手法を示す.図に示すとおり,膨張量の算出 は,橋脚の梁部を0.5 m×0.5 mのメッシュに分割し,各メッシュ単位で 平均ひび割れ幅を詳細に計測している損傷図を使用した.算出方法は,

竣工からの膨張量を把握するために,点検開始までの未計測期間をひび 割れ幅データで算出し,点検開始後はコンタクトストレンゲージの値を 用いて算出している.しかし,比較的精度良くひび割れ幅が確認できる 損傷図は,橋脚12基のうち9基において収集できた.したがって,詳細 なひび割れ損傷図を有しない橋脚J,K,Lの3基を除き,残りの橋脚9 基を対象としている.

図-6に代表して橋脚Eの測線の膨張量の経年変化を示す.測線位置は 梁部の側面と下面でそれぞれスターラップ方向の 2 測線のデータを示し ている.図より,膨張量は梁部の側面より下面の方が大きくなっており,

梁下面の東側では最大6200×10-6まで膨張が進展している.このような傾 向は他の橋脚でも同様に確認されており,梁下面の再劣化が大きい要因 としては,梁端部からの漏水による水分の供給の影響等が考えられる.

図-7に橋脚9基の測線の膨張量の経年変化を示す.データは全て梁側 面と梁下面の平均値をプロットしている.図より,膨張量1000×10-6を劣 化度の閾値とすると,膨張が大きく進展した橋脚 4 基と,膨張が比較的 小さい橋脚5基に分類された.これは,累積ひび割れ密度の検討(図-3)

で分類した橋脚群と対応している.膨張の進展が大きい橋脚 4 基には,

補修後もほぼ線形的に膨張が進展している橋脚2基(橋脚E,I)と,膨 張の進展が抑制されている橋脚2基(橋脚C,H)が認められた.一方,

膨張が比較的小さい橋脚 5 基は,補修実施時では局部的にひび割れが発 生していた影響からあまり膨張が進展していないが,補修後 4 年では膨 張が500×10-6程度進展し,その後は膨張の進展がほぼ横ばいになる傾向 が認められた.ここで,累積ひび割れ密度と同様に,補修以前の約 8 年 間と,補修以降の約14年間の2つの期間に分類して比較を行った.

図-8に補修前後の年間膨張量を示す.図より,まず,膨張の進展が大 きい橋脚4基は,補修以降の測線の年間膨張量が補修前に対して38~89 % に低減している.次に,膨張が比較的小さい橋脚 5 基は,補修実施の前 後で測線の年間膨張量が50×10-6/年以下と小さい傾向となった.

4. まとめ

(1) 外観のひび割れを検討した橋脚 12基の結果より,補修以降の累積ひ び割れ密度の年間進展量は,補修前に対して9~58 %に低減しており,

補修によってひび割れの進展速度が抑制されている可能性が示された.

(2) 測線の膨張量を検討した橋脚9基の結果より,補修以降の測線の年間 膨張量は補修前に対して38~89 %に低減する結果が得られた.

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 5 10 15 20 25 30

竣工後経過年 測線の膨張量(×10-6

西側鉛直 東側鉛直 西側下面 東側下面 平均 西側鉛直

西側下面

東側鉛直

東側下面 測線

位置

4500×10-6

補修 再補修 再々補修 ひび割れ幅 追跡点検

図-6 測線の膨張量(E 橋脚)

測線の膨張量均値(×10-6

図-7 測線の膨張量(9 基)

0 50 100 150 200 250 300 350 400

E I D C H B F A G

橋脚名 年間膨張量(×10-6/年

塗膜系 3基 撥水系 6基

低減率(%)

補修以降(約14年間)

補修以前(約8年間)

図-8 補修前後の年間膨張量 図-5 測線の膨張量算出方法

1.0 0.5 m

検長:0.3 m

土木学会西部支部研究発表会 (2009.3) V-010

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参照

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