• 検索結果がありません。

細胞膜の水チャネル, アクアポリン

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "細胞膜の水チャネル, アクアポリン"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

細胞膜の水チャネル,アクアポリン

は じ め に 生命の基本単位である細胞は, 脂質二重層からなる細 胞膜に囲まれている. 水は脂質二重層を単純拡散により ゆっくりと透過するが, 腎臓の尿細管・集合管上皮細胞 など多くの水を素早く透過させなければならない細胞で は, 細胞膜に水チャネルが存在する. 哺乳類で最初の水 チャネルは 1992年に同定され, 現在までに 13種類のア クアポリンアイソフォームがクローニングされている. 筆者はアイソフォーム特異的な抗体を作製し, ラットお よびマウス組織での 布局在を詳しく検討してきた. 水の再吸収を盛んにおこなう腎臓にはアクアポリン 1 (aquaporin 1: AQP 1)をはじめ,AQP 2,AQP 3,AQP 4, AQP 6, AQP 7, および AQP11の少なくとも 7種類のア イソフォームが近位尿細管から集合管にかけて 布す る. この中から, 今回は AQP 2について紹介したい. バソプレッシン調節下の水再吸収と AQP2 腎臓の結合尿細管から集合管にかけては, 管を形成す る上皮細胞の管腔側に AQP 2が 布する. この AQP 2 は, 細胞膜表面と細胞内小胞膜との間を往来するユニー ク な 水 チャネ ル で あ る. 哺 乳 類 の 水 チャネ ル で は, チャネルの開閉による水透過性の調節は起こらないとさ れており, 細胞膜の水透過性を変化させるためには, こ のように細胞内 布を変化させることが一つの調節手段 といえる. 実際の AQP 2の調節はというと, 血中のバソ プレッシン濃度が低い状態では細胞内の小胞膜上に多く 布し, バソプレッシン濃度が上昇すると管腔側細胞膜 上に多く 布する. AQP 2が 布する上皮細胞には, 基 底側壁部細胞膜に AQP 3および AQP 4が常時 布する ため, AQP 2が管腔側細胞膜表面に 布する状態では, 管腔内液と間質液との間の浸透圧勾配が原動力となっ て, 水の経上皮細胞的な再吸収が可能となる. AQP 2の 細胞内 布の変化について少し詳しく述べると, この変 化はバソプレッシンによる細胞内小胞のエキソサイトー シス, およびエンドサイトーシスによってもたらされる. バソプレッシンが基底側壁部細胞膜上の V2受容体に作 用すると,おもに cAMP,protein kinase A を介して AQP 2自身がリン酸化される. これがきっかけとなり AQP 2 が 布する細胞内小胞のエキソサイトーシスが盛んにお こり, AQP 2は管腔側細胞膜表面に現れる. やがて血中 バソプレッシン濃度が低下すると, エンドサイトーシス が盛んになり,細胞膜表面の AQP 2が細胞内小胞膜へと 69 Kitakanto Med J 2011;61:69∼70 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科生体構造学 平成22年11月29日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科生体構造学 﨑利行 図1 AQP 2の細胞内 布の変化 ラットに多量の水を摂取させ, 血中バソプレッシン濃 度を低下させた状態 (A) と, 多量の水を摂取させた後 にバソプレッシンを投与して 1時間後 (B)の髄質集合 管の AQP 2細胞内 布の変化. A では細胞内に, Bで は管腔側細胞膜により多く AQP 2が 布する.スケー ルバーは 5μm. 文献 3より許可を得て転載.

(2)

取り込まれる. このエキソサイトーシスとエンドサイ トーシスは, バソプレッシンの作用がなくてもあるレベ ルで常時起こっていて, バソプレッシン濃度の変化によ り, 相対的にエキソサイトーシス優位かエンドサイトー シス優位かの状態となり, AQP 2の 布が細胞膜表面優 位か細胞内小胞優位かに傾くと えられている. バソプレッシンによる AQP 2自身の変化としては,先に 述べたようにリン酸化が重要である. 以前から細胞内の カルボキシル末端近傍の 256番のセリンのリン酸化が重 要であることが指摘されていたが, 最近 261, 264, 269 番 のセリンもバソプレッシンによりリン酸化状態が変化す ることが報告され, これら 4つのセリンの複合的な作用 で AQP 2の細胞内 布がコントロールされていること が えられる. エキソサイトーシスを引き起こすきっか けとしては 256番のセリンが重要であると思われるが, エンドサイトーシスには必ずしも 256番のセリンの脱リ ン酸化は必要ではなく,むしろ,他のセリンのリン酸化・ 脱リン酸化がきっかけになるのではないかと えてい る. 筆者らは変異遺伝子を用いた培養細胞での解析をお こなっているが, 現在のところ 261番のセリンはエキソ サイトーシスおよびエンドサイトーシスの過程を含め て, 細胞内 布には影響を及ぼさないことがわかりつつ ある. AQP 2 と尿崩症 哺乳類の 13種類のアクアポリンの中で, 今日までに 疾患との関連が明らかにされたのは AQP 2だけである. 尿濃縮障害である尿崩症は, 中枢性と腎性のものがあり, 腎性のものではバソプレッシン受容体異常によるものが ほとんどである. AQP 2遺伝子の異常による尿崩症は, 先天性腎性尿崩症のうち約 10%とされているが, 変異の 種類としては 30種類以上の報告がある. そのほとんど は AQP 2のアミノ酸置換により,翻訳されたタンパク質 の折りたたみがうまくいかず, 細胞内で 解されてしま うタイプである. お わ り に 紙面の都合上, ここでは AQP 2に って紹介したが, 他のアクアポリンアイソフォームについては, 筆者らの 説 を一読いただけると幸いである. 本研究は文部科学省科学研究費の補助を受けた. 文 献

1. Matsuzaki T, Tajika Y, Tserentsoodol N, et al. Aquaporins - a water channel family. Anat Sci Int 2002; 77: 85-93.

2. Takata K,Matsuzaki T,Tajika Y. Aquaporins: water channel proteins of the cell membrane. Prog Histochem Cytochem 2004; 39 : 1-84.

3. 崎利行.細胞膜水チャネル,アクアポリン―腎臓を中心 にして. 日本医科大学医学会雑誌 2009 ; 5: 118-124. 4. Takata K, Matsuzaki T, Tajika Y, et al. Localization

and trafficking of aquaporin 2 in the kidney. Histochem Cell Biol 2008; 130: 197-209.

5. Lu HAJ, Matsuzaki T, Bouley R, et al. The phosphor-ylation state of serine 256 is dominant over that of serine 261 in the regulation of AQP 2 trafficking in renal epith-elial cells. Am J Physiol Renal Physiol 2008; 295: F290-F294.

6. Matsuzaki T,Tajika Y,Ablimit A,et al. Aquaporins in the digestive system. Med Electron Microsc 2004; 37: 71-80. 7. 崎利行, 高田邦昭, 小澤一 . 腎臓と唾液腺における細 胞膜水チャネル,アクアポリン.顕微鏡 2009 ; 44: 111-116. 細胞膜の水チャネル, アクアポリン 70

参照

関連したドキュメント

本研究は、tightjunctionの存在によって物質の透過が主として経細胞ルー

しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成

 再び心室筋の細胞内記録を行い,灌流液をテト

の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減

 肺臓は呼吸運動に関与する重要な臓器であるにも拘

MIP-1 α /CCL3-expressing basophil-lineage cells drive the leukemic hematopoiesis of chronic myeloid leukemia in mice.. Matsushita T, Le Huu D, Kobayashi T, Hamaguchi

 1)血管周囲外套状細胞集籏:類円形核の単球を

RNAi 導入の 2